(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記算出手段は、前記取得手段によって取得されたエンジンの回転速度が前記変速後の変速段数に対する目標のエンジンの回転速度より大きい場合、前記理想のエンジンの回転速度の時系列データとして、エンジントルクを0としてエンジンの回転速度を低下させたときのエンジンの回転速度の時系列データを算出する
請求項1又は2記載の反力制御装置。
前記算出手段は、前記取得手段によって取得されたエンジンの回転速度が前記変速後の変速段数に対する目標のエンジンの回転速度以下の場合、前記理想のエンジンの回転速度の時系列データとして、予め定められた最大のエンジントルクを印加させた状態でエンジンの回転速度を上昇させたときのエンジンの回転速度の時系列データを算出する
請求項1又は2記載の反力制御装置。
前記算出手段は、前記理想のクラッチペダルのストローク量の時系列データとして、前記理想のエンジンの回転速度の時系列データにおけるエンジンの回転速度が前記目標の回転速度に対応する回転速度となるタイミングでクラッチ機構が完全に係合されている状態と前記クラッチペダルが最も奥まで踏み込まれて前記クラッチ機構が開放されている状態との中間の状態である半クラッチ状態となるように前記クラッチペダルのストローク量を減少させたときのクラッチペダルのストローク量の時系列データを算出する
請求項1〜請求項5の何れか1項記載の反力制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態例について詳細に説明する。
【0020】
まず、
図1及び
図2を本発明の制御対象とする車両の構成について説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態に係る車両10は、エンジン12、クラッチ機構14、手動式の変速機16、ディファレンシャルギア18、ドライブシャフト20、前輪22R、22L、及び後輪24R、24Lを備えている。なお、
図1では、
図1の左側を車両10の前方(フロント)とし、
図1の右側を車両10の後方(リア)として図示している。また、以下では、前輪22R、22Lを区別する必要がない場合は、符号末尾のアルファベットを省略する。また、以下では、後輪24R、24Lを区別する必要がない場合は、符号末尾のアルファベットを省略する。
【0022】
エンジン12から出力される駆動力は、クラッチ機構14、変速機16、ディファレンシャルギア18、及びドライブシャフト20を介して、前輪22に伝達される。クラッチ機構14は、クラッチペダル28(
図2参照)に対するドライバーの操作によって、完全に係合されて上記駆動力が伝達される係合状態と、上記駆動力が伝達されない開放状態との間でその係合度合が変化する。
【0023】
変速機16は、図示しないシフトレバーに対するドライバーの操作によって、複数の段階(例えば、1速から6速までの6段階)での多段変速が可能とされている。変速機16の入力軸にはクラッチ機構14が接続され、変速機16の出力軸にはディファレンシャルギア18が接続されている。
【0024】
また、
図2に示すように、本実施の形態に係る車両10は、アクセルペダル26の反力、及びクラッチペダル28の反力を制御する反力制御装置の一例としてのコンピュータ30を備えている。また、車両10は、CS位置センサ32、AS位置センサ34、シフト位置センサ36、車速センサ38、クランク角センサ40、車輪回転速度センサ42、及びトルクセンサ44を備えている。また、車両10は、踏力センサ46、48、及びアクチュエータ60、62を備えている。なお、踏力センサ46、48は、踏力検出手段の一例である。
【0025】
CS位置センサ32は、クラッチペダル28のストローク位置を所定間隔で繰り返し検出して、コンピュータ30に出力する。AS位置センサ34は、アクセルペダル26のストローク位置を所定間隔で繰り返し検出して、コンピュータ30に出力する。シフト位置センサ36は、変速機16の変速段数を所定間隔で繰り返し検出して、コンピュータ30に出力する。
【0026】
車速センサ38は、車両10の車速を所定間隔で繰り返し検出して、コンピュータ30に出力する。クランク角センサ40は、クランク角を所定間隔で繰り返し検出して、コンピュータ30に出力する。車輪回転速度センサ42は、前輪22R、22L、後輪24R、24Lの各々の車輪の回転速度を所定間隔で繰り返し検出して、コンピュータ30に出力する。トルクセンサ44は、エンジン12のエンジントルクを所定間隔で繰り返し検出して、コンピュータ30に出力する。
