特許第6447002号(P6447002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6447002
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】回路遮断器
(51)【国際特許分類】
   H01H 73/18 20060101AFI20181220BHJP
   H01H 9/36 20060101ALI20181220BHJP
   H01H 9/46 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
   H01H73/18 B
   H01H9/36
   H01H9/46
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-217036(P2014-217036)
(22)【出願日】2014年10月24日
(65)【公開番号】特開2016-85831(P2016-85831A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 修平
(72)【発明者】
【氏名】恩地 俊行
(72)【発明者】
【氏名】山内 芳准
【審査官】 内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−128777(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102011089234(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/30 〜 9/52
H01H 33/00 〜 33/26
H01H 69/00 〜 69/01
H01H 71/00 〜 83/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点が設けられた固定接触子と、
前記固定接点に接触可能な可動接点が設けられた可動接触子と、
開極動作時に前記固定接点と前記可動接点との間で生じたアークが移動することにより複数のアークに分割するアーク分割部分を有する中間電極と、
各々が一方向に所定の間隔を置いて配列された複数の磁性グリッドを有し、前記アーク分割部分により分割された後のアークを個々に消弧する複数の消弧装置と、
開極動作後の前記可動接触子の先端側から前記複数の消弧装置のうちの第1の消弧装置に向かって延在し、かつ前記可動接触子と同電位に接続された第1のアークランナーと、
前記固定接触子の固定接点が設けられた部分から前記複数の消弧装置のうちの前記第1の消弧装置と隣り合う第2の消弧装置に向かって延在する第2のアークランナーと、
を備え、
前記中間電極は、
前記アーク分割部分から前記第1の消弧装置に向かって延在する第1の分岐部分と、
前記アーク分割部分から前記第2の消弧装置に向かって延在する第2の分岐部分と、
を更に備え、
前記アーク分割部分は、開極動作時に前記固定接点と前記可動接点との間で生じた前記アークの長手方向において互いに離間して重畳するように前記消弧装置側とは反対側で一体に形成された第1の重畳部及び第2の重畳部を有し、
前記第1及び第2の重畳部の各々は、基部と、互いに離間して前記基部から前記基部の前記消弧装置側とは反対側に向かって延在する一対の第1及び第2脚部とを有し、
開極動作時に前記可動接触子の先端側が前記一対の第1及び第2脚部の間を通過し、
前記第1の分岐部は、前記第1の重畳部の基部に前記第1脚部側で連結され、
前記第2の分岐部は、前記第2の重畳部の基部に前記第2脚部側で連結されていることを特徴とする回路遮断器。
【請求項2】
前記第1重畳部と前記第2重畳部との間には、絶縁性材質が介在されていることを特徴とする請求項1に記載の回路遮断器。
【請求項3】
前記アーク分割部分は、磁性材料で形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の回路遮断器。
【請求項4】
前記第1のアークランナーの前記第1の消弧装置側の先端と、前記第1の分岐部分の前記第1の消弧装置側の先端とは、前記第1の消弧装置の前記複数の磁性グリッドの配列方向において互いに離間し、
前記第2の分岐部分の前記第2の消弧装置側の先端と、前記第2のアークランナーの前記第2の消弧装置側の先端とは、前記第2の消弧装置の前記複数の磁性グリッドの配列方向において互いに離間していることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の回路遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線用遮断器や漏電遮断器などの回路遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
