特許第6447651号(P6447651)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6447651
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】エンジンカバー
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/12 20060101AFI20181220BHJP
【FI】
   B62D25/12 Z
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-58560(P2017-58560)
(22)【出願日】2017年3月24日
(65)【公開番号】特開2018-161903(P2018-161903A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2018年2月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】岡村 和美
(72)【発明者】
【氏名】藤井 照雅
(72)【発明者】
【氏名】新濱 誠
(72)【発明者】
【氏名】星野 司
(72)【発明者】
【氏名】田中 行矢
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−174124(JP,A)
【文献】 特開2004−132219(JP,A)
【文献】 特開平11−314577(JP,A)
【文献】 実開昭55−056734(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/10−25/13
F02B 61/00−79/00
F02F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの上方を覆い、ボンネットと前記エンジンとの間に配されるエンジンカバーにおいて、
車両の前方側又は後方側の内、前記ボンネットの開閉に係る支点が設けられた側と同じ側である一方側に設けられてなり、開閉に係る支点であるヒンジと、
前記車両の前方側又は後方側の内の他方側の部分に取り付けられ、前記ボンネットが開状態である場合に、前記ボンネットの一部に掛止することで該エンジンカバーの開状態を保持する開状態保持部と、を有し、
前記開状態保持部は、前記他方側の部分に固定され、屈曲自在の線状部材と、当該線状部材の先端部分に取り付けられ、前記ボンネットのインナーパネルに掛止可能な掛止部材と、を有し、
前記掛止部材は、前記インナーパネルに対して、前記ボンネットの開状態を保持するためのボンネットステーの先端部を差し込む孔部に隣接した位置に掛止可能となっている、
エンジンカバー。
【請求項2】
請求項記載のエンジンカバーであって、
前記掛止部材は、前記インナーパネルに掛止された状態において、前記ボンネットの前記孔部に差し込まれた前記ボンネットステーの先端部が前記孔部から抜け出すのを抑制する抜け抑制部を有する、
エンジンカバー。
【請求項3】
請求項記載のエンジンカバーであって、
前記ボンネットステーの先端部には、前記孔部への差し込み時において、前記インナーパネルの外面における前記孔部の縁に当接するフランジ状の内縁部が設けられており、
前記掛止部材は、板状部材であって、前記インナーパネルに係止するための鍵状の部分と、前記抜け抑制部としての突起部と、を有し、
前記掛止部材が前記インナーパネルに掛止された状態において、前記内縁部は、前記インナーパネルと前記突起部との間で挟まれている、
エンジンカバー。
【請求項4】
請求項1から請求項の何れか記載のエンジンカバーであって、
該エンジンカバーが閉状態である場合に、前記開状態保持部を収容可能な収容部を有する、
エンジンカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンの上方を覆うようにエンジンカバーが配される場合がある。このようなエンジンカバーの構造が、特許文献1に開示されている。特許文献1では、ボンネットの内面側に対して、支持部材を介して固定され、ボンネットと一体に開閉するエンジンカバーが開示されている。特許文献1では、上記構造を採用することにより、エンジンと間隙をあけた状態でエンジンカバーを配置することができ、エンジンの振動がエンジンカバーに伝わるのを抑制し、騒音の低減を図ることができるとされている。
【0003】