【0027】
踏力センサ46は、アクセルペダル26に設けられ、ドライバーによるアクセルペダル26の踏力を所定間隔で繰り返し検出して、コンピュータ30に出力する。踏力センサ48は、クラッチペダル28に設けられ、ドライバーによるクラッチペダル28の踏力を所定間隔で繰り返し検出して、コンピュータ30に出力する。
【0028】
アクチュエータ60は、アクセルペダル26に設けられ、コンピュータ30による制御に応じてモータ(図示省略)を駆動し、アクセルペダル26に対して反力を与える。アクチュエータ62は、クラッチペダル28に設けられ、コンピュータ30による制御に応じてモータ(図示省略)を駆動し、クラッチペダル28に対して反力を与える。
【0029】
コンピュータ30は、CPUと、RAMと、後述する反力制御処理プログラムを記憶したROMとを備え、機能的には次に示すように構成されている。コンピュータ30は、係合状態量設定部50、変速操作判定部52、算出部54、及び反力制御部56を備えている。なお、算出部54は、取得手段及び算出手段の一例であり、反力制御部56は、制御手段の一例である。
【0030】
ここで、本実施の形態に係るアクセルペダル26及びクラッチペダル28の反力制御の原理について説明する。
【0031】
図3に示すように、ドライバーのペダル操作によるアクセルペダル26の踏力をF
ad、アクセルペダル26の反力をF
avとした場合、アクセルペダル26の合力F
aは、次の式(1)で示される。
【0033】
但し、本実施の形態では、
図3の矢印で示すように、アクセルペダル26の踏力F
ad、及びアクセルペダル26の合力F
aは、アクセルペダル26がドライバーにより踏み込まれる方向を正とした力とする。また、本実施の形態では、
図3の矢印で示すように、アクセルペダル26の反力F
avは、アクセルペダル26が戻る方向を正とした力とする。
【0034】
一方、
図4に示すように、ドライバーのペダル操作によるクラッチペダル28の踏力をF
cd、クラッチペダル28の反力をF
cvとした場合、クラッチペダル28の合力F
cは、次の式(2)で示される。
【0036】
但し、本実施の形態では、
図4の矢印で示すように、クラッチペダル28の踏力F
cd、及びクラッチペダル28の合力F
cは、クラッチペダル28がドライバーにより踏み込まれる方向を正とした力とする。また、本実施の形態では、
図4の矢印で示すように、クラッチペダル28の反力F
cvは、クラッチペダル28が戻る方向を正とした力とする。
【0037】
なお、以上のアクセルペダル26の反力F
av、及びクラッチペダル28の反力F
cvが、本発明の反力制御に用いられる。また、本実施の形態では、ドライバーによる変速機16に対する変速操作(以下、単に「変速操作」という。)が行われた際に、アクセルペダル26の反力F
cv、及びクラッチペダル28の反力F
cvを協調させる。これにより、エンジン12の回転速度を適切な値にして、クラッチ機構14を係合するタイミングが適切なタイミングとなるようにドライバーのペダル操作を誘導する。
【0038】
アクセルペダル26の合力F
aからアクセルペダル26のストローク量S
aまでのダイナミクスを表す伝達関数をG
Sa(s)とすると、ストローク量S
aは、次の式(3)で示される。
【0040】
ここで、次の式(4)に示すように、エンジン12のスロットル開度THは、ストローク量S
a、及び車輪の回転速度N
tからなる関数f
eで決定されるものとする。
【0042】
また、スロットル開度THからエンジン12の回転速度N
eまでのダイナミクスを表す伝達関数をG
e(s)とすると、回転速度N
eは、次の式(5)で示される。
【0044】
従って、上記式(3)〜(5)により、次に示す式(6)が得られる。
【0046】
上記式(6)により、アクセルペダル26の合力F
aによって、エンジン12の回転速度N
eが制御可能であることが分かる。
【0047】
一方、クラッチペダル28の合力F
cからクラッチペダル28のストローク量S
cまでの伝達関数をG
c(S)とすると、ストローク量S
cは、次の式(7)で示される。
【0049】
上記式(7)により、クラッチペダル28の合力F
cによって、クラッチペダル28のストローク量S
cが制御可能であることが分かる。
【0050】
