特許第6446908号(P6446908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6446908
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】乗員脚部拘束装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/206 20110101AFI20181220BHJP
【FI】
   B60R21/206
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-167641(P2014-167641)
(22)【出願日】2014年8月20日
(65)【公開番号】特開2016-43735(P2016-43735A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】318002149
【氏名又は名称】Joyson Safety Systems Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】安部 和宏
(72)【発明者】
【氏名】岡田 典久
【審査官】 田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0200321(US,A1)
【文献】 特開2005−096576(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/054397(WO,A1)
【文献】 特開2003−252162(JP,A)
【文献】 特開2005−186887(JP,A)
【文献】 特表2013−517173(JP,A)
【文献】 特許第4569310(JP,B2)
【文献】 特許第4954003(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/206
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の前席乗員の脚部の前方に膨張するエアバッグと、
該エアバッグの下部にガスを供給して該エアバッグを膨張させるためのインフレータと
を有し、
該エアバッグは、乗員側の第1パネル及びそれと反対側の第2パネルを有する乗員脚部拘束装置において、
該エアバッグ内の上部は、該第1パネル及び第2パネルに連結され、上下方向に延在した縦セパレートパネルによって4個以上の小室に区画されている乗員脚部拘束装置であって、
該エアバッグの下部は、下方ほど左右幅が小さくなっており、
該エアバッグ内の下部は、それぞれ左右方向に延在し、前記第1パネルと第2パネルとを連結する第1、第2及び第3の横セパレートパネルによって横長の第1、第2及び第3の室に区画されており、
該第1の室は最下段の該第1の横セパレートパネルの下側に位置し、
該第2の室は、該第1の横セパレートパネルと中段の該第2の横セパレートパネルとの間に位置し、
該第3の室は、該第2の横セパレートパネルと最上段の該第3の横セパレートパネルとの間に位置しており、
該第1、第2及び第3の横セパレートパネルの左右方向両端は、該エアバッグの左辺及び右辺から離隔しており、第1、第2及び第3の横セパレートパネルの左右両端と該エアバッグの下部の左右両側辺との間には、それぞれガス流通用のスペースがあいている
ことを特徴とする乗員脚部拘束装置
【請求項2】
請求項1において、該縦セパレートパネルの下端部は、エアバッグが膨張した状態において、AM50ダミーの膝と足首との間の略中間に位置することを特徴とする乗員脚部拘束装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記小室が4〜6個設けられていることを特徴とする乗員脚部拘束装置。
【請求項4】
請求項1ないしのいずれか1項において、前記エアバッグが膨張完了した状態において、エアバッグの乗員側面に、前記縦セパレートパネルに沿って深さ20〜40mmの凹部が形成されることを特徴とする乗員脚部拘束装置。
【請求項5】
乗員脚部拘束装置に用いられるエアバッグであって、
乗員側の第1パネル及びそれと反対側の第2パネルを有するエアバッグにおいて、
該エアバッグ内の上部は、該第1パネル及び第2パネルに連結され、上下方向に延在した縦セパレートパネルによって4個以上の小室に区画されている乗員脚部拘束装置用エアバッグであって、
