特許第6447529号(P6447529)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6447529-造粒物製造設備および造粒物の製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6447529
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】造粒物製造設備および造粒物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 2/14 20060101AFI20181220BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
   B01J2/14
   B09B5/00 N
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-13214(P2016-13214)
(22)【出願日】2016年1月27日
(65)【公開番号】特開2017-131830(P2017-131830A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2017年12月21日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】宮國 幸介
(72)【発明者】
【氏名】樋野 和俊
(72)【発明者】
【氏名】池田 陵志
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−251408(JP,A)
【文献】 特開昭61−291029(JP,A)
【文献】 特開2015−117398(JP,A)
【文献】 特開2013−124212(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/114719(WO,A1)
【文献】 石炭灰の海砂代替材への適用に関する研究,五洋建設技術年報,1999年,Vol.29,p1-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 2/00− 2/30
B09B 1/00− 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭灰を含む原料を造粒する造粒物製造設備であって、
前記石炭灰を含む原料を混合する混合機と、
前記混合機により混合された原料を一旦貯蔵して、一定の流量で供給するホッパーと、
前記ホッパーから供給された前記原料を一定の流量で連続的に運搬する定量供給機と、
前記定量供給機から連続的に供給された原料を造粒し、一定以上の径を有する粒子に造粒され、遠心力によって外方向に移動する造粒物を外側に連続的に出する開口部が前面に設けられ、その開口部を覆って造粒物を捕獲し、捕獲した造粒物をコンベア上に流すフードが設けられた造粒機と、を備え、
前記造粒機において製造された造粒物を分級し、所定径以下のものを、添加材として、前記混合機に前記石炭灰とともに流入して前記原料として用いる、
造粒物製造設備。
【請求項2】
前記造粒機により造粒された造粒物を養生設備に搬送するコンベアを備え、
前記コンベアの養生設備側の端部は、前記養生設備に積まれる前記造粒物の高さに応じて高さ調整が可能な、
請求項1に記載の造粒物製造設備。
【請求項3】
前記養生設備において養生された造粒物の塊を、分解する振動フィーダを備える、
請求項2に記載の造粒物製造設備。
【請求項4】
前記振動フィーダにより分解された造粒物を、分級するふるい機を備える請求項に記載の造粒物製造設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭灰を含む原料を造粒する造粒物製造設備および造粒物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉末状の石炭灰は、粉じん対策として、専用のサイロに入れて貯蔵する必要がある。このため、粉末状態から、これらの制約がかからない砂状の造粒物に加工する方法がとられている。
造粒物の製造方法としては、例えば、紛体を、円錐型スクリュー混合機で混合して造粒を行うものがある(特許文献1参照)。
また、石炭灰造粒物の平均粒径を0.3〜2mm程度に造粒するものがある(特許文献2参照)。
さらに、含水量の多い既成灰を主な主原料として高密度・高強度コンクリート製品を低コストで効率的に生産するものがある(特許文献3参照)。
石炭灰に電炉還元スラグを添加し、混合器にて混合体を製造し、これを原料ホッパーから定量ベルトフィーダで混練機へ送り、その後、混合機を経てパン型造粒機で造粒するものもある(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−110888号公報
【特許文献2】特開2008−143740号公報
【特許文献3】特許第5474036号公報
【特許文献4】特開2001−48633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の装置はバッチ式と考えられ、連続的に処理できないため、火力発電所から発生する大量の石炭灰に対しては好適とは言えない。
