【実施例1】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、上下左右の方向は図中に示す方向であるとして説明する。
【0016】
図1は本発明の実施例に係る遠心機1の概略構成図である。遠心機1は、箱形の筐体2を備え、筐体2の内部の上下中央付近には仕切り板2aによって上下2段の空間に仕切られる。仕切り板2aの上段の空間には、上面が開口する略円筒状のボウル5が載置される。ボウル5の上側の開口面には開閉可能なドア10が設けられ、ロータ4を閉鎖又は密閉できる。ボウル5の周囲には図示しない冷凍配管が巻回され、図示しない冷却装置が接続されることによりロータ室3内のロータ4が設定温度に保たれる。
【0017】
筐体2内の仕切り板2aによって上下に仕切られた下段側には、回転駆動源たる駆動装置6が設けられる。駆動装置6は例えば、誘導電動機、ブラシレスDCモータ等の公知のモータが用いられ、その回転軸6aが鉛直方向に配置され、ボウル5の底面に形成された穴を貫通して回転軸6aがロータ室3の内部に伸びるように配置される。回転軸6aの上端部にはロータ4が装着され、回転軸6aによって駆動装置6の回転力がロータ4に伝達される。ロータ4としては、アングルロータ又はスイングロータ等が任意のサイズのものを用いることができる。筐体2の上部後方側のパネル13には、使用者からの入力を受け付けるための入力部と、使用者に対して情報を表示する表示部が設けられる。筐体2の仕切り板2aの下側には、パネル13に設けられる表示部への情報の表示と使用者からの操作入力の受付けの制御、駆動装置6の回転制御、図示しない冷却装置の制御等の遠心機1の全体の制御を行うための制御装置15が設けられる。制御装置15は、マイクロコンピュータ、揮発性および不揮発性の記憶装置等を含んで構成される電子回路である。
【0018】
使用者は、パネル13から運転条件を設定入力し、試料を収容したロータ4を駆動装置6の回転軸6aに装着してドア10を閉め、パネル13にあるスタートボタンを押してロータの回転を開始させる。スタートボタンが押されると制御装置15は、ドア10が開けられないようドアロック14を動作させて、ドア10を開く操作(開動作)を規制、いわゆるロック状態にしてから駆動装置6を起動する。ドアロック14は、ドア10が開かないように閉位置で固定させるものであって、ロータ4が回転しているときはずっとロック状態が保たれ、正常に遠心分離運転が終了してロータ4が停止するか、又は、使用者の意思により運転が中断されてロータ4が停止するとロック状態が解除される。本実施例ではさらに、
図4又は
図6で後述する制御によって所定の規制時間T1又はT2が経過するか、又は、
図4のステップ110の状態を満たすことによって、ドアロック14のロック状態が解除される。
【0019】
遠心機1のドアロック14は、ドア10を水平方向に移動させてロータ室3を開閉するタイプでは回転開始と同時にドアが水平方向に移動できないように棒状の突起を出したりする。また、装置の後や横に蝶番を設けてドア10が蝶番を支点に回動するようにして開閉する遠心機では、ドア10の蝶番とは反対側の辺部(ドア10の可動側の辺部)付近に穴のあいた突起物を取り付け、ロータの回転中は突起物の穴にソレノイドなどを使って鍵状のものを差し込んでドア10が開くのを防ぐようにする。尚、ドア10の開閉構造やドアロック14の種類や構造については任意であり、制御装置15からの電気的な信号によりドア10のロックとオンロックの開閉制御ができれば、任意のロック機構を用いても良い。
【0020】
使用者がパネル13から入力する運転条件には、遠心分離効果を決めるためのロータの回転速度、運転時間及びサンプルを最適な状態に保持するための制御温度が含まれ、その他、加減速時の舞い上がりを左右する勾配の傾きなどを設定することができる。ロータ4は、使用できる試験管の種類や大きさ、本数などに応じて、異なる大きさ、形状、材質のものが種々用意され、使用者はそれらのうち遠心機1に適合する任意のものを選択する。ロータ4のそれぞれには強度上の制約などから許容最高回転速度が決められており、また、慣性モーメントの違いから、ブレーキ無しの自然減速における停止時間も異なる。ここでは図示していないが、ロータ4に永久磁石による識別子を取り付けて、この識別子を検出する磁気センサをチャンバの底面付近に設け、ロータ4の回転開始直後にロータ4の種類を識別することが行われる。本実施例では特開2002−113394号公報に記載されているように、ロータ4の底面部であって回転軸6aの軸心を中心とした同一円周上に図示しない永久磁石を3個以上配置し、ロータ4に磁界の変化を検出するホールIC等の磁気センサ(図示せず)を設け、2個の永久磁石の角度でロータ4の許容最高回転速度を識別し、更に他の1個以上の永久磁石の位置を併せてロータのIDを識別することにより、ロータ4のID(識別子)と許容最高回転速度の双方を識別する。