本実施の形態に係る反力制御処理では、アクセルペダル26の合力F
aにより、エンジン12の回転速度N
eを理想のエンジン12の回転速度N
elに漸近させる。また、クラッチペダル28の合力F
cにより、クラッチペダル28のストローク量S
cを、エンジン12の回転速度N
elの関数となる理想のクラッチペダル28のストローク量S
clに漸近させる。
【0051】
まず、アクセルペダル26の合力F
aは、上記式(3)、(4)により、伝達関数G
Sa(s)の逆関数である逆伝達関数、及び関数f
eの逆関数を用いて、次の式(8)により示される。
【0053】
ここで、エンジン12の回転速度N
eを直接的に制御するのはスロットル開度THであるため、スロットル開度THを制御入力とした場合を示してから、アクセルペダル26の合力F
aを制御入力とした場合を示す。理想のエンジン12の回転速度N
elとの差ΔN
el(=N
el−N
e)を用いて、スロットル開度THは次の式(9)で示される。
【0055】
但し、K
el(s)は、エンジン12の回転速度に関するフィードバック制御ゲインとする。従って、アクセルペダル26の合力F
aは、上記式(8)、(9)により、次の式(10)で示される。
【0057】
次に、理想のクラッチペダル28のストローク量S
clとの差ΔS
cl(=S
cl−S
c)を用いて、クラッチペダル28の合力F
cは、次の式(11)で示される。
【0059】
但し、K
cl(s)は、クラッチペダル28のストローク量に関するフィードバック制御ゲインとする。
【0060】
ここで、理想のクラッチペダル28のストローク量S
cl、及び理想のエンジン12の回転速度N
elの決定方法を次に示す。まず、回転速度N
elは、変速操作開始時のエンジン12の回転速度N
e0を初期値として、変速後の変速段数に対して定められた目標のエンジン12の回転速度N
erefに収束する時系列データとする。ここで、回転速度N
erefは、次の式(12)で示される。
【0062】
但し、G
rは、変速機16の変速段数N
Grに対応するギア比であり、defはディファレンシャルギア18のギア比であり、N
tは車輪の回転速度である。
【0063】
そして、本実施の形態に係る理想のエンジン12の回転速度N
elの時系列データは、変速操作開始時のエンジン12の回転速度N
e0と目標のエンジン12の回転速度N
erefとの大小関係により、次に示すように決定される。
【0064】
まず、回転速度N
e0>回転速度N
erefの場合、スロットル開度TH=0とし、エンジン12の伝達関数G
e(s)に従って、エンジン12の摩擦力等によって、エンジン12の回転速度N
eが、回転速度N
e0から回転速度N
erefまで低下していく時系列データを、理想のエンジン12の回転速度N
elの時系列データとする。なお、この場合は、変速操作により変速機16の変速段数が大きくなる場合(所謂アップシフト)に相当する。
【0065】
一方、回転速度N
e0≦回転速度N
erefの場合、変速操作開始時のエンジントルクを印加させた状態で、エンジン12の伝達関数G
e(s)に従って、エンジン12の回転速度N
eが、回転速度N
e0から回転速度N
erefまで上昇していく時系列データを、理想のエンジン12の回転速度N
elの時系列データとする。これにより、反力制御を行うことによるドライバーが覚える違和感を抑制することができる。なお、この場合は、変速操作により変速機16の変速段数が小さくなる場合(所謂ダウンシフト)に相当する。
【0066】
次に、以上のように決定された理想のエンジン12の回転速度N
elの時系列データから、理想のクラッチペダル28のストローク量S
clの時系列データを決定する。なお、以下では、説明の便宜上、クラッチ機構14が完全に係合されている状態でのクラッチペダル28のストローク量をS
cminと表す。また、所謂半クラッチの状態でのクラッチペダル28のストローク量をS
cmidと表し、クラッチペダル28が最も奥まで踏み込まれてクラッチ機構14が開放されている状態でのクラッチペダル28のストローク量をS
cmaxと表す。
【0067】
本実施の形態では、一定値の合力F
cをクラッチペダル28に与えた状態で、ストローク量S
cのダイナミクスを表す伝達関数G
c(s)に従って、ストローク量S
cが、変速操作開始時のストローク量S
c0から、エンジン12の回転速度N
eが目標の回転速度N
erefとなるタイミングでストローク量S
