(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記抗体が、重鎖定常領域に結合するN−グリコシド結合糖鎖の糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンに結合したフコースを除去した抗体である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の抗体。
前記抗体の組成物であって、請求項17に記載の抗体及び重鎖定常領域に結合するN−グリコシド結合糖鎖の糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合した請求項1〜16のいずれか1項に記載の抗体を含む、抗体の組成物。
請求項1〜15のいずれか1項に記載の抗体又はそのフラグメント、請求項16又は17に記載の抗体、あるいは請求項18に記載の抗体の組成物を有効成分として含むことを特徴とする、癌の治療及び/又は予防のための医薬組成物。
前記癌が乳癌、腎癌、膵臓癌、大腸癌、肺癌、脳腫瘍、胃癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌、食道癌、白血病、リンパ腫、肝臓癌、胆嚢癌、肉腫、肥満細胞腫、メラノーマ、副腎皮質癌、ユーイング腫瘍、ホジキンリンパ腫、中皮腫、多発性骨髄腫、睾丸癌、甲状腺癌又は頭頸部癌である、請求項20に記載の医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明で用いられるCAPRIN−1のポリペプチドに対する抗体の抗腫瘍活性は、後述するように、生体外で、該ポリペプチドを発現する腫瘍細胞に対して免疫細胞を介した細胞障害活性を示すか否かを調べることによって、あるいは、生体内で担癌動物に対する腫瘍増殖の抑制を調べることによって評価することができる。
【0013】
本発明に係る上記のCAPRIN−1に対する抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であってよいが、好ましくはモノクローナル抗体であり、抗腫瘍活性を発揮しうる限りいかなる種類の抗体であってもよく、例えば、組換え抗体(例えば、合成抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体(scFv)等)、ヒト抗体、それらの抗体フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)
2、Fv等)を含む。これらの抗体及びそのフラグメントはまた、当業者に公知の方法により調製することが可能である。また、被験者がヒトである場合には、拒絶反応を回避又は抑制するためにヒト抗体又はヒト化抗体であることが望ましい。
【0014】
「CAPRIN−1タンパク質と特異的に結合する」とは、CAPRIN−1タンパク質に特異的に結合し、それ以外のタンパク質と実質的に結合しないことを意味する。
【0015】
また、本発明における癌の治療及び/又は予防の対象である被験者は、ヒト、ペット動物、家畜類、競技用動物等の哺乳動物であり、好ましい被験者は、ヒトである。
【0016】
以下に、本発明に関する抗原の作製、抗体の作製、ならびに医薬組成物について説明する。
【0017】
<抗体作製用抗原の作製>
本発明に係るCAPRIN−1に対する抗体を取得するための感作抗原として使用されるタンパク質又はその断片は、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、マウス、ラット、ニワトリ等、その由来となる動物種に制限されない。しかし細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択することが好ましい。一般的には、哺乳動物由来のタンパク質が好ましく、特にヒト由来のタンパク質が好ましい。例えば、CAPRIN−1がヒトCAPRIN−1の場合、ヒトCAPRIN−1タンパク質やその部分ペプチド、ヒトCAPRIN−1を発現する細胞等を用いることができる。
【0018】
ヒトCAPRIN−1及びそのホモログの塩基配列及びアミノ酸配列は、例えば、GenBank(米国NCBI)にアクセスし、BLAST、FASTA等のアルゴリズム(Karlin and Altschul, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:5873−5877,1993; Altschul et al., Nucleic Acids Res. 25:3389−3402, 1997)を利用することによって入手することができる。
【0019】
本発明では、ヒトCAPRIN−1の塩基配列(配列番号16又は18)又はアミノ酸配列(配列番号17又は19)を基準とした場合、これらのORF又は成熟部分の塩基配列又はアミノ酸配列と70%〜100%、好ましくは80%〜100%、より好ましくは90%〜100%、さらに好ましくは95%〜100%、例えば、97%〜100%、98%〜100%、99%〜100%又は99.5%〜100%の配列同一性を有する配列からなる核酸又はタンパク質がターゲットのCAPRIN−1になる(配列番号17と配列番号19のアミノ酸配列を比較すると、690位以降のアミノ酸残基が相違する。)。ここで、「%配列同一性」は、2つの配列を、ギャップを導入して又はギャップを導入しないで、最大の類似度(又は一致度)となるようにアラインメント(整列)したとき、アミノ酸(又は塩基)の総数(ギャップの数を含む)に対する同一アミノ酸(又は塩基)のパーセンテージ(%)を意味する。
【0020】
CAPRIN−1タンパク質の断片は、抗体が認識する最小単位であるエピトープ(抗原決定基)のアミノ酸長から、該タンパク質の全長未満の長さを有する。エピトープは、哺乳動物、好ましくはヒトにおいて、抗原性又は免疫原性を有するポリペプチド断片を指し、その最小単位は、約7〜12アミノ酸、例えば、8〜11アミノ酸からなる。
【0021】
上記した、ヒトCAPRIN−1タンパク質やその部分ペプチドを含むポリペプチド断片は、例えば、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t―ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法に従って合成することができる(日本生化学会編、生化学実験講座1、タンパク質の化学IV、化学修飾とペプチド合成、東京化学同人(日本)、1981年)。また、各種の市販のペプチド合成機を利用して常法により合成することもできる。また、公知の遺伝子工学的手法(Sambrookら, Molecular Cloning, 第2版, Current Protocols in Molecular Biology (1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、Ausubelら, Short Protocols in Molecular Biology, 第3版, A compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology (1995), John Wiley & Sons等)を用いて、上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを調製し、該ポリヌクレオチドを発現ベクターに組み込んで宿主細胞に導入し、該宿主細胞中でポリペプチドを生産させることにより、目的とするヒトCAPRIN−1タンパク質やそのポリペプチド断片を得ることができる。
【0022】
上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、公知の遺伝子工学的手法や市販の核酸合成機を用いた常法により、容易に調製することができる。例えば、ヒトCAPRIN−1遺伝子の塩基配列を含むDNAは、ヒト染色体DNA又はcDNAライブラリーを鋳型として使用し、該塩基配列を増幅できるように設計した一対のプライマーを用いてPCRを行うことにより調製することができる。PCRの反応条件は適宜設定することができ、例えば、耐熱性DNAポリメラーゼ(例えば、Taqポリメラーゼ、Pfuポリメラーゼ等)及びMg
2+含有PCRバッファーを用いて、94℃で30秒間(変性)、55℃で30秒〜1分間(アニーリング)、72℃で2分間(伸長)からなる反応行程を1サイクルとして、例えば、30サイクル行った後、72℃で7分間反応させる条件等を挙げることができるが、これに限定されない。PCRの手法、条件等については、例えば、Ausubelら, Short Protocols in Molecular Biology, 第3版, A compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology (1995), John Wiley & Sons(特に第15章)に記載されている。
【0023】
また、CAPRIN−1遺伝子の塩基配列及びCAPRIN−1タンパク質のアミノ酸配列情報に基づいて、適当なプローブやプライマーを調製し、それを用いてヒト等のcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、所望のDNAを単離することができる。cDNAライブラリーは、CAPRIN−1のタンパク質を発現している細胞、器官又は組織から作製することが好ましい。そのような細胞や組織の例は、精巣の他、白血病、乳癌、リンパ腫、脳腫瘍、肺癌、膵臓癌、大腸癌、腎癌、胃癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌、食道癌、肉腫、肥満細胞腫、肝臓癌、胆嚢癌、メラノーマ、副腎皮質癌、ユーイング腫瘍、ホジキンリンパ腫、中皮腫、多発性骨髄腫、睾丸癌、甲状腺癌又は頭頸部癌等の癌又は腫瘍に由来する細胞又は組織である。上記したプローブ又はプライマーの調製、cDNAライブラリーの構築、cDNAライブラリーのスクリーニング、並びに目的遺伝子のクローニング等の操作は当業者に既知であり、例えば、Sambrookら, Molecular Cloning, 第2版, Current Protocols in Molecular Biology (1989)、Ausbelら(上記)等に記載された方法に準じて行うことができる。このようにして得られたDNAから、ヒトCAPRIN−1タンパク質やその部分ペプチドをコードするDNAを得ることができる。
【0024】
発現ベクターを導入する上記宿主細胞としては、上記ポリペプチドを発現可能な細胞であればいかなるものであってもよく、原核細胞の例としては大腸菌等、真核細胞の例としてはサル腎臓細胞COS1、チャイニーズハムスター卵巣細胞CHO等の哺乳動物細胞、ヒト胎児腎臓細胞株HEK293、マウス胎仔皮膚細胞株NIH3T3、出芽酵母、分裂酵母等の酵母細胞、カイコ細胞、アフリカツメガエル卵細胞等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
宿主細胞として原核細胞を用いる場合、発現ベクターとしては、原核細胞中で複製可能なオリジン、プロモーター、リボソーム結合部位、マルチクローニングサイト、ターミネーター、薬剤耐性遺伝子、栄養要求性相補遺伝子等を有する発現ベクターを用いる。大腸菌用発現ベクターとしては、pUC系、pBluescriptII、pET発現システム、pGEX発現システム等が例示できる。上記ポリペプチドをコードするDNAをこのような発現ベクターに組み込み、該ベクターで原核宿主細胞を形質転換したのち、得られた形質転換体を培養すれば、前記DNAがコードしているポリペプチドを原核宿主細胞中で発現させることができる。この際、該ポリペプチドを、他のタンパク質との融合タンパク質として発現させることもできる。
【0026】
宿主細胞として真核細胞を用いる場合、発現ベクターとしては、プロモーター、スプライシング領域、ポリ(A)付加部位等を有する真核細胞用発現ベクターを用いる。そのような発現ベクターとしては、pKA1、pCDM8、pSVK3、pMSG、pSVL、pBK−CMV、pBK−RSV、EBVベクター、pRS、pcDNA3、pYES2等が例示できる。上記と同様に、上記ポリペプチドをコードするDNAをこのような発現ベクターに組み込み、該ベクターで真核宿主細胞を形質転換したのち、得られた形質転換体を培養すれば、前記DNAがコードしているポリペプチドを真核宿主細胞中で発現させることができる。発現ベクターとしてpIND/V5−His、pFLAG−CMV−2、pEGFP−N1、pEGFP−C1等を用いた場合には、Hisタグ(例えば、(His)
6〜(His)
10)、FLAGタグ、mycタグ、HAタグ、GFP等各種タグを付加した融合タンパク質として、上記ポリペプチドを発現させることができる。
【0027】
発現ベクターの宿主細胞への導入は、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション、ウイルス感染、リポフェクション、細胞膜透過性ペプチドとの結合等の周知の方法を用いることができる。
【0028】
宿主細胞から目的のポリペプチドを単離精製するためには、公知の分離操作を組み合わせて行うことができる。例えば、尿素等の変性剤や界面活性剤による処理、超音波処理、酵素消化、塩析や溶媒分別沈殿法、透析、遠心分離、限外ろ過、ゲルろ過、SDS−PAGE、等電点電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
本発明に係る抗体を作製するため、以上のようにして作製した抗原を後述の通り感作抗原として用いることができる。
【0030】
<抗体の構造>
抗体(免疫グロブリン)は通常少なくとも2本の重鎖及び2本の軽鎖を含むヘテロ多量体糖タンパク質である。IgMは別として、免疫グロブリンは、2本の同一の軽(L)鎖及び2本の同一の重(H)鎖で構成される約150kDaのヘテロ四量体糖タンパク質である。典型的には、それぞれの軽鎖は1つのジスルフィド共有結合により重鎖に連結されているが、種々の免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間でジスルフィド結合の数は変動する。それぞれの重鎖及び軽鎖は鎖内ジスルフィド結合も有する。それぞれの重鎖は一方の端に可変ドメイン(VH領域)を有し、それにいくつかの定常領域が続く。それぞれの軽鎖は可変ドメイン(VL領域)を有し、その反対の端に1つの定常領域を有する。軽鎖の定常領域は重鎖の最初の定常領域と整列しており、かつ軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。抗体の可変ドメインは、特定の領域が相補性決定領域(CDR)と呼ばれる特定の可変性を示して抗体に結合特異性を付与する。可変領域において相対的に保存されている部分は、フレームワーク領域(framework region;FR)と呼ばれている。完全な重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、3つの相補性決定領域が4つのフレームワーク領域で連結された構造、すなわち、N末から順にFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4が連結した構造からなる。3つの相補性決定領域は重鎖ではそのN末から順にCDRH1,CDRH2,CDRH3、同様に軽鎖ではCDRL1,CDRL2,CDRL3と呼ばれている。抗体の抗原への結合特異性には、CDRH3が最も重要である。また、各鎖のCDRはフレームワーク領域によって近接した状態で一緒に保持され、他方の鎖由来の相補性決定領域と共に抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。定常領域は抗体が抗原に結合することに直接寄与しないが、種々のエフェクター機能、例えば、抗体依存性細胞性細胞障害活性(ADCC)への関与、Fcγ受容体への結合を介した食作用(ADCP)、新生児Fc受容体(FcRn)を介した半減期/クリアランス速度、補体カスケードのC1q構成要素を介した補体依存性細胞障害(CDC)を示す。
【0031】
<抗体の作製>
本発明における抗CAPRIN−1抗体とは、CAPRIN−1タンパク質の全長又はその断片と免疫学的反応性を有する抗体を意味する。
【0032】
ここで、「免疫学的反応性」とは、生体内で抗体とCAPRIN−1抗原(CAPRIN−1タンパク質の全長又はその部分ポリペプチド)とが結合する特性を意味する。本発明の抗体のCAPRIN−1へのこのような結合を介して腫瘍細胞を障害(例えば、死滅、抑制又は退縮)する機能が発揮される。本発明の抗体は、CAPRIN−1タンパク質と結合して腫瘍、例えば、乳癌、腎癌、膵臓癌、大腸癌(例えば、結腸癌)、肺癌、脳腫瘍、胃癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌、食道癌、白血病、リンパ腫、肝臓癌、胆嚢癌、肉腫、肥満細胞腫、メラノーマ、副腎皮質癌、ユーイング腫瘍、ホジキンリンパ腫、中皮腫、多発性骨髄腫、睾丸癌、甲状腺癌又は頭頸部癌等を障害することができる。
【0033】
本発明の抗体は、好適にはモノクローナル抗体であれば特に限定されず、合成抗体、多重特異性抗体(例えばダイアボディ、トリアボディ等)、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、抗体フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)
2、Fv)等を含む。また、抗体は、免疫グロブリン分子の任意のクラス、例えば、IgG,IgE,IgM,IgA,IgD及びIgY、又は任意のサブクラス、例えば、IgG1,IgG2,IgG3,IgG4,IgA1,IgA2等である。
【0034】
抗体はさらに、グリコシル化の他に、脱グリコシル化、アセチル化、ホルミル化、アミド化、リン酸化、又はペグ(PEG)化等によって修飾されていてもよい。
【0035】
以下に、種々のモノクローナル抗体の作製例を示す。
【0036】
例えば、CAPRIN−1を発現する乳癌細胞株SK−BR−3等をマウスに投与して免疫し、同マウスより脾臓を抽出し、細胞を分離の上、該細胞とマウスミエローマ細胞とを融合させ、得られた融合細胞(ハイブリドーマ)の中から、癌細胞増殖抑制作用を持つ抗体を産生するクローンを選択する。癌細胞増殖抑制作用を持つモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを単離し、当該ハイブリドーマを培養し、培養上清から一般的なアフィニティ精製法により抗体を精製することで、本発明の抗体を調製することが可能である。
