特許第6448577号(P6448577)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6448577
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】からくり時計
(51)【国際特許分類】
   G04B 45/00 20060101AFI20181220BHJP
【FI】
   G04B45/00 T
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-81944(P2016-81944)
(22)【出願日】2016年4月15日
(65)【公開番号】特開2017-191070(P2017-191070A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2018年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115773
【氏名又は名称】リズム時計工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082784
【弁理士】
【氏名又は名称】森 正澄
(72)【発明者】
【氏名】長竹 健樹
【審査官】 藤田 憲二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−171574(JP,A)
【文献】 特開平06−249973(JP,A)
【文献】 特開平02−157683(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0130423(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 21/00,23/00,25/00,45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータMの正転または反転により、文字板10(11,12)が上下動作する形式の時計100において、下記a、b、c、d、e、fおよびgを備えたことを特徴とするからくり時計。
a:モータMの回転駆動に連係して駆動力を伝達する複数歯車からなる輪列6を備えること。
b:文字板10の裏面に一端部21,31が回転可能に取付けられる複数のリンク部20,30を備えること。
c:前記複数のリンク部20,30は、その他端部22が時計支持板(中板1)に回転可能に取付けられる文字板支持用のリンク部(支持用リンク部20)と、その他端部32が前記輪列の終端歯車8に固着される文字板駆動用のリンク部(駆動用リンク部30)とを備えること。
d:前記文字板10は、前記文字板支持用のリンク部(支持用リンク部20)に支持されるとともに、前記文字板駆動用のリンク部(駆動用リンク部30)によって回転可能に設けられること。
e:前記複数のリンク部20,30の前記一端部21,31が回転可能に取付けられる箇所における前記文字板10の裏面に、テーパ面16aを設けた突部16を形成するとともに、前記リンク部20,30の前記一端部21,31には、前記テーパ面16aに当接するテーパ面25a,35aを設けた突部25,35を形成すること。
f:前記モータMが正転すると、前記輪列6の前記終端歯車8が回転して、前記文字板駆動用のリンク部(駆動用リンク部30)を作動させて、前記文字板10を下降させるようにしたこと。
g:前記モータMが反転すると、前記輪列6の前記終端歯車8が反転して、前記文字板駆動用のリンク部(駆動用リンク部30)を作動させて前記文字板10を上昇させ、当該文字板10が元の位置に戻った際に、前記リンク部20,30の前記突部25,35に設けた前記テーパ面25a,35aが、文字板10の前記突部16に設けた前記テーパ面16aに当接するようにしたこと。
【請求項2】
文字板10は、左右に二分割された一対の文字板(分割文字板11,12)であり、これらの文字板(分割文字板11,12)における中央の分割部位に対し、前記文字板支持用のリンク部(支持用リンク部20)および文字板駆動用のリンク部(駆動用リンク部30)が左右対称に配置されており、さらに前記輪列6の前記終端歯車8に噛合する、当該終端歯車と同形状の補助歯車9が設けられており、前記終端歯車8および補助歯車9が、それぞれ前記一対の文字板駆動用のリンク部(駆動用リンク部30)に各別に固着されて、前記一対の文字板(分割文字板11,12)は前記中央の分割部位に対し左右対称に動作することを特徴とする請求項1記載のからくり時計。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字板が上下動作する構造のからくり時計に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なからくり時計において、文字板が上下動作するものが知られている。この種のからくり時計は、例えば正時になると、1枚に組み合わされていた文字板が、複数枚に分割するとともに所定の軸の周りに上下動を伴って回転するもの、重畳的に組み合わされていた複数枚の文字板が、それぞれの軸の周りに回転するもの、或いは、文字板の一部が上下動を伴って回転するものなどが案出されている(特許文献1〜4)。
