(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記注入部は、前記中心軸線と前記注入部とを含む断面において前記貯留底面を一対の母線として見たときに、前記注入部が設けられた側の前記母線とは反対側の前記母線に平行な方向に前記培地を注入する、請求項1に記載のバッファタンク。
前記分析装置は、前記培地のpHを計測するpH計測センサ、前記培地の溶存酸素濃度を計測する酸素濃度センサ、および前記培地の二酸化炭素濃度を計測する二酸化炭素濃度センサのうちの少なくとも一つを有している、請求項6に記載のバッファタンク。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の一の実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示の理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0024】
本実施の形態による培養システムは、あらゆる細胞を培養するために用いることができ、(ヒト)iPS細胞、(ヒト)ES細胞等の多能性幹細胞、骨髄間質細胞(MSC)等の軟骨細胞、樹状細胞等の様々な細胞を培養する際に用いることができる。本実施の形態では、以下、iPS細胞を培養する用途を主に想定して説明するが、これはあくまでも一例である。
【0025】
まず、
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る培養システムの概略構成を説明する。
【0026】
図1に示すように、培養システム1は、新しい培地を供給する培地供給源2と、細胞を培養するための培養容器100を保持可能な容器保持部3と、容器保持部3に保持された培養容器100から排出される培地の成分を分析する培地分析部4と、を備えている。
【0027】
培地供給源2は、培養容器100に供給するための細胞培養用の新しい培地を保管する。培地供給源2は、例えば保冷庫内に設けられており、保管時には、培地は低温(例えば約4℃)で保管され、成分の劣化を防止している。
【0028】
培地供給源2と容器保持部3との間に、インレットヒータ5および新液用バッファタンク6がこの順に設けられている。
【0029】
インレットヒータ5は、培地供給源2から供給される培地を加熱して、培地の温度を高温(例えば、約37℃)にする。加熱された培地は、インレットヒータ5から排出されて、新液用バッファタンク6に供給される。なお、培地供給源2とインレットヒータ5との間には、培地供給源2からインレットヒータ5に培地を供給するためのインレットポンプ7が設けられている。なお、培地を供給するためのポンプは、このインレットポンプ7で構成されることに限られることはない。例えば、培地供給源2からのラインとインレット洗浄液供給源19からのラインとの合流点よりも下流側であって、インレットヒータ5よりも上流側に共用ポンプ(図示せず)を設けて、この共用ポンプに培地供給機能を持たせてもよい。この場合、共用ポンプは、洗浄液供給機能も持たせることができ、後述するインレット洗浄ポンプ21を省略することができる。
【0030】
新液用バッファタンク6は、インレットヒータ5により加熱された培地を貯留し、培地中の気泡を除去する。新液用バッファタンク6は、培地を貯留する内部空間と、ベント部(いずれも図示せず)と、を有しており、新液用バッファタンク6の内部空間は新液用バッファタンク6の周囲雰囲気(培養システム1のチャンバ内の清浄な雰囲気)とベント部を介して連通している。このことにより、新液用バッファタンク6に貯留されている培地に気泡が混入している場合には、その気泡が浮き上がって培地から除去される。すなわち、新しい培地に含まれる溶存気体や微小な気泡は、高温になったことによって発現し膨張するため、内部空間に貯留された培地から気泡を効率良く除去することができる。また、ベント部を有していることにより、新液用バッファタンク6に対する培地の供給および排出をスムースにさせることができる。なお、ベント部にはベントフィルター(図示せず)が設けられており、新液用バッファタンク6の内部空間への異物の混入防止を図っている。
【0031】
新液用バッファタンク6の内部空間における培地の貯留容量は、培養容器100内の培地を交換する際に培養容器100内の古い培地を押し出し新しい培地に完全に置換できるように、培養容器100の容量よりも大きくすることが好適である。例えば、新液用バッファタンク6の培地の貯留容量は、培養容器100の容量が18mLである場合には、これよりも大きい30mLとすることが一例として挙げられる。
