(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような配光パターンは、ロービーム用配光パターンのカットオフラインから上方側にある程度大きく拡がるような形状とすることが好ましい。しかながら、一般に発光素子の発光面は小さいので、この配光パターンをカットオフラインから上方側に大きく拡がるように形成することは容易でない。
【0007】
この点、上記「特許文献1」に記載された車両用灯具においては、各発光素子を投影レンズの後側焦点面に対して後方側に一定量変位させることにより、投影レンズの透過光によって形成される各発光素子の反転投影像を大きくし、これにより配光パターンの上下幅を拡げるようにしている。
【0008】
しかしながら、このような構成を採用した場合には、各発光素子の反転投影像の明るさが低下してしまい、これにより配光パターンの明るさも低下してしまうので、ハイビーム用配光パターンの中心光度を十分に高めることが困難になってしまう、という問題がある。
【0009】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、複数の発光素子からの出射光を投影レンズを介して前方へ向けて照射することにより、ハイビーム領域に配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、この配光パターンを、その明るさを確保した上で、ロービーム用配光パターンのカットオフラインから上方側に大きく拡がるように形成することができる車両用灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、投影レンズの構成に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0011】
すなわち、本願発明に係る車両用灯具は、
ハイビーム領域に配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、
投影レンズとこの投影レンズの後方において左右方向に並列に配置された複数の発光素子とを備え、上記各発光素子からの出射光を上記投影レンズを介して前方へ向けて照射することにより上記配光パターンを形成するように構成されており、
上記投影レンズは、一般領域と、この一般領域の後側焦点に対して上方側に変位した後側焦点を有する第1偏向領域とを備えて
おり、
上記投影レンズは、上記一般領域の後側焦点に対して下方側に変位した後側焦点を有する第2偏向領域を備えている、ことを特徴とするものである。
【0012】
上記「発光素子」の種類は特に限定されるものではなく、例えば発光ダイオードやレーザダイオード等が採用可能である。
【0013】
上記「一般領域」と上記「第1偏向領域」との具体的な位置関係は特に限定されるものではない。
【0014】
上記「一般領域」の後側焦点に対する上記「第1偏向領域」の後側焦点の上方変位量の具体的な値は特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0015】
上記構成に示すように、本願発明に係る車両用灯具は、投影レンズの後方において左右方向に並列に配置された複数の発光素子の各々からの出射光を、投影レンズを介して前方へ向けて照射することにより、ハイビーム領域に配光パターンを形成するように構成されているが、その投影レンズの構成として、一般領域とこの一般領域の後側焦点に対して上方側に変位した後側焦点を有する第1偏向領域とを備えた構成となっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0016】
すなわち、第1偏向領域の後側焦点が一般領域の後側焦点に対して上方側に変位しているので、第1偏向領域の透過光によって形成される各発光素子の反転投影像は一般領域の透過光によって形成される各発光素子の反転投影像に対して上方側に変位した状態で形成されることとなる。
【0017】
したがって、投影レンズの透過光によって形成される各発光素子の反転投影像を、一般領域の透過光によって形成される反転投影像を上方側へ引き延ばした縦長の形状に形成することができる。そしてこれにより、複数の発光素子の反転投影像によって形成される配光パターンを、ロービーム用配光パターンのカットオフラインから上方側に大きく拡がるように形成することができる。
【0018】