【0037】
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、例えば、以下のようにしても作製することができる。まず、公知の方法に従って、感作抗原を動物に免疫する。一般的方法として、感作抗原を哺乳動物の腹腔内又は皮下に注射することにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS(Phosphate−Buffered Saline)や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものに所望により通常のアジュバント、例えば、フロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に4〜21日毎に数回投与する。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することもできる。
【0038】
このように哺乳動物を免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞を採取し、細胞融合に付すが、好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。
【0039】
前記免疫細胞と融合される他方の親細胞として、哺乳動物のミエローマ細胞を用いる。このミエローマ細胞としては、公知の種々の細胞株、例えば、P3U1(P3−X63Ag8U1)、P3(P3x63Ag8.653)(J. Immunol. (1979)123, 1548−1550)、P3x63Ag8U.1(Current Topics in Microbiology and Immunology (1978)81, 1−7)、NS−1(Kohler. G. and Milstein, C. Eur. J. Immunol. (1976)6, 511−519)、MPC−11(Margulies. D.H. et al., Cell (1976)8, 405−415)、SP2/0(Shulman, M. et al., Nature (1978)276, 269−270)、FO(deSt. Groth, S.F. et al., J. Immunol. Methods (1980)35, 1−21)、S194(Trowbridge, I.S. J.Exp.Med. (1978)148, 313−323)、R210(Galfre, G. et al., Nature (1979)277, 131−133)、240E−1、240E−W並びに240E−W2等が好適に使用される。
【0040】
前記免疫細胞とミエローマ細胞との細胞融合は、基本的には公知の方法、例えば、ケーラーとミルステインの方法(Kohler, G. and Milstein, C. Methods Enzymol. (1981)73, 3−46)等に準じて行うことができる。
【0041】
より具体的には、前記細胞融合は、例えば、細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、センダイウイルス(HVJ)等が使用され、更に所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加使用することもできる。
【0042】
免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は任意に設定することができる。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
【0043】
細胞融合では、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め37℃程度に加温したPEG溶液(例えば、平均分子量1000〜6000程度)を通常30〜60%(w/v)の濃度で添加し、混合することによって目的とするハイブリドーマを形成する。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去することが好ましい。
【0044】
このようにして得られたハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えば、HAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。上記HAT培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間(通常、数日〜数週間)継続する。ついで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニング及び単一クローニングを行う。
【0045】
また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイブリドーマを得る他に、ヒトリンパ球、例えば、EBウイルスに感染したヒトリンパ球をin vitroでタンパク質、タンパク質発現細胞又はその溶解物で感作し、感作リンパ球をヒト由来の永久分裂能を有するミエローマ細胞、例えば、U266(登録番号TIB196)と融合させ、所望の活性(例えば、細胞増殖抑制活性)を有するヒト抗体を産生するハイブリドーマを得ることもできる。
【0046】
このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。
【0047】
すなわち、所望の抗原や所望の抗原を発現する細胞を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法に従って免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞(ハイブリドーマ)をスクリーニングすることによって作製できる。
【0048】
抗原の調製は、例えば、動物細胞を用いた方法(特表2007−530068)やバキュロウイルスを用いた方法(例えば、国際公開第WO98/46777号等)等に準じて行うことができる。抗原の免疫原性が低い場合には、アルブミン等の免疫原性を有する巨大分子と結合させ、免疫を行えばよい。抗原はアジュバントとともに投与して免疫してもよい。
【0049】
本発明の抗体は、さらにまた、その抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた遺伝子組換え型抗体としても得ることができる(例えば、Carl, A.K. Borrebaeck, James, W. Larrick, THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERS LTD, 1990参照)。具体的には、ハイブリドーマのmRNAから逆転写酵素を用いて抗体の可変領域(V領域)のcDNAを合成する。目的とする抗体のV領域をコードするDNAが得られれば、これを所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターへ組み込む。又は、抗体のV領域をコードするDNAを、抗体C領域のDNAを含む発現ベクターへ組み込んでもよい。発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させることができる。
【0050】
本発明の抗CAPRIN−1抗体は、好適にはモノクローナル抗体であることを特徴とするが、モノクローナル抗体には、ヒトモノクローナル抗体、非ヒト動物モノクローナル抗体(例えば、マウスモノクローナル抗体、ラットモノクローナル抗体、ウサギモノクローナル抗体、ニワトリモノクローナル抗体等)、キメラモノクローナル抗体等が含まれる。モノクローナル抗体は、CAPRIN−1タンパク質又はその断片で免疫した非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ヒト抗体産生マウス、ニワトリ、ウサギ等)からの脾細胞とミエローマ細胞との融合によって得られたハイブリドーマを培養することによって作製されうる。キメラ抗体は、異なる動物由来の配列を組み合わせて作製される抗体であり、例えば、マウス抗体の重鎖、軽鎖の可変領域とヒト抗体の重鎖、軽鎖の定常領域からなる抗体等である。キメラ抗体の作製は公知の方法を用いて行うことができ、例えば、抗体V領域をコードするDNAとヒト抗体C領域をコードするDNAとを連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる。
【0051】
なお、後述の実施例では、複数のヒト化モノクローナル抗体及びヒト−ウサギキメラモノクローナル抗体が作製され、強い抗腫瘍効果が確認された。これらモノクローナル抗体は、いずれも重鎖可変領域(VH領域)に配列番号1のアミノ酸配列で表されるCDR1、配列番号2のアミノ酸配列で表されるCDR2及び配列番号3のアミノ酸配列で表されるCDR3を含み、軽鎖可変領域(VL領域)に、配列番号4のアミノ酸配列で表されるCDR1、配列番号5のアミノ酸配列で表されるCDR2及び配列番号6のアミノ酸配列で表されるCDR3を含む。これらモノクローナル抗体はそれぞれ、配列番号7のアミノ酸配列を有するVH領域と配列番号11のアミノ酸配列を有するVL領域から成るヒト化抗体#0、配列番号8のアミノ酸配列を有するVH領域と配列番号11のアミノ酸配列を有するVL領域から成るヒト化抗体#1、配列番号8のアミノ酸配列を有するVH領域と配列番号12のアミノ酸配列を有するVL領域から成るヒト化抗体#2、配列番号8のアミノ酸配列を有するVH領域と配列番号13のアミノ酸配列を有するVL領域から成るヒト化抗体#3、配列番号7のアミノ酸配列を有するVH領域と配列番号12のアミノ酸配列を有するVL領域から成るヒト化抗体#4、配列番号7のアミノ酸配列を有するVH領域と配列番号13のアミノ酸配列を有するVL領域から成るヒト化抗体#5、配列番号7のアミノ酸配列を有するVH領域と配列番号15のアミノ酸配列を有するVL領域から成るヒト化抗体#6、配列番号8のアミノ酸配列を有するVH領域と配列番号15のアミノ酸配列を有するVL領域から成るヒト化抗体#7、配列番号9のアミノ酸配列を有するVH領域と配列番号15のアミノ酸配列を有するVL領域から成るヒト化抗体#8、配列番号10のアミノ酸配列を有するVH領域と配列番号14のアミノ酸配列を有するVL領域から成るヒト化抗体#9、配列番号10のアミノ酸配列を有するVH領域と配列番号15のアミノ酸配列を有するVL領域から成るヒト化抗体#10、及び配列番号20のアミノ酸配列を有するVH領域と配列番号21のアミノ酸配列を有するVL領域から成るヒト−ウサギキメラ抗体を含む。
【0052】
ヒト化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称される改変抗体である。ヒト化抗体は、免疫動物由来の抗体の相補性決定領域を、ヒト抗体の相補性決定領域へ移植することによって構築される。その一般的な遺伝子組換え手法も知られている。
【0053】
具体的には、例えば、マウス抗体、ウサギ抗体やニワトリ抗体の相補性決定領域とヒト抗体のフレームワーク領域を連結するように設計したDNA配列を、末端部にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドからPCR法により合成する。得られたDNAを、ヒト抗体定常領域をコードするDNAと連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開第EP239400号、国際公開第WO96/02576号参照)。相補性決定領域を介して連結されるヒト抗体のフレームワーク領域は、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように抗体の可変領域におけるフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato K. et al., Cancer Research 1993, 53: 851−856)。また、様々なヒト抗体由来のフレームワーク領域に置換してもよい(国際公開第WO99/51743号参照)。
【0054】
キメラ抗体やヒト化抗体を作製する際には、可変領域(例えば、FR)や定常領域中のアミノ酸を他のアミノ酸で置換等してもよい。
【0055】
アミノ酸の置換は、1もしくは複数個、例えば、15未満、10未満、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、又は2以下のアミノ酸、好ましくは1〜9アミノ酸の置換であり、置換抗体は、未置換抗体と機能的に同等であるべきである。
【0056】
ここで「機能的に同等」とは、対象となる抗体が本発明の抗体と同様の生物学的あるいは生化学的活性、具体的には腫瘍を障害する機能を有すること、ヒトへの適用時に拒絶反応を本質的に起こさないことなどを指す。このような活性としては、例えば、細胞増殖抑制活性、あるいは結合活性を例示することができる。
【0057】
あるポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドを調製するための、当業者によく知られた方法としては、ポリペプチドに変異を導入してアミノ酸置換する方法が知られている。例えば、当業者であれば、部位特異的変異誘発法(Hashimoto−Gotoh, T. et al., (1995) Gene 152, 271−275、Zoller, MJ., and Smith, M. (1983) Methods Enzymol. 100, 468−500、Kramer, W. et al., (1984) Nucleic Acids Res. 12, 9441−9456、Kramer, W. and Fritz, HJ., (1987) Methods Enzymol. 154, 350−367、Kunkel, TA., (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 82, 488−492、Kunkel (1988) Methods Enzymol. 85, 2763−2766)等を用いて、本発明の抗体に適宜アミノ酸置換を導入することにより、該抗体と機能的に同等な抗体を調製することができる。
【0058】
アミノ酸置換を導入する場合、置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。保存的アミノ酸置換とは、電荷、側鎖、極性、芳香族性等の性質の類似するアミノ酸間の置換である。性質の類似したアミノ酸は、例えば、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン、ヒスチジン)、酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性アミノ酸(グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン)、無極性アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、アラニン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン)、分枝鎖アミノ酸(ロイシン、バリン、イソロイシン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン)等に分類しうる。
【0059】
抗体修飾物としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)等の各種分子と結合した抗体を挙げることができる。本発明の抗体修飾物においては、結合される物質は限定されない。このような抗体修飾物を得るには、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。これらの方法はこの分野において既に確立されている。
【0060】
CAPRIN−1タンパク質又はそれを含むCAPRIN−1断片ポリペプチドを認識する抗体は、当業者に公知の方法により得ることが可能である。例えば、抗CAPRIN−1抗体が認識するCAPRIN−1タンパク質のエピトープを通常の方法(例えば、エピトープマッピングや後述にあるエピトープの同定の方法等)により決定し、該エピトープに含まれるアミノ酸配列を有するポリペプチドを免疫原として抗体を作製する方法や、通常の方法で作製された抗体のエピトープを決定し、抗CAPRIN−1抗体とエピトープが同じ抗体を選択する方法等により得ることができる。
【0061】
本発明の抗体は、CAPRIN−1と免疫学的反応性を有する抗体、CAPRIN−1を特異的に認識する抗体、又はCAPRIN−1と特異的に結合する抗体であって、癌に対する細胞障害活性、又は腫瘍増殖抑制作用を示す抗体である。該抗体は、それを投与する対象動物において拒絶反応がほとんど又は全く回避されるような構造をもつ抗体であることが好ましい。そのような抗体としては、例えば、対象動物がヒトである場合、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体(例えば、ヒト−ウサギキメラ抗体)、単鎖抗体、二重特異性抗体等が挙げられる。これらの抗体は、重鎖及び軽鎖の可変領域がヒト抗体由来のものであるか、重鎖及び軽鎖の可変領域が非ヒト動物抗体由来の相補性決定領域(CDR1、CDR2及びCDR3)とヒト抗体由来のフレームワーク領域(FR1、FR2、FR3及びFR4)からなるものであるか、又は、重鎖及び軽鎖の可変領域が非ヒト動物抗体由来のものであり、かつ、重鎖及び軽鎖の定常領域がヒト抗体由来のものである組換え型抗体である。好ましい抗体は、前2つの抗体である。
【0062】
これらの組換え型抗体は、次のようにして作製することができる。ハイブリドーマ等の抗体産生細胞からヒトCAPRIN−1に対するモノクローナル抗体(例えば、ヒトモノクローナル抗体、マウスモノクローナル抗体、ラットモノクローナル抗体、ウサギモノクローナル抗体、ニワトリモノクローナル抗体等)をコードするDNAをクローニングし、これを鋳型にして該抗体の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域をコードするDNAをRT−PCR法等により作製し、例えば、Kabat EU numbering system(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5thEd. Public Health Service, National Institute of Health, Bethesda, Md. (1991))に基づいて軽鎖及び重鎖の、各可変領域の配列、又は各CDR1、CDR2、CDR3の配列、又は各FR1、FR2、FR3、FR4の配列を決定することができる。