負荷電路に流れる短絡電流、又は過負荷電流の過電流を遮断するために、配線用遮断器や漏電遮断器などの回路遮断器が用いられている。この種の回路遮断器においては、特許文献1に開示されているように、開極動作時に固定接触子の固定接点と可動接触子の可動接点との間に生じたアークを消弧装置で消弧するものが知られている。
図11乃至図13は、開極動作時に固定接触子の固定接点と可動接触子の可動接点との間に生じたアークを消弧装置で消弧する従来の回路遮断器の電流遮断部の一例を示す図であり、図11は要部断面図、図12は電流遮断部を抽出して示す斜視図、図13は電流遮断部を抽出して示す側面図である。
【0003】
従来の回路遮断器60は、図11に示すように、ケース61及びカバー62からなる一つの絶縁容器に、過電流を検知する過電流検知機構(図示せず)、それにより可動接触子を開極させる可動接触子開極機構(図示せず)、及び、短絡回路に流れる電流を急速に限流させて電流を遮断する電流遮断部50などを収めた構成になっている。
電流遮断部50は、図11乃至図13に示すように、固定接点51が設けられた固定接触子52と、固定接点51に接触可能な可動接点53が設けられた可動接触子54と、開極動作時に固定接触子52の固定接点51と可動接触子54の可動接点53との間に生じたアーク55(図12及び図13参照)を一方向に所定の間隔をおいて層状に配列された複数の磁性グリッド56で消弧する消弧装置57とを有している。
【0004】
従来の回路遮断器60において、負荷電流通電時には、固定接触子52と可動接触子54は閉じており、固定接点51及び可動接点53が接触し、導通状態が保たれている。OFF操作時には固定接点51と可動接点53は互いに離れるため、両者の間にはアーク55が発生する。
固定接点51と可動接点53との間に発生したアーク55は、やがて固定接触子52及び可動接触子54に流れる電流、アーク55、及び磁性グリッド56により作用する電磁力を受け、図12及び図13に示すように、磁性グリッド56の方向へ移動及び湾曲を始める。
【0005】
アーク55は磁性グリッド56に到達すると、各磁性グリッド56で分断され、これによって固定接触子52及び可動接触子54間に発生する電圧が一気に高まり、短絡回路に流れる電流は急速に限流され、電流が遮断される。
ここで、固定接触子52及び可動接触子54間に発生する電圧は、電流値、アーク55の径及び磁性グリッド56の枚数などから影響を受ける。磁性グリッド56の1区間当たりの電圧はおおよそ25V程度であり、例えば図13で示すように8枚の磁性グリッド56を一方向に配列した場合、固定接触子52及び可動接触子54間に発生する電圧はおおよそ225V程度となる。固定接触子52及び可動接触子54間に発生する電圧は電源電圧に対して逆起電力である。
【0006】
したがって、従来の回路遮断器60は、固定接触子52及び可動接触子54間に発生する電圧が高いほど短絡回路に流れる電流を素早く限流させることができ、事故電流の発生から遮断完了までを短くすることができる。
また、従来の回路遮断器60は、磁性グリッド56の枚数を増やすことにより、固定接触子52及び可動接触子54間に発生する電圧を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−243659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の回路遮断器60は、前述したように、過電流検知機構、可動接触子開極機構、及び、電流遮断部50などの各要素を1つの絶縁容器に収めたものであり、各要素が密に配置された構造をとっている。このため、従来の回路遮断器60は、絶縁容器内で電流遮断部50を収めることのできる高さに制約があり、一方向に配列できる磁性グリッド56の枚数に限りがあるため、小型で高い限流性能を持たせることは困難であった。