cmidとなるまで低下していく時系列データを、理想のクラッチペダル28のストローク量S
clの時系列データとする。
【0068】
最後に、上記式(10)により得られるF
a、及び上記式(11)により得られるF
cは合力であるため、次の式(13)、(14)により、踏力F
adを補償した反力F
av、及び踏力F
cdを補償した反力F
cvが得られる。
【0070】
次に、以上説明した原理に従った
図2に示す車両10の各構成要素の動作について説明する。
【0071】
係合状態量設定部50は、CS位置センサ32により検出されたクラッチペダル28のストローク位置に基づいて、クラッチペダル28のストローク量を算出してクラッチ機構14の係合状態を判定するための係合状態量LUを設定する。具体的には、一例として
図5に示すように、係合状態量設定部50は、0以上1以下の範囲で、かつクラッチペダル28のストローク量が大きいほど、係合状態量LUを小さい値に設定する。例えば、係合状態量設定部50は、クラッチ機構14が完全に係合されている状態(S
cmin)での係合状態量LUを1と設定する。また、係合状態量設定部50は、半クラッチの状態(S
cmid)での係合状態量LUを0.5と設定する。また、係合状態量設定部50は、クラッチペダル28が最も奥まで踏み込まれてクラッチ機構14が開放されている状態(S
cmax)での係合状態量LUを0と設定する。
【0072】
変速操作判定部52は、係合状態量設定部50により設定された係合状態量LUに基づいて、変速操作の開始、及び変速操作の終了を判定する。具体的には、変速操作判定部52は、一例として、係合状態量LUが1から0.5未満に推移したときを変速操作の開始と判定する。また、変速操作判定部52は、一例として、変速操作の開始を判定した後に、係合状態量LUが0.5以上となったときを変速操作の終了と判定する。
【0073】
算出部54は、反力制御部56で用いられる理想のエンジン12の回転速度の時系列データ、及び理想のクラッチペダル28のストローク量の時系列データを算出する。以下、算出部54による各時系列データの算出について詳細に説明する。
【0074】
算出部54は、変速操作が開始されたときに、クランク角センサ40により検出されたクランク角の変化を取得し、取得したクランク角の変化からエンジン12の回転速度N
e0を算出する。また、算出部54は、シフト位置センサ36により検出された変速後の変速機16の変速段数N
Grに対応するギア比G
r、ディファレンシャルギア18のギア比def、及び車輪回転速度センサ42により検出された車輪の回転速度N
tに基づいて、上記式(12)に従って、目標のエンジン12の回転速度N
erefを算出する。
【0075】
なお、本実施の形態に係る算出部54は、ギア比G
r及びギア比defの各々として、既知の値を適用する。また、本実施の形態に係る算出部54は、回転速度N
tとして、車輪回転速度センサ42により検出された前輪22Rの回転速度を適用する。なお、算出部54は、回転速度N
tとして、前輪22R以外の車輪の何れか一つの回転速度を適用してもよいし、複数の車輪の回転速度の平均値を適用してもよい。
【0076】
また、算出部54は、変速操作が開始されたときに、トルクセンサ44により検出されたエンジントルクを取得する。
【0077】
そして、算出部54は、変速操作開始時のエンジン12の回転速度N
e0が、目標のエンジン12の回転速度N
erefより大きい場合、理想の回転速度N
elの時系列データとして、スロットル開度TH=0とし、エンジン12の伝達関数G
e(s)に従って、エンジン12の摩擦力等によって、エンジン12の回転速度N
eを回転速度N
e0から回転速度N
erefまで低下させたときの時系列データを算出する。
【0078】
一方、算出部54は、変速操作開始時のエンジン12の回転速度N
e0が、目標のエンジン12の回転速度N
eref以下である場合、理想の回転速度N
elの時系列データとして、トルクセンサ44によって取得されたエンジントルクを印加させた状態で、エンジン12の伝達関数G
e(s)に従って、エンジン12の回転速度N
eを回転速度N
e0から回転速度N
erefまで上昇させたときの時系列データを算出する。
【0079】
さらに、算出部54は、理想のエンジン12の回転速度N
elの時系列データに対応する、理想のクラッチペダル28のストローク量S
clの時系列データを算出する。具体的には、算出部54は、理想のクラッチペダル28のストローク量S
