特許第6448624号(P6448624)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6448624薬物送達デバイス用の駆動アセンブリ、および薬物送達デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6448624
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】薬物送達デバイス用の駆動アセンブリ、および薬物送達デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20181220BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
   A61M5/315 500
   A61M5/20 510
【請求項の数】16
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-515700(P2016-515700)
(86)(22)【出願日】2014年5月13日
(65)【公表番号】特表2016-518952(P2016-518952A)
(43)【公表日】2016年6月30日
(86)【国際出願番号】EP2014059690
(87)【国際公開番号】WO2014191190
(87)【国際公開日】20141204
【審査請求日】2017年5月1日
(31)【優先権主張番号】13169309.5
(32)【優先日】2013年5月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ベルナート
【審査官】 川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0077595(US,A1)
【文献】 特表2011−510782(JP,A)
【文献】 特表2010−508114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達デバイス(1)用の駆動アセンブリ(2)であって、
薬剤の用量を送達するために遠位方向に可動なピストンロッド(3)と、
薬剤の用量を送達するために押し下げられるように構成されたアクチュエータ(13)と、
遠位方向でピストンロッド(3)の運動を引き起こすように構成された駆動要素(4)と、
用量の投薬中に遠位方向でピストンロッド(3)の運動が減速されるように駆動要素(4)の運動を減速するように構成される減速機構(5)とを含み、
ここで、減速機構(5)は減速要素(6)を含み、該減速要素は、少なくとも用量の投薬中に薬物送達デバイス(1)のハウジング(7)に対して、および駆動要素(4)に対して固定され、
駆動要素(4)は、用量の投薬中にハウジング(7)に対して回転するように構成され、それによってピストンロッド(3)の回転運動を引き起こし、
減速要素(6)と駆動要素(4)とは、用量の投薬中に互いに対して擦れ合い、ここで減速要素(6)は第1の接触面(9)を含み、駆動要素(4)は第2の接触面(10)を含み、第1と第2の接触面(9、10)は、用量の設定中、ある距離で互いに配置され、アクチュエータ(13)の押し下げによって引き起こされる用量の投薬中、第1の接触面と第2の接触面は互いに擦れ合い、駆動アセンブリはばね部材(12)を含み、ここで、アクチュエータ(13)がユーザによって動作されるときにばね部材(12)からエネルギーが解放され、ばね部材(12)から解放されるエネルギーが駆動要素(4)を回転させる
前記駆動アセンブリ。
【請求項2】
駆動要素(4)の回転は、ピストンロッド(3)の軸方向および回転の複合運動を引き起こす請求項1に記載の駆動アセンブリ(2)。
【請求項3】
案内要素(8)を含み、該案内要素は、ピストンロッド(3)とねじ係合し、駆動要素(4)がピストンロッド(3)を回転させるときにピストンロッド(3)を遠位方向へ軸
方向移動させるように構成される請求項1または2に記載の駆動アセンブリ(2)。
【請求項4】
駆動要素(4)は、ピストンロッド(3)と係合される請求項1〜3のいずれか1項に記載の駆動アセンブリ(2)。
【請求項5】
駆動要素(4)は、ピストンロッド(3)に対して軸方向に可動である請求項1〜4のいずれか1項に記載の駆動アセンブリ(2)。
【請求項6】
駆動要素(4)は、ピストンロッド(3)に対して回転方向に固定される請求項1〜5のいずれか1項に記載の駆動アセンブリ(2)。
【請求項7】
用量の設定中に、駆動要素(4)は、ハウジング(7)に対して固定される請求項1〜6のいずれか1項に記載の駆動アセンブリ(2)。
【請求項8】
ばね部材(12)は、ねじりばねである請求項1〜7のいずれか1項に記載の駆動アセンブリ(2)。
【請求項9】
第2の接触面(10)は、デバイスの長手方向軸(11)に対して半径方向外側に向けられる請求項1〜8のいずれか1項に記載の駆動アセンブリ(2)。
【請求項10】