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、小型で高遮断性能の回路遮断器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る回路遮断器は、固定接点が設けられた固定接触子と、固定接点に接触可能な可動接点が設けられた可動接触子と、開極動作時に固定接点と可動接点との間で生じたアークが移動することにより複数のアークに分割するアーク分割部分を有する中間電極と、各々が一方向に所定の間隔を置いて配列された複数の磁性グリッドを有し、アーク分割部分により分割された後のアークを個々に消弧する複数の消弧装置とを備え、アーク分割部分は、開極動作時に固定接点と可動接点との間で生じたアークの長手方向において互いに離間して重畳するように消弧装置側とは反対側で一体に形成された第1の重畳部及び第2の重畳部を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、小型で高遮断性能(高限流性能)の回路遮断器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る回路遮断器の電流遮断部を抽出して示す斜視図である。
図2図1に示す電流遮断部において隔壁を非表示とした斜視図である。
図3図1に示す電流遮断部の平面図である。
図4図3のA−A線に沿った断面図である。
図5図3のB−B線に沿った断面図である。
図6図1に示す電流遮断部の側面図である。
図7図6のC−C線に沿った断面図である。
図8図6のD−D線に沿った断面図である。
図9図2に示す中間電極の概略構成を示す図((a)は平面図,(b)は(a)のE−E線に沿った断面図,(c)は(a)のF−F線に沿った断面図)である。
図10図1に示す電流遮断部の要部側面図である。
図11】従来の回路遮断器の電流遮断部を示す要部断面図である。
図12】従来の回路遮断器の電流遮断部を抽出して示す斜視図である。
図13】従来の回路遮断器の電流遮断部を抽出して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る回路遮断器について、図1乃至図10を参照して説明する。なお、図4図5図7及び図8に示す矢印Sは、後述するアークの移動方向を示すものである。
まず、回路遮断器の構成について説明する。
本発明の一実施形態に係る回路遮断器は、図11に示す従来の回路遮断器60と同様に、ケース及びカバーからなる一つの絶縁容器に、過電流を検知する過電流検知機構、それにより可動接触子を開極させる可動接触子開極機構、及び、短絡回路に流れる電流を急速に限流させて電流を遮断する電流遮断部1(図1及び図2参照)などを収めた構成になっている。
【0013】
電流遮断部1は、図1乃至図6に示すように、固定接点11が設けられた固定接触子12と、固定接点11に接触可能な可動接点13が設けられた可動接触子14とを備えている。
また、電流遮断部1は、開極動作時に固定接触子12の固定接点11と可動接触子14の可動接点13との間に生じたアーク20をその長手方向の中央部分において2つのアーク21,22に分割するアーク分割手段15と、このアーク分割手段15により分割された後の2つのアーク21,22を個々に消弧する第1の消弧装置16A及び第2の消弧装置16Bとを備えている。
【0014】
また、電流遮断部1は、第1の消弧装置16Aと第2の消弧装置16Bとを隔てる隔壁24を備えている。
本発明の一実施形態に係る回路遮断器は、開極動作時に固定接触子12の固定接点11と可動接触子14の可動接点13との間に生じたアーク20をアーク分割手段15で一旦2つのアーク21,22に分割し、アーク分割手段15で分割された2つのアーク21,22を2つの消弧装置16A,16Bで個々に消弧するように構成されている。
【0015】
図1乃至図6に示すように、第1及び第2の消弧装置16A,16Bの各々は、一方向に所定の間隔を置いて層状に配列された複数の磁性グリッド17を有し、この複数の磁性グリッド17により開極動作時に固定接触子12の固定接点11と可動接触子14の可動接点13との間に生じたアーク20を分断して消弧するように構成されている。ここで、複数の磁性グリッド17が配列された方向を磁性グリッド配列方向GLと呼ぶ。
【0016】
各磁性グリッド17は、図示していないが絶縁性の部材により所定の間隔を置いて固定配置されている。各磁性グリッド17は、詳細に図示していないが、グリッド基部から平行に一対のグリッド脚部が延在するU字形状又はV字形状で形成されている。各磁性グリッド17は磁性材料で形成されている。
第1及び第2の消弧装置16A,16Bの各々は、磁性グリッド配列方向GLに沿う方向から平面視したとき、互いに隣接して並列に配置されている。
【0017】
図5に示すように、固定接触子12は、固定接点11が設けられた第1の部分12aと、この第1の部分12aから第2の消弧装置16Bの複数の磁性グリッド17のうちの終段(図5において最下段)に位置する磁性グリッド17に向かって延在する第2の部分12bとを有している。第1の部分12aと第2の部分12bは一体に形成され、互いに電気的にかつ機械的に接続されている。固定接触子12は、前述のケースに固定され、図示していないが電源側端子と一体に形成、もしくは他の導電部材を介して電源側端子と電気的に接続されている。固定接触子12の第2の部分12bは、第2のアークランナーとして構成されている。固定接触子12は、導電性の材料で形成されている。
