特許第6446912号(P6446912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6446912-ブレーク装置 図000002
  • 特許6446912-ブレーク装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6446912
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】ブレーク装置
(51)【国際特許分類】
   B28D 5/00 20060101AFI20181220BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
   B28D5/00 Z
   H01L21/78 T
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-171059(P2014-171059)
(22)【出願日】2014年8月26日
(65)【公開番号】特開2016-43638(P2016-43638A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】三谷 卓朗
(72)【発明者】
【氏名】金平 雄一
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−183644(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0175834(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 5/00
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脆性材料基板をあらかじめその一方主面側に形成されてなるスクライブラインからのクラック伸展によって分断するブレーク装置であって、
円形環状の枠体に粘着フィルムが張設されてなりかつ前記脆性材料基板の前記一方主面側を前記粘着フィルムに貼付させてなる基板保持部材が、前記枠体の形状に合わせて設けられた円形の開口部と前記枠体の内側端部とを一致させる態様にて上面に載置される支持テーブルと、
前記開口部において水平面内に移動自在とされてなるとともに、水平面内において互いに離隔して設けられてなり、分断に際し前記脆性材料基板の分断予定位置を互いの間隙の形成位置と一致させる態様にて前記粘着フィルムを介して前記脆性材料基板を下方から支持する一対のステージと、
前記一対のステージとともに水平面内に移動自在とされてなるとともに、前記基板保持部材が前記支持テーブル上に載置された状態において前記脆性材料基板の他方主面側の分断予定位置に当接可能に設けられた押刃と、
前記一対のステージのそれぞれに対し、水平面内において所定の角度をなして付設されてなり、前記一対のステージとともに前記脆性材料基板を下方支持する補助支持バーと、
を備えるブレーク装置であって、
前記補助支持バーが、前記水平面内において回動自在に設けられてなり、前記開口部に当接した場合には当該当接状態を保ちつつ付設された前記ステージの側に折りたたまれる、
ことを特徴とするブレーク装置。
【請求項2】
請求項に記載のブレーク装置であって、
前記補助支持バーが前記開口部と当接しない非当接状態にあるときには自然長となり、前記補助支持バーが前記当接状態にあるときに伸張するように設けられてなることによって前記補助支持バーの回動動作を拘束する拘束バネ、
をさらに備えることを特徴とするブレーク装置。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかに記載のブレーク装置であって、
前記脆性材料基板の直径をDとし、前記補助支持バーが前記開口部と当接しない非当接状態にあるときの分断対象位置から前記補助支持バーの先端までの水平面内における垂直距離をYとするとき、Y>D/2である、
ことを特徴とするブレーク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脆性材料基板を分断する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスや光デバイスなどの半導体デバイスは、通常、半導体基板などの円形もしくは矩形状の脆性材料基板である母基板の上に、ここのデバイスを構成する回路パターンを二次元的に繰り返し形成した後、当該デバイス形成後の母基板を分断して多数の素子(チップ)単位に個片化(チップ化)するというプロセスによって作製される。
【0003】
半導体基板などの脆性材料基板を分割(チップの個片化)する手法として、ストリートと呼ばれる分割予定ラインに円形ホイールなどの刃先もしくはレーザにて分割起点となるスクライブラインを形成し、その後ブレーク装置(分断装置)で脆性材料基板に対し3点曲げの手法にて曲げ応力を加えて分割起点からクラック(亀裂)を伸展させることによって基板を分断する態様がすでに公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