減速要素(6)は、ハウジング(7)の一体部材である請求項1〜9のいずれか1項に記載の駆動アセンブリ(2)。
【請求項11】
第1の接触面(9)と第2の接触面(10)とは、用量の投薬中に少なくとも一部重なり、接触面(9、10)の重なりの度合いは、アクチュエータ(13)の押下げの大きさ(a grade of depression)に依存する請求項1〜10のいずれか1項に記載の駆動アセンブリ。
【請求項12】
第2の接触面は、デバイスの投薬端に向けられる請求項1〜11のいずれか1項に記載の駆動アセンブリ。
【請求項13】
減速要素(6)は、案内要素(8)の一体部材である請求項3〜12のいずれか1項に記載の駆動アセンブリ(2)。
【請求項14】
第1の接触面(9)と第2の接触面(10)とは、周辺の表面に対して粗面化されている請求項8〜13のいずれか1項に記載の駆動アセンブリ(2)。
【請求項15】
駆動アセンブリが、
a)アクチュエータがより大きく押し下げられるほど、駆動要素がより大きく減速され、ここでユーザがアクチュエータをより大きく押し下げるほど、減速要素と駆動要素が互いに押圧される力がより大きくなる、あるいは、
b)アクチュエータがより大きく押し下げられるほど、駆動要素がより小さく減速される、ここでユーザがアクチュエータをより大きく押し下げるほど、減速要素と駆動要素とが互いにあまり接触しなくなる、
のいずれかであるように構成される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の駆動アセンブリ(2)。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の駆動アセンブリ(2)を含む薬物送達デバイス(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬物送達デバイス用の駆動アセンブリに関する。特に、本開示は、ペン型の薬物送達デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ペン型の薬物送達デバイスは、正式な医療訓練を受けていない人が注射するために使用される。これは、糖尿病などを患う患者の自己治療に益々一般的なものになっている。そのような自己治療は、患者が自分の病気を効果的に管理できるようにする。ペン型の薬物送達デバイスは、通常、駆動機構が中に位置するハウジングを含む。いくつかの種類の薬物送達デバイスは、薬物が入れられたカートリッジを収容するための区画を含む。駆動機構によって、カートリッジ内のピストンが変位され、それにより、中に収容されている薬物が注射針を通して投薬される。
【0003】
注射の前に、薬物の所要の用量が、用量設定機構によって設定される。用量設定機構の一般的な設計は、用量ダイアルスリーブ、用量指示スリーブ、駆動スリーブ、またはラチェットスリーブなどいくつかの管状またはスリーブ状要素を含む。そのようなスリーブは、しばしば互いの内部に収容され、互いに連結される。
【0004】
いくつかのデバイスは、ブレーキ機構を含み、ユーザが薬物送達デバイスの投薬速度を制御できるようにする。それにより、薬物の注射が、ユーザにとってより快適になり得る。
【0005】
特許文献1は、薬剤の送達の速度をユーザが制御できるようにするためのユーザ作動可能なブレーキを記載している。
【0006】
特許文献2は、注射処置の制御用の制動部材を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2008/053243号
【特許文献2】米国特許第4,333,359号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、改良された特性を有する薬物送達デバイス用の駆動アセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、薬剤の用量を送達するために遠位方向に可動なピストンロッドと、遠位方向でピストンロッドの運動を引き起こすように構成された駆動要素とを含む、薬物送達デバイス用の駆動アセンブリが提供される。駆動アセンブリは、用量の投薬中に遠位方向でピストンロッドの運動が減速されるように駆動要素の運動を減速するように構成される減速機構をさらに含む。減速機構は減速要素を含み、減速要素は、少なくとも用量の投薬中に薬物送達デバイスのハウジングに対して、および駆動要素に対して固定され、駆動要素が、用量の投薬中にハウジングに対して回転するように構成され、減速要素と駆動要素とが、用量の投薬中に互いに対して擦れ合う(rub against)。特に、駆動要素の回転は、減速機構によって減速される。一実施形態では、減速要素は、案内要素に対して固定される。案内要素は、ハウジングに対して固定されるか、またはハウジングによって構成される。
【0010】
用量の投薬中に遠位方向でピストンロッドの運動が減速されるように、駆動要素の運動を減速させるように構成された減速機構の利点は、ユーザが投薬速度を制御することができることである。さらに、駆動アセンブリ内、たとえば機構またはピストンに貯蔵された弾性エネルギーがピストンの運動に変わるのに十分な時間を得ることができる。それにより、投薬精度が高められる。
