(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施形態]
以下、本発明の実施形態における燃料電池システム1、及び気体流量制限器について、
図1〜3を参照して説明する。本発明の実施形態に係る気体流量制限器は、燃料電池システム1に係る水蒸気流量制限部30に対応する。そのため、以下では、気体流量制限器として、水蒸気流量制限部30を説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池システム1を示す概略図である。
図2は、本発明の実施形態に係る気体流量制限器である水蒸気流量制限部30の一例を示す概略図である。
図3は、本発明の実施形態に係る気体流量制限器である水蒸気流量制限部30を示す図である。(a)は、水蒸気流量制限部30の平面図である。(b)は、(a)のA−A′線断面を示す図である。(c)は、水蒸気流量制限部30の底面図である。
【0019】
図1に示すように、燃料電池システム1は、燃料電池11と、燃焼器12と、改質器21と、蒸発器22と、水蒸気流量制限部30と、断熱壁部材40と、を備える。
【0020】
また、燃料電池システム1は、燃料ガス供給ラインL1と、水供給ラインL2(L21、L22、L23)と、改質ガス供給ラインL3と、空気供給ラインL4と、燃焼前オフガス排出ラインL5と、燃焼後オフガス排出ラインL6と、を備える。なお、「ライン」とは、流路、経路、及び管路等の総称である。
【0021】
[ラインの説明]
燃料ガス供給ラインL1においては、燃料ガス供給ラインL1の一端部は、都市ガス等の燃料ガスG1を供給可能な燃料ガス供給部(図示せず)に接続され、燃料ガス供給ラインL1の他端部は改質器21に接続されている。燃料ガスG1は、燃料ガス供給部から燃料ガス供給ラインL1を流通して、改質器21に供給される。
【0022】
水供給ラインL2は、蒸発器水供給ラインL21、上流水供給ラインL22、及び下流水供給ラインL23から構成されている。蒸発器水供給ラインL21の一端部は、水供給部としての水貯留部(図示せず)に接続され、蒸発器水供給ラインL21の他端部は、蒸発器22に接続されている。蒸発器水供給ラインL21の途中には、ポンプ51が接続されている。ポンプ51は、蒸発器22に改質水W1を供給するために、水貯留部からの改質水W1を加圧する。水貯留部内の改質水W1は、ポンプ51の駆動によって、水貯留部から蒸発器水供給ラインL21を流通して、蒸発器22へ供給される。
【0023】
上流水供給ラインL22においては、上流水供給ラインL22の一端部は、蒸発器22に接続され、上流水供給ラインL22の他端部は、水蒸気流量制限部30に接続されている。蒸発器22により蒸発された改質水W1(以下、「蒸発水W21」という)は、蒸発器22から上流水供給ラインL22を流通して、水蒸気流量制限部30へ供給される。
【0024】
下流水供給ラインL23においては、下流水供給ラインL23の一端部は、水蒸気流量制限部30に接続され、下流水供給ラインL23の他端部は、改質器21に接続されている。水蒸気流量制限部30を流通した蒸発水(以下、「蒸発水W22」という)は、水蒸気流量制限部30から下流水供給ラインL23を流通して、改質器21に供給される。
【0025】
したがって、上流水供給ラインL22と下流水供給ラインL23との間には、水蒸気流量制限部30が配置されている。上流水供給ラインL22は、水蒸気流量制限部30よりも蒸発水W21の上流側に配置され、下流水供給ラインL23は、水蒸気流量制限部30よりも蒸発水W21の下流側に配置されている。
【0026】
改質ガス供給ラインL3においては、改質ガス供給ラインL3の一端部は改質器21に接続され、改質ガス供給ラインL3の他端部は燃料電池11に接続されている。改質器21において生成される水素を含む改質ガスG2は、改質ガス供給ラインL3を流通して、燃料電池11に供給され、発電に用いられる。
【0027】
