特許第6447619号(P6447619)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6447619
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】蓄電素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/02 20060101AFI20181220BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20181220BHJP
   H01G 11/18 20130101ALI20181220BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20181220BHJP
   H01G 11/26 20130101ALI20181220BHJP
【FI】
   H01M2/02 A
   H01M10/04 W
   H01G11/18
   H01G11/78
   H01G11/26
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-255863(P2016-255863)
(22)【出願日】2016年12月28日
(62)【分割の表示】特願2013-47592(P2013-47592)の分割
【原出願日】2013年3月11日
(65)【公開番号】特開2017-98259(P2017-98259A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2017年1月19日
(31)【優先権主張番号】特願2012-54781(P2012-54781)
(32)【優先日】2012年3月12日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-5611(P2013-5611)
(32)【優先日】2013年1月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 英樹
【審査官】 高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−310579(JP,A)
【文献】 特開2006−338992(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0123854(US,A1)
【文献】 特開2009−110832(JP,A)
【文献】 特開2011−187444(JP,A)
【文献】 特開平07−326331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/02
H01M 10/04
H01G 11/18
H01G 11/26
H01G 11/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板と負極板とを有し、第1凸部を備える発電要素を、角型の外装容器に収容した蓄電素子であって、
前記外装容器の内壁のうち隅部以外の領域に凹部が設けられ、前記凹部は前記隅部よりも薄肉化され、
前記第1凸部は前記正極板と前記負極板とを巻回してなる発電要素の外周における円弧状の部分であって、
前記発電要素はその巻回軸が前記外装容器の底壁に沿う方向で前記外装容器内に収容され、
前記外装容器の底部および頂部のうち少なくとも一方の前記内壁には前記凹部が設けられ、
前記外装容器の側面の前記内壁には前記凹部が設けられていない、蓄電素子。
【請求項2】
正極板と負極板とを有し、第1凸部を備える発電要素を、角型の外装容器に収容した蓄電素子であって、
前記外装容器の内壁のうち隅部以外の領域に凹部が設けられ、前記凹部は前記隅部よりも薄肉化され
前記第1凸部は前記正極板と前記負極板とを巻回してなる発電要素の外周における円弧状の部分であって、
前記発電要素の巻回軸方向に垂直な断面において、前記凹部は円弧状をなしているとともに、その円弧の曲率中心が前記発電要素の前記第1凸部を通る中心線上に配されている、蓄電素子。
【請求項3】
正極板と負極板とを有し、第1凸部を備える発電要素を、角型の外装容器に収容した蓄電素子であって、
前記外装容器の内壁のうち隅部以外の領域に凹部が設けられ、前記凹部は前記隅部よりも薄肉化され
前記第1凸部は前記正極板と前記負極板とを巻回してなる発電要素の外周における円弧状の部分であって、
前記凹部と前記第1凸部とは対向しており、
前記発電要素の巻回軸の方向に垂直な断面において、前記凹部の曲率半径は前記第1凸部の曲率半径以上とされている、蓄電素子。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の蓄電素子であって、