【0021】
駆動装置6の回転軸6aの下端には、薄い円盤の周上に均等間隔で複数のスリットが開けられたセンサスリット9が取り付けられ、このセンサスリット9を軸方向と平行方向に挟むようにしてフォトインタラプタ8が設けられる。フォトインタラプタ8は、センサスリット9の片側の面(例えば上側の面)側に発光部を有し、反対側の面(例えば下側の面)に受光部を有し、受光部と発光部の間に位置するスリットを通して断続的に入光する光の間隔を測定することにより、駆動装置6の回転軸6aの回転速度の検出をすることができる。フォトインタラプタ8からの出力信号は、制御装置15に入力され、駆動装置6がパルス状の入力信号の間隔を測定することにより回転軸6aの回転速度、即ちロータ4の回転速度を検出する。なお、遠心機によってはセンサスリット9とフォトインタラプタ8を用いた回転速度を検出するための速度検出器7の代わりに別の光学式の速度検出器、磁気式の回転センサを用いた速度検出器、機械的に回転位置を検出する速度検出器等、その他の速度検出器を用いても良い。磁気式の回転センサは、回転軸6aに又は回転軸6aと連動して回転する部分に永久磁石を取り付けて、永久磁石の近傍の非回転部分にホールIC等の磁気センサを設けることによって回転速度を検出することができる。最近では、駆動装置として誘導電動機を用い、ベクトル制御によるセンサレス制御など別の方式で回転速度を検出しているものもある。さらに、駆動装置6がブラシレスDCモータである場合は、ロータの位置検出を行うホール素子等の出力信号を用いるようにしても良い。
【0022】
駆動装置6の回転軸6aは、ここでは曲げ剛性を調整することによって、曲げの固有振動数が、ロータ4の設定可能な回転速度(例えば1,000〜100,000rpm)よりも低速側(例えば500rpm程度)になるようにした、いわゆる“弾性軸”を採用し、ロータ4自身に残留するインバランスの影響や試料のインバランスに起因するロータ4全体のインバランスによる高速回転時の軸受荷重を軽減するようにしている。尚、遠心機1としては、ロータ4の設定可能な回転速度領域よりも高速側に共振周波数を持たせる、いわゆる“剛性軸”を用いることも可能である。
【0023】
上述したロータ4又は回転軸6aの回転センサとは別に、駆動装置6の上部には回転軸6aの変位を測定するための渦電流式非接触型の変位検出器11が設けられる。変位検出器11は、回転軸6aの振れの振幅を検出し、過大なインバランスによる駆動装置6の故障を防止するものである。制御装置15は、ロータ4が回転している際に変位検出器11の出力信号を監視することにより、回転軸6aの振幅を検出し、この出力が所定値を超えた場合は駆動装置6の回転を停止させることにより、一種の安全装置としている。なお、変位検出器11は渦電流式非接触型だけでなく、レーザ式、静電容量式、超音波式などの非接触型の変位検出器で回転軸6aの変位を検出するようにしても良い。
【0024】
制御装置15には、変位検出器11の信号波形を周波数に変換する周波数検出器16が設けてあり、回転軸6aの振動周期からロータ4の回転速度が検出可能である。周波数検出器16は、制御装置15に含まれるマイコンのA/D変換器に変位検出器11の信号波形を入力されるものであれば、ソフトウェアによる処理によって実現できる。
【0025】
