(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6448422
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】マルチギャップ型回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20181220BHJP
H02K 16/04 20060101ALI20181220BHJP
H02K 5/20 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
H02K9/19 A
H02K16/04
H02K5/20
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-52694(P2015-52694)
(22)【出願日】2015年3月16日
(65)【公開番号】特開2016-174456(P2016-174456A)
(43)【公開日】2016年9月29日
【審査請求日】2017年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】松本 貴郁
(72)【発明者】
【氏名】松井 啓仁
(72)【発明者】
【氏名】朝柄 浩嗣
(72)【発明者】
【氏名】前川 武雄
(72)【発明者】
【氏名】近藤 啓次
【審査官】
若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−176203(JP,A)
【文献】
特開2012−090517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
H02K 5/20
H02K 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム(2)に回転自在に軸支される回転軸(4)と、前記回転軸の一方端側に固定されたロータディスク(5)に連結される円筒状のロータ(6)と、前記ロータの径方向の内側と外側とにそれぞれギャップを有して配置される内側コア(7)及び外側コア(8)と、前記内側コアに内側ステータ巻線(9)を巻装してなる内側ステータと、前記外側コアに外側ステータ巻線(10)を巻装してなる外側ステータと、前記回転軸の他方端側で前記ロータを跨いで前記内側ステータ巻線と前記外側ステータ巻線とを接続する側面ステータ巻線(11)と、前記内側コア及び前記外側コアの前記回転軸他方端側の端面と前記フレームの内面とで形成され前記側面ステータ巻線を収容するサイド空間(12)と、前記フレームの上部に設けられ前記サイド空間へオイルを供給するオイル供給口(13b)と、を備えるマルチギャップ型回転電機(1)であって、
前記サイド空間内で前記フレームと前記側面ステータ巻線との間に配置されるオイル流れ調整部材(14a〜14e)と、
前記オイル流れ調整部材の前記側面ステータ巻線とオイル流動間隙(18)を介して対向する面であって、その面に設けられ凸部(15a〜15e)及び凹部(16a〜16e)でなるオイル誘導路(17)が、軸中心水平より上側では下方に向かうに従って凹凸中心(C)から左右に広がる方向へ、また軸中心水平より下側では下方に向かうに従って左右端から前記凹凸中心に向かう方向へ延伸する凹凸面(19)と、
を備え、
前記オイル流れ調整部材は、前記フレームと一体になるよう前記フレームの内表面に固定されるものであることを特徴とするマルチギャップ型回転電機。
【請求項2】
前記凹凸面は、前記凸部及び前記凹部が直線状に延伸して形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のマルチギャップ型回転電機。
【請求項3】
前記凹凸面は、前記凸部及び前記凹部が曲線状に延伸して形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のマルチギャップ型回転電機。
【請求項4】
フレーム(2)に回転自在に軸支される回転軸(4)と、前記回転軸の一方端側に固定されたロータディスク(5)に連結される円筒状のロータ(6)と、前記ロータの径方向の内側と外側とにそれぞれギャップを有して配置される内側コア(7)及び外側コア(8)と、前記内側コアに内側ステータ巻線(9)を巻装してなる内側ステータと、前記外側コアに外側ステータ巻線(10)を巻装してなる外側ステータと、前記回転軸の他方端側で前記ロータを跨いで前記内側ステータ巻線と前記外側ステータ巻線とを接続する側面ステータ巻線(11)と、前記内側コア及び前記外側コアの前記回転軸他方端側の端面と前記フレームの内面とで形成され前記側面ステータ巻線を収容するサイド空間(12)と、前記フレームの上部に設けられ前記サイド空間へオイルを供給するオイル供給口(13b)と、を備えるマルチギャップ型回転電機(1)であって、
