(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
[実施形態]
以下、本発明の実施形態について図を用いて説明する。なお、以下の各図において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付与している。
【0024】
図1は、本発明に係る車両用アンテナユニット100の概略的な構成の一例を示す図である。
図1に示すように車両用アンテナユニット100は、アンテナ基板10と、ロアケース20と、レドーム30とを備えている。
図2は、車両Vにおける車両用アンテナユニット100の搭載位置の一例を示している。本実施形態では一例として車両用アンテナユニット100は、車両Vのラジエータグリル付近において、レドーム30側が車両前方を向くように搭載されるものとする。
【0025】
車両用アンテナユニット100は、所定の車両内ネットワークを介して、種々のECU(Electronic Control Unit)等と通信可能に接続される。ここでは一例として車両用アンテナユニット100は、車両Vの周辺に存在する物体についての情報を収集するECU(周辺監視ECUとする)200と、ユーザが携帯する携帯端末との近距離無線通信を実施するECU(近距離通信ECUとする)300と接続されている。車両用アンテナユニット100は、近距離通信ECU300と接続されることで、後述するように、車両に対して携帯端末が存在する方向を推定するシステム(方向推定システムとする)を実現する。
【0026】
ここでの近距離無線通信とは、通信範囲が例えば最大でも数十メートル程度となる通信を指す。具体的には、Bluetooth Low Energy(Bluetoothは登録商標)や、Wi−Fi(登録商標)等が、ここでの近距離無線通信に該当する。もちろん、近距離無線通信は、他の通信規格に準拠した通信であってもよく、例えば周知のキーレスエントリーシステムやスマートエントリーシステムで採用されているものであってもよい。なお、携帯端末としては、スマートフォンや、タブレット端末、ウェアラブルデバイス、携帯用音楽プレーヤ、携帯用ゲーム機等が該当する。
【0027】
<車両用アンテナユニットの概略的な構成>
まずは、車両用アンテナユニット100の概略的な構成について述べる。アンテナ基板10は、長方形状のプリント基板上に第1アンテナ11や、図示しない種々の電子部品が設けられて成る。
【0028】
なお、本実施形態では一例としてアンテナ基板10は長方形状とするが、これに限らない。例えば六角形や八角形などであっても良いし、輪郭の一部又は全部が曲線となっている形状(例えば楕円)であってもよい。アンテナ基板10は、少なくとも第1アンテナ11よりも大きければよい。
【0029】
このアンテナ基板10の具体的な構成は別途後述するが、概略的には次の通りである。第1アンテナ11は、物体を検知するためのレーダ波を送信又は受信するためのアンテナである。また、アンテナ基板10が備える種々の電子部品の中には、第1アンテナ11が送受信する信号を処理する電子部品(第1アンテナ関連部品とする)が含まれる。車両用アンテナユニット100は、第1アンテナ11及び第1アンテナ11関連電子部品によって、周知のミリ波レーダ装置として機能する。便宜上、アンテナ基板10において第1アンテナ11が設けられている面をアンテナ形成面10Aと称し、アンテナ形成面10Aと反対側の面を背面と称する。
【0030】
また、アンテナ基板10には、第1アンテナ11や種々の電子部品の他、第2アンテナ12、コネクタ13、貫通孔14等が設けられている。第2アンテナ12は、近距離無線通信に用いられる周波数帯(ここでは2.4GHz帯)の信号を送受信するためのアンテナ素子である。
【0031】
コネクタ13は、第2アンテナ12での受信信号や、ミリ波レーダ装置としての検出結果を外部に出力したり、外部からの制御信号が入力されたりするためのインターフェースである。例えば車両用アンテナユニット100内で生成された種々の信号は、コネクタ13を介して外部に設けられた周辺監視ECU200や、近距離通信ECU300に提供される。貫通孔14には、アンテナ基板10をロアケース20に固定するためのねじが通される。
【0032】
