【実施例】
【0047】
ここで、実施例等における各性能の評価方法は、次のとおりである。
【0048】
(1)摩擦帯電圧:
摩擦帯電圧は、JIS−L1094(2011年版)に準ずる織物および編物の帯電性試験方法によって測定した。
【0049】
(2)ウオッシュ&ウエア性:
ウオッシュ&ウエア性は、JIS L0217 103法(2011年版)に準ずる洗濯方法によって洗濯5回後実施後の、試料の表面に発生したシワ感をAATCC124に記載のレプリカにより級数評価する。
【0050】
(3)吸湿発熱性:
吸湿発熱性は、密閉した容器の中に約10cm×10cm大きさの試料を取り付け、試料の温度が測定できるように表面温度計センサーを取り付け記録計で読み取る。試料温度測定開始後に、測定室内温度20℃下の室内雰囲気中から、シリカゲル容器を通過させた乾燥空気(湿度10%RH以下)を送入して試料を乾燥させる。試料を30分間以上乾燥させ、試料温度が安定したときの表面温度Aに対して、その後イオン交換水を通した湿度約90%RHの空気を約30分間送入している間の試料表面温度最高到達温度Bを読み取り、その差B−Aを吸湿発熱性能(℃)とした。
【0051】
(4)残留水分率が30%以下になる時間(速乾性):
約10cm×10cmの大きさの試料を、20℃×65%RH下の雰囲気中で試料を24時間放置後に質量G(g)を読み取り、同雰囲気中でこの試料に約0.3gの水を滴下させ、滴下直後の質量Go(g)を読み取り、滴下後の経過時間毎の質量Gx(g)を読み取る。滴下直後の質量に対して、次式で求めた残留水分率(%)が30%になった時間(分)を求めた。
・残留水分率(%)={(Gx−G)/(Go−G)}×100。
【0052】
(5)保温率:
保温率は、JIS L1096 8.28 保温性 8.28.1A法(恒温法)(2011年版)に準じて測定する。
【0053】
(6)ピリング
ピリングは、JISL1076A法(2011年版)に準じて測定する。
以下の通り級数を判定した。
5級・・・標準写真の5号程度のもの。
4−5級(4.5級)・・・標準写真の4号と5号の中間程度のもの
4級・・・標準写真の4号程度のもの。
3−4級(3.5級)・・・標準写真の3号と4号の中間程度のもの
3級・・・標準写真の3号程度のもの。
2−3級(2.5級)・・・標準写真の2号と3号の中間程度のもの
2級・・・標準写真の2号程度のもの
1−2級(1.5級)・・・標準写真の1号と2号の中間程度のもの
1級・・・標準写真の1号又はその程度を越えるもの。
(7)グレーの色目評価
染色時に反応染料染色のみで黒染色のものと、カチオン染料染色のみの黒染色ものも作成し、反応染料、カチオン染料とも黒染色したものと、白染色したものと比較してグレーの色目を評価した。
【0054】
(
参考例1)
ビスコースレーヨンステープル(単繊維繊度1.4デシテックス、長さ38mm、ダイワボウレーヨン(株)製)55重量%と、テトラアルキルアジピン酸塩を0.4owf%付与したポリアクリル繊維ステープル(単繊維繊度1.0デシテックス、長さ45mm、東レ(株)“トレロン”(登録商標))45重量%とを、カードミックスで混綿して1/64s(番手)の紡績糸を得た。
【0055】
このようにして得られた紡績糸と、断面が、丸断面繊維と星形断面繊維の断面ミックスのカチオン可染性ポリエステル繊維フィラメント(総繊度84デシテックス、48フィラメント、東レ(株)“テトロン”(登録商標))と、ポリウレタン繊維(総繊度22デシテックス、2フィラメント、オペロンテックス製“ライクラ” (登録商標))とを、釜径76.2cm、ゲージ数28本/2.54cm、ウエル数40、およびコース数62の設定で、天竺編組織で交編して生機を得た。
【0056】
得られた生機を、連続リラックス/精練―乾燥(温度175℃、時間25秒)−セット−タッキング−染色(液流染色温度115℃)−乾燥(温度112℃)−セットの工程により染色加工し、生地重量比でポリアクリル繊維が27重量%、ビスコースレーヨン繊維が33重量%、断面ミックスカチオン可染性ポリエステル繊維が34重量%、およびポリウレタン弾性繊維が6重量%からなる、目付が150g/m
2の生地を得た。
【0057】