【0005】
本発明は、大量の石炭灰を連続的に処理可能な造粒物製造設備および造粒物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、石炭灰を含む原料を造粒する造粒物製造設備であって、前記原料を一定の流量で連続的に運搬する定量供給機と、前記定量供給機から連続的に供給された原料を造粒し、一定以上の径を有する粒子に造粒された造粒物を連続的に排出する造粒機と、を備える造粒物製造設備である。
【0007】
(2)前記石炭灰を含む原料を混合する混合機と、前記混合機により混合された原料を一旦貯蔵して、一定の流量で前記定量供給機に供給するホッパーと、を備えてもよい。
【0008】
(3)前記造粒機により造粒された造粒物を養生設備に搬送するコンベアを備え、前記コンベアの養生設備側の端部は、前記養生設備に積まれる前記造粒物の高さに応じて高さ調整が可能であってもよい。
【0009】
(4)前記養生設備において養生された造粒物の塊を、分解する振動フィーダを備えてもよい。
【0010】
(5)前記振動フィーダにより分解された造粒物を、分級するふるい機を備えてもよい。
【0011】
(6)また、本発明は、石炭灰を含む原料を定量供給器により造粒機に連続投入し、前記造粒機によって、一定径以上の造粒物を連続的に造粒する造粒物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、大量の石炭灰を連続的に処理可能な造粒物製造設備および造粒物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態の石炭灰の造粒物製造設備を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の実施形態の石炭灰の造粒物製造設備1を示す図である。
実施形態の造粒物製造設備1は、石炭灰から砂程度の粒径(〜40mm)を製造するため、石炭灰、固化材(セメント)、水、リターン材を含む添加材を混合機10で混合し、混合物を造粒機40へ移送し最大40mm程度に造粒する設備である。
【0015】
石炭灰造粒物の原料は、石炭灰(フライアッシュ、クリンカアッシュを含む)を主原料とし、固化剤として少量のセメント、水、およびリターン材を含む添加材を加えたものである。フライアッシュとは、燃焼ガスとともに吹き上げられるレベルの球状の微粒子で、電気集塵機などで回収される。成分はSiO,Al2O,Fe,CaOを含む。粒度は0.1mm以下が90%である。
【0016】
石炭灰造粒物の造粒物製造設備1は、原料を混合する混合機10と、混合機10により混合された原料を一時的に貯蔵して一定量を流出する第1ホッパー20と、第1ホッパー20から流出される原料を一定の流量で連続運搬する定量供給機30と、定量供給機30から一定の流量で連続運搬される原料を造粒する造粒機40と、造粒機40により造粒された造粒物を運搬するコンベア50と、を備える。
造粒物製造設備1は、さらに、上下左右するコンベア50により運搬された造粒物を貯蔵する初期養生設備60と、養生によって互いに付着した造粒物を分解する振動フィーダ80と、粒度別に分類するふるい機100とを備える。
【0017】
混合機10は、所定量に計量された各原料が流入される容器11と、容器11内部に配置され、回転軸を中心として回転する撹拌羽根12と、を備える。
容器11の上部より、原料として石炭灰、固化材、水、および添加材が流入される。原料は、回転する撹拌羽根12によって混合される。混合された材料は、容器11の下部に設けられた流出口より、下部に配置された第1ホッパー20内に流出される。
このように造粒前に混合機10を用いて原料を混合するため、造粒工程において石炭灰、固化剤、水、および転化材を含む原料を、確実に混合することができる。
【0018】
混合機10によって混合された原料は、第1ホッパー20内に流入される。第1ホッパー20は、容器断面が円錐状または角錐状に形成され、流出口に向かって減少している容器である。
第1ホッパー20は、混合された原料を一旦貯蔵し、流出口より定量供給機30に対して定量的に供給する。
【0019】
定量供給機30は、モータで回転駆動される、らせん状のスクリューフィーダ31を備える。混合された原料は一定の流量で、次工程の造粒機40に連続して運搬される。定量供給機30の供給量はスクリューフィーダ31の回転数とリニアに比例し、供給量の調整が容易に可能である。
【0020】
造粒機40は、所定角度で傾斜されて回転可能に設けられている円形トレイ状のパン41と、パン41を回転させる駆動源(図示せず)と、を備える。
このパン41に混合材料を投入し、水を加えて加湿させながら回転し、核を成長させて、造粒を行う。
【0021】
パン41は、傾斜角度の調整が可能であり、パン41の傾斜角度や回転速度を変更することにより、造粒される粒子の大きさを調整することができる。
所定の径に造粒された粒子は、遠心力によってパン41の半径方向の外側に移動する。パン41の前面は開口している。パン41の回転中心付近に原料を流入すると、粒径が大きくなるにしたがって造粒物は、遠心力によって外周方向に移動する。そして所定の径になると開口部から外部に放出される。
