(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筒状のインナーシェル、このインナーシェルの外周面を囲繞した筒状のアウターシェル並びにインナーシェル及びアウターシェル間に配されていると共に膨張黒鉛及び燐酸塩を含む吸音材を具備した筒状のシェル本体と、このシェル本体の一方の開口部を閉塞する入力側のアウタープレートと、シェル本体の他方の開口部を閉塞する出力側のアウタープレートと、入力側のアウタープレートを貫通するインレットパイプと、出力側のアウタープレートを貫通するアウトレットパイプとを具備しており、吸音材は、膨張黒鉛及び燐酸塩に加えて、燐酸を含有する自動車排気管用マフラ。
シェル本体の内部には、インレットパイプ及びアウトレットパイプを支持すると共に当該シェル本体の内部を複数個の室に仕切る中組みアッセンブリが収容されている請求項1に記載の自動車排気管用マフラ。
【背景技術】
【0002】
交通手段としての利便性の面から自動車の利用は年々多くなっており、この自動車の利用の増加に伴い排気ガスによる大気汚染と共に自動車エンジンによる騒音公害、自動車のリサイクル性についても大きな問題となっており、自動車の騒音公害に関しては、エンジン騒音とエンジンの排気騒音とに大別することができ、エンジン騒音については、エンジンをケーシングで囲繞することにより騒音の低減を図ることができ、エンジンの排気騒音については、排気通路中にマフラ(消音器)を装着することで騒音の低減を図ることができる。
【0003】
自動車エンジンから排出される排気ガスは、排気マニホールドから触媒コンバータに送られ、触媒コンバータでは、排気ガス中の有害成分が酸化及び還元反応により除去され、ついで上流側の排気管(フロントパイプ)を通じてサブマフラに送られ、このサブマフラでは、エンジンからの排気流に含まれる様々な周波数の音、耳障りで不快な高周波の音が取り除かれ、不快な高周波の音が取り除かれた排気流は、下流側の排気管を介して排気流中に含まれる低周波の音を取り除くメインマフラに送られ、その後、メインマフラに接続された排気管(テールパイプ)から大気中に排出される。
【0004】
排気通路に装着されるメインマフラとして、排気流中に含まれる低周波の音を取り除くべく、二重巻きされた鋼板の間にガラスウール又は玄武岩質ウール若しくはロックウール等の鉱物繊維又はカーボンファイバ等の吸音材又は遮音材を介在させたマフラ(消音器)が提案されている(特許文献1、特許文献2及び特許文献3)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自動車エンジンの高出力化、高速回転化に伴い、マフラ内に流入する排気流の速度が高くなっており、そのため速度及び圧力変動の激しい排気通路では、マフラ内で吸音材又は遮音材として用いられているガラスウール等が経年使用により劣化したり、飛散したりしてしまい、設計時の消音(吸音)効果が得られなくなるという問題が生じる虞がある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、設計時の消音効果を長期間にわたって維持することができる吸音材を含む自動車排気管用マフラ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の自動車排気管用マフラは、筒状のインナーシェル、このインナーシェルの外周面を囲繞した筒状のアウターシェル並びにインナーシェル及びアウターシェル間に配されていると共に膨張黒鉛を含む吸音材を具備した筒状のシェル本体と、このシェル本体の一方の開口部を閉塞する入力側のアウタープレートと、シェル本体の他方の開口部を閉塞する出力側のアウタープレートと、入力側のアウタープレートを貫通するインレットパイプと、出力側のアウタープレートを貫通するアウトレットパイプとを具備している。
【0009】
本発明の自動車排気管用マフラによれば、耐熱性を有すると共に制振作用を有している膨張黒鉛を含んでいるので、600℃を超える高温領域においても伝播した振動に加えて放射する低周波の放射音を低減させることができる上に、高温下の長期の使用での吸音材の劣化及び吸音材の飛散を低減でき、結果として設計時の吸音効果を長期間にわたって維持することができる。