空気供給ラインL4においては、空気供給ラインL4の一端部は、酸素を含む空気A1を燃料電池11に供給するための空気供給部としてのブロワ(図示せず)及びフィルタ(図示せず)に接続されている。空気供給ラインL4の他端部は燃料電池11に接続されている。空気A1は、ブロワからフィルタを通過し、空気供給ラインL4を流通して、燃料電池11に供給される。
【0028】
燃焼前オフガス排出ラインL5(以下、「オフガス排出ラインL5」という)においては、オフガス排出ラインL5の一端部は、燃料電池11に接続され、オフガス排出ラインL5の他端部は、燃焼器12に接続されている。燃料電池11から排出された燃焼前オフガスG3は、オフガス排出ラインL5を流通して、燃焼器12に供給される。
【0029】
燃焼後オフガス排出ラインL6(以下、「オフガス排出ラインL6」という)においては、オフガス排出ラインL6の一端部は、燃焼器12に接続され、オフガス排出ラインL6の他端部は、屋外(図示せず)に開放されている。燃焼器12により燃焼された燃焼前オフガスG3(つまり、燃焼後オフガスG4)は、オフガス排出ラインL6を流通して、燃料電池システム1の外に排出される。
【0030】
[各装置の説明]
燃料電池11としては、固体酸化物型燃料電池(SOFC)が用いられる。燃料電池11は、燃料電池スタック(図示せず)を有している。燃料電池スタックは、複数の発電セル(図示せず)とセパレータ(図示せず)とを交互に積層することで形成される。
【0031】
発電セルは、アノードと、カソードと、アノードとカソードとの間に設けられた電解質層と、を有する。アノードは、ニッケル等から形成されている。
【0032】
燃料電池11は、改質器21から改質ガス供給ラインL3を介してアノードに供給される改質ガスG2と、空気供給ラインL4からカソードに供給される空気A1中の酸素とを反応させることにより、発電を行なうことができる。燃料電池11による発電時の温度である運転温度は、500℃〜1000℃程度である。燃料電池11によって発電された電気は、パワーコンディショナ(図示せず)に送られ、AC電圧に変換される。
【0033】
燃料電池11は、アノードからのオフガスであるアノードオフガス、及びカソードからのオフガスであるカソードオフガスを排出する。アノードオフガス(燃焼前オフガスG3)は、アノードガス(水素)を含んでいる。そのため、アノードガス(水素)を不活化するために燃焼器12によって燃焼処理を行う。
【0034】
燃焼されたアノードオフガス(つまり、燃焼後オフガスG4)、及びカソードオフガスは、燃焼器12の下流側に接続されたオフガス排出ラインL7を介して、燃料電池システム1の外に排出される。
【0035】
燃焼器12は、バーナーや炉等により構成される。オフガス排出ラインL5を通じて供給された燃焼前オフガスG3が燃焼されて、すなわち、アノードオフガス及びカソードオフガスが燃焼されて、高温の燃焼後オフガスG4が生成される。
【0036】
改質器21は、燃料ガス供給ラインL1から供給された燃料ガスG1及び水供給ラインL23から供給された蒸発水W2に基づいて、触媒上で、水素を含む改質ガスG2を生成する。改質器21によって生成された水素を含む改質ガスG2は、改質ガス供給ラインL3を介して燃料電池11へ供給される。改質器21の運転温度は、500℃から800℃程度である。
【0037】
蒸発器22は、蒸発器水供給ラインL21から供給された改質水W1を蒸発(気化)させる。蒸発器22により蒸発(気化)させられた改質水W1(蒸発水W21)は、上流水供給ラインL22を介して水蒸気流量制限部30に供給される。
【0038】
図2に示すように、本実施形態に係る燃料電池システム1では、ほぼ同一構成の3つの水蒸気流量制限部30(30a、30b及び30c)から、1つのユニットが構成されている。ユニットでは、3つの水蒸気流量制限部30(30a、30b、及び30c)が、蒸発水W21の上流側から下流側に向けて直列に接続されている。以下の説明において、蒸発水W21の最も上流側に配置されている水蒸気流量制限部を第1水蒸気流量制限部30cとする。そして、次に配置されている水蒸気流量制限部を第2水蒸気流量制限部30bとし、蒸発水W21の最も下流側に配置されている水蒸気流量制限部を第3水蒸気流量制限部30aとする。