【0011】
一実施形態によれば、減速要素が第1の接触面を含み、駆動要素が第2の接触面を含む。用量の設定中、第1の接触面と第2の接触面が、ある距離で互いに配置される。用量の投薬中、第1の接触面と第2の接触面とが互いに接触することができ、特に、第1と第2の接触面は、用量の投薬中に互いに擦れ合うことができる。
【0012】
第1の接触面と第2の接触面とは、周辺の表面に対して粗面化(roughened)される。一実施形態によれば、コーティングが、第1と第2の接触面の少なくとも一方に塗布される。
【0013】
減速要素の第1の接触面は、半径方向内側に向けられる。たとえば、第1の接触面は、ハウジングの内周に配置される。代替として、第1の接触面は、デバイスの近位端に向けられる。薬物送達デバイスの近位端は、デバイスの投薬端から最も離れた端部でよい。
【0014】
一実施形態によれば、駆動アセンブリは、案内要素を含む。案内要素は、たとえば、ねじナットでよい。案内要素は、ハウジングに対して固定される。さらに、案内要素は、ピストンロッドとねじ係合する。たとえば駆動要素の回転によりピストンロッドが回転されるとき、ピストンロッドは、案内要素とのその協働により、軸方向に移動される。特に、ピストンロッドは、用量の設定中、遠位方向に移動されるように駆動要素によって回転される。それにより、薬物送達デバイスから用量が投薬される。遠位方向は、デバイスの投薬端に向かう方向でよい。
【0015】
遠位方向でピストンロッドの軸方向運動が駆動要素の回転運動によって引き起こされる駆動アセンブリの利点は、駆動アセンブリの任意の構成要素のそれほど大きな軸方向運動が必要とされないことである。
【0016】
第1の接触面は、案内要素の表面、特にデバイスの近位端に向けられた表面に位置する。特に、第1の接触面は、駆動要素に向けられた案内要素の表面に配置される。第1の接触面は、デバイスの近位端に向けられた案内要素の表面を少なくとも一部覆うことができる。
【0017】
一実施形態によれば、減速要素は、駆動アセンブリの別の構成要素の一体部材でよい。たとえば、減速要素は、ハウジングの一体部材でよい。特に、減速要素は、ハウジングの内周に位置する。代替として、減速要素は、案内要素の一体部材でよい。
【0018】
駆動要素の第2の接触面は、駆動アセンブリの長手方向軸に対して半径方向外側に向けられる。たとえば、第2の接触面は、駆動要素の外周に配置される。代替として、駆動要素の第2の接触面は、デバイスの投薬端に向けられる。特に、第2の接触面は、デバイスの投薬端に向けられた駆動要素の表面を少なくとも一部覆うことができる。
【0019】
第1と第2の接触面は、投薬操作全体にわたって互いに接触することができるように構成される。それにより、ピストンロッドの運動は、投薬操作中にいつでも減速される。代替として、第1と第2の接触面は、投薬操作のある期間中にのみ接触するように構成される。それにより、ユーザは、投薬操作の速度を制御することができる。
【0020】
一実施形態によれば、駆動アセンブリは、アクチュエータを含む。アクチュエータは、ボタンとして構成される。アクチュエータは、薬物の用量を投薬するためにユーザによって押し下げられる。用量を投薬するために、アクチュエータは、ユーザによって完全に、または一部押し下げられる。一実施形態によれば、アクチュエータがより大きく押し下げられるほど、投薬速度がより大きく減速される。代替として、アクチュエータがより大きく押し下げられるほど、投薬速度、または駆動要素がより小さく減速される。たとえば、第1と第2の接触面は、ユーザがアクチュエータを押し下げるときに互いに押圧される。ユーザがアクチュエータをより大きく押し下げるほど、減速要素と駆動要素、特に第1と第2の接触面が互いに押圧される力がより大きくなる。代替として、ユーザがアクチュエータをより大きく押し下げるほど、減速要素と駆動要素とが互いにあまり接触しなくなる。特に、ユーザがアクチュエータをより大きく押し下げるほど、第1と第2の接触面は互いにあまり接触しなくなる。これは、ピストンロッドの運動を減速させる摩擦力がユーザによって影響を及ぼされるという利点を有する。特に、ユーザは、投薬速度を遅くすべきか速くすべきかを決定することができる。
【0021】
駆動要素は、ピストンロッドと係合される。たとえば、駆動要素はスプラインを含むことがあり、スプラインは、ピストンロッドの対応する溝と係合される。溝は、ピストンロッドの全長に沿って延びることがある。特に、駆動要素は、ピストンロッドに対して軸方向に可動でよい。さらに、駆動要素は、ピストンロッドに対して回転方向に固定される。
【0022】
好ましい実施形態によれば、駆動アセンブリは、駆動要素の回転がピストンロッドの回転運動を引き起こすように構成される。特に、駆動要素の回転が、ピストンロッドの軸方向および回転の複合運動を引き起こす。特に、ピストンロッドが駆動要素によって回転されるとき、ピストンロッドは、案内要素を通って回転する。用量の設定中、駆動要素は、ハウジングに対して固定される。