該エアバッグの下部は、下方ほど左右幅が小さくなっており、
該エアバッグ内の下部は、それぞれ左右方向に延在し、前記第1パネルと第2パネルとを連結する第1、第2及び第3の横セパレートパネルによって横長の第1、第2及び第3の室に区画されており、
該第1の室は最下段の該第1の横セパレートパネルの下側に位置し、
該第2の室は、該第1の横セパレートパネルと中段の該第2の横セパレートパネルとの間に位置し、
該第3の室は、該第2の横セパレートパネルと最上段の該第3の横セパレートパネルとの間に位置しており、
該第1、第2及び第3の横セパレートパネルの左右方向両端は、該エアバッグの左辺及び右辺から離隔しており、第1、第2及び第3の横セパレートパネルの左右両端と該エアバッグの下部の左右両側辺との間には、それぞれガス流通用のスペースがあいている
ことを特徴とする乗員脚部拘束装置用エアバッグ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の衝突時に乗員の脚部を拘束するための乗員脚部拘束装置に係り、特に前席乗員の脚部をエアバッグによって拘束する乗員脚部拘束装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の衝突時に前席(運転席又は助手席)乗員の脚部の前方にエアバッグを膨張させて乗員の脚部を拘束するようにした乗員脚部拘束装置のエアバッグとして、乗員側の第1パネルと、インストルメントパネル側の第2パネルとを縫合したものが用いられている。特許文献1〜3には、第1パネルと第2パネルとを布材よりなるテザーで連結してエアバッグの膨張厚みを規制したエアバッグが記載されている。
【0003】
特許文献1〜3のエアバッグにあっては、テザーは車体左右方向(以下、単に「左右方向」という。)に延在しており、エアバッグの最上部には、エアバッグの左端側から右端側まで連続した室が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−337642
【特許文献2】特開2003−182504
【特許文献3】特開2005−29102
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、自動車が斜突(斜め衝突)又はオフセットバリア衝突したときに乗員脚部を拘束するのに好適な乗員脚部拘束装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の乗員脚部拘束装置は、自動車の前席乗員の脚部の前方に膨張するエアバッグと、該エアバッグの下部にガスを供給して該エアバッグを膨張させるためのインフレータとを有し、該エアバッグは、乗員側の第1パネル及びそれと反対側の第2パネルを有する乗員脚部拘束装置において、該エアバッグ内の上部は、該第1パネル及び第2パネルに連結され、上下方向に延在した縦セパレートパネルによって4個以上の小室に区画されていることを特徴とするものである。
【0007】
該縦セパレートパネルの下端部は、エアバッグが膨張した状態において、AM50ダミーの膝と足首との間の中間付近に位置することが好ましい。
【0008】
本発明では、前記小室が4〜6個設けられていることが好ましい。
【0009】
前記小室の下側は、エアバッグの左端側から右端側まで連続した連続室となっていることが好ましい。
【0010】
前記小室と前記連続室とはエアバッグの左右方向に延在した横セパレートパネルによって区画されており、該横セパレートパネルに設けられた開口を通って前記連続室から各小室にガスが流入可能となっていることが好ましい。
【0011】
前記エアバッグが膨張完了した状態において、エアバッグの乗員側面に、前記縦セパレートパネルに沿って深さ20〜40mmの凹部が形成されることが好ましい。
【0012】
本発明のエアバッグは、乗員脚部拘束装置に用いられるエアバッグであって、乗員側の第1パネル及びそれと反対側の第2パネルを有するエアバッグにおいて、該エアバッグ内の上部は、該第1パネル及び第2パネルに連結され、上下方向に延在した縦セパレートパネルによって4個以上の小室に区画されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の乗員脚部拘束装置を搭載した自動車が衝突すると、エアバッグが乗員前方に膨張展開して乗員脚部が受け止められる。自動車が斜突又はオフセットバリア衝突した場合、乗員脚部特に膝は斜め前方に動こうとする。本発明のエアバッグの上部は縦セパレートパネルによって4個以上の小室に区画されている。この縦セパレートパネル部分のエアバッグ厚さは小室の最大厚さよりも小さく、エアバッグの乗員側の面に、上下方向に延在する凹部が形成される。この凹部に乗員脚部が係合することにより、乗員の膝の斜め前方への動きが抑制される。