【0032】
インレットポンプ7とインレットヒータ5との間には、第1インレット開閉弁8が設けられている。この第1インレット開閉弁8は、培地供給源2から新液用バッファタンク6への培地の供給を制御している。新液用バッファタンク6と容器保持部3との間には、第2インレット開閉弁9が設けられており、新液用バッファタンク6から培養容器100への培地の供給を制御している。新液用バッファタンク6は、容器保持部3よりも高い位置に配置されており、新液用バッファタンク6から容器保持部3に保持された培養容器100への培地の供給が容易になっている。
【0033】
容器保持部3は、培養容器100を保持するように構成されている。培養システム1が、細胞培養を行うインキュベータ(図示せず)を組み込んでいる場合には、上述した培養システム1のチャンバ内にインキュベータが配置され、このインキュベータの筐体内に、容器保持部3が設けられる。この筐体は、内部の雰囲気の温度、湿度および気体濃度の少なくとも一つを調整するように構成されている。例えば、容器保持部3に保持されている培養容器100の温度が約37℃になるように筐体内の雰囲気の温度が調整される。他方、培養システム1とインキュベータが離れて設置されている場合には、容器保持部3は、インキュベータから容器保持部3に搬送された培養容器100を、培地交換を行うために一時的に保持するためのものになる。この場合の容器保持部3に保持されている培養容器100は、例えば培養システム1のチャンバ内において滅菌空間を維持する筐体内に収容される。培養容器100の詳細は後述する。
【0034】
容器保持部3と培地分析部4との間に、分析用バッファタンク30が設けられている。この分析用バッファタンク30は、培養容器100から排出された培地を一定量貯留する。この培地は、分析用バッファタンク30内で混合されて貯留される。このことにより、分析用バッファタンク30に貯留された培地の均質化を図っている。分析用バッファタンク30の培地の貯留容量は、培養容器100の容量よりも小さくすることが好適である。分析用バッファタンク30の詳細は後述する。
【0035】
容器保持部3と分析用バッファタンク30との間には、第1アウトレットポンプ10、培地フィルター11およびアウトレット開閉弁12が、この順に設けられている。このうち第1アウトレットポンプ10は、培養容器100から細胞培養後の培地を引き出し、分析用バッファタンク30に培地を供給する。この際、培養容器100からの培地の引き出しと同時に、新液用バッファタンク6から培養容器100への新しい培地の供給が促される。このことにより、培養容器100に新しい培地が供給され、培地交換がなされる。培地フィルター11は、培養容器100から排出される培地に含まれる固形物(例えば、培養していた細胞など)を培地から除去するように構成されている。アウトレット開閉弁12は、培養容器100から分析用バッファタンク30への培地の供給を制御するように構成されている。
【0036】
本実施の形態における培地分析部4は、代謝分析装置13と、酵素分析装置14と、pH分析装置15と、タンパク分析装置16と、を有している。代謝分析装置13は、培養容器100から排出された培地に含まれる代謝物の濃度および成分を分析する。酵素分析装置14は、培地に含まれる酵素の濃度および成分を分析する。pH分析装置15は、培地のpHを分析し、タンパク分析装置16は、培地に含まれるタンパクの濃度および成分を分析する。これらの分析装置13〜16で行われる培地の分析は、破壊検査方式で行われ、分析に用いられた培地は、再利用されることなく廃棄される。
【0037】
分析用バッファタンク30と培地分析部4との間には、第2アウトレットポンプ17およびアウトレット切替弁18がこの順に設けられている。このうち第2アウトレットポンプ17は、分析用バッファタンク30から培地分析部4に培地を供給するように構成されている。アウトレット切替弁18は、分析用バッファタンク30から排出された培地が、代謝分析装置13、酵素分析装置14、pH分析装置15およびタンパク分析装置16のうちのいずれか一つに選択的に供給されるように流路を切り替えるように構成されている。このようにして、分析用バッファタンク30から供給される培地は、これら4つの分析装置13〜16に別々に供給可能になっている。
【0038】