前記外装容器の内壁には、前記凹部の周辺に隆起部が形成されている蓄電素子。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の蓄電素子であって、
前記凹部の最深範囲の深さは、前記隅部の厚みの70%以下である、蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子の外装容器の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、二次電池等の電池が用いられている。電池は、アルミニウム等の金属製の外装容器に発電要素が収容されてなる(例えば、引用文献1)。電池では、充放電による発熱や環境温度の変化により発電要素が膨張して外装容器と干渉し、異常放電や異常発熱等の問題が生じることを抑制するために、外装容器と発電要素との間にクリアランスが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−117814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電池を含む蓄電素子では、同一容積により多くの発電要素を収容し、同一発電容量に対する発電要素の容積を小型化する、という蓄電素子の小型化の要請が強まっている。そのため、発電要素と外装容器との間のクリアランスを、発電要素が膨張した場合に外装容器と接触する程度の必要最小限の所定のクリアランスにまで狭幅化する設計が行われている。しかし、蓄電素子の小型化の要請は強く、更なる蓄電素子の小型化が求められている。
【0005】
本発明は、蓄電素子を小型化する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の蓄電素子は、第1凸部を有する発電要素と、前記発電要素を収容する外装容器と、を備え、前記第1凸部に対向する前記外装容器の内壁に凹部が形成されている。
【0007】
凹部が形成された領域では、凹部が形成されていない領域に比べて広いクリアランスを確保することができる。そのため、外装容器の凹部が形成された領域を凹部が形成されていない領域に比べて発電要素に近接して配置しても、所定のクリアランスを確保することができる。この蓄電素子によれば、外装容器の内壁に凹部を形成することで、凹部を形成しない場合に比べて、発電要素の第1凸部を外装容器に近接して配置することができ、蓄電素子を小型化することができる。また、外装容器の内壁に凹部を形成することで、発電要素の第1凸部と電池外部との間の距離を狭めることができ、かつ発電要素と対向する外装容器の内壁の表面積を拡大することができ、蓄電素子の冷却効率を向上させることができる。
【0008】
上記蓄電素子では、前記凹部は、前記外装容器の内壁の前記第1凸部と近接する範囲に亘って形成されている構成としてもよい。この蓄電素子によれば、第1凸部を有する発電要素を凹部が形成された外装容器に確実に近接して配置することができ、蓄電素子を小型化することができる。
【0009】
上記蓄電素子では、前記凹部は、前記第1凸部に対応した形状を有している構成としてもよい。この蓄電素子によれば、第1凸部を有する発電要素を凹部が形成された外装容器に確実に近接して配置することができ、蓄電素子を小型化することができる。
【0010】
上記蓄電素子では、前記発電要素は、第1方向の幅が前記第1方向に直交する第2方向の幅に比べて狭い扁平型断面を有する筒形状をしており、前記凹部は、前記発電要素に前記第2方向において対向する前記内壁に形成されている構成としてもよい。この蓄電素子によれば、発電要素の第2方向において、外装容器を発電要素に近接して配置することができ、蓄電素子を小型化することができる。
【0011】
上記蓄電素子では、前記凹部は、前記発電要素に前記第2方向において対向する前記内壁にのみ形成されている構成としてもよい。この蓄電素子によれば、発電要素に第1方向において対抗する外装容器の内壁に凹部が形成されず、当該内壁がフラットに形成される。蓄電素子において、第1方向において対抗する外装容器の内壁がフラットであると、当該内壁に凹部が形成される場合に比べて、発電要素が膨張した際に、第1方向において発電要素に含まれる正極板と負極板とが離反することが抑制される。これによって、正極板と負極板との離反による発電要素の内部抵抗が増大することを抑制することができ、蓄電素子の安定した出力特性を確保することができる。
【0012】
上記蓄電素子では、前記発電要素の軸方向に垂直な断面において、前記発電要素の前記第2方向における端部及び前記凹部は円弧状をしているとともにその曲率中心が前記第1方向において等しく、前記凹部の曲率半径は、前記端部の曲率半径以上である構成としてもよい。この蓄電素子によれば、凹部のうちの最も深く形成される凹部の中心において外装容器を発電要素に近接して配置することができ、蓄電素子を小型化することができる。また、凹部と端部の曲率半径を等しく設定しておくことで、発電要素が膨張した場合に、端部が凹部の全面と接触するようにすることができ、発電要素が膨張した場合の蓄電素子の冷却効率を向上させることができる。