【0014】
本発明では、小室の下側に、エアバッグの左端側から右端側まで連続した連続室を形成することにより、エアバッグが左右方向に素早く膨張する。
【0015】
各小室とこの連続室とを区間する横セパレートパネルに開口を設け、連続室から各小室にガスを流入させるように構成した場合、各小室の膨張が均等化する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態に係る乗員脚部拘束装置の作動状態を示す自動車前後方向の縦断面図である。
図2図1のII−II線矢視図である。
図3図2のIII−III線断面図である。
図4図2のIV−IV線断面図である。
図5図2のV−V線断面図である。
図6図2のVI−VI線断面図である。
図7】第3の横セパレートパネルの斜視図である。
図8】第2の横セパレートパネルの斜視図である。
図9図1のIX視の断面斜視図である。
図10】横セパレートパネルの別例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1〜9を参照して実施の形態について説明する。
【0018】
この乗員脚部拘束装置1は、自動車の助手席前方の内装ボード2の下向き部分に設置されている。この内装ボード2はダッシュボード7の下方に設置されている。
【0019】
この乗員脚部拘束装置1は、内装ボード2の裏側に配置されたケース3と、折り畳まれて該ケース3内に収納されたエアバッグ4と、このエアバッグ4を膨張させるインフレータ5とを有する。ケース3の前面は、リッド(図示略)によって覆われている。このリッドには、エアバッグ4が膨張するときに開裂するテアライン(図示略)が設けられている。ケース3はブラケット(図示略)を介して車体側メンバに固定されている。
【0020】
エアバッグ4は、乗員側の第1パネル11と、内装ボード2側の第2パネル12とを有する。これらのパネル11,12の周縁部が線状の縫合部13によって結合され、袋状となっている。
【0021】
エアバッグ4内の下部は、左右方向に延在する第1〜第3のセパレートパネル21,22,23によって横長の室31,32,33に区画されている。各室31〜33は、エアバッグ4の左端から右端まで連続した連続室となっている。最も下側の室31内にインフレータ5が設置されているが、インフレータはエアバッグ外に設置されてもよい。
【0022】
エアバッグ4内の上部は、上下方向に延在した縦セパレートパネル41,42,43,44によって小室51,52,53,54,55に区画されている。
【0023】
横セパレートパネル21〜23は、一方の長側辺部が第1パネル11又は第2パネル12に縫合糸25によって縫合されている。横セパレートパネル21〜23の他方の長側辺部同士は、縫合糸26によって縫合されている。なお、このように2枚の横セパレートパネルを連結して用いる代りに、図10の横セパレートパネル23Aのように、1枚の基布よりなる横セパレートパネルを用いてもよい。縦セパレートパネル41,42,43,44も同様に1枚の基布よりなるパネルを用いてもよい
【0024】
横セパレートパネル21〜23の左右方向両端はエアバッグ4の左辺及び右辺よりも若干離隔しており、横セパレートパネル21〜23の左右両端とエアバッグ4の下部の左右両側辺との間には、ガス流通用のスペース27,28,29があいている。
【0025】
横セパレートパネル23のうち少なくとも一方には、最も上側の室(連続室)33と小室51〜55とを連通する開口23aが設けられている。左端側の小室51と右端側の小室55は、スペース29によっても室33に連通している。なお、左端側の小室51及び右端側の小室55は、スペース29のみによって室33に連通するように、開口23aを3個だけ設けてもよい。
【0026】
縦セパレートパネル41〜44は、一方の長側辺部が第1パネル11又は第2パネル12に縫合糸45によって縫合されている。縦セパレートパネル41〜44の他方の長側辺部同士は、縫合糸46によって縫合されている。
【0027】