【0010】
本発明による自動車排気管用マフラは、四輪自動車の外、二輪自動車に用いられてもよく、また、サブマフラ及びメインマフラに用いられてもよい。
【0011】
本発明の自動車排気管用マフラにおいて、シェル本体の内部には、インレットパイプ及びアウトレットパイプを支持すると共に当該シェル本体の内部を複数個の室に仕切る中組みアッセンブリが収容されていてもよい。
【0012】
シェル本体の内部に中組みアッセンブリが収容された自動車排気管用マフラにおいては、シェル本体の内部が複数個の室に仕切られているので、吸音効果を一層高めることができる。
【0013】
本発明の自動車排気管用マフラにおいて、吸音材は、膨張黒鉛に加えて、燐酸塩又は燐酸塩及び燐酸を含有してもよい。
【0014】
吸音材が燐酸塩又は燐酸塩及び燐酸と膨張黒鉛とを含有していると、吸音材の耐熱性が更に向上されるので、高温領域での吸音効果を一層発揮できると共に高温下の長期の使用での劣化及び飛散を更に低減できる結果、設計時の吸音効果をより長期間にわたって維持することができる。
【0015】
本発明の自動車排気管用マフラにおいて、シェル本体は、横断面円形又は横断面楕円形のインナーシェルとインナーシェルの外周面を囲繞した横断面円形又は横断面楕円形のアウターシェルとを具備していてもよく、また金属製の一枚の板材を円筒状又は楕円筒状に二重に捲回して形成されていると共に周方向の端部を周方向に重ね合わせて形成される重合部を接合してなる横断面円形又は横断面楕円形のインナーシェルとアウターシェルとを具備していてもよい。
【0016】
インナーシェルとアウターシェルとを形成する金属材料には、溶融アルミニウムめっき鋼板又はステンレス鋼板が使用されて好適であり、ステンレス鋼板としては、例えばSUS409、SUS429、SUS430、SUS432及びSUS444等のフェライト系ステンレス鋼や、SUSXM15J1等のオーステナイト系ステンレス鋼が例示される。インナーシェルとアウターシェルとの厚さは、0.3mm以上であると好ましく、0.7mm〜1mmであるとより好ましい。更には、インナーシェルとアウターシェルとを形成する金属材料には、無孔板に代えて、パンチングメタル又は金属メッシュが使用されてもよい。
【0017】
本発明の自動車排気管用マフラにおいて、インナーシェルとアウターシェルとの間に介在される吸音材は、インナーシェルの外周面及びアウターシェルの内周面間に当該外周面及び内周面の全周にわたって介在されてもよく、また、インナーシェルの外周面及びアウターシェルの内周面間のシェル本体の軸方向に直交する方向で相対向する隙間にのみ介在されていてもよい。
【0018】
本発明の自動車排気管用マフラにおいて、シェル本体は、横断面楕円形のインナーシェルとインナーシェルの外周面を囲繞した横断面楕円形のアウターシェルとを具備していても、また、一枚の金属製の板材を横断面楕円形に二重に捲回すると共に周方向の端部を周方向に重ね合わせた重合部を接合して形成された横断面楕円形のインナーシェルとアウターシェルとを具備していてもよい。
【0019】
本発明の自動車排気管用マフラにおいて、横断面楕円形のインナーシェル及びアウターシェル間に介在される吸音材は、インナーシェルの外周面及びアウターシェルの内周面間に当該外周面及び内周面の周方向の全周にわたって介在されていてもよく、また、インナーシェルの外周面及びアウターシェルの内周面間における短軸方向で互いに相対向する隙間にのみ介在されていてもよい。
【0020】
本発明の上記の自動車排気管用マフラの製造方法は、筒状のインナーシェルとなる板体と、筒状のアウターシェルとなる板体と、該インナーシェルとなる板体の外周面と該アウターシェルとなる板体の内周面との間に介在せしめて当該インナーシェルとなる板体の周りに捲回してなる吸音材となる膨張黒鉛シートとを具備した筒状のシェル本体を形成し、入力側のアウタープレートをシェル本体の一方の端面に、シェル本体内に設けられたインレットパイプが当該入力側のアウタープレートを貫通するようにして、固着して、入力側のアウタープレートによりシェル本体の一方の開口部を閉塞し、出力側のアウタープレートをシェル本体の他方の端面に、シェル本体内に設