特許第6447906号(P6447906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社テージーケーの特許一覧

<>
  • 特許6447906-膨張弁 図000002
  • 特許6447906-膨張弁 図000003
  • 特許6447906-膨張弁 図000004
  • 特許6447906-膨張弁 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6447906
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】膨張弁
(51)【国際特許分類】
   F25B 41/06 20060101AFI20181220BHJP
   F16K 31/68 20060101ALI20181220BHJP
   F16K 47/02 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
   F25B41/06 L
   F16K31/68 S
   F16K47/02 D
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-220978(P2014-220978)
(22)【出願日】2014年10月30日
(65)【公開番号】特開2016-90067(P2016-90067A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133652
【氏名又は名称】株式会社テージーケー
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】特許業務法人インターブレイン
(74)【代理人】
【識別番号】100120536
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】水村 恵太
(72)【発明者】
【氏名】城之内 隆史
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−245921(JP,A)
【文献】 特開2014−173807(JP,A)
【文献】 特開2003−130501(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0045264(US,A1)
【文献】 特開2001−141335(JP,A)
【文献】 米国特許第03537645(US,A)
【文献】 実開平04−070968(JP,U)
【文献】 特開2012−087966(JP,A)
【文献】 特開2010−048529(JP,A)
【文献】 特開2006−105474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 41/06
F16K 31/68
F16K 47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍サイクルに設けられ、熱交換器を経て流入した冷媒を内部の弁部を通過させることにより絞り膨張させてエバポレータへ供給し、前記エバポレータから戻ってきた冷媒の圧力と温度を感知して前記弁部の開度を制御するとともに、その冷媒をコンプレッサへ向けて導出する膨張弁であって、
ボディを貫通するように形成され、一端側に前記熱交換器からの冷媒を導入するための第1導入ポートが設けられる一方、他端側に冷媒を前記エバポレータへ導出するための第1導出ポートが設けられた第1の通路と、
前記第1の通路の中間部に設けられた弁孔と、
前記弁孔に接離して前記弁部を開閉する弁体と、
前記第1の通路とは別に前記ボディを貫通するように形成され、一端側に前記エバポレータから戻ってきた冷媒を導入するための第2導入ポートが設けられる一方、他端側に冷媒を前記コンプレッサへ導出するための第2導出ポートが設けられた第2の通路と、
前記ボディの前記第2の通路に対して前記第1の通路とは反対側に設けられ、前記第2の通路と連通する開口部を封止するように前記ボディに取り付けられ、前記第2の通路を流れる冷媒の温度と圧力を感知して動作するパワーエレメントと、
一端側が前記第2の通路を横断し前記開口部を貫通して前記パワーエレメントに接続されるとともに、他端側が前記第1の通路と前記第2の通路との間の第1の隔壁および前記弁孔を貫通して前記弁体に接続され、前記パワーエレメントの駆動力を前記弁体に伝達するシャフトと、
を備え、
前記パワーエレメントは、
第1ハウジングと、
前記第1ハウジングに対向配置され、前記第1ハウジングとは反対側にて前記ボディに固定されるとともに前記第2の通路に連通する第2ハウジングと、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとにより囲まれる空間を仕切るように配置され、前記第1ハウジング側の密閉空間に所定の感温用ガスを封入させた状態で保持するダイヤフラムと、
前記第2ハウジング内で前記ダイヤフラムに当接するように配置され、前記ダイヤフラムとは反対側面に前記シャフトが当接するディスクと、
を含み、