【0023】
一実施形態によれば、駆動アセンブリは、ロッキング部材を含むことがある。ロッキング部材は、用量の設定中、ハウジングに対して固定される。特に、ロッキング部材とハウジングは、対応する係合手段を含むことがある。対応する係合手段は、用量の設定中に係合される。駆動要素は、ロッキング部材に固定して連結され、それにより、駆動部材は、少なくとも用量の設定中、ロッキング部材によってハウジングに対して固定される。駆動要素とロッキング部材は互いに対して固定され、それにより、ロッキング部材の運動は、駆動要素の対応する運動を引き起こす。
【0024】
用量の投薬中、ロッキング部材は、ハウジングに対して回転することができる。それにより、駆動要素は、用量の投薬中にハウジングに対して回転することができる。それにより、駆動要素は、ピストンロッドを移動させることができる。ロッキング部材の回転を可能にするために、ロッキング部材は、ハウジングとのその係合から解放されなければならない。たとえば、ロッキング部材は、ロッキング部材の回転を可能にするためにハウジングに対して軸方向に移動されなければならない。たとえば、ロッキング部材は、ロッキング部材の回転を可能にするために遠位方向に移動される。
【0025】
駆動アセンブリは、回転部材を含むことがある。用量の設定中および投薬中、回転部材が回転される。用量の設定中には、回転部材は、用量設定方向、たとえば時計方向に回転される。用量の投薬中には、回転部材は、用量投薬方向、たとえば反時計方向に回転される。回転部材は、ロッキング部材に結合される。アクチュエータが作動されるとき、回転部材は、ロッキング部材を移動させて、ハウジングとのロッキング部材の係合を解除することができる。さらに、用量の投薬中、回転部材の回転は、ロッキング部材の回転を引き起こすことができる。
【0026】
回転部材は、ラチェット機構を含むことがある。ラチェット機構は、ラチェットアームを含むことがある。回転部材は、ラチェット機構によってロッキング部材に対して連結される。ラチェット機構は、ロッキング部材に対する用量設定方向で回転部材の回転を可能にすることができる。用量の設定中、用量投薬方向での回転部材の意図しない回転は、ラチェット機構によって妨げられる。
【0027】
アセンブリは、用量設定部材を含むことがあり、用量設定部材は、用量を設定するために用量設定方向に回転されるように構成される。回転部材は、ユーザが用量設定部材を回転させるときに回転される。
【0028】
一実施形態によれば、駆動アセンブリは、ばね部材を含む。ばね部材は、ねじりばねでよい。ばね部材は、用量の設定中に負荷を受ける。アクチュエータがユーザによって動作されるとき、ばね部材からエネルギーが解放される。ばね部材から解放されるエネルギーは、駆動要素を回転させる。特に、ばね部材は、回転部材を回転させることができる。ばね部材の一端は、ハウジングに、またはハウジングに対して固定される別の部分に固定して連結される。ばね部材の他端は、回転部材に固定して連結される。回転部材が用量設定方向に回転されるとき、ばね部材が巻き上げられる。それにより、エネルギーは、ばね部材に貯蔵される。
【0029】
さらに、駆動アセンブリを含む薬物送達デバイスが提供される。駆動アセンブリは、前述したように構成される。
【0030】
薬物送達デバイスは、注射デバイス、特にペン型のデバイスでよい。薬物送達デバイスは、ユーザに薬物の用量を送達するのに適していることがある。用量は、アクチュエータを押し下げることによって送達される。薬物送達デバイスは、ユーザが用量のサイズを選択することができるように、可変用量デバイスでよい。特に、ユーザは、用量設定部材を回転させることによって用量のサイズを選択することができる。薬物送達デバイスは、複数回用量用途(multiple dose application)向けに構成される。薬物は、注射針によってユーザに送達される。デバイスは、使用準備の整った完全に組み立てられた状態でユーザに送達される。特に、デバイスは、充填済みでよい。薬物送達デバイスは、使い捨てデバイスでもよい。用語「使い捨て」は、利用可能な量の薬物が薬物送達デバイスから送達された後には薬物送達デバイスを再使用することができないことを意味する。代替として、薬物送達デバイスは、再使用可能なデバイスでもよい。薬物送達デバイスは、液体薬物を送達するように構成される。薬物は、たとえば、インスリンでよい。
【0031】
