特許第6448243号(P6448243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新鋭工業販売株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6448243
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】吸引器用液体収納容器
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20181220BHJP
   A61G 12/00 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
   A61M1/00 111
   A61M1/00 130
   A61G12/00 W
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-152957(P2014-152957)
(22)【出願日】2014年7月28日
(65)【公開番号】特開2016-30014(P2016-30014A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2017年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】509205629
【氏名又は名称】新鋭工業販売株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 史城
(72)【発明者】
【氏名】石原 裕城
【審査官】 寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−522061(JP,A)
【文献】 米国特許第03848628(US,A)
【文献】 特開2011−024616(JP,A)
【文献】 特開平05−084280(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/110522(WO,A1)
【文献】 特表2016−508056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00
A61G 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者側チューブと、前記患者側チューブが着脱可能に取り付けられるように構成されたバルブ部材と、前記患者側チューブ及び前記バルブ部材を介して、患者からの廃液が案内される収納容器と、前記収納容器を気密的に格納する剛性容器と、前記剛性容器内を負圧に設定するポンプと、を備える医療用廃液吸引システムに用いられる前記収納容器であって、
前記収納容器の内側の、前記バルブ部材の上部に、案内される廃液の液面と略平行に設けられたフィルタと、
前記フィルタの更に上方に設けられた複数の通気孔と、を有し、
前記収納容器内への廃液の流入により、前記フィルタは、蓄積される廃液の水分により通気性を失い、前記収納容器内で上方に移動し、前記複数の通気孔を塞ぎ、前記収納容器から前記剛性容器への通気が遮断されて前記収納容器内が気密に保持される、
ように構成される、前記収納容器。
【請求項2】
請求項1に記載の収納容器において、前記バルブ部材は、前記患者側チューブから吸入される廃液の、前記収納容器への流入を許容する一方、前記患者側チューブへの廃液の流出を規制する逆止弁を更に有する、
ように構成される、前記収納容器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の収納容器において、前記複数の通気孔は、前記収納容器の表面に設けられた逆U字形状の切り欠きである、
ように構成される、前記収納容器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の収納容器において、前記フィルタは、下側に折り畳まれた矩形状の形状を有し、上辺部が前記収納容器内部で固定され、前記収納容器内への廃液の流入により、前記収納容器内が排気されることで、折り畳み部分を中心にして略対称に上方に移動する、
ように構成される、前記収納容器。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の収納容器において、前記フィルタは、複数の不織布の積層構造により構成されている、前記収納容器。
【請求項6】
請求項5に記載の収納容器において、前記積層構造の最上部の不織布の上部表面の、少なくとも前記通気孔に対応する位置に密着フィルムが更に設けられている、
