(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記上壁は、前記ケーシング内周面と前記外筒外周面との間に、前記原水入口に通ずる原水流路をなす間隙を形成するとともに、前記原水流路の上端を閉塞することを特徴とする請求項1に記載の浄水カートリッジ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の浄水カートリッジでは、繊維状活性炭成形体を使用し、原水をその径方向に流すことにより、繊維状活性炭成形体での圧力損失の低減を図り所定のろ過流量を確保している。しかしながら、繊維状活性炭成形体は成形のために、合成樹脂であるバインダーを使用しており、そのため繊維状活性炭成形体の質量の内、バインダーの占める割合が相当程度大きく、十分高いろ過能力を得ることができないという問題がある。さらに、原水を、中空糸膜モジュールの円筒状ケースの上端に設けられた開口部を通じて中空糸膜へと流しているため、その開口部と浄水カートリッジの蓋(確認窓)との間に、原水を流すための一定の間隙を設ける必要があり、中空糸膜を高さ方向に伸ばして中空糸膜の膜面積を増やすことはできないという問題がある。
【0006】
本発明は、上述のような問題点に鑑み、コンパクトで、ろ材部の圧力損失が低く、かつろ過能力の高い浄水カートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の浄水器は下記の構成から成る。すなわち、
(1)原水入口と浄水出口とを下端側に有するケーシングと前記ケーシングの上端を閉塞する蓋とで形成される空間内部に、中空糸膜束と粉体ろ材とが収納された浄水カートリッジであって、前記中空糸膜束は内筒の下端に封止固定されて前記内筒内に収容され、前記粉体ろ材は、前記内筒、外筒、上壁および下壁で形成される略筒状の収容空間に収容され、前記内筒の上端は前記蓋内面の直下まで延在しており、前記外筒の前記ケーシング側の面から前記内筒の前記中空糸膜束側の面まで、浄水カートリッジの径方向に通水可能であることを特徴とする浄水カートリッジである。
(2)前記上壁は、前記ケーシング内周面と前記外筒外周面との間に、前記原水入口に通ずる原水流路をなす間隙を形成するとともに、前記原水流路の上端を閉塞すると好ましい。
(3)前記粉体ろ材と前記上壁との間に弾性部材が配設されること好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、上記の構成により以下の優れた効果を奏することができる。すなわち、
上記(1)の構成により、粉体ろ材部の通水の流路断面積を広くすることができ、粒径の小さい粉体ろ材を高密度充填したとしても、通水での圧力損失を十分低減でき、所定のろ過流量を達成できる。
【0009】
また、内筒内に収容される中空糸膜束の長さも可能な限り長くでき、中空糸膜束の有効膜面積を増大することができるので、中空糸膜束部の濁りろ過能力を高めることができる。また、内筒上端と蓋との間に無駄なスペースがなくすことでき、浄水カートリッジをコンパクトにすることもできる。
【0010】
また粉体ろ材なので高密度充填できるので、コンパクトかつろ過能力が高い。
【0011】
また、上記(2)の構成により、間隙に流れてきた原水は、粉体ろ材部を通過せずに、蓋下面と上壁上面の間を通り、内筒内に進入することがない。
【0012】
また、上記(3)の構成により、弾性部材が粉体ろ材と密着することにより、充填した粉体ろ材と上壁の間に空隙ができなくなり、原水を通水した際に粉体ろ材をショートカットする恐れがなくなる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態例を、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態例に係る浄水カートリッジの概略縦断面図である。また、