【0013】
上記蓄電素子では、前記発電要素は、前記外装容器に、前記発電要素の軸方向が水平方向となり、前記第2方向が垂直方向となるように収容され、前記凹部は、前記外装容器の頂部と底部の少なくとも一方の前記内壁に形成されている構成としてもよい。この蓄電素子によれば、外装容器の頂部や底部において、外装容器を発電要素に近接して配置することができ、蓄電素子を小型化することができる。
【0014】
上記蓄電素子では、前記外装容器の前記凹部が形成された領域は、その周辺領域に比べて薄肉である構成としてもよい。この蓄電素子によれば、凹部が形成されて薄肉となった薄肉部を用いて、蓄電素子の冷却効率を向上させることができる。
【0015】
上記蓄電素子では、前記外装容器の前記凹部が形成された領域の外壁に、第2凸部が形成されている構成としてもよい。この蓄電素子によれば、外装容器の外壁に第2凸部を形成することで外壁の表面積を拡大することができ、蓄電素子の冷却効率を向上させることができる。
【0016】
上記蓄電素子では、前記外装容器の内壁の前記凹部が形成された領域の周辺に、隆起部が形成されている構成としてもよい。この蓄電素子によれば、外装容器の内壁に隆起部を形成することで内壁の表面積を拡大することができ、蓄電素子の冷却効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、蓄電素子を小型化して形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】単電池の展開図
図2】実施形態1の単電池の断面図
図3】実施形態1のケースの斜視図
図4】実施形態2の単電池の断面図
図5】実施形態3の単電池の断面図
図6】他の実施形態の単電池の断面図
図7】他の実施形態の蓋体の斜視図
図8】他の実施形態の単電池の断面図
図9】他の実施形態のケースの斜視図
図10】他の実施形態の単電池の断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態1>
以下、実施形態1について、図1ないし図3を参照しつつ説明する。
1.単電池の構成
図1は、本実施形態における単電池14の斜視図である。単電池14は、繰り返し充放電可能な二次電池であり、より具体的にはリチウムイオン電池である。本実施形態の単電池14は、その複数個が導電性を有する板部材であるバスバーによってお互いに接続されて例えば電気自動車やハイブリット自動車に搭載され、電気エネルギーで作動する動力源に電力を供給する。単電池14は、蓄電素子の一例である。
【0020】
図1に示すように、単電池14は、電極ユニット20と、発電要素50と、クリップ60と、ケース62と、を含む。以下、図1における上下方向を単電池14の上下方向とし、ケース62の側面のうちの面積の広い側の側面に垂直な方向を単電池14の前後方向、面積の狭い側の側面に垂直な方向を単電池14の左右方向として説明する。上下方向は、第2方向の一例であり、前後方向は、第1方向の一例であり、左右方向は、発電要素50の軸方向の一例である。
【0021】
ケース62は、アルミニウム等の金属製であり、プレス加工(例えば、深絞り)によって形成されている。ケース62は、上端が開放された上方開放型に形成され、このケース62に扁平型をなす発電要素50が収容されるとともに、電解液が充填される。ケース62の上端開口は、電極ユニット20を構成する長方形の板部材である蓋体68によって塞がれる。ケース62と蓋体68とが、外装容器の一例である。
【0022】
電極ユニット20では、蓋体68の上面に一対の正極端子22及び負極端子24が左右方向に並んで配置されている。また、各電極端子22、24に接続され、蓋体68の下面から下方に向かって伸びる一組の集電体28A、28Bが設けられている。各集電体28A、28Bは、それぞれ大きな電流容量が得られるように十分な厚さを有する金属板からなり、正極集電体28Aは、例えばアルミニウム合金板からなり、負極集電体28Bは、例えば銅合金板からなる。蓋体68の中央には、ケース62内の圧力が基準値以上に高くなった場合にケース62内のガスを放出する非復元型の安全弁70が設けられている。
【0023】
発電要素50は、正極板52と負極板54の間に図示しないセパレータを挟んだ状態で扁平型に巻回した筒形状に構成されている。正極板52と負極板54は、巻き解いた状態において、それぞれ巻回方向を長手方向とする帯状をなしている。正極板52は、帯状をなすアルミニウム箔の表面に正極活物質層が形成されたものであり、その長手方向に延びる一方の縁には、正極活物質層が形成されずにアルミニウム箔が露出した正極集電箔52Aが形成されている。また、負極板は、帯状をなす銅箔の表面に負極活物質層が形成されたものであり、その長手方向に54延びる一方の縁には、負極活物質層が形成されずに銅箔が露出した負極集電箔54Aが形成されている。