このアンテナ基板10は、背面がロアケース20の底面と対向するように、ロアケース20の開口側からロアケース20内に嵌め込まれた姿勢で、ロアケース20に固定される。また、ロアケース20とレドーム30は、それぞれ一面が開口した箱状を成しており、互いの開口部が向き合うように組み合わされて1つのケースを構成する。これによって、アンテナ基板10は、アンテナ形成面10Aがレドーム30と対向するようにケース内に収容される。
【0033】
ロアケース20はアンテナ基板10を収容及び固定する容器であって、一面が開口した箱状を成している。ロアケース20は、例えば樹脂やアルミニウム板によって実現される。なお、ロアケース20を導電性の部材で実現する場合には、後述するアンテナ基板10のグランド(基準電位)として機能させても良い。
【0034】
ロアケース20はアンテナ基板10を固定するためのねじ穴21と、レドーム30が備えるスナップフィット部31と嵌合する嵌合部位22と、を備える。ねじ穴21は、ロアケース20において適宜設計される箇所に1つ又は複数設けられている。アンテナ基板10には、ロアケース20が備えるねじ穴21と対応する位置に貫通孔14が設けられており、アンテナ基板10は、ねじ穴21と貫通孔14を介してロアケース内にねじ止めされる(つまり固定される)。嵌合部位は、ロアケース20の側面部に複数設けられている。
【0035】
レドーム30は、アンテナ基板10(特にアンテナ形成面10A)を保護する部材であって、ロアケース20に収容されたアンテナ基板10のアンテナ形成面10Aを覆うように、ロアケース20と固定される。レドーム30は、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)などの樹脂によって実現される。レドーム30は、ロアケース20が備える嵌合部位22と嵌合するスナップフィット部31を有している。
【0036】
スナップフィット部31は、レドーム30の側面に、弾性変形可能に形成され、ロアケース20に形成された嵌合部位22に嵌合するようになっている。レドーム30は、スナップフィット部31が嵌合部位22と嵌合することによってロアケース20に固定される。
【0037】
<アンテナ基板10の構成について>
次に、アンテナ基板10の構成について、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を有する右手系の三次元座標系の概念を導入して説明する。X軸は、アンテナ基板10の短辺に平行な軸であり、Y軸はアンテナ基板10の長辺に平行な軸である。Z軸はX軸とY軸を含む平面(XY平面)に直交し、かつ、ロアケース20からレドーム30に向かう方向を正となる軸とする。なお、この定義によれば、XY平面はアンテナ形成面10Aと平行となる。
図1に示すX軸、Y軸、Z軸もここで定義したものと同様のものである。
【0038】
本実施形態におけるアンテナ基板10は、第1アンテナ11と、2つの第2アンテナ12と、をアンテナ形成面10Aにおいて所定のレイアウトで備えている。なお、アンテナ基板10のアンテナ形成面及び背面には、前述の第1アンテナ関連部品の他、第2アンテナ12が送受信する信号を処理する電子部品等が実装されている。第1アンテナ関連部品からなる機能ブロックを第1信号処理部と称する。また、アンテナ基板10の内部又は背面には、第1アンテナ11や第2アンテナ12のグランドとして機能する導電性のパターンが形成されている。
【0039】
図3に示す破線は、貫通孔14の位置の一例を示している。貫通孔14は、アンテナ基板10において適宜設計される位置に設けられればよい。なお、ねじ止め以外の方法によってアンテナ基板10がロアケース20に固定される場合には、貫通孔14は備えられていなくても良い。つまり、貫通孔14は任意の要素である。
【0040】
第1アンテナ11は、所定の第1対象周波数を基準として定まる周波数帯のレーダ波(以下、送信波という)を発生する送信アンテナ11Tと、送信アンテナ11Tから照射されたレーダ波の反射波を受信する受信アンテナ11Rと、を備える。この第1アンテナ11が請求項に記載のアレイアンテナ部に相当する。
【0041】
