特許第6447189号(P6447189)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6447189吸音材および吸音材付きワイヤーハーネス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6447189
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】吸音材および吸音材付きワイヤーハーネス
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20181220BHJP
   G10K 11/168 20060101ALI20181220BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20181220BHJP
   B60R 13/08 20060101ALI20181220BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20181220BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20181220BHJP
   H01B 7/42 20060101ALI20181220BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
   G10K11/16 120
   G10K11/168
   B32B5/26
   B60R13/08
   B60R16/02 620Z
   H01B7/00 301
   H01B7/42
   H02G3/04 012
   H02G3/04 037
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-16941(P2015-16941)
(22)【出願日】2015年1月30日
(65)【公開番号】特開2016-142831(P2016-142831A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100095669
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 登
(72)【発明者】
【氏名】高田 裕
【審査官】 渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/174696(WO,A1)
【文献】 特開2010−128005(JP,A)
【文献】 特開2005−263118(JP,A)
【文献】 特開2006−160197(JP,A)
【文献】 特開2002−069823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B60R 13/01−13/04
B60R 13/08
B60R 16/00−17/02
G10K 11/00−13/00
H01B 7/00
H01B 7/42
H02G 3/00−3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に重ねられた二枚の第一の不織布と、
前記二枚の第一の不織布の間に配置される第二の不織布と、を有し、
前記第二の不織布は、前記二枚の第一の不織布との積層前において、その厚み方向の端面の一部に、接着剤または融着手段により繊維が互いに結合された固着部を有しており、
前記第一の不織布および前記第二の不織布の積層体の通気量は5〜50cm/cm・sの範囲内であることを特徴とする吸音材。
【請求項2】
前記固着部は、少なくとも一方の前記端面の全面にわたって所定の間隔おきに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の吸音材。
【請求項3】
前記第二の不織布は薄膜状の不織布であり、
前記固着部は、エンボスロールを用いて熱融着により形成されることを特徴とする請求項2に記載の吸音材。
【請求項4】
前記第一の不織布および前記第二の不織布の積層体は、厚み方向に直交する方向の引張強度が10N/25mm以上であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の吸音材。
【請求項5】
前記第二の不織布が長繊維からなることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の吸音材。
【請求項6】
前記第二の不織布は、前記第一の不織布よりも厚みが小さいことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の吸音材。
【請求項7】