【0024】
正極板52と負極板54は、正極集電箔52Aがセパレータおよび負極板54よりも一端側に配され、また負極集電箔54Aがセパレータおよび正極板52よりも他端側に配されるように重ねられて巻回されている。これにより、発電要素50の一端側には、正極集電箔52Aのみが積層して突設され、他端側には、負極集電箔54Aのみが積層して突設されている。
【0025】
発電要素50は、図1に示すように、その軸方向が左右方向となり、上下方向に扁平型となるように配置され、電極ユニット20の集電体28A、28Bに接続される。つまり、発電要素50は、軸方向に直交する断面において、前後方向の幅が上下方向の幅に比べて狭くなるように配置され、前後方向に比べて上下方向に突出した状態で配置される。
【0026】
正極集電箔52Aは、発電要素50の右側に配置され、上下方向に直線状に延びる側面部分において、正極集電体28Aに接続される。負極集電箔54Aは、発電要素50の左側に配置され、上下方向に直線状に延びる側面部分が、負極集電体28Bに接続される。
【0027】
集電体28A、28Bと集電箔52A、54Aは、クリップ60によって挟み込まれた状態で超音波溶接されることで接続される。クリップ60は、溶接される集電体28A、28B及び集電箔52A、54Aの材質と同等の抵抗値を有する材料からなり、正極側のクリップ60Aはアルミニウム合金からなり、負極側のクリップ60Bは銅合金からなる。
【0028】
発電要素50は、集電体28A、28Bに接続された後に、ケース62に収容される。そのため、発電要素50は、その軸方向が左右方向となり、上下方向に扁平型となった状態でケース62に収容される。
【0029】
2.単電池の断面形状
図2に、図1の左右方向に垂直なII−II断面における単電池14の断面図を示す。図2に示すように、単電池14では、ケース62や蓋体68と発電要素50との間に矢印72で示す一定のクリアランスCLが設けられている。そのため、単電池14の使用初期では、図2に二点鎖線で示すように、充放電による発熱や環境温度の変化により発電要素50が膨張しても、ケース62や蓋体68と発電要素50が接触することが防止されている。また、単電池14の使用末期では、単電池の使用初期に比べて発電要素50が膨張する。クリアランスCLは、単電池14の使用末期において、ケース62や蓋体68と発電要素50がちょうど接触する程度に設定されており、これによって、単電池14の使用末期では、ケース62や蓋体68と発電要素50が基準値以上の圧力を持って接触して干渉し、発電要素の破損によりに異常放電や異常発熱等の問題が生じることが防止されている。
【0030】
発電要素50は、上述したように、上下方向に扁平型となるように配置され、上下方向の端部が円弧状をしている。そして、発電要素50と下方向において対向するケース62の底部80の内壁62Aには、発電要素50の下方向における突出形状に応じた凹部64が形成されている。本実施形態では、凹部64は、ケース62の底部80にのみ形成され、蓋体68やケース62の側面部82に凹部64が形成されていない。
【0031】
図2、3に示すように、凹部64は、前後方向において発電要素50が下方向に最も突出した最下点に対向する範囲とその周辺範囲に亘って広がっており、左右方向において溝状に形成される。図2に示すように、凹部64では、内壁62Aが単電池14の外側に向かって変形することで表面積が拡大しており、これによって底部80の凹部64が形成された領域は、凹部64が形成されなかった領域に比べて薄肉に形成されている。発電要素50の下方向の端部が、第1凸部の一例である。
【0032】
凹部64は、発電要素50の最下点に対向する範囲において最も深く形成されている。凹部64の最深範囲の深さは、ケース62の強度を強く維持するために、ケース62の底部80の厚みの70%以下であることが好ましく、より好ましくは、ケース62の底部80の厚みの20%〜50%であることが好ましい。図2等では、理解のため、凹部64が深めに記載されているものの、本実施形態では、凹部64の最深範囲の深さは、ケース62の底部80の厚みの30%の深さに形成されている。
【0033】
凹部64は、発電要素50の下方向の端部と同様に、左右方向に垂直な断面において円弧状をしており、その曲率中心が、発電要素50の前後方向における中心線上に配置されている。また、凹部64の曲率半径は、発電要素50の下方向の端部における曲率半径よりも大きい。そのため、発電要素50とケース62の底部80とは、凹部64の境界部64Aではなく、凹部64の最も深くなった凹部64の中心において最も近接する。
【0034】
単電池14では、発電要素50の下方向の端部と、凹部64の中心との間の距離が一定のクリアランスCLとなるように設定されている。そのため、図2に矢印74で示す発電要素50の下方向の端部と、凹部64周辺の凹部64が形成されていない周辺領域との間の上下方向における距離Kは、一定のクリアランスCLよりも短い。