【0003】
上述の文字板が回転する構造のからくり時計は、一つのモータを駆動源として、これを複数の歯車からなる輪列を用い、モータの正転および反転で、一つの文字板或いは各個の分割文字板を駆動するのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−153971号公報
【特許文献2】特開2004−028972号公報
【特許文献3】特開2004−037319号公報
【特許文献4】特開2013−024831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した文字板が上下動する構造のからくり時計において、文字板の上下駆動にリンク部材を用いることが知られている。この場合、リンク部材は、文字板を駆動させるもの(駆動用リンク部)と、その文字板の駆動を保持するもの(支持用リンク部)が用いられるところ、文字板が閉まった位置におけるリンク部材(駆動用リンク部および支持用リンク部)とこれに係合する文字板との間に、文字板の開閉動作、とりわけ開動作がスムーズに行われるように、アガキ(ガタツキ)を設けている。
【0006】
ところが、上述したアガキは、文字板が閉まった際に、文字板とリンク部材との間に、前後および左右方向のガタツキを許容するため、文字板の自重でリンク部材が斜めに偏位することがある。このようにリンク部材が偏位すると、文字板の動作開始の際に、文字板の動作に不具合を生じるおそれがある。
【0007】
本発明は、文字板が上下動する構造のからくり時計において、文字板の上昇下降により生じ得るリンク部材の動作の不具合を回避することができるからくり時計を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願第1請求項に記載した発明は、実施例で用いた符号を付して記すと、モータMの正転または反転により、文字板10(11,12)が上下動作する形式の時計100において、下記a、b、c、d、e、fおよびgを備えたことを特徴とするからくり時計である。
a:モータMの回転駆動に連係して駆動力を伝達する複数歯車からなる輪列6を備えること。
b:文字板10の裏面に一端部21,31が回転可能に取付けられる複数のリンク部20,30を備えること。
c:前記複数のリンク部20,30は、その他端部22が時計支持板(中板1)に回転可能に取付けられる文字板支持用のリンク部(支持用リンク部20)と、その他端部32が前記輪列の終端歯車8に固着される文字板駆動用のリンク部(駆動用リンク部30)とを備えること。
d:前記文字板10は、前記文字板支持用のリンク部(支持用リンク部20)に支持されるとともに、前記文字板駆動用のリンク部(駆動用リンク部30)によって回転可能に設けられること。
e:前記複数のリンク部20,30の前記一端部21,31が回転可能に取付けられる箇所における前記文字板10の裏面に、テーパ面16aを設けた突部16を形成するとともに、前記リンク部20,30の前記一端部21,31には、前記テーパ面16aに当接するテーパ面25a,35aを設けた突部25,35を形成すること。
f:前記モータMが正転すると、前記輪列6の前記終端歯車8が回転して、前記文字板駆動用のリンク部(駆動用リンク部30)を作動させて、前記文字板10を下降させるようにしたこと。
g:前記モータMが反転すると、前記輪列6の前記終端歯車8が反転して、前記文字板駆動用のリンク部(駆動用リンク部30)を作動させて前記文字板10を上昇させ、当該文字板10が元の位置に戻った際に、前記リンク部20,30の前記突部25,35に設けた前記テーパ面25a,35aが、文字板10の前記突部16に設けた前記テーパ面16aに当接するようにしたこと。
【0009】
本願第2請求項に記載した発明は、請求項1において、文字板10は、左右に二分割された一対の文字板(分割文字板11,12)であり、これらの文字板(分割文字板11,12)における中央の分割部位に対し、前記文字板支持用のリンク部(支持用リンク部20)および文字板駆動用のリンク部(駆動用リンク部30)が左右対称に配置されており、さらに前記輪列6の前記終端歯車8に噛合する、当該終端歯車と同形状の補助歯車9が設けられており、前記終端歯車8および補助歯車9が、それぞれ前記一対の文字板駆動用のリンク部(駆動用リンク部30)に各別に固着されて、前記一対の文字板(分割文字板11,12)は前記中央の分割部位に対し左右対称に動作することを特徴とするからくり時計である。
