【実施例】
【0022】
図1に示すように、車両用表示装置10は、例えば、TFT(薄膜トランジスタ)モジュールからなる液晶表示モジュール11を中央に備え、この液晶表示モジュール11の左右にアナログゲージ12、13を備え、上辺14、左・右辺15、16にワーニング意匠17、18、19を備えているところの車載用のコンビネーションメータである。
【0023】
この例では、左のアナログゲージ12は、エンジン回転数を示す文字板21と指針22とを有する回転メータであり、右のアナログゲージ13は、車速を示す文字板23と指針24とを有するスピードメータである。
すなわち、コンビネーションメータは、自動車の運転席前方に、運転者から視認可能な位置に配置されており、走行距離や外気温等の車両情報等の各種情報を表示して運転者に視認させる表示装置である。
【0024】
図2及び
図3で車両用表示装置10の構成を説明する。理解を容易にするため、
図3を先に説明する。
図3に示すように、車両用表示装置10は、レンズ26と、見返し27と、液晶表示モジュール11と、インナーケース28と、制御配線基板29と、金属製配線基板31と、ケース体32と、カバー33とを備えている。
【0025】
レンズ26は、ワーニング意匠やゲージ表示領域やTFT表示領域を区切るための黒枠等の意匠が設けられた透光体であり、例えばアクリル樹脂や、ポリカーボネート等の薄板から形成される。ワーニング意匠(
図1、符号17〜19)は、レンズ26の上面又は下面に印刷等を施すことで形成しても良いし、予め印刷が施されているフィルムを射出成形の際にインサートして一体化しても良い。
【0026】
これら意匠やゲージやTFTなどの表示範囲以外の部分には、不透光性あるいは半透光性を有する着色層を設けると共に意匠は透光性を有する着色層で形成する。金属製配線基板31に備える光源34、35によって照らされると、透過輝度の違いにより、コントラストで表示される。すなわち、光源34、35は、インジケータ用の光学部品であり、LED(発光ダイオード)が好適である。
【0027】
見返し27は、レンズ26の外周及び背面を囲む部材である。この見返し27は、遮光性のある着色された合成樹脂、例えば黒色ABS樹脂等で形成され、レンズ26を粘着剤等により保持する。金属製配線基板31に備える光源34、35からの光を、見返し27に一体形成された隔壁によって仕切ることで、所望の範囲だけ発光するように構成されている。
【0028】
TFTモジュールからなる液晶表示モジュール11は、細かい内部構造は省略したが、液晶パネルと、バックライトと、液晶パネル及びバックライトを収納し支持するフレームと、このフレームの背面を覆う金属板37とを備え、この金属板37に設けた取付け部を通じて複数本のビスにより、インナーケース28と、制御配線基板29と、金属製配線基板31と、ケース体32とに共締めされる。
【0029】
そして、TFTモジュールからなる液晶表示モジュール11に可撓性回路基板の一端が接続され、この可撓性回路基板の他端が制御配線基板29に接続されることで、液晶表示モジュール11と制御配線基板29とが電気的に接続される。
【0030】
インナーケース28は、遮光性のある例えば白色の合成樹脂からなり、ワーニング用の光源34、35や、ゲージ用光源を囲うように、見返し27と金属製配線基板31との間に隔壁を形成し、それぞれの照明範囲を仕切っている。また、前面側に液晶表示モジュール11を収容する収容部38を備えている。
【0031】
制御配線基板29は、銅箔パターンが形成されたガラス繊維強化プラスチック(ガラスエポキシ樹脂)等からなる硬質配線板であり、コンビネーションメータ(車両用表示装置10)の主な機能回路が担持された機能回路基板である。
【0032】
後で、図に基づいて説明するが、制御配線基板29には、車両からの電気信号に基づいて光源34、35を点灯するための制御回路や、車両側と通信する通信回路や、マイクロコンピュータや光源34、35を駆動する電源回路等の諸回路が含まれ、TFTモジュール(液晶表示モジュール11)に画像を描かせるためのIC49、その他のデバイス57、58が実装されている。
つまり、実装されるデバイスには、表示制御IC等の電磁ノイズを発生したり、熱を発生するものが含まれている。
【0033】
金属製配線基板31は、ワーニング用の光源34、35や、アナログゲージ用光源や、ムーブメント39、39など、コンビネーションメータのデザインに基づく設計要求によって必要な部品が実装される、デザイン回路基板である。金属製配線基板31は、制御配線基板29と接続部材を介して電気的に接続され、所望の位置に配置されたワーニング用の光源34、35やゲージ用光源等を、制御配線基板29からの電気信号に基づいて点灯、消灯させるなどするものである。