ロータ4が回転中にフォトインタラプタ8が故障や断線などを起こすと、駆動装置6の回転速度が即座に検出不能となる。このような回転速度検出の異常(通常回転速度が0になったり、急激に変化したりする)や突然信頼できない信号が入ってきたり、制御装置内の回転速度検出部が故障したり、またはセンサレスのベクトル制御の位置制御装置が故障するなどの異常事態が発生した場合は、制御装置15はパネル13に故障の発生と故障内容を意味するアラームコードを表示する。また、何らかの理由でロータ4の回転速度が検出不能となった場合は、制御装置15は遠心分離運転の継続を中止して、ロータ4を安全に停止させるように制御する。このロータ4を停止させる際には、制御装置15はどのような原因で回転速度が検出不能となったのかがわからないため、積極的な制動(例えば電気ブレーキ)を行うことなく、自然減速だけで回転中のロータ4を停止させるようにしている。この際、制御装置15は、故障発生直前のロータの回転速度を記憶し、上述したロータ識別によりロータ4の種類に応じた回転中のロータ4が自然減速で停止するまでの時間を計算し、或いは予め用意された記憶装置からその値を読み出す。そして制御装置15は、ロータ4が完全に停止するまで、または使用者がロータ4に触れても危険のない速度になるまでの時間(所定の規制時間T1)が経過するまで、ドア10のロック状態を継続させる。
【0026】
通常、アラームは異常の原因を除去すればクリアできるようプログラムされており、例えば回転速度設定において、使用するロータ4の許容回転速度以上に誤って設定して運転を開始した場合、運転開始直後のロータIDの認識により制御装置15は設定誤りを検出してアラームを表示してロータ4を減速させるが、設定回転速度を正しく再設定するとアラームがクリアでき、遠心分離運転の継続が可能となる。しかしながら、ロータ回転中に発生した回転速度検出不良の場合は、回転速度が正しく検出できるようになったか、もしくは所定の規制時間T1が経過しない限り、アラームをクリアできないようプログラムして、ドア10がロックされ続けるように構成した。このドア10をロックし続ける制御について、
図2〜
図4を用いてさらに説明する。
【0027】
図2は、変位検出器11の出力信号を示す波形図である。横軸は時間の経過(単位ミリ秒)であり、縦軸は変位量(変位検出器11と回転軸6aとの距離(単位マイクロメーター))である。ロータ4が装着された回転軸6aは、ブレが全くない状態(変位量が0で一定)で回転することが理想であるが、実際にはインバランス状態が完全にゼロにはならないため、回転軸6aの回転にはほんの僅かなブレが生じて、その変位量21はサイン波のようになる。変位量21は、回転軸6aの所定の回転角にて矢印21a、21cのように変位量21が最大になり、その回転角とほぼ180度離れた回転位置にて矢印21b、21dのように変位量21が最低になる。変位量21の振幅は、矢印21cのような最大変位と矢印21dのような最小変位との差となる。ここで、矢印21aで示す変位量21のピークから矢印21cで示す次のピークまでが回転軸6aの1回転に相当するため、矢印21aと矢印21cの間隔(周期)を計測すれば、回転速度は、変位検出器11の信号の周期の逆数から算出することができる。
【0028】
図3は駆動装置6の回転軸6aの回転速度と変位検出器11の出力信号の振幅30との関係を示すグラフである。縦軸は振幅の大きさ(振幅値)であり、
図2にて示した波形から設定回転数に応じた振幅30の値をプロットしたものである。本実施例では回転軸6aの共振周波数時の回転速度N
c(例えば500rpm)が、実際に遠心分離運転を行う回転領域(例えば1,000〜100,000rpm)以下となるように設定したので、その振幅30の大きさと回転速度との関係の一例は
図3に示すようになる。ここで、遠心分離運転を行っている時、即ち設定回転速度N
1にて回転しているときに何らかの障害が発生して速度検出器7から速度を検出できない状態になったら、制御装置15は駆動装置6の駆動を停止させると共に、矢印30aにて異常発生する直前のロータ4の回転速度を取得して(これを回転速度V
0とする)、回転速度V
0を基準にして、自由回転によって回転軸6a及びロータ4が確実に停止するための規制時間T1を設定し、規制時間T1間が経過するまでドアロック状態を維持する。つまり、使用者は規制時間T1が経過するまでドア10を開くことができない。
【0029】
回転軸6a及びロータ4は、矢印30aの時点の回転速度(設定回転速度N
1)から徐々に低下するが、
図3の特性のロータ4では回転速度が低下するにつれて矢印30bのように変位検出器11の出力信号の振幅30が低下する。そして振幅30が小さくなった後に矢印30cに示すように再び振幅30が大きく上昇する。これは回転軸6aの回転速度が共振周波数と一致する回転速度N
cに近づくからである。その後、矢印30dのように振幅30が大きく上昇し、矢印30eの回転速度N