ように構成される、前記収納容器。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の収納容器において、前記複数の不織布の少なくとも一対の対向する不織布間に、吸水性ポリマーが配置されている、
ように構成される、前記収納容器。
【請求項8】
求項7に記載の収納容器において、前記吸水性ポリマーは、ポリアクリル酸ソーダである、
ように構成される、前記収納容器。
【請求項9】
バルブ部材と、前記バルブ部材の上方に設けられたフィルタと、前記フィルタの上方に設けられた複数の通気孔と、を有する収納容器であって、液体の流入により、前記フィルタは蓄積される液体の水分で通気性をなくし、上方に移動し、前記複数の通気孔を塞ぎ、前記収納容器からの排気が遮断される、ように構成される、液体収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用の廃液吸引システムに使用可能な、液体の収納容器にかかり、廃液の流入により、収納容器内が排気されることで、フィルタが収納容器内で上方に移動すると共に蓄積される廃液により湿気を帯びて、複数の通気孔を塞ぎ、収納容器内が気密に保持される、収納容器に関するものである。簡易で低コストの構成により、収容した廃液を確実に気密に保ちながら衛生的に廃棄できるというものである。
【背景技術】
【0002】
手術中または治療中に発生する、血液等の体液や洗浄用の生理食塩水等の廃液を廃棄する際には、廃液を吸引して収納容器内に収納し、この廃液を収納した収納容器を、手術後または治療後に廃棄するというような作業が一般的に行われる。
【0003】
図1は、このような作業に用いられる医療用吸引機システムの概略を示す図である。図において、1は患者を示し、この患者からの廃液が患者側チューブ10によって体外に排出されるように構成されるものである。排出された廃液は、剛性容器3内の収納容器30に矢印Aで示されるように案内される。
【0004】
収納容器30にはバルブ部材31が一体的に設けられ、収納容器30の外側に突出した先端は更に剛性容器3の外部で患者側チューブ10と接続される。なお、バルブ部材31と剛性容器3との間には、バルブ部材31と同軸にゴムなどの弾性部材を介在させることで、剛性容器3は、その外部からは密閉状態に構成される。剛性容器3は、更にポンプ用コネクタ40を介してポンプ2に接続される。そしてこのポンプ2によって剛性容器3内部の空気は矢印aに示すように外部に排出され、剛性容器内は負圧に設定される。
【0005】
このような医療用吸引器システムとしては特許文献1に示されるようなものがあり、図2は、その医療用吸引器システムに使用することが可能な収納容器30の一例を示す斜視図である。この収納容器30には、バルブ部材31と共に、通気ユニット50が設けられている。この通気ユニット50は、その開口部に、通気性及び非透水性を有する物質で形成された、図示しない通気性シートが設けられ、収納容器30に廃液が収容されるにつれて、収納容器30内の空気を排出するように構成される。またこの通気性シート近傍には、やはり図示しない廃液凝固剤が包装剤に梱包されて配置される。このような構成により、収納された廃液が通気ユニット50の位置に到達したときに、包装剤が廃液と接触することに応じて溶解して廃液凝固剤を放出する。そして通気ユニットの通気孔を塞ぎ、収納容器30内を気密に保持する。このようにして収容された廃液を気密状態のまま、剛性容器から取り出すためには、患者側チューブを取り外した際にバルブ部材31にキャップを装着するだけで良い。その結果、作業者は収容された廃液を衛生的に扱うことができ、また、医療施設での二次感染を防止できる、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開 WO 2004/110522
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されているようなシステムにおいて用いられる収納容器では、通気ユニット及びその近傍の構成が極めて複雑で、収納容器を製造する際のコストが大きい、また製造のための時間もかかるという問題点がある。更に収納容器からの排気は通気ユニットのみを介して行われるため、排気の効率が悪いという問題点がある。また、廃液凝固剤により廃液が凝固されて通気性シートによる通気を阻止する構成になっているため、包装剤と廃液との接触の状態によっては廃液凝固剤が適切に凝固せず、通気が充分に阻止できないという問題点がある。この問題点を解決するには、廃液凝固剤を多く配置する必要があるため、この結果、更に製造コストが上昇するという問題点もある。