clの時系列データとして、一定値の合力F
cをクラッチペダル28に与えた状態で、ストローク量S
cのダイナミクスを表す伝達関数G
c(s)に従って、変速操作が開始されたときのストローク量S
c0から、エンジン12の回転速度N
eが目標の回転速度N
erefとなるタイミングでストローク量S
cmidとなるようにストローク量S
cを減少させたときの時系列データを算出する。
【0080】
反力制御部56は、車輪回転速度センサ42により検出された各時刻の車輪の回転速度N
t、算出部54により算出された理想のエンジン12の回転速度N
elの時系列データ、及び各時刻のエンジン12の回転速度N
eに基づいて、上記式(10)に従って、理想のエンジン12の回転速度N
elの時系列データを実現するように、各時刻のアクセルペダル26の合力F
aを算出する。
【0081】
そして、反力制御部56は、算出したアクセルペダル26の合力F
a、及び踏力センサ46により検出されたアクセルペダル26の踏力F
adに基づいて、上記式(13)に従って、アクセルペダル26の反力F
avを算出する。
【0082】
一方、反力制御部56は、算出部54により算出された理想のクラッチペダル28のストローク量S
clの時系列データ、及び各時刻のクラッチペダル28のストローク量S
cに基づいて、上記式(11)に従って、理想のクラッチペダル28のストローク量S
clを実現するように、各時刻のクラッチペダル28の合力F
cを算出する。
【0083】
そして、反力制御部56は、算出したクラッチペダル28の合力F
c、及び踏力センサ48により検出されたクラッチペダル28の踏力F
cdに基づいて、上記式(14)に従って、クラッチペダル28の反力F
cvを算出する。
【0084】
さらに、反力制御部56は、算出したアクセルペダル26の反力F
avを基づいてアクチュエータ60を制御し、かつ算出したクラッチペダル28の反力F
cvに基づいてアクチュエータ62を制御する。
【0085】
図6には、以上説明した反力制御の入出力の流れを表すブロック図が示されている。
【0086】
次に、
図7を参照して、本実施の形態に係る車両10の作用について説明する。なお、
図7は、例えば車両10のイグニッションスイッチがオン状態とされた際にコンピュータ30によって実行される反力制御処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【0087】
まず、
図7のステップ100において、係合状態量設定部50は、CS位置センサ32により検出されたクラッチペダル28のストローク位置を取得する。次に、ステップ102において、係合状態量設定部50は、上記ステップ100で取得されたストローク位置に基づいて、クラッチペダル28のストローク量を算出する。そして、係合状態量設定部50は、
図5に示したように、算出したクラッチペダル28のストローク量に応じて、係合状態量LUを設定する。
【0088】
ステップ104において、変速操作判定部52は、上記ステップ102で設定された係合状態量LUに基づいて、変速操作が開始されたか否かを判定する。この判定が肯定判定となった場合はステップ106に移行する一方、否定判定となった場合はステップ142に移行する。
【0089】
ステップ106において、算出部54は、クランク角センサ40により検出されたクランク角の変化を取得し、取得したクランク角の変化からエンジン12の回転速度N
e0を算出する。
【0090】
ステップ108において、算出部54は、シフト位置センサ36により検出された変速後の変速機16の変速段数N
Grを取得する。また、算出部54は、車輪回転速度センサ42により検出された車輪の回転速度N
tを取得する。そして、算出部54は、取得した変速段数N
Gr、回転速度N
t、及びディファレンシャルギア18のギア比defに基づいて、上記式(12)に従って、変速後の目標のエンジン12の回転速度N
erefを算出する。
【0091】
ステップ110において、算出部54は、トルクセンサ44により検出されたエンジントルクを取得する。
【0092】
ステップ112において、算出部54は、上記ステップ106で算出された変速操作開始時のエンジン12の回転速度N
e0が、上記ステップ108で算出された目標のエンジン12の回転速度N
erefより大きいか否かを判定する。この判定が肯定判定となった場合はステップ114に移行する一方、否定判定となった場合はステップ116に移行する。