しかもこれを、従来のように各発光素子を投影レンズの後側焦点面から後方側に大きく変位させることなく実現することができるので、各発光素子の反転投影像の明るさが低下してしまうのを効果的に抑制することができる。そしてこれにより配光パターンの明るさも確保することができる。
【0019】
このように本願発明によれば、複数の発光素子からの出射光を投影レンズを介して前方へ向けて照射することにより、ハイビーム領域に配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、この配光パターンを、その明るさを確保した上で、ロービーム用配光パターンのカットオフラインから上方側に大きく拡がるように形成することができる。そしてこれによりハイビーム用配光パターンの中心光度も十分に確保することが可能となる。
【0020】
また、本願発明の構成を採用することにより、各発光素子として正方形の発光面を有する安価な発光素子を用いた場合であっても、配光パターンを所要の明るさおよび拡がりを有するものとして形成することができる。そしてこれにより車両用灯具を安価に構成することができる。
【0021】
上記構成において、投影レンズの構成として、一般領域の後側焦点に対して下方側に変位した後側焦点を有する第2偏向領域を備えた構成とすれば、各発光素子の反転投影像を下方側にも引き延ばして、これらをさらに縦長の形状に形成することができる。そしてこれにより、複数の発光素子の反転投影像によって形成される配光パターンの上下幅をさらに拡げることができる。
【0022】
この場合において、第1偏向領域が一般領域の上方側に位置するとともに第2偏向領域が一般領域の下方側に位置する構成とすれば、各発光素子からの出射光が第1および第2偏向領域において偏向する量を小さくすることができ、これにより投影レンズの透過効率を高めることができる。
【0023】
上記構成において、複数の発光素子が個別に点灯し得る構成とすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0024】
すなわち、これら複数の発光素子を同時点灯させて配光パターンを形成することにより、これをハイビーム用配光パターンの形成に適したものとすることができる。一方、これら複数の発光素子のうちの一部を選択的に点灯させることにより、上記配光パターンの一部が欠けた配光パターンを形成することができ、これをロービーム用配光パターンとハイビーム用配光パターンとの中間に位置する形状の中間的配光パターンの形成に適したものとすることができる。
【0025】
そして、このような中間的配光パターンを形成することにより、対向車ドライバ等にグレアを与えてしまわない範囲内でできるだけ前方走行路を幅広く照射することが可能となる。
【0026】
その際、各発光素子の反転投影像を明瞭な輪郭を有する状態で形成することができるので、上記配光パターンの一部が欠けた配光パターンを形成する際、その暗部との境界線を明瞭なものとすることができる。そしてこれにより、対向車ドライバ等にグレアを与えてしまわない範囲内で前方走行路を幅広く照射するための制御を精度良く行うことが容易となる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0029】
図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用灯具10を示す正面図であり、
図2は、
図1のII−II線断面図である。また、
図3は、車両用灯具10の主要構成要素を示す斜視図である。
【0030】
これらの図に示すように、本実施形態に係る車両用灯具10は、プロジェクタ型の灯具ユニットであって、ハイビーム領域に形成される配光パターンとして付加配光パターンを形成するように構成されている。
【0031】
この車両用灯具10は、車両前後方向に延びる光軸Axを有する投影レンズ12と、この投影レンズ12の後方において左右方向に並列に配置された複数の発光素子14とを備えており、各発光素子14からの出射光を投影レンズ12を介して前方へ向けて照射するようになっている。
【0032】
投影レンズ12は、前面12aが凸面で後面12bが平面の平凸非球面レンズであって、その外周フランジ部12cにおいてレンズホルダ18に支持されている。
【0033】
この投影レンズ12は、その上部を除く2/3程度の領域が光軸Ax上に後側焦点F0を有する一般領域12Z0として構成されており、残りの上部1/3程度の領域が後側焦点F0に対して上方側に変位した後側焦点F1を有する第1偏向領域12Z1として構成されている。