ところで、近年では、エンジンカバーにエンジンの保温機能が求められる場合がある。このような場合には、ボンネットを開ける際にも、エンジンをエンジンカバーで覆っておく必要がある場合も生じ得る。
【0004】
また、エンジンカバーを着脱式とした場合には、エンジンのメインテナンスの際などに、エンジンカバーの置き場所に困る場合が生じる。よって、エンジンカバーについては、ボンネットとは別に開閉自在の構造としておくことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−352143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように、エンジンカバーをボンネットとは別に開閉自在の構造とする場合には、エンジンのメインテナンスなどでエンジンカバーを開状態で保持しておく必要性があるが、製造コストやスペースなどの観点から複雑な構成を採用することは困難である。
【0007】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、複雑な構成を必要とせず、必要時に開状態で保持できる構成のエンジンカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るエンジンカバーは、エンジンの上方を覆い、ボンネットと前記エンジンとの間に配されている。そして、本態様に係るエンジンカバーは、ヒンジと、開状態保持部と、を有する。
【0009】
前記ヒンジは、車両の前方側又は後方側の内、前記ボンネットの開閉に係る支点が設けられた側と同じ側である一方側に設けられてなり、開閉に係る支点である。
【0010】
前記開状態保持部は、前記車両の前方側又は後方側の内の他方側の部分に取り付けられ、前記ボンネットが開状態である場合に、前記ボンネットの一部に掛止することで該エンジンカバーの開状態を保持する部分である。
前記開状態保持部は、前記他方側の部分に固定され、屈曲自在の線状部材と、当該線状部材の先端部分に取り付けられ、前記ボンネットのインナーパネルに掛止可能な掛止部材と、を有しており、前記掛止部材は、前記インナーパネルに対して、前記ボンネットの開状態を保持するためのボンネットステーの先端部を差し込む孔部に隣接した位置に掛止可能となっている。
【0011】
上記態様に係るエンジンカバーは、ヒンジを支点として開閉自在となっている。このため、エンジンのメインテナンスなどの際に、脱着式の物のように置き場に困ることがない。
【0012】
また、上記態様に係るエンジンカバーは、開状態保持部を有するので、当該開状態保持部をボンネットへ掛止させることにより、開状態を保持することが可能である。このため、エンジンのメインテナンスの際の優れた作業効率を実現することができる。
【0013】
また、上記態様では、ボンネットの一部への掛止により開状態を維持できるので、複雑な機構を設ける必要がない。
【0014】
従って、上記態様に係るエンジンカバーでは、複雑な構成を必要とせず、必要時に開状態を保持することができる。
【0016】
また、開状態保持部を線状部材と掛止部材という簡易な部材の組み合わせで構成しているた、製造コストの上昇を抑え、エンジンカバーの大型化を抑えることができる。
【0018】
また、インナーパネルに対する掛止部材の掛止位置を、ボンネットステーの先端部の差し込みに係る孔部に隣接した位置としているた、エンジンカバーが開状態である場合に、誤ってボンネットを閉めようとしても、ボンネットステーを外す前にユーザに気付かせることが可能となる。よって、上記態様では、エンジンカバーが開状態である場合に、誤ってボンネットを閉めるという行為を抑制することができ、エンジンカバーの破損などを抑制することができる。
【0019】
本発明の別態様に係るエンジンカバーは、上記構成において、前記掛止部材は、前記インナーパネルに掛止された状態において、前記ボンネットの前記孔部に差し込まれた前記ボンネットステーの先端部が前記孔部から抜け出すのを抑制する抜け抑制部を有する。
【0020】
上記態様では、掛止部材が抜け抑制部を有するので、エンジンカバーが開状態である場合に、誤ってボンネットを閉めようとしても、ボンネットステーをインナーパネルの孔部から外すことが抑制され、ボンネットを閉めることが防がれる。よって、上記態様では、更に確実にエンジンカバーの破損などを抑制することができる。
【0021】