本明細書で使用する用語「薬物」は、好ましくは、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0032】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0033】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0034】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0035】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0036】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0037】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0038】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0039】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0040】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0041】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0042】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(C)と可変領域(V)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0043】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0044】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0045】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0046】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0047】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0048】
さらなる特徴、改良、および便宜は、図面に関連する例示的実施形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】アクチュエータが作動されていない状態での減速要素を含む薬物送達デバイスを示す図である。
図2】ユーザによってアクチュエータが作動された状態での図1の薬物送達デバイスを示す図である。
図3】アクチュエータが作動されていない状態での減速要素を含む薬物送達デバイスのさらなる実施形態を示す図である。
図4】アクチュエータが作動されているときの状態で図3の薬物送達デバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1は、アセンブリ2を含む薬物送達デバイス1を示す。特に、図1は、操作されていないとき、すなわちデバイスから用量が送達されていないときの状態で薬物送達デバイス1を示す。
【0051】
駆動アセンブリ2はピストンロッド3を含み、ピストンロッド3は、用量を投薬するために遠位方向に移動されるように構成される。特に、ピストンロッド3は、ピストン16を移動させるように構成され、ピストン16は、薬物送達デバイス1の投薬端に向けてカートリッジ14内に配置される。特に、ピストンロッド3は支承部25を含み、支承部25はピストン16と接触する。カートリッジは、カートリッジホルダ15内に配置され、カートリッジホルダ15は、ハウジング7に連結される。ピストンロッド3は、親ねじとして構成される。
【0052】
用量を設定するために、駆動アセンブリ2は、用量設定部材21を含む。用量設定部材21は、ユーザによって回転される。特に、用量設定部材21は、ハウジング7に対して軸方向に固定されるが、回転方向に可動である。特に、薬物送達デバイス1の長さは、用量設定部材21の回転中に変化しない。駆動アセンブリは、さらに、駆動軸23を含む。用量設定部材21を回転させることによって、駆動軸23も回転される。特に、駆動軸23は、スプライン26による用量の設定中に用量設定部材21に対して回転方向に固定される。スプライン26は、用量設定部材21の対応する溝(図示せず)に係合することができる。駆動アセンブリ2は、さらに、回転部材27を含む。回転部材27は、スリーブとして構成される。回転部材27は、駆動軸23の周りに同心に配置される。回転部材27は、スナップ連結によって駆動軸23に固定される。回転部材27は、駆動軸23に対して軸方向に固定される。組立ての理由から、駆動軸23と回転部材27は、別個の部品として設計される。代替実施形態では、駆動軸23と回転部材27は、1部品として設計される。用量設定方向での駆動軸23の回転は、回転部材27も回転させる。用量設定方向は、時計方向でよい。
【0053】
駆動アセンブリ2は、ばね部材12を含む。ばね部材12は、ねじりばねでよい。ばね部材12の一端は、ゼロ止め具(zero stop)24に固定され、ゼロ止め具24については後述する。代替実施形態では、ばね部材12の一端は、ハウジング7に固定される。ばね部材12の他端は、回転部材27に固定される。用量の設定中に回転部材27が回転されるとき、ばね部材12が巻き上げられ、それにより、ばね部材12にエネルギーが貯蔵される。