係る分断は、円形環状の枠体であるダイシングフレームに張設された粘着性を有するダイシングテープの被接着面に分断対象たる脆性材料基板を貼付固定した状態で行うのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−83821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
3点曲げ方式による分断は、通常、分断対象たる脆性材料基板の分断対象位置が2つの下刃の間に配置されるようにそれら2つの下刃によって脆性材料基板を支持した状態で、上方から分断対象位置に上刃(押刃)を当接させて押し込むことによってなされる。
【0007】
脆性材料基板を多数の個片に分割するには、当然ながら、脆性材料基板の端部近傍においても分断を行う必要があるので、2つの下刃を係る端部近傍に配置する必要がある。しかしながら、そのように2つの下刃を端部近傍に配置する場合、2つの下刃が支持する位置が脆性材料基板の重心位置がずれるために、脆性材料基板の自重によって粘着フィルムがたわんだり、脆性材料基板が水平姿勢を保てなくなったりし、結果として、分断を好適に行えない場合がある。
【0008】
なお、下刃のサイズを大きくすることで係る不具合が解決するようにもみられるが、ダイシングフレームを支持する領域と干渉するため、そのような対応を取ることはできない。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、端部近傍についても良好に脆性材料基板を分断することができるブレーク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、発明は、脆性材料基板をあらかじめその一方主面側に形成されてなるスクライブラインからのクラック伸展によって分断するブレーク装置であって、円形環状の枠体に粘着フィルムが張設されてなりかつ前記脆性材料基板の前記一方主面側を前記粘着フィルムに貼付させてなる基板保持部材が、前記枠体の形状に合わせて設けられた円形の開口部と前記枠体の内側端部とを一致させる態様にて上面に載置される支持テーブルと、前記開口部において水平面内に移動自在とされてなるとともに、水平面内において互いに離隔して設けられてなり、分断に際し前記脆性材料基板の分断予定位置を互いの間隙の形成位置と一致させる態様にて前記粘着フィルムを介して前記脆性材料基板を下方から支持する一対のステージと、前記一対のステージとともに水平面内に移動自在とされてなるとともに、前記基板保持部材が前記支持テーブル上に載置された状態において前記脆性材料基板の他方主面側の分断予定位置に当接可能に設けられた押刃と、前記一対のステージのそれぞれに対し、水平面内において所定の角度をなして付設されてなり、前記一対のステージとともに前記脆性材料基板を下方支持する補助支持バーと、を備えることを特徴とする。
【0011】
発明は、前記のブレーク装置であって、前記補助支持バーが、前記水平面内において回動自在に設けられてなり、前記開口部に当接した場合には当該当接状態を保ちつつ付設された前記ステージの側に折りたたまれる、ことを特徴とする。
【0012】
請求項の発明は、請求項に記載のブレーク装置であって、前記補助支持バーが前記開口部と当接しない非当接状態にあるときには自然長となり、前記補助支持バーが前記当接状態にあるときに伸張するように設けられてなることによって前記補助支持バーの回動動作を拘束する拘束バネ、をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
請求項の発明は、請求項1又は2のいずれかに記載のブレーク装置であって、前記脆性材料基板の直径をDとし、前記補助支持バーが前記開口部と当接しない非当接状態にあるときの分断対象位置から前記補助支持バーの先端までの水平面内における垂直距離をYとするとき、Y>D/2である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1ないし請求項の発明によれば、分断対象位置が脆性材料基板のどの位置であるかによらず、脆性材料基板を好適に分断することができる。
【0015】
特に、請求項および請求項の発明によれば、当接状態になったとしても、補助支持バーと支持テーブルとが干渉することはない。
【0016】
特に、請求項の発明によれば、補助支持バーが当接状態から非当接状態に復帰するときに、その姿勢を速やかに戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】脆性材料基板1を分断するブレーク装置100の概略的な構成を示す断面図である。