本発明の別態様に係るエンジンカバーは、上記構成において、前記ボンネットステーの先端部には、前記孔部への差し込み時において、前記インナーパネルの外面(閉状態でエンジンルーム側を向く面)における前記孔部の縁に当接するフランジ状の内縁部が設けられており、前記掛止部材は、板状部材であって、前記インナーパネルに係止するための鍵状の部分と、前記抜け抑制部としての突起部と、を有する。
【0022】
そして、前記掛止部材が前記インナーパネルに掛止された状態において、前記内縁部は、前記インナーパネルと前記突起部との間で挟まれている。
【0023】
上記態様では、抜け抑制部としての突起部を有するので、簡易な構成を以って、確実にエンジンカバーの破損を抑制することができる。
【0024】
本発明の別態様に係るエンジンカバーは、上記構成において、該エンジンカバーが閉状態である場合に、前記開状態保持部を収容可能な収容部を有する。
【0025】
上記態様では、エンジンカバーに開状態保持部を収容可能な収容部を設けているので、エンジンカバーが閉状態である場合などに開状態保持部を収容部に収容しておくことができ、当該開状態保持部に走行風などが当たり、騒音が発生することなどを防止することができる。
【発明の効果】
【0026】
上記の各態様に係るエンジンカバーでは、複雑な構成を必要とせず、必要時に開状態で保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態に係る車両1の一部構成を示す模式正面図である。
図2】エンジンルーム2内の一部構成を示す模式斜視図である。
図3】ボンネット4に対してボンネットステー5の差込部材13が差し込まれ、エンジンカバー3の掛止部材14が掛止された状態を示す模式斜視図である。
図4】ボンネット4に対してボンネットステー5の差込部材13が差し込まれ、エンジンカバー3の掛止部材14が外された状態を示す模式斜視図である。
図5】掛止部材14の構成を示す模式斜視図である。
図6】(a)は、ボンネット4のインナーパネル15に対して掛止部材14を掛止する前の状態を示す模式断面図であり、(b)は、ボンネット4のインナーパネル15に対して掛止部材14が掛止された状態を示す模式断面図である。
図7】(a)は、ボンネット4におけるインナーパネル15の孔部15aに対して差込部材13を差し込む前の状態を示す模式断面図であり、(b)は、ボンネット4におけるインナーパネル15の孔部15aに対して差込部材13が掛合された状態を示す模式断面図である。
図8】(a)は、掛止部材14が掛止された状態での掛止部材14と差込部材13との配置関係を示す模式断面図であり、(b)は、掛止部材14が掛止されている状態で差込部材13をスライドさせた状態を示す模式断面図である。
図9】第2実施形態に係るエンジンカバーの掛止部材24の構成を示す模式斜視図である。
図10】(a)は、第3実施形態に係るエンジンカバーの掛止部材34の構成を示す模式側面図であり、(b)は、掛止部材34をボンネット4のインナーパネル15に対して掛止した状態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一態様であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0029】
ここで、本明細書においては、「掛止」との用語について、物と物とが、間に隙間が残った状態で互いに引っ掛けられた場合と、実質的に隙間がない状態で互いに引っ掛けられた場合と、の両場合を含むものとして用いる。
【0030】
[第1実施形態]
1.車両1におけるエンジンルーム2内の概略構成
本実施形態に係る車両1におけるエンジンルーム2内の概略構成について、図1及び図2を用い説明する。
【0031】
図1に示すように、車両1のエンジンルーム2には、エンジンの上方を覆うエンジンカバー3が設けられている。また、エンジンルーム2の上方開口は、ボンネット4を閉状態とすることで塞がれるようになっている。ボンネット4の開閉に係る支点については、詳細な図示を省略しているが、エンジンルーム2の後方側に配されている。即ち、本実施形態において、ボンネット4は、エンジンルーム2の後方側に設けられた支点を中心に、前部が開閉する構成となっている。
【0032】
ここで、ボンネット4を開状態で保持するための機構として、ボンネットステー5が設けられている。ボンネットステー5は、ステー支持部材9によりシュラウド6に取り付けられている。そして、ボンネットステー5の先端部をボンネット4のインナーパネルに開けられた孔部(図1では、図示を省略。)に差し込むことで、ボンネット4の開状態が保持される。
【0033】