【0054】
駆動アセンブリ2は、さらにインジケータ19を含む。インジケータ19は、たとえば、数字付きスリーブ(number sleeve)でよい。インジケータ19は、設定された用量の量をユーザに示すように構成される。たとえば、設定された用量の量は、薬物送達デバイス1のハウジング7にある窓28を通して示される。インジケータ19は、回転部材27に対して回転方向に固定されるが、軸方向に可動である。たとえば、インジケータ19は、その内周にスプラインを含むことができ、スプラインは、回転部材27の対応する溝に係合することができる。特に、インジケータ19は、回転部材27の周りに同心に配置される。さらに、インジケータ19は、ハウジング7とねじ係合する。用量の設定中、インジケータ19は、回転部材27によって用量設定方向に回転される。それにより、インジケータ19は、ハウジング7とのそのねじ係合により、遠位方向に移動するように押される。設定された用量をキャンセルするために、用量設定部材21は、用量キャンセル方向に回転される。用量キャンセル方向は、反時計方向である。
【0055】
駆動アセンブリ2は、さらに、ロッキング部材17を含む。用量の設定中、ロッキング部材17は、ハウジング7に対して回転方向に固定される。たとえば、ロッキング部材17はスプラインを含み、スプラインは、ハウジング7の対応する溝に係合する。ロッキング部材17の内周に、1組の歯(図示せず)が配置される。回転部材27は、少なくとも1つのラチェットアーム(図示せず)によって、ロッキング部材17の1組の歯と係合される。特に、ロッキング部材17と回転部材27とは、用量設定中、用量設定方向で回転部材27の回転が可能にされ、用量キャンセル方向での回転部材27の意図しない回転は妨げられるように係合される。それにより、ユーザが用量設定部材21を解放したときに、ばね部材12からのトルクが回転部材27を用量キャンセル方向に回転させることが妨げられる。用量の設定中、回転部材27の少なくとも1つのラチェットアームが、ロッキング部材17の歯の上に移動される。それにより、各単位が設定されるごとに可聴クリック音(audible click)が生成される。
【0056】
設定された用量をキャンセルするために、ユーザは、用量設定部材21を用量キャンセル方向に回転させる。用量のキャンセル中、駆動軸23は、回転部材27に対して少量だけ回転して、付勢アームを圧縮することができる。それにより、機能、たとえば駆動軸23の突起が、回転部材27の少なくとも1つのラチェットアームの上に摺動する。それにより、回転部材27の少なくとも1つのラチェットアームが、半径方向内側に押圧される。それにより、回転部材27とロッキング部材17との係合が一時的に解放され、したがって回転部材27が用量キャンセル方向に回転される。
【0057】
最終用量部材(last dose member)18が、ピストンロッド3と駆動軸23との間に配置される。最終用量部材18は、最終用量ナットでよい。最終用量部材18は、ピストンロッド3とねじ係合する。さらに、最終用量部材18は、駆動軸23の内側の対応する溝に係合する外部リブによって、駆動軸23と係合される。特に、最終用量部材18は、駆動軸23に対して回転方向に固定されるが、軸方向では可動である。たとえば用量の設定中に駆動軸23が回転するとき、最終用量部材18は、駆動軸23によって回転される。それにより、最終用量部材18は、ピストンロッドに沿って移動する。最終用量が選択されるとき、最終用量部材18は、止め具機能(stop feature)29に当接する。止め具機能29は、ピストンロッド3の近位端に配置される。最終用量部材18が止め具機能29に当接するとき、用量のさらなる設定は妨げられる。特に、最終用量部材18は、カートリッジ14内の残りの薬物の量を超える用量の設定を妨げる。
【0058】
用量を投薬するために、アクチュエータ13がユーザによって作動されなければならない。図2は、アクチュエータ13が作動されているときの状態で薬物送達デバイス1を示す。
【0059】
アクチュエータ13が作動される、特に遠位方向に移動されるとき、駆動軸23も遠位方向に移動される。それにより、駆動軸23は、用量設定部材21から係合解除される。駆動軸23が遠位方向に移動されるとき、回転部材27およびロッキング部材17も、駆動軸23と共に遠位方向に移動される。それにより、ロッキング部材17は、ハウジング7とのその係合から係合解除される。特に、アクチュエータ13がユーザによって作動されたときに、ロッキング部材17は、ハウジング7に対して回転される。ロッキング部材17が、ハウジング7に対して回転することを可能にされるとき、ばね部材12に貯蔵されたエネルギーが解放される。特に、ばね部材12は、回転部材27にトルクを及ぼし、それにより、回転部材27は、用量の投薬中に回転される。用量の投薬中の回転部材27の回転は、ロッキング部材17も回転させる。