なお、水蒸気流量制限部30(30a、30b、及び30c)の内部構成は実質的に同じであるため、以下の説明では、1つの水蒸気流量制限部30のみを説明する。
【0039】
次に、水蒸気流量制限部30の内部構成を説明する。なお、以下の説明では、蒸発器22から水蒸気流量制限部30に供給された蒸発水を「蒸発水W21」とし、水蒸気流量制限部30の内部を流通した蒸発水を「蒸発水W22」として、区別して説明する。
【0040】
図3(a)及び(b)に示すように、水蒸気流量制限部30は、円筒部31と、流量調整体32と、内面壁部33と、付勢部材35と、付勢部材支持部36と、を有している。
【0041】
図3(a)及び(b)に示すように、円筒部31は、中空の筒状の部材から構成されている。また、
図3(b)に示すように、円筒部31の内部には、流量調整体32、内面壁部33、付勢部材35、及び付勢部材支持部36が収容されている。本実施形態における円筒部31の直径は、水供給ラインL2(L21、L22、L23)の直径と同程度の大きさである。
【0042】
図3(b)に示すように、内面壁部33は、上流水供給ラインL22の内面に形成されている流通空間において、この流通空間を流通する蒸発水W21の流れを阻害するように設けられている。具体的には、内面壁部33は、環状且つ板状の部材から構成され、上流水供給ラインL22の内面から、円筒部31の軸方向に直交するように流通空間に突出する。内面壁部33の外周は、上流水供給ラインL22の内面の周方向に沿って一周するように設けられている。
【0043】
内面壁部33の中央部分には、円筒部31及び内面壁部33と同心円状に、円筒部31の軸方向に直交する断面が円形状の中央開口33aがある。また、
図3(a)及び(b)に示すように、内面壁部33の周縁部には、中央開口33aを挟んで対向するように、貫通孔33bが2個ずつある。貫通孔33bにおける円筒部31の軸方向に直交する断面は、円形状である。
【0044】
図3(b)に示すように、付勢部材支持部36は、円盤状の部材から構成されている。付勢部材支持部36の外周は、上流水供給ラインL22の内面の周方向に沿って一周するように設けられている。付勢部材支持部36は、内面壁部33よりも蒸発水W21の流れの下流側に設けられている。
図3(c)に示すように、付勢部材支持部36には、円筒部31の軸方向に垂直な断面が扇形形状の開口部36bが、複数個ある。隣接する開口部36bと開口部36bとの間は、付勢部材支持部36の中心部から周縁部に向けて放射状に延びるリブ36aとなっている。蒸発水W21は、開口部36bを挿通して下流水供給ラインL23に供給される。
【0045】
図3(b)及び(c)に示すように、付勢部材35は、圧縮コイルバネから構成されている。付勢部材35は、円筒部31と同軸上に、付勢部材支持部36と流量調整体32の間に設けられている。具体的には、付勢部材35は、中央開口33aに挿通される。付勢部材35の一端部35aは、付勢部材支持部36の中心部に接続される。付勢部材35の他端部35bは、流量調整体32の中心部に接続されている。
【0046】
流量調整体32は、円盤状の部材から構成されている。流量調整体32の外周は、円筒部31の内周よりも小さく、中央開口33aの外周よりも大きい。流量調整体32は、内面壁部33よりも蒸発水W21の流れの上流側に設けられている。
【0047】
流量調整体32は、円筒部31及び内面壁部33と同軸的な位置関係となるように、円筒部31内に配置されている。また、流量調整体32は、付勢部材35からの付勢力により、蒸発水W21の流れに抗して蒸発水W21の流れの上流側に向かって付勢されている。つまり、流量調整体32は、付勢部材35からの付勢力を受けると共に、円筒部31及び内面壁部33と同軸的な位置関係を保ちながら、円筒部31内を移動することができる。
【0048】