【0063】
さらに、これらの各可変領域をコードするDNA又は各相補性決定領域をコードするDNAを、遺伝子組換え技術(Sambrookら,Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989))又はDNA合成機を用いて作製する。ここで、上記ヒトモノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、ヒト抗体産生動物(例えば、マウス)にヒトCAPRIN−1を免疫したのち、該免疫動物から切除した脾細胞とミエローマ細胞とを融合させることによって作製することができる。これとは別に、必要に応じて、遺伝子組換え技術又はDNA合成機を用いてヒト抗体由来の軽鎖又は重鎖の可変領域及び定常領域をコードするDNAを作製する。
【0064】
ヒト化抗体の場合には、ヒト抗体由来の軽鎖又は重鎖の可変領域をコードするDNA中のCDRコーディング配列を、それらに対応する、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ニワトリ等)由来の抗体のCDRコーディング配列と置換することによって、ヒト化抗体をコードするDNAを作製することができる。例えば、ヒト抗体由来のCDRコーディング配列をマウス抗体由来のCDRコーディング配列と置換したヒト化抗体の場合、可変領域は、N末側からヒトFR1、マウスCDR1、ヒトFR2、マウスCDR2、ヒトFR3、マウスCDR4、及びヒトFR4の順で構成される。
【0065】
キメラ抗体の場合には、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ニワトリ等)由来の抗体の軽鎖又は重鎖の可変領域をコードするDNAをそれぞれ、ヒト抗体由来の軽鎖又は重鎖の定常領域をコードするDNAと連結することによって、キメラ抗体をコードするDNAを作製することができる。
【0066】
単鎖抗体の場合には、この抗体は重鎖可変領域と軽鎖可変領域とをリンカーを介して直線状に連結された抗体であり、重鎖可変領域をコードするDNA、リンカーをコードするDNA、及び軽鎖可変領域をコードするDNAを結合することによって単鎖抗体をコードするDNAを作製することができる。ここで、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域はいずれも、ヒト抗体由来のものであるか、あるいは、相補性決定領域のみヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ニワトリ等)由来の抗体の相補性決定領域によって置換されたヒト抗体由来のものである。また、リンカーは、12〜19アミノ酸からなり、例えば、15アミノ酸の(G
4S)
3(G. -B. Kimら,Protein Engineering Design and Selection 2007, 20(9): 425−432)が挙げられる。
【0067】
二重特異性抗体(例えば、diabody)の場合には、この抗体は2つの異なるエピトープと特異的に結合可能な抗体であり、例えば、重鎖可変領域AをコードするDNA、軽鎖可変領域BをコードするDNA、重鎖可変領域BをコードするDNA、及び軽鎖可変領域AをコードするDNAをこの順序で結合する(ただし、軽鎖可変領域BをコードするDNAと重鎖可変領域BをコードするDNAとは上記のようなリンカーをコードするDNAを介して結合される。)ことによって二重特異性抗体をコードするDNAを作製することができる。ここで、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域はいずれも、ヒト抗体由来のものであるか、あるいは、相補性決定領域のみヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ニワトリ等)由来の抗体の相補性決定領域によって置換されたヒト抗体由来のものである。
【0068】
上記のようにして作製された組換えDNAを、1つ又は複数の適当なベクターに組み込み、これを宿主細胞(例えば、哺乳動物細胞、酵母細胞、昆虫細胞等)に導入し、(共)発現させることによって組換え型抗体を作製することができる(P.J. Delves., ANTIBODY PRODUCTION ESSENTIAL TECHNIQUES., 1997 WILEY、P. Shepherd and C. Dean., Monoclonal Antibodies., 2000 OXFORD UNIVERSITY PRESS; J.W. Goding., Monoclonal Antibodies: principles and practice., 1993 ACADEMIC PRESS)。
【0069】
上記方法によって作製される本発明の抗体としては、例えば、後述の実施例で取得された配列番号1、2及び3を含む重鎖可変領域と配列番号4、5及び6を含む軽鎖可変領域とを含む以下の抗体(a)〜(l)が挙げられる。
【0070】
(a)配列番号8の重鎖可変領域及び配列番号15の軽鎖可変領域で構成される抗体
(b)配列番号10の重鎖可変領域及び配列番号15の軽鎖可変領域で構成される抗体
(c)配列番号7の重鎖可変領域及び配列番号15の軽鎖可変領域で構成される抗体
(d)配列番号8の重鎖可変領域及び配列番号13の軽鎖可変領域で構成される抗体
(e)配列番号7の重鎖可変領域及び配列番号12の軽鎖可変領域で構成される抗体
(f)配列番号8の重鎖可変領域及び配列番号12の軽鎖可変領域で構成される抗体
(g)配列番号7の重鎖可変領域及び配列番号13の軽鎖可変領域で構成される抗体
(h)配列番号10の重鎖可変領域及び配列番号14の軽鎖可変領域で構成される抗体
(i)配列番号8の重鎖可変領域及び配列番号11の軽鎖可変領域で構成される抗体
(j)配列番号7の重鎖可変領域及び配列番号11の軽鎖可変領域で構成される抗体
(k)配列番号9の重鎖可変領域及び配列番号15の軽鎖可変領域で構成される抗体
(l)配列番号20の重鎖可変領域及び配列番号21の軽鎖可変領域で構成される抗体
ここで、配列番号1、2及び3に示すアミノ酸配列はそれぞれ、ウサギ抗体の重鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3であり、配列番号4、5及び6に示すアミノ酸配列はそれぞれ、ウサギ抗体の軽鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3である。
【0071】
また、本発明のヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体又は二重特異性抗体は、例えば以下の抗体(i)〜(xiv)である。
【0072】
(i)重鎖の可変領域が配列番号1、2及び3のアミノ酸配列及びヒト抗体由来のフレームワーク領域のアミノ酸配列もしくはその置換体を含み、並びに、軽鎖の可変領域が配列番号4、5及び6のアミノ酸配列及びヒト抗体由来のフレームワーク領域のアミノ酸配列もしくはその置換体を含む抗体。
【0073】
(ii)重鎖の可変領域が配列番号1、2及び3のアミノ酸配列及びヒト抗体由来のフレームワーク領域のアミノ酸配列もしくはその置換体を含み、かつ、重鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含み、並びに、軽鎖の可変領域が配列番号4、5及び6のアミノ酸配列及びヒト抗体由来のフレームワーク領域のアミノ酸配列もしくはその置換体を含み、かつ、軽鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含んでなる抗体。
【0074】
(iii)重鎖の可変領域が配列番号8のアミノ酸配列を含み、かつ、重鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含み、並びに、軽鎖の可変領域が配列番号15のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含んでなる抗体。
【0075】
(iv)重鎖の可変領域が配列番号10のアミノ酸配列を含み、かつ、重鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含み、並びに、軽鎖の可変領域が配列番号15のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含んでなる抗体。
【0076】
(v)重鎖の可変領域が配列番号7のアミノ酸配列を含み、かつ、重鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含み、並びに、軽鎖の可変領域が配列番号15のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含んでなる抗体。
【0077】
(vi)重鎖の可変領域が配列番号8のアミノ酸配列を含み、かつ、重鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含み、並びに、軽鎖の可変領域が配列番号13のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含んでなる抗体。
【0078】
(vii)重鎖の可変領域が配列番号7のアミノ酸配列を含み、かつ、重鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含み、並びに、軽鎖の可変領域が配列番号12のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含んでなる抗体。
【0079】
(viii)重鎖の可変領域が配列番号8のアミノ酸配列を含み、かつ、重鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含み、並びに、軽鎖の可変領域が配列番号12のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含んでなる抗体。
【0080】
(ix)重鎖の可変領域が配列番号7のアミノ酸配列を含み、かつ、重鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含み、並びに、軽鎖の可変領域が配列番号13のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含んでなる抗体。
【0081】
(x)重鎖の可変領域が配列番号10のアミノ酸配列を含み、かつ、重鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含み、並びに、軽鎖の可変領域が配列番号14のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含んでなる抗体。
【0082】
(xi)重鎖の可変領域が配列番号8のアミノ酸配列を含み、かつ、重鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含み、並びに、軽鎖の可変領域が配列番号11のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含んでなる抗体。
【0083】
(xii)重鎖の可変領域が配列番号7のアミノ酸配列を含み、かつ、重鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含み、並びに、軽鎖の可変領域が配列番号11のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含んでなる抗体。
【0084】
(xiii)重鎖の可変領域が配列番号9のアミノ酸配列を含み、かつ、重鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含み、並びに、軽鎖の可変領域が配列番号15のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含んでなる抗体。
【0085】
(xiv)重鎖の可変領域が配列番号20のアミノ酸配列を含み、かつ、重鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含み、並びに、軽鎖の可変領域が配列番号21のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含んでなる抗体。
【0086】
なお、ヒト抗体重鎖及び軽鎖の定常領域及び可変領域のフレームワーク領域の配列は、例えば、NCBI(米国:GenBank、UniGene等)から入手可能であり、例えば、ヒトIgG1重鎖定常領域については登録番号J00228、ヒトIgG2重鎖定常領域については登録番号J00230、ヒトIgG3重鎖定常領域については登録番号X03604、ヒトIgG4重鎖定常領域については登録番号K01316、ヒト軽鎖κ定常領域については登録番号V00557、X64135、X64133等、ヒト軽鎖λ定常領域については登録番号X64132、X64134等の配列を参照することができる。
【0087】
上記抗体は、好ましくは、細胞障害活性を有しており、これによって抗腫瘍効果(あるいは抗腫瘍活性)を発揮することができる。
【0088】
さらに上記抗体は、CAPRIN−1を特異的に認識するという特異性を有する限り、各抗体の相補性決定領域の配列、フレームワーク領域の配列及び/又は定常領域の配列において、1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失又は付加があってもよい。ここで数個とは、好ましくは1〜9個を意味する。
【0089】
本発明の抗体の、CAPRIN−1タンパク質又はその断片に対する親和定数Ka(k
on/k
off)は、好ましくは、少なくとも少なくとも5×10
8M
−1、少なくとも10
9M
−1、少なくとも5×10
9M
−1、少なくとも10
10M
−1、少なくとも5×10
10M
−1、少なくとも10
11M
−1、少なくとも5×10
11M
−1、少なくとも10
12M
−1、少なくとも10
13M
−1、あるいは少なくとも10
14M
−1である。
【0090】
本発明の抗体によるCAPRIN−1発現癌細胞に対する抗腫瘍効果の機序の1つとして、CAPRIN−1発現細胞のエフェクター細胞抗体依存的細胞障害性(ADCC)がある。本発明の抗体の重鎖定常領域のアミノ酸を1もしくは数個置換する、あるいは、重鎖定常領域に結合するN−グリコシド結合糖鎖中のN−アセチルグルコサミンに結合しているフコースを除去することによって、本発明の抗体のADCCによる抗腫瘍活性を増強することができる。さらに、上記重鎖定常領域のアミノ酸置換及びフコース除去を組み合わせることによって、本発明の抗体のADCCによる抗腫瘍活性をさらに増強させることができる。
【0091】
また、本発明における重鎖定常領域に結合するN−グリコシド結合糖鎖中のN−アセチルグルコサミンに結合しているフコースを除去した抗体は、それ単独であってもよいし、また、フコースが結合している抗体との組成物であってもよい。当該抗体の組成物においては、フコースを除去した抗体が主成分であることが好ましい。
【0092】
重鎖定常領域のアミノ酸を1もしくは数個置換された抗体は、例えば国際公開第WO2004/063351号、国際公開第WO2011/120135号、米国特許8388955号、国際公開第WO2011/005481号、米国特許6737056号、国際公開第WO2005/063351号を参照して作製することができる。重鎖定常領域中のN−グリコシド結合糖鎖中のN−アセチルグルコサミンに付加しているフコースが除去された抗体又はその産生細胞は、例えば米国特許6602684号、欧州特許1914244号、米国特許7579170号を参照して作製することができる。重鎖定常領域に結合するN−グリコシド結合糖鎖中のN−アセチルグルコサミンに結合しているフコースを除去した抗体とフコースが結合している抗体の組成物又はその産生細胞は、例えば米国特許8642292号を参照して作製することができる。
【0093】
本発明の抗体は、抗腫瘍剤とコンジュゲートすることができる。抗体と抗腫瘍剤との結合は、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、チオール基等と反応性の基(例えば、コハク酸イミジル基、ホルミル基、2−ピリジルジチオ基、マレイイミジル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基等)をもつスペーサーを介して行うことができる。
【0094】