前記サイド空間内で前記フレームと前記側面ステータ巻線との間に配置されるオイル流れ調整部材(14a〜14e)と、
前記オイル流れ調整部材の前記側面ステータ巻線とオイル流動間隙(18)を介して対向する面であって、その面に設けられ凸部(15a〜15e)及び凹部(16a〜16e)でなるオイル誘導路(17)が、軸中心水平より上側では下方に向かうに従って凹凸中心(C)から左右に広がる方向へ、また軸中心水平より下側では下方に向かうに従って左右端から前記凹凸中心に向かう方向へ延伸する凹凸面(19)と、
を備え、
前記凹凸面は、前記凸部及び前記凹部が直線状に延伸して形成されたものであることを特徴とするマルチギャップ型回転電機。
【請求項5】
前記凹凸中心は、前記オイル供給口の中心と一致することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のマルチギャップ型回転電機。
【請求項6】
前記凹凸中心は、前記回転軸の中心に位置することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のマルチギャップ型回転電機。
【請求項7】
前記オイル流れ調整部材は、前記側面ステータ巻線のコイル被膜硬度より低い硬度を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のマルチギャップ型回転電機。
【請求項8】
前記オイル流れ調整部材は、JIS B 7726においてE50以下の硬度を有する絶縁体であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のマルチギャップ型回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ巻線を効果的に冷却するマルチギャップ型回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
車両において、エンジンと変速機との間に配設されるエンジン直結型モータのように限られたスペースで特に偏平構造が求められる回転電機の分野では、高トルクを出力するものとして、磁気ギャップを複数有するマルチギャップ型回転電機が知られている。例えば、特許文献1に開示された回転電機は、ロータの内径側と外径側とにそれぞれギャップを設けて内側ステータと外側ステータとを配置したダブルステータ型モータであり、シングルステータ型モータと比較して高トルクを発生することが可能である。
【0003】
特許文献1に開示された回転電機のステータ巻線におけるオイル冷却構造は、モータのシャフトに、内側コアの内周面とシャフト径大部の外周面との間に形成される内径側空間へオイルを導入する第1オイル導入路が設けられ、モータフレームの天方向には、外側コアの外周面とモータフレームの内周面との間に形成される外径側空間へオイルを導入する第2オイル導入路と、側面コアのサイド面とモータフレームの対向面との間に形成されるサイド空間へオイルを導入する第3オイル導入路とが設けられたものである。この第1〜第3オイル導入路を通ってモータフレームの外部よりオイルが導入され、各オイル流出口より内径側空間、外径側空間、およびサイド空間へオイルが噴出されることで、内側ステータ、外側ステータ、および側面ステータがオイル冷却されるのである。
また、特許文献1の実施例3では、側面コアのサイド面とモータフレーム内周面との間に形成されるサイド空間へ導入されたオイルを円周方向へ拡散させるため、円弧状の突出部がモータフレームの側面コアと対向する壁面上側に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−176203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術には、モータフレームの対向壁面上側に形成された突出部が円弧状であるため、側面ステータ巻線の軸水平中心より上側にはオイルが供給され、その部分は冷却されるが、側面ステータ巻線の軸水平中心より下側には、オイルを誘導する案内部材が存在しないためオイルが供給されず、その部分は冷却されにくいという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、側面ステータ巻線の軸水平中心より下側の冷却性能を向上させ得るマルチギャップ型回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、フレーム(2)に回転自在に軸支される回転軸(4)と、前記回転軸の一方端側に固定されたロータディスク(5)に連結される円筒状のロータ(6)と、前記ロータの径方向の内側と外側とにそれぞれギャップを有して配置される内側コア(7)及び外側コア(8)と、前記内側コアに内側ステータ巻線(9)を巻装してなる内側ステータと、前記外側コアに外側