前記ボディと前記第2ハウジングと前記ダイヤフラムとにより囲まれる空間が、前記開口部よりも大きな断面を有し、前記開口部を介して前記第2の通路に連通し、前記第2の通路を流れる冷媒の一部を導入出させる感温室を形成し、
前記ボディにおける前記第2の通路と前記感温室との間の第2の隔壁に、前記シャフトよりも下流側にて前記感温室の下流側端部の壁面に沿って前記感温室と前記第2の通路とを連通させる連通孔が設けられ、前記第2の通路から前記感温室に導入された冷媒を前記連通孔を介して前記第2の通路の下流側に導出可能に構成され、
前記第2ハウジングと前記ダイヤフラムと前記第2の隔壁とに囲まれた空間により前記感温室が形成され、
前記開口部および前記連通孔がそれぞれ前記第2の隔壁に加工された孔からなり、
前記開口部の開口面積が、前記連通孔の開口面積よりも大きく、
前記開口部が前記第2の通路から前記感温室への冷媒の入口を構成し、前記連通孔が前記感温室から前記第2の通路への冷媒の出口を構成することを特徴とする膨張弁。
【請求項2】
前記連通孔が、前記第2の隔壁において前記開口部と離隔して形成された貫通孔からなることを特徴とする請求項1に記載の膨張弁。
【請求項3】
冷凍サイクルに設けられ、熱交換器を経て流入した冷媒を内部の弁部を通過させることにより絞り膨張させてエバポレータへ供給し、前記エバポレータから戻ってきた冷媒の圧力と温度を感知して前記弁部の開度を制御するとともに、その冷媒をコンプレッサへ向けて導出する膨張弁であって、
ボディを貫通するように形成され、一端側に前記熱交換器からの冷媒を導入するための第1導入ポートが設けられる一方、他端側に冷媒を前記エバポレータへ導出するための第1導出ポートが設けられた第1の通路と、
前記第1の通路の中間部に設けられた弁孔と、
前記弁孔に接離して前記弁部を開閉する弁体と、
前記第1の通路とは別に前記ボディを貫通するように形成され、一端側に前記エバポレータから戻ってきた冷媒を導入するための第2導入ポートが設けられる一方、他端側に冷媒を前記コンプレッサへ導出するための第2導出ポートが設けられた第2の通路と、
前記ボディの前記第2の通路に対して前記第1の通路とは反対側に設けられ、前記第2の通路と連通する開口部を封止するように前記ボディに取り付けられ、前記第2の通路を流れる冷媒の温度と圧力を感知して動作するパワーエレメントと、
一端側が前記第2の通路を横断して前記パワーエレメントに接続されるとともに、他端側が前記第1の通路と前記第2の通路との間の第1の隔壁および前記弁孔を貫通して前記弁体に接続され、前記パワーエレメントの駆動力を前記弁体に伝達するシャフトと、
を備え、
前記パワーエレメントは、
第1ハウジングと、
前記第1ハウジングに対向配置され、前記第1ハウジングとは反対側にて前記ボディに固定されるとともに前記第2の通路に連通する第2ハウジングと、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとにより囲まれる空間を仕切るように配置され、前記第1ハウジング側の密閉空間に所定の感温用ガスを封入させた状態で保持するダイヤフラムと、
前記第2ハウジング内で前記ダイヤフラムに当接するように配置され、前記ダイヤフラムとは反対側面に前記シャフトが当接するディスクと、
を含み、
前記ボディと前記第2ハウジングと前記ダイヤフラムとにより囲まれる空間が、前記開口部よりも大きな断面を有し、前記開口部を介して前記第2の通路に連通し、前記第2の通路を流れる冷媒の一部を導入出させる感温室を形成し、
前記第2の通路と前記感温室との間の第2の隔壁に、前記シャフトよりも下流側にて前記感温室の下流側端部の壁面に沿って前記感温室と前記第2の通路とを連通させる連通孔が設けられ、前記第2の通路から前記感温室に導入された冷媒を前記連通孔を介して前記第2の通路の下流側に導出可能に構成され、
前記連通孔が、前記第2の隔壁において前記開口部と一体に形成され、前記シャフトの下流側にて前記開口部と連続的に開口することを特徴とする膨張弁。
【請求項4】
冷凍サイクルに設けられ、熱交換器を経て流入した冷媒を内部の弁部を通過させることにより絞り膨張させてエバポレータへ供給し、前記エバポレータから戻ってきた冷媒の圧力と温度を感知して前記弁部の開度を制御するとともに、その冷媒をコンプレッサへ向けて導出する膨張弁であって、
ボディを貫通するように形成され、一端側に前記熱交換器からの冷媒を導入するための第1導入ポートが設けられる一方、他端側に冷媒を前記エバポレータへ導出するための第1導出ポートが設けられた第1の通路と、
前記第1の通路の中間部に設けられた弁孔と、
前記弁孔に接離して前記弁部を開閉する弁体と、
前記第1の通路とは別に前記ボディを貫通するように形成され、一端側に前記エバポレータから戻ってきた冷媒を導入するための第2導入ポートが設けられる一方、他端側に冷媒を前記コンプレッサへ導出するための第2導出ポートが設けられた第2の通路と、
前記ボディの前記第2の通路に対して前記第1の通路とは反対側に設けられ、前記第2の通路と連通する開口部を封止するように前記ボディに取り付けられ、前記第2の通路を流れる冷媒の温度と圧力を感知して動作するパワーエレメントと、