【0034】
これを実現するため、投影レンズ12の前面12aは、第1偏向領域12Z1においては一般的な投影レンズの表面形状(
図2において2点鎖線で示す形状)に対して外周縁に向かって上方側に徐々に変位する鉛直断面形状を有している。
【0035】
そして、この投影レンズ12は、その一般領域12Z0の後側焦点F0を含む焦点面である後側焦点面上に形成される光源像を反転像として灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に投影するようになっている。その際、第1偏向領域12Z1の透過光によって形成される反転投影像は、後側焦点F1が後側焦点F0に対して上方側に変位している分だけ一般領域12Z0の透過光によって形成される反転投影像よりも上方側に変位した位置に形成されることとなる。
【0036】
複数の発光素子14は、投影レンズ12の後側焦点面の近傍において左右方向に並列に配置された状態で、共通の基板16に支持されている。本実施形態においては、いずれも同様の構成を有する11個の発光素子14が、光軸Axの位置を中心にして左右方向に等間隔で配置された構成となっている。
【0037】
これら各発光素子14は白色発光ダイオードであって、正方形の発光面14aを有している。そして、これら各発光素子14は、その発光面14aを投影レンズ12の後側焦点面よりも僅かに後方側の位置において灯具正面方向へ向けた状態で配置されている。その際、これら各発光素子14の発光面14aは、その中心が光軸Axのやや下方に位置しており、その上端縁が光軸Axのやや上方に位置している。
【0038】
これら各発光素子14から出射して投影レンズ12へ向かう光は、その後側焦点面を多少の拡がりをもって通過することとなる。このため11個の発光素子14は、その発光面14aが互いに多少離れているにもかかわらず、その出射光が投影レンズ12の後側焦点面を通過する際の光線束の範囲は、互いに隣接する発光素子14相互間において僅かに重複するものとなる。
【0039】
11個の発光素子14は、個別に点灯し得るように構成されている。これを実現するため、これら11個の発光素子14は、図示しない電子制御ユニットに接続されており、この電子制御ユニットによって自車の走行状況に応じてその点消灯制御が行われるようになっている。
【0040】
投影レンズ12における一般領域12Z0の後側焦点F0に対する第1偏向領域12Z1の後側焦点F1の上方変位量は、各発光素子14の発光面14aの上下幅よりも小さい値(具体的には1/2程度の値)に設定されている。
【0041】
レンズホルダ18および基板16は、共通のベース部材22に支持されている。
【0042】
図4は、車両用灯具10から前方へ向けて照射される光により、車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される付加配光パターン(すなわちハイビーム領域に形成される配光パターン)を透視的に示す図である。
【0043】
同図(a)は、ハイビーム用配光パターンPH1の付加配光パターンPAを示す図であり、同図(b)は、中間的配光パターンPM1の付加配光パターンPAmを示す図である。
【0044】
同図(a)に示すハイビーム用配光パターンPH1は、図示しない他の灯具ユニットからの照射光によって形成されるロービーム用配光パターンPLに対して、車両用灯具10からの照射光によって形成される付加配光パターンPAが付加されたものとなっている。
【0045】
ロービーム用配光パターンPLは、左配光のロービーム用配光パターンであって、その上端縁に左右段違いのカットオフラインCL1、CL2を有している。このカットオフラインCL1、CL2は、灯具正面方向の消点であるH−Vを鉛直方向に通るV−V線を境にして左右段違いで水平方向に延びており、V−V線よりも右側の対向車線側部分が下段カットオフラインCL1として形成されるとともに、V−V線よりも左側の自車線側部分が、この下段カットオフラインCL1から傾斜部を介して段上がりになった上段カットオフラインCL2として形成されている。
【0046】
このロービーム用配光パターンPLにおいて、下段カットオフラインCL1とV−V線との交点であるエルボ点Eは、H−Vの0.5〜0.6°程度下方に位置している。
【0047】