【0008】
本発明は、上述のような問題点に鑑み、製造コストを抑え、また製造時間も短縮しながら、簡単な構成で、確実に収納容器内を密閉状態にできるような、医療用の吸引器用液体収納容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述のような問題点を解決し、目的を達成するための本願発明にかかる収納容器は、患者側チューブと、患者側チューブが着脱可能に取り付けられるように構成されたバルブ部材と、患者側チューブ及びバルブ部材を介して、患者からの廃液が案内される収納容器と、収納容器を気密的に格納する剛性容器と、剛性容器内を負圧に設定するポンプと、を備える医療用廃液吸引システムに用いられる収納容器であって、収納容器の内側の、バルブ部材の上部に、案内される廃液の液面と略平行に設けられたフィルタと、フィルタの更に上方に設けられた複数の通気孔と、を有し、収納容器内への廃液の流入により、前記フィルタは、蓄積される廃液の水分により通気性がなくなり、収納容器内で上方に移動し、前記複数の通気孔を塞ぎ、収納容器から剛性容器への通気が遮断されて収納容器内が気密に保持される、ように構成される、収納容器である。
【0010】
また、バルブ部材は、患者側チューブから吸入される廃液の、収納容器への流入を許容する一方、患者側チューブへの廃液の流出を規制する逆止弁を更に有する、ように構成される、収納容器であっても良い。
【0011】
また、複数の通気孔は、収納容器の表面に逆U字形状の切り欠きである、ように構成される、収納容器であっても良い。
【0012】
また、フィルタは、下側に折り畳まれた矩形状の形状を有し、上辺部が収納容器内部で固定され、収納容器内への廃液の流入により、前記収納容器内が排気されることで、折り畳み部分を中心にして略対称に上方に移動する、ように構成される、収納容器であっても良い。
【0013】
また、フィルタは、複数の不織布の積層構造により構成されている、収納容器であっても良い。
【0014】
また、積層構造の最上部の不織布の上部表面の、少なくとも通気孔に対応する位置に密着フィルムが更に設けられている、ように構成される、収納容器であっても良い。
【0015】
また、複数の不織布の少なくとも一対の対向する不織布間に、吸水性ポリマーが配置されている、ように構成される、収納容器であっても良い。
【0016】
また、吸水性ポリマーは、ポリアクリル酸ソーダである、ように構成される、収納容器であっても良い。
【発明の効果】
【0017】
本願発明にかかる収納容器は、収納容器の内側の、前記バルブ部材の上部に、案内される廃液の液面と略平行に設けられたフィルタと、そしてフィルタの更に上方に設けられた複数の通気孔と、を有し、収納容器内への廃液の流入により、収納容器内が排気されることで、フィルタは、蓄積される廃液の水分で通気性を失い、上方に移動して複数の通気孔を塞ぎ、収納容器から剛性容器への通気が遮断されて収納容器内が気密に保持されるため、製造コストや製造時間を抑え、かつ簡単な構成で、確実に廃液を気密に保持して収納できる。
【0018】
また、バルブ部材は、患者側チューブから吸入される廃液の、収納容器への流入を許容する一方、患者側チューブへの廃液の流出を規制する逆止弁を更に有する、ように構成されても良いので、更に患者の安全を確実にすることができる。また、複数の通気孔は、収納容器の表面に逆U字形状の切り欠きである、ように構成されても良いので、廃液が収納容器外に漏洩する可能性を確実に減少させることができる。また、フィルタは、下側に折り畳まれた矩形状の形状を有し、上辺部が収納容器内部で固定され、収納容器内への廃液の流入により、前記収納容器内が排気されることで、折り畳み部分を中心にして略対称に上方に移動する、ように構成されても良いので、簡易な構成で収納容器を製造することができる。また、フィルタは、複数の不織布の積層構造により構成されても良いので、廃液の収納後の通気の遮断を確実に行うことができる。更に、積層構造の最上部の不織布の上部表面の、少なくとも通気孔に対応する位置に密着フィルムが設けられるように構成されても良く、また複数の不織布の少なくとも一対の対向する不織布間に、ポリアクリル酸ソーダのような、吸水性ポリマーが配置されているように構成されても良いので、確実に通気の遮断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本願発明にかかる収納容器が使用可能なシステムの概略を示す図である。
図2】従来の収納容器を示す斜視図である。