第1対象周波数は、ここでは一例として24GHzとし、受信アンテナ11Rは24GHzを中心として定まる周波数帯(例えば23.7〜24.3GHz)の電波を受信する。もちろん、第1対象周波数は、これに限らず、78GHzや、77GHz、76GHzであってもよい。第1対象周波数を基準として定まる第1アンテナ11が送受信する周波数帯を第1対象周波数帯とも称する。
【0042】
送信アンテナ11Tおよび受信アンテナ11Rは、
図3に示すように、アンテナ形成面10AにおいてY軸方向に隣接するように配置される。なお、受信アンテナ11Rは、上記反射波に限らず、他の移動体等から自発的に発せられた電磁波も受信できる。以下、上記反射波と上記電磁波をまとめて受信波と称する。
【0043】
送信アンテナ11Tは、送信波の送信機能を個々に有するアンテナ素子111Tがアレイ状に並んで形成されて成る。本実施形態では
図3に示すように、アンテナ素子111Tを4×4の正方に並べることで送信アンテナ11Tを構成する。アンテナ素子111Tが請求項に記載の送信アンテナ素子に相当する。
【0044】
受信アンテナ11Rは、受信波の受信機能を個々に有するアンテナ素子111Tがアレイ状に並んで形成されて成る。受信アンテナ11Rもまた、送信アンテナ11Tと同様に、アンテナ素子111Tが4×4の正方に並べられることで構成される。アンテナ素子111Rが請求項に記載の受信アンテナ素子に相当する。
【0045】
送信アンテナ11Tを構成するアンテナ素子111Tも、受信アンテナ11Rを構成するアンテナ素子111Rも同様の構成によって実現されればよく、例えば1辺の電気的な長さが、送受信の対象とするレーダ波の半波長となっているパッチアンテナとすればよい。パッチアンテナは、マイクロストリップアンテナや平面アンテナとも称される。
【0046】
以降において、アンテナ素子111Tとアンテナ素子111Rを互いに区別しない場合には、アンテナ素子111と記載する。第1アンテナ11は、送信波の送信機能、あるいは、受信波の受信機能を個々に有するアンテナ素子111を長方形状にアレイ配置することで実現されていると言える。なお、送信アンテナ11Tおよび受信アンテナ11Rの形成範囲は、X軸方向において互いに一致しているものとする。
【0047】
なお、ミリ波レーダ装置を実現するための構成(第1アンテナ11の構成)は、ここで例示した構成に限らず、周知の構成としてもよい。
【0048】
受信アンテナ11Rが備える複数のアンテナ素子111Rのそれぞれが受信した信号は、図示しない第1信号処理部に提供される。第1信号処理部は、複数のアンテナ素子111Rのそれぞれが受信した信号に基づいて、車両Vの前方に存在する物体との距離や、方向、相対速度などを特定する。そして、その特定した結果を、コネクタ13を介して周辺監視ECU200に出力する。
【0049】
第2アンテナ12は、前述の通り、ユーザによって携帯される携帯端末と信号を送受信するためのアンテナであって、例えば2.4GHz帯の信号を送受信するように構成されている。この第2アンテナ12が請求項に記載の通信用アンテナに相当する。
【0050】
便宜上、第2アンテナ12において送受信の対象とする周波数帯(ここでは2.4GHz帯)を第2対象周波数帯と称し、第2対象周波数帯のうち、基準とする周波数を第2対象周波数と称する。第2使用周波数帯が請求項に記載の使用周波数帯に相当する。なお、他の態様として第2対象周波数帯は、300〜400MHzとしてもよい。
【0051】
本実施形態において第2アンテナ12は、直線状のアンテナ素子によって実現されるものとする。第2アンテナ12の電気的な長さは、第2対象周波数の電波の波長の半波長となっていればよい。例えば62mm程度とすればよい。
【0052】
2つの第2アンテナ12は、Y軸方向と平行であって、かつ、第1アンテナ11とX軸方向との間隔Dが所定の値となるように、第1アンテナ11のX軸の正の方向側と負の方向側のそれぞれに配置される。
【0053】
この間隔Dを大きくすると、アンテナ基板10の面積の増大につながってしまう。したがって、間隔Dは小さい方が好ましい。一方、間隔Dを小さくするほど、アンテナ間の干渉度合いは大きくなってしまい、第1アンテナ11の性能を劣化させてしまう。具体的には、間隔Dが小さくなることによりアンテナ間の相互結合が増加することから、インピーダンス不整合が発生し、共振周波数ずれや利得の低下のような第1アンテナ11及び第2アンテナ12の性能を低下させてしまう。
【0054】