図2は、本発明の一実施形態例に係る浄水カートリッジが流路切換器と接続されて蛇口直結型浄水器として使用される概略外観図である。
【0016】
本発明において、上下等の位置や方向に関する用語は、
図1に示される向きで浄水カートリッジが配置されているものとして定めるが、本発明の浄水カートリッジは必ずしも
図1の向きのみで使用される訳ではない。
【0017】
浄水カートリッジ1は、原水入口11と浄水出口12とを下端側に有し上端が開口した有底筒状のケーシング2と、ケーシング2の上端開口を閉塞する蓋3とで形成される空間内部に、中空糸膜束9と粉体ろ材10とが収納されている。そして、浄水カートリッジ1は、
図2に示すように、蛇口に直結され原水取水口21で蛇口から供給される原水を受け入れ、その流路を原水側(原水出口22)か浄水側(浄水出口12)かに切り換える流路切換器20に、接続され、蛇口直結型浄水器19の一部となって、原水を浄化し浄水として吐出するために使用することができる。
【0018】
中空糸膜束9は、内筒4と封止部13と共に、中空糸膜モジュール18を構成する。中空糸膜束9は、内筒4の下端側にポッティング剤で封止固定されて内筒4内に収容されており、内筒4の上端は蓋3内面の直下まで延在している。
【0019】
粉体ろ材10は、内筒4、外筒5、上壁6および下壁7で形成される略筒状の収容空間に収容されている。
【0020】
ケーシング2内周面と外筒5外周面との間には、原水入口11から入った原水の原水流路としての筒状の間隙14が形成されている。そして、原水入口11から入った原水は間隙14に導かれた後、外筒5、粉体ろ材10、内筒4をその順で径方向に通過して、内筒4の内部(すなわち中空糸膜モジュール18の内部)に至る。すなわち、本発明の浄水カートリッジにおいては、外筒のケーシング側の面から内筒の中空糸膜束側の面まで、浄水カートリッジの径方向に通水可能となっている。
【0021】
次に、浄水カートリッジ1を構成する各部材について説明する。
【0022】
ケーシング2は、上端が開口した有底筒状であり、下端側の右側に原水入口11を、下端面部の中央部に浄水出口12を有している。浄水出口12を囲うように、下端部内面には中空糸膜モジュール18を嵌入立設するための筒部が設けられている。原水入口11には入口開口周囲に、流路切換器20と接続するためのバヨネット機構が設けられている。下端部の原水入口と浄水出口とが同じ下端側に位置するので、流路切換器と接続して浄水器を構成する時、原水と浄水の吐出口を、同じ方向に向けやすくかつ近接してコンパクトに配置することが可能となり、コンパクトかつ使いやすさが求められる蛇口直結型浄水器の浄水カートリッジとして好適な配置構成を有している。
【0023】
なお、原水入口は
図1とは異なり、下端面部に、浄水出口とは偏心した位置で、下方に開口するように設けられてもよい。こうすると
図1の浄水カートリッジ1に存在する、原水入口を通り抜けた直後に原水が通る流路17の軸方向高さを減少することができ、浄水カートリッジ1をよりコンパクトにすることができる。
【0024】
蓋3は、ケーシング2の上端開口を閉塞する部材であり、ケーシング2に超音波溶着により固定されている。その固定の方法はねじ構造や接着によるものであってもよい。また蓋3は透明であると、浄水カートリッジ1内部の状況を確認できるので、好ましい。
図1では、蓋3はケーシング2に内接して接続されているが、蓋がケーシングに外接して接続されてもよい。こうすると、蓋とケーシングとで形成するコーナー部が有効活用できる空間となり、上壁を蓋内面直下に配置することが可能となる。すると粉体ろ材収容空間が広がり、より多くの粉体ろ材を収容して粉体ろ材部のろ過能力をより向上させることができる。
【0025】