【0018】
図1乃至図4及び図6に示すように、可動接触子14は、一端側に固定接点11と接触する可動接点13を有し、図示していないが、他端側が前述のケースに回動可能に支持された絶縁物の可動接触子ホルダに回動自在に連結されており、接触スプリングにより固定接触子12に向かって付勢されている。図1乃至図6では、可動接触子14が開極した状態を示している。
図1乃至図6に示すように、アーク分割手段15は、中間電極18と、アークランナー19(第1のアークランナー)と、固定接触子12の第2の部分12b(第2のアークランナー)とを含む構成になっている。
【0019】
中間電極18は、開極動作時に固定接触子12の固定接点11と可動接触子14の可動接点13との間に生じたアーク20が移動することによりアーク20を2つのアーク21,22に分割するアーク分割部分18aを有している。このアーク分割部分18aは、開極動作後の固定接点11と可動接点13とを結ぶ方向において、固定接点11よりも可動接点13側に位置し、可動接点13よりも固定接点11側に位置している(図4及び図6参照)。また、中間電極18は、アーク分割部分18aから第1の消弧装置16Aの複数の磁性グリッド17のうちの終段(図4において最下段)に位置する磁性グリッド17に向かって延在する第1の分岐部分18bを有している。また、中間電極18は、アーク分割部分18aから第2の消弧装置16Bの複数の磁性グリッド17のうちの初段(図5において最上段)に位置する磁性グリッド17に向かって延在する第2の分岐部分18cを有している。これらのアーク分割部分18a、第1の分岐部分18b及び第2の分岐部分18cは一体に形成され、互いに電気的にかつ機械的に接続されている。中間電極18は、導電性の磁性材料で形成されている。
【0020】
この一実施形態において、第1の分岐部分18bは、図4に示すように、第1の消弧装置16Aの磁性グリッド配列方向GLに沿う方向から平面視したとき、その先端が第1の消弧装置16Aの終段に位置する磁性グリッド17と重畳している。また、第2の分岐部分18cは、図5に示すように、第2の消弧装置16Bの磁性グリッド配列方向GLにおいて、その先端が第2の消弧装置16Bの初段に位置する磁性グリッド17よりも外側に位置している。
【0021】
図1乃至図4及び図6に示すように、アークランナー19は、開極動作後における可動接触子14の先端側から第1の消弧装置16Aの複数の磁性グリッド17のうちの初段(図4において最上段)に位置する磁性グリッド17に向かって延在している。この一実施形態において、アークランナー19は、第1の消弧装置16Aの磁性グリッド配列方向GLに沿う方向から平面視したとき、一端側が中間電極18のアーク分割部分18aと重畳し、他端側が初段(最上段)に位置する磁性グリッド17と重畳している(図4及び図6参照)。アークランナー19は、第1のアークランナーとして構成されている。アークランナー19は、導電性の材料で形成されている。
【0022】
ここで、アークランナー19は、前述したように、開極動作後における可動接触子14の先端側から第1の消弧装置16Aの初段に位置する磁性グリッド17に向かって延在している。一方、中間電極18の第1の分岐部分18bは、前述したように、アーク分割部分18aから第1の消弧装置16Aの終段に位置する磁性グリッド17に向かって延在している。すなわち、アークランナー19の第1の消弧装置16A側の先端と、中間電極18の第1の分岐部分18bの第1の消弧装置16A側の先端は、図4及び図6に示すように、第1の消弧装置16Aの磁性グリッド配列方向GLにおいて互いに離間している。
【0023】
また、中間電極18の第2の分岐部分18cは、前述したように、アーク分割部分18aから第2の消弧装置16Bの初段に位置する磁性グリッド17に向かって延在している。一方、固定接触子12の第2の部分12bは、前述したように、固定接点11が設けられた第1の部分12aから第2の消弧装置16Bの終段に位置する磁性グリッド17に向かって延在している。すなわち、中間電極18の第2の分岐部分18cの第2の消弧装置16B側の先端と、固定接触子12の第2の部分12bの第2の消弧装置16B側の先端は、図5に示すように、第2の消弧装置16Bの磁性グリッド配列方向GLにおいて互いに離間している。
【0024】