図3(a)】本願発明にかかる収納容器の一実施例を示す斜視図である。
図3(b)】収納容器に使用可能なバルブ部材の一例を示す断面図である。
図4(a)】収納容器の動作状態の一例を示す図である。
図4(b)】収納容器の動作状態の一例を示す図である。
図4(c)】収納容器の動作状態の一例を示す図である。
図5(a)】収納容器に使用可能な不織布の一例を示す図である。
図5(b)】収納容器に使用可能な不織布の一例を示す図である。
図5(c)】収納容器に使用可能な不織布の一例を示す図である。
図6(a)】収納容器の動作状態の別の例を示す図である。
図6(b)】収納容器の動作状態の別の例を示す図である。
図6(c)】収納容器の動作状態の別の例を示す図である。
図6(d)】収納容器の動作状態の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図3(a)は本願発明にかかる収納容器30の一実施例を示す斜視図である。収納容器本体には、図2のものと同様のバルブ部材31が一体に設けられ、患者1からの廃液が患者側チューブ10を介して案内されるように構成されている。そしてバルブ部材31の上部の、収納容器内部にはフィルタ60が設けられている。このフィルタ60は、図示されるように、収納容器内に案内され、蓄積される廃液の液面と略平行に設けられる。またフィルタ60の更に上部には、収納容器30の表面に、切り欠きとして形成される複数の通気孔70が設けられている。この通気孔の数や形状はさまざまに変化させることが可能である。一例として図3(a)においては片方の表面に四個ずつ、逆U字の形状で形成されている。
【0021】
図3(b)は、バルブ部材31の内部に設けられ、収納容器30への廃液の流入を許容する一方、患者側チューブ10への廃液の逆流を規制する逆止弁31aの構造及び動作を説明するための断面図である。
【0022】
本願発明にかかる収納容器30が用いられる医療用吸引器システムにおいて、患者側チューブから案内された廃液が、患者側に向かって逆流することはたいへん危険であり、万一そのような状態が発生した場合には、患者の容態などに深刻な影響を及ぼしかねない。そのためバルブ部材31の内部には、このような逆流を防止するための逆止弁31aが設けられる。
【0023】
この逆止弁31aは、廃液が案内される方向A中の、廃液の流入経路内に設けられるプレート状の部材として形成される。この部材は、図3(b)に示されるように、バルブ部材の内側のいずれかの位置に図示しないピンなどで揺動可能に取り付けられ、患者側チューブから吸入容器への廃液の流入を許容する一方で、吸入容器側から患者側チューブへの廃液の逆流は阻止されるように構成される。
【0024】
また、収納容器30内に一定量の廃液が収納された後には、患者側チューブ10はバルブ部材31から外され、代わりにキャップ31bが取り付けられる。これにより、収納容器30内は気密状態に保持され、剛性容器3から取り出して廃棄することができる。
【0025】
図4(a)から図4(c)は本願発明にかかる収納容器30の動作の一例を示す図である。図4(a)は収納容器30を側面から見た場合の図であり、使用される前は、幅方向に圧縮された形状をしている。そして廃液を収納容器内に案内するバルブ部材31の上方にフィルタ60が設けられ、更にその上方には通気孔70が複数設けられる。通気孔の形状はさまざまなものが考えられるが、一例として、図3(a)や図4(a)に示すように、上側が切り欠きとなっている逆U字状に形成することが考えられる。このように上方が切り欠きとなるように構成することで、収納容器30内に蓄積されている廃液の飛沫や水滴などの外部への漏洩の可能性を低減させることができる。
【0026】
図4(a)の状態ではフィルタ60は、下側に折り畳まれた矩形状の形状を有し、上辺部が前記収納容器内部の両側端で固定されるように構成される。そして、収納容器30内への廃液の流入により、廃液80が蓄積され、液面80aの上昇と共に収納容器30は膨張し、収納容器内が通気孔70を介して排気されることで、図4(b)に示すように、折り畳み部分を中心にしてフィルタ60−1の状態から徐々にフィルタ60−2の状態に、矢印Bに示す方向に略対称に上方に移動する。排気された空気はポンプ用コネクタ40を介して剛性容器3の外部のポンプ2に送られる。即ち、蓄積される廃液の水分によりフィルタ60の通気抵抗が大きくなり、それに連れてフィルタ60は上方に移動する。
【0027】