図4に、間隔Dを変化させた時の第1アンテナ11における電圧定在波比(VSWR: Voltage Standing Wave Ratio)のシミュレーション結果を示す。
図4に示すように、間隔Dが第1対象周波数における電波の波長λ1の30分の1とした場合には、第1アンテナ11の送受信の対象とする周波数範囲において、VSWRが−8dB以上となる。一方、間隔Dを波長λ1の20分の1以上とした場合には、VSWRは−8dB以下となる。また、間隔Dを波長λ1の20分の1とした場合、15分の1とした場合、10分の1とした場合、8分の1とした場合のそれぞれにおいては大きな違いは観測されず、間隔Dを波長λ1の20分の1以上とした場合には、VSWRの変化は収束することが分かる。なお、図は省略するが、第1対象周波数を78GHz等とした場合も同様の傾向が観測される。
【0055】
したがって本実施形態では、
図4に示すシミュレーション結果に基づき、VSWRの抑制と、アンテナ基板10の小型化を両立させるため、間隔Dを波長λ1の20分の1とする。
【0056】
また、
図5は、間隔Dを波長λ1の20分の1とした場合の、第2アンテナ12におけるVSWRと、周波数との関係を示したグラフである。
図5に示すように、以上の構成によれば、第2アンテナ12もまた、自身が送受信の対象とする周波数帯(つまり第2対象周波数帯)において十分な性能を有することが分かる。以上のように配置された複数の第2アンテナ12のそれぞれが受信した信号は、それぞれの信号が混ざらないようにして近距離通信ECU300に提供される。
【0057】
<車両用アンテナユニット100の作動について>
以上の構成において、車両用アンテナユニット100は、まず、第1アンテナ11からレーダ波を送信するとともに、その反射波の受信結果に基づいて、車両Vの前方に存在する物体との距離や、方向、相対速度などを特定する。そして、検出した結果を示すデータを周辺監視ECU200に出力する。
【0058】
なお、受信結果から物体との距離や、方向、相対速度などを特定する方法は周知の方法を援用すればよい。例えば、FM−CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式で、距離と相対速度を特定するとともに、DBF(Digital Beam Forming)によって方向を特定すれば良い。
【0059】
また、車両用アンテナユニット100は、近距離通信ECU300から入力される指示信号に基づいて、複数の第2アンテナ12のそれぞれを用いて、携帯端末との信号の送受信を実施する。携帯端末から送信された信号は、複数の第2アンテナ12で受信されて近距離通信ECU300に提供される。したがって、近距離通信ECU300は、携帯端末との通信を実施するこができる。近距離通信ECU300が請求項に記載の通信装置に相当する。
【0060】
さらに、このような構成によれば、複数の第2アンテナ12は、近距離通信ECU300にとってアレイアンテナとして振る舞う。そして、近距離通信ECU300は、各第2アンテナ12で受信した信号の位相に対して、周知の到来方向推定法(例えばMUSIC法)を援用することによって、複数の第2アンテナ12の受信結果から車両Vに対する携帯端末が存在する方向を特定できる。なお、到来方向推定法を援用する上で必要なデータ、例えば複数の第2アンテナ12の間隔を示すデータ等は、近距離通信ECU300が備える不揮発性の記憶媒体(図示略)に格納されているものとする。
【0061】
つまり、以上の構成によれば、近距離通信ECU300は、車両Vに対する携帯端末が存在する方向を特定することができる。また、受信信号強度から車両用距離を推定することもできる。したがって、距離と方向とから、車両Vに対する携帯端末の位置を特定することができる。
【0062】
また、以上の構成において、第2アンテナ12は、車両Vの前端部に設けられていることになる。したがって、このような構成によれば、車両Vは、第2対象周波数帯において、車両Vの周辺のうち前端部から、車両Vの前方や斜め前方、側方に対して相対的に強い指向性を有することとなる。
【0063】
<本実施形態の効果>