【0035】
3.本発明の効果
(1)本実施形態の単電池14では、ケース62の底部80に凹部64を形成することで、図2に矢印74で示す距離Kを一定のクリアランスCLよりも短く設定することができる。そのため、距離Kを一定のクリアランスCLと等しく設定する必要があった従来技術に比べて、ケース62を発電要素50に近接して配置することができ、単電池14を小型化することができる。
【0036】
(2)本実施形態の単電池14では、ケース62の底部80に凹部64が形成されることで、底部80の内壁62Aの表面積が拡大しているとともに、底部80の凹部64が形成された領域が、凹部64が形成されなかった領域に比べて薄肉に形成されている。そのため、凹部64が形成されない場合に比べて、ケース62を発電要素50に近接して配置することができ、単電池14を小型化することができる。また、ケース62の内壁に凹部64を形成することで、発電要素50と単電池14外部との間の距離を狭めることができ、かつ発電要素50と対峙するケース62の内壁の表面積を拡大することができ、ケース62を介した単電池14の冷却効率を向上させることができる。
【0037】
(3)凹部64の深さは、より深いほど単電池14を小型化することができ、単電池14の冷却効率を向上させることができる一方、深すぎればケース62の強度が悪化する。本実施形態では、凹部64の最深範囲の深さは、ケース62の底部80の厚みの30%の深さに形成されているので、ケース62の強度を強く維持しつつ、単電池14を小型化し、単電池14の冷却効率を向上させることができる。
【0038】
(4)本実施形態の単電池14では、凹部64の曲率半径が、対向する発電要素50の下方向の端部における曲率半径よりも大きいので、凹部64のうちの最も深くなる凹部64の中心と発電要素50との間の距離を一定のクリアランスCLとなるように設定することができ、単電池14を小型化することができる。また、上記のように設定した場合でも、凹部64の境界部64Aにおいて、発電要素50との間の距離が一定のクリアランスCLよりも短く設定されることがない。
【0039】
(5)本実施形態の単電池14では、ケース62の側面部82に凹部64が形成されず、ケース62の側面部82がフラットに形成されている。そのため、発電要素50が膨張した際に、前後方向において発電要素50に含まれる正極板52と負極板54とが離反することが抑制される。これによって、正極板52と負極板54との離反による発電要素50の内部抵抗が増大することを抑制することができ、単電池14の安定した出力特性を確保することができる。
【0040】
<実施形態2>
実施形態2を、図4を参照しつつ説明する。
1.単電池の断面形状
本実施形態の単電池14は、ケース62の底部80の凹部64が形成された領域の外壁62Bに、凸部66が形成されている点で、実施形態1と異なる。そのため、本実施形態のケース62の底部80では、内壁62A及び外壁62Bに凹部64及び凸部66が形成されていることで表面積が拡大している一方、底部80の凹部64及び凸部66が形成された領域は、凹部64及び凸部66が形成されない領域と同一の厚さに形成されている。凸部66は、第2凸部の一例である。尚、実施形態1と同一の内容については重複した記載を省略する。
【0041】
2.本発明の効果
本実施形態の単電池14では、ケース62の底部80に凹部64が形成されることで、底部80の内壁62Aの表面積が拡大しているとともに、ケース62の底部80に凸部66が形成されることで、底部80の外壁62Bの表面積が拡大している。そのため、凹部64及び凸部66が形成されない場合に比べて、ケース62を介した単電池14の冷却効率を向上させることができる。
【0042】
<実施形態3>
実施形態3を、図5を参照しつつ説明する。
1.単電池の断面形状
本実施形態の単電池14は、ケース62の底部80の凹部64が形成された領域周辺の内壁62Aに、隆起部76が形成されている点で、実施形態1と異なる。隆起部76は、予め平面状に形成されたケース62の底部80に、プレス加工により凹部64を形成することで凹部64と同時に形成される。本実施形態のケース62の底部80では、内壁62Aに凹部64及び隆起部76が形成されていることで表面積が拡大している。
【0043】
隆起部76は、前後方向において発電要素50が下方向に最も突出した最下点に対向する範囲の周辺範囲に形成されているので、隆起部76が設けられても、ケース62と発電要素50との間のクリアランスCLが保たれる。尚、実施形態1と同一の内容については重複した記載を省略する。
【0044】
2.本発明の効果