エアバッグ4が膨張完了した状態において、縦セパレートパネル41〜44の下端は、座席80に座った状態のAM50ダミー81の膝Nと足首(アンクル)Cとの中間付近の高さに位置する。具体的には、横セパレートパネル23は、膝Nと足首Cとの中間点に対し上下に±100mm特に±50mmの範囲に位置することが好ましい。
【0028】
この実施の形態では、内装ボード2側の第2パネル12のうち、下から2番目及び3番目の室32,33に臨む部分にそれぞれタック部60が形成されている。タック部60は、パネル12をつまみ、縫合糸61でつまんだ部分を縫合することにより形成されている。
【0029】
エアバッグ4には、ベントホールが設けられてもよい。
【0030】
このように構成された乗員脚部拘束装置1を備えた自動車が衝突すると、インフレータ5が作動してガスが噴出し、エアバッグ4が膨張を開始する。エアバッグ4の膨張開始に伴って、リッドが開放し、エアバッグ4が車両室内に広がり出し、内装ボード2の前面に沿って上方へ展開する。
【0031】
この乗員脚部拘束装置1にあっては、エアバッグ4内の下部が室31〜33に区画されており、まず最も下側の室31が膨張を開始する。この場合、殆ど全てのガス圧が室31の膨張圧として作用し、室31が素早く膨張する。室31の膨張後、各室32,33が順次に内装ボード2に沿って膨張する。
【0032】
室31〜33を区画形成する横セパレートパネル21〜23は左右方向に直線状に延在しており、エアバッグ4の下部は左右方向に素早く膨張する。
【0033】
この実施の形態では、エアバッグ4の下部の左右幅が上部の左右幅よりも小さくなっているため、エアバッグ4の下部が早期に膨張する。
【0034】
また、この実施の形態では、エアバッグ4の下部の内装ボード2側にタック部60が設けられているので、エアバッグ4は内装ボード2に沿って湾曲するように膨張する。
【0035】
室33内のガスがスペース29及び開口23aを通って各小室51〜55に供給され、各小室51〜55が膨張する。エアバッグ4は、乗員の膝よりも若干上方にまで膨張展開する。このように膨張したエアバッグ4によって乗員の脚部が拘束される。
【0036】
この実施の形態では、エアバッグ4の上部が縦セパレートパネル41〜44によって小室51〜55に区画されている。縦セパレートパネル41〜44部分においてはエアバッグ4の膨張厚さTが小室51〜55の最大膨張厚さTに比べて小さい。そのため、エアバッグ4の乗員側には、縦セパレートパネル41〜44に沿って凹部70(図3,9)が形成される。乗員の膝Nがこの凹部70に係合することにより、膝Nの左右方向への移動が拘束される。従って、自動車が斜突したりオフセットバリア衝突したときに膝Nが斜め前方に動くことが抑制される。
【0037】
凹部70の深さTは10〜60mm特に20〜40mm程度が好ましい。小室51〜55の最大膨張厚さTは80〜120mm特に90〜110mm程度が好ましい。
【0038】
上記実施の形態では、エアバッグ4の上部に、縦セパレートパネル41〜44によって5個の小室51〜55が形成されているが、小室の数は4〜8個、特に4〜6個が好ましい。
【0039】
上記実施の形態では、エアバッグ4の下部に、3枚の横セパレートパネル21〜23によって3個の室(連続室)31〜33が形成されているが、この連続室の数は1、2又は4個以上であってもよい。なお、連続室の数は3〜5個が好ましい。
【0040】
上記実施の形態では、ケース3は内装ボード2の下向きの面に設けられているが、それよりも座席80側に設けられてもよい。
【0041】
上記実施の形態では、第1パネル11と第2パネル12とが別体となっているが、1枚のパネルを折り返し、一半側を第1パネルとし、他半側を第2パネルとしてもよい。
【0042】
本発明では、横セパレートパネル21〜23の一部を、パネルではなく、パネル11,21同士を直接に縫合した線状結合部によって代替してもよい。
【0043】
本発明の乗員脚部拘束装置は、助手席前方に設置されてもよく、運転席前方に設置されてもよい。
【0044】
上記説明は本発明の一例であり、本発明は上記以外の形態とされてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 乗員脚部拘束装置
2 内装ボード
4 エアバッグ
11 第1パネル
12 第2パネル
21〜23,23A 横セパレートパネル
23a 開口
31〜33 室
41〜44 縦セパレートパネル
51〜55 小室
70 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10