抗腫瘍剤の例は、文献等で公知の下記の抗腫瘍剤、すなわち、パクリタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シクロホスファミド、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、チオテパ、ブスルファン、インプロスルファン、ピポスルファン、ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、ウレドーパ(uredopa)、アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethilenethiophosphoramide)、トリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)、ブラタシン、ブラタシノン、カンプトセシン、ブリオスタチン、カリスタチン(callystatin)、クリプトフィシン1、クリプトフィシン8、ドラスタチン、ズオカルマイシン、エレウテロビン、パンクラチスタチン、サルコジクチン(sarcodictyin)、スポンジスタチン、クロランブシル、クロロナファジン(chloRNAphazine)、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード、カルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、カリケアマイシン(calicheamicin)、ダイネマイシン、クロドロネート、エスペラマイシン、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、デトルビシン(detorbicin)、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、アドリアマイシン(adriamycin)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マーセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンC、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin)、デノプテリン(denopterin)、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate)、フルダラビン(fludarabine)、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン、アンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6−アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine);アンドロゲン類、例えば、カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone)、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン、フロリン酸(frolinic acid)、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、エニルウラシル、アムサクリン(amsacrine)、ベストラブシル(bestrabucil)、ビサントレン(bisantrene)、エダトラキセート(edatraxate)、デフォファミン(defofamine)、デメコルシン(demecolcine)、ジアジコン(diaziquone)、エルフォルニチン (elfornithine)、酢酸エリプチニウム(elliptinium)、エポチロン(epothilone)、エトグルシド(etoglucid)、レンチナン、ロニダミン(lonidamine)、メイタンシン(maytansine)、アンサミトシン(ansamitocine)、ミトグアゾン(mitoguazone)、ミトキサントロン、モピダンモール(mopidanmol)、ニトラエリン(nitraerine)、ペントスタチン、フェナメット(phenamet)、ピラルビシン、ロソキサントロン(losoxantrone)、ポドフィリン酸(podophyllinic acid)、2−エチルヒドラジド、プロカルバジン、ラゾキサン(razoxane)、リゾキシン、シゾフィラン、スピロゲルマニウム(spirogermanium)、テニュアゾン酸(tenuazonic acid)、トリアジコン(triaziquone)、ロリジン(roridine)A、アングイジン(anguidine)、ウレタン、ビンデシン、ダカーバジン、マンノムスチン(mannomustine)、ミトブロニトール、ミトラクトール(mitolactol)、ピポブロマン(pipobroman)、ガシトシン(gacytosine)、ドキセタキセル、クロランブシル、ゲムシタビン(gemcitabine)、6−チオグアニン、メルカプトプリン、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、ビンブラスチン、エトポシド、イホスファミド、マイトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ノバントロン(novantrone)、テニポシド、エダトレキセート(edatrexate)、ダウノマイシン、アミノプテリン、キセローダ(xeloda)、イバンドロナート(ibandronate)、イリノテカン、トポイソメラーゼインヒビター、ジフルオロメチロールニチン(DMFO)、レチノイン酸、カペシタビン(capecitabine)、並びにそれらの薬学的に許容可能な塩又は誘導体を包含する。
【0095】
抗体が、抗腫瘍剤とコンジュゲートした抗体である場合に、抗腫瘍活性を発揮するかどうかを評価する方法としては、例えば、マウス由来の抗CAPRIN−1抗体ならば、マウス抗体に結合する二次抗体に薬物が付いたものを同時に反応させて、ヒト癌細胞に対する抗腫瘍効果を生体外で評価することができる。例えば、サポリン(Saporin)が結合されたセカンドイムノトキシンである抗ヒトIgG抗体 (Hum−ZAP(Advanced Targeting Systems))を用いて評価ができる。
【0096】
また、本発明の抗体と、抗腫瘍剤を併用投与することで、より高い治療効果を得ることができる。本手法は、CAPRIN−1が発現している癌患者に対して、外科的手術前後どちらにおいても適応できる。特に手術後に、従来抗腫瘍剤単独で処置されていたCAPRIN−1が発現している癌に対して、より高い癌再発防止や生存期間の延長が得られる。
【0097】
本発明の抗体との併用投与に用いられる抗腫瘍剤には、例えば、前記抗腫瘍剤を利用することができる。特にシクロホスファミド、パクリタキセル、ドキセタキセル、ビノレルビンが好ましく用いられる。
【0098】
あるいは、本発明の抗体には、文献等で公知の、
211At、
131I、
125I、
90Y、
186Re、
188Re、
153SM、
212Bi、
32P、
175Lu、
176Lu、
89Sr、
64Cu、
111In等の放射性同位体を結合することも可能である(Hideo Saji, YAKUGAKU ZASSHI 128(3) 323−332 8(2008), Jpn)。放射性同位体は、腫瘍の治療や診断のために有効なものが望ましい。このような放射性同位体も、本発明における抗腫瘍剤に含まれる。
【0099】
<抗腫瘍効果>
本発明で用いられる抗CAPRIN−1抗体によるCAPRIN−1発現癌細胞に対する抗腫瘍効果は、以下の機序等により起こると考えられる:前述のCAPRIN−1発現細胞のエフェクター細胞抗体依存的細胞障害性(ADCC)、及びCAPRIN−1発現細胞の抗体依存的細胞貪食性(ADCP)。ただし、この機序により本発明の範囲を限定することは意図しない。
【0100】
したがって、本発明で用いられる抗CAPRIN−1抗体の活性評価は、以下実施例に具体的に示されるように、生体外で、CAPRIN−1を発現する癌細胞に対して上記ADCC活性又はADCP活性を測定することで評価することができる。
【0101】
本発明で用いられる抗CAPRIN−1抗体は、癌細胞上のCAPRIN−1タンパク質と結合し、上記活性等によって、抗腫瘍作用を示すことから、癌の治療あるいは予防に有用であると考えられる。すなわち本発明は、抗CAPRIN−1抗体を有効成分とする、癌の治療及び/又は予防のための医薬組成物を提供する。抗CAPRIN−1抗体を人体に投与する目的(抗体治療)で使用する場合には、免疫原性を低下させるため、ヒト抗体やヒト化抗体にすることが好ましい。
【0102】
なお、抗CAPRIN−1抗体と癌細胞表面上のCAPRIN−1タンパク質との結合親和性が高い程、抗CAPRIN−1抗体による、より強い抗腫瘍活性が得られる。したがって、本発明の抗体は、CAPRIN−1タンパク質と高い結合親和性を有するため、より強い抗腫瘍効果が期待でき、癌の治療及び/又は予防を目的とした医薬組成物として適応することが可能になる。本発明の抗体は、高い結合親和性として、前述したように、結合定数(親和定数)Ka(k
on/k
off)が、好ましくは、少なくとも5×10
8M
−1、少なくとも10
9M
−1、少なくとも5×10
9M
−1、少なくとも10
10M
−1、少なくとも5×10
10M
−1、少なくとも10
11M
−1、少なくとも5×10
11M
−1、少なくとも10
12M
−1、少なくとも10
13M
−1、あるいは、少なくとも10
14M
−1を有することが好ましい。
【0103】
<抗原発現細胞への結合>
抗体がCAPRIN−1に結合する能力は、実施例で述べられるような、例えば、ELISA法、ウエスタンブロット法、免疫蛍光及びフローサイトメトリー分析等を用いた結合アッセイを利用して特定することができる。
【0104】
<免疫組織化学染色>
CAPRIN−1を認識する抗体は、当業者に周知の方法での免疫組織化学において用いることができる。例えば、外科手術の間に患者から得た組織や、自然に又はトランスフェクション後にCAPRIN−1を発現する細胞系を接種した異種移植組織を担持する動物から得た組織を、パラホルムアルデヒド又はアセトン固定して得られた凍結切片、又はパラホルムアルデヒドで固定したパラフィン包埋した組織切片を使用して、CAPRIN−1との反応性に関して試験することができる。
【0105】
免疫組織化学染色のため、CAPRIN−1に対して反応性のある抗体を、様々な方法で染色させることができる。例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ複合ヤギ抗マウス抗体、ヤギ抗ウサギ抗体やヤギ抗ニワトリ抗体を反応させることにより、可視化することができる。
【0106】
<医薬組成物、及び癌の治療及び/又は予防方法>
本発明の癌の治療及び/又は予防のための医薬組成物の標的は、CAPRIN−1遺伝子を発現する癌(細胞)であれば特に限定されない。
【0107】
本明細書で使用される「腫瘍」及び「癌」という用語は、悪性新生物を意味し、互換的に使用される。
【0108】
本発明において対象となる癌としては、CAPRIN−1タンパク質を細胞膜表面上に発現している癌であればいかなる癌でもよい。好ましくは、前述の乳癌、腎癌、膵臓癌、大腸癌、肺癌、脳腫瘍、胃癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌、食道癌、白血病、リンパ腫、肝臓癌、胆嚢癌、肉腫、肥満細胞腫、メラノーマ、副腎皮質癌、ユーイング腫瘍、ホジキンリンパ腫、中皮腫、多発性骨髄腫、睾丸癌、甲状腺癌又は頭頸部癌である。
【0109】
上記癌は、より具体的には、例えば、乳腺癌、複合型乳腺癌、乳腺悪性混合腫瘍、乳管内乳頭状腺癌、肺腺癌、扁平上皮癌、小細胞癌、大細胞癌、神経上皮組織性腫瘍である神経膠腫、膠芽腫、神経芽腫、脳室上衣腫、神経細胞性腫瘍、胎児型の神経外胚葉性腫瘍、神経鞘腫、神経線維腫、髄膜腫、慢性型リンパ球性白血病、消化管型リンパ腫、消化器型リンパ腫、小〜中細胞型リンパ腫、盲腸癌、上行結腸癌、下行結腸癌、横行結腸癌、S状結腸癌、直腸癌、卵巣上皮癌、胚細胞腫瘍、間質細胞腫瘍、膵管癌、浸潤性膵管癌、膵臓癌の腺癌、腺房細胞癌、腺扁平上皮癌、巨細胞腫、膵管内乳頭粘液性腫瘍、粘液性嚢胞腺癌、膵芽腫、膵頭細胞腫、Frants腫瘍、漿液性嚢胞腺癌、固体乳頭状癌、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、インスリノーマ、多発性内分泌腺腫症1(Wermer症候群)、非機能性島細胞腫、ソマトスタチノーマ、VIP産生腫瘍、子宮頸癌、子宮体癌、線維肉腫、骨・関節肉種、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍、肝芽腫、軟部肉腫、急性白血病、慢性白血病、脊髄腫瘍、軟部悪性腫瘍、奇形腫群腫瘍、頭頸部癌には下咽頭癌、中咽頭癌、舌癌、上咽頭癌、口腔癌、口唇癌、副鼻腔癌、喉頭癌等を包含するが、これらに限定されない。
【0110】
また、対象となる好ましい被験者(患者)は、哺乳動物であり、例えば、霊長類、ペット動物、家畜類、競技用動物等を含む哺乳動物であり、特にヒト、イヌ及びネコが好ましい。
【0111】
本発明で用いられる抗体を医薬組成物として用いる場合には、当業者に公知の方法で製剤化することが可能である。例えば、水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、又は懸濁液剤の注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、薬理学上許容される担体又は媒体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤等と適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することが考えられる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な用量が得られるようにするものである。
【0112】
注射のための無菌組成物は注射用蒸留水のようなベヒクルを用いて通常の製剤実施に従って処方することができる。
【0113】
注射用の水溶液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えば、D−ソルビトール、D−マンノース、D−マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えば、ポリソルベート80(TM)、HCO−60と併用してもよい。
【0114】
油性液としてはゴマ油、大豆油があげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールと併用してもよい。また、緩衝剤、例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液、無痛化剤、例えば、塩酸プロカイン、安定剤、例えば、ベンジルアルコール、フェノール、酸化防止剤と配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填させる。
【0115】
投与は、経口又は非経口であり、好ましくは非経口投与であり、具体的には、注射剤型、経鼻投与剤型、経肺投与剤型、経皮投与型等が挙げられる。注射剤型の例としては、例えば、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射等により全身又は局部的に投与することができる。
【0116】
また、患者の年齢、体重、性別、症状等により適宜投与方法を選択することができる。抗体又は抗体をコードするポリヌクレオチドを含有する医薬組成物の投与量としては、例えば、一回につき体重1kgあたり0.0001mgから1000mgの範囲で選ぶことが可能である。あるいは、例えば、患者あたり0.001〜100000mg/bodyの範囲で投与量を選ぶことができるが、これらの数値に必ずしも制限されるものではない。投与量、投与方法は、患者の体重、年齢、性別、症状等により変動するが、当業者であれば適宜選択することが可能である。
【0117】
本発明の抗体又はそのフラグメントを含む上記の医薬組成物を被験者に投与することによって癌、好ましくは、乳癌、腎癌、膵臓癌、大腸癌、肺癌、脳腫瘍、胃癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌、食道癌、白血病、リンパ腫、肝臓癌、胆嚢癌、肉腫、肥満細胞腫、メラノーマ、副腎皮質癌、ユーイング腫瘍、ホジキンリンパ腫、中皮腫、多発性骨髄腫、睾丸癌、甲状腺癌、又は頭頸部癌を治療及び/又は予防することができる。
【0118】
さらに、本発明の医薬組成物を、上で例示したような抗腫瘍剤又は抗腫瘍剤を含む医薬組成物と組み合わせて、被験者に併用投与することを含む、癌の治療及び/又は予防方法も本発明に包含される。本発明の抗体又はそのフラグメントと抗腫瘍剤は、同時に、又は、別々に被験者に投与されうる。別々に投与する場合には、いずれの医薬組成物が先であっても又は後であってもよく、それらの投与間隔、投与量、投与経路及び投与回数は、専門医によって適宜選択されうる。同時に投与する場合、例えば、本発明の抗体又はそのフラグメントと抗腫瘍剤を、薬理学上許容される担体(又は媒体)中で混合し製剤化して得られる医薬剤型の医薬組成物も包含されるものとする。また、抗腫瘍剤を含有する上記医薬組成物及び剤型のいずれに対しても、本発明の抗体を含有する医薬組成物及び剤型についての処方、製剤化、投与経路、用量、癌等の説明を適用しうる。
【0119】
したがって、本発明は、本発明の医薬組成物と、上で例示したような抗腫瘍剤を含む医薬組成物とを含む、癌の治療及び/又は予防のための組み合わせ医薬品及びそれを投与することを含む、癌の治療及び/又は予防方法も提供する。また、本発明は、本発明の抗体又はそのフラグメントと抗腫瘍剤とを、薬理学上許容される担体とともに含む、癌の治療及び/又は予防のための医薬組成物も提供する。
【0120】
<ポリペプチド及びDNA>
本発明はさらに、本発明の上記抗体をコードするDNA、あるいは、上記抗体の重鎖又は軽鎖をコードするDNA、あるいは、上記抗体の重鎖又は軽鎖の可変領域をコードするDNAも提供する。そのようなDNAは、例えば抗体(a)の場合、配列番号1、2及び3のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む重鎖可変領域をコードするDNA、配列番号4、5及び6のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む軽鎖可変領域をコードするDNA、などを含む。
【0121】
これらの配列のDNAによってコードされる相補性決定領域は、抗体の特異性を決定する領域であるため、抗体のそれ以外の領域(すなわち、定常領域及びフレームワーク領域)をコードする配列は他の抗体由来の配列であってもよい。ここで他の抗体とはヒト以外の生物由来の抗体も含むが、副作用低減の観点からはヒト由来のものが好ましい。すなわち、上記のDNAでは、重鎖及び軽鎖の各フレームワーク領域及び各定常領域をコードする領域がヒト抗体由来の対応アミノ酸配列をコードする塩基配列を含むことが好ましい。
【0122】
さらに、本発明の抗体をコードするDNAの別の例は、例えば配列番号8のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む重鎖可変領域をコードするDNA、軽鎖可変領域をコードする領域が配列番号15のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むDNAなどである。ここで、配列番号8のアミノ酸配列をコードする塩基配列の例は、配列番号23の塩基配列である。また、配列番号15のアミノ酸配列をコードする塩基配列の例は、配列番号30の塩基配列である。これらのDNAでも、重鎖及び軽鎖の各定常領域をコードする領域がヒト抗体由来の対応アミノ酸配列をコードする塩基配列を含むことが好ましい。