このような状態で、流量調整体32の下端部32aが、内面壁部33の上端部33cに接触すると、流量調整体32は、これ以上、蒸発水W21の下流側に移動できなくなる。流量調整体32の直径は、このように下端部32aが上端部33cに接触した位置で、中央開口33aを塞ぎ、且つ、貫通孔33bを塞がない大きさとなっている。
【0049】
次に、流量調整体32の動作について説明する。
また、以下の説明では、初期状態(流量調整体32が蒸発水W21からの力を受けていない状態)における、流量調整体32の下端部32aの位置を、第2位置x2とする。また、下端部32aが内面壁部33の上端部33cと接触している場合における、下端部32aの位置を、第1位置x1とする。ここで「蒸発水W21からの力」とは、上流水供給ラインL22の流通空間において、蒸発水W21が膨張することにより生じる力」を示す。
【0050】
下端部32aの位置が第2位置x2である場合、上流水供給ラインL22の流通空間の流路断面積は、中央開口33aの断面積S1、及び貫通孔33bの断面積S2の合計値となっている。以下の説明では、これらの断面積の合計値(S1+S2)を第2の断面積とする。
【0051】
また、下端部32aの位置が第1位置x1である場合、流量調整体32により中央開口33aが閉じられてしまうため、上流水供給ラインL22の流通空間の流路断面積は、貫通孔33bの断面積S2となる。以下の説明では、この断面積を第1の断面積とする。第1の断面積S2は、第2の断面積(S1+S2)よりも小さい。
【0052】
先ず、上流水供給ラインL22を流通している蒸発水W21からの力が小さい(蒸発水W21の上流側から流量調整体32に与える蒸発水W21からの力が、付勢部材35が蒸発水W21の下流側から流量調整体32に与える力よりも小さい)と、流量調整体32の下端部32aの位置は、第2位置x2である。
【0053】
改質水W1が突沸すると改質水W1の体積が急激に膨張し、膨張の際に生じた衝撃波が上流水供給ラインL22に加わる。つまり、改質水W1が突沸すると蒸発水W21から上流水供給ラインL22に加わる力が急激に大きくなる。
蒸発水W21からの力が急激に大きくなると、下端部32aの位置は、第2位置x2から急に第1位置x1となる。
【0054】
下端部32aの位置が第1位置x1になると、流量調整体32が中央開口33aを塞ぎ、流通空間の流路断面積は、第2位置x2での第2の断面積(S1+S2)よりも小さい第1の断面積S2になる。
【0055】
この場合、蒸発水W21は、流路断面積が第1の断面積S2となっている上流水供給ラインL22を流通することになる。つまり、蒸発水W21による力が、水蒸気流量制限部30により緩和されることになる。流量が制限された蒸発水W22は、下流水供給ラインL23を介して、改質器21に供給される。
【0056】
また、改質水W1の突沸が収まっていくと、蒸発水W21から上流水供給ラインL22に加わる力が徐々に小さくなる。
蒸発水W21からの力が徐々に小さくなると、下端部32aの位置は、第1位置x1からゆっくりと第2位置x2に近づく。
下端部32aの位置が、第1位置x1から第2位置x2にゆっくりと近づくと、下端部32aと上端部33cとの距離は、徐々に広がる。そのため、蒸発水W21の流量は、下端部32aの位置が第1位置x1から第2位置x2に近づくに連れて、徐々に多くなる。
【0057】
また、
図2に示すように、ほぼ同一構成の3つの水蒸気流量制限部30(30a、30b、及び30c)から1つのユニットが構成されると、蒸発水W21からの力は、蒸発水W21の上流側に配置された水蒸気流量制限部から順次緩和される。
【0058】
このような構成によると、蒸発水W21からの力は、まず、第1水蒸気流量制限部30cにより緩和される。次に、第1水蒸気流量制限部30cにより緩和された力は、第2水蒸気流量制限部30bにより緩和され、最後に、第2水蒸気流量制限部30bにより緩和された力は、第3水蒸気流量制限部30aにより緩和される。このように、蒸発水W21からの力(圧力)は、第1水蒸気流量制限部30c、第2水蒸気流量制限部30b、及び第3水蒸気流量制限部30aを順番に挿通して、徐々に弱められる。