一端側が前記第2の通路を横断し前記開口部を貫通して前記パワーエレメントに接続されるとともに、他端側が前記第1の通路と前記第2の通路との間の第1の隔壁および前記弁孔を貫通して前記弁体に接続され、前記パワーエレメントの駆動力を前記弁体に伝達するシャフトと、
を備え、
前記パワーエレメントは、
第1ハウジングと、
前記第1ハウジングに対向配置され、前記第1ハウジングとは反対側にて前記ボディに固定されるとともに前記第2の通路に連通する第2ハウジングと、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとにより囲まれる空間を仕切るように配置され、前記第1ハウジング側の密閉空間に所定の感温用ガスを封入させた状態で保持するダイヤフラムと、
前記第2ハウジング内で前記ダイヤフラムに当接するように配置され、前記ダイヤフラムとは反対側面に前記シャフトが当接するディスクと、
を含み、
前記ボディと前記第2ハウジングと前記ダイヤフラムとにより囲まれる空間が、前記開口部よりも大きな断面を有し、前記開口部を介して前記第2の通路に連通し、前記第2の通路を流れる冷媒の一部を導入出させる感温室を形成し、
前記ボディにおける前記第2の通路と前記感温室との間の第2の隔壁に、前記シャフトよりも下流側にて前記開口部と離隔して形成され、前記感温室と前記第2の通路とを連通させる連通孔が設けられ、前記感温室に導入された冷媒を前記連通孔を介して前記第2の通路の下流側に導出可能に構成され、
前記第2ハウジングと前記ダイヤフラムと前記第2の隔壁とに囲まれた空間により前記感温室が形成され、
前記開口部および前記連通孔がそれぞれ前記第2の隔壁に加工された孔からなり、
前記開口部の開口面積が、前記連通孔の開口面積よりも大きく、
前記開口部が前記第2の通路から前記感温室への冷媒の入口を構成し、前記連通孔が前記感温室から前記第2の通路への冷媒の出口を構成することを特徴とする膨張弁。
【請求項5】
冷凍サイクルに設けられ、熱交換器を経て流入した冷媒を内部の弁部を通過させることにより絞り膨張させてエバポレータへ供給し、前記エバポレータから戻ってきた冷媒の圧力と温度を感知して前記弁部の開度を制御するとともに、その冷媒をコンプレッサへ向けて導出する膨張弁であって、
ボディを貫通するように形成され、一端側に前記熱交換器からの冷媒を導入するための第1導入ポートが設けられる一方、他端側に冷媒を前記エバポレータへ導出するための第1導出ポートが設けられた第1の通路と、
前記第1の通路の中間部に設けられた弁孔と、
前記弁孔に接離して前記弁部を開閉する弁体と、
前記第1の通路とは別に前記ボディを貫通するように形成され、一端側に前記エバポレータから戻ってきた冷媒を導入するための第2導入ポートが設けられる一方、他端側に冷媒を前記コンプレッサへ導出するための第2導出ポートが設けられた第2の通路と、
前記ボディの前記第2の通路に対して前記第1の通路とは反対側に設けられ、前記第2の通路と連通する開口部を封止するように前記ボディに取り付けられ、前記第2の通路を流れる冷媒の温度と圧力を感知して動作するパワーエレメントと、
一端側が前記第2の通路を横断して前記パワーエレメントに接続されるとともに、他端側が前記第1の通路と前記第2の通路との間の第1の隔壁および前記弁孔を貫通して前記弁体に接続され、前記パワーエレメントの駆動力を前記弁体に伝達するシャフトと、
を備え、
前記パワーエレメントは、
第1ハウジングと、
前記第1ハウジングに対向配置され、前記第1ハウジングとは反対側にて前記ボディに固定されるとともに前記第2の通路に連通する第2ハウジングと、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとにより囲まれる空間を仕切るように配置され、前記第1ハウジング側の密閉空間に所定の感温用ガスを封入させた状態で保持するダイヤフラムと、
前記第2ハウジング内で前記ダイヤフラムに当接するように配置され、前記ダイヤフラムとは反対側面に前記シャフトが当接するディスクと、
を含み、
前記ボディと前記第2ハウジングと前記ダイヤフラムとにより囲まれる空間が、前記開口部よりも大きな断面を有し、前記開口部を介して前記第2の通路に連通し、前記第2の通路を流れる冷媒の一部を導入出させる感温室を形成し、
前記第2の通路と前記感温室との間の第2の隔壁に、前記感温室と前記第2の通路とを連通させる連通孔が設けられ、
前記連通孔は、前記第2の通路の上下流方向に沿う開口長さが、その上下流方向と直角方向の開口幅よりも大きくされ
前記開口部の内径が、前記連通孔の開口幅よりも大きくされていることを特徴とする膨張弁。
【請求項6】
前記ボディの端部に凹部が設けられ、その凹部の底部に前記開口部が設けられ、
前記第2ハウジングの開口端部を前記凹部に挿通するようにして前記パワーエレメントが前記ボディに組み付けられ、