【0123】
これら抗体のDNAは、例えば上記の方法又は以下の方法で得ることができる。まず、本発明の抗体に関わるハイブリドーマから、市販のRNA抽出キットを用いて全RNAを調製し、ランダムプライマー等を用いて逆転写酵素によりcDNAを合成する。次いで既知のマウス抗体重鎖遺伝子及び軽鎖遺伝子の各可変領域において、それぞれ保存されている配列のオリゴヌクレオチドをプライマーに用いたPCR法によって、抗体をコードするcDNAを増幅させる。定常領域をコードする配列については、既知の配列をPCR法で増幅することによってえることができる。DNAの塩基配列は、配列決定用プラスミド又はファージに組み込むなどして、常法により決定することができる。
【0124】
本発明はさらに、上記抗体(i)〜(xiv)に関わる以下の(i)〜(xv)に記載のポリペプチド及びDNAも提供する。
【0125】
(i)配列番号1、2及び3に示すアミノ酸配列からなる群から選択される、重鎖CDRポリペプチド、及び該ポリペプチドをコードするDNA。
【0126】
(ii)配列番号4、5及び6に示すアミノ酸配列から選択される、軽鎖CDRポリペプチド、及び該ポリペプチドをコードするDNA。
【0127】
(iii)配列番号8及び配列番号15のアミノ酸配列を含むポリペプチド並びに該ポリペプチドをコードするDNA、例えば配列番号23及び配列番号30の塩基配列を含むDNA。
【0128】
(iv)配列番号10及び配列番号15のアミノ酸配列を含むポリペプチド並びに該ポリペプチドをコードするDNA、例えば配列番号25及び配列番号30の塩基配列を含むDNA。
【0129】
(v)配列番号7及び配列番号15のアミノ酸配列を含むポリペプチド並びに該ポリペプチドをコードするDNA、例えば配列番号22及び配列番号30の塩基配列を含むDNA。
【0130】
(vi)配列番号8及び配列番号13のアミノ酸配列を含むポリペプチド並びに該ポリペプチドをコードするDNA、例えば配列番号23及び配列番号28の塩基配列を含むDNA。
【0131】
(vii)配列番号7及び配列番号12のアミノ酸配列を含むポリペプチド並びに該ポリペプチドをコードするDNA、例えば配列番号22及び配列番号27の塩基配列を含むDNA。
【0132】
(viii)配列番号8及び配列番号12のアミノ酸配列を含むポリペプチド並びに該ポリペプチドをコードするDNA、例えば配列番号23及び配列番号27の塩基配列を含むDNA。
【0133】
(ix)配列番号7及び配列番号13のアミノ酸配列を含むポリペプチド並びに該ポリペプチドをコードするDNA、例えば配列番号22及び配列番号28の塩基配列を含むDNA。
【0134】
(x)配列番号10及び配列番号14のアミノ酸配列を含むポリペプチド並びに該ポリペプチドをコードするDNA、例えば配列番号25及び配列番号29の塩基配列を含むDNA。
【0135】
(xi)配列番号8及び配列番号11のアミノ酸配列を含むポリペプチド並びに該ポリペプチドをコードするDNA、例えば配列番号23及び配列番号26の塩基配列を含むDNA。
【0136】
(xii)配列番号7及び配列番号11のアミノ酸配列を含むポリペプチド並びに該ポリペプチドをコードするDNA、例えば配列番号22及び配列番号26の塩基配列を含むDNA。
【0137】
(xiii)配列番号9及び配列番号15のアミノ酸配列を含むポリペプチド並びに該ポリペプチドをコードするDNA、例えば配列番号24及び配列番号30の塩基配列を含むDNA。
【0138】
(xiv)配列番号20及び配列番号21のアミノ酸配列を含むポリペプチド並びに該ポリペプチドをコードするDNA、例えば配列番号31及び配列番号32の塩基配列を含むDNA。
【0139】
(xv)前記(i)〜(xiv)に記載のポリペプチドにおいて重鎖定常領域に1もしくは複数個のアミノ酸置換を含むポリペプチド又はそのフラグメント、並びに該ポリペプチド又はそのフラグメントをコードするDNA。
【0140】
これらのポリペプチド及びDNAは、上記の通り、遺伝子組み換え技術を用いて作製することができる。
【0141】
<本発明の要約>
上で説明した本発明を以下に要約する。
【0142】
(1)配列番号1、2及び3の相補性決定領域を含む重鎖可変領域と配列番号4、5及び6の相補性決定領域を含む軽鎖可変領域とを含み、かつ、CAPRIN−1タンパク質と免疫学的反応性を有する抗体又はそのフラグメント。
【0143】
(2)重鎖の可変領域が配列番号8のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖の可変領域が配列番号15のアミノ酸配列を含んでなる(1)に記載の抗体又はそのフラグメント。
【0144】
(3)重鎖の可変領域が配列番号10のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖の可変領域が配列番号15のアミノ酸配列を含んでなる(1)に記載の抗体又はそのフラグメント。
【0145】
(4)重鎖の可変領域が配列番号7のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖の可変領域が配列番号15のアミノ酸配列を含んでなる(1)に記載の抗体又はそのフラグメント。
【0146】
(5)重鎖の可変領域が配列番号8のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖の可変領域が配列番号13のアミノ酸配列を含んでなる(1)に記載の抗体又はそのフラグメント。
【0147】
(6)重鎖の可変領域が配列番号7のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖の可変領域が配列番号12のアミノ酸配列を含んでなる(1)に記載の抗体又はそのフラグメント。
【0148】
(7)重鎖の可変領域が配列番号8のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖の可変領域が配列番号12のアミノ酸配列を含んでなる(1)に記載の抗体又はそのフラグメント。
【0149】
(8)重鎖の可変領域が配列番号7のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖の可変領域が配列番号13のアミノ酸配列を含んでなる(1)に記載の抗体又はそのフラグメント。
【0150】
(9)重鎖の可変領域が配列番号10のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖の可変領域が配列番号14のアミノ酸配列を含んでなる(1)に記載の抗体又はそのフラグメント。
【0151】
(10)重鎖の可変領域が配列番号8のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖の可変領域が配列番号11のアミノ酸配列を含んでなる(1)に記載の抗体又はそのフラグメント。
【0152】
(11)重鎖の可変領域が配列番号7のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖の可変領域が配列番号11のアミノ酸配列を含んでなる(1)に記載の抗体又はそのフラグメント。
【0153】
(12)重鎖の可変領域が配列番号9のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖の可変領域が配列番号15のアミノ酸配列を含んでなる(1)に記載の抗体又はそのフラグメント。
【0154】
(13)重鎖の可変領域が配列番号20のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖の可変領域が配列番号21のアミノ酸配列を含んでなる(1)に記載の抗体又はそのフラグメント。
【0155】
(14)ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体又は多重特異性抗体である、(1)〜(13)に記載の抗体又はそのフラグメント。
【0156】
(15)抗腫瘍剤がコンジュゲートされた(1)〜(13)に記載の抗体又はそのフラグメント。
【0157】
(16)前記抗体の重鎖定常領域に1もしくは複数個のアミノ酸置換を含む、(1)〜(15)に記載の抗体。
【0158】
(17)前記抗体が、重鎖定常領域に結合するN−グリコシド結合糖鎖の糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンに結合したフコースを除去した抗体である、(1)〜(16)に記載の抗体。
【0159】
(18)前記抗体の組成物であって、(17)に記載の抗体及び重鎖定常領域に結合するN−グリコシド結合糖鎖の糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合した(1)〜(16)に記載の抗体を含む、抗体の組成物。
【0160】
(19)(17)に記載の抗体又は(18)に記載の抗体の組成物を産生する細胞。
【0161】
(20)(1)〜(15)のいずれかに記載の抗体又はそのフラグメント、(16)又は(17)に記載の抗体、あるいは(18)に記載の抗体の組成物を有効成分として含むことを特徴とする、癌の治療及び/又は予防のための医薬組成物。
【0162】
(21)前記癌が乳癌、腎癌、膵臓癌、大腸癌、肺癌、脳腫瘍、胃癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌、食道癌、白血病、リンパ腫、肝臓癌、胆嚢癌、肉腫、肥満細胞腫、メラノーマ、副腎皮質癌、ユーイング腫瘍、ホジキンリンパ腫、中皮腫、多発性骨髄腫、睾丸癌、甲状腺癌又は頭頸部癌である、(20)に記載の医薬組成物。
【0163】
(22)(20)又は(21)に記載の医薬組成物と、抗腫瘍剤を含む医薬組成物とを含んでなる、癌の治療及び/又は予防のための組み合わせ医薬品。
【0164】
(23)(1)〜(16)に記載の抗体又はそのフラグメントをコードするDNA。
【0165】
(24)(1)〜(16)のいずれかに記載の抗体又はそのフラグメント、(17)に記載の抗体、(18)に記載の抗体の組成物、(20)又は(21)に記載の医薬組成物、あるいは(22)に記載の組み合わせ医薬品を、被験者に投与することを含む、癌の治療及び/又は予防方法。
【実施例】
【0166】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの具体例によって制限されないものとする。
【0167】
実施例1:ウサギを用いた抗CAPRIN−1モノクローナル抗体の作製
WO2010/016526の実施例3で調製したヒトCAPRIN−1タンパク質300μgを等量のフロイントの完全アジュバントと混合し、これをウサギ1羽当たりの抗原溶液とした。2回目以降の免疫にはフロインとの不完全アジュバントと混合したものを使用した。抗原溶液を12週齢のウサギの腹腔内に投与後、2〜3週間毎に8回投与を行って免疫を完了した。最後の免疫から4日後に摘出したそれぞれの脾臓からリンパ球を得、ウサギのミエローマ細胞240E−W2と1:2の比率にて混和し、そこに37℃に加温した10% FBSを含むRPMI培地200μLとPEG1500を800μLを混和して調製したPEG溶液を加えて、5分間静置して細胞融合を行った。遠心して上清を除去後、HAT溶液を2%当量加えた10%のFBSを含むRPMI培地(HAT選択培地)300mLで細胞を懸濁し、96穴プレートの1ウェル当たり100μLずつ、プレート80枚に播種した。7日間、37℃、5% CO
2の条件で培養することで、脾臓細胞とウサギミエローマ細胞が融合したハイブリドーマを得た。
【0168】
作製したハイブリドーマが産生する抗体のCAPRIN−1タンパク質に対する反応性を指標にハイブリドーマを選抜した。CAPRIN−1タンパク質溶液1μg/mLを96穴プレート1ウェル当たりに100μL添加し、4℃にて18時間静置した。各ウェルをPBS−Tで3回洗浄後、0.5% Bovine Serum Albumin(BSA)溶液を1ウェル当たり400μL添加して室温にて3時間静置した。溶液を除いて、1ウェル当たり400μLのPBS−Tでウェルを3回洗浄後、上記で得られたハイブリドーマの各培養上清を1ウェル当たり100μL添加し、室温にて2時間静置した。PBS−Tで各ウェルを3回洗浄した後、PBSで5000倍に希釈したHRP標識抗ウサギ抗体を1ウェル当たり100μL添加して室温にて1時間静置した。PBS−Tでウェルを3回洗浄した後、TMB基質溶液を1ウェル当たり100μL添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μL添加して反応を停止させ、吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、吸光度値が高かった抗体を産生するハイブリドーマを複数個選抜した。
【0169】
選抜したハイブリドーマを96穴プレート1ウェル当たりに0.5個となるようにプレートに添加し培養した。1週間後、ウェル中に単一のコロニーを形成しているハイブリドーマが観察された。それらウェルの細胞をさらに培養して、クローニングされたハイブリドーマが産生する抗体のCAPRIN−1タンパク質に対する反応性を指標にハイブリドーマを選抜した。上記と同様の操作によって各抗体のCAPRIN−1タンパク質に対する反応性評価を実施した結果、CAPRIN−1タンパク質に反応性を示すウサギモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ株を複数個得た。
【0170】
次にそれらCAPRIN−1タンパク質に反応性を示すウサギモノクローナル抗体からCAPRIN−1が発現するヒト癌細胞表面に反応性を示すものを選抜した。具体的には、2×10
5個のヒト肺癌細胞株QG56及びヒト乳癌細胞BT−474(ATCCから入手)をそれぞれ1.5mL容のミクロ遠心チューブにて遠心分離し、これに上記各ハイブリドーマの培養上清100μLを添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄した後、0.5%のFBSを含むPBS(−)(0.5% FBS−PBS(−))で100倍希釈したFITC標識抗ウサギIgG(H+L)抗体あるいはAlexa488標識抗ウサギIgG(H+L)を添加し、氷上で1時間静置した。0.5% FBS−PBS(−)で洗浄後、細胞を0.2μg/mLのPropidium iodideと0.5% FBS−PBS(−)に細胞を懸濁して、FACSCalibur
TMあるいはFACSVerse
TM(ベクトン・ディッキンソンアンドカンパニー)で蛍光強度を測定した。一方、上記と同様の操作を、ハイブリドーマ培養用培地を用いて行い、陰性コントロールのサンプルとした。その結果、陰性コントロールに比べて蛍光強度が強い、すなわち、CAPRIN−1が発現している癌細胞QG56ならびにBT−474の細胞表面に強く反応するウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体1個を選抜した。
【0171】
次に、上記で得たウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体について、WO2010/016526の実施例5に記載の方法に沿って、可変領域をコードする遺伝子の増幅断片を取得し、遺伝子配列並びにそのアミノ酸配列を解析した。具体的にはウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマからmRNAを抽出し、ウサギ可変領域配列に特異的なプライマーを使用したRT−PCR法により、本抗体の重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域の遺伝子を取得した。それら遺伝子をクローニングベクターに挿入し、常法に従ってそれぞれの塩基配列を決定した。
【0172】
その結果得られたウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体は、配列番号20に示す重鎖可変領域及び重鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号1、配列番号2、配列番号3のアミノ酸配列からなり、配列番号21に示す軽鎖可変領域及び軽鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号4、配列番号5、配列番号6のアミノ酸配列からなることが確認された。
【0173】
次に取得したウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体の各種ヒト癌細胞への反応性を確認した。CAPRIN−1の遺伝子の発現が確認されているヒト癌細胞である、乳癌細胞(BT−474、MDA−MB−361)、大腸癌細胞(HT−29)、肺癌細胞(QG56)、胃癌細胞(NCI−N87)、子宮癌細胞(HEC−1−A)、前立腺癌細胞(22Rv1)、膵臓癌細胞(Panc10.5)、肝臓癌細胞(Hep3B)、卵巣癌細胞(SKOV3)、腎癌細胞(Caki−2)、脳腫瘍細胞(U−87MG)、膀胱癌細胞(T24、HT−1376)、食道癌細胞(OE33)、白血病細胞(OCI−AML5)、リンパ腫細胞(Ramos)、胆嚢癌細胞(TGBC14TKB)、線維肉腫細胞(HT−1080)、メラノーマ細胞(G−361)、副腎皮質癌細胞(A−673)、ユーイング腫瘍細胞(RD−ES)、ホジキンリンパ腫細胞(RPMI1666)、中皮腫細胞(NCI−H2452)、多発性骨髄腫細胞(IM−9)、睾丸癌細胞(NT/D1)、甲状腺癌細胞(TT)又は頭頸部癌細胞(FaDu)に、取得した上記抗体を反応させ、フローサイトメトリー法で蛍光強度を評価した。1.5mL容のミクロ遠心チューブに各癌細胞をそれぞれ10
6個に集め、上記で得たウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの培養上清(100μL)をそれぞれのチューブに添加し、4℃で1時間反応させた。0.5% FBS−PBS(−)で洗浄した後、0.5% FBS−PBS(−)で50倍に希釈したFITC標識ヤギ抗ウサギIgG(H+L)抗体(Jackson ImmunoResearch社製)を添加し、4℃で60分間静置した。0.5% FBS−PBS(−)で洗浄後、最終濃度が0.2μg/mLのPropidium iodideを含む0.5% FBS−PBS(−)に細胞を懸濁して、FACSCalibur