【0059】
本実施形態の燃料電池システム1及び気体流量制限器(水蒸気流量制限部30)によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態の燃料電池システム1は、燃料電池11と、触媒上で燃料G1と水とを反応させて、燃料電池11に供給される改質ガスG2を生成する改質器21と、改質器21へ水を供給可能な水供給部と、水供給部からの水を改質器21に向けて流通する流通空間を有する水供給ラインL2と、水供給ラインL2に接続され、水供給ラインL2に流通する水を気化させて水蒸気として改質器21へ供給する蒸発器22と、蒸発器22と改質器21との間の水供給ラインL2(L22、L23)の部分に接続された水蒸気流量制限部30と、を備えている。水蒸気流量制限部30は、水供給ラインL2において、水供給ラインL2の流通空間の流路断面積を第1の断面積S2とする第1位置x1と、水供給ラインL2の流通空間の流路断面積を第1の断面積S2よりも広い第2の断面積(S1+S2)とする第2位置x2と、の間で移動可能な流量調整体32と、流量調整体32(32a)を第2位置x2に配置させるように流量調整体32を付勢する付勢部材35と、を有する。
【0060】
また、水蒸気流量制限部30は、水供給ラインL2の流通空間において水蒸気の流れを阻害するように水供給ラインL2の内面から流通空間に突出すると共に水供給ラインL2の内面の周方向に沿って一周するように設けられた内面壁部33であって、中央開口33aを形成する内面壁部33と、内面壁部33に形成された貫通孔33bと、を有している。流量調整体32は、第1位置x1にあるときに貫通孔33bが開放されたままの状態で中央開口33aを塞ぎ、第2位置x2にあるときに中央開口33aを開放する。
【0061】
また、水蒸気流量制限部30は、水供給ラインL2の流通空間における、内面壁部33よりも下流側に設けられた付勢部材支持部36を有し、付勢部材35の一端部35aは、付勢部材支持部36に接続され、付勢部材35の他端部35bは、流量調整体32に接続されている。
【0062】
上記のような構成によれば、例えば、供給される改質水W1が少なくなることにより改質水W1が突沸しても、上流水供給ラインL2に配置されている水蒸気流量制限部30が、突沸による衝撃波を緩和することができる。つまり、水蒸気流量制限部30は、下流水供給ラインL23が破損される可能性を減少させることができる。また、水蒸気流量制限部30が、突沸による衝撃波を緩和することができるので、水蒸気流量制限部30の下流側に設けられている燃料電池11(スタック)が破損する可能性も減少させることができる。
【0063】
具体的には、改質水W1が突沸した場合、水蒸気流量制限部30の流量調整体32に加わる蒸発水W21からの力が急激に大きくなると(突沸による流量調整体32に対する蒸発器22側からの蒸発水W21からの力が、付勢部材35による流量調整体32に対する改質器21側からの付勢力よりも急激に大きくなる)と、流量調整体32が下流側の内面壁部33側に押されて移動し、流量調整体32の下端部32aが急に内面壁部33の上端部33cと接触する。つまり、流路断面積が、第2の断面積(S1+S2)から急に第1の断面積S2となる。すると、突沸の際に生じた衝撃波は、主に貫通孔33bを流通して、下流水供給ラインL23に流通される。
【0064】
すなわち、衝撃波が、流路断面積の小さい第1の断面積S2を流通することで、衝撃波の力が弱められる。そのため、下流水供給ラインL23が破損される可能性を減少させ、水蒸気流量制限部30の下流側に設けられている燃料電池11(スタック)が破損する可能性も減少させることができる。
【0065】
このように、本実施形態の水蒸気流量制限部30は、流量調整体32に対する蒸発水W21からの力に応じて、流路断面積を第2の断面積(S1+S2)と第1の断面積S2との間で変動させることにより、蒸発水W21からの衝撃波を緩和させることができる。したがって、蒸発水W21からの力を体積の大きさで緩和させるバッファと比較すると、水蒸気流量制限部30を用いたシステムの方が、システム全体の大型化を避けることができる。