【0093】
ステップ114において、算出部54は、理想のエンジン12の回転速度N
elの時系列データとして、スロットル開度TH=0とし、エンジン12の伝達関数G
e(s)に従って、エンジン12の摩擦力等によって、エンジン12の回転速度N
eを上記ステップ106で算出された回転速度N
e0から上記ステップ108で算出された回転速度N
erefまで低下させたときの時系列データを算出する。
【0094】
一方、ステップ116において、算出部54は、理想のエンジン12の回転速度N
elの時系列データとして、上記ステップ110で取得された変速操作開始時のエンジントルクを印加させた状態で、エンジン12の伝達関数G
e(s)に従って、エンジン12の回転速度N
eを上記ステップ106で算出された回転速度N
e0から上記ステップ108で算出された回転速度N
erefまで上昇させたときの時系列データを算出する。
【0095】
ステップ118において、算出部54は、上記ステップ114又はステップ116で算出された理想のエンジン12の回転速度N
elの時系列データに対応する、理想のクラッチペダル28のストローク量S
clの時系列データを算出する。具体的には、算出部54は、理想のクラッチペダル28のストローク量S
clの時系列データとして、一定値の合力F
cをクラッチペダル28に与えた状態で、ストローク量S
cのダイナミクスを表す伝達関数G
c(s)に従って、上記ステップ102で算出された変速操作開始時のストローク量S
c0から、エンジン12の回転速度N
eが目標の回転速度N
erefとなるタイミングでストローク量S
cmidとなるようにストローク量S
cを減少させたときの時系列データを算出する。
【0096】
ステップ120において、反力制御部56は、車輪回転速度センサ42により検出された車輪の回転速度N
tを取得する。ステップ122において、反力制御部56は、クランク角センサ40により検出されたクランク角の変化を取得し、取得したクランク角の変化からエンジン12の回転速度N
eを算出する。
【0097】
ステップ124において、反力制御部56は、上記ステップ120で取得された車輪の回転速度N
t、上記ステップ114又はステップ116で算出された理想のエンジン12の回転速度N
elの時系列データ、及び上記ステップ122で算出されたエンジン12の回転速度N
eに基づいて、上記式(10)に従って、アクセルペダル26の合力F
aを算出する。
【0098】
ステップ126において、反力制御部56は、CS位置センサ32により検出されたクラッチペダル28のストローク位置を取得し、取得したストローク位置に基づいて、クラッチペダル28のストローク量S
cを算出する。
【0099】
ステップ128において、反力制御部56は、上記ステップ118で算出された理想のクラッチペダル28のストローク量S
clの時系列データ、及び上記ステップ126で算出されたクラッチペダル28のストローク量S
cに基づいて、上記式(11)に従って、クラッチペダル28の合力F
cを算出する。
【0100】
ステップ130において、反力制御部56は、踏力センサ46により検出されたアクセルペダル26の踏力F
adを取得する。そして、反力制御部56は、取得したアクセルペダル26の踏力F
ad、及び上記ステップ124で算出されたアクセルペダル26の合力F
aに基づいて、上記式(13)に従って、アクセルペダル26の反力F
avを算出する。
【0101】
ステップ132において、反力制御部56は、踏力センサ48により検出されたクラッチペダル28の踏力F
cdを取得する。そして、反力制御部56は、取得したクラッチペダル28の踏力F
cd、及び上記ステップ128で算出されたクラッチペダル28の合力F
cに基づいて、上記式(14)に従って、クラッチペダル28の反力F
cvを算出する。
【0102】
ステップ134において、反力制御部56は、上記ステップ130で算出されたアクセルペダル26の反力F
avに基づいてアクチュエータ60を制御し、かつ上記ステップ132で算出されたクラッチペダル28の反力F
cvに基づいてアクチュエータ62を制御する。
【0103】
ステップ136において、係合状態量設定部50は、上記ステップ100と同様に、CS位置センサ32により検出されたクラッチペダル28のストローク位置を取得する。次に、ステップ138において、係合状態量設定部50は、上記ステップ102と同様に、上記ステップ136で取得されたストローク位置に基づいて、クラッチペダル28のストローク量を算出する。そして、係合状態量設定部50は、