前記凹部と前記第2ハウジングと前記ダイヤフラムとにより囲まれる空間が、前記感温室を形成していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の膨張弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は膨張弁に関し、特に冷凍サイクルに好適な温度式膨張弁に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置の冷凍サイクルには一般に、循環する冷媒を圧縮するコンプレッサ、圧縮された冷媒を凝縮するコンデンサ、凝縮された冷媒を気液に分離するレシーバ、分離された液冷媒を絞り膨張させて霧状にして送出する膨張弁、その霧状の冷媒を蒸発させてその蒸発潜熱により車室内の空気を冷却するエバポレータが設けられている。膨張弁としては、エバポレータから導出された冷媒が所定の過熱度を有するように、エバポレータの出口側の冷媒の温度および圧力を感知して弁部を開閉し、エバポレータへ送出する冷媒の流量を制御する温度式膨張弁が用いられる。
【0003】
膨張弁のボディには、レシーバからエバポレータへ向かう冷媒を通過させる第1の通路と、エバポレータから戻ってきた冷媒を通過させてコンプレッサへ導出する第2の通路とが形成される。第1の通路の中間部には弁孔が形成され、その弁孔に着脱して弁部を開閉する弁体が配設されている。弁体は、弁孔に接離し、エバポレータへ向かう冷媒の流量を調整する。また、ボディの一端には、第2の通路を流れる冷媒の温度および圧力を感知して弁部の開度を制御するパワーエレメントが設けられる。パワーエレメントの駆動力は、長尺状のシャフトを介して弁体に伝達される。シャフトの一端側は、第2の通路を横断してパワーエレメントに接続される。シャフトの他端側は、第1の通路と第2の通路との隔壁に形成された挿通孔および弁孔を貫通して弁体に接続される。
【0004】
パワーエレメントは、所定の感温用ガスが封入された密閉空間と、第2の通路に連通する開放空間を内部に有し、それらの空間がダイヤフラムにより仕切られている。パワーエレメントとボディとに囲まれる空間により感温室が形成され、第2の通路を流れる冷媒の一部が出入りする。そして、感温室に導入された冷媒の温度および圧力に応じて密閉空間が膨張又は収縮することでダイヤフラムが変位し、その変位が駆動力としてシャフトに伝達される。エバポレータの出口の冷媒温度が低くなると密閉空間が収縮するため、弁部が閉弁方向に作動する。逆に、その冷媒温度が高くなると密閉空間が膨張するため、弁部が開弁方向に作動する。このようなパワーエレメントの自律的な作動により、弁部の開度が調整され、エバポレータ出口の冷媒の過熱度が適正に制御されるようになる。
【0005】
ところで、このような膨張弁においては、冷凍サイクルの低負荷時にエバポレータの出口から液冷媒が送出されることがある。液冷媒はガス冷媒に比べて熱伝達の時定数が小さいため、パワーエレメント内に滞留するようなことがあると、弁部が頻繁に開閉作動するハンチングを生じさせる可能性がある。そこで、このようなハンチングを抑制するために、感温室と第2の通路とを小径の均圧穴にて連通させ、感温室への液冷媒の導入を規制する技術も提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−245921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の構成によれば、感温室への冷媒の導入そのものが規制されることになるため、パワーエレメントが正確な温度を感知できず、いわゆる感温エラーを生じさせる可能性がある。それにより、膨張弁本来の機能を発揮させることが困難となることが懸念される。
【0008】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、冷凍サイクルの低負荷時においても制御ハンチングを防止しつつ、良好に機能を発揮することが可能な温度式膨張弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様は、冷凍サイクルに設けられ、熱交換器を経て流入した冷媒を内部の弁部を通過させることにより絞り膨張させてエバポレータへ供給し、エバポレータから戻ってきた冷媒の圧力と温度を感知して弁部の開度を制御するとともに、その冷媒をコンプレッサへ向けて導出する膨張弁である。この膨張弁は、ボディを貫通するように形成され、一端側に熱交換器からの冷媒を導入するための第1導入ポートが設けられる一方、他端側に冷媒をエバポレータへ導出するための第1導出ポートが設けられた第1の通路と、第1の通路の中間部に設けられた弁孔と、弁孔に接離して弁部を開閉する弁体と、第1の通路とは別にボディを貫通するように形成され、一端側にエバポレータから戻ってきた冷媒を導入するための第2導入ポートが設けられる一方、他端側に冷媒をコンプレッサへ導出するための第2導出ポートが設けられた第2の通路と、ボディの第2の通路に対して第1の通路とは反対側に設けられ、第2の通路と連通する開口部を封止するようにボディに取り付けられ、第2の通路を流れる冷媒の温度と圧力を感知して動作するパワーエレメントと、一端側が第2の通路を横断してパワーエレメントに接続されるとともに、他端側が第1の通路と第2の通路との間の第1の隔壁および弁孔を貫通して弁体に接続され、パワーエレメントの駆動力を弁体に伝達するシャフトと、を備える。
【0010】