本発明の浄水カートリッジでは、内筒の上端は蓋内面の直下まで延在しているのは上述のとおりである。ここで、内筒の上端は蓋内面の直下まで延在しているとは、後述のとおり、内筒の上端が蓋内面に当接していてもよいし、内筒の上端と蓋内面との間に間隙や上壁等の介在物があってもよい。そして、内筒の上端と蓋内面との間の距離は、間隙や介在物を合わせて1.5mm以下であると好ましく、内筒の上端は蓋内面の直下まで延在していると言える。さらに各部材の製作精度を考慮すると、内筒の上端と蓋内面との間に0.5〜1mmの間隙を設けることが好ましく、上記の間隙は小さい方がより好ましい。
【0026】
蓋3は、天面と天面の外周部から筒状部が垂下する形状と言えるが、
図4の他の実施形態例に示すように、その蓋の筒状部の長さが、(ケーシングの筒状部の長さが短くて、)ケーシングの筒状部の長さより長いという実施形態もあり得る。この場合、後述される上壁は、
図1とは異なり、蓋の筒状部内周面と嵌着し、間隙14(原水流路)の上端を閉塞している。
【0027】
中空糸膜モジュール18は、所定本数の中空糸膜を束ねて逆U字状に折り曲げた中空糸膜束9を略筒状の内筒4内に収容し、内筒4下端側内面と中空糸膜束9下端側、および中空糸膜下端側同士をポリウレタンなどのポッティング剤で封止固定したものである。封止固定した部分が封止部13である。中空糸膜束9の下端面は開口し、浄水出口12に向いている。中空糸膜の材質としてはポリスルホンやポリエチレンなどが使用される。内筒4の下端側外周面には、上述のケーシング2の筒部内周面との間を水密にシールするOリングが装着されている。
図1では、中空糸膜束9は逆U字状に折り曲げられているが、直線状で、その上端の開口が接着剤や熱融着で封止されている中空糸膜束であってもよい。
【0028】
内筒4の封止部13より上部の周面には格子状の複数の開口部15が設けられ、その内面には開口部15の開口を覆うようにポリエチレンテレフタレートや、ポリプロピレンやポリエチレンなどの合成繊維からなるメッシュ23が取り付けられている。メッシュ23は、対面する粉体ろ材10は漏らさず、処理されるべき水は通過させるフィルタ機能を有するものであるので、メッシュ23の目開きは、粉体ろ材10の粒径よりより小さいものとなっている。また、通水での圧力損失を低減させるため、メッシュ23の開口率は強度の許す限り大きいものが好ましい。また、同様に格子状の開口部15の開口率も強度の許す限り大きいものが好ましい。粉体ろ材10全体を有効に活用できるようにするため、開口部15の存在する領域は、対面する粉体ろ材10の領域と略一致させることが好ましい。開口部15の開口を覆う部材は、メッシュ23に限らず、合成樹脂の不織布など、薄いシート状で、粉体ろ材10は漏らさず処理されるべき水は通過させるフィルタ機能を有するものであればよい。
【0029】
メッシュ23を内筒4の内周面に取り付ける方法としては、内筒4の成形時にメッシュ23と一体成形する方法が強固に取り付けられる点で好ましい。また、接着剤で貼り付けたり、熱融着させることも可能である。メッシュ23を内筒4の内周面に取り付けるので、内筒4の径方向の外側に充填、収容される粉体ろ材10は、内筒4の厚み分だけ充填量を増やすことができる。
【0030】
水中の濁質成分、細菌類などを除去するろ材としての中空糸膜束は、濁りろ過能力を高めるため、それの有する膜面積が大きいことが望ましい。しかし、封止部は水圧に対する封止固定の強度確保のため一定の軸方向高さが必要であり、しかも封止部の中の中空糸膜束はろ過に寄与しないので、中空糸膜束の内ろ過に寄与する有効部分の比率を高め、有効膜面積を増大させるために、中空糸膜束の長さを増大させることが合理的である。その結果、中空糸膜束は細長い形状となり、それに伴い中空糸膜束を収容し、それを保護する内筒も、その口径よりも軸方向長さが長い細長い筒状とするのが通例である。
【0031】
従って内筒4の形状も細長い筒状であり、当然ながら中空糸膜モジュール18も細長い略筒状形状となっている。そして、本発明の内筒4では、その上端は蓋3内面の直下まで延在し、内筒4の長さは可能な限り長くなっている。これにより、内筒4内に収容される中空糸膜束9の長さも可能な限り長くすることができ、ひいては中空糸膜束9の有効膜面積を増大することができ、中空糸膜束部(すなわち中空糸膜モジュール18)の濁りろ過能力を高めることができる。また、内筒4上端の開口部と蓋3との間に無駄なスペースがなくなっており、所定のろ過能力を達成しつつ浄水カートリッジをコンパクトにすることに寄与しているとも言える。