本実施の形態による培養システム1は、インレット洗浄液供給源19と、アウトレット洗浄液供給源20と、を更に備えている。このうちインレット洗浄液供給源19は、インレットヒータ5および新液用バッファタンク6を洗浄するために、インレットヒータ5に洗浄液を供給する。インレットヒータ5に供給された洗浄液は、新液用バッファタンク6に供給され、インレットヒータ5および新液用バッファタンク6が洗浄される。インレット洗浄液供給源19とインレットヒータ5との間には、インレット洗浄ポンプ21およびインレット洗浄開閉弁22がこの順に設けられており、インレット洗浄液供給源19からインレットヒータ5への洗浄液の供給を制御している。アウトレット洗浄液供給源20は、分析用バッファタンク30を洗浄するために、分析用バッファタンク30に洗浄液を供給する。アウトレット洗浄液供給源20と分析用バッファタンク30との間には、アウトレット洗浄ポンプ23およびアウトレット洗浄開閉弁24がこの順に設けられており、アウトレット洗浄液供給源20から分析用バッファタンク30への洗浄液の供給を制御している。
【0039】
図1に示すように、培養システム1は、制御部25を更に備えている。この制御部25は、上述した各開閉弁やポンプを制御するように構成されている。
【0040】
次に、
図2および
図3を用いて、本実施の形態による培養容器100について説明する。
【0041】
図2および
図3に示すように、培養容器100は、容器本体101と、容器本体101の一面に貼り付けられた平板102と、を備えている。容器本体101は、培地(培地以外にも細胞が分散された懸濁液、剥離剤、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)など)が流入される流入口103と、流入口103から流入した培地が通過する通路104と、通路104を通過した培地が流出される流出口105と、を有している。このうち流入口103は、上述した新液用バッファタンク6に連結され、流出口105は、分析用バッファタンク30に連結されている。
【0042】
容器本体101の通路104は、容器本体101の平板102が貼り付けられた一面側に溝状に形成されている。通路104の口径(すなわち溝の深さ及び幅)は、一例として、2mm〜4mmである。また、容器本体101の通路104は、平面視において蛇行する部分、すなわち直線部と折り返し部とが交互に接続された部分を有している。これにより、容器本体101を大型化させることなく、通路104の全長を延伸させて、細長状の通路104が形成されている。
【0043】
図2および
図3に示すように、通路104の通路底面104aには、通路104を通過する細胞が播種される複数の細胞播種領域106が、当該通路104に沿って並んで設けられている。本実施の形態では、通路104の通路底面104aには、細胞播種領域106と同心状に窪み107が凹設されている。
【0044】
このような培養容器100内の培地を交換する際には、第1アウトレットポンプ10が駆動されて、通路104内の古い培地が引き出されて流出口105から流出される。これに伴い、新液用バッファタンク6から供給される新しい培地が流入口103から通路104に流入される。この間、通路104内の古い培地は、新しい培地により押し出されるようにして流出口105から流出される。この場合、新しい培地と古い培地は、通路104に沿って流れるため、新しい培地と古い培地とが混ざることを防止できるとともに、古い培地を新しい培地に容易に交換することができる。
【0045】
次に、
図4乃至
図6を用いて、本実施の形態によるバッファタンクについて説明する。本実施の形態では、本発明によるバッファタンクが
図1に示す分析用バッファタンク30に適用される例について説明する。
【0046】
図4に示すように、分析用バッファタンク30は、培地を貯留する貯留空間31を有するタンク本体32を備えている。タンク本体32は、樹脂材料若しくは金属材料等の任意の材料によって形成することができる。金属材料等の熱伝導率が良好な材料により形成されている場合には、後述するシリコンラバーヒータ63により加熱された熱を培地に効率良く伝えることができ、培地の加熱時間を短縮化することができる。金属材料の例としては、ステンレスやアルミニウム合金が挙げられる。
【0047】
タンク本体32の貯留空間31は、鉛直方向に延びる円筒状の内側面33と、内側面33の下方に設けられた逆円錐状の貯留底面34とにより画定されている。内側面33と貯留底面34とは、湾曲状に滑らかに接続されている。より具体的には、タンク本体32は、円筒状のタンク胴部35と、タンク胴部35の下方に設けられたタンク底部36と、を有している。このうちタンク胴部35の内面によって内側面33が形成され、タンク底部36の上面によって逆円錐状(下方に向かって先細状となる円錐状)の貯留底面34が形成されている。貯留底面34の頂角は、