【発明の効果】
【0010】
本願第1請求項に記載した発明において、例えば正時にからくり動作が開始して、モータが正転すると、これに連係する輪列が駆動し、終端歯車が回転する。同時に、終端歯車に固着されている駆動用リンク部が回動し、この駆動用リンク部により文字板が下降する。文字板の下降に伴い、文字板の突部に設けたテーパ面と、リンク部の突部に設けたテーパ面は離反して行く。
【0011】
そして、文字板が下降した後にモータが反転すると文字板が上昇し、さらに文字板が元の位置に戻った際に、リンク部の突部に設けたテーパ面が、文字板の突部に設けたテーパ面に当接するので、リンク部の動きが規制され、これにより文字板の上昇下降により生じ得るリンク部材の動作の不具合を回避することができる。
【0012】
また、本願第2請求項に記載した発明のように、文字板が左右に二分割された一対の文字板として、これらの文字板における中央の分割部位に対し、前記文字板支持用のリンク部および文字板駆動用のリンク部を左右対称に配置し、さらに前記輪列の前記終端歯車に噛合する、当該終端歯車と同形状の補助歯車を設けて、前記終端歯車および補助歯車が、それぞれ前記一対の文字板駆動用のリンク部に各別に固着されて、前記一対の文字板が左右対称に動作するように構成すると、からくり効果の著効性も一層高まるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例に係り、からくり時計を示す正面図(分割文字板が正規位置)である。
図2】本発明の実施例に係り、からくり時計を示す正面図(分割文字板が3時、9時の位置)である。
図3】本発明の実施例に係り、からくり時計を示す正面図(分割文字板が6時の位置)である。
図4】本発明の実施例に係り、時計筐体を示す正面図(分割文字板が正規位置)である。
図5】本発明の実施例に係り、時計筐体を示す正面図(分割文字板が3時、9時の位置)である。
図6】本発明の実施例に係り、時計筐体を示す正面図(分割文字板が6時の位置)である。
図7】本発明の実施例に係り、分割文字板の回転軌跡を示す図である。
図8】本発明の実施例に係り、時計支持板(地板)に設けたモータユニットおよび輪列を正面方向から見た図である。
図9】本発明の実施例に係り、時計支持板(地板)に設けたモータユニットおよび輪列を背面方向から見た図である。
図10】本発明の実施例に係り、時計支持板(中板)に設けた文字板(分割文字板)を正面方向から見た図である。
図11】本発明の実施例に係り、文字板(分割文字板)にリンク部(支持用リンク部および駆動用リンク部)を取付けた状態を示す斜視図である。
図12】本発明の実施例に係り、文字板(分割文字板)にリンク部(支持用リンク部)の一端部を取付け前の状態を示す分解斜視図である。
図13】本発明の実施例に係り、文字板(分割文字板)にリンク部(支持用リンク部および駆動用リンク部)の一端部を取付け前の状態を示す分解斜視図である。
図14】本発明の実施例に係り、文字板(分割文字板)にリンク部(支持用リンク部および駆動用リンク部)の一端部を取付けた状態を示す一部縦断斜視図である。
図15】本発明の実施例に係り、駆動用リンク部の他端部を終端歯車および補助歯車に固着した箇所(図面の下端部)を示す斜視図である。
図16】本発明の実施例に係り、文字板(分割文字板)のテーパ面とリンク部(支持用リンク部および駆動用リンク部)のテーパ面が当接している状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0015】
本例における時計100のからくり構造は、図1図7に示すように、例えば正時にモータMが正転して、文字板10(11,12)が上下動作するものである。すなわち、本例の文字板10は、左右に二分割された一対の文字板(分割文字板11,12)であり、これらの分割文字板11,12は、図1および図4に示す位置から、それぞれ左右に拡開しながら(図2および図5)半円弧状の軌跡(図7の矢印参照)を辿って下方へ移動し、下方で合体する(図3および図6)。爾後、この軌跡を辿って上方へ移動し、再び当初の位置に復帰するように構成されている。なお、図中、符号3は時計筐体、符号4は装飾体である。
【0016】
モータMの駆動力は、図8図10に示すように、モータMおよびモータユニット5に連係する輪列6、連係歯車7、終端歯車8に駆動伝達される。そして、文字板10(11,12)の上下動作は、後述する駆動用リンク部30を介して、行われる。なお、本例の場合は、さらに、終端歯車8に噛合する当該終端歯車と同形状の補助歯車9を用いて、各々別に分割文字板11,12の上下動作が行われる。