パワーエレメントは、第1ハウジングと、第1ハウジングに対向配置され、第1ハウジングとは反対側にてボディに固定されるとともに第2の通路に連通する第2ハウジングと、第1ハウジングと第2ハウジングとにより囲まれる空間を仕切るように配置され、第1ハウジング側の密閉空間に所定の感温用ガスを封入させた状態で保持するダイヤフラムと、第2ハウジング内でダイヤフラムに当接するように配置され、ダイヤフラムとは反対側面にシャフトが当接するディスクと、を含む。
【0011】
ボディと第2ハウジングとダイヤフラムとにより囲まれる空間が、上記開口部よりも大きな断面を有し、その開口部を介して第2の通路に連通し、第2の通路を流れる冷媒の一部を導入出させる感温室を形成する。第2の通路と感温室との間の第2の隔壁には、シャフトよりも下流側にて感温室と第2の通路とを連通させる連通孔が設けられる。それにより、第2の通路から感温室に導入された冷媒を感温室の下流側端部の壁面に沿って連通孔に導き、第2の通路の下流側に導出可能に構成されている。
【0012】
この態様によると、第2の通路を流れる冷媒を開口部を介して感温室に積極的に導入する一方で、感温室の冷媒を連通孔を介して第2の通路の下流側に積極的に導出することができる。すなわち、感温室へ導入された冷媒は、その感温室の下流側端部の壁面に沿って連通孔に導かれ、第2の通路の下流側に導出される。これにより、仮に液冷媒が感温室へ導入されたとしても、その液分が感温室内に滞留することが防止又は抑制され、パワーエレメントにおいて熱伝達の時定数が過小となることを防止できる。それにより、制御ハンチングを防止又は抑制することができる。一方、冷媒が感温室に積極的に導入されるため、パワーエレメントがエバポレータの出口温度を正確に感知することができ、膨張弁本来の機能を良好に発揮させることができる。
【0013】
本発明の別の態様も膨張弁である。この膨張弁は、第2の隔壁に、シャフトよりも下流側にて開口部と離隔して形成され、感温室と第2の通路とを連通させる連通孔が設けられ、感温室に導入された冷媒を第2の通路の下流側に導出可能に構成されている。この態様によると、感温室へ導入された冷媒は、その感温室の下流側に導かれ、連通孔を介して第2の通路の下流側に導出される。これにより、上記態様と同様に、制御ハンチングを防止又は抑制することができる。一方、冷媒が感温室に積極的に導入されるため、パワーエレメントがエバポレータの出口温度を正確に感知することができ、膨張弁本来の機能を良好に発揮させることができる。
【0014】
本発明のさらに別の態様も膨張弁である。この膨張弁は、第2の隔壁に感温室と第2の通路とを連通させる連通孔が設けられる。その連通孔は、第2の通路の上下流方向に沿う開口長さが、その上下流方向と直角方向の開口幅よりも大きくされている。この態様によると、連通孔が第2の通路の上下流方向に沿って大きくされることで、液冷媒を感温室へ積極的に導入するとともに、感温室内の冷媒を第2の通路の下流側へ導出し易くなる。これにより、上記態様と同様に制御ハンチングを防止又は抑制でき、膨張弁本来の機能を良好に発揮させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、冷凍サイクルの低負荷時においても制御ハンチングを防止しつつ、良好に機能を発揮することが可能な温度式膨張弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る膨張弁の断面図である。
図2】パワーエレメントの感温室およびその周辺の構造を表す図である。
図3】変形例に係る感温室およびその周辺の構造を表す図である。
図4】他の変形例に係る感温室およびその周辺の構造を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。また、以下の実施形態およびその変形例について、ほぼ同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜省略することがある。
【0018】
本実施形態は、本発明の膨張弁を自動車用空調装置の冷凍サイクルに適用される温度式膨張弁として具体化している。この冷凍サイクルには、循環する冷媒を圧縮するコンプレッサ、圧縮された冷媒を凝縮するコンデンサ、凝縮された冷媒を気液に分離するレシーバ、分離された液冷媒を絞り膨張させて霧状にして送出する膨張弁、その霧状の冷媒を蒸発させてその蒸発潜熱により車室内の空気を冷却するエバポレータが設けられているが、膨張弁以外の詳細な説明については省略する。
【0019】
図1は、実施形態に係る膨張弁の断面図である。
膨張弁1は、アルミニウム合金からなる素材を押出成形して得た部材に所定の切削加工を施して形成されたボディ2を有する。このボディ2は角柱状をなし、その内部には冷媒の絞り膨張を行う弁部が設けられている。ボディ2の長手方向の端部には、感温部として機能するパワーエレメント3が設けられている。
【0020】
ボディ2の側部には、レシーバ側(コンデンサ側)から高温・高圧の液冷媒を導入する導入ポート6、膨張弁1にて絞り膨張された低温・低圧の冷媒をエバポレータへ向けて導出する導出ポート7、エバポレータにて蒸発された冷媒を導入する導入ポート8、膨張弁1を通過した冷媒をコンプレッサ側へ導出する導出ポート9が設けられている。導入ポート6と導出ポート9との間には、図示しない配管取付用のスタッドボルトを植設可能とするためのねじ穴10が形成されている。各ポートには、配管の継手が接続される。