【0032】
蓋3内面と内筒4上端との間隙は、できるだけ小さくすることが好ましいが、各部材の製作精度を考慮して、0.5〜1mm程度に設定するとよい。蓋内面と内筒上端との間隙が1.5mm以下であると、内筒上端は蓋内面直下まで延在していると言える。
【0033】
もちろん蓋のケーシングへの接合に支障をきたさないのであれば、蓋内面と内筒上端との間隔をゼロとし、両者を当接させる設計も可能である。この時、蓋(または、蓋とシール部材)によって内筒上端を密閉できるのであれば、後述する上壁が、ケーシング内周面に嵌着し、ケーシング内周面との間を密封する必要はなくなる。
【0034】
次に、内筒4と共に、粉体ろ材10が収容される略筒状の収容空間を形成する外筒5、上壁6および下壁7について説明する。
【0035】
図1において、外筒5と下壁7とは一体物として形成されている。もちろん、両者を別体として形成し、それらを嵌着、溶着、接着等により、
図1の形状に組立または接続することも可能であるが、一体物として形成する方が安価かつ簡便である。下壁7の中央に設けられる開口の内周面は、内筒4の下端部外周面に嵌着し、その嵌着部分は、水および粉体ろ材10に対して密封状態となっている。
【0036】
外筒5は、その周面に格子状の複数の開口部16が設けられ、その外面には開口部16の開口を覆うようにポリエチレンテレフタレートや、ポリプロピレンやポリエチレンなどの合成繊維からなるメッシュ24が取り付けられている。メッシュ24は、対面する粉体ろ材10は漏らさず、処理されるべき水は通過させるフィルタ機能を有するものであるので、メッシュ24の目開きは、粉体ろ材10の粒径よりより小さいものとなっている。また、通水での圧力損失を低減させるため、メッシュ24の開口率は強度の許す限り大きいものが好ましい。また、同様に格子状の開口部16の開口率も強度の許す限り大きいものが好ましい。粉体ろ材10全体を有効に活用できるようにするため、開口部16の存在する領域は、対面する粉体ろ材10の領域と略一致させることが好ましい。開口部16の開口を覆う部材は、メッシュ24に限らず、合成樹脂の不織布など、薄いシート状で、粉体ろ材10は漏らさず処理されるべき水は通過させるフィルタ機能を有するものであればよい。
【0037】
メッシュ24を外筒5の外周面に取り付ける方法としては、外筒5の成形時にメッシュ24と一体成形する方法が強固に取り付けられる点で好ましい。また、接着剤で貼り付けたり、熱融着させることも可能である。メッシュ24を外筒5の外周面に取り付けるので、外筒5の径方向の内側に充填、収容される粉体ろ材10は、外筒5の厚み分だけ充填量を増やすことができる。本発明において、原水は外筒5の径方向の外側から内側に向かって流れるため、外筒5の外周面にメッシュ24を取り付けておくと、原水の流れによって剥離する恐れがない。
【0038】
なお、当然ながら、外筒5はケーシング2内にあって、かつ内筒4の径方向外側に位置するので、ケーシング2口径>外筒5口径>内筒4口径の関係がある。
【0039】
上壁6は、上下両面がほぼ板状の環状部材であって、中央に設けられる開口の内周面は、内筒4の上端部外周面に嵌着し、その嵌着部分は、水および粉体ろ材10に対して密封状態となっている。また、上壁6下面の径方向外側部には段差部が形成され、外筒5の上端部に嵌着し、その嵌着部分は、水および粉体ろ材10に対して密封状態となっている。さらに、上壁6の外周面はケーシング2上端部の内周面に嵌着し、その嵌着部分は水密状態となっている。上壁6の外周面の口径は、外筒5の外周面の口径より大きいように設定してあるので、上壁6は、ケーシング2内周面と外筒5外周面との間に、原水入口11に通ずる原水流路をなす筒状の間隙14を形成する役割を果たしていると共に、その原水流路の上端を閉塞することになっている。このように上壁6によって、原水流路(間隙14)の上端が閉塞しているので、間隙14に流れてきた原水は、粉体ろ材部を通過せずに、そのまま蓋3下面と上壁6上面の間を通り、内筒4の上端開口に至り、中空糸膜モジュール内に進入することがない。また本発明の浄水カートリッジはそのような原水流通路を必要としていないので、上述したように、内筒4の上端を蓋3下面の直下まで延在させることができている。