TMあるいはFACSVerse
TM(ベクトン・ディッキンソンアンドカンパニー)で蛍光強度を測定した。一方、陰性コントロールとして、ハイブリドーマ培養用培地を用いて上記と同様の操作を行って調製したものを、陰性コントロールのサンプルとした。その結果、上記評価に用いた全ての癌細胞で、ウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの培養上清を用いた場合の蛍光強度は、陰性コントロールを用いた場合の蛍光強度よりも強かった。以上の結果から、ウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体は、ヒト癌細胞の癌細胞膜表面のCAPRIN−1に反応することが確認された。
【0174】
実施例2:ヒト−ウサギキメラ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体の作製
実施例1で確認されたウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体の配列番号20で表される重鎖可変領域のアミノ酸配列を発現させるための遺伝子と、配列番号21で表される軽鎖可変領域を発現させるための遺伝子とを、それぞれヒトIgG1の重鎖定常領域が挿入された哺乳類細胞発現用ベクターとヒトIgG1の軽鎖定常領域が挿入された哺乳類細胞発現用ベクターに挿入した。作製した2つの組み換え発現ベクターを常法に従って哺乳類細胞に導入してヒト−ウサギキメラ抗CAPRIN−1抗体(ヒト−ウサギキメラ抗体)を含む培養上清を得た。得られたキメラ化抗体を含む培養上清を常法に従ってHitrap Protein A SepharoseFF(GEヘルスケア社製)を用いて精製し、PBS(−)に置換して0.22μmのフィルター(ミリポア社製)で濾過したものを調製した。
【0175】
実施例3:ヒト化抗CAPRIN−1モノクローナル抗体の作製
次に、実施例1で確認されたウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体の重鎖可変領域中のCDR1〜3ならびに軽鎖可変領域中のCDR1〜3のアミノ酸配列と塩基配列の情報を基に、重鎖可変領域のCDR1〜3がそれぞれ配列番号1、配列番号2及び配列番号3のアミノ酸配列からなる配列番号7で表される重鎖可変領域のアミノ酸配列を発現できるように塩基配列を設計し、これをヒトIgG1の重鎖定常領域が挿入された哺乳類細胞発現用ベクターに挿入した。同様にして、軽鎖可変領域のCDR1〜3がそれぞれ配列番号4、配列番号5及び配列番号6のアミノ酸配列からなる配列番号11で表される軽鎖可変領域のアミノ酸配列を発現できるように塩基配列を設計し、これをヒトIgG1の軽鎖定常領域が挿入された哺乳類細胞発現用ベクターに挿入した。上記2つの組換え発現ベクターを常法に従って哺乳類細胞に導入して、配列番号7で表される重鎖全長アミノ酸配列と配列番号11で表される軽鎖全長アミノ酸配列とからなるヒト化抗体#0を含む培養上清を得た。
【0176】
同様にして、重鎖可変領域のCDR1〜3がそれぞれ配列番号1、配列番号2及び配列番号3のアミノ酸配列からなる配列番号8で表される重鎖可変領域のアミノ酸配列と、配列番号11で表される軽鎖可変領域のアミノ酸配列とからなるヒト化抗体#1を含む培養上清を得た。
【0177】
さらに同様にして、以下のヒト化抗体#2〜10を含む培養上清を得た。
【0178】
配列番号8で表される重鎖可変領域のアミノ酸配列と、軽鎖可変領域のCDR1〜3がそれぞれ配列番号4、配列番号5及び配列番号6のアミノ酸配列からなる配列番号12で表される軽鎖全長アミノ酸配列とからなるヒト化抗体#2。
【0179】
配列番号8で表される重鎖可変領域のアミノ酸配列と、軽鎖可変領域のCDR1〜3がそれぞれ配列番号4、配列番号5及び配列番号6のアミノ酸配列からなる配列番号13で表される軽鎖全長アミノ酸配列とからなるヒト化抗体#3。
【0180】
配列番号7で表される重鎖可変領域のアミノ酸配列と、配列番号12で表される軽鎖全長アミノ酸配列とからなるヒト化抗体#4。
【0181】
配列番号7で表される重鎖可変領域のアミノ酸配列と、配列番号13で表される軽鎖全長アミノ酸配列とからなるヒト化抗体#5。
【0182】
配列番号7で表される重鎖可変領域のアミノ酸配列と、軽鎖可変領域のCDR1〜3がそれぞれ配列番号4、配列番号5及び配列番号6のアミノ酸配列からなる配列番号15で表される軽鎖全長アミノ酸配列とからなるヒト化抗体#6。
【0183】
配列番号8で表される重鎖可変領域のアミノ酸配列と、配列番号15で表される軽鎖全長アミノ酸配列とからなるヒト化抗体#7。
【0184】
重鎖可変領域のCDR1〜3がそれぞれ配列番号1、配列番号2及び配列番号3のアミノ酸配列からなる配列番号9で表される重鎖可変領域のアミノ酸配列と、配列番号15で表される軽鎖全長アミノ酸配列とからなるヒト化抗体#8。
【0185】
重鎖可変領域のCDR1〜3がそれぞれ配列番号1、配列番号2及び配列番号3のアミノ酸配列からなる配列番号10で表される重鎖可変領域のアミノ酸配列と、軽鎖可変領域のCDR1〜3がそれぞれ配列番号4、配列番号5及び配列番号6のアミノ酸配列からなる配列番号14で表される軽鎖全長アミノ酸配列とからなるヒト化抗体#9。
【0186】
配列番号10で表される重鎖可変領域のアミノ酸配列と、配列番号15で表される軽鎖全長アミノ酸配列とからなるヒト化抗体#10。
【0187】
得られたヒト化抗体#0〜#10を含む培養上清を常法に従ってHitrap Protein A SepharoseFF(GEヘルスケア社製)を用いて精製し、PBS(−)に置換して0.22μmのフィルター(ミリポア社製)で濾過したものを調製した。
【0188】
実施例4:ヒト−ウサギキメラ抗体、ヒト化抗体#0〜#10の抗原特異性と癌細胞への反応性
次に、実施例2で調製したヒト−ウサギキメラ抗体と、実施例3で調製したヒト化抗体#0〜#10のCAPRIN−1タンパク質への特異的反応性を常法に従い、ELISA法で確認した。具体的には、あらかじめ5μg/mLのCAPRIN−1タンパク質を含むPBS溶液を96穴プレート1ウェル当たりに100μL添加し、4℃にて18時間静置した。各ウェルをPBS−Tで洗浄後、5%のスキムミルクを含むPBS溶液からなるブロッキング溶液を1ウェル当たり400μL添加して室温にて3時間静置した。溶液を除いて、PBS−Tでウェルを洗浄後、0.2%のスキムミルクを含むPBSで1μg/mLに調製したヒト−ウサギキメラ抗体、ヒト化抗体#0〜#10を含むそれぞれの溶液を1ウェル当たり50μLずつ各ウェルに添加し、室温にて1時間静置した。陰性コントロールとして、CAPRIN−1タンパク質に反応しないことが確認されているヒトIgG抗体を同様の抗体濃度で添加したウェル、ならびに抗体を添加しないウェルを同時に用意した。PBS−Tで各ウェルを3回洗浄した後、0.2%のスキムミルクを含むPBSで3000倍に希釈したHRP標識抗ヒトIgG抗体を1ウェル当たり50μL添加して室温にて1時間静置した。PBS−Tでウェルを3回洗浄した後、TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μL添加して1〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μL添加して反応を停止させ、吸光度計を用いて450nmと630nmの吸光度値を測定した。また、同時にCAPRIN−1タンパク質を固相していないウェル(非固相ウェル)も用意して、同様に各抗体を添加して測定を行った。その結果、陰性コントロールとして用いたCAPRIN−1タンパク質に反応しないことが確認されているヒトIgG抗体を添加したウェルの吸光度値は、抗体を添加していないウェルと同等に低値であったのに対して、ヒト−ウサギキメラ抗体及びヒト化抗体#0〜#10をそれぞれ添加したウェルの吸光度値は同等に高い値を示した。また、CAPRIN−1タンパク質を固相していないウェルに対してヒト−ウサギキメラ抗体及びヒト化抗体#0〜#10は陰性コントロールと同等の吸光度値しか示さなかった。この結果から、ヒト−ウサギキメラ抗体及びヒト化抗体#0〜#10はCAPRIN−1タンパク質に特異的に反応することが確認された。
【0189】
次に、CAPRIN−1タンパク質に特異的に反応するヒト−ウサギキメラ抗体及びヒト化抗体#0〜#10の各種ヒト癌細胞ならびにマウス癌細胞への反応性を確認した。CAPRIN−1の遺伝子の発現が確認されているヒト癌細胞である、乳癌細胞(BT−474、MDA−MB−361)、大腸癌細胞(HT−29)、肺癌細胞(QG56)、胃癌細胞(NCI−N87)、子宮癌細胞(HEC−1−A)、前立腺癌細胞(22Rv1)、膵臓癌細胞(Panc10.5)、肝臓癌細胞(Hep3B)、卵巣癌細胞(SKOV3)、腎癌細胞(Caki−2)、脳腫瘍細胞(U−87MG)、膀胱癌細胞(T24、HT−1376)、食道癌細胞(OE33)、白血病細胞(OCI−AML5)、リンパ腫細胞(Ramos)、胆嚢癌細胞(TGBC14TKB)、線維肉腫細胞(HT−1080)、メラノーマ細胞(G−361)、副腎皮質癌細胞(A−673)、ユーイング腫瘍細胞(RD−ES)、ホジキンリンパ腫細胞(RPMI1666)、中皮腫細胞(NCI−H2452)、多発性骨髄腫細胞(IM−9)、睾丸癌細胞(NT/D1)、甲状腺癌細胞(TT)又は頭頸部癌細胞(FaDu)に、精製されたヒト−ウサギキメラ抗体及びヒト化抗体#0〜#10をそれぞれ反応させ、フローサイトメトリー法で蛍光強度を評価した。具体的には、1.5mL容のミクロ遠心チューブに各癌細胞をそれぞれ5×10
5個ずつ集め、ヒト−ウサギキメラ抗体及びヒト化抗体#0〜#10を最終濃度が50μg/mLとなるように、それぞれのチューブに添加し、4℃で1時間反応させた。0.5% FBS−PBS(−)で2回洗浄して、0.5% FBS−PBS(−)で100倍に希釈したAlexa488標識ヤギ抗ヒトIgG(H+L)抗体(Life Technologies社製)を添加して4℃で60分間静置した。0.5% FBS−PBS(−)で洗浄後、最終濃度が0.2μg/mLのPropidium iodideを含む0.5% FBS−PBS(−)に細胞を懸濁して、FACSCalibur
TMあるいはFACSVerse
TM(ベクトン・ディッキンソンアンドカンパニー)で蛍光強度を測定した。一方、陰性コントロールとして、ハイブリドーマ培養用培地を用いて上記と同様の操作を行って調製したものを用いた。その結果、上記評価に用いた全ての癌細胞で、ヒト−ウサギキメラ抗体及びヒト化抗体#0〜#10の蛍光強度は、陰性コントロールを用いた場合の蛍光強度よりも強かった。以上の結果から、ヒト−ウサギキメラ抗体及びヒト化抗体#0〜#10は、ヒト癌細胞膜表面上に発現しているCAPRIN−1タンパク質に反応することが確認された。
【0190】
実施例5:ヒト−ウサギキメラ抗体ならびにヒト化抗体#0〜#10の各種ヒト癌細胞に対する抗腫瘍活性
次に、実施例2で調製したヒト−ウサギキメラ抗体と、実施例3で調製したヒト化抗体#0〜#10の各種ヒト癌細胞に対する抗腫瘍効果をADCC活性で評価した。
【0191】
ヒト−ウサギキメラ抗体及びヒト化抗体#0〜#10に対する比較抗体として、以下の抗CAPRIN−1抗体を用いた。
【0192】
WO2010/016526に記載される抗体であり同文献中の配列番号26の重鎖可変領域と配列番号27の軽鎖可変領域を有する比較抗体1、配列番号28の重鎖可変領域と配列番号29の軽鎖可変領域を有する比較抗体2、配列番号30の重鎖可変領域と配列番号31の軽鎖可変領域を有する比較抗体3、配列番号32の重鎖可変領域と配列番号33の軽鎖可変領域を有する比較抗体4、配列番号34の重鎖可変領域と配列番号35の軽鎖可変領域を有する比較抗体5、配列番号36の重鎖可変領域と配列番号37の軽鎖可変領域を有する比較抗体6、配列番号38の重鎖可変領域と配列番号39の軽鎖可変領域を有する比較抗体7、配列番号40の重鎖可変領域と配列番号41の軽鎖可変領域を有する比較抗体8、配列番号42の重鎖可変領域と配列番号43の軽鎖可変領域を有する比較抗体9、配列番号44の重鎖可変領域と配列番号45の軽鎖可変領域を有する比較抗体10、配列番号46の重鎖可変領域と配列番号47の軽鎖可変領域を有する比較抗体11。
【0193】
WO2011/096517に記載される抗体であり同文献中の配列番号43の重鎖可変領域と配列番号47の軽鎖可変領域を有する比較抗体12、配列番号43の重鎖可変領域と配列番号53の軽鎖可変領域を有する比較抗体13。
【0194】
WO2011/096528に記載される抗体であり同文献中の配列番号43の重鎖可変領域と配列番号47の軽鎖可変領域を有する比較抗体14、配列番号51の重鎖可変領域と配列番号55の軽鎖可変領域を有する比較抗体15、配列番号59の重鎖可変領域と配列番号63の軽鎖可変領域を有する比較抗体16、配列番号76の重鎖可変領域と配列番号80の軽鎖可変領域を有する比較抗体17、配列番号84の重鎖可変領域と配列番号88の軽鎖可変領域を有する比較抗体18、配列番号92の重鎖可変領域と配列番号96の軽鎖可変領域を有する比較抗体19。
【0195】
WO2011/096519に記載される抗体であり同文献中の配列番号42の重鎖可変領域と配列番号46の軽鎖可変領域を有する比較抗体20。
【0196】
WO2011/096533に記載される抗体であり同文献中の配列番号43の重鎖可変領域と配列番号51の軽鎖可変領域を有する比較抗体21、配列番号47の重鎖可変領域と配列番号51の軽鎖可変領域を有する比較抗体22、配列番号63の重鎖可変領域と配列番号67の軽鎖可変領域を有する比較抗体23。
【0197】
WO2011/096534に記載される抗体であり同文献中の配列番号43の重鎖可変領域と配列番号47の軽鎖可変領域を有する比較抗体24、配列番号43の重鎖可変領域と配列番号51の軽鎖可変領域を有する比較抗体25、配列番号63の重鎖可変領域と配列番号67の軽鎖可変領域を有する比較抗体26。
【0198】
WO2013/018894に記載される抗体であり同文献中の配列番号9の重鎖可変領域と配列番号13の軽鎖可変領域を有する比較抗体27、配列番号19の重鎖可変領域と配列番号23の軽鎖可変領域を有する比較抗体28、配列番号9の重鎖可変領域と配列番号53の軽鎖可変領域を有する比較抗体29、配列番号58の重鎖可変領域と配列番号62の軽鎖可変領域を有する比較抗体30、配列番号63の重鎖可変領域と配列番号65の軽鎖可変領域を有する比較抗体31、配列番号69の重鎖可変領域と配列番号73の軽鎖可変領域を有する比較抗体32、配列番号77の重鎖可変領域と配列番号81の軽鎖可変領域を有する比較抗体33。
【0199】
WO2013/018892に記載される抗体であり同文献中の配列番号8の重鎖可変領域と配列番号12の軽鎖可変領域を有する比較抗体34。
【0200】
WO2013/018891に記載される抗体であり同文献中の配列番号8の重鎖可変領域と配列番号12の軽鎖可変領域を有する比較抗体35。
【0201】
WO2013/018889に記載される抗体であり同文献中の配列番号8の重鎖可変領域と配列番号12の軽鎖可変領域を有する比較抗体36。
【0202】
WO2010/018883に記載される抗体であり同文献中の配列番号8の重鎖可変領域と配列番号12の軽鎖可変領域を有する比較抗体37。
【0203】
WO2013/125636に記載される抗体であり同文献中の配列番号6の重鎖可変領域と配列番号7の軽鎖可変領域を有する比較抗体38。
【0204】
WO2013/125654に記載される抗体であり同文献中の配列番号52の重鎖可変領域と配列番号54の軽鎖可変領域を有する比較抗体39。同文献中の配列番号21の重鎖可変領域と配列番号23の軽鎖可変領域を有する比較抗体40。同文献中の配列番号25の重鎖可変領域と配列番号23の軽鎖可変領域を有する比較抗体41。同文献中の配列番号16の重鎖可変領域と配列番号18の軽鎖可変領域を有する比較抗体42。同文献中の配列番号29の重鎖可変領域と配列番号33の軽鎖可変領域を有する比較抗体43。同文献中の配列番号39の重鎖可変領域と配列番号43の軽鎖可変領域を有する比較抗体44。同文献中の配列番号49の重鎖可変領域と配列番号43の軽鎖可変領域を有する比較抗体45。
【0205】
WO2013/125630に記載される抗体であり同文献中の配列番号11の重鎖可変領域と配列番号15の軽鎖可変領域を有する比較抗体46。
【0206】
WO2013/125640に記載される抗体であり同文献中の配列番号11の重鎖可変領域と配列番号15の軽鎖可変領域を有する比較抗体47。同文献中の配列番号21の重鎖可変領域と配列番号25の軽鎖可変領域を有する比較抗体48。
【0207】
なお、比較した上記抗体(比較抗体1〜48)は、重鎖可変領域のアミノ酸配列を発現させるための遺伝子と、軽鎖可変領域を発現させるための遺伝子とを、それぞれヒトIgG1の重鎖定常領域が挿入された哺乳類細胞発現用ベクターpcDNA4/myc−His(Life Technologies社製)とヒトIgG1の軽鎖定常領域が挿入された哺乳類細胞発現用ベクターpcDNA3.1/myc−His(Life Technologies社製)に挿入し、作製した2つの組み換え発現ベクターを常法に従って哺乳類細胞に導入して得たヒトキメラ化もしくはヒト化された抗体をHitrap Protein A SepharoseFF(GEヘルスケア社製)を用いて精製し、PBS(−)に置換して0.22μmのフィルター(ミリポア社製)で濾過したものを用いた。
【0208】
また、陰性コントロールとして、アイソタイプコントロール抗体を添加したウェル、抗体を添加していないウェル及びCAPRIN−1タンパク質には反応するが、CAPRIN−1が発現するヒト癌細胞表面に反応性を示さない抗体を添加したウェルを用意した。各抗体は、最終濃度が5μg/mLとなるようにV底96穴プレートに添加した。
【0209】
エフェクター細胞は、ヒト末梢血単核球細胞から常法を用いて分離したヒトNK細胞を用いた。末梢血単核球細胞分離用の比重分離液Histopaque(シグマアルドリッチ社)を用いてヒト末梢血単核球を分離し、FITC蛍光色素で標識された抗体(抗ヒトCD3抗体、抗ヒトCD20抗体、抗ヒトCD19抗体、抗ヒトCD11c抗体、抗HLA−DR抗体(ファーミンジェン社))で反応させてセルソーター(FACS Vantage SE(ベクトン・ディッキンソンアンドカンパニー))を用いて、上記抗体で染まらない、NK細胞を含んだ細胞集団を分離したもの、又はヒトNK細胞分離キット(ミルテニー社製)を用いて分離したものを用いた。上記各抗体を添加したV底96穴プレートにヒトNK細胞を、1穴あたり0.4〜2.0×10