図2】ブレーク装置100において脆性材料基板1を分断しようとする際の要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、脆性材料基板1を分断するブレーク装置(分断装置)100の概略的な構成を示す断面図である。また、図2は、ブレーク装置100において脆性材料基板1を分断しようとする際の要部斜視図である。
【0019】
脆性材料基板1としては、例えば、半導体基板(シリコン基板など)やガラス基板などが例示される。半導体基板の一方主面には、所定のデバイス(例えば、CMOSセンサなど)用の回路パターンが形成されていてもよい。本実施の形態においては、図2に示すように、円板状の脆性材料基板1を分断の対象とする。
【0020】
脆性材料基板1を分断するにあたっては、まず、図1に示すように、あらかじめその一方主面の分断予定位置にスクライブラインSを形成しておいた脆性材料基板1を、ダイシングテープとも称される粘着フィルム2に貼付する。粘着フィルム2は、その一方主面が粘着面となっており、ダイシングフレームとも称される円形環状の枠体3に張設されてなる。すなわち、枠体3の内側が脆性材料基板1の貼付可能領域となっている。脆性材料基板1を貼付するにあたっては、スクライブラインSが形成されてなる側の主面を粘着フィルム2に当接させ、他方主面が上面となるようにする。以降、粘着フィルム2が枠体3に張設されたものを、基板保持部材と総称する。枠体3の材質としては、例えば、金属(アルミニウム、ステンレス鋼等)、樹脂などが例示される。
【0021】
なお、本実施の形態においては、円板状の脆性材料基板1を複数箇所で分断して短冊状もしくは格子状の多数の個片を得るものとする。それゆえ、図1に例示するように、それぞれの分断箇所にスクライブラインSが設けられてなるものとする。スクライブラインSは、脆性材料基板1の厚み方向に伸展するクラック(微小クラック)が脆性材料基板1の一方主面において線状に連続したものである。図1においては、複数の分断予定位置およびスクライブラインSがそれぞれ、図面に垂直な方向に延在する場合を想定している。
【0022】
スクライブラインSの形成には、公知の技術を適用可能である。例えば、超硬合金、焼結ダイヤモンド、単結晶ダイヤモンド等からなり、円板状をなし、かつ、外周部分に刃として機能する稜線を備えるカッターホイール(スクライブホイール)を、分断予定位置に沿って圧接転動させることによって、スクライブラインSを形成する態様であってもよいし、分断予定位置に沿ってダイヤモンドポイントにより罫描くことによってスクライブラインSを形成する態様であってもよいし、レーザ(例えば、紫外線(UV)レーザ)照射によるアブレーションや変質層の形成によってスクライブラインSを形成する態様であってもよいし、レーザ(例えば、赤外線(IR)レーザ)による加熱と冷却とによる熱応力によってスクライブラインSを形成する態様であってもよい。
【0023】
ブレーク装置100は、分断時に粘着フィルム2を介して脆性材料基板1の分断対象位置の近傍を下方から支持する一対のステージ101a、101bと、上方から分断対象位置に当接して脆性材料基板1を分断する押刃(ブレーク刃)102と、分断時に枠体3を下方から支持する支持テーブル103とを備える。
【0024】
具体的には、支持テーブル103には、枠体3の内径に略一致する円形状の開口部103hが設けられてなり、当該開口部103hの中央の位置に、一対のステージ101a、101bが、水平面内において間隙Gをなすようにわずかに離隔して設けられてなる。なお、ステージ101a、101bの上面の高さ位置と、支持テーブル103の上面の高さ位置は同じに設定されてなる。また、押刃102はステージ101a、101bの上方の位置において鉛直方向に昇降自在に配置されてなり、かつ、その延在方向(刃渡り方向)がステージ101a、101bのそれぞれの長手方向と一致させられてなる。より詳細には、押刃102の先端の鉛直下方に一対のステージ101a、101bのなす間隙Gが位置し、かつ、間隙Gの延在方向が押刃102の刃渡り方向と一致するようになっている。なお、押刃102としては、その刃渡り方向のサイズが脆性材料基板1の直径よりも大きいものを使用する。
【0025】
また、一対のステージ101a、101bと押刃102とは、図示しない駆動機構によって駆動されることにより、支持テーブル103の開口部103hの範囲内において、水平一軸方向に移動自在とされてなる。これにより、ブレーク装置100においては、脆性材料基板1の相異なる複数の箇所を順次に分断することが可能となっている。
【0026】
ブレーク装置100はさらに、補助支持バー104と、拘束バネ105とを備える。
【0027】