cの位置でピークに到達し、その後に再び矢印30fのように振幅30が大きく低下して、回転速度が0になる矢印30gで振幅30が0になる。ここで、矢印30aから矢印30gに到達するまでの実時間は、設定した規制時間T1とは一致せず、規制時間T1よりも早い時点で矢印30gに到達する。これは、あらゆる条件下においても規制時間T1が経過したらロータ4が確実に停止しているように、安全マージンを十分に確保しているからであり、規制時間T1には停止予想時間に十分な余裕度を持たせた値としているからである。
【0030】
本実施例では、設定回転速度N
1から規制時間T1が経過する時間で管理するだけでなく、共振周波数が所定量だけ上昇する時点、つまり矢印30cの時点から規制時間T1による管理から所定の規制時間T2による管理に切り替えるようにした。これは、ブレーキ無しの自然減速において、共振周波数付近に到達したことを検出し、共振周波数から一定時間経過するまでドアロックの解除を規制する方が、より精度良くドアロック解除可能時期を検出することができ、従来の方法よりも早期にサンプルを回収することができるからである。尚、ここでは矢印30c付近の共振周波数が所定量だけ上昇する時点を基準にT2を設定したが、規制時間T2の基点を30c付近にするか、増加率が十分大きい矢印30d付近にするか、ピークとなる矢印30e付近にするかは任意であり、検出のし易い位置を起点とすると良い。
【0031】
次に
図4のフローチャートを用いて、遠心機の異常発生時の処理手順を説明する。
図4に示す一連の動作は、制御装置15に含まれる図示しないマイクロコンピュータでコンピュータプログラムを実行することによりソフトウェアにて実現でき、そのソフトウェアはロータ4が回転しているときにバックグランドにて実行される。まず、制御装置15は、ロータの回転中に速度検出器7からの速度信号に異常が発生したと判断したら(ステップ101)、異常発生直前(速度信号のロスト直前)のロータ4の回転速度V
0を取得して制御装置15に含まれるメモリ等の図示しない記憶装置に記憶する(ステップ102)。速度信号に異常が発生した場合の代表的な例は、ロータ4の回転中に速度信号が完全に又はその一部が検出できない状態、即ち速度信号がロストした状態である。
【0032】
次に制御装置15は、直ちに駆動装置6への電源供給を遮断することにより駆動装置6を減速状態とする(ステップ103)。次に制御装置15は、ドアロック解除までの規制時間T1を算出して(ステップ104)、規制時間T1をカウントする第一のタイマーによるカウントをスタートさせる。ここで、
図5を用いてロータ毎に予め設定される規制時間T1を説明する。規制時間T1は、自然減速により止まるまでの時間を予め実験等によって求めておいて、それに十分な余裕度を設けた時間を加えた値とされるものである。
図5では規制時間T1として、代表的な速度を複数、ここでは70,000rpm、50,000rpm、30、000rpmの3つの速度に対応する値を格納している。規制時間T1は、その時間の経過後にドア10を開けることを許可するというものであり、ドアロックのロック状態を維持する時間でもある。しかしながら、規制時間T1は安全性の確認のための時間であるため、余裕度をかなり設けることが実情であり、実際に減速状態が生じた場合には、どう見てもこれは止まっているだろうという状態でもドアのロック状態が継続している状況が生ずる。特に、従来のように設定されたロータの種類に対して画一的な規制時間Tを用いる場合は、この状況が顕著におきやすい。そこで、本実施例ではロータ毎に予め複数の回転数の規制時間T1を求めておき、それらの規制時間T1を制御装置15の記憶装置に格納しておいて、実際の異常状態発生時にはそれを記憶装置から読み出すことによって装着されたロータ4に即した最適な規制時間T1を設定するようにした。
【0033】
例えば装着したロータがBであって、異常発生直前のロータ4の回転速度V
0が50,000rpmの時は、規制時間T1として
図5のテーブルから350分を設定する。回転速度V