一般的に、大型商業施設等に設けられた広大な駐車場における駐車区画は、駐車車両の前部又は後部が駐車場の通路に面する態様で配置される。つまり、複数の車両は、駐車場において、縦列駐車というよりは、車幅方向に並列した態様で駐車(横列駐車とする)や、駐車場に設けられた通路に対して車体が斜めとなる態様で駐車(斜め駐車とする)される。
図6は、駐車車両が横列駐車となる態様で駐車区画が規定されている駐車場において、車両Vの左右に他車両が駐車されている状況を例示している。
【0064】
ここで、本実施形態の構成によれば、車両Vは、駐車場の通路に面する位置に第2アンテナ12を備える。このため、
図6に示すように、駐車場において車両Vの左右に他車両が駐車されている場合であっても、他車両のボディ等による反射波の影響を受けにくい。
【0065】
したがって、車両Vの周囲に他車両が駐車されている場合であっても、携帯端末の通信品質(ビットエラー率等)が劣化しにくい。また、他車両等による反射波の影響を受けにくいため、携帯端末の位置をより精度よく特定できるようになる。
【0066】
また、以上の構成は、既存のレーダ装置のケース内(ここではアンテナ基板10上)に、第2アンテナ12を追加することによって実現される。したがって、別途、携帯端末からの信号を受信するためのアンテナを、車両Vの前端部に設置するためのコストを抑制することができる。なお、ここでのコストとは、部品点数の増加や取付作業の工程数の増加に起因するものを指す。
【0067】
つまり、本実施形態の構成によれば、携帯端末から送信される信号を受信する際の反射等の影響を抑制でき、かつ、携帯端末からの信号を受信するためのアンテナの設置に要するコストを抑制できる。
【0068】
以上、本発明の1つの実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、以降の種々の変形例も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。また、下記の種々の変形例及び実施形態の幾つかを、適宜組み合せた態様としてもよい。
【0069】
[変形例1]
第2アンテナ12として作動する線状アンテナ素子は、
図7に示すように、アンテナ基板10のエッジ部分に配置してもよい。なお、第2アンテナ12は、アディティブ法やサブトラクティブ法によってパターン形成されればよい。このような態様によれば、アンテナ基板10をより小型化することができる。
【0070】
なお、この変形例においても第1アンテナ11と第2アンテナ12との間隔Dは、波長λ1の20分の1以上となっていることが好ましい。例えば、この変形例1におけるアンテナ基板10は、第1アンテナ11からの距離が波長λ1の20分の1以上となる辺(端辺)を有する大きさの長方形状とする。そして、第2アンテナ12は、第1アンテナ11からの距離が波長λ1の20分の1以上となっている辺のエッジ部分に設けられればよい。
【0071】
[変形例2]
以上では、アンテナ基板10に複数の第2アンテナ12を配置する態様を例示したが、これに限らない。アンテナ基板10に配置される第2アンテナ12は
図8に示すように1つでもよい。
【0072】
[変形例3]
また、
図9に示すように車両Vの前端部において複数の車両用アンテナユニット100を搭載されてもよい。そのような態様によれば、変形例2で述べたように、車両用アンテナユニット100が備える第2アンテナ12が1つであっても、車両用アンテナユニット100が複数配置されることによって、近距離通信ECU300にとっては、複数の第2アンテナ12が存在することになる。
【0073】
したがって、それら複数の第2アンテナ12をアレイアンテナと見立てて、周知の到来方向推定法を援用することによって、携帯端末が存在する方向を特定することができる。なお、各車両用アンテナユニット100は、近距離通信ECU300と相互通信可能に接続されているものとする。また、各車両用アンテナユニット100は、それぞれが備える第2アンテナ12が、所定の間隔でアレイ状に配置された構成となるように配置されてあって、近距離通信ECU300は、各車両用アンテナユニット100が備える第2アンテナ12の位置を示すデータを保持しているものとする。
【0074】
[変形例4]
以上では、車両用アンテナユニット100を、車両Vの前端部に配置する態様を例示したが、これに限らない。車両用アンテナユニット100は、車両Vの後端部に設けられていても良い。