補助支持バー104は、一対のステージ101a、101bのそれぞれに、水平方向に延在する態様にて付設されてなる。補助支持バー104は略棒状をなしており、その一方端側が、取付回動部104aによってステージ101a、101bに対し水平面内で回動可能に取り付けられてなる。また、その他方端側には、当接部104bが設けられてなる。当接部104bは、ステージ101a、101bの移動に伴って補助支持バー104が水平面内を移動した結果として、支持テーブル103において開口部103hをなしている端部103eに補助支持バー104が当接することとなる場合に、実際に端部103eと当接する部位として設けられてなる。当接部104bは、ローラーやプーリーなどによって水平面内において回転自在に設けられるのが好適である。また、補助支持バー104の上面の高さ位置は、ステージ101a、101bの上面の高さ位置と同じにされてなる。係る補助支持バー104は、ステージ101a、101bによる脆性材料基板1の下方支持を補助するために設けられてなる。
【0028】
一方、拘束バネ105は、取付回動部104aと補助支持バー104の当接部104bの近傍との間に設けられてなる。拘束バネ105は、補助支持バー104の水平面内における回動動作を拘束するために設けられてなる。
【0029】
なお、ステージ101aに付設されてなる補助支持バー104およびこれに付随する拘束バネ105と、ステージ101bに付設されてなる補助支持バー104およびこれに付随する拘束バネ105とは、互いに点対称の関係に配置されてなる。
【0030】
より詳細には、補助支持バー104は、当接部104bが開口部103hの端部103eと当接していない状態(非当接状態)において、対応するステージ101a、101bに対し所定の角度α(鋭角)をなして水平方向に延在するように、設けられてなる。加えて、拘束バネ105は、係る非当接状態において自然長となるように設けられてなる。これにより、非当接状態においては、補助支持バー104の姿勢は略一定に保たれるようになっている。なお、図1においては、2つの補助支持バー104がともに非当接状態にある場合を例示している。
【0031】
ただし、補助支持バー104および拘束バネ105は、脆性材料基板1の直径をDとするとき、非当接状態にあるときの分断対象位置(押刃102の配置位置)から当接部104bの先端までの水平面内における垂直距離Yが、Y>D/2をみたすように、設けられてなる。
【0032】
一方、当接部104bが開口部103hの端部103eと当接している状態(当接状態)においては、補助支持バー104の水平姿勢はステージ101a、101bの位置によって異なるものとなるが、その際に補助支持バー104と対応するステージ101a、101bとのなす角度βは、非当接状態における両者のなす角度αよりも小さくなる。いわば、当接状態においては、補助支持バー104がステージ101aあるいは101bにお側に折りたたまれているということもできる。係る折りたたみ状態が実現されることにより、当接状態になったとしても、補助支持バー104と支持テーブル103とが干渉することはない。なお、図2においては、一方の(実線で図示してなる)補助支持バー104が当接状態にあり、他方の(破線で図示してなる)補助支持バー104が非当接状態にある場合を例示している。ただし、図2においては、図示の便宜上、押刃102は省略している。
【0033】
また、係る当接状態においては、拘束バネ105が補助支持バー104の姿勢に応じて伸張する。このときの拘束バネ105の復元力は、補助支持バー104に対し、その姿勢を元に(非当接状態の時の姿勢に)戻すための付勢力として作用する。係る態様にて付勢力が作用していることから、ブレーク装置100においては、係る当接状態から非当接状態に移行(復帰)する際の補助支持バー104の姿勢変化が、速やかになされるようになっている。
【0034】
さらにまた、ブレーク装置100には、一対のステージ101a、101bによって形成されてなる間隙Gの下方に、観察用のカメラ110が備わっている。カメラ110は、図1において矢印ARにて示すように、間隙Gを通じて上方を撮像可能とされてなる。ブレーク装置100においては、係るカメラ110の撮像画像に基づいて、分断の際の一対のステージ101a、101bおよび押刃102の配置位置を調整するようになっている。
【0035】
以上のような構成を有するブレーク装置100において脆性材料基板1を分断するにあたっては、まず、脆性材料基板1を貼付してなる基板保持部材を、脆性材料基板1を上側とした姿勢で、貼付可能領域と支持テーブル103の開口部103hとが一致するように(開口部と枠体3の内側端部とが一致するように)、支持テーブル103上に載置固定する。そして、係る態様にて基板保持部材を載置した状態で、最初の分断を行う位置に設けられたスクライブラインSの水平位置が、一対のステージ101a、101bのなす間隙Gの位置と一致するように、一対のステージ101a、101bおよび押刃102の配置位置を調整する。係る調整には、カメラ110による撮像画像が用いられる。
【0036】
一対のステージ101a、101bおよび押刃102の配置位置が調整されると、押刃102を上方からスクライブラインSの形成位置に向けて下降させてその先端を脆性材料基板1に当接させ、さらに押刃102を押し込むように下降させる。これにより、一対のステージ101a、101bが下刃となり、押刃102が上刃となった3点曲げの状態が実現され、スクライブラインSから基板厚み方向にクラックが伸展して、脆性材料基板1が分断される。