けられたアウトレットパイプが当該出力側のアウタープレートを貫通するようにして、固着して、出力側のアウタープレートによりシェル本体の他方の開口部を閉塞することからなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、シェル本体のインナーシェルとアウターシェルとの間に介在した膨張黒鉛を含む吸音材は、耐熱性を有すると共に制振作用を有しているので、伝播した振動を低減するばかりでなく、放射する低周波の放射音を低減させることができ、しかも、斯かる吸音材では、高温下の長期の使用での劣化及び飛散が低減され、結果として設計時の吸音効果を長期間にわたって維持できる自動車排気管用マフラ及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に本発明を、図に示す好ましい実施の形態の例に基づいて詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例に何等限定されないのである。
【0024】
図1から
図3において、本例の自動車排気管用マフラ1は、横断面円形を呈する円筒状のインナーシェル2、インナーシェル2の外周面を囲繞すると共に横断面円形を呈する円筒状のアウターシェル3並びにインナーシェル2の外周面及びアウターシェル3の内周面間に配されていると共に膨張黒鉛を含む吸音材4を具備した円筒状のシェル本体5と、シェル本体5の内部に収容された中組みアッセンブリ6と、シェル本体5の一方の開口部7を閉塞する入力側のアウタープレート8と、シェル本体5の他方の開口部9を閉塞する出力側のアウタープレート10と、アウタープレート8を貫通したインレットパイプ11と、アウタープレート10を貫通したアウトレットパイプ12とを備えている。
【0025】
シェル本体5の内部に収容されていると共にインレットパイプ11及びアウトレットパイプ12を支持する中組みアッセンブリ6は、円形板部13、円形板部13の外周縁に突出して設けられた円筒突出部14、円形板部13に径方向Yに間隔を隔ててバーリング加工によって形成された孔15及び16、孔15を規定する内周面をもって円形板部13から円筒突出部14と反対方向に突出した円筒突出部17並びに孔16を規定する内周面をもって円形板部13から円筒突出部14と同じ方向に突出した円筒部18を夫々有していると共に円筒突出部14を互いに反対方向に向けて軸方向Xに所定の間隔を隔てて配置された2枚のインナープレート19を具備しており、インレットパイプ11は、インナープレート19の夫々の孔15を貫通すると共にインナープレート19の夫々の円筒突出部17に支承されており、アウトレットパイプ12は、インナープレート19の夫々の孔16を貫通すると共にインナープレート19の夫々の円筒部18に支承されている。
【0026】
インレットパイプ11及びアウトレットパイプ12は、円筒突出部17及び円筒部18にスポット溶接等の溶接手段又は嵌合等の圧入手段によって固定されており、インレットパイプ11及びアウトレットパイプ12の夫々の一方の端部は、シェル本体5の開口部7及び9を通って軸方向Xにおいてシェル本体5外に突出して配されている。
【0027】
シェル本体5の両端の開口部7及び9を閉塞するアウタープレート8及び10の夫々は、外側に膨らんだ膨らみ部20をもった本体部21と、本体部21の円形の開口部22の外周縁に形成された環状鍔部23と、環状鍔部23の外周縁から軸方向Xの膨らみ部20と反対方向に突出する円筒突出部24と、本体部21に形成された貫通孔25を規定する円筒内周面26を有すると共に本体部21から軸方向Xに突出する円筒突出部27とを備えており、アウタープレート8は、環状鍔部23をシェル本体5の一方の端面28に接触させると共に円筒突出部24をシェル本体5の一方の端部の外周面に嵌合させ、シェル本体5の開口部7より突出したインレットパイプ11の端部を円筒突出部27の円筒内周面26において固着させてシェル本体5の開口部7を閉塞しており、アウタープレート10は、環状鍔部23をシェル本体5の他方の端面29に接触させると共に円筒突出部24をシェル本体5の他方の端部の外周面に嵌合させ、シェル本体5の開口部9より突出したアウトレットパイプ12の端部を円筒突出部27の円筒内周面26において固着させシェル本体5の開口部9を閉塞している。