上記で得られた生地の摩擦帯電圧、ウオッシュ&ウエア性、吸湿発熱性、速乾性、保温性、およびピリングを評価した。また、染色時に反応染料染色で黒染色のみのものと、カチオン染料染色のみで黒染色のものも作成し、それぞれについてグレーの色目を評価した。その結果を、表1に示す。摩擦帯電圧は2000V以下で、ウオッシュ&ウエア性3級であり、吸湿発熱性、速乾性および保温性はとも良好であり、またピリングも2−3級(2.5級)であり、グレーの色目も反応染料染色のみであれば白過ぎないグレーであり、カチオン染料染色のみであれば黒過ぎないグレーであった。衣料用途、特にインナーウエアとして具備すべき高い機能性を有する編物が得られた。
【0058】
(実施例2)
ビスコースレーヨンステープル(単繊維繊度1.4デシテックス、長さ38mm、ダイワボウレーヨン(株)製)55重量%と、テトラアルキルアジピン酸塩を0.4owf付与したポリアクリル繊維テープル(単繊維繊度1.0デシテックス、長さ38mm、東レ(株)“トレロン” (登録商標))45重量%とを、カードミックスで混綿して1/64s(番手)の紡績糸を得た。
【0059】
このようにして得られた紡績糸と、断面が丸形断面のカチオン可染性ポリエステル繊維フィラメント(総繊度84デシテックス、96フィラメント、東レ(株)“テトロン”(登録商標))と、ポリウレタン系弾性繊維(総繊度22デシテックス、2フィラメント、オペロンテックス製 “ライクラ”(登録商標))とを、釜径76.2cm、ゲージ数28本/2.54cm、ウエル数42本/2.54cm、およびコース数58本/2.54cmの設定で、天竺編組織で交編して生機を得た。
【0060】
得られた生機を、連続リラックス/精練―乾燥(温度175℃、時間25秒)−セット−タッキング−染色(液流染色温度115℃)−乾燥(温度112℃)−セットの工程により染色加工し、生地の重量比でポリアクリル繊維が27重量%、ビスコースレーヨン繊維が33重量%、丸形断面カチオン可染性ポリエステル繊維が34重量%、およびポリウレタン弾性繊維が6重量%からなる、目付が145g/m
2の生地を得た。
【0061】
得られた生地の摩擦帯電圧、ウオッシュ&ウエア性、吸湿発熱性、速乾性、保温性、およびピリングを評価した。また、染色時に反応染料染色のみで黒染色のものと、カチオン染料染色のみの黒染色ものも作成し、グレーの色目を評価した。その結果を、表1に示す。その結果、
参考例1と同様に高い機能性の編物が得られた。速乾性については、丸形断面カチオン可染性ポリエステル繊維として単繊維繊度が1.0デシテックス以下のハイマルチ加工糸を使用することにより、断面ミックス加工糸と同様の性能が得られることが確認された。また、ピリングも2−3級(2.5級)であり、グレーの色目も反応染料染色のみであれば白過ぎないグレーであり、カチオン染料染色のみであれば黒過ぎないグレーであった。
【0062】
(比較例1)
ビスコースレーヨン繊維ステープル(単繊維繊度1.4デシテックス、長さ38mm、ダイワボウレーヨン(株)製)35重量%と、テトラアルキルアジピン酸塩を0.4owf%付与したポリアクリル繊維ステープル(単繊維繊度1.0デシテックス、長さ45mm、東レ(株)“トレロン”(登録商標))65重量%とを、カードミックスで混綿して1/64s(番手)の紡績糸を得た。
【0063】
このようにして得られた紡績糸と、断面が、丸断面繊維と星形断面繊維の断面ミックスのカチオン可染性ポリエステル繊維フィラメント(総繊度84デシテックス、48フィラメント、東レ(株)“テトロン”(登録商標))と、ポリウレタン弾性繊維(総繊度22デシテックス、2フィラメント、オペロンテックス製“ライクラ”(登録商標))とを、釜径76.2cm、ゲージ数28本/2.54cm、ウエル数40、およびコース数62の設定で、天竺編組織で交編して生機を得た。
【0064】
得られた生機を、
参考例1と同様に連続リラックス/精練―乾燥(温度175℃、時間25秒)−セット−タッキング−染色(液流染色温度115℃)−乾燥(温度112℃)−セットの工程により染色加工し、生地重量比でポリアクリル繊維が39重量%、ビスコースレーヨン繊維が21重量%、断面ミックスカチオン可染ポリエステル繊維が34重量%、およびポリウレタン繊維が6重量%からなる、目付が150g/m