【0060】
駆動アセンブリ2は、駆動要素4を含む。駆動要素4は、スプラインナットとして構成される。駆動要素4は、ロッキング部材17に連結される。特に、駆動要素4は、ロッキング部材17に対して回転および軸方向に固定される。それにより、駆動要素4は、用量の投薬中に回転する。さらに、駆動要素4は、ピストンロッド3と係合される。特に、駆動要素4はスプラインを含み、スプラインは、ピストンロッド3の軸方向溝と係合される。それにより、駆動要素4は、ピストンロッド3に対して回転方向に固定されるが、軸方向では可動である。
【0061】
駆動要素4は、フィードバック機能(feedback feature)(図示せず)を含むことがある。たとえば、駆動要素4の外周に、少なくとも1つ、たとえば2つのクリッカアーム(clicker arm)が配置される。用量の投薬中に駆動要素4が回転するとき、クリッカアームは、ハウジング7内の歯の上に移動することができ、それにより可聴フィードバックを生成する。フィードバックは、用量が現在投薬されていることをユーザに示すことができる。したがって、可聴フィードバックの終了は、用量がすべて投薬されたことをユーザに示す。
【0062】
駆動アセンブリ2は、さらに案内要素8を含む。案内要素8は、ねじナットとして構成される。案内要素8は、ピストンロッド3とねじ係合する。案内要素8は、薬物送達デバイス1のハウジング7に対して固定される。用量の投薬中に駆動要素4が回転するとき、ピストンロッド3も回転される。ピストンロッド3と案内要素8とのねじ係合により、ピストンロッド3の回転は、ピストンロッド3を遠位方向に移動させる。それにより、ピストン16が遠位方向に移動され、それにより用量が投薬される。用量の投薬中、インジケータ19は、その初期位置に戻るように回転される。特に、用量の投薬中、インジケータ19は、ゼロ止め具24に当接するまで、デバイスの近位端に向かう回転および軸方向の複合運動を行う。ゼロ止め具24は、ハウジング7にしっかりと固定される。代替として、ゼロ止め具24は、ハウジング7の一体部材でよい。インジケータ19がゼロ止め具24に当接するとき、ばね部材12のトルクによる用量投薬方向での回転部材27のさらなる回転が妨げられる。それにより、用量のさらなる投薬が妨げられる。
【0063】
ユーザがアクチュエータ13を解放するとき、アクチュエータと用量設定部材21との間に配置されたリセットばね22が、アクチュエータを、その初期位置に戻るように移動させる。それにより、駆動軸23は、アクチュエータ13と共に近位方向に移動される。それにより、駆動軸23は、用量設定部材21と再係合する。さらに、ロッキング部材17は、ハウジング7と再係合する。
【0064】
駆動アセンブリ2は、さらに減速機構5を含み、減速機構5は、用量の投薬中に駆動要素4の運動を減速させるように構成される。それにより、遠位方向でピストンロッド3の運動が減速される。減速機構5によって、ユーザは、投薬操作の速度を制御することができる。それにより、注射は、ユーザにとってより快適になり得る。たとえば、アクチュエータ13がユーザによってより大きく押し下げられるほど、ピストンロッド3の運動がより大きく減速される。そのような実施形態は、図1および図2に従って以下に述べる。さらなる実施形態では、アクチュエータ13がユーザによってより大きく押し下げられるほど、ピストンロッド3の運動はより小さく減速される。そのような実施形態は、図3および図4に従って述べる。図1および図2に示される実施形態では、減速要素の接触面9は、案内要素8に配置される。図3および図4に示される別の実施形態では、接触面9は、ハウジング7に配置される。
【0065】
減速機構5の第1の実施形態が、図1および図2に示されている。減速機構5は減速要素6を含み、減速要素6は、ハウジング7に対して、特にアセンブリ2の案内要素8に対して固定されている。図1および図2に示される実施形態では、減速要素6は、案内要素8によって構成される。さらに、減速機構5は、駆動要素4を含む。減速要素6は、第1の接触面9を含む。第1の接触面9は、案内要素8上の粗面化された表面領域として構成される。たとえば、減速要素6は、案内要素8上のコーティングでよい。第1の接触面9は、案内要素8の表面の一部の上に延び、案内要素8は、デバイスの近位端に向けられる。特に、第1の接触面9は、駆動要素に向けられる。さらに、駆動要素4は、第2の接触面10を含む。第2の接触面は、駆動要素4上の粗面化された表面領域として構成される。たとえば、第2の接触面10は、コーティングを含むことがある。図1および図2では、減速要素6は、図示のために、案内要素8上の三角形の突起によって示される。しかし、三角形の突起は、案内要素8の構造的要素ではない。これは、減速要素6の位置を示すためのものにすぎない。
【0066】