【0028】
膨張黒鉛を含む吸音材4は、次のようにして形成されてもよい。
【0029】
<吸音材4:その1>
濃度98%の濃硫酸を攪拌しながら、酸化剤として過酸化水素の60%水溶液を加え、これを反応液とする。この反応液を冷却して10℃の温度に保持し、これに粒度30〜80メッシュの鱗片状天然黒鉛粉末を添加して30分間反応を行う。反応後、吸引濾過した酸処理黒鉛粉末を分離し、酸処理黒鉛粉末を水で10分間攪拌して吸引濾過するという洗浄作業を2回繰り返し、酸処理黒鉛粉末から硫酸分を充分除去する。ついで、硫酸分を充分除去した酸処理黒鉛粉末を110℃の温度に保持した乾燥炉で3時間乾燥し、これを酸処理黒鉛粉末とする。
【0030】
この酸処理黒鉛粉末に950〜1200℃の温度で1〜10秒間加熱(膨張)処理を施して酸処理黒鉛粉末から分解ガスを発生せしめ、そのガス圧により黒鉛層間を拡張して膨張させた膨張黒鉛粒子(膨張倍率240〜300倍)を形成する。この膨張黒鉛粒子を所望のロール隙間に調整した双ローラ装置に供給してロール成形し、所望の厚さの膨張黒鉛シートを作製し、この膨張黒鉛シートを吸音材4としてもよい。
【0031】
<吸音材4:その2及びその3>
上記酸処理黒鉛粉末を攪拌しながら、酸処理黒鉛粉末に燐酸塩として濃度50%の第一燐酸アルミニウム水溶液又は第一燐酸アルミニウム水溶液及び燐酸として濃度84%のオルト燐酸水溶液をメタノールで希釈した溶液を噴霧状に配合し、均一に攪拌して湿潤性を有する混合物を作製する。この湿潤性を有する混合物を、120℃の温度に保持した乾燥炉で2時間乾燥する。ついで、これを950〜1200℃の温度で1〜10秒間加熱(膨張)処理して分解ガスを発生せしめ、そのガス圧により黒鉛層間を拡張して膨張させた膨張黒鉛粒子(膨張倍率240〜300倍)を形成する。この膨張処理工程において、成分中のオルト燐酸は脱水反応を生じて五酸化燐を生成し、第一燐酸アルミニウムは構造式中の水が脱離する。この膨張黒鉛粒子を所望のロール隙間に調整した双ローラ装置に供給してロール成形し、所望の厚さの膨張黒鉛シートを作製し、このようにして作製された膨張黒鉛シートにおいて、燐酸塩を含有した膨張黒鉛シートを吸音材4としてもよく、燐酸と燐酸塩とを含有した膨張黒鉛シートを吸音材4としてもよく、燐酸塩又は燐酸塩及び燐酸を含有した膨張黒鉛は、優れた耐熱性を有するため、例えば600℃から600℃を超える高温領域での使用においても、酸化消耗等の劣化を生じることはなく、長期に亘って吸音効果を得ることができる。膨張黒鉛に含有させる燐酸塩としては、第一燐酸アルミニウムの外に第一燐酸リチウム、第二燐酸リチウム、第一燐酸カルシウム、第二燐酸カルシウム及び第二燐酸アルミニウム等を挙げることができ、また、膨張黒鉛に含有させる燐酸としては、オルト燐酸の外にメタ燐酸、ポリ燐酸及びポリメタ燐酸等を挙げることができる。
【0032】
吸音材4としては、密度が1.0〜1.15Mg/m
3程度で、厚さが0.3〜0.6mm程度の膨張黒鉛シートが好適である。
【0033】
次に、以上の自動車排気管用マフラ1の製造方法を説明する。
【0034】
図4から
図6に示すように、2枚の円形のインナープレート19、インレットパイプ11及びアウトレットパイプ12を用意し、インナープレート19の夫々の円筒突出部14を軸方向Xに互いに反対方向に向けると共に軸方向Xに所定間隔を隔てて配置する。インナープレート19の孔15にインレットパイプ11を貫通させると共に円筒突出部17でインレットパイプ11を支承させ、インナープレート19の孔16にアウトレットパイプ12を貫通させると共に円筒部18でアウトレットパイプ12を支承させ、スポット溶接によりインレットパイプ11及びアウトレットパイプ12を円筒突出部17及び円筒部18に固定して、中組みアッセンブリ6を作製する。
【0035】
次に、
図7に示すように、溶融アルミニウムめっき鋼板又はステンレス鋼板等の金属からなると共に中組みアッセンブリ6のインナープレート19の円筒突出部14の外周面を円周方向に一周分囲繞する長さに相当する長さlとインナープレート19の軸方向Xの間隔を超えた幅wを有する一枚の板材30を用意する。