ワイヤーハーネスの軸方向の少なくとも一部が請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の吸音材に覆われることにより、前記吸音材と前記ワイヤーハーネスとが一体化されていることを特徴とする吸音材付きワイヤーハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布を用いた吸音材、および該吸音材とワイヤーハーネスとが一体化された吸音材付きワイヤーハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車室内の静粛性を高めることを目的として、車両内の騒音を発生させる装置の近傍には、グラスウール、ロックウール、多孔性セラミック、ウレタンフォーム、または屑綿などからなる遮音材や吸音材が設けられていた。しかし、遮音材や吸音材の施工性、人体への影響、リサイクル性、環境負荷、および軽量化等の観点から、現在ではこれら遮音材や吸音材には不織布が広く用いられるようになっている。
【0003】
また、近年、自動車や電化製品等を中心に、高性能、高機能化が急速に進められている。これら自動車や電化製品が備える種々のエレクトロニクス装置を制御するためには、内部に多数の電線が配索される必要がある。これらの電線は一般にワイヤーハーネスの形態で使用される。ワイヤーハーネスとは、複数の電線を予め配線に必要な形態に組み上げておくもので、必要な分岐、端末へのコネクタ付け等を施した上で、テープ状、チューブ状またはシート状等、種々の保護材を電線束の外周に巻回することにより形成される。
【0004】
車両内に配索されたワイヤーハーネスは、走行時の振動などにより車体や車両内の他の部材等と接触して騒音を発生させることがある。そのため、ワイヤーハーネスの外周には、他の部材等との接触による騒音を抑制するための緩衝材が備えられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−068799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
昨今の自動車市場におけるEV(Electric Vehicle)技術の普及に伴い、車室内の静粛性に対するニーズが高まっている。車室内の静粛性を向上させるためには、ガソリン車からの課題であったロードノイズや風切り音といった、低周波から高周波に及ぶ騒音や、モーターから発生する5000Hz以上の高周波域における騒音について対策を施す必要がある。そのような対策の一環として、騒音の低減が考慮された車両設計や、低周波から高周波までの広い音域の騒音を吸収する吸音材、金属部品と同等の遮音性能を有する樹脂部材など、様々な手法が考案されている。
【0007】
また、車両の燃費を向上させるべく、車両部品の軽量化が促されていることから、騒音を吸収する吸音材には不織布からなるものが広く用いられている。不織布からなる吸音材を車両内に配設する際には、その設置場所の形状や車両内における位置に応じて、吸音材は引っ張られたり折り曲げられたりしながら取り付けられることとなる。不織布からなる吸音材は、空隙を多く含み通気量が確保されたその柔軟な繊維構造から吸音特性を得ているが、不織布が柔軟であることから、その取り付け時に強く引っ張られることで破損しやすいという欠点がある。一方で、不織布の破損を防ぐため構成繊維の交絡を強固にすると、不織布の通気量および柔軟性が損なわれ、所望の吸音性能が得られないおそれがある。このように、不織布からなる吸音材は、その吸音性能と引張強度との両立が困難であるという問題がある。
【0008】
上記問題に鑑み、本発明の解決しようとする課題は、吸音性能を維持しつつ引張強度を高めた吸音材、およびその吸音材をワイヤーハーネスと一体化した吸音材付きワイヤーハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る吸音材は、厚み方向に重ねられた二枚の第一の不織布と、前記二枚の第一の不織布の間に配置される第二の不織布と、を有し、前記第二の不織布は、その厚み方向の端面の一部に、接着剤または融着手段により繊維が互いに結合された固着部を有することを要旨とする。
【0010】
前記吸音材において、前記固着部は、少なくとも一方の前記端面の全面にわたって所定の間隔おきに設けられている構成としても良い。
【0011】
前記吸音材において、前記第二の不織布は薄膜状の不織布であり、前記固着部は、エンボスロールを用いて熱融着により形成される構成としても良い。
【0012】
前記吸音材において、前記第一の不織布および前記第二の不織布の積層体は、厚み方向に直交する方向の引張強度が10N/25mm以上であることが好ましい。
【0013】
前記吸音材において、前記第二の不織布が長繊維からなることが好ましい。
【0014】
前記吸音材において、前記第一の不織布および前記第二の不織布の積層体の通気量は5〜50cm/cm・sの範囲内であることが好ましい。