図4では約90度である例が示されているが、これに限られることはない。内側面33および貯留底面34には、撥水コーティングが施されていることが好適である。この場合、貯留空間31に貯留された培地を排出する際、内側面33または貯留底面34に培地が表面張力で残存することを防止できる。
【0048】
本実施の形態では、タンク胴部35の上方には、蓋部37が設けられている。この蓋部37は、タンク胴部35の上端にボルト(図示せず)などによって取り外し可能に取り付けられている。蓋部37の下面38は、貯留空間31を画定しており、蓋部37は、タンク胴部35の上端開口35aを閉塞するように構成されている。蓋部37は、樹脂材料若しくは金属材料等の任意の材料により形成することができるが、樹脂材料、例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)によって形成されていることが好適である。
【0049】
タンク底部36には、注入部40が設けられている。この注入部40は、タンク本体32の貯留底面34から貯留空間31に、培養容器100から排出された培地を注入するように構成されている。注入部40は、タンク本体32の内側面33の中心軸線Xに向かって、かつ中心軸線Xに対して斜め上方に培地を注入する。本実施の形態では、培地は、中心軸線Xと注入部40とを含む断面において貯留底面34を一対の母線34aとして見たときに、注入部40が設けられた側の母線34aとは反対側の母線34aに平行な方向に注入される。
図4に示すように貯留底面34の頂角が90°である場合には、当該断面視において、タンク本体32の貯留底面34(注入部40が設けられた側の母線34a)に垂直な方向に培地は注入される。
【0050】
より具体的には、注入部40は、タンク底部36を貫通する注入路41と、注入路41の下流側端部に設けられた注入開口42と、を有している。注入開口42は、タンク本体32の貯留底面34に形成された開口を意味する。
【0051】
注入路41は、
図5に示すように、中心軸線Xと注入開口42とを含む平面に沿って延びている。言い換えると、注入路41は、上方から見たときに、中心軸線Xを中心として放射方向に延びている。ここで、中心軸線Xと注入開口42とを含む平面とは、上方から見たときに
図5に示された平面A−Aをいう。
図4は、このA−A線断面に相当する。また、注入路41は、中心軸線Xと注入開口42とを含む平面における断面で見たときに(すなわち、
図4に示す断面で見たときに)、タンク本体32の注入開口42が設けられていない側の母線34aに平行(注入開口42が設けられた側の母線34aに垂直な方向に延びている。注入路41は、上述したアウトレット開閉弁12に連結されており、培養容器100から排出された培地が、アウトレット開閉弁12を通って注入路41に供給される。なお、
図4および
図5に示す形態では、タンク底部36に注入プラグ43が取り付けられており、この注入プラグ43の内部に、注入路41が形成されている。
【0052】
注入部40から貯留空間31に注入される培地の流量は、後述する渦(
図4参照)が形成されて貯留空間31に貯留された培地を均質化することができれば特に限られることはない。例えば、注入開口42の口径が1mmの場合に、20mL/分〜30mL/分であることが好適である。20mL/分以上とすることにより、貯留空間31内の培地により一層好適な渦を形成することができ、30mL/分以下とすることにより、培地フィルター11などの圧損によってアウトレットポンプのエネルギが浪費されることを防止できる。
【0053】
図4に示すように、タンク底部36には、排出部44が設けられている。この排出部44は、貯留空間31に貯留された培地を排出する。排出部44は、タンク本体32の貯留底面34の最下点に設けられた排出開口45と、排出開口45から下方に延びる排出路46と、を有している。このうち排出開口45は、タンク本体32の貯留底面34に形成された開口を意味しており、上方から見たときに中心軸線Xに重なるように配置されている(
図5および
図6参照)。排出路46は、タンク底部36を貫通しており、上述したアウトレットポンプに連結されている。なお、
図4に示す形態では、タンク底部36に排出プラグ47が取り付けられており、この排出プラグ47の内部に、排出路46が形成されている。
【0054】