中間電極18において、第1の分岐部分18bは、開極動作時に固定接点11と可動接点13との間に生じたアーク20をアーク分割部分18aで分割した後の2つのアーク21,22のうちのアーク21をアークランナー19とともに第1の消弧装置16Aに導くためのものである。第2の分岐部分18cは、開極動作時に固定接点11と可動接点13との間に生じたアーク20をアーク分割部分18aで分割した後の2つのアーク21,22のうちのアーク22を固定接触子12の第2の部分12b(第2のアークランナー)とともに第2の消弧装置16Bに導くためのものである。すなわち、一実施形態に係るアーク分割手段15は、開極動作時に固定接点11と可動接点13との間に生じたアーク20を2つのアーク21,22に分割するアーク分割機能(中間電極18のアーク分割部分18a)と、分割した後の2つのアーク21,22を2つの消弧装置16A,16Bにそれぞれ導くアーク導き機能(固定接触子12の第2の部分12b、中間電極18の第1及び第2の分岐部分18b,18c、アークランナー19)とを兼ね備えている。
【0025】
図1図4図7及び図8に示すように、隔壁24は、第1の消弧装置16Aと第2の消弧装置16Bとの間に設けられた第1の隔壁部分24aを有している。また、図1図5及び図7に示すように、隔壁24は、第2の消弧装置16Bの磁性グリッド配列方向GLにおいて中間電極18のアーク分割部分18aよりもアークランナー19側に位置し、第1の隔壁部分24aから中間電極18の第2の分岐部分18c及び第2の消弧装置16Bを囲むようにして設けられた第2の隔壁部分24bを有している。また、図4及び図8に示すように、隔壁24は、第1の消弧装置16Aの磁性グリッド配列方向GLにおいて中間電極18のアーク分割部分18aよりも固定接点11側に位置し、第1の隔壁部分24aから中間電極18の第1の分岐部分18b及び第1の消弧装置16Aを囲むようにして設けられた第3の隔壁部分24cを有している。隔壁24は絶縁性の材料で形成され、前述のケースに支持されている。
【0026】
図2図4乃至図6及び図9((a),(b),(c))に示すように、中間電極18のアーク分割部分18aは、開極動作時に固定接触子12の固定接点11と可動接触子14の可動接点13との間で生じたアーク20の長手方向において互いに離間して重畳するように第1及び第2の消弧装置16A,16B側とは反対側で一体に形成された第1の重畳部30b及び第2の重畳部30cを有する二重構造になっている。そして、第1の重畳部30bと第2の重畳部30cとの間には、第1の重畳部30b及び第2の重畳部30cで挟まれるようにして絶縁性材質35が介在されている。
【0027】
図9((a),(b),(c))に示すように、第1の重畳部30b及び第2の重畳部30cは、磁性グリッド配列方向GLに沿う方向から見た平面形状が、第1及び第2の消弧装置16A,16B側とは反対側に切欠き溝31をそれぞれ設けることで各々の基部32から平行に一対の脚部33,34が延在するU字形状或いはV字形状で形成されている。第1の重畳部30bは、図4及び図9に示すように、その基部32の脚部33側で第1の分岐部分18bの他端側と一体に連結されている。第2の重畳部30cは、図5及び図9に示すように、その基部32の脚部34側で第2の分岐部分18cの他端側と一体に連結されている。アーク分割部分18aは、開極動作時に可動接触子14の先端側が基部32及び一対の脚部33,34で囲まれた領域(切欠き溝31)を通過できるように構成されている。アーク分割部分18aは、第1の重畳部30bと第2の重畳部30cとが互いに重なり合うように第1及び第2の消弧装置16A,16B側とは反対側をコの字形状に折り曲げることで、容易に二重構造とすることができる。
【0028】
絶縁性材質35は、第1の重畳部30bと第2の重畳部30cとの間の絶縁を確保する目的で配置されており、この第1の重畳部30bと第2の重畳部30cとの間の絶縁が確保できれば紙のような薄いものでもよく、また、絶縁性の塗料などでもよい。絶縁性材質35としては、例えば樹脂やセラミックが用いられている。
次に、回路遮断器の動作について説明する。
【0029】
一実施形態に係る回路遮断器では、図示していない電流検知機構が過電流を検知した際、可動接触子開極機構が働き、可動接触子14が図1及び図4に示す開極方向に開極する。もしくは、短絡電流の通電により接点に作用する電磁反発力により可動接触子14が同様に開極する。その際、固定接触子12の固定接点11と可動接触子14の可動接点13との間に生じたアーク20は電磁力によって中間電極18のアーク分割部分18aの方向へ湾曲し、その中央部分が中間電極18のアーク分割部分18aに移動する。