用量の投薬中、駆動要素4は、たとえば図2に示されるように、減速要素6と接触する。特に、駆動要素4は、案内要素8と接触する。図2では、見やすくするために、駆動要素4と案内要素8との間に小さなギャップが示されている。実際には、駆動要素4と案内要素8は、ギャップが生じないように接触していてもよい。用量の投薬中に駆動要素4が回転されるとき、駆動要素4と減速要素6は、互いに擦れ合う。それにより、駆動要素4の回転が減速される。特に、駆動要素4の回転の速度が低下される。駆動要素4がピストンロッド3に対して回転方向に固定されているので、ピストンロッド3の回転も減速される。それにより、減速機構5は、用量の投薬中に遠位方向でピストンロッド3の運動を減速させる。
【0067】
投薬操作の最後に、ばね部材12からのばね力が減少し、減速機構5の影響が高まる。それにより、駆動アセンブリ2、たとえばピストン16またはアセンブリの他の構成要素に貯蔵された弾性エネルギーがピストン16の運動に変わるための時間を得られる。それにより、用量精度が高められる。特に、可聴フィードバックの終了後、用量がすべて投薬されるまで、ユーザがアクチュエータ13を押し下げる必要がある保持時間が短縮される。
【0068】
図3および図4は、駆動アセンブリ2を含む薬物送達デバイス1のさらなる実施形態を示す。駆動アセンブリ2は、減速機構5のさらなる実施形態を含む。図3は、デバイスが動作されていない状態での薬物送達デバイスを示す。図4は、アクチュエータ13が作動されている状態での薬物送達デバイスを示す。減速機構6の異なる構成を除いて、薬物送達デバイス1の機能は、図1および図2に従って説明したものと同じである。
【0069】
図3および図4に示される実施形態では、減速要素6は、第1の接触面9を含む。第1の接触面は、ハウジング7、特にハウジング7の内周に位置する。特に、第1の接触面9は、ハウジング7上の粗面化された表面として構成される。たとえば、減速要素6、特に第1の接触面9は、ハウジング7上のコーティングを含む。
【0070】
図3および図4において、減速要素6は、図示のために、ハウジング7上の三角形の突起によって示される。しかし、三角形の突起は、ハウジングの構造的要素ではない。これは、減速要素6の取り得る位置を示すためのものにすぎない。
【0071】
減速機構5は、さらに駆動要素4を含む。駆動要素4は、第2の接触面10を含む。第2の接触面10は、駆動要素4の外周に位置する。特に、駆動要素4は、その外周に、コーティングまたは粗面化された表面を含む。
【0072】
図3に示されるように薬物送達デバイス1が非動作状態であるとき、減速要素6と駆動要素4は、互いに接触しない。特に、第1の接触面9と第2の接触面10は、互いに接触しない。
【0073】
薬物の用量を投薬するためにアクチュエータ13がユーザによって押し下げられるとき、駆動要素4は、遠位方向に移動される。それにより、駆動要素4は、減速要素6に接触する。それにより、図1および図2に従って既に述べたように、駆動要素4の回転およびピストンロッド3の運動が減速される。
【0074】
一実施形態によれば、アセンブリ2の長手方向軸11に沿った減速要素6、特に第1の接触面9の延在部は、用量の投薬中に駆動要素4、特に駆動要素4の外周が減速要素6に常に接するようなものでよい。それにより、ピストンロッド3の運動は、用量の投薬中に常に減速される。
【0075】
さらなる実施形態では、減速要素6、特に第1の接触面9の延在および位置は、アクチュエータ13が特定の量だけ押し下げられたときにのみ駆動要素4が減速要素6と接触するようなものでよい。たとえば、駆動要素4は、アクチュエータ13が完全に押し下げられておらず、たとえば途中まで押し下げられているときには、減速要素6と接触することがある。アクチュエータ13が完全に押し下げられるとき、駆動要素4は、第1の接触面9を超えて移動されることがあり、それにより、アクチュエータ13が完全に押し下げられるときには駆動要素4の回転は減速されない。それにより、ユーザは、投薬操作の速度を制御することができる。特に、アクチュエータ13がユーザによってより大きく押し下げられるほど、ピストンロッド3の運動はより小さく減速される。
【0076】
図4で、薬物送達デバイス1は、アクチュエータ13が完全に押し下げられた状態で示されている。それにより、駆動要素4は、減速要素6を超えて移動されている。特に、駆動要素4は、デバイスの投薬端から見て、減速要素6の前に配置される。それにより、駆動要素4と減速要素6は接触しなくなる。その結果、ピストンロッド3の運動は減速されなくなる。
【符号の説明】
【0077】
1 薬物送達デバイス
2 駆動アセンブリ
3 ピストンロッド
4 駆動要素
5 減速機構
6 減速要素
7 ハウジング
8 案内要素
9 第1の接触面
10 第2の接触面
11 長手方向軸
12 ばね部材
13 アクチュエータ
14 カートリッジ
15 カートリッジホルダ
16 ピストン
17 ロッキング部材
18 最終用量部材
19 インジケータ
21 用量設定部材
22 リセットばね
23 駆動軸
24 ゼロ止め具
25 ピストンロッドの支承部
26 スプライン
27 回転部材
28 窓
29 止め具機能
図1
図2
図3
図4