【0034】
金属製配線基板31は、ワーニング意匠(
図1、符号17〜19)を、照光する光源34、35等を左右辺及び上辺に実装し、そのための抵抗を実装し、場合によっては光源駆動回路の一部を実装する。
【0035】
アナログゲージ12、13は、指針22、24、文字板21、23、カラー、導光体などから構成され、金属製配線基板31に実装されるムーブメント39、39により指針22、24が回動され、車速などの指示値を示す。
【0036】
図4に示すように、金属製配線基板31は、好ましくは、金属製ベース41と、この金属製ベース41の片面又は両面に絶縁層42を介して被せられ回路を構成する銅箔層43とで構成される。金属製ベース41は、0.3mm程度の厚さのアルミニウム板が好適である。アルミニウム板は、炭素鋼板に比較して軽量で、熱伝導性が大きい。
【0037】
金属製ベース41は、プレス等による塑性変形が可能であり、この例では、
図3に示すように、制御配線基板29を収容する凹部44を一体形成したと共に制御配線基板29に向かって突出する凸部45を一体形成した。
【0038】
図3にて、ケース体32は、遮光性のある例えば黒色の合成樹脂等からなり、バスタブ状に形成された収納部には、金属製配線基板31と制御配線基板29とインナーケース28と液晶表示モジュール11とが収納される。そして、ケース体32の外縁に沿って複数の締結部が設けられていて、見返し27に設けられる締結ボスにスクリュー固定され、収納部に収納される金属製配線基板31と制御配線基板29とインナーケース28と液晶表示モジュール11とを、見返し27とで挟み込むことで、固定、保持する。
【0039】
カバー33は合成樹脂等からなるパネル状の部材であり、メータ背面側からケース体32にフックや両面テープ等で固定される。
【0040】
以上を組み合わせると、
図2に示す車両用表示装置10が得られる。
すなわち、
図2に示すように、車両用表示装置10は、レンズ26と、見返し27と、液晶表示モジュール11と、インナーケース28と、制御配線基板29と、金属製配線基板31と、ケース体32と、カバー33とを備えている。
【0041】
金属製配線基板31は、制御配線基板29に実装された部品57、58等が造る凹凸に沿って変形しており、制御配線基板29に近接して配置される。結果、車両表示装置10を薄型にすることができる。
【0042】
次に、制御配線基板29及び金属製配線基板31のシステムブロック構成を詳しく説明する。
図5に示すように、車両用表示装置10は、車両側から、画像表示を指示する表示命令コマンドを、信号線b1経由により、制御配線基板29の通信回路47で受信する。通信回路47は、信号レベルを変換し、表示命令コマンドを、マイクロコンピュータ(以下、マイコンと略記する。)48へ送信する。表示命令コマンドを受信したマイコン48は、表示命令情報に基づいて1画面の表示内容を決定する。
【0043】
なお、表示命令情報は、1画面の表示命令に限らず、アニメーション画面のような連続する画面表示の命令や、MPEGやMOVなどの動画ファイル、ナビゲーション情報やカメラ画像などのビデオ信号等の、表示命令であってもよく、その種類や形態は任意である。
【0044】
マイコン48は、実行中のプログラム処理の中で、命令処理の優先順位を確認し、適正なタイミングで、信号線b2を経由し、表示命令コマンドを表示制御IC49へ送信する。
なお、信号線b2の通信形式は、表示制御IC49にCPUが内蔵されている場合が一般的であることから、シリアル通信を使用することが多い。表示制御IC49にCPUが内蔵されていない場合は、マイコン48の外部パスに接続され、命令を受けるようにしても良い。
【0045】
表示命令コマンドを受信した表示制御IC49は、1画面を構成するために必要な画像ブロックデータを不揮発性メモリ51から読み込み、揮発性メモリ52へ転送する。
表示制御IC49は、揮発性メモリ52を使って、画像ブロックを元に、1画面分の絵データを作成する。表示制御IC49は、揮発性メモリ52で一画面分の絵データの完成が確認できたところで、描画タイミングに合わせて、信号線b3経由で液晶表示モジュール11に転送する。
【0046】
MPEGやMOVなどの動画ファイルの表示命令は、データが不揮発性メモリ51に保存されており、揮発性メモリ52に一度データが展開された後、表示制御IC49で液晶表示モジュール11へデータを転送する。画像データの一括転送か部分転送かは、表示制御IC49で受けた表示命令コマンド内容に従う。