エンジンカバー3についても、開閉に係る支点として、エンジンルーム2の後方側の部分にヒンジ8が設けられている。よって、エンジンカバー3においても、前部が開閉する構成となっている。
【0034】
また、エンジンカバー3には、前部(前方側の部分)に紐部材7が取り付けられている。紐部材7は、エンジンカバー3を開状態で保持するため、先端に取り付けられた掛止部材(図1では、詳細な図示を省略。)でボンネット4のインナーパネルに掛止可能となっている。
【0035】
そして、本実施形態では、ボンネットステー5の差し込み位置と、エンジンカバー3の掛止部材の掛止位置とは、互いに隣接している(矢印Aで指し示す部分を参照)。
【0036】
図2に示すように、エンジンカバー3は、エンジン10の上方を覆い、ボンネット4(図2では、図示を省略。)とともに閉状態の場合には、ボンネット4とエンジン10のエンジンヘッドとの間に、それぞれと隙間をあけた状態で挟まれている。
【0037】
なお、エンジンカバー3のヒンジ8については、車幅方向の両端部分のそれぞれに2つ設けられている。そして、エンジンカバー3は、当該ヒンジ8により車体に取り付けられている。
【0038】
なお、図2に示すように、本実施形態では、エンジン10の側方がサイドカバー11により覆われ、後方がバックカバー12により覆われている。これにより、エンジン10の保温がなされるようになっている。なお、これらサイドカバー11及びバックカバー12についても、車体に取り付けられている。
【0039】
2.ボンネットステー5と掛止部材14
ボンネット4のインナーパネル15に対するボンネットステー5の差し込みと、エンジンカバー3における掛止部材14の掛止について、図3及び図4を用い説明する。図3は、ボンネットステー5を差し込み、掛止部材14を掛止した状態を示し、図4は、ボンネットステー5を差し込み、掛止部材14の掛止を解除した状態を示す。
【0040】
先ず、図4に示すように、ボンネット4を開け、当該開状態を保持しようとする場合には、ボンネットステー5の先端部である差込部材13をボンネット4のインナーパネル15に開けられた孔部15aに差し込む。孔部15aは、上下方向(閉状態では、前後方向)に長軸を有する長穴となっている。
【0041】
なお、図3及び図4においては、インナーパネル15の一部だけを図示している。
【0042】
図4に示すように、孔部15aに隣接する部分に、掛止部材14を掛止するための孔部15b,15cが開けられている。孔部15b,15cは、ともに上下方向(閉状態では、前後方向)に長軸を有する長穴である。
【0043】
なお、ボンネット4を開状態で保持している場合においては、差込部材13は孔部15aに対して上側縁で引っ掛かった状態となっている。
【0044】
次に、図3に示すように、紐部材7の先端に取り付けられた掛止部材14は、孔部15b,15cに掛止される。この状態は、図1に示すように、エンジンカバー3が開状態の場合であって、当該開状態を保持しようとする場合である。換言すると、エンジンカバー3は、当該エンジンカバー3の開状態を保持するための開状態保持部として、紐部材7と掛止部材14とを有する。
【0045】
図3に示すように、エンジンカバー3の開状態を保持しようとする場合には、紐部材7に繋がる掛止部材14を、ボンネット4のインナーパネル15に開けられた孔部15b,15c(図4を参照。)に掛止する。孔部15b,15cと孔部15aとは隣接して設けられているため、掛止部材14は、掛止状態において、差込部材13と隣接した位置に配されることになる。
【0046】
本実施形態では、差込部材13の一部が掛止部材14の一部とインナーパネル15との間の挟まれた位置関係となる。これにより、エンジンカバー3が開状態である場合には、メインテナンスを行うユーザなどに対して、視覚的な効果により、エンジンカバー3が開状態であるにも拘らず、誤ってボンネット4を閉めないように注意喚起することができる。
【0047】
3.掛止部材14の構成
掛止部材14の構成について、図5を用い説明する。図5は、掛止部材14の構成を示す模式斜視図である。
【0048】
図5に示すように、掛止部材14は、金属材料からなる板状部材が切削加工及び曲折加工されることにより形成されている。掛止部材14には、紐部材7を取り付けるための孔部14aが−Z側の部分に形成されている。
【0049】
孔部14aが設けられた部分よりも+Z側の部分には、ユーザが把持するための把持部14dが突設されている。把持部14dは、ユーザが操作し易いように、X−Z面に対して傾斜した状態で形成されている。