図4(c)は、図4(b)のようにして廃液が収納された収納容器30上方の、通気孔70近傍のフィルタ60と収納容器30の表面との関係を示す図である。通気孔70は、一例として、上方を切り欠きとして形成された逆U字状である。そして液面の上昇により排気が進行し、フィルタ60が更に上方に移動し、収納容器30の内面に接触して、通気孔70を塞いで通気を遮断する。フィルタ60は通気性を有する素材で形成されているが、蓄積される廃液の水分により通気性がなくなり、収納容器30の裏面、即ち本体の内面、に接触する際には、複数の通気孔70が塞がれて収納容器30からの通気が遮断され、その結果として収納容器30の内部が気密に保持される。
【0028】
図5(a)は、本願発明にかかる収納容器30に使用可能な、フィルタ60の具体的な構成の一例を示す図である。この図においては、収納容器30内の下方から上方に向かって、矢印Cのように、複数の不織布60a1から60a3が積層構造に構成される。そして、フィルタ60に含まれる不織布60a1から60a3は、廃液の水分により通気性を失い、収納容器30の内側に接触した際には収納容器30からの排気、即ち、収納容器30の内外の通気、が遮断される。
【0029】
図5(a)に示す例では、一層目の不織布60a1と二層目の不織布60a2との間に、更に高吸水性樹脂である吸水性ポリマー60bを配置する構成となっている。これにより、吸水性ポリマーは廃液の水分により一定の形状を保ったゲル状となり、確実に通気を遮断することができる。吸水性ポリマーは、コストや入手の容易さ、更には扱う廃液の成分などを勘案してさまざまなものを使用することが可能であるが、例えばポリアクリル酸ソーダなどが考えられる。
【0030】
図5(b)は、図5(a)のような積層構造のフィルム60の別の態様を表す斜視図である。この例では不織布60a1から60a3は三層の積層構造として構成され、中央の不織布60a2に吸水性ポリマー60bを配置している。
【0031】
図5(c)は、図5(b)のような積層構造を、更に改良した例を示す斜視図である。この例においては、不織布60a1から60a3の積層構造として構成されているフィルタ60の最上層の不織布60a3、即ち、収納容器30の内面に接触する層の表面に、更に密着フィルム60cを配置したものである。フィルタ60は、不織布60aの各層が廃液の水分により通気性が損なわれることにより、また、吸水性ポリマー60bがゲル化すること、により図4(c)のように収納容器30の内面に接触した場合には、通気孔70を介する空気の流入及び流出をほとんど遮断する。しかしながら、このような、不織布60aにおける水分の吸収による通気の遮断を更に確実にするために、不織布60aの表面積よりは小さい面積で、少なくとも通気孔70の対応する位置を含んで密着フィルム60cを設けるものである。
【0032】
図6(a)から図6(c)はこのような密着フィルム60cを設けたフィルタ60の動作を示すものであり、図4(a)から図4(c)と同様のものである。なお、バルブ部材31は図示を省略している。
【0033】
図6(a)にあるように、最上層に密着フィルム60cを配置したフィルタ60は、下側に折り畳まれた矩形状の形状を有し、上辺部が前記収納容器内部で固定され、収納容器内への廃液の流入により、折り畳み部分を中心にして、図6(b)に示すように略対称に上方に移動するように構成されている。そして、図6(c)に示すように、密着フィルム60cが、通気孔70を塞ぐ形で、収納容器30の内部を気密に保つ。図6(d)はこのような密着フィルム60cを用いたフィルタ60の、収納容器30内での取り付け方法の一例を示す図である。
【0034】
このように本願発明による、吸引器用液体収納容器によれば、製造コストや製造時間を抑え、かつ簡単な構成で、確実に廃液を気密に保持して収納でき、その結果、衛生的に廃液を処理できる。
【0035】
本明細書に開示された実施例は、本発明を限定するものではなく、説明するためのものであり、このような実施例によって本発明の思想と範囲が限定されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲により解釈すべきであり、それと同等の範囲内にある全ての技術は、本発明の権利範囲に含まれるものと解釈すべきである。
【符号の説明】
【0036】
1:患者、2:ポンプ、3:剛性容器、30:収納容器、31:バルブ部材、40:ポンプ用コネクタ、50:通気性ユニット、60:フィルタ、70:通気孔、31a:逆止弁、31b:キャップ、80:廃液、80a:液面、60a: 不織布、60b:吸水性ポリマー
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】
図6(a)】
図6(b)】
図6(c)】
図6(d)】