図4に示すように、タンク本体32には、貯留空間31に貯留された培地の成分を分析するタンク分析装置50が設けられている。本実施の形態では、タンク分析装置50は、
図6に示すように、培地のpHを計測するpH計測センサ51と、培地の溶存酸素濃度を計測する酸素濃度センサ52と、培地の二酸化炭素濃度を計測する二酸化炭素濃度センサ53と、を有している。このうちpH計測センサ51を用いて培地のpHを計測することにより、培地のpHが適切な範囲内にあるかを確認することができる。また、酸素濃度センサ52を用いて培地の溶存酸素濃度を計測することにより、培養している細胞の酸素使用量を確認することができる。また、二酸化炭素濃度センサ53により培地の二酸化炭素濃度を計測することにより、培養中の細胞の活動状態を確認することができる。これらのセンサ51〜53により計測される培地の成分は、比較評価を行うために用いられる。すなわち、前回までに計測された培地の成分と今回計測された培地の成分とを比較評価するために用いられる。
【0055】
pH計測センサ51は、特に限られることはないが、例えば、光学式センサであってもよい。光学式センサとしては、例えば、貯留空間31内に配置された蛍光チップから発せられる蛍光を光検出端で検出し、検出された蛍光の成分からpHを分析するように構成されたセンサとすることができる。同様の光学式センサを、酸素濃度センサ52および二酸化炭素濃度センサ53にも適用することができる。このような光学式センサを用いる場合、
図1に示す培地分析部4の各装置13〜16とは異なり、非破壊検査方式で培地の成分を分析することができ、分析に用いられた培地を、培地分析部4の分析に用いることができる。
【0056】
図4および
図6に示すように、各センサ51〜53は、タンク本体32の内側面33に設けられた窓部54に配置されている。すなわち、本実施の形態では、
図6に示すように、タンク本体32に、中心軸線Xに直交する方向にタンク胴部35を貫通する4つのセンサ挿入孔55が設けられており、各センサ挿入孔55の内側端部に窓部54が設けられている。4つの窓部54は、上方から見たときに、タンク胴部35の周方向に等間隔で配置されており、90°ピッチで配置されている。これら4つの窓部54のうち互いに異なる窓部54に、3つのセンサ51〜53が別々に配置されている。センサ51〜53が上述した光学式センサである場合には、窓部54は光透過性を有し、窓部54のタンク本体32の内側面33の側に上述した蛍光チップが配置され、センサ挿入孔55内に上述した光検出端が配置される。残りの1つの窓部54には、他のセンサを配置してもよいが、予備として、センサを配置しないようにしてもよい。
【0057】
上述した4つの窓部54は、タンク胴部35の鉛直方向中心よりも下側に配置されており、
図4に示す形態では、タンク胴部35の下端部に配置されている。このことにより、タンク分析装置50の各センサ51〜53を、貯留空間31の下部に配置することができる。この場合、培地の分析を行わない間に各センサ51〜53を保存するための緩衝液の使用量を低減することができる。
【0058】
図4に示すように、蓋部37には、ベント部60が設けられている。このベント部60は、分析用バッファタンク30内の貯留空間31を分析用バッファタンク30の周囲雰囲気(上述した培養システム1のチャンバ内の清浄な雰囲気)に連通している。このベント部60は、分析用バッファタンク30に対する培地の供給および排出をスムースにさせるように構成されている。なお、ベント部60にはベントフィルター61が設けられており、貯留空間31への異物の混入防止を図っている。
【0059】
また、蓋部37には、貯留空間31に貯留された培地の液面レベルを検出する液面センサ62が設けられている。液面センサ62には
図1に示す制御部25が接続されており、制御部25は、液面センサ62により計測された培地の液面レベルに基づいて、上述したアウトレット開閉弁12を制御する。すなわち、液面センサ62により培地の液面が検出されると、アウトレット開閉弁12が閉じられ、分析用バッファタンク30への培地の供給が停止される。この液面センサ62の検出部62aの位置によって、分析用バッファタンク30の培地の貯留容量が設定されている。分析用バッファタンク30の培地の貯留容量は、上述したように培養容器100の容量よりも小さく設定されており、培養容器100から排出される古い培地の残りは、図示しない排出ラインを介して排出される。これにより、培養容器100内の細胞培養後の古い培地のうちの一部が、分析用バッファタンク30の貯留空間31に回収され、その回収量は毎回一定になっている。