ステータ巻線(10)を巻装してなる外側ステータと、前記回転軸の他方端側で前記ロータを跨いで前記内側ステータ巻線と前記外側ステータ巻線とを接続する側面ステータ巻線(11)と、前記内側コア及び前記外側コアの前記回転軸他方端側の端面と前記フレームの内面とで形成され前記側面ステータ巻線を収容するサイド空間(12)と、前記フレームの上部に設けられ前記サイド空間へオイルを供給するオイル供給口(13b)と、を備えるマルチギャップ型回転電機(1)であって、前記サイド空間内で前記フレームと前記側面ステータ巻線との間に配置されるオイル流れ調整部材(14a〜14e)と、前記オイル流れ調整部材の前記側面ステータ巻線とオイル流動間隙(18)を介して対向する面であって、その面に設けられ凸部(15a〜15e)及び凹部(16a〜16e)でなるオイル誘導路(17)が、軸中心水平より上側では下方に向かうに従って凹凸中心(C)から左右に広がる方向へ、また軸中心水平より下側では下方に向かうに従って左右端から前記凹凸中心に向かう方向へ延伸する凹凸面(19)と、を備え
、前記オイル流れ調整部材は、前記フレームと一体になるよう前記フレームの内表面に固定されるものであることを特徴とする。
また、上記目的を達成するためになされた請求項4に記載の発明は、フレーム(2)に回転自在に軸支される回転軸(4)と、前記回転軸の一方端側に固定されたロータディスク(5)に連結される円筒状のロータ(6)と、前記ロータの径方向の内側と外側とにそれぞれギャップを有して配置される内側コア(7)及び外側コア(8)と、前記内側コアに内側ステータ巻線(9)を巻装してなる内側ステータと、前記外側コアに外側ステータ巻線(10)を巻装してなる外側ステータと、前記回転軸の他方端側で前記ロータを跨いで前記内側ステータ巻線と前記外側ステータ巻線とを接続する側面ステータ巻線(11)と、前記内側コア及び前記外側コアの前記回転軸他方端側の端面と前記フレームの内面とで形成され前記側面ステータ巻線を収容するサイド空間(12)と、前記フレームの上部に設けられ前記サイド空間へオイルを供給するオイル供給口(13b)と、を備えるマルチギャップ型回転電機(1)であって、前記サイド空間内で前記フレームと前記側面ステータ巻線との間に配置されるオイル流れ調整部材(14a〜14e)と、前記オイル流れ調整部材の前記側面ステータ巻線とオイル流動間隙(18)を介して対向する面であって、その面に設けられ凸部(15a〜15e)及び凹部(16a〜16e)でなるオイル誘導路(17)が、軸中心水平より上側では下方に向かうに従って凹凸中心(C)から左右に広がる方向へ、また軸中心水平より下側では下方に向かうに従って左右端から前記凹凸中心に向かう方向へ延伸する凹凸面(19)と、を備え、前記凹凸面は、前記凸部及び前記凹部が直線状に延伸して形成されたものであることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、マルチギャップ型回転電機(1)は、サイド空間(12)内でフレーム(2)と側面ステータ巻線(11)との間に配置されるオイル流れ調整部材(14a〜14e)と、オイル流れ調整部材(14a〜14e)の側面ステータ巻線(11)とオイル流動間隙(18)を介して対向する面であって、その面に設けられ凸部(15a〜15e)及び凹部(16a〜16e)でなるオイル誘導路(17)が、軸中心水平より上側では下方に向かうに従って凹凸中心(C)から左右に広がる方向へ、また軸中心水平より下側では下方に向かうに従って左右端から凹凸中心(C)に向かう方向へ延伸する凹凸面(19)と、を備える。よって、オイル流動間隙(18)に供給されたオイルは、表面張力によって側面ステータ巻線(11)の延伸方向に流動しつつ、オイル流れ調整部材(14a〜14e)の凹凸面(19)に形成されるオイル誘導路(17)との交差部において、一部のオイルをオイル誘導路(17)に流動させることで、側面ステータ巻線(11)との接触面積や接触時間を増加させ、側面ステータ巻線全体の冷却性能を向上させるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係るマルチギャップ型回転電機の構成を示す縦断面図である。
【
図2】本発明に係るマルチギャップ型回転電機のロータおよびステータの断面斜視図である。
【
図3】第一実施態様のオイル流れ調整部材の凹凸面を示す正面図である。
【
図4】
図3のIV−IV線により、第一実施態様の凹凸面とその断面を示す斜視図である。
【
図5】
図1のV−V線により、第一実施態様によるオイル流れの矢印を側面ステータ巻線とともに示す断面図である。
【
図6】
図5のA部により、オイルとオイル流れの矢印を、凹凸面を有するオイル流れ調整部材と側面ステータ巻線とともに模式的に示す断面斜視図である。
【
図7】第二実施態様のオイル流れ調整部材の凹凸面を示す正面図である。
【