【0017】
文字板10(11,12)は、文字板支持用のリンク部たる支持用リンク部20によって上述した半円弧状の軌跡を確実に辿るように保持されている。そして、分割文字板11,12には、中央の分割部位に対し、支持用リンク部20および駆動用リンク部30が左右対称に配置されている。これにより、分割文字板11,12は、中央の分割部位に対し、左右対称に動作する。
【0018】
図11図14に示すように、支持用リンク部20は、その一端部21が、文字板10(11,12)の裏面に回転可能に取付けられる。同様に、駆動用リンク部30も、その一端部31が文字板10(11,12)の裏面に回転可能に取付けられる。
【0019】
本例の場合、文字板10(11,12)の裏面に、リング状に突出する外側リング部13と、内側リング部14、中央にボス部15を形成している。そして、これに対応させて、支持用リンク部20の一端部21と駆動用リンク部30の一端部31にはそれぞれ外側リング部23,33、内側リング状突出部24,34を形成し、これらの間にプーリ50を装着して、座付きネジ60で、文字板10(11,12)と、支持用リンク部20の一端部21および駆動用リンク部30の一端部31とを、回転可能に結合している。
【0020】
支持用リンク部20の他端部22は、時計支持板(中板1)に設けたボス部(図示を省略)に回転可能に取付けられる。また、駆動用リンク部30の他端部32は、図15に示すように、終端歯車8または補助歯車9の中央部に固着される。
【0021】
さらに本例では、図12図14および図16に示すように、複数のリンク部20,30の前記一端部21,31が回転可能に取付けられる箇所における文字板10の裏面に、テーパ面16aを設けた突部16を形成している。また、リンク部20,30の前記一端部21,31には、文字板10の前記テーパ面16aに当接するテーパ面25a,35aを設けた突部25,35を形成している。
【0022】
上記のように構成される本例の時計100において、例えば正時に図示を省略した制御部から駆動信号が送られて、モータMが正転すると、これに連係する輪列6および連係歯車7が駆動し、終端歯車8と補助歯車9が回転する。同時に、終端歯車8および補助歯車9に固着されている駆動用リンク部30が回動し、この駆動用リンク30により文字板10(11,12)が半円弧の軌跡を形成して下降する。文字板10の下降に伴い、文字板10の突部16に設けたテーパ面16aと、リンク部20,30の突部25,35に設けたテーパ面25a,35aは離反して行く。
【0023】
モータMが反転すると、輪列6の終端歯車8が反転して、文字板駆動用のリンク部(駆動用リンク部30)を作動させて文字板10を上昇させ、当該文字板10が元の位置に戻った際に、リンク部20,30の突部25,35に設けたテーパ面25a,35aが、文字板10の突部16に設けた前記テーパ面16aに当接する。
【0024】
このように、文字板が下降した後にモータが反転すると文字板が上昇し、さらに文字板が元の位置に戻った際に、リンク部の突部に設けたテーパ面が、文字板の突部に設けたテーパ面に当接するので、リンク部の動きが、前後および左右方向において規制され、これにより文字板の上昇下降により生じ得るリンク部材の動作の不具合を回避することができるようになる。
【0025】
さらに、本例のように、分割文字板11,12に、支持用リンク部20および駆動用リンク部30を左右対称に配置し、さらに終端歯車8と補助歯車9を設けて、分割文字板11,12が左右対称に偏心回転動作するように構成した場合は、からくり効果の著効性も一層高まるものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のからくり時計は、リンク部材を設けてもその動作の不具合を回避できて動作の安定化に優れ、また、からくり効果にも優れたものであり、壁掛け時計などの時計一般に好適に利用することができるものである。
【符号の説明】
【0027】
1 時計支持板(中板)
2 時計支持板(地板)
3 時計筐体
4 装飾体
5 モータユニット
6 輪列
7 連係歯車
8 終端歯車
9 補助歯車
10 文字板
11 分割文字板
12 分割文字板
13 外側リング部
14 内側リング部
15 ボス部
16 突部
16a テーパ面
20 支持用リンク部
21 一端部
22 他端部
23 外側リング部
24 内側リング状突出部
25 突部
25a テーパ面
30 駆動用リンク部
31 一端部
32 他端部
33 外側リング部
34 内側リング状突出部
35 突部
35a テーパ面
50 プーリ
60 座付きネジ
100 時計
M モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16