【0075】
なお、ここでの車両Vの前端部とは、車両Vのラジエータグリルや、フロントバンパ付近を指し、車両Vの後端部とは、車両Vのリアバンパ付近を指す。
【0076】
例えば、車両用アンテナユニット100は、車両Vのリアバンパの左右コーナー部の2箇所と、フロントバンパの中央部(又はラジエータグリル)の計3箇所に設けられても良い。そのような態様において、さらに、フロントバンパの左右コーナー部のそれぞれに車両用アンテナユニット100を配置してもよい。
【0077】
フロントバンパ及びリアバンパの左右コーナー部に配置する車両用アンテナユニット100の第1対象周波数は24GHzとする一方、フロントバンパの中央部(又はラジエータグリル)に設ける車両用アンテナユニット100の第1対象周波数は77GHzとするなど、設置箇所に応じて第1対象周波数は変更してもよい。
【0078】
[変形例5]
また、以上では、第2アンテナ12と第1アンテナ11との位置関係は、上述した例に限らない。例えば、第2アンテナ12は、
図10に示すようにX軸方向に平行となって、Y軸方向において第1アンテナ11と隣接するように配置されても良い。
【0079】
この場合の第1アンテナ11と第2アンテナ12との間隔Dは、前述の通り波長λ1の20分の1以上となっていることが好ましい。なお、
図10では、第2アンテナ12を第1アンテナ11の左側に1つだけ備える態様を例示しているが、もちろん、第2アンテナ12は複数備えられていてもよい。例えば、第1アンテナ11の左側と右側に、所定の間隔Dをおいて1つずつ設けられていてもよい。ここでの左側とは、Y軸の正方向を指し、右側とはY軸負方向を指す。
【0080】
[変形例6]
また、第2アンテナ12の形状は、直線状でなくてもよい。例えば
図11に示すようにX軸方向に平行(略平行を含む)な直線状のX軸方向部12Xと、Y軸方向に平行な直線状のY軸方向部12Yとが直角に接続するL字型であってもよい。X軸方向部12Xが請求項に記載の第2直線部に相当し、Y軸方向部12Yが請求項に記載の第1直線部に相当する。この変形例6における第2アンテナ12の給電部は、X軸方向部12XとY軸方向部12Yとが直角に接続する部分(直角部とする)12Aに設けられる。
【0081】
この変形例6における第2アンテナ12は、アンテナ形成面10Aにおいて、X軸方向部12Xと第1アンテナ11との間隔D1、Y軸方向部12Yとの間隔D2は等しくなるように配置される。
【0082】
そのような構成において、第1アンテナ11と第2アンテナ12との干渉度合いは、第1アンテナ11が備える四隅のうち、最も第2アンテナ12に近いコーナー部(近接角部とする)と、給電部が設けられている直角部12Aとの離隔Kによって定まる。
【0083】
この離隔Kは、実施形態における間隔Dと同様、大きくするとアンテナ基板10の面積の増大する一方、小さくするほど、アンテナ間の干渉度合いは大きくなってしまい、第1アンテナ11の性能を劣化させてしまう。したがって、離隔Kは、アンテナ間の干渉度合いが所定の許容範囲に収まる範囲においてできるだけ小さい値とすることが好ましい。
【0084】
図12は、離隔Kを変化させた時の第1アンテナ11におけるVSWRのシミュレーション結果を示すグラフである。
図12に示すように、離隔Kを電気的に波長λ1の20分の1に相当する長さとした場合には、第1対象周波数帯におけるVSWRが、離隔Kを波長λ1の15分の1以上とした場合に比べて大きくなってしまう傾向がある。また、図は省略するが、第1対象周波数を78GHzとした場合も、第1対象周波数を24GHzとした場合と同様の傾向が観測される。
【0085】
このシミュレーション結果を鑑みて、VSWRの抑制の観点から、離隔Kは波長λ1の15分の1以上となることが好ましい。ここでは、さらにアンテナ基板10の小型化の観点から、離隔Kは、電気的に波長λ1の15分の1に相当する長さとする。もちろん、他の態様として離隔Kの電気的な長さは、波長λ1の8分の1や、10分の1などに相当する長さであってもよい。
【0086】
なお、この変形例6の構成において、第2アンテナ12において電流が集中する部分とは給電点が設けられる直角部12Aである。したがって、直角部12Aと接近角部との離隔Kが上記条件を満たせばよい。つまり、X軸方向部12XやY軸方向部12Yと、第1アンテナ11との間隔Dは、第2アンテナ12を直線状とした場合よりも小さくすることができる。