【0015】
前記吸音材において、前記第二の不織布は、前記第一の不織布よりも厚みが小さいことが好ましい。
【0016】
上記課題を解決するため、本発明に係る吸音材付きワイヤーハーネスは、ワイヤーハーネスの軸方向の少なくとも一部が前記吸音材に覆われることにより、前記吸音材と前記ワイヤーハーネスとが一体化されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る吸音材および吸音材付きワイヤーハーネスによれば、吸音性能を維持しつつ引張強度を高めた吸音材、およびその吸音材をワイヤーハーネスと一体化した吸音材付きワイヤーハーネスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】吸音材の外観斜視図および断面図である。
図2】本実施形態における固着部の形状を示す第二の不織布の平面図である。
図3】想定される固着部の形状パターンを示す図である。
図4】吸音材付きワイヤーハーネスの外観斜視図である。
図5】残響室法吸音率試験の測定装置の説明図である。
図6】残響室法吸音率試験の試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について詳細に説明する。図1(a)は本発明における吸音材の一例を示す外観斜視図であり、図1(b)は、図1(a)における吸音材1のA−A断面図である。本発明の吸音材および吸音材付きワイヤーハーネスは自動車等の車両用吸音材として好適に用いることができ、自動車のダッシュボードやドアの内部空間に配設されることにより、自動車のエンジンルームや車外などから車室へと侵入する騒音を遮断する。
【0020】
本実施形態における吸音材1は、厚み方向に重ねられた二枚の第一の不織布2と、その間に配置された第二の不織布3と、からなる不織布積層体である。第一の不織布2および第二の不織布3は、これらの対向面が熱融着性シートで接着されることにより一体化されている。第一の不織布2および第二の不織布3の接合方法は熱融着性シートに限られず、ニードルパンチ、ステープラなどを用いても良い。
【0021】
また、吸音材1は通気量が5〜50cm/cm・sの範囲内となるように調整されている。尚、本発明における「通気量」とは、JIS L 1096「織物及び編物の生地試験方法」の8.26.1Aの「フラジール形法通気性試験」方法で測定した値をいう。フラジール形法通気性試験は、市販のフラジール形試験機を用いて測定することができる。
【0022】
図2は積層前の第二の不織布3の平面図である。第二の不織布3は長繊維からなる厚み0.5mmの薄膜状の不織布であり、その上面(図1における上側の面をいう)の全面にわたって所定の間隔おきに菱形状の固着部31が設けられている。本実施形態における固着部31は、エンボスロールを用いて繊維が局所的に熱融着されることにより形成されたものである。尚、固着部31は第二の不織布3の上面だけでなく厚み方向両面に設けられていても良い。
【0023】
固着部31の繊維は、エンボスロールに加圧加熱され、繊維が互いに密着した状態で溶融および固化されることにより繊維同士が強固に結合されている。かかる繊維構造により固着部31は、引っ張り応力が加えられた場合でも繊維の交絡が緩みにくく、高い引張強度を発揮する。また、第二の不織布3は長繊維により構成されていることから、固着部31による引張強度の向上効果は固着部31以外の範囲にも広く及ぶ。
【0024】
尚、本実施形態における固着部31はエンボスロールを用いて形成されているが、これは、第二の不織布3が薄膜状の不織布であり、エンボスロールを通してもその厚みに対する影響が小さいこと、また一般的なエンボス加工装置を用いて比較的短時間で加工可能であることを理由として選択された方法である。固着部31の形成方法はエンボスロールによる熱融着に限定されず、接着剤や超音波融着などを用いても良い。これらの形成方法は、第二の不織布3の厚みや、構成繊維の種類・特性に応じて適宜選択することができる。
【0025】
また、本実施形態においては、菱形状の固着部31が第二の不織布3の上面の全面にわたって所定の間隔おきに設けられているが、固着部31の形状は本実施形態のようなドット状の態様には限定されず、図3に示すように様々なパターンが考えられる。
【0026】
固着部31は第二の不織布3の引張強度を高め、それにより、第二の不織布3を含む不織布積層体である吸音材1の引張強度を高めるための構成である。当然、第二の不織布3の全面を固着部31とすれば最も高い引張強度を得ることができるが、第二の不織布3の通気量が不十分となり、吸音材1の吸音性能が損なわれることとなる。
【0027】
また、車両内に吸音材1が取り付けられる際には、吸音材1には10N/25mm前後の引っ張り応力が加えられることが見込まれる。本実施形態の固着部31は、第二の不織布3の表面積の約25%の範囲に形成されており、これにより吸音材1の厚み方向に直交する方向の引張強度が10N/25mm以上とされている。