【0060】
図4に示すように、タンク本体32および蓋部37の周囲に、シリコンラバーヒータ63(加熱部)が設けられている。シリコンラバーヒータ63は、タンク本体32および蓋部37の外周面を覆うように形成されており、タンク本体32および蓋部37を加熱するとともに、タンク本体32および蓋部37と周囲雰囲気とを断熱するように構成されている。タンク本体32のタンク底部36には、貯留空間31に貯留された培地の温度を計測する温度センサ64が設けられている。この温度センサ64は、タンク本体32の貯留底面34に取り付けられている。温度センサ64には、
図1に示す制御部25が接続されており、制御部25は、温度センサ64により計測された培地の温度に基づいて、シリコンラバーヒータ63のON/OFFを制御する。すなわち、培地の温度が所定の温度(例えば37℃)未満である場合には、シリコンラバーヒータ63がONになり、培地の温度が所定の温度以上である場合には、シリコンラバーヒータ63がOFFになる。なお、シリコンラバーヒータ63には、センサ挿入孔55に連通する第2のセンサ挿入孔65が設けられており、上述したセンサ51〜53の光検出端が挿入可能になっている。また、シリコンラバーヒータ63の代わりに、タンク本体32および蓋部37を加熱するだけでなく冷却することもできる温調器を用いてもよい。
【0061】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0062】
培養容器100内の培地の交換時に古い培地をサンプリングする場合、まず、
図1に示す第1アウトレットポンプ10が駆動されるとともに、第2インレット開閉弁9およびアウトレット開閉弁12が開く。このことにより、培養容器100から古い培地が引き出されて、分析用バッファタンク30の注入部40(
図4参照)に供給される。この際、新液用バッファタンク6内に貯留されている新しい培地が培養容器100の流入口103(
図2および
図3参照)を介して通路104に流入し、通路104内の古い培地は、新しい培地に押し出されるように排出される。
【0063】
分析用バッファタンク30の注入部40に供給された古い培地は、
図4に示すように注入路41を通って注入開口42から貯留空間31に注入される。
【0064】
この際、注入路41が、中心軸線Xと注入開口42とを含む平面(
図5におけるA−A線で示される面)に沿うとともに、
図4に示す注入開口42が設けられていない側の母線34aに平行な方向に延びているため、注入開口42を通過した培地は、中心軸線Xに向かって中心軸線Xに対して斜め上方に沿うとともに、当該母線34aに平行な方向に注入される。このことにより、鉛直方向に旋回するとともに中心軸線Xと注入開口42とを含む平面に沿う渦(
図4の二点鎖線矢印参照)が形成されながら、貯留空間31に培地が注入される。形成される渦は、当該平面に沿って中心軸線Xを跨ぐように旋回し、貯留空間31の貯留底面34近傍の培地と、液面近傍の培地とを巻き込み、貯留空間31内の培地の全体にわたるように形成され得る。この際、貯留空間31内の培地に、この渦に巻き込まれ難いよどみが形成されることを抑制できる。
【0065】
培地の注入が続くと、貯留空間31に貯留された培地の液面は上昇する。培地の液面が上昇している間においても、注入される培地は、中心軸線Xに向かって中心軸線Xに対して斜め上方に注入される。このため、
図4の二点鎖線で示すような渦と同様の渦であってより大きく鉛直方向に旋回する渦(
図4の実線矢印参照)が形成される。
【0066】
このようにして、貯留空間31内の培地が、渦によって混合される。このため、貯留空間31内の培地を均質化することができる。とりわけ、本実施の形態では、
図2に示すように培養容器100の通路104が蛇行して細長状に形成されていることから、通路104内に貯留されている培地の成分には、偏りが生じる可能性がある。これに対して本実施の形態における分析用バッファタンク30によれば、
図2に示す培養容器100から排出される培地であっても、注入時に形成される渦によって迅速に均質化させて貯留空間31に貯留させることができる。
【0067】
貯留空間31内の培地の液面が液面センサ62の検出部62aに達すると、培地の液面が液面センサ62により検出される。このことにより、アウトレット開閉弁12が閉じられ、分析用バッファタンク30への培地の供給が停止する。この場合、分析用バッファタンク30に、培養容器100の通路104に貯留されていた培地の全体量のうちの一定量の培地が回収される。また、上述したように、分析用バッファタンク30に回収された培地は、通路104のうち、毎回同じ部分に貯留されている培地になる。このため、培養容器100の通路104内に貯留されている培地の成分に偏りが生じる場合であっても、培地の成分は毎回同じように偏るため、培地の成分の偏りが、後述する成分分析に影響を与えることを防止し、成分分析を安定化させることができる。