図5に示したように、算出したクラッチペダル28のストローク量に応じて、係合状態量LUを設定する。
【0104】
ステップ140において、変速操作判定部52は、上記ステップ138で設定された係合状態量LUに基づいて、変速操作が終了されたか否かを判定する。この判定が否定判定となった場合は上記ステップ120に戻る一方、肯定判定となった場合はステップ142に移行する。
【0105】
ステップ142において、CPUは、所定の終了タイミングが到来したか否かを判定する。この判定が否定判定となった場合は上記ステップ100に戻る一方、肯定判定となった場合は本反力制御処理プログラムを終了する。なお、本実施の形態では、所定の終了タイミングとして、一例として車両10のイグニッションスイッチがオフ状態とされたタイミングを適用している。
【0106】
図8及び
図9には、以上説明した反力制御の動作の一例を示すタイミングチャートが示されている。なお、
図8は、回転速度N
e0>回転速度N
erefの場合のタイミングチャートを示し、
図9は、回転速度N
e0≦回転速度N
erefの場合のタイミングチャートを示している。また、
図8及び
図9共に、(1)の縦軸がアクセルペダル26の合力、及びクラッチペダル28の合力を示している。また、
図8及び
図9共に、(2)の縦軸がエンジン12の回転速度を示し、(3)の縦軸がクラッチペダル28のストローク量を示している。また、
図8及び
図9の横軸は時間を示している。
【0107】
図8に示すように、回転速度N
e0>回転速度N
erefの場合、本実施の形態では、アクセルペダル26の合力F
aが0となるように、アクセルペダル26の反力F
avが制御される。また、この場合、本実施の形態では、エンジン12の回転速度が変速後の目標の回転速度N
erefとなるタイミングで、半クラッチ状態となり、かつクラッチペダル28の合力F
cが一定となるように、クラッチペダル28の反力F
cvが制御される。
【0108】
一方、
図9に示すように、回転速度N
e0≦回転速度N
erefの場合、本実施の形態では、理想のエンジン12の回転速度N
elの時系列データに応じて、アクセルペダル26の合力F
aが算出された値(
図9に示す例では一定の値)となるように、アクセルペダル26の反力F
avが制御される。また、この場合、本実施の形態では、エンジン12の回転速度が変速後の目標の回転速度N
erefとなるタイミングで、半クラッチ状態となり、かつクラッチペダル28の合力F
cが一定となるように、クラッチペダル28の反力F
cvが制御される。
【0109】
以上説明したように、本実施の形態によれば、変速機に対する変速操作が行われた場合に、変速操作が行われたときのエンジンの回転速度から、変速後の変速段数に対して予め定められた目標のエンジンの回転速度までの理想のエンジンの回転速度の時系列データを算出する。また、本実施の形態によれば、算出された理想のエンジンの回転速度の時系列データに対応する、理想のクラッチペダルのストローク量の時系列データを算出する。そして、本実施の形態によれば、算出された理想のエンジンの回転速度の時系列データを実現するように、アクセルペダルの反力を制御し、かつ算出された理想のクラッチペダルのストローク量の時系列データを実現するように、クラッチペダルの反力を制御する。これにより、ドライバーのペダル操作を理想的なペダル操作に誘導することができる。
【0110】
なお、上記実施の形態では、前輪が駆動輪である所謂フロント駆動の場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、後輪が駆動輪である所謂リア駆動としてもよい。
【0111】
また、上記実施の形態では、車輪回転速度センサにより車輪の回転速度を検出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、車速から車輪の回転速度を推定してもよい。
【0112】
また、上記実施の形態では、トルクセンサによりエンジントルクを検出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、エンジンのスロットル開度及びエンジンの回転速度等からエンジントルクを推定してもよい。
【0113】
また、上記実施の形態では、回転速度N
e0≦回転速度N
erefの場合の理想のエンジン12の回転速度N