【0047】
ナビゲーション情報やカメラ画像などの画像データの表意命令は、信号線(ビデオ信号)b6からその画像データを表示IC49へ取り込み場合が有り、表示制御IC49が、表示命令コマンドに従って、適切な処理で画像を液晶表示モジュール11へ転送する。
【0048】
次に、車両速度などの指示値を指示するアナログゲージや、上辺及び左・右辺に配置された光源の点灯によって警告情報等を示すワーニング類の制御について説明する。
【0049】
車両側から車両速度、エンジン回転数、水温レベル、燃料レベル等のメモリ位置を指示する命令コマンドが信号線b1を経由して、制御配線基板29の通信回路47へ伝達される。命令コマンドを受信した通信回路47は、信号レベルを変換し、指示命令コマンドを、マイコン48へ送信する。指示命令コマンドを受信したマイコン48は、指示情報を信号線b4を経由して、指針ドライバ53へ伝達する。
【0050】
指針ドライバ53は、指定されたメモリ位置まで指針22及び指針24を駆動する。ワーニング類を示す光源34、35の点灯/点滅も同様に、車両側からの命令コマンドにより、通信回路47→マイコン48→信号線b5→シフトレジスタ54を経由し、光源34及び光源35を制御する。
【0051】
制御配線基板29に実装された表示制御IC49は、使用時に熱を発する。この熱を効率よく排出し、温度上昇を防止することが、本発明の目的であり、その構造を次に説明する。
図2において、制御配線基板29に実装された表示制御IC49は、金属製配線基板31に凸部45を介して直接に密着しており、表示制御IC49で発生した熱は、金属製配線基板31を経由して拡散される。
【0052】
なお、金属製配線基板31の変形によって、表示制御IC49に押し当てるようにして熱伝達可能な当接状態を保持できる。
また、表示制御IC49は、金属製配線基板31に直接に密着させる他、熱伝導率のよい良伝熱材56を介して金属製配線基板31に当てるようにしても良い。良伝熱材56は、熱伝導率がよく、片面又は両面に粘着層が付いている硬質シートや軟質シートが推奨される。
また、良伝熱材56に軟質シート等の弾性材を適用することによって、車両の走行に伴
【0053】
金属製配線基板31に直接又は間接的に密着させる部品は、表示制御IC49の他、表示制御IC49周辺の発熱部品57や、電源回路等の発熱部品58が対象となる。
【0054】
このような構造を採用することで、制御配線基板29に実装された発熱部品が発する熱は、金属製配線基板31により拡散される。結果、各部品のパッケージ温度の上昇を抑えることができ、各部品の安定的動作を保持することができる。
【0055】
熱拡散について、
図6に基づいて、説明を補足する。
図6に示すように、車両用表示装置10は、例えば車両用のインストルメントパネル60の段部に取付けられる。車両用表示装置10のケース体32は、下部に上通気孔61及び下通気孔62を備え、中央から上部までがカバー33で覆われている。カバー33は意匠面を構成する。
【0056】
車両のインストルメントパネル60の段部は、下段63と、この下段63より上位にある上段64と、下段63と上段64の間に設けられる開口65とからなる。
例えば、下段63に、見返し27を当て、開口65に、上通気孔61及び下通気孔62を挿入し、上段64にカバー33の下辺を当てる。
【0057】
乗員は、下段63越しにレンズ26が視認できる。また、意匠面を構成するカバー33が上段64上に存在するため、通行人らは、フロントガラスを通して綺麗なカバー33を視認することとなり、美観性が保たれる。
【0058】
制御配線基板29に実装された表示制御IC49が金属製配線基板31の凸部45に密着している。表示制御IC49から熱が金属製配線基板31に伝えられ拡散(板内伝導)する。一方、比較的冷たい空気66が下通気孔62からケース体32内へ進入する。進入した空気66は、金属製配線基板31に接触し、金属製配線基板31の熱を奪いながら上昇する。温められた空気67は、自然対流の原理に基づいて上昇し、上部開口である上通気孔61から流出する。すなわち、空気66、67の循環により、効率よく金属製配線基板31を冷却し、発熱部品49、57、58等の温度上昇を防止する。
【0059】
尚、本実施形態の車両用表示装置10は、車載用のコンビネーションメータに好適あるが、他の用途の車両用表示装置や汎用のメータに適用することは差し支えない。