【0068】
分析用バッファタンク30への培地の供給が停止してから所定時間経過後(例えば数分後)、貯留空間31に貯留された培地の成分が、タンク本体32に設けられたタンク分析装置50により非破壊検査方式で分析される。本実施の形態では、pH計測センサ51により培地のpHが計測され、酸素濃度センサ52により培地の溶存酸素濃度が計測され、二酸化炭素濃度センサ53により培地の二酸化炭素濃度が計測される。
【0069】
貯留空間31に培地が貯留されている間、培地の温度が所定の温度未満である場合には、シリコンラバーヒータ63がONになり、主としてタンク本体32を介して貯留空間31内の培地が加熱される。培地の温度が所定の温度に達するとシリコンラバーヒータ63はOFFになる。このようにして、貯留空間31内の培地の温度が所定の温度に維持される。
【0070】
培地の成分分析が終了した後、貯留空間31から培地が排出される。この場合、第2アウトレットポンプ17が駆動されて、貯留空間31内の培地が、排出開口45および排出路46を通って排出される。排出された培地は、アウトレット切替弁18によって、培地分析部4の代謝分析装置13、酵素分析装置14、pH分析装置15およびタンパク分析装置16のいずれかに選択的に供給される。
【0071】
分析用バッファタンク30の貯留空間31を洗浄する場合には、アウトレット洗浄ポンプ23が駆動されるとともにアウトレット洗浄開閉弁24が開き、アウトレット洗浄液供給源20から洗浄液が貯留空間31に供給される。この場合、アウトレット開閉弁12は閉じられる。貯留空間31に供給された洗浄液は、上述した培地と同様な渦(
図4参照)を形成することができ、洗浄能力を高めて、貯留空間31の洗浄時間を短縮させることができる。なお、洗浄液を液面センサ62の検出部62aよりも高い位置まで供給することが、貯留空間31を十分に洗浄させるために好適である。洗浄後に洗浄液を排出する場合には、図示しない排出ラインを介して排出される。洗浄液の供給と排出を複数回繰り返すことにより、洗浄効果を高めることができる。インレットヒータ5および新液用バッファタンク6についても、インレット洗浄液供給源19から供給される洗浄液によって同様に洗浄することができる。
【0072】
このように本実施の形態によれば、分析用バッファタンク30の貯留空間31に培地を注入する注入部40は、タンク本体32の内側面33の中心軸線Xに向かって、中心軸線Xに対して斜め上方に培地を注入する。このことにより、貯留空間31内の培地に鉛直方向に旋回する渦を形成することができ、貯留空間31に培地を注入しながら、貯留されている培地を混合させて培地を均質化させることができる。このため、貯留空間31に培地を注入し始めてから貯留空間31内の培地が均質化されるまでの時間を短縮することができる。均質化させた培地の成分分析を行う場合には、培地の成分が変化することを抑制でき、培地の成分分析の精度を向上させることができる。この場合、培養される細胞の品質を向上させることができる。
【0073】
また、本実施の形態によれば、注入部40は、中心軸線Xと注入部40とを含む断面において貯留底面34を一対の母線34aとして見たときに、注入部40が設けられた側の母線34aとは反対側の母線34aに平行な方向に培地を注入する。このことにより、貯留空間31内の培地の全体にわたるような渦を形成することができ、貯留空間31内の培地をより一層均質化させることができる。
【0074】
また、本実施の形態によれば、注入部40の注入路41が、タンク本体32の内側面33の中心軸線Xと注入開口42とを含む平面に沿って延びている。このことにより、注入開口42を通過した培地を、中心軸線Xに向かって中心軸線Xに対して斜め上方に注入させることができる。
【0075】
また、本実施の形態によれば、排出部44の排出開口45が、タンク本体32の貯留底面34の最下点に設けられている。このことにより、貯留空間31内の培地を排出した場合に、貯留空間31内に培地が残存することを防止できる。
【0076】