【0021】
膨張弁1においては、導入ポート6、導出ポート7およびこれらをつなぐ冷媒通路により第1の通路13が構成されている。第1の通路13は、その中間部に弁部が設けられており、導入ポート6から導入された冷媒をその弁部にて絞り膨張させて霧状にし、導出ポート7からエバポレータへ向けて導出する。一方、導入ポート8、導出ポート9およびこれらをつなぐ冷媒通路により第2の通路14(「戻り通路」に該当する)が構成されている。第2の通路14は、ストレートに延びており、導入ポート8から冷媒を導入して導出ポート9からコンプレッサへ向けて導出する。
【0022】
ボディ2における第1の通路13の中間部には弁孔16が設けられ、その弁孔16の導入ポート6側の開口端縁により弁座17が形成されている。弁座17に導入ポート6側から対向するように弁体18が配置されている。弁体18は、弁座17に着脱して弁部を開閉する球状のボール弁体と、ボール弁体を下方から支持する弁体受けとを接合して構成されている。
【0023】
ボディ2の下端部には、第1の通路13に直交するように内外を連通させる連通孔19が形成されており、その上半部により弁体18を収容する弁室40が形成されている。弁室40は、その上端部にて弁孔16に連通し、側部にて小孔42を介して導入ポート6に連通しており、第1の通路13の一部を構成している。小孔42は、第1の通路13の通路断面が局部的に狭小化されて形成され、弁室40に開口している。
【0024】
連通孔19の下半部には、その連通孔19を外部から封止するようにアジャストねじ20が螺着されている。弁体18(正確には弁体受け)とアジャストねじ20との間には、弁体18を閉弁方向に付勢するスプリング23が介装されている。アジャストねじ20のボディ2への螺入量を調整することで、スプリング23の荷重を調整することができる。アジャストねじ20とボディ2との間には、冷媒の漏洩を防止するためのOリング24が介装されている。
【0025】
一方、ボディ2の上端部には凹部50(有底の取付孔)が設けられ、凹部50の底部に内外を連通させる開口部52が設けられている。パワーエレメント3は、その下部が凹部50に螺着され、開口部52を封止するようにボディ2に組み付けられている。凹部50とパワーエレメント3との間の空間により、感温室54が形成されている。凹部50の下流側端部には、第2の通路14の下流側と感温室54とを連通させる連通孔56が設けられている。
【0026】
パワーエレメント3は、アッパーハウジング26とロアハウジング27との間にダイヤフラム28を挟むように介装し、そのロアハウジング27側にディスク29を配置して構成されている。アッパーハウジング26はステンレス材を有蓋状にプレス成形して得られ、「第1ハウジング」として機能する。ロアハウジング27は、ステンレス材を段付円筒状にプレス成形して得られ、「第2ハウジング」として機能する。ディスク29は、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金からなり、両ハウジングよりも熱伝導率が大きい。ダイヤフラム28は、本実施形態では金属薄板からなるが、ポリイミドフィルム等の薄膜状の樹脂材からなるものでもよい。
【0027】
パワーエレメント3は、アッパーハウジング26とロアハウジング27との互いの開口部を突き合わせ、その外縁部にダイヤフラム28の外縁部を挟むようにして組み付け、両ハウジングの接合部に沿って外周溶接が施されることにより容器状に形成されている。パワーエレメント3の内部は、ダイヤフラム28により密閉空間S1と開放空間S2とに仕切られ、その密閉空間S1には感温用のガスが封入されている。開放空間S2は、開口部52を介して第2の通路14に連通する。パワーエレメント3とボディ2との間には、冷媒の漏洩を防止するためのOリング30が介装されている。第2の通路14を通過する冷媒の圧力および温度は、開口部52とディスク29に設けられた溝部53を通ってダイヤフラム28の下面に伝達される。また、冷媒の温度については、主に熱伝導率が大きいディスク29を介してダイヤフラム28に伝達される。
【0028】
ボディ2の中央部には、第1の通路13と第2の通路14との間の隔壁35(「第1の隔壁」に対応する)を貫通するように段付孔34(「挿通孔」として機能する)が設けられており、この段付孔34の小径部44には長尺状のシャフト33が摺動可能に挿通されている。シャフト33は、金属製(例えばステンレス製)のロッドであり、ディスク29と弁体18との間に介装されている。これにより、ダイヤフラム28の変位よる駆動力が、ディスク29およびシャフト33を介して弁体18へ伝達され、弁部が開閉される。
【0029】
シャフト33の上半部は第2の通路14を横断し、下半部が段付孔34の小径部44に摺動可能に貫通している。段付孔34の大径部46(「取付孔」として機能する)には、シャフト33に軸線方向と直角な方向の付勢力、つまり横荷重(摺動荷重)を付与するための防振ばね48が収容されている。シャフト33がその防振ばね48の横荷重を受けることにより、冷媒圧力の変動によるシャフト33や弁体18の振動が抑制される。なお、防振ばね48の具体的構造については、例えば特開2013−242129号公報に記載の構成を採用することができるため、その詳細な説明については省略する。