【0050】
把持部14dが突設された部分に対して、Z方向の上下部分には、+Y側に突出する掛止部14b,14cが設けられている。掛止部14b,14cは、インナーパネル15に開けられた孔部15b,15cに掛止するための鍵状の部分であって、側面視において逆T字形状をしている。
【0051】
掛止部材14における把持部14dが突設されたのとはX方向の反対側の辺からは、−X側に向けて2つの突起部14e,14fが設けられている。突起部14eと突起部14fとは、Z方向に間隔G14をあけて設けられている。
【0052】
なお、掛止部材14の各コーナー部分は、ユーザが操作する際を考慮して、Cカット加工又はR加工が施されている。
【0053】
また、把持部14dが突設される基部に対して、突起部14e,14fが突設される基部は、クランク状に曲折加工され、−Y側に配されている。これは、図3に示した状態において、差込部材13の一部をインナーパネル15との間で挟むためである。
【0054】
4.掛止部材14の掛止
ボンネット4におけるインナーパネル15に対するエンジンカバー3における掛止部材14の掛止について、図6を用い説明する。図6(a)は、インナーパネル15に対して掛止部材14を掛止する前の状態を示し、図6(b)は、インナーパネル15に対して掛止部材14を掛止した後の状態を示す。
【0055】
図6(a)に示すように、インナーパネル15に対して掛止部材14を掛止しようとする場合には、ユーザは把持部14d(図5を参照。)を把持しながら、インナーパネル15に開けられた孔部15b,15cに掛止部14b,14cを差し込む。そして、二点鎖線の矢印で示すように、掛止部材14をインナーパネル15に沿って斜め下方にスライドさせる。
【0056】
掛止部材14のスライドにより、図6(b)に示すように、掛止部材14の掛止部14b,14cが、孔部15b,15cの各縁部に掛止される。
【0057】
5.インナーパネル15の孔部15aへの差込部材13の掛合
ボンネット4におけるインナーパネル15の孔部15aへの差込部材13の掛合について、図7を用い説明する。図7(a)は、インナーパネル15の孔部15aに対して差込部材13を掛合する前の状態を示し、図7(b)は、インナーパネル15の孔部15aに対して差込部材13を掛合した後の状態を示す。
【0058】
先ず、図7(a)に示すように、ボンネットステー5の先端に設けられた差込部材13は、胴部13aと、頭部13bと、内縁部13cと、が一体形成されてなる。胴部13aは、筒形状をしており、筒内方にボンネットステー5の先端が挿入されている。
【0059】
頭部13bは、胴部13aよりも孔部15aの長手方向に沿った方向でのサイズが大きくなっており、全体としてハンマーの頭部分と同様の形状をしている。ボンネットステー5の延伸方向の一方から見るとき、頭部13aは、長方形状又は長円形状を有している。
【0060】
内縁部13cは、ボンネットステー5の延伸方向において、頭部13bに対して間隙をあけた状態で設けられている。内縁部13cも、ボンネットステー5の延伸方向の一方から見るとき、長方形状又は長円形状を有している。そして、差込部材13において、頭部13bと内縁部13cとの間には、溝部13dが設けられている。溝部13dの溝幅は、インナーパネル15の板厚と同じか、若干広く設定されている。
【0061】
インナーパネル15の面に沿った方向において、孔部15aのサイズ、頭部13bのサイズ、及び内縁部13cのサイズは、次の関係を有する。
[数1]L15>L13b≧L13c
ユーザは、インナーパネル15の孔部15aに対して差込部材13の頭部13bを差し込もうとする場合には、ボンネット4とボンネットステー5とを持ちながら、孔部15aに差込部材13の頭部13bを合せる。そして、図7(a)に二点鎖線の矢印で示すように、孔部15aに対して頭部13bを差し込む。その後、ボンネット5を支えていた手を離すことで、差込部材13に対してインナーパネル15が相対的に斜め下方に下降する。このとき、差込部材13における内縁部13cは、その一部がインナーパネル15の外面(閉状態でエンジンルーム2側を向く面)の孔部15aの縁に当接した状態となる。
【0062】
図7(b)に示すように、差込部材13における頭部13bと内縁部13cとの間の溝部13dに対して、インナーパネル15の孔部15aを臨む上側縁部が掛合する。
【0063】
以上のようにして、インナーパネル15の孔部15aへの差込部材13の掛合がなされる。