【0030】
中間電極18のアーク分割部分18aに移動したアーク20は、このアーク分割部分18aで2つのアーク21,22に分割(分断)、すなわち可動接点13側(アーク分割部分18aよりも上側)のアーク21と、固定接点11側(アーク分割部分18aよりも下側)のアーク22に分断される(図1図2及び図6参照)。
中間電極18のアーク分割部分18aで分割された2つのアーク21,22のうち、可動接点13側のアーク21の上端(可動接点13側の端)21aは、アーク21に作用する電磁力により可動接触子14からアークランナー19に移動し、その後、図4に示すように、アークランナー19の表面を第1の消弧装置16Aに向かって走行する。また、アーク21の下端(中間電極18側の端)21bは、同様にアーク21に作用する電磁力により中間電極18のアーク分割部分18aから第1の分岐部分18bに移動し、その後、図4及び図7に示すように、第1の分岐部分18bの表面を第1の消弧装置16Aに向かって走行する。
【0031】
これにより、可動接点13側(上側)のアーク21は、図1図2及び図4に示すように、第1の消弧装置16Aまで導かれる。第1の消弧装置16Aに達したアーク21は、第1の消弧装置16Aの各磁性グリッド17により分断されるので、アークランナー19及び中間電極18間の電圧は急激に高まる。
一方、中間電極18のアーク分割部分18aで分割された後の2つのアーク21,22のうち、固定接点11側のアーク22の上端(中間電極18側の端)22aは、アーク22に作用する電磁力により中間電極18のアーク分割部分18aから第2の分岐部分18cに移動し、その後、図5に示すように、第2の分岐部分18cの表面を第2の消弧装置16Bに向かって走行する。また、アーク22の下端(固定接点11側)22bは、同様にアーク22に作用する電磁力により固定接触子12の固定接点11から固定接触子12の第2の部分12b(第2のアークランナー)に移動し、その後、図5及び図8に示すように、この第2の部分12bの表面を第2の消弧装置16Bに向かって走行する。
【0032】
これにより、固定接点11側(下側)のアーク22は、図2及び図5に示すように、第2の消弧装置16Bまで導かれる。第2の消弧装置16Bに達したアーク22は、第2の消弧装置16Bの各磁性グリッド17により分断されるので、中間電極18及び固定接触子12の間の電圧は急激に高まる。
ここで、隔壁24は、前述したように、第2の消弧装置16Bの磁性グリッド配列方向GLにおいて中間電極18のアーク分割部分18aよりもアークランナー19側に位置し、第1の隔壁部分24aから中間電極18の第2の分岐部分18c及び第2の消弧装置16Bを囲むようにして設けられた第2の隔壁部分24bを有している(図5及び図7参照)。これにより、開極動作時に中間電極18のアーク分割部分18aよりもアークランナー19側(中間電極18の上方)で発生した導電性ガスは第1の消弧装置16A側に移動する。したがって、中間電極18のアーク分割部分18aで分割された後の可動接点13側(上側)のアーク21は、アークランナー19及び中間電極18の第1の分岐部分18bを含む電極形状と、第2の隔壁部分24bとの作用により、より効果的に第1の消弧装置16Aに導かれることとなる。
【0033】
また、隔壁24は、前述したように、第1の消弧装置16Aの磁性グリッド配列方向GLにおいて中間電極18のアーク分割部分18aよりも固定接点11側に位置し、第1の隔壁部分24aから中間電極18の第1の分岐部分18b及び第1の消弧装置16Aを囲むようにして設けられた第3の隔壁部分24cを有している(図4及び図8参照)。これにより、開極動作時に中間電極18のアーク分割部分18aよりも固定接点11側(中間電極18の下方)で発生した導電性ガスは第2の消弧装置16B側に移動する。したがって、中間電極18のアーク分割部分18aで分割された後の固定接点11側(下側)のアーク22は、中間電極18の第2の分岐部分18c及び固定接触子12を含む電極形状と、第3の隔壁部分24cとの作用により、より効果的に第2の消弧装置16Bに導かれることとなる。
【0034】
このように構成された一実施形態に係る回路遮断器において、遮断時の電流の通電経路は、例えば可動接触子14から固定接触子12側へ流れる電流を遮断する場合は、アークランナー19、中間電極18、固定接触子12の順となり、固定接触子12及び可動接触子14間の電圧は、第1の消弧装置16Aと第2の消弧装置16Bとで発生した電圧の和となる。
【0035】