【0036】
図8に示すように、インナープレート19の円筒突出部14の外周面に、一枚の板材30を捲回すると共に板材30と円筒突出部14の外周面の接触部及び板材30の突合せ端部31を夫々スポット溶接により一体的に固定して、インナープレート19の円筒突出部14の外周面にインナーシェル2となる横断面円形を呈する円筒板体32を形成する。
【0037】
次に、
図9に示すように、板材30と同様の板材33と、上記の<吸音材4:その1>及び<吸音材4:その2及びその3>で説明したいずれかの吸音材4としての膨張黒鉛シート34とを用意する。円筒板体32の外周面を囲繞する長さに相当する長さの膨張黒鉛シート34を円筒板体32の外周面及び膨張黒鉛シート34を囲繞する長さに相当する長さに形成した板材33の一方の表面35に貼付した複合板材36を形成する。
【0038】
複合板材36を複合板材36の膨張黒鉛シート34を内側にして、円筒板体32の外周面に捲回し、複合板材36の板材33の突合せ端部37をスポット溶接により固定して、
図10に示すように、円筒板体32と、円筒板体32の外周面に膨張黒鉛シート34を介して捲回されたアウターシェル3となる横断面円形を呈する円筒板体38とを具備したシェル本体5としての複合円筒体39を作製する。
【0039】
このようにして、横断面円形を呈するインナーシェル2と、インナーシェル2の外周面を囲繞して捲回された横断面円形を呈するアウターシェル3と、インナーシェル2の外周面及びアウターシェル3の内周面のほぼ全周にわたって介在された膨張黒鉛を含む吸音材4を具備したシェル本体5がインナープレート19の夫々の円筒突出部14の外周面に一体的に形成される。
【0040】
図11に示すように、アウタープレート8及び10を用意し、シェル本体5の一方の端面28に、アウタープレート8の環状鍔部23を接触させると共にシェル本体5の一方の端部外周面にアウタープレート8の円筒突出部24を嵌合させ、アウタープレート8の貫通孔25を規定する円筒内周面26にインレットパイプ11を貫通させ、シェル本体5の端部外周面とアウタープレート8の円筒突出部24とを溶接手段により固着一体化させてアウタープレート8によりシェル本体5の一方の開口部7を閉塞し、同様にシェル本体5の他方の端面29に、アウタープレート10の環状鍔部23を接触させると共にシェル本体5の他方の端部外周面にアウタープレート10の円筒突出部24を嵌合させ、アウタープレート10の貫通孔25を規定する円筒内周面26にアウトレットパイプ12を貫通させ、シェル本体5の端部外周面とアウタープレート10の円筒突出部24とを溶接手段により固着一体化させてアウタープレート10によりシェル本体5の他方の開口部9を閉塞することにより、内部がインナープレート19及び19により三つの室1a、1b、1cに仕切られている
図1及び
図2に示す自動車排気管用マフラ1が製造される。
【0041】
自動車排気管用マフラ1において、インレットパイプ11は、排気ガスの上流側の排気管に接続され、アウトレットパイプ12は、排気ガスの下流側の排気管に接続される。そして、自動車排気管用マフラ1の内部にエンジンから伝播した振動は、シェル本体5のインナーシェル2の外周面とアウターシェル3の内周面との間に介在した吸音材4の膨張黒鉛によって低減されると共に自動車排気管用マフラ1から放射される低周波の放射音も吸音材4の膨張黒鉛によって低減されるので、自動車排気管用マフラの設計時に設定した吸音効果を長期間にわたって維持することができる。
【0042】
シェル本体5の端部外周面とアウタープレート8及び10の円筒突出部24とを一体化させる溶接手段としては、プラズマ溶接、TIG溶接又はレーザ溶接が挙げられる。
【0043】
次に、本例の自動車排気管用マフラ1の他の製造方法を説明する。
【0044】
図7に示す工程で用意した金属製の板材30と同様の板材30を用意し、板材30を
図12に示すように円筒状の中子Pの外周面に、一周捲回すると共に板材30の円周方向の突合せ端部31を溶接して円筒板体32を作製する。ついで、