付加配光パターンPAは、カットオフラインCL1、CL2から上方に拡がる横長の配光パターンとして形成されている。その際、この付加配光パターンPAは、V−V線を中心にして左右両側に均等に拡がるようにして形成されている。そして、この付加配光パターンPAがロービーム用配光パターンPLに対して追加形成されることにより、前方走行路を幅広く照射するハイビーム用配光パターンPH1が形成されるようになっている。
【0048】
付加配光パターンPAは、11個の配光パターンPaの合成配光パターンとして形成されている。
【0049】
これら各配光パターンPaは、各発光素子14からの出射光によって投影レンズ12の後側焦点面上に形成される該発光素子14の光源像の反転投影像として形成される配光パターンである。
【0050】
これら各配光パターンPaは、一般領域12Z0の透過光による反転投影像として形成される配光パターンPa0に対して第1偏向領域12Z1の透過光による反転投影像として形成される配光パターンPa1を部分的に重畳させた(具体的には1/2程度重畳させた)配光パターンとして形成されている。
【0051】
その際、配光パターンPa0、Pa1は、いずれも略正方形の外形形状を有している。これは、各発光素子14の発光面14aが正方形の外形形状を有していることによるものである。
【0052】
また、配光パターンPa1は、配光パターンPa0に対して上方側に変位した位置に形成されている。これは、一般領域12Z0の後側焦点F0に対して第1偏向領域12Z1の後側焦点F1が上方側に変位していることによるものである。
【0053】
さらに、配光パターンPa1は、配光パターンPa0よりも暗い像として形成されている。これは、第1偏向領域12Z1を透過する光量が一般領域12Z0を透過する光量よりも少ないことによるものである。
【0054】
11個の配光パターンPaは、互いに隣接する配光パターンPa相互間で僅かに重複するようにして形成されている。これは、各発光素子14の発光面14aが投影レンズ12の後側焦点面よりも僅かに後方側に位置しており、互いに隣接する発光素子14相互間で投影レンズ12の後側焦点面を通過する光線束の範囲が僅かに重複することによるものである。ただし、各発光素子14の発光面14aは、投影レンズ12の後側焦点面に対して後方側に大きく変位しているわけではなく、その後方変位量は僅かであるので、各配光パターンPaの外周縁は明瞭な輪郭を有するものとなっている。
【0055】
さらに、これら各配光パターンPaは、その下端縁の位置がカットオフラインCL1、CL2と僅かに重複するように形成されている。これは、各発光素子14の発光面14aの中心が光軸Axのやや下方に位置しており、その上端縁が光軸Axのやや上方に位置していることによるものである。
【0056】
同図(b)に示す中間的配光パターンPM1は、ハイビーム用配光パターンPH1に対して、付加配光パターンPAの代わりにその一部が欠けた付加配光パターンPAmを有する配光パターンとなっている。
【0057】
具体的には、付加配光パターンPAmは、11個の配光パターンPaのうち右から3番目と4番目の配光パターンPaが欠落した配光パターンとなっている。この付加配光パターンPAmは、11個の発光素子14のうち左から3番目と4番目の発光素子14を消灯することによって形成されるようになっている。
【0058】
このような付加配光パターンPAmを形成することにより、車両用灯具10からの照射光が対向車2に当たらないようにし、これにより対向車2のドライバにグレアを与えてしまわない範囲内でできるだけ前方走行路を幅広く照射するようになっている。
【0059】
そして、対向車2の位置が変化するのに伴って、消灯の対象となる発光素子14を順次切り換えることにより付加配光パターンPAmの形状を変化させ、これにより対向車2のドライバにグレアを与えてしまわない範囲内でできるだけ前方走行路を幅広く照射する状態を維持するようになっている。
【0060】
なお、対向車2の存在は、図示しない車載カメラ等によって検出するようになっている。そして、前方走行路に前走車が存在したり、その路肩部分に歩行者が存在するような場合にも、これを検出して一部の配光パターンPaを欠落させることによりグレアを与えてしまわないようになっている。
【0061】
次に本実施形態の作用効果について説明する。
【0062】