【0064】
6.差込部材13と掛止部材14との関係
ボンネット4及びエンジンカバー3をともに開状態で保持しようとする場合には、上述のように、インナーパネル15に対して差込部材13及び掛止部材14を掛止させる。このときの差込部材13と掛止部材14との位置関係について、図8を用い説明する。
【0065】
図8(a)は、掛止部材14が掛止された状態での掛止部材14と差込部材13との配置関係を示す図であり、図8(b)は、掛止部材14が掛止されている状態で差込部材13をインナーパネル15に対して相対移動(スライド)させた状態を示す図である。
【0066】
図8(a)に示すように、ボンネット4及びエンジンカバー3が開状態で保持されている場合には、差込部材13の内縁部13cの上側部分がインナーパネル15と突起部14fとで挟まれた状態となっている(矢印Bで指し示す部分を参照)。この状態においては、ユーザに対して、視覚面でエンジンカバー3が開状態にあることの注意喚起がなされることになる。
【0067】
次に、図8(b)に示すように、ユーザがボンネット4を持ち上げ、孔部15aから差込部材13を抜こうとした場合には、未だ取り外されていない掛止部材14の突起部14eとインナーパネル15とにより差込部材13の内縁部13cの下側部分が挟まれた状態となる(矢印Cで指し示す部分を参照)。このように、エンジンカバー3が開状態であるにも拘らず、ユーザがボンネット4を閉めようとした場合には、掛止部材14の突起部14eにより差込部材13が孔部15aから抜けるのが抑制される(抜け抑制部として機能)。
【0068】
7.効果
本実施形態に係るエンジンカバー3は、ヒンジ8を支点として開閉自在となっている。このため、エンジン10のメインテナンスなどの際に、脱着式の物に対して置き場に困ることがない。
【0069】
また、エンジンカバー3は、紐部材7と掛止部材14とからなる開状態保持部を有するので、当該開状態保持部をボンネット4のインナーパネル15へ掛止させることにより、開状態を保持することが可能である。このため、エンジン10のメインテナンスの際の優れた作業効率を実現することができる。本実施形態では、エンジンカバー3の開状態保持部をボンネット4のインナーパネル15へ掛止するだけで開状態を保持することができるので、複雑な機構などの必要がない。
【0070】
従って、本実施形態に係るエンジンカバー3は、複雑な構成を必要とせず、必要時に開状態を保持することができる。
【0071】
上述のように、エンジンカバー3では、線状部材である紐部材7と掛止部材14という簡易な部材の組み合わせで開状態保持部を構成しているため、製造コストの上昇を抑え、エンジンカバー3の大型化を抑えることができる。
【0072】
また、本実施形態では、ボンネット4のインナーパネル15に対する掛止部材14の掛止位置を、ボンネットステー5の差込部材13の差し込みに係る孔部15aに隣接した位置としている。このため、本実施形態では、エンジンカバー3が開状態であるにも拘らず、ユーザが誤ってボンネット4を閉めようとしても、ボンネットステー5を外す前に気付かせることが可能となっている。よって、本実施形態では、エンジンカバー3が開状態であるにも拘らず、ユーザが誤ってボンネット4を閉めようとしても、視覚面でエンジンカバー3が開状態であることを気付かせることができ、エンジンカバー3の破損などを抑制することができる。
【0073】
また、本実施形態では、掛止部材14が抜け抑制部としての突起部14eを有するので、エンジンカバー3が開状態である場合に、誤ってボンネット4を閉めようとしても、ボンネットステー5を外すことが抑制され、ボンネット4を閉めることが防がれる。よって、本実施形態では、更に確実にエンジンカバー3の破損などを抑制することができる。また、掛止部材14に突起部14eを設けるという簡易な構成を以って、確実にエンジンカバー3の破損を抑制することができる。
【0074】
なお、図示及び説明を省略したが、本実施形態に係るエンジンカバー3には、エンジンカバー3に紐部材7及び掛止部材14を収容可能な収容部を設けている。これにより、エンジンカバー3が閉状態である場合などに紐部材7及び掛止部材14を収容部に収容しておくことができ、これらに走行風などが当たり、騒音が発生することなどを防止することができる。
【0075】
[第2実施形態]
第2実施形態に係るエンジンカバーの構成について、図9を用い説明する。図9では、上記第1実施形態に係る構成との差異点である掛止部材24だけを図示している。他の構成については、上記第1実施形態と同様である。