図9に示す工程で用意した複合板材36と同様の複合板材36を用意し、複合板材36の膨張黒鉛シート34を内側にして円筒板体32の外周面に一周捲回すると共に複合板材36の板材33の円周方向の突合せ端部37をスポット溶接により固定し、円筒板体32と円筒板体32の外周面に膨張黒鉛シート34を介して捲回された板材33からなる円筒板体38とを具備した複合円筒体39を作製する。作製した複合円筒体39を中子Pから取り外し、
図3に示すように、インナーシェル2となる横断面円形を呈する円筒板体32と、円筒板体32の外周面を囲繞して配されたアウターシェル3となる横断面円形を呈する円筒板体38と、円筒板体32の外周面及び円筒板体38の内周面間に介在された吸音材4となる膨張黒鉛シート34とを具備したシェル本体5となる複合円筒体39を予め作製する。
【0045】
シェル本体5の内部に、
図4に示す工程で作製された中組みアッセンブリ6を圧入固定したのち、
図11に示す工程と同様にして、
図1及び
図2に示す自動車排気管用マフラ1と同様の自動車排気管用マフラ1を作製する。
【0046】
このように作製された自動車排気管用マフラ1においても、自動車排気管用マフラ1の内部に伝播した振動は、シェル本体5のインナーシェル2の外周面とアウターシェル3の内周面との間に介在した吸音材4の膨張黒鉛によって低減されると共に自動車排気管用マフラ1から放射される低周波の放射音も吸音材4の膨張黒鉛によって低減されるので、自動車排気管用マフラの設計時に設定した吸音効果を長期間にわたって維持することができる。
【0047】
自動車排気管用マフラ1におけるシェル本体5は、
図13に示すように、横断面円形を呈するインナーシェル2と、インナーシェル2の外周面を囲繞して配された横断面円形を呈するアウターシェル3と、インナーシェル2の外周面及びアウターシェル3の内周面間に軸方向Xに直交する方向に相対向されて、換言すると、円周方向に配列されて介在された2枚の膨張黒鉛を含む吸音材4とを備えていてもよい。
【0048】
シェル本体5は、
図13に示すように、軸方向Xと直交する方向で互いに対向する2枚の膨張黒鉛シート34からなる吸音材4を具備していてもよく、
図13図に示す斯かるシェル本体5は、
図9に示す工程で用意した金属製の板材33と同様の板材33と2枚の膨張黒鉛シート34とを用意し、
図14に示すように、板材33の一方の表面35に板材33の長手方向に所定の間隔を隔てて2枚の膨張黒鉛シート34を貼付した複合板材40を作製し、
図8に示す工程で予め形成された円筒板体32の外周面に複合板材40を膨張黒鉛シート34を内側にして且つ2枚の膨張黒鉛シート34を軸方向Xと直交する方向で相対向するように配して捲回すると共に複合板材40の板材33の突合せ端部37をスポット溶接し、インナーシェル2となる円筒板体32と、吸音材4としての円筒板体32の外周面に膨張黒鉛シート34を介して捲回されたアウターシェル3となる横断面円形を呈する円筒板体38とを具備した複合円筒体39を作製して、斯かる複合円筒体39をもって形成することができ、こうして形成された
図13に示すシェル本体5を用いて
図11に示す工程と同様の方法で自動車排気管用マフラ1を作製してもよい。
【0049】
インナーシェル2の外周面とアウターシェル3の内周面との間の軸方向Xに直交する方向に相対向して介在された2枚の膨張黒鉛シート34からなる膨張黒鉛を含む吸音材4を具備したシェル本体5を備えた自動車排気管用マフラ1でも、上記と同様の効果を有する。
【0050】
図15から
図17に示す自動車排気管用マフラ1は、
図15に示すシェル本体5を具備していてもよく、
図15に示すシェル本体5は、
図16に示すように、板材41の一回目の円筒状の捲回で形成されて最内周に位置したインナーシェル2と、インナーシェル2の外周面を囲繞して当該板材41の続く二回目の円筒状の捲回で形成されて最外周に位置したアウターシェル3と、インナーシェル2の外周面及びアウターシェル3の内周面間でこれら外周面及び内周面のほぼ全面にわたって介在された膨張黒鉛を含む吸音材4とを具備しており、斯かる
図15及び
図16に示すシェル本体5は、
図17に示すように、長尺の金属製の板材41と板材41の一方の端部表面42に板材41の長手方向に沿って貼付された膨張黒鉛シート34とからなる複合板材43を、膨張黒鉛シート34を外側にして