図8】
図7のVIII−VIII線により、第二実施態様の凹凸面とその断面を示す斜視図である。
【
図9】第三実施態様のオイル流れ調整部材の凹凸面を示す正面図である。
【
図10】
図9のX−X線により、第三実施態様の凹凸面とその断面を示す斜視図である。
【
図11】第四実施態様のオイル流れ調整部材の凹凸面を示す正面図である。
【
図12】
図11のXII−XII線により、第四実施態様の凹凸面とその断面を示す斜視図である。
【
図13】第五実施態様のオイル流れ調整部材の凹凸面を示す正面図である。
【
図14】
図13のXIV−XIV線により、第五実施態様の凹凸面とその断面を示す斜視図である。
【
図15】
図1のXV−XV線により、第五実施態様によるオイル流れの矢印を側面ステータ巻線とともに示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。但し、本明細書中の全図において相互に対応する部分又は同様な機能を有する部分には同一符号を付し、重複部分においては後述での説明を適宜省略する。
【0011】
図1及び
図2に示す本発明の実施形態に係るマルチギャップ型回転電機1は、車両などに多用される電動機又は発電機を対象としたものである。
【0012】
図1及び
図2に示すように、フレーム2にベアリング3などを介して回転自在に軸支される回転軸4の一方端側には、独楽状のロータディスク5が固定されている。ロータディスク5の軸方向の外周端面には、円筒状のロータ6が連結されている。ロータ6は軟磁性体で形成され、例えば珪素鋼の薄板でなる電磁鋼板を回転軸4方向に積層して形成される。ロータ6の内周及び外周には、内側コア7及び外側コア8の積層厚に応じた適宜な間隔で貼り付け又は埋め込み等の手段により磁石が設けられている。
【0013】
ロータ6の径方向の内側及び外側には、それぞれ所定のギャップを設けて内側コア7及び外側コア8が配置されている。内側コア7及び外側コア8は軟磁性体で形成され、例えば珪素鋼の薄板でなる電磁鋼板を回転軸4方向に積層して形成される。
【0014】
内側コア7及び外側コア8は、図示しないスロットを有し、内側コア7のスロットには内側ステータ巻線9が巻回され、外側コア8のスロットには外側ステータ巻線10が巻回されている。そして、内側コア7と内側ステータ巻線9とにより内側ステータが形成され、外側コア8と外側ステータ巻線10とにより外側ステータが形成される。
【0015】
内側コア7及び外側コア8の回転軸4他方端側の端面には、ロータ6の端面を跨いで内側ステータ巻線9と外側ステータ巻線10とを接続する側面ステータ巻線11が、内側コア7及び外側コア8のそれぞれの端面から突出して回転軸4に放射状となるよう設けられている。側面ステータ巻線11は、内側コア7及び外側コア8の回転軸4他方端側の端面とフレーム2の内面とで形成されるサイド空間12に収容される。
【0016】
サイド空間12内の側面ステータ巻線11とフレーム2の内表面との間には、フレーム2とは別部材としてのオイル流れ調整部材14a〜14eがフレーム2の内表面に固定されフレーム2と一体となるように設けられている。オイル流れ調整部材14a〜14eは、側面ステータ巻線11と対向する面に凸部15a〜15e及び凹部16a〜16eでなる凹凸面19を備えている。凸部15a〜15eの端面と側面ステータ巻線11の表面との間には、オイルが流動するオイル流動間隙18が設けられている。オイル流動間隙18の間隙距離は1mm以下であることが好ましい。
【0017】
オイル流れ調整部材14a〜14eは、絶縁性を有する軟弾性体であることが好ましく、ゴム等が好適に採用され得る。側面ステータ巻線11のコイルは、コイル組付けのばらつきなどに起因して、オイル流れ調整部材14a〜14eと干渉することがある。その場合、一般的なコイル被覆の硬度はJIS B 7726においてE100であるから、オイル流れ調整部材14a〜14eの硬度がJIS B 7726においてE50以下のようにコイル被覆の硬度より低いものであれば、オイル流れ調整部材14a〜14eが凹むことによりコイルの損傷を防止することができる。すなわち、オイル流れ調整部材14a〜14eとの接触による側面ステータ巻線11の損傷を回避するため、オイル流れ調整部材14a〜14eの硬度はJIS B 7726においてE50以下であることが好ましい。
【0018】
サイド空間12上方のフレーム2上面には、オイル流入口13aが開口している。オイル流入口13aには、オイル導入路13が連通している。オイル導入路13には、フレーム2上部であってサイド空間12の天井部に開口するオイル供給口13bが鉛直下方へ連通して延設されている。このような構成により、フレーム2の外部からサイド空間12へオイルを導入することができる。
【0019】