【0030】
以上のように構成された膨張弁1は、エバポレータから導入ポート8を介して戻ってきた冷媒の圧力及び温度をパワーエレメント3が感知してそのダイヤフラム28が変位する。このダイヤフラム28の変位が駆動力となり、ディスク29およびシャフト33を介して弁体18に伝達されて弁部を開閉させる。一方、レシーバから供給された液冷媒は、導入ポート6から導入され、弁部を通過することにより絞り膨張されて、低温・低圧の霧状の冷媒になる。その冷媒は導出ポート7からエバポレータへ向けて導出される。
【0031】
次に、パワーエレメントの感温構造について詳細に説明する。
図2は、パワーエレメント3の感温室およびその周辺の構造を表す図である。(A)は図1の上部拡大図である。(B)は(A)のA−A矢視断面図である。
【0032】
図2(A)および(B)に示すように、ボディ2の上部中央に所定深さの断面円形状の凹部50が設けられており、その凹部50の内周面に雌ねじ部60が形成されている。凹部50の底部中央には、円孔からなる開口部52が設けられている。開口部52の内径は、凹部50の内径よりも十分に小さく、シャフト33の外径よりも十分に大きい。すなわち、感温室54の断面は、開口部52の断面よりも十分に大きい。開口部52および凹部50は、シャフト33と同軸状に形成されている。連通孔56は、感温室54と第2の通路14との間の隔壁62(「第2の隔壁」に対応する)を貫通するように形成され、シャフト33よりも下流側にて感温室54と第2の通路14とを連通させる。図示のように、連通孔56は、開口部52と離隔した位置に形成されている。
【0033】
連通孔56は、その一端が感温室54の下流側端部に開口し、他端がその一端よりも下流側で第2の通路14に開口する。すなわち、連通孔56は、感温室54から第2の通路14に向かうにつれてその第2の通路14の下流側に向かう斜め通路とされている。連通孔56の通路断面は、開口部52の断面よりも小さいが、冷媒の導出を促進するためには十分な大きさとされている。このように連通孔56を第2の通路14に向けてその下流側に向かう斜め通路とすることで、第2の通路14を流れる冷媒が連通孔56を介して感温室54に侵入することを防止できる。また、このような斜め通路としたことで、連通孔56を感温室54の下流側端部に開口させても雌ねじ部60との干渉を回避できる。このため、連通孔56の加工が容易であり、雌ねじ部60の長さも十分に確保できるといったメリットがある。
【0034】
ボディ2の上面には係止面64が形成されている。凹部50の底面66と係止面64とは単一の切削工具(段付刃を有するエンドミルなど)により同時に成形されており、底面66に対する係止面64の高さ管理が精度良く実現されている。また、係止面64には、凹部50と同心状の円形の嵌合溝68が形成され、Oリング30が嵌着されている。
【0035】
一方、パワーエレメント3において、ロアハウジング27は、下方に向けて段階的に縮径する段付円筒状をなし、その下半部が筒状嵌合部70を構成している。筒状嵌合部70の外周面には、雌ねじ部60と螺合可能な雄ねじ部72が形成されている。ロアハウジング27は、筒状嵌合部70を凹部50に螺入していくことによりボディ2に取り付けられる。ロアハウジング27における筒状嵌合部70の基端部は、軸線に対して垂直な係止面80となっており、ボディ2の係止面64と当接可能に構成されている。
【0036】
パワーエレメント3をボディ2に組み付ける際には、嵌合溝68にOリング30を嵌合させた状態にて、ロアハウジング27を凹部50に螺入していく。それにより、Oリング30が押し潰されつつパワーエレメント3およびボディ2の双方に密着して弾性シールが実現される。このようにロアハウジング27を螺入していくと、係止面80が係止面64に当接してロアハウジング27がボディ2に係止され、パワーエレメント3のボディ2への組み付けが完了する。このように組み付けられた状態では図示のように、筒状嵌合部70の先端(開口端部)が凹部50の底面66から所定量離間する。凹部50とロアハウジング27とダイヤフラム28とにより囲まれる空間が、感温室54を形成する。
【0037】
このような構成によれば、エバポレータから送出された冷媒が、図中実線矢印にて示すように流れるようになる。すなわち、導入ポート8から導入された冷媒は、その大部分が第2の通路14を直進して導出ポート9から導出される。その一方で、その冷媒の一部は、開口部52を介して感温室54に導入されてパワーエレメント3に供給され、その温度と圧力が感知される。感温室54に導入された冷媒は、開口部52から第2の通路14に導出されるか、又は感温室54の下流側端部の壁面に沿って連通孔56に導かれ、第2の通路14の下流側に導出される。
【0038】