本実施形態に係る車両用灯具10は、投影レンズ12の後方において左右方向に並列に配置された11個の発光素子14の各々からの出射光を、投影レンズ12を介して前方へ向けて照射することにより、ハイビーム領域に付加配光パターンPAを形成するように構成されているが、その投影レンズ12の構成として、一般領域12Z0とこの一般領域12Z0の後側焦点F0に対して上方側に変位した後側焦点F1を有する第1偏向領域12Z1とを備えた構成となっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0063】
すなわち、第1偏向領域12Z1の後側焦点F1が一般領域12Z0の後側焦点F0に対して上方側に変位しているので、第1偏向領域12Z1の透過光によって各発光素子14の反転投影像として形成される配光パターンPa1は一般領域12Z0の透過光によって各発光素子14の反転投影像として形成される配光パターンPa0に対して上方側に変位した状態で形成されることとなる。
【0064】
したがって、投影レンズ12の透過光によって各発光素子14の反転投影像として形成される配光パターンPaを、一般領域12Z0の透過光によって形成される配光パターンPa0を上方側へ引き延ばした縦長の形状に形成することができる。そしてこれにより、11個の発光素子14の反転投影像によって形成される付加配光パターンPAを、ロービーム用配光パターンPLのカットオフラインCL1、CL2から上方側に大きく拡がる配光パターンとして形成することができる。
【0065】
しかもこれを、従来のように各発光素子14を投影レンズ12の後側焦点面から後方側に大きく変位させることなく実現することができるので、各発光素子14の反転投影像としての配光パターンPaの明るさが低下してしまうのを効果的に抑制することができ、これにより付加配光パターンPAの明るさも確保することができる。
【0066】
このように本実施形態によれば、11個の発光素子14からの出射光を投影レンズ12を介して前方へ向けて照射することにより、ハイビーム領域に付加配光パターンPAを形成するように構成された車両用灯具10において、付加配光パターンPAの明るさを確保した上で、これをロービーム用配光パターンPLのカットオフラインCL1、CL2から上方側に大きく拡がる配光パターンとして形成することができる。そしてこれによりハイビーム用配光パターンPH1の中心光度も十分に確保することが可能となる。
【0067】
その際、本実施形態においては、第1偏向領域12Z1が一般領域12Z0の上方側に位置しているので、各発光素子14からの出射光が第1偏向領域12Z1において偏向する量を小さくすることができる。そしてこれにより投影レンズ12の透過効率を高めることができる。
【0068】
また本実施形態においては、各発光素子14として、正方形の発光面14aを有する安価な発光素子が用いられているので、所要の明るさおよび拡がりを有する付加配光パターンPAを安価な構成で形成することができる。
【0069】
さらに本実施形態においては、11個の発光素子14が個別に点灯し得る構成となっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0070】
すなわち、これら11個の発光素子14を同時点灯させて付加配光パターンPAを形成することにより、これをハイビーム用配光パターンPH1の形成に適したものとすることができる。一方、これら11個の発光素子14のうちの一部を選択的に点灯させることにより、付加配光パターンPAの一部が欠けた付加配光パターンPAmを形成することができ、これをロービーム用配光パターンPLとハイビーム用配光パターンPH1との中間に位置する形状の中間的配光パターンPM1の形成に適したものとすることができる。
【0071】
そして、このような中間的配光パターンPM1を形成することにより、対向車ドライバ等にグレアを与えてしまわない範囲内でできるだけ前方走行路を幅広く照射することが可能となる。
【0072】
その際、各発光素子14の反転投影像を明瞭な輪郭を有する状態で形成することができるので、付加配光パターンPAの一部が欠けた付加配光パターンPAmを形成する際、その暗部との境界線を明瞭なものとすることができる。そしてこれにより対向車ドライバ等にグレアを与えてしまわない範囲内で前方走行路を幅広く照射するための制御を精度良く行うことが容易となる。
【0073】
上記実施形態においては、11個の発光素子14を備えているものとして説明したが、これ以外の個数の発光素子14を備えた構成とすることも可能である。
【0074】