2の生地を得た。
【0065】
上記で得られた生地の摩擦帯電圧、ウオッシュ&ウエア性、吸湿発熱性、速乾性、保温性、およびピリングを評価した。また、染色時に反応染料の黒染色のみのものと、カチオン染料の黒染色のみのものも作成し、グレーの色目を評価した。その結果を、表1に示す。その結果、ウオッシュ&ウエア性、速乾性および保温性は高いが、摩擦帯電圧は2500Vであり、かつ吸湿発熱性も2.3℃であり、静電気が発生しやすく吸湿発熱性も低い結果となった。また、ピリングは2級であり、グレーの色目も反応染料の黒染色のみであれば白に近いグレーであり、カチオン染料の黒染色のみであれば黒に近いグレーであった。
(比較例2)
ビスコースレーヨン繊維ステープル(単繊維繊度1.4デシテックス、長さ38mm、ダイワボウレーヨン(株)製)50重量%と、テトラアルキルアジピン酸塩を0.4owf%付与したポリアクリル繊維ステープル(単繊維繊度1.0デシテックス、長さ45mm、東レ(株)“トレロン”(登録商標))50重量%とを、カードミックスで混綿して1/64s(番手)の紡績糸を得た。
【0066】
このようにして得られた紡績糸と、断面が丸断面繊維と星形断面繊維の断面ミックスのカチオン可染ポリエステル繊維フィラメント(総繊度84デシテックス−48フィラメント、東レ(株)“テトロン”(登録商標))と、ポリウレタン弾性繊維(総繊度22デシテックス、2フィラメント、オペロンテックス製“ライクラ”(登録商標))とを、釜径76.2cm、ゲージ数28本/2.54cm、ウエル数40の設定でコース数62の設定で、天竺編組織で交編して生機を得た。
【0067】
得られた生機を、
参考例1と同様に連続リラックス/精練―乾燥(温度175℃、時間25秒)−セット−タッキング−染色(液流染色温度115℃)−乾燥(温度112℃)−セットの工程により染色加工し、生地重量比でポリアクリル繊維が30重量%、ビスコースレーヨン繊維が30重量%、断面ミックスカチオン可染ポリエステル繊維が34重量%、およびポリウレタン系繊維が6重量%からなる、目付が150g/m
2の生地を得た。
【0068】
上記で得られた生地の摩擦帯電圧、ウオッシュ&ウエア性、吸湿発熱性、速乾性、保温性、およびピリングを評価した。また、染色時に反応染料の黒染色のみのものと、カチオン染料の黒染色のみのものも作成し、グレーの色目を評価した。その結果を、表1に示す。その結果、ウオッシュ&ウエア性、速乾性および保温性は高いが、摩擦帯電圧は1700Vであり、かつ吸湿発熱性も2.5℃であり、静電気が発生しやすく吸湿発熱性も低い結果となった。また、ピリングは2級であった。グレーの色目は、反応染料染色のみであれば白過ぎないグレーであり、カチオン染料染色のみであれば黒過ぎないグレーであった。
【0069】
(比較例3)
テトラアルキルアジピン酸塩を0.4owf%付与したポリアクリル繊維ステープル(単繊維繊度1.0デシテックス、長さ45mm、東レ(株)“トレロン” (登録商標))のみからなる、1/64s(番手)の紡績糸を得た。
【0070】
このようにして得られた紡績糸と、断面が、丸断面繊維と星形断面繊維の断面ミックスのカチオン可染ポリエステル繊維フィラメント(総繊度84デシテックス、48フィラメント、東レ(株)“テトロン”(登録商標))と、ポリウレタン系弾性繊維(総繊度22デシテックス、2フィラメント、オペロンテックス製“ライクラ”(登録商標))とを、釜径76.2cm、ゲージ数28本/2.54cm、ウエル数40、およびコース数62の設定で、天竺編組織で交編して生機を得た。
【0071】
得られた生機を、
参考例1と同様に連続リラックス/精練―乾燥(温度175℃、時間25秒)−セット−タッキング−染色(液流染色温度115℃)−乾燥(温度112℃)−セットの工程により染色加工し、生地重量比でポリアクリル繊維が0重量%、ビスコースレーヨン繊維が60重量%、断面ミックスカチオン可染ポリエステル繊維が34重量%、ポリウレタン繊維が6重量%からなる、目付が150g/m
2の生地を得た。
【0072】