以上に説明したように、本実施形態によれば、第2の通路14を流れる冷媒を開口部52を介して感温室54に積極的に導入する一方で、感温室54の冷媒を連通孔56を介して第2の通路14の下流側に積極的に導出することができる。これにより、仮に液冷媒が感温室54へ導入されたとしても、その液分が感温室54内に滞留することが防止又は抑制され、パワーエレメント3において熱伝達の時定数が過小となることを防止できる。それにより、弁作動のハンチングを防止又は抑制することができる。一方、冷媒が感温室54に積極的に導入されるため、パワーエレメント3がエバポレータの出口温度を正確に感知することができ、膨張弁1本来の機能を良好に発揮させることができる。
【0039】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0040】
上記実施形態では、連通孔56を開口部52と離隔して形成する例を示した。変形例においては、その他の構造を採用することもできる。図3は、変形例に係る感温室およびその周辺の構造を表す図である。(A)は図1の上部拡大図に対応する。(B)は(A)のA−A矢視断面図である。
【0041】
図3(A)および(B)に示すように、本変形例では、連通孔256が長方形状をなし、隔壁62において開口部52と一体に形成されている。すなわち、連通孔256がシャフト33の下流側で開口部52と連続的に開口するように形成されている。このような構成によっても、感温室54に積極的に冷媒を導入する一方で、その感温室54の冷媒を連通孔256を介して積極的に導出することができる。すなわち、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0042】
図4は、他の変形例に係る感温室およびその周辺の構造を表す図である。(A)は図1の上部拡大図に対応する。(B)は(A)のA−A矢視断面図である。図4(A)および(B)に示すように、本変形例では、連通孔356が、隔壁62において開口部52と離隔し、また凹部50の下流側端壁(感温室54の下流側端部の壁面)からも離隔した位置に形成されている。連通孔356は、開口部52よりも凹部50の下流側端壁に近接している。このような構成によっても、感温室54に積極的に冷媒を導入する一方で、その感温室54の冷媒を連通孔356を介して第2の通路14の下流側へ積極的に導出することができる。すなわち、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0043】
上記実施形態および変形例では、感温室54から冷媒を導出するための連通孔の一例を示したが、連通孔の構造、開口部52と連通孔との位置関係について、それら以外の構造を採用することもできる。すなわち、シャフト33よりも下流側で感温室54と第2の通路14とを連通させるものであれば、種々の構造を採用することができる。
【0044】
例えば、図3に示した変形例において、連通孔256の開口幅(第2の通路14の上下流方向と直角方向の開口幅)を開口部52の直径と同等に大きくしてもよい。また、開口部52の上流側にも連通孔を設けてもよい。すなわち、開口部52を挟むようにしてシャフト33の上流側から下流側にかけて開口する開口部(連通孔)を設けてもよい。その場合、その開口部は、第2の通路14の上下流方向に沿う開口長さが、その上下流方向と直角方向の開口幅よりも大きくなるようにする。このような構成によれば、開口部が第2の通路の上下流方向に沿って大きくされることで、冷媒を感温室へ積極的に導入するとともに、感温室内の冷媒を第2の通路の下流側へ導出し易くなる。これにより、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0045】
上記実施形態の膨張弁は、冷媒として代替フロン(HFC−134a)など使用する冷凍サイクルに好適に適用されるが、本発明の膨張弁は、二酸化炭素のように作動圧力が高い冷媒を用いる冷凍サイクルに適用することも可能である。その場合には、冷凍サイクルにコンデンサに代わってガスクーラなどの外部熱交換器が配置される。その際、パワーエレメント3を構成するダイヤフラムの強度を補うために、例えば金属製の皿ばね等を重ねて配置してもよい。
【0046】
上記実施形態では、上記膨張弁を、外部熱交換器を経て流入した冷媒を絞り膨張させてエバポレータ(室内蒸発器)へ供給するものとして構成する例を示した。変形例においては、上記膨張弁を、ヒートポンプ式の車両用冷暖房装置に適用し、内部熱交換器の下流側に設置してもよい。すなわち、上記膨張弁を、内部熱交換器を経て流入した冷媒を絞り膨張させて外部熱交換器(室外蒸発器)へ供給するものとして構成してもよい。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 膨張弁、 2 ボディ、 3 パワーエレメント、 6 導入ポート、 7 導出ポート、 8 導入ポート、 9 導出ポート、 13 第1の通路、 14 第2の通路、 16 弁孔、 18 弁体、 26 アッパーハウジング、 27 ロアハウジング、 28 ダイヤフラム、 29 ディスク、 33 シャフト、 34 段付孔、 35 隔壁、 50 凹部、 52 開口部、 54 感温室、 56 連通孔、 62 隔壁、 70 筒状嵌合部、 256 連通孔、 356 連通孔、 S1 密閉空間、 S2 開放空間。
図1
図2
図3
図4