図4に示す工程におけるインナープレート19の円筒突出部14の外周面に一回捲回して最内周に板材41を位置させ、さらに当該板材41を、膨張黒鉛シート34の表面を囲繞するようにして更に一回捲回して最外周に板材41を位置させると共に最内周に位置する板材41の外周面と最外周に位置する板材41の内周面との間に膨張黒鉛シート34を配するがように、二重に円筒状に捲回し、その後、
図16に示すように、最内周の板材41の端部44と最外周の板材41の端部45の重ね代46においてスポット溶接47により一体化することにより、形成することができる。
【0051】
更に、シェル本体5は、
図18に示すように、横断面楕円形を呈するインナーシェル2と、インナーシェル2の外周面を囲繞して配された横断面楕円形を呈するアウターシェル3と、インナーシェル2の外周面及びアウターシェル3の内周面間に介在された膨張黒鉛を含む吸音材4とを備えていてもよい。
【0052】
図18に示す楕円筒状のシェル本体5を備えた自動車排気管用マフラ1では、中組みアッセンブリ6は、
図19から
図21に示すように、楕円形板部49、楕円形板部49の外周縁に突出して設けられた楕円形の環状突出部48、楕円形板部49に径方向Yに間隔を隔ててバーリング加工によって形成された孔50及び51、孔50を規定する内周面をもって楕円形板部49から環状突出部48と反対方向に突出する円筒突出部52並びに孔51を規定する内周面をもって楕円形板部49から環状突出部48と同じ方向に突出する円筒突出部53を夫々有していると共に環状突出部48を互いに反対方向に向けて軸方向Xに所定の間隔を隔てて配置された2枚のインナープレート54を具備しており、斯かる中組みアッセンブリ6に対して、インレットパイプ11は、インナープレート54の夫々の孔50を貫通すると共にインナープレート54の夫々の円筒突出部52にスポット溶接により固定されて当該円筒突出部52に支承されており、アウトレットパイプ12は、インナープレート54の夫々の孔51を貫通すると共にインナープレート54の夫々の円筒突出部53にスポット溶接により固定されて当該円筒突出部53に支承されている。
【0053】
斯かる
図19から
図21に示す中組みアッセンブリ6に対して、スポット溶接により突合せ端部55で接合されたインナーシェル2と、インナーシェル2の外周面を囲繞してスポット溶接により突合せ端部56で接合されたアウターシェル3と、インナーシェル2の外周面とアウターシェル3の内周面との間に介在された膨張黒鉛を含む吸音材4と
図18に示すシェル本体5は、前記と同様にして、インナープレート54の夫々の環状突出部48の外周面に一体的に形成され、シェル本体5の軸方向Xの両端の開口部7及び9を閉塞するアウタープレート8及び10の夫々は、楕円形であって外側に膨らんだ膨らみ部20をもった本体部21を具備している。
【0054】
また、自動車排気管用マフラ1は、
図22に示すように、
図16に示すシェル本体5と同様に重ね代62においてスポット溶接63により板材41が一体化された横断面楕円形であって、横断面楕円形を呈するインナーシェル2と、インナーシェル2の外周面を囲繞して配された横断面楕円形を呈するアウターシェル3と、インナーシェル2の外周面及びアウターシェル3の内周面間に介在された膨張黒鉛を含む吸音材4とを備えているシェル本体5を具備していてもよく、更に、
図23に示すように、横断面楕円形を呈するインナーシェル2と、インナーシェル2の外周面を囲繞して配された横断面楕円形を呈するアウターシェル3と、インナーシェル2の外周面及びアウターシェル3の内周面間に短軸方向に相対向されて介在された2枚の膨張黒鉛を含む吸音材4とを備えているシェル本体5を具備していてもよく、横断面楕円形を呈するシェル本体5においては、少なくとも剛性が低い短軸方向において相対向するインナーシェル2とアウターシェル3との間に相対向して膨張黒鉛を含む吸音材4を配置しているので、ここからの放射音を効果的に消音することができる。
【0055】
以上の例において、アウタープレート8及び10、インナープレート19及び54、インレットパイプ11並びにアウトレットパイプ12のうちの少なくとも一つに吸音材4と同様の吸音材を適用して、消音効果を更に向上させるようにしてもよい。