【0028】
第二の不織布3における固着部31の好適な形状、配置パターン、および表面積に占める割合は、第二の不織布3の構成繊維の繊維長、繊維の種類および特性、また第一の不織布2自体の引張強度により異なる。これらは、第二の不織布3を含む吸音材1全体の引張強度が10N/25mm以上となる範囲で、かつ、その吸音材1の通気量が5〜50cm/cm・sとなる範囲において組み合わせを調整する必要がある。
【0029】
第一の不織布2は、目付が100〜1000g/m、厚みが1.0〜50.0mmの範囲内であることが望ましい。目付が大きくなると全周波数帯の吸音率が高くなり、小さくなると全周波数帯の吸音率が低くなる傾向がある。また、厚みが大きくなると低周波数帯の吸音性能が高くなり、小さくなると高周波数帯の吸音特性が高くなる傾向がある。第一の不織布2の厚みは、吸音しようとする周波数帯に応じて適宜調整することができる。
【0030】
第二の不織布3は、目付が10〜400g/m、厚みが0.1〜4.0mmの範囲内であることが望ましい。第二の不織布3の厚みを第一の不織布2よりも小さくすることにより、第二の不織布3は第一の不織布2よりも高周波域の吸音特性が高くなり、幅広い周波数帯の騒音を吸音することができるようになる。ただし、目付および厚みが上記範囲よりも小さくなると、第二の不織布3の吸音材としての吸音効果が十分に発揮されなくなるおそれがある。本実施形態においては、第一の不織布2よりも厚みの小さい薄膜状の不織布を第二の不織布3として採用し、その第二の不織布3にエンボスロールで固着部31を設けていることから、吸音材1の低周波から高周波におよぶ本来の吸音性能が損なわれることなく引張強度が高められている。
【0031】
第二の不織布3の繊維径は1〜50μmの範囲内であることが望ましく、第一の不織布2の繊維径は4〜100μmの範囲内であることが望ましい。繊維径が細い方が不織布としての吸音性能は高くなるが、細くなりすぎると不織布が脆くなるおそれがある。
【0032】
第一の不織布2および第二の不織布3に使用可能な繊維材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリオレフィン、ナイロン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、レーヨン、アクリル、アクリロニトリル、セルロース、ケナフ、ガラス等が挙げられる。
【0033】
第一の不織布2および第二の不織布3の製法としては、スパンボンド法、スパンレース法、ニードルパンチ法、メルトブローン法等を用いることができる。
【0034】
第一の不織布2および第二の不織布3の断面形状は特に限定されず、芯鞘型、円筒型、中空型、サイドバイサイド型や、通常の繊維とは形状の異なる異型断面繊維を使用しても良い。
【0035】
図4は吸音材付きワイヤーハーネスを示す外観斜視図である。図4(a)の吸音材付きワイヤーハーネス5は、ワイヤーハーネス4の軸方向の一部が二枚の吸音材1により挟まれた状態で一体化されたものであり、図4(b)の吸音材付きワイヤーハーネス6は、ワイヤーハーネス4の軸方向の一部が一枚の吸音材1に巻装されることにより一体化されたものである。これら吸音材1は端部が厚み方向に重ねられ、該重ねられた部分がステープラ、接着剤、またはタグピンなどで連結されることによりワイヤーハーネス4に固定されている。
【0036】
ワイヤーハーネス4としては、例えば、芯線の周囲を絶縁体で被覆した電線を複数本束ねたものや、一本の電線のみで構成されたもの等が挙げられる。
【0037】
吸音材1は、ワイヤーハーネス4の一部を挟んで覆うことにより、吸音材としての役割のみならず、ワイヤーハーネス4の緩衝材としての機能も果たしている。
【実施例】
【0038】
[引張強度試験]
以下に、本発明の吸音材について実施した引張強度試験の方法、およびその結果を示す。
【0039】
引張強度試験で使用した第一の不織布および第二の不織布の仕様は以下の通りである。比較のため、第二の不織布には、目付が50g/m、20g/m、および10g/mのものを用意し、また、上面の全面に菱形状の固着部を有するもの、および固着部を有さないものを用意した。各実施例および比較例の吸音材には、二枚の第一の不織布の間に第二の不織布を熱融着性シートにより接合したもの、および第二の不織布を備えず二枚の第一の不織布のみを熱融着性シートにより接合したものを用意した。
〔第一の不織布〕
繊維材料:PET短繊維(繊維長:約51mm)
目付:300g/m
厚み:10mm
〔第二の不織布〕
繊維材料:PET長繊維
目付:50g/m、20g/m、および10g/m
厚み:0.5mm
【0040】