0がこれらテーブルに格納された数値と一致しない場合、例えば60,000rpmの場合は、70,000rpmと50,000rpmの数値を用いて計算して375分としても良いし、安全マージンが多い方の数値、ここでは70,000rpmの規制時間T1=400分を用いるようにしても良い。尚、装着されたロータ4の種類に応じた規制時間T1が格納されていない場合は、最も条件が悪い(規制時間T1が長い)ロータの値を用いるようにすれば良い。また、ロータの回転速度に応じた規制時間T1を具体的に格納しておくのでは無く、速度を変数に持つ算出式を代わりに格納しておいて、異常発生時に制御装置15が算出式を用いて演算によって規制時間T1を算出するようにしても良い。
【0034】
再び
図4に戻り、ステップ105で現在の回転速度Vnがサンプリング間隔の何番目であるかをカウントためのカウンタnを初期値に設定する。ここではn=1とする。次に、制御装置15は変位検出器11の信号から周波数検出器16を用いて回転軸6aの回転速度Vn(ここではV
1)を検出する(ステップ106)。この回転速度は、
図2に示すように変位検出器11の信号の周期を検出し、その逆数から算出したものである。ステップ107において、制御装置15は回転速度の差分V
0−V
1を算出し、この差分が0(ゼロ)未満である場合は、減速中であるはずにも関わらず回転速度が増加していることから、V
nを正確に検出できていないと判断してステップ114に移行し、この差分が所定値より大きい場合は、ブレーキ無し減速にもかかわらず、回転速度の減少が大きいことから、V
nを正確に検出できていないと判断してステップ114に移行する。ステップ114では、ドアロック解除のための規制時間T1が経過したかを比較し、経過した場合にはドアロックを解除し(ステップ112)、異常発生時の処理を終了する(ステップ113)。
【0035】
ステップ107において、回転速度の低下度合が正常の範囲内と判断された場合は、カウンタnを1だけインクリメントし(ステップ108)、制御装置15はサンプリング周期が経過したら、変位検出器11の出力信号からの次の回転速度V
nを検出し、図示しない記憶装置に記憶する(ステップ109)。次に制御装置15は、記憶されている直前の回転速度V
n−1と現在の回転速度V
nの差分を算出し、ステップ101と同様に回転速度の低下度合いが正常の範囲内かを判断する。回転速度の差分V
n−1−V
nが正常の範囲外であった場合は、変位検出器11からの回転速度を正確に検出できていないと判断し、ステップ114に移行する(ステップ110)。回転速度の差分が範囲内であった場合は、制御装置15は変位検出器11からの回転速度V
nがドア10の開放を許可するための所定値以下か比較する(ステップ111)。尚、ステップ110、110の判断において、速度V
n−1と速度V
nの値だけを比較するのでは無く、ノイズの影響等による測定誤差を考慮して、複数の取得データの平均値を用いて判断するように、例えばステップ110では、速度(V
n−4+V
n−3)の平均値と、速度(V
n−1+V
n)の平均値を比較するように構成しても良い。
【0036】
回転速度V
nが所定値より大きい場合はステップ108に戻り、回転速度V
nが所定値以下になるまでステップ108〜111を繰り返す。回転速度V
nが所定値以下になったら、制御装置15はドアロック14(
図1参照)を解除し(ステップ112)、異常発生時の処理を終了する(ステップ113)。ここでステップ111における所定値とは、回転中のロータに触れても、危険が及ばない速度(ドアの開放可能速度)のことで、例えばロータの周速が2m/s未満とすることができる。以上のことから、速度検出器7から速度を検出できない状態に陥った場合でも、制御装置15に設けた周波数検出器16から回転軸6aの回転速度を検出し、回転速度がドア10の開放可能速度以下になったらドアロックを解除することができる。よって、駆動装置6への電源供給遮断によるブレーキ無し減速時間において、余裕度を削減して、使用者はロータ4の停止後、できるだけ早い時期にサンプルを回収することができる。また、変位検出器11からの出力が小さいなどの理由で周波数検出器16から回転軸6aの周波数が検出できない場合でも、従来の遠心機と同様に速度検出器7から速度を検出できない状態に陥った時点から一定の規制時間T1が経過するまでドアロックの解除規制を行い、この規制時間T1をブレーキ無し減速で停止するまでの時間に余裕度を加えた時間とすることで十分な安全性を確保することができる。
【0037】
以上、本実施例によれば遠心機1のロータ回転中に、駆動装置6の回転速度の検出が不能になった場合に、ロータ4が自然減速で確実に停止したことを従来よりも精度良く、従来よりも短い時間で確認することができる。