上記実施形態においては、各発光素子14が正方形の発光面14aを有しているものとして説明したが、これ以外の形状(例えば縦長矩形状や横長矩形状等)の発光面を有する構成とすることも可能である。
【0075】
上記実施形態においては、一般領域12Z0の後側焦点F0に対する第1偏向領域12Z1の後側焦点F1の上方変位量が、各発光素子14の発光面14aの上下幅の1/2程度の値に設定されているものとして説明したが、これ以外の値であっても発光面14aの上下幅よりも小さい値に設定されていれば、配光パターンPaを配光パターンPa0と配光パターンPa1とが部分的に重複する配光パターンとして形成することができ、かつ、その重複度合によって配光パターンPaの上下幅の大きさを適宜設定することができる。
【0076】
上記実施形態においては、投影レンズ12の上部1/3程度の領域が第1偏向領域12Z1として構成されているものとして説明したが、第1偏向領域12Z1と一般領域12Z0との境界線の位置(
図1、3において2点鎖線で示す位置)を上方側あるいは下方側に適宜変位させた構成とすることも可能である。その際、上方側に変位させるようにすれば、配光パターンPa1と配光パターンPa0との明暗差を大きくすることができ、一方、下方側に変位させるようにすれば、配光パターンPa1と配光パターンPa0との明暗差を小さくすることができる。
【0077】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0078】
まず、上記実施形態の第1変形例について説明する。
【0079】
図5は、本変形例に係る車両用灯具110を示す、
図2と同様の図である。
【0080】
同図に示すように、この車両用灯具110の基本的な構成は上記実施形態の車両用灯具10と同様であるが、投影レンズ112の構成が上記実施形態の場合と異なっている。
【0081】
すなわち本変形例の投影レンズ112も、前面112aが凸面で後面112bが平面の平凸非球面レンズであって、その外周フランジ部112cにおいてレンズホルダ18に支持されているが、一般領域112Z0の上下両側に第1および第2偏向領域112Z1、112Z2が配置された構成となっている。
【0082】
一般領域112Z0の構成は、上記実施形態の一般領域12Z0の上半部と同様であり、第1偏向領域112Z1の構成は、上記実施形態の第1偏向領域12Z1と同様である。第2偏向領域112Z2は、一般領域12Z0の下方側に位置しており、光軸Axを含む水平面に関して第1偏向領域112Z1と上下対称の形状を有している。
【0083】
すなわち、この投影レンズ112においては、第1偏向領域112Z1の後側焦点F1が一般領域12Z0の後側焦点F0に対して上方側に変位しており、第2偏向領域112Z2の後側焦点F2が一般領域12Z0の後側焦点F0に対して下方側に変位しており、かつ、これら後側焦点F1、F2は後側焦点F0から等距離に位置している。
【0084】
図6は、車両用灯具110からの照射光により形成される付加配光パターンを透視的に示す、
図4と同様の図である。
【0085】
同図(a)は、ハイビーム用配光パターンPH2の付加配光パターンPBを示す図であり、同図(b)は、中間的配光パターンPM2の付加配光パターンPBmを示す図である。
【0086】
同図(a)に示す付加配光パターンPBは、
図4(a)に示す付加配光パターンPAに対して、これを下方側に拡げた形状の配光パターンとして形成されている。
【0087】
この付加配光パターンPBは、11個の配光パターンPbの合成配光パターンとして形成されている。
【0088】
これら各配光パターンPbは、一般領域112Z0の透過光による反転投影像として形成される配光パターンPb0に対して、第1偏向領域112Z1の透過光による反転投影像として形成される配光パターンPb1と、第2偏向領域112Z2の透過光による反転投影像として形成される配光パターンPb2とを、上下両側から部分的に重畳させた配光パターンとして形成されている。
【0089】
これら配光パターンPba0、Pb1、Pb2は、いずれも略正方形の外形形状を有している。また、配光パターンPb1と配光パターンPb0との位置関係は、上記実施形態における配光パターンPa1と配光パターンPa0との位置関係と同様であり、配光パターンPb2は、配光パターンPb0に対して配光パターンPb1と上下対称の位置関係で形成されている。そしてこれにより、付加配光パターンPBは、その下端部においてカットオフラインCL1、CL2とより多く重複するようになっている。
【0090】