【0076】
図9に示すように、本実施形態に係る掛止部材24についても、金属材料からなる板状部材が切削加工及び曲折加工されて形成されている。掛止部材24には、上記掛止部材14と同様に、紐部材7を取り付けるための孔部24a、ユーザが把持するための把持部24d、インナーパネル15の孔部15b,15cに掛止するための掛止部24b,24cが設けられている。これらの構成については、上記第1実施形態に係る掛止部材14と同様である。
【0077】
本実施形態に係る掛止部材24においては、把持部24dが突設されたのとはX方向の反対側の辺からは、−X側に向けて1つの突起部24eだけが設けられている。この点が、上記第1実施形態に係る掛止部材14と異なる点である。
【0078】
本実施形態に係る掛止部材24を有する構成では、掛止部材24が掛止された状態(図8(a)に相当する状態)では、差込部材13の内縁部13cは、掛止部材24とインナーパネル15とで挟まれることはない。
【0079】
しかしながら、本実施形態においても、インナーパネル15の孔部15aと孔部15b,15cを隣接した位置に設けているので、ユーザに対して、視覚面でエンジンカバー3が開いたままの状態であることを注意喚起することができる。
【0080】
また、掛止部材24が掛止されている状態で差込部材13をインナーパネル15に対して相対移動(スライド)させた状態(図8(b)に相当する状態)では、上記第1実施形態と同様に、未だ取り外されていない掛止部材24の突起部24eとインナーパネル15とにより差込部材13の内縁部13cの下側部分が挟まれた状態となる。このように、本実施形態でも、エンジンカバー3が開状態のまま、ボンネット4を閉めようとした場合には、掛止部材24の突起部24eにより差込部材13が孔部15aから抜けるのが抑制される(抜け抑制部として機能)。
【0081】
従って、本実施形態でも、上記第1実施形態に係るエンジンカバー3よりも更に簡易な構成を以って、エンジンカバーが開状態であるにも拘らず、ユーザがボンネット4を誤って閉めることが抑制され、エンジンカバーの破損などが抑制される。
【0082】
[第3実施形態]
第3実施形態に係るエンジンカバーの構成について、図10を用い説明する。図10では、上記第1実施形態に係る構成との差異点である掛止部材34だけを図示している。また、詳細な図示及び説明を省略するが、本実施形態では、インナーパネル15に孔部15b,15cは設けられていない。
【0083】
図10(a)は、掛止部材34の構成を示し、図10(b)は、掛止部材34をインナーパネル15の孔部15aの下側縁部に掛止させた状態を示す。
【0084】
図10(a)に示すように、本実施形態に係る掛止部材34は、胴部34aと、首部34bと、頭部34cと、が一体に形成されてなる。胴部34aには、紐部材7を取り付けるための孔部34dが開けられている。首部34bは、胴部34a及び頭部34cよりも横方向のサイズが小さくなっている。これにより、胴部34aと頭部34cとの間には、溝部34eが形成されることになる。
【0085】
掛止部材34における溝部34eは、インナーパネル15の板厚よりも溝幅が大きくなっている。
【0086】
次に、図10(b)に示すように、本実施形態に係る掛止部材34については、差込部材13を差し込んだ孔部15aの隙間部分に頭部34cを差し込む。なお、掛止部材34における頭部34cのサイズは、孔部15aの上側縁部に差込部材13の溝部が掛合している状態において、孔部15aにおける下側の隙間から挿入できるサイズになっている。
【0087】
そして、掛止部材34は、エンジンカバー3の重量により下方に引っ張られるため、インナーパネル15の孔部15aにおける下側の縁部に対して掛止される。
【0088】
以上のように、本実施形態では、インナーパネル15に開けられた1つの孔部15aに対して差込部材14の頭部13bと掛止部材34の頭部34cとを差し込み、2つの部材13,34を孔部15aの縁部に掛止させることとしている。そしては、図10(b)に示すように、掛止部材34が挿入された状態では、矢印Dで指し示す隙間が狭いため、インナーパネル15に対して差込部材13を相対的にスライド移動させても、差込部材13が孔部15aから抜けるのを防止することができる。
【0089】
従って、本実施形態でも、上記第1実施形態に係るエンジンカバー3や上記第2実施形態に係るエンジンカバーよりも更に簡易な構成を以って、エンジンカバーが開状態であるにも拘らず、ユーザがボンネット4を誤って閉めることが抑制され、エンジンカバーの破損などが抑制される。