5個添加したものを準備した。
【0210】
標的細胞は、乳癌細胞(BT−474、MDA−MB−361)、大腸癌細胞(HT−29)、肺癌細胞(QG56)、胃癌細胞(NCI−N87)、子宮癌細胞(HEC−1−A)、前立腺癌細胞(22Rv1)、膵臓癌細胞(Panc10.5)、肝臓癌細胞(Hep3B)、卵巣癌細胞(SKOV3)、腎癌細胞(Caki−2)、脳腫瘍細胞(U−87MG)、膀胱癌細胞(T24、HT−1376)、食道癌細胞(OE33)、白血病細胞(OCI−AML5)、リンパ腫細胞(Ramos)、胆嚢癌細胞(TGBC14TKB)、線維肉腫細胞(HT−1080)、メラノーマ細胞(G−361)、副腎皮質癌(A−673)、ユーイング腫瘍(RD−ES)、ホジキンリンパ腫(RPMI1666)、中皮腫(NCI−H2452)、多発性骨髄腫(IM−9)、睾丸癌(NT/D1)、甲状腺癌(TT)又は頭頸部癌(FaDu)を用いた。10
6個の上記ヒト癌細胞株をそれぞれ50mL容の遠心チューブに集め、100μCiのクロミウム51(パーキンエルマー社製)を加え37℃で1時間インキュベートした。その後10%のFBSを含むRPMI1640培地で3回洗浄し、前記でエフェクター細胞ならびに各抗体を添加した96穴V底プレートに、1穴あたり2×10
3個ずつ添加して、37℃、5% CO
2の条件下で4時間反応させた。反応後、障害を受けた癌細胞から放出される培養上清中のクロミウム51培養上清を含んだ培養上清を各ウェル50μLずつ回収して、ウェル底面に個体シンチレータがコーティングされた、LumaPlate−96(パーキンエルマー社製)に添加し、乾燥させて、障害を受けた癌細胞から放出される培養上清中のクロミウム51の量を測定し、抗CAPRIN−1抗体による癌細胞に対する抗腫瘍効果を算出した。
【0211】
その結果、乳癌細胞(BT−474)に対してはヒト化抗体#7、ヒト化抗体#10、ヒト化抗体#6抗体は54%以上の抗腫瘍効果を示し、ヒト化抗体#3、ヒト化抗体#4、ヒト化抗体#2、ヒト化抗体#5は50%以上の活性を示し、ヒト化抗体#9、ヒト化抗体#1、ヒト化抗体#0、ヒト−ウサギキメラ抗体、ヒト化抗体#8は46%以上の活性を示したのに対して、比較抗体1〜48は全て25%以下であり、陰性コントロール群はいずれも10%以下であった。
【0212】
乳癌細胞(MDA−MB−361)に対してはヒト化抗体#7、ヒト化抗体#10、ヒト化抗体#6抗体は52%以上の抗腫瘍効果を示し、ヒト化抗体#3、ヒト化抗体#4、ヒト化抗体#2、ヒト化抗体#5は45%以上の活性を示し、ヒト化抗体#9、ヒト化抗体#1、ヒト化抗体#0、ヒト−ウサギキメラ抗体、ヒト化抗体#8は40%以上の活性を示したのに対して、比較抗体1〜48は全て25%以下であり、陰性コントロール群はいずれも6%以下であった。
【0213】
大腸癌細胞(HT−29)に対してはヒト化抗体#7、ヒト化抗体#10、ヒト化抗体#6は43%以上の抗腫瘍効果を示し、ヒト化抗体#3、ヒト化抗体#4、ヒト化抗体#2、ヒト化抗体#5は40%以上の活性を示し、ヒト化抗体#9、ヒト化抗体#1、ヒト化抗体#0、ヒト−ウサギキメラ抗体、ヒト化抗体#8は35%以上の活性を示したのに対して、比較抗体1〜48は全て20%以下であり、陰性コントロール群はいずれも3%以下であった。
【0214】
肺癌細胞(QG56)に対してはヒト化抗体#7、ヒト化抗体#10、ヒト化抗体#6は46%以上の抗腫瘍効果を示し、ヒト化抗体#3、ヒト化抗体#4、ヒト化抗体#2、ヒト化抗体#5は42%以上の活性を示し、ヒト化抗体#9、ヒト化抗体#1、ヒト化抗体#0、ヒト−ウサギキメラ抗体、ヒト化抗体#8は38%以上の活性を示したのに対して、比較抗体1〜48は全て22%以下であり、陰性コントロール群は、いずれも10%以下であった。
【0215】
胃癌細胞(NCI−N87)に対してはヒト化抗体#7、ヒト化抗体#10、ヒト化抗体#6は45%以上の抗腫瘍効果を示し、ヒト化抗体#3、ヒト化抗体#4、ヒト化抗体#2、ヒト化抗体#5は38%以上の活性を示し、抗体#9、ヒト化抗体#1、ヒト化抗体#0、ヒト−ウサギキメラ抗体、ヒト化抗体#8は34%以上の活性を示したのに対して、比較抗体1〜48は全て15%以下であり、陰性コントロール群はいずれも8%以下であった。
【0216】
子宮癌細胞(HEC−1−A)に対してはヒト化抗体#7、ヒト化抗体#10、ヒト化抗体#6は52%以上の抗腫瘍効果を示し、ヒト化抗体#3、ヒト化抗体#4、ヒト化抗体#2、ヒト化抗体#5は45%以上の活性を示し、ヒト化抗体#9、ヒト化抗体#1、ヒト化抗体#0、ヒト−ウサギキメラ抗体、ヒト化抗体#8は40%以上の活性を示したのに対して、比較抗体1〜48は全て20%以下であり、陰性コントロール群はいずれも5%以下であった。
【0217】
前立腺癌細胞(22Rv1)に対してはヒト化抗体#7、ヒト化抗体#10、ヒト化抗体#6は49%以上の抗腫瘍効果を示し、ヒト化抗体#3、抗体#4、ヒト化抗体#2、ヒト化抗体#5は45%以上の活性を示し、ヒト化抗体#9、ヒト化抗体#1、ヒト化抗体#0、ヒト−ウサギキメラ抗体、ヒト化抗体#8は38%以上の活性を示したのに対して、比較抗体1〜48は全て20%以下であり、陰性コントロール群はいずれも12%以下であった。
【0218】
膵臓癌細胞(Panc10.5)に対してはヒト化抗体#7、ヒト化抗体#10、ヒト化抗体#6は35%以上の抗腫瘍効果を示し、ヒト化抗体#3、ヒト化抗体#4、ヒト化抗体#2、ヒト化抗体#5は30%以上の活性を示し、ヒト化抗体#9、ヒト化抗体#1、ヒト化抗体#0、ヒト−ウサギキメラ抗体、ヒト化抗体#8は24%以上の活性を示したのに対して、比較抗体1〜48は全て10%以下であり、陰性コントロール群はいずれも2%以下であった。
【0219】
肝臓癌細胞(Hep3B)に対してはヒト化抗体#7、ヒト化抗体#10、ヒト化抗体#6は28%以上の抗腫瘍効果を示し、ヒト化抗体#3、ヒト化抗体#4、ヒト化抗体#2、ヒト化抗体#5は25%以上の活性を示し、ヒト化抗体#9、ヒト化抗体#1、ヒト化抗体#0、ヒト−ウサギキメラ抗体、ヒト化抗体#8は21%以上の活性を示したのに対して、比較抗体1〜48は全て12%以下であり、陰性コントロール群はいずれも5%以下であった。
【0220】
卵巣癌細胞(SKOV3)に対してはヒト化抗体#7、ヒト化抗体#10、ヒト化抗体#6は35%以上の抗腫瘍効果を示し、ヒト化抗体#3、ヒト化抗体#4、ヒト化抗体#2、ヒト化抗体#5は31%以上の活性を示し、ヒト化抗体#9、ヒト化抗体#1、ヒト化抗体#0、ヒト−ウサギキメラ抗体、ヒト化抗体#8は27%以上の活性を示したのに対して、比較抗体1〜48は全て15%以下であり、陰性コントロール群はいずれも5%以下であった。
【0221】
腎癌細胞(Caki−2)に対してはヒト化抗体#7、ヒト化抗体#10、ヒト化抗体#6は37%以上の抗腫瘍効果を示し、ヒト化抗体#3、ヒト化抗体#4、ヒト化抗体#2、ヒト化抗体#5は33%以上の活性を示し、ヒト化抗体#9、ヒト化抗体#1、ヒト化抗体#0、ヒト−ウサギキメラ抗体、ヒト化抗体#8は、26%以上の活性を示したのに対して、比較抗体1〜48は全て15%以下であり、陰性コントロール群はいずれも5%以下であった。
【0222】
脳腫瘍細胞(U−87MG)に対してはヒト化抗体#7、ヒト化抗体#10、ヒト化抗体#6は36%以上の抗腫瘍効果を示し、ヒト化抗体#3、ヒト化抗体#4、ヒト化抗体#2、ヒト化抗体#5は29%以上の活性を示し、ヒト化抗体#9、ヒト化抗体#1、ヒト化抗体#0、ヒト−ウサギキメラ抗体、ヒト化抗体#8は24%以上の活性を示したのに対して、比較抗体1〜48は全て10%以下であり、陰性コントロール群はいずれも6%以下であった。
【0223】
膀胱癌細胞(T24)に対してはヒト化抗体#7、ヒト化抗体#10、ヒト化抗体#6は36%以上の抗腫瘍効果を示し、ヒト化抗体#3、ヒト化抗体#4、ヒト化抗体#2、ヒト化抗体#5は33%以上の活性を示し、ヒト化抗体#9、ヒト化抗体#1、ヒト化抗体#0、ヒト−ウサギキメラ抗体、ヒト化抗体#8は30%以上の活性を示したのに対して、比較抗体1〜48は全て15%以下であり、陰性コントロール群はいずれも6%以下であった。
【0224】
膀胱癌細胞(HT−1376)に対してはヒト化抗体#7、ヒト化抗体#10、ヒト化抗体#6は45%以上の抗腫瘍効果を示し、ヒト化抗体#3、ヒト化抗体#4、ヒト化抗体#2、ヒト化抗体#5は40%以上の活性を示し、ヒト化抗体#9、ヒト化抗体#1、ヒト化抗体#0、ヒト−ウサギキメラ抗体、ヒト化抗体#8は28%以上の活性を示したのに対して、比較抗体1〜48は全て20%以下であり、陰性コントロール群はいずれも7%以下であった。
【0225】
食道癌細胞(OE33)に対してはヒト化抗体#7、ヒト化抗体#10、ヒト化抗体#6は35%以上の抗腫瘍効果を示し、ヒト化抗体#3、ヒト化抗体#4、ヒト化抗体#2、ヒト化抗体#5は33%以上の活性を示し、ヒト化抗体#9、ヒト化抗体#1、ヒト化抗体#0、ヒト−ウサギキメラ抗体、ヒト化抗体#8は30%以上の活性を示したのに対して、比較抗体1〜48は全て15%以下であり、陰性コントロール群はいずれも6%以下であった。
【0226】
白血病細胞(OCI−AML5)に対してはヒト化抗体#7、ヒト化抗体#10、ヒト化抗体#6は20%以上の抗腫瘍効果を示し、ヒト化抗体#3、ヒト化抗体#4、ヒト化抗体#2、ヒト化抗体#5は18%以上の活性を示し、ヒト化抗体#9、ヒト化抗体#1、ヒト化抗体#0、ヒト−ウサギキメラ抗体、ヒト化抗体#8は15%以上の活性を示したのに対して、比較抗体1〜48は全て10%以下であり、陰性コントロール群はいずれも6%以下であった。
【0227】
リンパ腫細胞(Ramos)に対してはヒト化抗体#7、ヒト化抗体#10、ヒト化抗体#6は20%以上の抗腫瘍効果を示し、ヒト化抗体#3、ヒト化抗体#4、ヒト化抗体#2、ヒト化抗体#5は18%以上の活性を示し、抗体#9、抗体#1、ヒト化抗体#0、ヒト−ウサギキメラ抗体、ヒト化抗体#8は15%以上の活性を示したのに対して、比較抗体1〜48は全て10%以下であり、陰性コントロール群はいずれも6%以下であった。
【0228】
胆嚢癌細胞(TGBC14TKB)に対してヒト化抗体#7、ヒト化抗体#10、ヒト化抗体#6は35%以上の抗腫瘍効果を示し、ヒト化抗体#3、ヒト化抗体#4、ヒト化抗体#2、ヒト化抗体#5は30%以上の活性を示し、ヒト化抗体#9、ヒト化抗体#1、ヒト化抗体#0、ヒト−ウサギキメラ抗体、ヒト化抗体#8は25%以上の活性を示したのに対して、比較抗体1〜48は全て15%以下であり、陰性コントロール群はいずれも6%以下であった。
【0229】
線維肉腫細胞(HT−1080)に対してはヒト化抗体#7、ヒト化抗体#10、ヒト化抗体#6は30%以上の抗腫瘍効果を示し、ヒト化抗体#3、抗体#4、ヒト化抗体#2、ヒト化抗体#5は25%以上の活性を示し、ヒト化抗体#9、ヒト化抗体#1、ヒト化抗体#0、ヒト−ウサギキメラ抗体、ヒト化抗体#8は20%以上の活性を示したのに対して、比較抗体1〜48は全て10%以下であり、陰性コントロール群はいずれも6%以下であった。
【0230】
メラノーマ(G−361)に対してはヒト化抗体#7、ヒト化抗体#10、ヒト化抗体#6は25%以上の抗腫瘍効果を示し、ヒト化抗体#3、ヒト化抗体#4、ヒト化抗体#2、ヒト化抗体#5は21%以上の活性を示し、ヒト化抗体#9、ヒト化抗体#1、ヒト化抗体#0、ヒト−ウサギキメラ抗体、ヒト化抗体#8は15%以上の活性を示したのに対して、比較抗体1〜48は全て8%以下であり、陰性コントロール群はいずれも6%以下であった。
【0231】
副腎皮質癌細胞(A−673)に対してはヒト化抗体#7、ヒト化抗体#10、ヒト化抗体#6は50%以上の抗腫瘍効果を示し、ヒト化抗体#3、ヒト化抗体#4、ヒト化抗体#2、ヒト化抗体#5は46%以上の活性を示し、ヒト化抗体#9、ヒト化抗体#1、ヒト化抗体#0、ヒト−ウサギキメラ抗体、ヒト化抗体#8は40%以上の活性を示したのに対して、比較抗体1〜48は全て20%以下であり、陰性コントロール群はいずれも8%以下であった。
【0232】
ユーイング腫瘍細胞(RD−ES)に対してはヒト化抗体#7、ヒト化抗体#10、ヒト化抗体#6は48%以上の抗腫瘍効果を示し、ヒト化抗体#3、ヒト化抗体#4、ヒト化抗体#2、ヒト化抗体#5は40%以上の活性を示し、ヒト化抗体#9、ヒト化抗体#1、ヒト化抗体#0、ヒト−ウサギキメラ抗体、ヒト化抗体#8は31%以上の活性を示したのに対して、比較抗体1〜48は全て15%以下であり、陰性コントロール群はいずれも6%以下であった。
【0233】
ホジキンリンパ腫細胞(RPMI1666)に対してはヒト化抗体#7、ヒト化抗体#10、ヒト化抗体#6は40%以上の抗腫瘍効果を示し、ヒト化抗体#3、ヒト化抗体#4、ヒト化抗体#2、ヒト化抗体#5は36%以上の活性を示し、ヒト化抗体#9、ヒト化抗体#1、ヒト化抗体#0、ヒト−ウサギキメラ抗体、ヒト化抗体#8は30%以上の活性を示したのに対して、比較抗体1〜48は全て20%以下であり、陰性コントロール群はいずれも5%以下であった。
【0234】
中皮腫細胞(NCI−H2452)に対してはヒト化抗体#7、ヒト化抗体#10、ヒト化抗体#6は35%以上の抗腫瘍効果を示し、ヒト化抗体#3、ヒト化抗体#4、ヒト化抗体#2、ヒト化抗体#5は39%以上の活性を示し、ヒト化抗体#9、ヒト化抗体#1、ヒト化抗体#0、ヒト−ウサギキメラ抗体、ヒト化抗体#8は31%以上の活性を示したのに対して、比較抗体1〜48は全て10%以下であり、陰性コントロール群はいずれも5%以下であった。
【0235】
多発性骨髄腫細胞(IM−9)に対してはヒト化抗体#7、ヒト化抗体#10、ヒト化抗体#6は35%以上の抗腫瘍効果を示し、ヒト化抗体#3、ヒト化抗体#4、抗体#2、ヒト化抗体#5は30%以上の活性を示し、ヒト化抗体#9、抗体#1、ヒト化抗体#0、ヒト−ウサギキメラ抗体、ヒト化抗体#8は27%以上の活性を示したのに対して、比較抗体1〜48は全て10%以下であり、陰性コントロール群はいずれも6%以下であった。
【0236】
睾丸癌細胞(NT/D1)に対してはヒト化抗体#7、ヒト化抗体#10、ヒト化抗体#6は37%以上の抗腫瘍効果を示し、ヒト化抗体#3、ヒト化抗体#4、ヒト化抗体#2、ヒト化抗体#5は30%以上の活性を示し、ヒト化抗体#9、ヒト化抗体#1、ヒト化抗体#0、ヒト−ウサギキメラ抗体、ヒト化抗体#8は25%以上の活性を示したのに対して、比較抗体1〜48は全て11%以下であり、陰性コントロール群はいずれも5%以下であった。
【0237】
甲状腺癌細胞(TT)に対してはヒト化抗体#7、ヒト化抗体#10、ヒト化抗体#6は42%以上の抗腫瘍効果を示し、ヒト化抗体#3、ヒト化抗体#4、ヒト化抗体#2、ヒト化抗体#5は35%以上の活性を示し、ヒト化抗体#9、ヒト化抗体#1、ヒト化抗体#0、ヒト−ウサギキメラ抗体、ヒト化抗体#8は30%以上の活性を示したのに対して、比較抗体1〜48は全て15%以下であり、陰性コントロール群はいずれも5%以下であった。
【0238】
頭頸部癌細胞(FaDu)に対しては、ヒト化抗体#7、ヒト化抗体#10、ヒト化抗体#6は50%以上の抗腫瘍効果を示し、ヒト化抗体#3、ヒト化抗体#4、ヒト化抗体#2、ヒト化抗体#5は40%以上の活性を示し、ヒト化抗体#9、ヒト化抗体#1、ヒト化抗体#0、ヒト−ウサギキメラ抗体、抗体#8は35%以上の活性を示したのに対して、比較抗体1〜48は全て20%以下であり、陰性コントロール群はいずれも8%以下であった。
【0239】
以上の結果から、ヒト化抗体#0〜#10及びヒト−ウサギキメラ抗体は、乳癌、腎癌、膵臓癌、大腸癌、肺癌、脳腫瘍、胃癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌、食道癌、白血病、リンパ腫、肝臓癌、胆嚢癌、肉腫、メラノーマ、副腎皮質癌、ユーイング腫瘍、ホジキンリンパ腫、中皮腫、多発性骨髄腫、睾丸癌、甲状腺癌又は頭頸部癌に対して、比較抗体より有意に強い抗腫瘍効果を示すことが明らかになった。
【0240】
また、ヒト化抗体#0〜#10及びヒト−ウサギキメラ抗体は、WO2010/016526、WO2011/096517、WO2011/096528、WO2011/096519、WO2011/096533、WO2011/096534、WO2011/096535、WO2013/018886、WO2013/018894、WO2013/018892、WO2013/018891、WO2013/018889、WO2013/018883、WO2013/125636、WO2013/125654、WO2013/125630、WO2013/125640、WO2013/147169、WO2013/147176の実施例に記載の全てのCAPRIN−1に対する抗体よりも、上記記載の乳癌、腎癌、膵臓癌、大腸癌、肺癌、脳腫瘍、胃癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌、食道癌、白血病、リンパ腫、肝臓癌、胆嚢癌、肉腫、メラノーマ、副腎皮質癌、ユーイング腫瘍、ホジキンリンパ腫、中皮腫、多発性骨髄腫、睾丸癌、甲状腺癌又は頭頸部癌に対して有意に強い抗腫瘍活性を示した。
【0241】
なお、抗腫瘍効果は、CAPRIN−1に対する抗体、エフェクター細胞及びクロミウム51を取り込ませた標的細胞を混合して4時間培養し、培養後培地に放出されたクロミウム51の量を測定して、以下計算式
*により算出した癌細胞株に対する細胞障害活性を示した結果である。
【0242】
*式:細胞障害活性(%)=(CAPRIN−1に対する抗体及びエフェクター細胞を加えた際の標的細胞からのクロミウム51遊離量−標的細胞からのクロミウム51自然遊離量)÷(1N塩酸を加えた標的細胞からのクロミウム51遊離量−標的細胞からのクロミウム51自然遊離量)×100。
【0243】
実施例6−1:重鎖定常領域中のアミノ酸が置換されたヒト化抗CAPRIN−1モノクローナル抗体の作製