同図(b)に示す中間的配光パターンPM2は、ハイビーム用配光パターンPH2に対して、付加配光パターンPBの代わりにその一部が欠けた付加配光パターンPBmを有する配光パターンとなっている。
【0091】
本変形例の構成を採用した場合においても、上記実施形態と略同様の作用効果を得ることができる。
【0092】
また、本変形例の構成を採用することにより、付加配光パターンPBとして、上記実施形態の付加配光パターンPAよりも上下幅の大きい横長の配光パターンを形成することができる。そしてこれにより、付加配光パターンPBとロービーム用配光パターンPLと重複範囲を大きくして、前方走行路の視認性をより一層向上させることができる。
【0093】
なお、ハイビーム用配光パターンPH2として、カットオフラインCL1、CL2から上方側へのより大きな拡がりを重視するのであれば、付加配光パターンPBを全体的に上方側に変位させたような付加配光パターンを形成するようにすればよい。これを実現するためには、例えば、各発光素子14の位置を上記実施形態の場合よりも多少下方側に変位させるようにすればよい。
【0094】
次に、上記実施形態の第2変形例について説明する。
【0095】
図7は、本変形例に係る車両用灯具210を示す、
図2と同様の図である。
【0096】
同図に示すように、この車両用灯具210の基本的な構成は上記実施形態の車両用灯具10と同様であるが、投影レンズ212の構成が上記第1変形例の場合と異なっている。
【0097】
本変形例の投影レンズ212も、前面212aが凸面で後面212bが平面の平凸非球面レンズであって、その外周フランジ部212cにおいてレンズホルダ18に支持されているが、第1偏向領域212Z1と第2偏向領域212Z2との位置関係が上記第1変形例の場合と逆になっている。
【0098】
すなわち、この投影レンズ112においては、一般領域212Z0の下側に位置する第1偏向領域212Z1の後側焦点F1が一般領域212Z0の後側焦点F0に対して上方側に変位しており、一般領域212Z0の上側に位置する第2偏向領域212Z2の後側焦点F2が一般領域12Z0の後側焦点F0に対して下方側に変位している。
【0099】
本変形例の構成を採用した場合においても、上記第1変形例の場合と同様の付加配光パターンを形成することができる。
【0100】
また、本変形例の構成を採用することにより、投影レンズ212の前面212aの上下幅を小さくすることができる。したがって、その分だけ外周フランジ部212cの上下幅を狭くすれば、投影レンズ212全体としての上下幅を小さくすることができる。
【0101】
次に、上記実施形態の第3変形例について説明する。
【0102】
図8は、本変形例に係る車両用灯具310を示す、
図2と同様の図である。
【0103】
同図に示すように、この車両用灯具310の基本的な構成は上記実施形態の車両用灯具10と同様であるが、11個の発光素子14の前方斜め下方にリフレクタ324が追加配置されている点で上記実施形態の場合と異なっている。
【0104】
このリフレクタ324は、前方へ向けて下方側に傾斜した平面状の反射面324aを有しており、ベース部材22に支持されている。
【0105】
このリフレクタ324の反射面324aは、その後方側への延長面が11個の発光素子14の発光面14aの下端縁の下方近傍を通るとともにその前方側への延長面が投影レンズ12の後面12bの下端部を通るように形成されている。そしてこれにより、各発光素子14から出射して前方斜め下方へ大角度で向かう、投影レンズ12に入射しない光を、この反射面324aにおいて正反射させて投影レンズ12に入射させるようになっている。
【0106】
この反射面324aからの反射光は、発光面14aの下方近傍に位置する仮想光源からの出射光として投影レンズ12に入射し、投影レンズ12から前方へ向けてやや上向きの光として出射することとなる。
【0107】
したがって、本変形例の構成を採用することにより、ハイビーム用の付加配光パターンとして、
図4(a)に示す付加配光パターンPAをさらに上方側に拡げた形状の配光パターンを形成することができる。
【0108】
なお、上記実施形態およびその変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【0109】
また、本願発明は、上記実施形態およびその変形例に記載された構成に限定されるものではなく、これ以外の種々の変更を加えた構成が採用可能である。