【0040】
上記間隙14をより確実に形成、保持するために、下壁7および/または外筒5から径方向外側に張り出してケーシング2内周面に当接する、周方向において離散的に配置される複数の凸部を設けてもよい。
【0041】
上記間隙14は、浄水カートリッジ1の設定流量にもよるが、0.5mm以上あることが好ましい。間隙14を大きくすると原水は流れやすくなるが、反面、ろ材の収容空間が少なくなるため、3mm以下、好ましくは2mm以下とすることが好ましい。
【0042】
なお、上壁が間隙14の上端を閉塞せず、上壁とは別の部材でもって、間隙14の上端を閉塞させてもよい。
【0043】
また、製造工程において、中空糸膜モジュール18内にごみが入ったり、中空糸膜束9を傷つけたりする可能性を少なくするために、上壁が内筒4の上端開口を密閉するものであってもよい。この場合、上壁は、ケーシング内周面に嵌着しない形態でもよい。もちろん、この場合、上端を蓋3内面にできるだけ近づけるとの目的のためには、内筒上端に位置する上蓋の厚さは1.5mm以下が好ましく、その厚さを含めて蓋内面と内筒上端との間の距離が1.5mm以下であることが好ましい。
【0044】
また、
図3の他の実施形態例に示すように、外筒の上端部外周面が径方向外側に張り出し、ケーシング内周面に嵌着し、その嵌着部分は水密状態となっている実施形態も好ましい。この場合、上壁は、ケーシング内周面に嵌着しない形態でもよい。
【0045】
さらに、独立した部材としての上壁を用いず、蓋に上壁の機能を併せ持たせるような形態もあり得る。すなわち、蓋がケーシング上端開口を閉塞する際、蓋の内面部分が、内筒と外筒との間の上端開口部を密閉し、かつ、外筒とケーシング内周面との間の上端開口部、または内筒上端開口を密閉することができる形状である形態である。
【0047】
粉体ろ材10は、上述の内筒4、外筒5、上壁6および下壁7で形成される略筒状の収容空間に収容される。製造工程的には、上壁6が嵌着される前に、上壁6が嵌着される部分から粉体ろ材10は充填され、充填完了後、上壁6は粉体ろ材10を密閉するように嵌着される。また、充填の際、粉体ろ材10に対して振動や吸気を行って、充填密度を高めることは、粉体ろ材部のろ過能力を高めるために好ましい方法である。
【0048】
粉体ろ材10としては、ヤシ殻や木材、石炭などを原料とした粒状または粉状活性炭や、原水中の鉛等の重金属を除去するのに適した粒状または粉状イオン交換体、例えばチタンケイ酸塩やアルミノケイ酸塩などのゼオライト、またはイオン交換樹脂などを、適宜組み合わせて充填して使用することができる。
【0049】
粉体ろ材10には、その平均粒径がおよそ30〜900μmの範囲のものが使用可能で、浄水カートリッジの種類、用途、性能に応じて選択して使用される。粒径を小さくすると表面積が増えるため、粉体ろ材の吸着能力やイオン交換能力を高めることができるし、粉体ろ材の充填密度も向上する。そこで、粉体ろ材10として平均粒径がおよそ30〜150μmと小さいものを採用することは、粉体ろ過部によるろ過能力を大幅に高め、充填密度もより高めることができる点で、非常に好ましい。粉体ろ材の粒径は、活性炭の場合、JIS K 1474:2014活性炭試験方法 7.3粒度に定められた方法に従って測定しても良いし、レーザー回折/散乱式法で測定した方法でも良い。いずれについても、重量あるいは体積の粒度分布による積算値が90%を占める範囲を粒径とする。
【0050】