【0037】
係る態様にて一の分断対象位置に対する分断が終了すると、引き続き、次の分断対象位置における分断を行う。具体的には、基板保持部材の載置固定状態を保ったまま、次の分断対象位置に設けられたスクライブラインSの水平位置が、一対のステージ101a、101bのなす間隙Gの位置と一致するように、一対のステージ101a、101bおよび押刃102の配置位置を調整する。以降、全ての分断対象位置における分断が終了するまで、これを繰り返す。
【0038】
このとき、例えば図1に示すように、脆性材料基板1の中央部分近傍が分断対象位置である場合(中央部分近傍に形成されてなるスクライブラインSのところで分断を行う場合)には、一対のステージ101a、101bのそれぞれに付設する補助支持バー104の水平姿勢は同じである。具体的には、2つの補助支持バー104はともに開口部103hの端部103eとは非接触な状態にある。係る場合においては、脆性材料基板1は、一対のステージ101a、101bのみならず、それぞれに付設された補助支持バー104によっても、粘着フィルム2を介して下方支持された状態となっている。よって、分断に際して、脆性材料基板1は安定的に支持されるようになっている。
【0039】
一方、例えば図2に示すように、脆性材料基板1の端部近傍が分断対象位置となる場合には、一対のステージ101a、101bを当該分断対象位置に合わせて開口部103hの端部103eの近傍に配置する必要がある。図2においてはステージ101bが端部103eに近接している場合を例示している。係る場合、ステージ101bに付設されてなる補助支持バー104は端部103eと当接し、折りたたまれた状態となっており、支持テーブル103との干渉は生じていない。一方、他方のステージ101aに付設されてなる補助支持バー104は、非当接状態を保って脆性材料基板1を下方支持している。上述したように、補助支持バー104は、Y>D/2なる関係をみたすように設けられてなることから、一対のステージ101a、101bの配置位置が脆性材料基板1の重心位置である中心位置からずれているにもかかわらず、脆性材料基板1は、分断に際し安定的に支持されるようになっている。
【0040】
なお、当接状態にある場合、一対のステージ101a、101bの配置位置によって補助支持バー104の水平姿勢は変化し、これによって端部103eにおける当接部104bの当接位置も変化するが、上述のように当接部104bが回転自在に設けられてなる場合、係る当接位置の変位は当接部104bが端部103eに当接転動することによってなされるので、補助支持バー104の水平姿勢の変化も、滑らかになされることとなる。
【0041】
ブレーク装置が係る補助支持バー104を備えていない場合、図2の場合のように一対のステージ101a、101bが開口部103hの端部103eの近傍に位置した場合、脆性材料基板1の支持バランスが崩れ、ステージ101aもしくは101bから遠ざかった部分において粘着フィルム2が脆性材料基板1の自重によってたわんでしまったり、さらにはその影響で、分断対象位置の辺りにおいて脆性材料基板1が粘着フィルム2から浮き上がってしまったりする不具合が生じることがある。また、係る浮き上がりが生じることで、カメラ110による撮像の際に焦点が合わなくなり、位置調整が行えないなどの不具合が生じることもある。
【0042】
これに対し、本実施の形態に係るブレーク装置100においては、補助支持バー104を備えることで、分断対象位置がどこであるかによらず、脆性材料基板1は安定的に下方支持されるので、全ての分断対象位置において、脆性材料基板1を好適に分断することができる。
【0043】
以上、説明したように、本実施の形態によれば、脆性材料基板を分断するブレーク装置において下刃となる一対のステージに補助支持バーを付設し、分断に際して脆性材料基板をステージのみならず補助支持バーによっても下方支持するようにすることで、分断対象位置が脆性材料基板のどの位置であるかによらず、脆性材料基板を好適に分断することができる。また、補助支持バーを、その一方端部が周囲に当接した場合にステージの側に折りたたまれるように設けておくとともに、係る当接状態において伸張するバネを補助支持バーに付設しておくことで、補助支持バーが当接状態から非当接状態に復帰するときに、その姿勢を速やかに戻すことができる。
【符号の説明】
【0044】
1 脆性材料基板
2 粘着フィルム
3 枠体
100 ブレーク装置
101a、101b ステージ
102 押刃
103 支持テーブル
103e (支持テーブルの開口部の)端部
103h (支持テーブルの)開口部
104 補助支持バー
104a 取付回動部
104b 当接部
105 拘束バネ
110 カメラ
G (ステージの)間隙
S スクライブライン
図1
図2