引張強度は、JIS L 1913「引張強さ及び伸び率」の試験方法に準拠して測定した。試験体の大きさは25mm×100mmとし、長手方向の両端部20mmをチャックでつかみ、引張速度を100mm/minとして最大引張強度を取得した。また、車両内への取り付けテストとして、これら各試験体について、一方を押さえた状態で固定しておき、試験体を引っ張って他方を固定するテストを行い、テストの際に破損したものは「×」、異常がなかったものは「○」と評価した。その結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
上記試験結果から、第二の不織布が固着部を備えることにより吸音材の引張強度が向上することが確認され、また、第二の不織布の目付を10g/mまで小さくしても10N/25mmの引張強度が確保されることが確認された。さらに、10N/25mmの引張強度を有する吸音材は、車両内への取り付け時相当の引っ張り応力が加えられても破損しないことが確認された。
【0043】
[吸音性能試験]
以下に、本発明の吸音材について実施した吸音性能試験の方法、およびその結果を示す。
【0044】
吸音性能試験で使用した第一の不織布および第二の不織布の仕様は以下に示す通りである。実施例および比較例の各吸音材には、二枚の第一の不織布および二枚の第二の不織布を厚み方向に交互に積層(第一の不織布/第二の不織布/第一の不織布/第二の不織布)したものを使用した。
〔第一の不織布〕
繊維材料:PET短繊維(繊維長:約51mm)
目付:300g/m
厚み:10mm
〔第二の不織布〕
繊維材料:PET長繊維
通気量:5〜60cm/cm・s
【0045】
各実施例および比較例に用いた第二の不織布の通気量は以下の通りである。以下に示す通気量は、JIS L 1096「織物及び編物の生地試験方法」の8.26.1Aの「フラジール形法通気性試験」方法に準拠して測定したものである。
実施例2−1:5cm/cm・s
実施例2−2:25cm/cm・s
実施例2−3:50cm/cm・s
比較例2−1:2cm/cm・s
比較例2−2:60cm/cm・s
【0046】
上記実施例および比較例の吸音材について、残響室法吸音率を測定してその吸音性能を評価した。残響室法吸音率の具体的な試験方法は以下の通りである。表2と図6に残響室法吸音率の試験結果を示す。
【0047】
吸音率の試験はJIS A 1409「残響室法吸音率の測定方法」に準拠して行い、下記の(1)式に示す算出式により吸音率を求めた。試験は、図5に示すように、パーソナルコンピュータ90にオーディオインターフェイス91を介して、パワーアンプ92を通して接続されたスピーカ93と、マイクロホンアンプ94を介して接続されたマイクロホン95が、所定の位置に配置されている残響室96を用いた。測定は、まず、残響室96内に試料97(実施例、比較例の各吸音材)を配置しない状態で、スピーカ93から電気的なノイズ音を放射し、音を止め、音の減衰過程をマイクロホン95で測定した。次いで、測定された減衰曲線から音が−5〜−35dBの範囲で減衰する時間を残響時間Τ1として求めた。測定は中心周波数400Hzから5000Hzの1/3オクターブ帯域毎に行った。次いで、1mの試料97を残響室96の床面に配置し、上記と同様に残響時間Τ2を求め、下記(1)式により吸音率(αS)を算出した。尚、吸音率の値は、大きい程音を良く吸収することを意味する。
【0048】
αS(吸音率)=A/S・・・(1)
S:試料の面積(m2)
A:等価吸音面積(m2)であり、下記の(2)式により求めた。
A=55.3V/c・[1/Τ2−1/Τ1]・・・(2)
V:試料を入れない状態における残響室の容積(m3)
c:空気中の音速(m/s)
Τ1:試料を入れない状態における残響室の残響時間(s)
Τ2:試料を入れた状態における残響室の残響時間(s)
【0049】
【表2】
【0050】
表2および図6の試験結果から、吸音材は通気量が5〜50cm/cm・sのときに(実施例2−1〜2−3)、低周波から高周波までの広い音域にわたり高い吸音性能を示すことが確認された。通気量が5cm/cm・s未満になると(比較例2−1)、高周波域における吸音性能が低下し、通気量が50cm/cm・sを超えると(比較例2−2)、低周波域の吸音性能が低下することが確認された。
【0051】
上記各試験により、吸音材の通気量を5〜50cm/cm・sの範囲内に調整しつつ、第二の不織布に固着部を設けることにより、吸音材の吸音性能と引張強度との両立を図ることが可能であることが確認された。
【0052】
以上、本発明の実施形態、実施例、および比較例について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態等に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 吸音材
2 第一の不織布
3 第二の不織布
31 固着部
4 ワイヤーハーネス

図1
図2
図3
図4
図5
図6