オイル供給口13bは、オイル流れ調整部材14a〜14eのオイル流動間隙18を形成する面の鉛直上方を、少なくともその一部で含むような回転軸4方向の垂直位置に設けられている。そのため、オイル供給口13bからサイド空間12へ供給されるオイルは、オイル流動間隙18へ的確に流入することができる。
【0020】
(第一実施態様)
図3〜
図6に示すように、凹凸面19を有するオイル流れ調整部材14aは、側面ステータ巻線11の延伸方向とは異なる方向へ、凹凸面19の凹凸中心Cに位置する回転軸4と同心の円環で曲線状に延伸する複数の凸部15a及び凹部16aにより形成されたオイル誘導路17を備えている。オイル誘導路17は、凹凸面19の軸中心水平より上側では下方に向かうに従って凹凸中心Cから左右に広がる方向へ、また凹凸面19の軸中心水平より下側では下方に向かうに従って左右端から凹凸中心Cに向かう方向へ延伸している。尚、オイル供給口13bは、回転軸4と同心の円環で曲線状に延伸する複数の凸部15a及び凹部16aにより形成されたオイル誘導路17の最上段部近傍に、凹凸中心Cと中心を一致して設けられている。
【0021】
凸部15aの端面と側面ステータ巻線11の側表面との間にオイル流動間隙18が形成される。
図6に示すように、オイル供給口13bから供給されオイル流動間隙18へ流入したオイルは、表面張力によって互いの表面を伝いつつ、凹凸面19の軸中心水平より上側では、側面ステータ巻線11の両面11a、11bを内径側に向かって流動するものと、オイル誘導路17に分流して側面ステータ巻線11の延伸方向と交差する方向、すなわち下方に向かうに従って凹凸中心Cを境に左右に広がる方向へ流動するものとに分かれる。また、凹凸面19の軸中心水平より下側では、オイル流動間隙18へ流入したオイルは、側面ステータ巻線11の両面11a、11bを外径側に向かって流動するものと、オイル誘導路17に分流し、側面ステータ巻線11の延伸方向と交差する方向、すなわち下方に向かうに従って左右端から凹凸中心Cへ流動するものとに分かれる。このように、オイルが側面ステータ巻線11全体に行き渡ることにより、オイルの側面ステータ巻線11との接触面積や接触時間が増加し、側面ステータ巻線11からの放熱が増加してステータコイル全体の冷却性能が向上する。
【0022】
オイル流れ調整部材14aの凸部15a及び凹部16aの形状及び寸法並びにオイル誘導路17の形状及び寸法などは、回転電機の容量や体格などに応じて適宜に設定されるものである。尚この段落で述べた上記事項及び上述の「オイル誘導路17」に関しては、以下に述べる第二実施態様乃至第五実施態様における第一実施態様の前記諸事項に相当する各事項にも同様に適用されるものである。また、上述の「凹凸中心C」に関しては、以下に述べる第二実施態様乃至第四実施態様にも同様に適用されるものである。
【0023】
(第二実施態様)
図7及び
図8に示すように、凹凸面19を有するオイル流れ調整部材14bは、側面ステータ巻線11の延伸方向とは異なる方向へ、凹凸面19の凹凸中心Cに位置する回転軸4と同心の正方形で直線状に延伸する複数の凸部15b及び凹部16bにより形成されたオイル誘導路17を備える。これにより、
図5及び
図6に示すように、第一実施態様と同様の効果を得ることができる。
【0024】
(第三実施態様)
図9及び
図10に示すように、凹凸面19を有するオイル流れ調整部材14cは、側面ステータ巻線11の延伸方向とは異なる方向へ、凹凸面19の凹凸中心Cに位置する回転軸4と同心の楕円形で曲線状に延伸する複数の凸部15c及び凹部16cにより形成されたオイル誘導路17を備える。これにより、
図5及び
図6に示すように、第一実施態様と同様の効果を得ることができる。
【0025】
(第四実施態様)
図11及び
図12に示すように、凹凸面19を有するオイル流れ調整部材14dは、側面ステータ巻線11の延伸方向とは異なる方向へ、凹凸面19の凹凸中心Cに位置する回転軸4の中心を原点とする二組の双曲線形状で曲線状に延伸する複数の凸部15d及び凹部16dにより形成されたオイル誘導路17を備える。これにより、
図5及び
図6に示すように、第一実施態様と同様の効果を得ることができる。
【0026】
(第五実施態様)
第一実施態様乃至第四実施態様の各態様では、凹凸面19の凹凸中心Cは回転軸4の中心に位置しオイル供給口13bの中心と一致するものである。これに対し第五実施態様は、凹凸面19の軸中心水平より上側の凹凸中心Cがオイル供給口13bの中心と一致し回転軸4の中心には位置しないように構成したものである。この構成は第一実施態様乃至第四実施態様に対してそれぞれの変形態様として適用可能であるが、
図13〜
図15に示すように、第二実施態様に変形適用した例で説明する。
【0027】
オイル流れ調整部材14eの凹凸面19の軸中心水平より上側では、
図13に示すように、複数の凸部15e及び凹部16eが山形に交わる各頂点を接続した直線を凹凸中心Cとし、この凹凸中心Cは回転軸4の中心から右方へ所定距離離隔している。すなわち、