一実施形態に係る回路遮断器では、開極動作時に固定接触子12の固定接点11と可動接触子14の可動接点13との間に生じたアーク20を一旦2つのアーク21,22に分割し、並列配置された2つの消弧装置16A,16Bでそれぞれ電圧を発生させている。したがって、一実施形態に係る回路遮断器では、従来の回路遮断器と同様の電流遮断部の高さ寸法に、約2倍の磁性グリッド17を配置することができるようになり、アーク20の分断により発生する電圧も約2倍とすることができる。
【0036】
なお、一実施形態に係る回路遮断器では、これに限定されないが、磁性グリッド17の総枚数は14枚(磁性グリッド17により分断される区間は16区間)である。一方、図13に示す従来の回路遮断器60では、磁性グリッド56の総枚数は8枚(磁性グリッドにより分断される区間は9区間)である。したがって、一実施形態に係る回路遮断器は、従来の回路遮断器に対して、同一の電流遮断部1の高さ寸法で、開極動作時に固定接触子12及び可動接触子14間に発生する電圧として約1.8倍の電圧を得ることができる。すなわち、一実施形態に係る回路遮断器では、電源電圧に対して従来よりも1.8倍の高い起電力を得ることができるため、同一寸法でより高い遮断性能(限流性能)を得ることができる。
【0037】
さらに、一実施形態に係る回路遮断器は、上述したように、中間電極18のアーク分割部分18aが、互いに離間して重畳し、かつ第1及び第2の消弧装置16A,16B側とは反対側で一体化された第1の重畳部30b及び第2の重畳部30cを有する二重構造になっている。このため、分割された2つのアーク21,22とその間にあるアーク分割部分18aでは、図10に示すように、湾曲した通電経路38で電流が通電する。これにより、分割された2つのアーク21,22に鎖交する磁束39は、アーク自身による磁束に加えて、アーク分割部分18aを通電する電流による磁束となる。通電方向から、分割された2つのアーク21,22による磁束と、アーク分割部分18aを湾曲して流れる電流による磁束は同一方向となるため、分割された2つのアーク21,22に鎖交する磁束が高まり、アーク21,22に働く電磁力は増加する。このため、分割された2つのアーク21,22は高い駆動力を得ることができ、2つのアーク21,22を2つの消弧装置16A,16Bにそれぞれ確実に引き込む、すなわち確実に移動させることができる。
【0038】
ここで、中間電極18のアーク分割部分18aを本発明の一実施形態に係る回路遮断器とは異なる構造、例えば第1重畳部30bと第2の重畳部30cとが互いに接触して重なり合う構造や単層構造とした場合では、分割直後の2つのアーク21,22に鎖交する磁束は、アーク自身による磁束のみとなり、アーク21,22に働く電磁力は小さい。このため、通電電流によってはアーク分割部分18aにアークが停滞する可能性があり、回路遮断器の信頼性に影響する。
【0039】
これに対し、本発明の一実施形態に係る回路遮断器では、中間電極18のアーク分割部分18aが、互いに離間して重畳し、かつ第1及び第2の消弧装置16A,16B側とは反対側で一体化された第1の重畳部30b及び第2の重畳部30cを有する二重構造(コの字形状)になっているので、分割された2つのアーク21,22は高い駆動力を得ることができ、2つのアーク21,22を2つの消弧装置16A,16Bにそれぞれ確実に引き込むことができる。したがって、一実施形態に係る中間電極18のアーク分割部分18aとは異なる構造、例えば第1重畳部30bと第2の重畳部30cとが互いに接触して重なり合う構造や単層構造で中間電極18のアーク分割部分18aを構成した場合と比較して、回路遮断器の信頼性をより高めることができる。
【0040】
なお、遮断経路での電源電圧が低い場合には、固定接点11と可動接点13との間で生じたアーク20が消弧装置(16A,16B)側に向かうように、アーク20に対して駆動力を作用させる永久磁石を設けるようにしてもよい。
以上説明したように、本発明の一実施形態に係る回路遮断器は、開極動作時に固定接触子12の固定接点11と可動接触子14の可動接点13との間に生じたアーク20を中間電極18のアーク分割部分18aで一旦2つのアーク21,22に分割し、アーク分割部分18aで分割された2つのアーク21,22を、並列に配置された2つの消弧装置16A,16Bで個々に消弧するように構成されている。したがって、本発明の一実施形態に係る回路遮断器は、電流遮断部1の限られた高さ寸法内でより高い遮断性能を得ることができるので、小型で高遮断性能(高限流性能)を得ることができる。
【0041】