従来の成形体の活性炭などのろ材では、成形のためのバインダーの占める質量割合が3〜20%程度を占め、その部分はろ過に寄与しないが、粉体ろ材を使用することで、バインダーが占めていた体積を活性炭もしくはイオン交換体で充填することができ、増加したろ材がろ過に寄与するためろ過能力を大幅に向上することができる。特に平均粒径がおよそ30〜150μmと小さい粉体ろ材の場合は、充填密度を高めることができ、例えば、粒状または粉状活性炭としてヤシ殻活性炭を使用する場合、0.50〜0.75g/mL程度まで高めることができるので、ろ過能力が高くかつコンパクトに浄水カートリッジを構成することが可能となる。
【0051】
一方、一般に粒径を小さくすると粉体ろ材部の通水での圧力損失が大きくなり、所定のろ過流量を確保できないこともあり得る。しかし本発明では、上述のように細長い略筒状の中空糸膜モジュール18(およびその内筒4)形状に対応して、上述の略筒状の収容空間およびそこに収容される粉体ろ材10の全体形状(粉体ろ材部の形状)は、軸方向長さが長くなっており、しかもその径方向長さ(厚さ)より長い筒状形状となっている。そして通水は、筒状の粉体ろ材部の外側から内側に向かって径方向に行われるため、通水の流路断面積が、軸方向に通水する場合より、ずっと広くなっているので通水の流速は低減され、粒径の小さい粉体ろ材を高密度充填したとしても、通水での圧力損失を十分低減でき、所定のろ過流量を達成できる。
【0052】
筒状の粉体ろ材部の軸方向長さ/径方向長さは、1を超える数値で要求される圧力損失等に応じて定められるが、約3以上が好ましい。また、径方向長さの絶対値は、粉体ろ材と上壁や下壁との境界面での通水のショートカットを防ぐこと、および粉体ろ材のろ過原理から最低限必要とされる値などを考慮して定められるが、実設計上は約5mm以上が通例である。
【0053】
粉体ろ材10と上壁6との間に弾性部材が配設されると好ましい。こうすると、弾性部材が粉体ろ材10と上壁6とを押圧し、それらと密着することにより、充填した粉体ろ材10と上壁6の間に空隙ができなくなり、原水を通水した際に粉体ろ材10をショートカットする恐れがなくなる。弾性部材としては、硬度の低いシリコーンゴムなどのゴム、合成樹脂のスポンジや不織布、フェルトなどが使用可能である。
【0054】
上述の説明において、略筒状とした部材が全て略円筒状であって、それらが同一中心軸を有して同軸的に配置されることは、浄水カートリッジをコンパクトにするためには、最も効果的、合理的であり、好ましい形態である。
【0055】
また、上述において、2つの部材を嵌着させその部材間を密封(または密閉)状態にする場合、シール部材を介在させて、密封(または密閉)を確実にすることも可能である。ただし、コンパクトな浄水カートリッジ設計のためには、シール部材を介在させずに密封(または密閉)を実現することが好ましい。
【0056】
また、ケーシング2、蓋3、内筒4、外筒5、上壁6、下壁7の材質は、ABS(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂やAS(アクリルニトリル・スチレン)樹脂、PP(ポリプロピレン)樹脂など、成形時の寸法精度が高い樹脂で成形されたものが好ましい。
【0057】
以上のように構成された浄水カートリッジ1の水の流れについて説明する。
【0058】
原水入口11から入った原水は、流路17で周方向にほぼ均等に分配され、原水流路である筒状の間隙14に導かれ、外筒5(とメッシュ16)、粉体ろ材10、内筒4(とメッシュ15)をその順で径方向に通過して、内筒4の内部(すなわち中空糸膜モジュール18の内部)に至る。粉体ろ材10と接触し、それを通過することにより、原水中の遊離残留塩素、カルキ臭、カビ臭、トリハロメタンや、鉛などの重金属イオンなどが除去される。次いで、水は中空糸膜を通過し、濁質成分、細菌類なども除去されて浄水となり、中空糸膜束9の下端面の開口を経て、浄水出口12から吐出される。