【0087】
[変形例7]
以上では、第2アンテナ12をアンテナ基板10のアンテナ形成面10Aに配置する態様を例示したが、これに限らない。第2アンテナ12は、ケース内において、第1アンテナ11への干渉が所定の許容範囲内に収まる位置に設けられていればよい。例えば、
図13及び
図14に示すように、第2アンテナ12は、レドーム30のアンテナ形成面10Aと対向する面(基板対向面とする)30Aに設けられていても良い。
【0088】
図13は、アンテナ基板10の上面図であって、基板対向面30Aに設けられている第2アンテナ12を破線にて示している。また、
図13に示す一点鎖線を通る車両用アンテナユニット100の断面のうち、第2アンテナ12と第1アンテナ11との位置関係を表す部分の模式図を
図14に示す。
【0089】
この変形例7において、直線状の第2アンテナ12は、基板対向面30Aのうち、第1アンテナ11と対向する領域(つまり第1アンテナ11の上部)において、Y軸方向に平行となるように配置される。ここで、第2アンテナ12のZ軸方向の長さがアンテナ形成面10Aと基板対向面30Aとの間隔に対して十分に小さい場合、第2アンテナ12と第1アンテナ11との離隔Tは、アンテナ形成面10Aと基板対向面30AとのZ軸方向における距離に相当する。
【0090】
離隔Tもまた、小さすぎるとアンテナ間の干渉度合いは大きくなってしまい、第1アンテナ11の性能を劣化させてしまう。一方、離隔Tを大きくすると、車両用アンテナユニット100全体のサイズが増大してしまう。したがって、離隔Tは、アンテナ間の干渉度合いが所定の許容範囲に収まる範囲においてできるだけ小さい値とすることが好ましい。
【0091】
図15は、離隔Tを変化させた時の第1アンテナ11のVSWRのシミュレーション結果を示すグラフである。なお、ここでは一例として第1対象周波数を78GHzとしている。
図15に示すように、離隔Tを波長λ1の30分の1とした場合には、第1対象周波数帯におけるVSWRが、離隔Tを波長λ1の15分の1以上とした場合に比べて大きくなってしまう。なお、第1対象周波数を24GHzとした場合も同様の傾向が観測される。
【0092】
このシミュレーション結果を鑑みて、VSWRの抑制の観点から、離隔Tは波長λ1の15分の1以上とすることが好ましい。ここでは、アンテナ基板10の小型化の観点から、離隔Tは波長λ1の15分の1とする。もちろん、その他、離隔Tは、波長λ1の8分の1や、10分の1などであってもよい。
【0093】
なお、この変形例7では、第2アンテナ12は、基板対向面30Aにおいて第1アンテナ11と対向する部分に配置する態様としたが、これに限らない。第2アンテナ12は、基板対向面30Aにおいて第1アンテナ11と対向しない位置に配置されていてもよい。その場合、第1アンテナ11と第2アンテナ12との離隔は、Z軸方向における離隔とXY平面方向における離隔とが合成された値なって、より離隔が確保されやすくなる。そのため、アンテナ形成面10Aと基板対向面30AとのZ軸方向の離隔をより小さくすることができる。
【0094】
また、この変形例7では、第2アンテナ12を直線状とし、Y軸方向に平行となるように配置する態様を例示したがこれに限らない。直線状の第2アンテナ12をX軸方向と平行となるように配置してもよいし、X軸方向に対して所定角度を有するように斜めに配置してもよい。また、第2アンテナ12の形状は直線上に限らず、
図11に例示するように、折れ曲がっていても良いし、湾曲していても良い。さらに、基板対向面30Aには複数の第2アンテナ12が配置されていても良い。
【0095】
[変形例7の具体例]
上述した変形例7において第2アンテナ12は、例えば
図16に示すように、導電性のねじ40によってレドーム30に係止されれば良い。第2アンテナ12をねじ40によってレドーム30に係止する場合、第2アンテナ12におけるねじ止めを施す箇所は、
図16に示すように、第2アンテナ12に設けられた給電部121から波長λ2の8分の1以内となる位置とすることが好ましい。波長λ2は、第2対象周波数の電波の波長である。
【0096】