elの時系列データとして、変速操作が開始されたときのエンジントルクを印加させた状態で、エンジン12の伝達関数G
e(s)に従って、エンジン12の回転速度N
eが回転速度N
e0から回転速度N
erefまで上昇させたときの時系列データを適用した場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、回転速度N
e0≦回転速度N
erefの場合の理想のエンジン12の回転速度N
elの時系列データとして、予め定められた最大のエンジントルクを印加させた状態で、エンジン12の伝達関数G
e(s)に従って、エンジン12の回転速度N
eを回転速度N
e0から回転速度N
erefまで上昇させたときの時系列データを適用してもよい。これにより、上記実施の形態に比較して、
図9に示した反力制御期間を短縮することができる。
【0114】
また、上記実施の形態では、理想のクラッチペダルのストローク量の時系列データとして、クラッチペダルのストローク量を徐々に減少させる時系列データを適用した場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、
図10及び
図11に示すように、理想のクラッチペダルのストローク量の時系列データとして、変速操作の開始直後に、クラッチペダルのストローク量を予め定められた最大のクラッチペダルの合力で半クラッチ状態の手前の予め定められたストローク量まで減少させた後に、エンジンの回転速度N
eが目標の回転速度N
erefとなるタイミングで半クラッチ状態とする時系列データとしてもよい。なお、
図10が上記
図8に対応し、
図11が上記
図9に対応する。
【0115】
また、上記実施の形態では、アクセルペダル及びクラッチペダルの各々の踏力をセンサにより検出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、アクセルペダル及びクラッチペダルの各々の踏力を、センサを用いずに推定してもよい。この場合、例えば、車両の実機を用いた実験等により、平均的なドライバーのアクセルペダル及びクラッチペダルの踏力を計測し、該踏力と、車両の車速、車両の前後方向の加速度(前後G)、及び変速機の変速段数との関係をペダル踏力推定マップとして、予め作成する。そして、上記実施の形態の反力制御処理を行う場合は、
図12に示すように、車両の車速、車両の前後G、及び変速機の変速段数を入力として、予め作成したペダル踏力推定マップを用いてアクセルペダル及びクラッチペダルの各々の踏力を推定する形態が例示される。
【0116】
また、上記実施の形態では、クラッチ機構を半クラッチ状態とするタイミングとして、エンジンの回転速度が、変速後の目標の回転速度となるタイミングを適用した場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、クラッチ機構を半クラッチ状態とするタイミングとして、エンジンの回転速度が、変速後の目標の回転速度に所定のマージンを加えた回転速度となるタイミングを適用してもよい。
【0117】
また、上記実施の形態では、エンジンの回転速度が変速後の目標の回転速度となるタイミングで、半クラッチ状態(S
cmid)となるようにクラッチペダルの反力を制御する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、エンジンの回転速度が変速後の目標の回転速度となるタイミングで、クラッチペダルのストローク量がS
cmin以上S
cmid以下となるようにクラッチペダルの反力を制御してもよい。
【0118】
また、上記実施の形態では、変速操作開始時に1回のみ理想のエンジンの回転速度の時系列データ及び理想のクラッチペダルのストローク量の時系列データを算出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、変速操作中に、理想のエンジンの回転速度の時系列データ及び理想のクラッチペダルのストローク量の時系列データを更新してもよい。この場合、
図13に示すように、上記実施の形態の反力制御処理(
図7参照)におけるステップ140の判定が否定判定となった場合に、ステップ106に戻ることになる。また、理想のクラッチペダルのストローク量の時系列データを更新する場合は、上記
図13のステップ118において、直前のステップ138で算出されたクラッチペダルのストローク量をS
c0として適用すればよい。