実施例3で得たヒト化抗体#0、#2、#3、#4、#5、#6、#7、#8、#9、#10の重鎖定常領域中の一部アミノ酸が置換された配列番号33に記載の重鎖定常領域を有する抗CAPRIN−1抗体(以下改I型抗CAPRIN−1抗体と記載する)の作製を行った。上記重鎖定常領域と配列番号7で表される重鎖可変領域を有する重鎖アミノ酸配列をコードするDNAを合成し、これを常法に従って哺乳類細胞発現用ベクターに挿入した。また、配列番号11で表される軽鎖可変領域のアミノ酸をコードするDNAをヒトIgG1の軽鎖定常領域をコードする遺伝子が挿入された哺乳類細胞発現用ベクターに挿入されたものを準備した。作製した2つの組み換え発現ベクターを常法に従って哺乳類細胞に導入してヒト化抗体#0の改I型抗CAPRIN−1抗体#0の培養上清を得た。さらに実施例3に記載のヒト化抗体#1、#2、#3、#4、#5、#6、#7、#8、#9、#10についても上記と同様の方法で改I型抗CAPRIN−1抗体#1、#2、#3、#4、#5、#6、#7、#8、#9、#10を含む培養上清をそれぞれ得た。得られた改I型抗CAPRIN−1抗体#0〜#10を含む各培養上清を常法に従ってHitrap Protein A SepharoseFF(GEヘルスケア社製)を用いて精製し、PBS(−)に置換して0.22μmのフィルター(ミリポア社製)で濾過したものを調製した。
【0244】
次に実施例3で得たヒト化抗体#0、#1、#2、#3、#4、#5、#6、#7、#8、#9、#10の重鎖定常領域中の一部アミノ酸が置換された配列番号34記載の重鎖定常領域を有する抗CAPRIN−1抗体(以下改II型抗CAPRIN−1抗体と記載する)の作製を行った。上記重鎖定常領域と配列番号7で表される重鎖可変領域を有する重鎖アミノ酸配列をコードするDNAを合成し、これを常法に従って哺乳類細胞発現用ベクターに挿入した。また、上記で作製した、配列番号11で表される軽鎖可変領域のアミノ酸をコードするDNAをヒトIgG1の軽鎖定常領域をコードする遺伝子が挿入された哺乳類細胞発現用ベクターに挿入したものを準備した。これら2つの組み換え発現ベクターを常法に従って哺乳類細胞に導入して改II型抗CAPRIN−1抗体#0の培養上清を得た。さらに実施例3に記載のヒト化抗体#1、#2、#3、#4、#5、#6、#7、#8、#9、#10についても上記と同様の方法で改II型抗CAPRIN−1抗体#1、#2、#3、#4、#5、#6、#7、#8、#9、#10を含む培養上清をそれぞれ得た。得られた改II型抗CAPRIN−1抗体#0〜#10を含む各培養上清を常法に従ってHitrap Protein A SepharoseFF(GEヘルスケア社製)を用いて精製し、PBS(−)に置換して0.22μmのフィルター(ミリポア社製)で濾過したものを調製した。
【0245】
実施例6−2:重鎖定常領域に結合する全N−グリコシド結合糖鎖のうち、糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖を有する抗CAPRIN−1抗体の作製
次に、実施例3で得たヒト化抗体#0、#1、#2、#3、#4、#5、#6、#7、#8、#9、#10の重鎖定常領域に結合する全N−グリコシド結合糖鎖のうち、糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖を有する抗CAPRIN−1抗体(以下改III型抗CAPRIN−1抗体と記載する)を以下の方法にて得た。常法に従ってGDP−6−デオキシ−D−リキソ−4−ヘキスロースをGDP−L−フコースへと変換する反応を触媒しない酵素であるGDP−6−デオキシ−D−リキソ−4−ヘキスロースレダクターゼ(RMD)遺伝子を組み込んだネオマイシン耐性遺伝子を含む哺乳類細胞発現ベクターを遺伝子導入試薬FreeStyle
TM MAX Reagent(Life techonologies)を用いて哺乳類細胞株CHO細胞に導入した。上記遺伝子を導入したCHO細胞をG−418を含んだ培養液で培養してRMDが発現しているCHO細胞のstable poolを作製した。このstable poolから限外希釈法によってRMDが恒常的に発現しているCHO細胞を7個クローニングした。クローニングした7個の各RMD−CHO細胞でのRMD遺伝子発現量を定量PCR法で1週間おきに3回評価し、RMD遺伝子が恒常的に安定発現しているCHO細胞(RMD−CHO細胞)を選定した。恒常的にRMDを発現する上記RMD−CHO細胞へ、実施例3と同様に、配列番号7で表される重鎖可変領域のアミノ酸配列をコードする遺伝子と、配列番号11で表される軽鎖可変領域のアミノ酸をコードする遺伝子とを、それぞれヒトIgG1の重鎖定常領域が挿入された哺乳類細胞発現用ベクターとヒトIgG1の軽鎖定常領域が挿入された哺乳類細胞発現用ベクターをそれぞれ常法に従って導入して、改III型抗CAPRIN−1抗体#0を含む培養上清を得た。さらに実施例3に記載のヒト化抗体#1、#2、#3、#4、#5、#6、#7、#8、#9、#10についても上記と同様の方法で改III型抗CAPRIN−1抗体#1、#2、#3、#4、#5、#6、#7、#8、#9、#10を含む培養上清をそれぞれ得た。得られた改III型抗CAPRIN−1抗体#0〜#10を含む各培養上清を常法に従ってHitrap Protein A SepharoseFF(GEヘルスケア社製)を用いて精製し、PBS(−)に置換して0.22μmのフィルター(ミリポア社製)で濾過したものを調製して改III型抗CAPRIN−1抗体#0を含む抗体組成物を得た。同様にして改III型抗CAPRIN−1抗体#1〜#10を含む抗体精製物を得た。精製されたこれら抗体組成物中に含まれる重鎖定常領域に結合する全N−グリコシド結合糖鎖のうち、糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖を有する抗CAPRIN−1抗体の割合をLabChip(登録商標)GXII(PerkinElmer社)で評価した結果いずれも80%以上であった。
【0246】
上記RMD−CHO細胞へ、実施例3と同様に、配列番号7で表される重鎖可変領域のアミノ酸配列をコードする遺伝子と、配列番号11で表される軽鎖可変領域のアミノ酸をコードする遺伝子とを、それぞれヒトIgG1の重鎖定常領域が挿入されたハイグロマイシン耐性遺伝子を含む哺乳類細胞発現用ベクターとヒトIgG1の軽鎖定常領域が挿入されたハイグロマイシン耐性遺伝子を含む哺乳類細胞発現用ベクターをそれぞれ常法に従って導入した上記細胞を、ハイグロマイシンBを含んだ培養液で培養して、改III型抗CAPRIN−1抗体#0を発現するstable poolを作製した。このstable poolから限外希釈法で改III型抗CAPRIN−1抗体#0を恒常的に安定発現する細胞を作製した。各細胞が産生する改III型抗CAPRIN−1抗体#0〜#10を含む精製された抗体組成物中に含まれる重鎖定常領域に結合する全N−グリコシド結合糖鎖のうち、糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖を有する抗CAPRIN−1抗体の割合をLabChip(登録商標)GXII(PerkinElmer社)で評価した結果いずれも80%以上であった。
【0247】
実施例6−3:重鎖定常領域中のアミノ酸が置換され、かつ重鎖定常領域に結合する全N−グリコシド結合糖鎖のうち、糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖を有する抗CAPRIN−1抗体の作製
次に、実施例3に記載のヒト化抗体#0、#1、#2、#3、#4、#5、#6、#7、#8、#9、#10の重鎖定常領域中の一部アミノ酸が置換された配列番号34記載の重鎖定常領域を有し、且つ抗体の重鎖定常領域に結合する全N−グリコシド結合糖鎖のうち、糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖を有する抗CAPRIN−1抗体(以下改IV型抗CAPRIN−1抗体と記載する)の作製を行った。実施例6−2で作製した恒常的にGDP−6−デオキシ−D−リキソ−4−ヘキスロースレダクターゼ(RMD)を発現するRMD−CHO細胞へ、実施例6−1で作製した変異型重鎖定常領域と配列番号7で表されるヒトIgG1の重鎖可変領域を有する重鎖アミノ酸配列をコードするDNAを合成しこれを常法に従って挿入した哺乳類細胞発現用ベクターと、配列番号11で表される軽鎖可変領域のアミノ酸をコードするDNAを合成し、ヒトIgG1の軽鎖定常領域のアミノ酸をコードする遺伝子が挿入された哺乳類細胞発現用ベクターを導入してヒト化抗体#0の改IV型抗CAPRIN−1抗体#0の培養上清を得た。さらに実施例3に記載のヒト化抗体#1、#2、#3、#4、#5、#6、#7、#8、#9、#10についても上記と同様の方法で改IV型抗CAPRIN−1抗体#1、#2、#3、#4、#5、#6、#7、#8、#9、#10を含む培養上清をそれぞれ得た。得られた改IV型抗CAPRIN−1抗体#0〜#10を含む各培養上清を常法に従ってHitrap Protein A SepharoseFF(GEヘルスケア社製)を用いて精製し、PBS(−)に置換して0.22μmのフィルター(ミリポア社製)で濾過して改IV型抗CAPRIN−1抗体#0を含む抗体組成物を得た。同様にして改IV型抗CAPRIN−1抗体#1〜#10を含む抗体精製物を得た。精製されたこれら抗体組成物中に含まれる重鎖定常領域に結合する全N−グリコシド結合糖鎖のうち、糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖を有する抗CAPRIN−1抗体の割合をLabChip(登録商標)GXII(PerkinElmer社)で評価した結果いずれも80%以上であった。
【0248】
実施例6−1で作製した変異型重鎖定常領域と配列番号7で表されるヒトIgG1の重鎖可変領域を有する重鎖アミノ酸配列をコードするDNAを合成しこれを常法に従って挿入したハイグロマイシン耐性遺伝子を含む哺乳類細胞発現用ベクターと、配列番号11で表される軽鎖可変領域のアミノ酸をコードするDNAを合成し、ヒトIgG1の軽鎖定常領域のアミノ酸をコードする遺伝子が挿入されたハイグロマイシン耐性遺伝子を含む哺乳類細胞発現用ベクターを導入した上記細胞を、ハイグロマイシンBを含んだ培養液で培養して、改IV型抗CAPRIN−1抗体#0を発現するstable poolを作製した。このstable poolから限外希釈法で改IV型抗CAPRIN−1抗体#0を恒常的に安定発現する細胞を作製した。さらに実施例3に記載のヒト化抗体#1、#2、#3、#4、#5、#6、#7、#8、#9、#10についても上記と同様の方法で改IV型抗CAPRIN−1抗体#1、#2、#3、#4、#5、#6、#7、#8、#9、#10を恒常的に安定発現する細胞を作製した。各細胞が産生する改IV型抗CAPRIN−1抗体#0〜#10を含む精製された抗体組成物中に含まれる重鎖定常領域に結合する全N−グリコシド結合糖鎖のうち、糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖を有する抗CAPRIN−1抗体の割合をLabChip(登録商標)GXII(PerkinElmer社)で評価した結果いずれも80%以上であった。
【0249】
実施例7:改変型抗CAPRIN−1抗体の抗原特異性と癌細胞への反応性
実施例6−1〜3で調製した改I型抗CAPRIN−1抗体#0〜#10、改II型抗CAPRIN−1抗体#0〜#10、改III型抗CAPRIN−1抗体#0〜#10を含む各抗体組成物及び改抗IV型CAPRIN−1抗体#0〜#10を含む各抗体組成物(以下改変型抗CAPRIN−1抗体と記載する)のCAPRIN−1タンパク質への特異的反応性を実施例4と同様の方法で確認した。その結果、陰性コントロールとして用いたCAPRIN−1タンパク質に反応しないことが確認されているヒトIgG抗体を添加したウェルの吸光度値は、抗体を添加していないウェルと同等に低値であったのに対して、各改変型抗CAPRIN−1抗体をそれぞれ添加したウェルの吸光度値は全て同等に高い値を示した。また、CAPRIN−1タンパク質を固相していないウェルに対して全ての改変型抗CAPRIN−1抗体は陰性コントロールと同等の吸光度値しか示さなかった。この結果から、全ての改変型抗CAPRIN−1抗体はCAPRIN−1タンパク質に特異的に反応することが確認された。
【0250】
次に、各改変型抗CAPRIN−1抗体の各種ヒト癌細胞への反応性を実施例4と同様の方法で確認した。乳癌細胞(BT−474、MDA−MB−361)、大腸癌細胞(HT−29)、肺癌細胞(QG56)、胃癌細胞(NCI−N87)、子宮癌細胞(HEC−1−A)、前立腺癌細胞(22Rv1)、膵臓癌細胞(Panc10.5)、肝臓癌細胞(Hep3B)、卵巣癌細胞(SKOV3)、腎癌細胞(Caki−2)、脳腫瘍細胞(U−87MG)、膀胱癌細胞(T24、HT−1376)、食道癌細胞(OE33)、白血病細胞(OCI−AML5)、リンパ腫細胞(Ramos)、胆嚢癌細胞(TGBC14TKB)、線維肉腫細胞(HT−1080)、メラノーマ細胞(G−361)、副腎皮質癌細胞(A−673)、ユーイング腫瘍細胞(RD−ES)、ホジキンリンパ腫細胞(RPMI1666)、中皮腫細胞(NCI−H2452)、多発性骨髄腫細胞(IM−9)、睾丸癌細胞(NT/D1)、甲状腺癌細胞(TT)、頭頸部癌細胞(FaDu)を本評価に用いた。その結果、評価に用いた全ての癌細胞で、各改変型抗CAPRIN−1抗体の蛍光強度は、陰性コントロールを用いた場合の蛍光強度よりも強かった。以上の結果から、全ての改変型抗CAPRIN−1抗体は、ヒト癌細胞膜表面上にあるCAPRIN−1タンパク質に特異的に反応することが確認された。
【0251】
実施例8:改変型抗CAPRIN−1抗体の各種ヒト癌細胞に対する抗腫瘍活性
実施例6−1〜6−3で調製した改変型抗CAPRIN−1抗体(改I型抗CAPRIN−1抗体#0〜#10、改II型抗CAPRIN−1抗体#0〜#10、改III型抗CAPRIN−1抗体#0〜#10を含む各抗体組成物及び改IV型抗CAPRIN−1抗体#0〜#10を含む各抗体組成物)の各種ヒト癌細胞に対する抗腫瘍効果を実施例5と同様にADCC活性でそれぞれ評価した。陰性コントロールとして、アイソタイプコントロール抗体を添加したウェル、抗体を添加していないウェル及びCAPRIN−1タンパク質には反応するが、CAPRIN−1が発現するヒト癌細胞表面に反応性を示さない抗体を添加したウェルを用意した。比較抗体として、改変する前の各抗CAPRIN−1抗体であるヒト化抗体#0〜#10を用いた。各抗体は、最終濃度が0.01〜1μg/mLとなるようにV底96穴プレートに添加した。
【0252】
標的細胞は、乳癌細胞(BT−474、MDA−MB−361)、大腸癌細胞(HT−29)、肺癌細胞(QG56)、胃癌細胞(NCI−N87)、子宮癌細胞(HEC−1−A)、前立腺癌細胞(22Rv1)、膵臓癌細胞(Panc10.5)、肝臓癌細胞(Hep3B)、卵巣癌細胞(SKOV3)、腎癌細胞(Caki−2)、脳腫瘍細胞(U−87MG)、膀胱癌細胞(T24、HT−1376)、食道癌細胞(OE33)、白血病細胞(OCI−AML5)、リンパ腫細胞(Ramos)、胆嚢癌細胞(TGBC14TKB)、線維肉腫細胞(HT−1080)、メラノーマ細胞(G−361)、副腎皮質癌細胞(A−673)、ユーイング腫瘍細胞(RD−ES)、ホジキンリンパ腫細胞(RPMI1666)、中皮腫細胞(NCI−H2452)、多発性骨髄腫細胞(IM−9)、睾丸癌細胞(NT/D1)、甲状腺癌細胞(TT)、頭頸部癌細胞(FaDu)を用いた。10
6個の上記ヒト癌細胞株をそれぞれ50mL容の遠心チューブに集め、100μCiのクロミウム51(パーキンエルマー社製)を加え37℃で1時間インキュベートした後、10%のFBSを含むRPMI1640培地で3回洗浄し、前記各抗体を添加した96穴V底プレートに、1穴あたり2×10
3個ずつ添加して反応させた。
【0253】
エフェクター細胞は、ヒト末梢血単核球細胞から常法を用いて分離したヒトNK細胞を用いた。上記各抗体、標的細胞を添加して反応させたV底96穴プレートにヒトNK細胞を、1穴あたり0.4〜2.0×10
5個添加したものを準備し、37℃、5%、CO
2の条件下で4時間反応させた。反応後、障害を受けた癌細胞から放出されるクロミウム51を含んだ培養上清を各ウェル50μLずつ回収して、実施例5と同様の方法で障害を受けた癌細胞から放出される培養上清中のクロミウム51の量を測定し、抗CAPRIN−1抗体による癌細胞に対する抗腫瘍効果を算出した。
【0254】
その結果、乳癌細胞(BT−474)に対して、改変型抗CAPRIN−1抗体である改I型抗CAPRIN−1抗体#0〜#10、改II型抗CAPRIN−1抗体#0〜#10、改III型抗CAPRIN−1抗体#0〜#10を含む各抗体組成物及び改IV型抗CAPRIN−1抗体#0〜#10を含む各抗体組成物は、それぞれ陰性コントロールに比べて強い抗腫瘍効果を示した。また、比較抗体とした改変する前の抗体(ヒト化抗体#0〜#10)それぞれが示す抗腫瘍効果と同じ抗腫瘍効果を改I型抗CAPRIN−1抗体#0〜#10、改II型抗CAPRIN−1抗体#0〜#10ならびに改III型抗CAPRIN−1抗体#0〜#10を含む各抗体組成物が示す際の抗体濃度は、改変する前の各抗体濃度に比べておよそ13〜20分の1の濃度であった。また、改IV型抗CAPRIN−1抗体#0〜#10を含む各抗体組成物が改変する前の抗体と同じ抗腫瘍効果を得る場合には、改変する前の各抗体濃度に比べておよそ150分の1の濃度であった。以上の結果から改変型抗CAPRIN−1抗体(改I型抗CAPRIN−1抗体#0〜#10、改II型抗CAPRIN−1抗体#0〜#10、改III型抗CAPRIN−1抗体#0〜#10及び改IV型抗CAPRIN−1抗体#0〜#10を含む各抗体組成物)は、改変する前の各抗体に比べて抗腫瘍活性が向上することが判った。また、改IV型抗CAPRIN−1抗体#0〜#10を含む各抗体組成物は、改I型抗CAPRIN−1抗体#0〜#10、改II型抗CAPRIN−1抗体#0〜#10及び改III型抗CAPRIN−1抗体#0〜#10を含む各抗体組成物に比べてより強い抗腫瘍効果が得られることが判った。
【0255】
その他、評価に用いた乳癌細胞(MDA−MB−361)、大腸癌細胞(HT−29)、肺癌細胞(QG56)、胃癌細胞(NCI−N87)、子宮癌細胞(HEC−1−A)、前立腺癌細胞(22Rv1)、膵臓癌細胞(Panc10.5)、肝臓癌細胞(Hep3B)、卵巣癌細胞(SKOV3)、腎癌細胞(Caki−2)、脳腫瘍細胞(U−87MG)、膀胱癌細胞(T24、HT−1376)、食道癌細胞(OE33)、白血病細胞(OCI−AML5)、リンパ腫細胞(Ramos)、胆嚢癌細胞(TGBC14TKB)、線維肉腫細胞(HT−1080)、メラノーマ細胞(G−361)、副腎皮質癌細胞(A−673)、ユーイング腫瘍細胞(RD−ES)、ホジキンリンパ腫細胞(RPMI1666)、中皮腫細胞(NCI−H2452)、多発性骨髄腫細胞(IM−9)、睾丸癌細胞(NT/D1)、甲状腺癌細胞(TT)、頭頸部癌細胞(FaDu)に対しても同様により強い抗腫瘍効果が得られた。