また、本発明の一実施形態に係る回路遮断器は、中間電極18のアーク分割部分18aが、互いに離間して重畳し、かつ第1及び第2の消弧装置16A,16B側とは反対側で一体化された第1の重畳部30b及び第2の重畳部30cを有する二重構造になっている。したがって、本発明の一実施形態に係る回路遮断器は、中間電極18のアーク分割部分18aで分割された2つのアーク21,22を2つの消弧装置16A,16Bにそれぞれ確実に引き込む、すなわち確実に移動させることができるので、第1重畳部30bと第2の重畳部30cとが互いに接触して重ね合う構造や単層構造とした場合と比較して信頼性をより高めることができる。この結果、本発明の一実施形態に係る回路遮断器は、小型で高遮断性能(高限流性能)を得ることができると共に、より高い信頼性を得ることができる。
【0042】
また、本発明の一実施形態に係る回路遮断器は、中間電極18のアーク分割部分18aが、第1の重畳部30bと第2の重畳部30cとの間に絶縁性材質35を介在させた構成になっているので、湾曲した通電経路38を安定して確保することができる。
また、本発明の一実施形態に係る回路遮断器は、中間電極18のアーク分割部分18aが磁性材料で形成されている。したがって、本発明の一実施形態に係る回路遮断器は、開極動作時に固定接触子12の固定接点11と可動接触子14の可動接点13との間で生じた、分割前のアーク20をアーク分割部分18aに引き込み易くすることができ、また、分割前のアーク20とアーク分割部分18aとが接触する箇所を中央付近とすることができるので、分割後の2つのアーク21,22を2つの消弧装置16A,16Bに更に引き込み易くすることができる。
【0043】
なお、上述した一実施形態では、開極動作時に固定接触子12の固定接点11と可動接触子14の可動接点13との間に生じたアーク20を一旦2つのアーク21,22に分割し、この分割した後の2つのアーク21,22を2つの消弧装置16A,16Bで個々に消弧する回路遮断器について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、開極動作時に固定接触子の固定接点と可動接触子の可動接点との間に生じたアークを一旦3つ以上のアークに分割し、この分割した3つ以上のアークを3つ以上の消弧装置で個々に消弧するようにしてもよい。アークを3つ以上に分割する手法としては、例えば2つに分割したアークをさらに分割するように多段で分割する方法がある。この場合においても、複数の消弧装置を並列に配置することにより、前述の実施形態と同様に、小型で高遮断性能(高限流性能)の回路遮断器を得ることができる。
【0044】
また、上述した一実施形態では、アーク分割機能とアーク導き機能とを兼ね備えた中間電極18を例に説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、アーク分割機能とアーク導き機能とをそれぞれ別の部材で構成してもよい。この場合においても、複数の消弧装置を並列に配置することにより、前述の実施形態と同様に、小型で高遮断性能(高限流性能)の回路遮断器を得ることができる。
【0045】
また、上述した一実施形態では、第1の重畳部30b及び第2の重畳部30cに切欠き溝31を設けることでアーク分割部分18aの平面形状をU字形状或いはV字形状とした場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、切欠き溝31を設けない形状、例えば第1及び第2の消弧装置16A,16B側とは反対側の辺が直線となる平面形状や第1及び第2の消弧装置16A,16B側とは反対側に角部が位置する多角形の平面形状でアーク分割部分18aを構成してもよい。
以上説明したように、本発明に係る回路遮断器は、小型で高遮断性を得ることができると共に、より高い信頼性を得ることができるという効果を有し、配線用遮断器や漏電遮断器などの回路遮断器に有用である。
【符号の説明】
【0046】
1…電流遮断部、11…固定接点、12…固定接触子、12a…第1の部分、12b…第2の部分(第2のアークランナー)、13…可動接点、14…可動接触子、15…アーク分割手段、16A…第1の消弧装置、16B…第2の消弧装置、17…磁性グリッド、18…中間電極、18a…アーク分割部分、18b…第1の分岐部分、18c…第2の分岐部分、19…アークランナー(第1のアークランナー)、20,21,22…アーク、24…隔壁、24a…第1の隔壁部分、24b…第2の隔壁部分、24c…第3の隔壁部分、30b…第1の重畳部、30c…第2の重畳部、31…切欠き溝、32…基部、33,34…脚部、35…絶縁性材質、38…通電経路、39…磁束
図1
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