【0090】
[変形例]
上記第1実施形態、上記第2実施形態、及び上記第3実施形態では、ボンネットステー5の先端の差込部材13差込位置と、掛止部材14,24,34の掛止位置とを隣接した位置関係としたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。即ち、簡易な構成を以ってエンジンカバー3の開状態を保持するとの目的を達成するためだけであれば、互いに位置は離れていてもよい。
【0091】
また、上記第1実施形態、上記第2実施形態、及び上記第3実施形態では、開状態保持部として紐部材7と掛止部材14,24,34との組み合わせを以って構成することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、棒状部材の先端を鍵状に形成しておき、当該先端をボンネットのインナーパネルに掛止させる構成を採用することもできる。この構成では、1つの部材を以って開状態保持部を構成することが可能である。
【0092】
また、上記第1実施形態、上記第2実施形態、及び上記第3実施形態では、エンジン10の形式などについて特に言及しなかったが、種々のエンジン種類及び配置形態を採用することが可能である。例えば、エンジンの種類については、ガソリンエンジンであってもよいし、ディーゼルエンジンであってもよい。また、エンジン形式については、単気筒エンジンであってもよいし、多気筒エンジンであってもよい。また、多気筒エンジンの場合には、複数の気筒が直列配置された形態の他、V型あるいはW型とすることなども可能である。
【0093】
さらに、エンジンの配置形態についても、横置きであってもよいし、縦置きであってもよい。
【0094】
また、上記第1実施形態、上記第2実施形態、及び上記第3実施形態では、紐部材7の材質については、特に言及しなかったが種々の材料を採用することができる。例えば、耐熱性を考慮した樹脂製の紐を用いることができる。更に、金属製の撚りワイヤ線などを線状部材として用いることもできる。
【0095】
掛止部材14,24,34の材質についても、金属材料を採用することもできるし、樹脂材料を用いることもできる。樹脂材料を採用する場合には、掛止部材の形成を容易なものとすることが可能となる。
【0096】
また、上記第1実施形態、上記第2実施形態、及び上記第3実施形態では、掛止部材14,24,34を掛止させる対象として、インナーパネル15に開けた孔部15a,15b,15cとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、インナーパネル15の一部からフック状の突起を設けておき、当該突起に掛止部材を掛止させることとしてもよい。
【0097】
また、上記第3実施形態では、インナーパネル15の孔部15aに対して差込部材13と掛止部材34とを挿入し、互いの隙間を狭くすることにより差込部材13が抜け出てしまうのを抑制することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、掛止部材にラッチ機構を設けておき、差込部材との隙間を無くすようにすることも可能である。
【0098】
また、上記第1実施形態、上記第2実施形態、及び上記第3実施形態では、ボンネット4及びエンジンカバー3の開閉に係る各支点を車両後方側の部分に設けることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、ボンネット及びエンジンカバーの開閉に係る各支点を車両前方側の部分に設けることとしてもよい。
【0099】
また、上記第1実施形態、上記第2実施形態、及び上記第3実施形態では、エンジン10の上方を覆うエンジンカバー3だけが開閉可能であることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、サイドカバー11やバックカバー12についてもエンジンカバー3とともに、あるいは別途、上方へ引き上げることができるようにすることもできる。これにより、更にメインテナンス性を良好なものとすることができる。
【符号の説明】
【0100】
1 車両
3 エンジンカバー
4 ボンネット
5 ボンネットステー
7 紐部材
10 エンジン
13 差込部材
14,24,34 掛止部材
15 インナーパネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10