【0066】
また、本実施形態の燃料電池システム1は、水蒸気流量制限部30を複数有している。更に、複数の水蒸気流量制限部30は、直列に接続されている。
【0067】
この構成によれば、突沸の際に生じた衝撃波を、複数の水蒸気流量制限部30(30a、30b及び30c)により、順次に緩和させることができる。例えば、突沸の際に生じた衝撃波を、第1水蒸気流量制限部30cで十分に緩和できなくても、第2水蒸気流量制限部30b及び第3水蒸気流量制限部30aで順次的に緩和させることができる。すなわち、複数の水蒸気流量制限部30a、30b及び30cを直列に接続する構成によると、下流水供給ラインL23が破損される可能性、及び、燃料電池11(スタック)が破損する可能性を、更に減少させることができる。
【0068】
また、気体が流通する気体流路を有する気体流通ラインに接続される気体流量制限器は、気体流通ラインにおいて、気体流通ラインの気体流路の流路断面積を第1の断面積S2とする第1位置x1と、気体流通ラインの気体流路の流路断面積を第1の断面積よりも広い第2の断面積(S1+S2)とする第2位置x2と、の間で移動可能な流量調整体32と、流量調整体32を第1位置x1に配置させるように流量調整体32を付勢する付勢部材35と、を備える。
【0069】
この構成によれば、気体流通ラインに接続される気体流量制限器は、気体流通ラインを流通する気体の力が急激に膨張しても、その膨張による衝撃波を緩和することができる。つまり、気体流量制限器を構成する水蒸気流量制限部30は、気体流通ラインが破損される可能性を減少させることができる。
【0070】
本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された技術的範囲において変形が可能である。例えば、
図2に示すように、3つの水蒸気流量制限部30(30a、30b、30c)から1つのユニットが構成されることに限定されない。また、水蒸気流量制限部30(30a、30b、30c)同士の接続の仕方は、直列に限定されない。例えば、水蒸気流量制限部30(30a、30b、30c)は、並列に接続されていてもよい。
【0071】
また、付勢部材35として圧縮コイルバネ(以下、「バネ」という)を採用し、且つ1つのユニットが複数の水蒸気流量制限部30(30a、30b、30c)から構成される場合、それぞれの水蒸気流量制限部30(30a、30b、30c)に配置させるバネとして、バネ乗数が同じバネ、又はバネ乗数が異なるバネが採用されていてもよい。バネ乗数の異なるバネが採用される場合、蒸発水W21の最も上流側に配置されている第1水蒸気流量制限部30cには、バネ乗数が最も高いバネを配置させ、第2水蒸気流量制限部30b及び第3水蒸気流量制限部30aには、第1水蒸気流量制限部30cに配置されるバネよりもバネ乗数の小さいバネを配置することができる。
【0072】
また、以上の説明では、水蒸気流量制限部30の円筒部31内に配置される付勢部材35を1個として説明した。しかし、水蒸気流量制限部30の円筒部31内に配置される付勢部材35は、複数個でもよい。
【0073】
また、以上の説明では、内面壁部33の周縁部に、中央開口33aを挟んで対向するように、貫通孔33bが2個ずつあるとして説明した。しかし、貫通孔33bの数及び配置は、これに限定されない。例えば、貫通孔33bは、1個でもよいし、複数個でもよい。また、貫通孔33bは、5個ずつ或いは7個ずつあってもよい。
【0074】
また、本実施形態の気体流量制限器は、燃料電池システム1の水蒸気流量制限部30として用いられることに限定されない。すなわち、気体流量制限器は、気体流通ラインにおいて、気体流通ラインの気体流路の流路断面積を第1の断面積とする第1位置と、気体流通ラインの気体流路の流路断面積を第1の断面積よりも広い第2の断面積とする第2位置と、の間で移動可能な流量調整体と、流量調整体を第1位置に配置させるように流量調整体を付勢する付勢部材と、を備えていればよい。