【実施例2】
【0038】
次に
図6のフローチャートを用いて、本発明の第二の実施例の制御手順を説明する。
図6のフローチャートにおいては、
図4のフローチャートのステップ107〜111を、点線120で囲むステップ121〜126に置き換えたものである。また、ステップ106、114を、それぞれ106’、114’のように一部変更している。それ以外の同じ手順については同じステップ番号を付している。
図6において、回転速度が検出できない異常が発生すると(ステップ101)、
図4のフローチャートと同様にステップ102から104の処理を実行する。次に制御装置15は、マイコンに含まれるT1用の第一のタイマーをスタートさせることにより規制時間T1のカウントを開始する(ステップ105)。次に、制御装置15は変位検出器11から回転速度V
nと振幅X
nを検出する(ステップ106’)。
【0039】
次に制御装置15は、カウンタnを1だけインクリメントし(ステップ121)、変位検出器11から出力を受け入れる時間、いわゆるサンプリング周期が経過したら、変位検出器11の出力信号からの次の回転速度V
nと振幅値X
nを検出し、図示しない記憶装置に記憶する(ステップ122)。次に制御装置15は、現在の回転軸6aの振幅値X
nと制御装置15に記憶した1つ前の振幅値X
n−1の比率X
n/X
n−1を算出し、振幅値の比率X
n/X
n−1が所定値以下の場合は、ステップ114’へ移行する(ステップ123)。ステップ114’では制御装置15はタイマーのカウント値が規制時間T1を経過したか否かを比較し、経過していない場合は、ステップ121へ戻る。タイマーが規制時間T1を経過した場合は、制御装置15はドアロックを解除し(ステップ112)、異常発生処理を終了する(ステップ113)。
【0040】
ステップ123において、振幅値の比率X
n/X
nー1が所定値を超えた場合は、ドアロックを解除するまでの規制時間T2を算出し(ステップ124)、規制時間T2をカウントするための第二のタイマーによるカウントをスタートさせる(ステップ125)。規制時間T2は、
図6に示すテーブルに規制時間T1の値と共に共振点(又は共振点近傍の所定値)に到達した時点からの停止時間と余裕時間を加えた値、規制時間T2を併せて格納しておくと良い。次に、制御装置15は、第二のタイマーのカウントが規制時間T2を経過したかを判断し、規制時間T2を経過していない場合は経過するまで待機し、規制時間T2を経過した場合は(ステップ126)、ドアロックを解除し(ステップ112)、異常発生処理を終了する(ステップ113)。尚、ステップ123の比較処理においても、振幅値X
nとX
nー1だけの値だけで算出するのでは無く、連続する複数の振幅値を用いて比較するようにしても良い。
【0041】
以上、第二の実施例による制御によって、ロータの回転中に速度検出器7からの速度信号に異常が発生した状態に陥った場合でも、変位検出器11から振幅の増加率を算出することで、回転軸6aの共振周波数(回転速度)又は共振周波数近傍の基準点を把握することができ、この新たな基準点から規制時間T2をカウントすることで精度良くロータの停止状態を予想できる。特に回転軸6aをいわゆる弾性軸とした場合は、
図3に示すように設定回転速度より共振周波数の方が低速であることから、ロータ停止までの解除規制時間は共振周波数からの方が短くなり、その分余裕度も短くてすむ。このため、ブレーキ無し減速において、共振周波数を検出し、共振周波数から一定の規制時間T2が経過するまでドアロックの解除を規制する方が、従来の規制時間T1だけを用いたロック解除よりも早期にサンプルを回収することができる。また、ロータ4のインバランスが小さいなどの理由で、共振周波数が検出できない場合でも、速度検出器7から速度を検出できない状態に陥った時点から規制時間T1が経過するまでドアロック解除を規制し続けるので安全性を十分確保することができる。
【0042】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上述の速度検出器は、駆動装置6の回転軸6aの下端部に設けられたフォトインタラプタを用いた回転速度検出器だけに限られずに、電気的、磁気的、光学的、又は機械的に回転位置を検出するその他の形式の速度検出器をその他の箇所に用いても良い。