すなわち、原料を定量供給機30よって造粒機40に連続的に流入すると、造粒機40の外周部から所定径に成長した造粒物が連続的に押し出されていく。
本実施形態で造粒される粒径は最大40mm程度であり、天然の砂程度の粒径である。
このように、造粒機40を連続的に回転することにより、所定径の造粒物が連続的に製造される。
【0022】
造粒機40において所定径(実施形態では40mm)に成長して外部に飛び出した造粒物は、コンベア50によって運搬される。なお、造粒機40より飛び出した造粒物を確実に収集してコンベア50上に乗せるために、造粒機40の開口部を覆うフードを設け、フードによって捕獲された造粒物をコンベア50上に流すようにしてもよい。
コンベア50は、連続的に稼働しており、造粒物は、連続可動するコンベア50で初期養生設備60へ移送される。
【0023】
このように、本実施形態において、定量供給機30、造粒機40、およびコンベア50が、連続的に稼働している。すなわち、定量供給機30に原料が連続して流入されると、定量供給機30、造粒機40およびコンベア50は連続的に稼働しているため、造粒物は連続的に製造されて放出される。
【0024】
コンベア50は連続的に造粒される造粒物を、初期養生設備60に運搬する。
初期養生設備60において、造粒物は堆積される。この際、コンベア50によって運ばれてきた造粒物は、水分を含んでおり、柔軟である。したがって、コンベア50の端部が高いところに位置して造粒物が長い距離落下すると、造粒物が砕ける場合がある。
このため、本実施形態において、コンベア50の端部は上下動可能である。そして、造粒物の落下距離が短くなるように、堆積された造粒物の高さに応じて上下する。このようにコンベア50の端部が造粒物の高さに応じて上下するので、造粒物が砕ける可能性が低減される。
このコンベア50の端部の上下動は、手動であってもよいが、センサー等を設けて、堆積された造粒物の高さを検知して、自動的に上下動するようにしてもよい。
さらに、養生設備の収容量も限界がある。したがって、第1の初期養生設備60の収容量が満杯になったときに、コンベア50の端部は、別の養生設備へと運搬先が変更可能なように、水平方向に可動であってもよい。
【0025】
初期養生設備60で所定の日数(数週間〜1カ月程度)を置いた造粒物は、それぞれが付着・固化(岩おこし)の状態となっている。このため、次に説明する工程で最終の粒度調整を行う。
【0026】
初期養生設備60において養生された造粒物は、第2ホッパー70を経て、振動フィーダ80に運搬される。振動フィーダ80は、水平または傾斜したトラフに、機械的に上下運動の加わった振動を与え、粒子を斜め前方に投出すようにして粉粒体を移動、供給するものである。
この振動フィーダ80において、初期養生設備60において複数個が付着して塊となった造粒物は分解される。
そして、ここで、40mm以下と40mmより大きいものに仕分けされる。40mmより大きいものは粉砕機110に運搬されて粉砕される。粉砕された造粒物は、再度、第2ホッパー70に流入され、振動フィーダ80によって分解される。
【0027】
40mm以下の造粒物は、コンベア90によって運ばれて、多段式のふるい機100に流入される。
ふるい機100では、40mm、20mm、5mm、1mmおよび粉末のものに分級される。
そして、用途に応じて適切な粒径のものが出荷される。
【0028】
以上、本実施形態によると、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によると、石炭灰の造粒物の造粒工程が連続的であるので、処理量が増加する。
(2)本実施形態は、混合工程と、造粒工程とが分離しているので、品質管理が確実にできる。
(3)ふるい機100における分級で、製品として満たない粒径であった未完成品を、添加材設備に入れることで、原料として再利用でき、不用品発生減による産業廃棄物処理を減少することができる。
(4)さらに、石炭灰の造粒物は、天然砂よりも軽量であり、転動造粒を行うことで、粒の内部に微細な空隙が保有される。この微細な空隙によって、多孔質となり、気孔率および吸水率が高い値を示す。
閉鎖性が高い港湾においては様々な物質が流入、集積、滞留しやすく、底質にヘドロが厚く堆積し、貧酸素水塊の発生による水質や底質の悪化が見られる。このような港湾に本実施形態の石炭灰の造粒物を散布することにより以下の効果を有する。
石炭灰の弱アルカリにより長期バクテリア分解が可能である。また、貧酸素、富栄養の主要因となる硫化水素を吸着し、無害化することができる。空隙へ有機物をトラップして圧密抑制が可能で減容化することができる。軽量で沈降速度が遅いため、浮泥上にカバーリングが可能である。さらに、海藻、藻類が着生し、水産資源回復等の生物生息環境を提供することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 造粒物製造設備
10 混合機
11 容器
12 撹拌羽根
20 ホッパー
30 定量供給機
31 スクリューフィーダ
40 造粒機
41 パン
50 コンベア
60 初期養生設備
70 第2ホッパー
80 振動フィーダ
90 コンベア
100 ふるい機
110 粉砕機
図1