図15に示すように、この離隔距離により、回転軸4中心の垂直方向位置から反時計廻り方向にずれた位置に設けられたオイル供給口13bの中心を凹凸面19の凹凸中心Cに一致させることができる。これにより、
図5及び
図6に示すように、第一実施態様と同様の効果を得ることができる。尚、オイル流れ調整部材14eの凹凸面19の軸中心水平より下側における凹凸中心Cは、回転軸4中心に位置するように
図13で示しているが、凹凸面19の軸中心水平より上側における凹凸中心Cと同様にオイル供給口13bの中心と一致するか又は回転軸4中心とは異なる位置となるように構成してもよい。
【0028】
以上詳述したことから明らかなように、本実施形態のマルチギャップ型回転電機1は、サイド空間12内でフレーム2と側面ステータ巻線11との間に配置されるオイル流れ調整部材14a〜14eと、オイル流れ調整部材14a〜14eの側面ステータ巻線11とオイル流動間隙18を介して対向する面であって、その面に設けられ凸部15a〜15e及び凹部16a〜16eでなるオイル誘導路17が、軸中心水平より上側では下方に向かうに従って凹凸中心Cから左右に広がる方向へ、また軸中心水平より下側では下方に向かうに従って左右端から凹凸中心Cに向かう方向へ延伸する凹凸面19と、を備える。
【0029】
そのため、オイル流動間隙18に供給されたオイルは、表面張力によって側面ステータ巻線11の延伸方向に流動しつつ、オイル流れ調整部材14a〜14eの凹凸面19に形成されるオイル誘導路17との交差部において、一部のオイルをオイル誘導路17に流動させることで、側面ステータ巻線11との接触面積や接触時間を増加させ、側面ステータ巻線全体の冷却性能を向上させるという優れた効果を奏する。
【0030】
また、凹凸中心Cは、オイル供給口13bの中心と一致するので、オイルがオイル誘導路17へ的確且つ均等に供給され、オイルを凹凸面19全面へ効果的に分散させることができる。
【0031】
また、凹凸中心Cは、回転軸4の中心に位置するので、オイルを凹凸中心Cへ容易且つ効果的に供給することができるとともに、オイルをオイル誘導路17へより均等且つ効果的に分散させることができる。
【0032】
また、オイル流れ調整部材14a〜14eは、フレーム2と一体になるようフレーム2の内表面に固定されるものであるから、凹凸面19を精確、確実且つ容易にサイド空間12に配置することができる。
【0033】
また、オイル流れ調整部材14a〜14eは、側面ステータ巻線11のコイル被膜硬度より低い硬度を有するので、オイル流れ調整部材14a〜14eとの接触による側面ステータ巻線11の損傷を効果的に回避することができる。
【0034】
また、オイル流れ調整部材14a〜14eは、JIS B 7726においてE50以下の硬度を有する絶縁体である。そのため、オイル流れ調整部材14a〜14eとの接触による側面ステータ巻線11の損傷を効果的に回避することができるとともに、側面ステータ巻線11の絶縁性を確保することができる。
【0035】
また、凹凸面19は、凸部15a〜15e及び凹部16a〜16eが直線状に延伸して形成されたものである。そのため、側面ステータ巻線11が、多くのオイル誘導路17と交差することになり、側面ステータ巻線11を伝うオイルはオイル誘導路17を介して他の側面ステータ巻線11へ効果的に流動するので、側面ステータ巻線11とオイルとの接触面積が増加して巻線冷却性能が向上する。
【0036】
また、凹凸面19は、凸部15a〜15e及び凹部16a〜16eが曲線状に延伸して形成されたものである。そのため、側面ステータ巻線11が、多くのオイル誘導路17と交差することになり、側面ステータ巻線11を伝うオイルはオイル誘導路17を介して他の側面ステータ巻線11へ効果的に流動するので、側面ステータ巻線11とオイルとの接触面積が増加して巻線冷却性能が向上する。
【0037】
なお、本発明は、当業者の知識に基づいて様々な変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものを含む。また、前記変更等を加えた実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りいずれも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0038】
1 マルチギャップ型回転電機
2 フレーム
4 回転軸
5 ロータディスク
6 ロータ
7 内側コア
8 外側コア
9 内側ステータ巻線
10 外側ステータ巻線
11 側面ステータ巻線
12 サイド空間
13 オイル導入路
13a オイル流入口
13b オイル供給口
14a〜14e オイル流れ調整部材
15a〜15e 凸部
16a〜16e 凹部
17 オイル誘導路
18 オイル流動間隙
19 凹凸面
C 凹凸中心