本実施形態の単電池14では、ケース62の底部80に凹部64が形成されることで、底部80の内壁62Aの表面積が拡大しているとともに、ケース62の底部80の凹部64が形成された領域周辺の内壁62Aに、隆起部76が形成されることで、底部80の内壁62Aの表面積が更に拡大している。そのため、凹部64及び隆起部76が形成されない場合に比べて、ケース62を介した単電池14の冷却効率を向上させることができる。
【0045】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、蓄電素子の一例として二次電池である単電池14を示したが、これに限らず、蓄電素子は、電気化学現象を伴うキャパシタであってもよい。また、蓄電素子の用途、蓄電素子の電極ユニットの構造等も特に限定されるものではない。
【0046】
(2)上記実施形態では、ケース62の底部80に凹部64が形成される例を示したが、これに限らず、図6、7に示すように、蓋体68にも凹部64が形成されても良い。この場合、凹部64は、上下方向に扁平型となる発電要素50にその上下方向において対向するケース62の底部80及び蓋体68にのみ形成され、ケース62の側面部82に凹部64が形成されていない。蓋体68に形成される凹部64は、図6に示すように、前後方向において発電要素50が上方向に最も突出した最上点に対向する範囲とその周辺範囲に亘って広がっており、図7に示すように、左右方向において溝状に形成されている。発電要素50の上方向の端部は、第1凸部の別例である。
【0047】
また、図8、9に示すように、ケース62の側面部82に凹部64が形成されても良い。ケース62の側面部82に形成される凹部64は、図8に示すように、発電要素50が前後方向に最も突出した側面部に対応する範囲とその周辺範囲に亘って広がっており、図9に示すように、面状に形成されている。この場合、凹部64は、側面部82の略半分の領域に広がっている。発電要素50の前後方向の側面は、第1凸部の別例である。
【0048】
(3)上記実施形態では、凹部64が円弧状をしている例を示したが、これに限らず、矩形状の凹部64が形成されても良い。また、図10に示すように、発電要素50の最下点に対向するケース62の底部80に面状に形成されており、その全周にR(アール)が形成されている形状としてもよい。この場合、凹部64は、底部80の略半分の領域に広がっている。
【0049】
(4)上記実施形態では、ケース62がアルミニウム等の金属製である例を示したが、これに限られず、他の金属等で形成されてもよい。また、ケース62がプレス加工によって形成されている例を示したが、これに限られず、溶接等により形成されてもよい。
【0050】
(5)上記実施形態では、凹部64の曲率半径が発電要素50の下方向の端部における曲率半径よりも大きい例を示したが、凹部64の曲率半径が発電要素50の下方向の端部における曲率半径と等しくてもよい。凹部64と発電要素50の下方向の端部における曲率半径を等しくしておくことで、単電池14の使用末期において発電要素50が膨張した場合に、発電要素50の下方向の端部が凹部64と全面で接触するようにすることができ、単電池14の使用末期において、単電池14の冷却効率を向上させることができる。
【0051】
(6)ケース62及び蓋体68の内壁に凹部64を形成することは、以下の場合にも有効である。
ケース62では、気密性を向上させるために、深絞り等の手法によって上端が開放された上方開放型に形成されることがあり、深絞り等の手法では、底部80の厚みが設計値よりも厚く形成されてしまう不良が生じることがある。この場合、発電要素50の下方向の端部と底部80との間に一定のクリアランスを確保することができず、当該ケース62を単電池14に使用することができないことから、ケース62の歩留まりが悪化する。
【0052】
この場合、ケース62の底部80に凹部64を形成しておき、図2に矢印72で示す発電要素50の下方向の端部と、凹部64の中心との間の距離が一定のクリアランスCLに所定距離CL1を加えた距離となるように設定しておく。これによって、ケース62の底部80の厚みが設計値より厚く形成された場合でも、その範囲が所定距離CL1に含まれている場合には、発電要素50の下方向の端部と底部80との間に一定のクリアランスを確保することができ、ケース62の歩留まりの悪化を抑制することができる。なお、発電要素50の下方向の端部と、凹部64の中心との間の距離が一定のクリアランスCLに所定距離CL1を加えた距離となるように設定した場合でも、図2に矢印74で示す発電要素50の下方向の端部と、凹部64周辺の凹部64が形成されていない周辺領域との間の上下方向における距離Kを、一定のクリアランスCLよりも短く設定することができる。
【符号の説明】
【0053】
14:単電池、50:発電要素、62:ケース、62A:内壁、62B:外壁、64:凹部、66:凸部、68:蓋体、80:底部、82:側面部、CL:一定のクリアランス
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
図8
図9
図10