上記で得られた生地の摩擦帯電圧、ウオッシュ&ウエア性、吸湿発熱性、速乾性、保温性、およびピリングを評価した。また、染色時に反応染料の黒染色のみのものと、カチオン染料の黒染色のみのものも作成し、グレーの色目を評価した。その結果を、表1に示す。その結果、ウオッシュ&ウエア性、速乾性および保温性は非常に高いが、摩擦帯電圧は5000Vであり、かつ吸湿発熱性も0.4℃であり、非常に静電気が発生しやすく、吸湿発熱性も非常に低い結果となった。また、ピリングは1−2級(1.5級)であり、グレーの色目も反応染料の黒染色のみであれば白であり、すなわち染色されず、またカチオン染料の黒染色のみであれば黒であった。
【0073】
(比較例4)
ビスコースレーヨン繊維ステープル(単繊維繊度1.4デシテックス、長さ38mm、ダイワボウレーヨン(株)製)のみからなる、1/64s(番手)の紡績糸を得た。
【0074】
このようにして得られた紡績糸と、断面が、丸断面繊維と星形断面繊維の断面ミックスカチオン可染ポリエステル繊維フィラメント(総繊度84デシテックス、48フィラメント、東レ(株)“テトロン”(登録商標))と、ポリウレタン系弾性繊維(総繊度22デシテックス、2フィラメント、オペロンテックス製“ライクラ”(登録商標))とを、釜径76.2cm、ゲージ数28本/2.54cm、ウエル数40、およびコース数62の設定で、天竺編組織で交編して生機を得た。
【0075】
得られた生機を、
参考例1と同様に連続リラックス/精練―乾燥(温度175℃、時間25秒)−セット−タッキング−染色(液流染色温度115℃)−乾燥(温度112℃)−セットの工程により染色加工し、生地重量比でポリアクリル繊維が0重量%、ビスコースレーヨン繊維が60重量%、断面ミックスカチオン可染ポリエステル繊維が34重量%、ポリウレタン繊維が6重量%からなる、目付が150g/m
2の生地を得た。
【0076】
上記で得られた生地の、摩擦帯電圧、ウオッシュ&ウエア性、吸湿発熱性、速乾性、保温性、およびピリングを評価した。また、染色時に反応染料の黒染色のみのものと、カチオン染料の黒染色のみのものも作成し、グレーの色目を評価した。その結果を、表1に示す。その結果、摩擦帯電圧と吸湿発熱性とピリングは3級と高いが、ウオッシュ&ウエア性、速乾性および保温性は非常に低い結果となった。また、グレーの色目も、反応染料染色のみであれば黒過ぎないグレーであり、カチオン染料染色のみであれば白過ぎないグレーであった。
【0077】
(比較例5)
ビスコースレーヨン繊維ステープル(単繊維繊度1.4デシテックス、長さ38mm、ダイワボウレーヨン(株)製)55重量%と、テトラアルキルアジピン酸塩を0.4owf%付与したアクリルステープル(単繊維繊度1.0デシテックス、長さ45mm、東レ(株)“トレロン” (登録商標))45重量%とを、カードミックスで混綿して、1/64s(番手)の紡績糸を得た。
【0078】
このようにして得られた紡績糸と、ポリウレタン弾性繊維(総繊度22デシテックス、2フィラメント、オペロンテックス製“ライクラ”(登録商標))とを、釜径76.2cm、ゲージ数28本/2.54cm、ウエル数40、およびコース数62の設定で、天竺編組織で交編して生機を得た。
【0079】
得られた生機を、
参考例1と同様に、連続リラックス/精練―乾燥(温度175℃、25秒)−セット−タッキング−染色(液流染色温度115℃)−乾燥(温度112℃)−セットの工程により染色加工し、生地重量比でポリアクリル繊維が42重量%、ビスコースレーヨン繊維が52重量%、断面ミックスカチオン可染ポリエステル繊維0重量%、およびポリウレタン繊維が6重量%からなる、目付が150g/m
2の生地を得た。
【0080】
上記で得られた生地の摩擦帯電圧、ウオッシュ&ウエア性、吸湿発熱性、速乾性、保温性、およびピリングを評価した。また、染色時に反応染料の黒染色のみのものと、カチオン染料の黒染色のみのものも作成し、グレーの色目を評価した。その結果を、表1に示す。比較例5においては、摩擦帯電圧、吸湿発熱性および保温性は高いが、ウオッシュ&ウエア性と速乾性が非常に低い結果となった。また、ピリングは2級であった。グレーの色目は、反応染料染色のみ、およびカチオン染料染色のみとも同じグレーであった。
【0081】
【表1】