なお、給電部121は、第2アンテナ12が直線状である場合には、その中央部に設けられていればよい。また、この具体例においてレドーム30は、導電性の部材からなり、レドーム30と第2アンテナ12とはねじ40でのみ電気的に接続しているものとする。
【0097】
このような態様によれば、ねじ40は、レドーム30に第2アンテナ12を短絡させる役割を担う。それによりレドーム30は、第2アンテナ12にとってのグランド電位を提供する。また、ねじ40は給電部121から波長λ2の8分の1以内となる部分は、第2アンテナ12において相対的に電流が集中する部分である。したがって、給電部121から波長λ2の8分の1以内となる位置でねじ止めすることで、第2アンテナ12の動作を安定させることが出来る。
【0098】
なお、第2アンテナ12へは、アンテナ基板10上に第2アンテナ12へ給電するための線状パターンを形成し、当該線状パターンの終端と給電部121とをケーブル122で接続することで給電すればよい。線状パターンの終端は、例えばアンテナ基板10において給電部121の直下となる位置とすればよい。また、第2アンテナ12は、その他、近距離通信ECU300から引き伸ばされたケーブルによって直接給電されても良い。
【0099】
[変形例8]
以上では、第2アンテナ12を線状アンテナとする態様を例示したが、これに限らない。第2アンテナ12は、平面状のアンテナ(例えばパッチアンテナ)であってもよい。
図17及び
図18に、第2アンテナ12としてのパッチアンテナを、基板対向面30Aに配置した態様の一例を示す。
【0100】
図17は、アンテナ基板10の上面図であって、基板対向面30Aに設けられている平面状の第2アンテナ12を破線にて示している。また、
図18は、
図17に示す一点鎖線を通る車両用アンテナユニット100の断面のうち、第2アンテナ12と第1アンテナ11との位置関係を表す部分の模式図である。
【0101】
この変形例8において、平面状の第2アンテナ12は、基板対向面30Aのうち、第1アンテナ11と対向する領域(つまり第1アンテナ11の上部)に配置される。なお、第2アンテナ12としてのパッチアンテナは、1辺が第2対象周波数の半波長に相当する長さとなっている長方形状(正方形を含む)となっていればよい。
【0102】
このような態様における第2アンテナ12と第1アンテナ11との離隔Tとは、前述の変形例7と同様に、アンテナ形成面10Aと基板対向面30AとのZ軸方向における距離に相当する。
【0103】
図19は、変形例8の構成における離隔Tを変化させた時の第1アンテナ11のVSWRのシミュレーション結果である。なお、ここでは一例として第1対象周波数を78GHzとしている。
図19に示すように、離隔Tを波長λ1の10分の1以下とした場合には、第1対象周波数帯におけるVSWRが、離隔Tを波長λ1の8分の1以上とした場合に比べて大きくなってしまう。また、第1対象周波数を24GHzとした場合も同様の傾向が観測される。
【0104】
このシミュレーション結果を鑑みて、第1アンテナ11のVSWRの抑制の観点から、離隔Tは波長λ1の8分の1以上となることが好ましい。ここでは、アンテナ基板10の小型化の観点から、離隔Tは波長λ1の8分の1とする。もちろん、その他、離隔Tは、波長λ1の6分の1などであってもよい。
【0105】
[変形例9]
以上では、第2アンテナ12を、アンテナ形成面10Aや基板対向面30Aに設ける態様を例示したが、これに限らない。第2アンテナ12は、アンテナ基板10の背面(基板背面)に設けられていても良い。
【0106】
また、ロアケース20の内側においてアンテナ基板10の背面と対向する面(背面対向面)に設けられていてもよい。つまり、第2アンテナ12は、車両用アンテナユニット100のケースの内部に設けられていれば良い。なお、背面対向面に第2アンテナ12を配置する場合には、第2アンテナ12とアンテナ基板10の背面との離隔は、第1アンテナ11への干渉を抑制する観点から、波長λ1の4分の1以上となっていることが好ましい。
【0107】
[変形例10]
第2アンテナ12の形状は、逆Lアンテナや、線状逆Fアンテナ、伝送線路アンテナ等、周知の形状であってもよい。また、第2アンテナ12は、スロットアンテナであってもよい。さらに、第2アンテナ12の形状を平面状とする場合には、パッチアンテナに限らず、板状逆Fアンテナなどであっても良い。