また、本実施の形態によれば、貯留空間31内の培地の成分が、タンク分析装置50によって分析される。このことにより、培地分析部4に培地を供給する前に、事前に培地の成分を分析することができる。とりわけ、本実施の形態によれば、タンク分析装置50は、pH計測センサ51と酸素濃度センサ52と二酸化炭素濃度センサ53とを有しているため、貯留空間31内の培地のpHと、溶存酸素濃度と、二酸化炭素濃度とを計測することができる。本実施の形態では、培地のpHの計測を、タンク分析装置50のpH計測センサ51と、培地分析部4のpH分析装置15により行うことが可能になっている。この場合、培地のpH計測精度を向上させることができる。すなわち、例えばpH分析装置15により計測されるpHの絶対値の信頼性が良好で、pH計測センサ51により計測されるpHの再現性が良好である場合には、pH分析装置15から得られたpHの計測データを使用して、pH計測センサ51から得られたpHの計測データを校正することができ、培地のpH計測精度を向上させることができる。なお、pHの計測データの精度上問題無ければ、pH計測センサ51およびpH分析装置15のうちのいずれか一方のみでpHの計測を行ってもよい。
【0077】
また、本実施の形態によれば、タンク本体32の周囲に設けられたシリコンラバーヒータ63によって、タンク本体32が加熱される。このことにより、タンク本体32を介して貯留空間31内の培地をシリコンラバーヒータ63によって加熱することができる。このため、貯留空間31内の培地を所定の温度に維持することができ、培地の成分が変化することを抑制できる。
【0078】
(第1変形例)
なお、上述した本実施の形態において、例えば、
図7に示すように、分析用バッファタンク30の貯留空間31に貯留された培地を、循環ライン70によって循環させるようにしてもよい。
図7に示す形態においては、培地フィルター11とアウトレット開閉弁12との間に第1循環切替弁71が設けられ、第2アウトレットポンプ17とアウトレット切替弁18との間に、第2循環切替弁72が設けられている。第1循環切替弁71と第2循環切替弁72とを、循環ライン70が連結している。なお、
図7においては、図面を明瞭にするために、アウトレット洗浄液供給源20は省略している。
【0079】
図7に示す形態において、貯留空間31内の培地を循環させる場合には、第1循環切替弁71は、循環ライン70からアウトレット開閉弁12に培地が流れるように流路を切り替えるとともに、第2循環切替弁72は、第2アウトレットポンプ17から循環ライン70に培地が流れるように流路を切り替える。そして、アウトレット開閉弁12を開くとともに、第2アウトレットポンプ17が駆動されることにより、貯留空間31内の培地が、排出部44から排出されて循環ライン70に流入する。循環ライン70流入した培地は、分析用バッファタンク30の注入部40に供給され、貯留空間31に再び注入される。このようにして、貯留空間31内の培地を循環させることができ、培地をより一層均質化させることができる。
【0080】
なお、
図7に示す形態において、培養容器100内の培地を分析用バッファタンク30に供給する場合には、第1循環切替弁71は、培地フィルター11からアウトレット開閉弁12に培地が流れるように流路を切り替える。また、貯留空間31内の培地を培地分析部4に供給する場合には、第2循環切替弁72は、第2アウトレットポンプ17から培地分析部4に培地が流れるように流路を切り替える。
【0081】
(第2変形例)
また、上述した本実施の形態においては、本発明によるバッファタンクを、
図1に示す分析用バッファタンク30に適用した例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、本発明によるバッファタンクを、
図1に示す新液用バッファタンク6に適用してもよい。この場合、インレットヒータ5により加熱された培地が新液用バッファタンク6内で均質化されるまでの時間を短縮することができる。このため、培養容器100の通路104内に供給された培地を均質化させることができ、培養される細胞の品質を向上させることができる。
【0082】
本発明は上記実施の形態および変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態および変形例に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。実施の形態および変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態および変形例にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。