(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明による情報表示装置(あるいは情報表示システム。以下、便宜的に情報表示システムと称する。)の第1の実施形態を表す模式図である。101は自車両、102は運転者、103は投影手段、104はミラー、105はコンバイナ、106は虚像面、107は前方を撮影する前方カメラ、108は運転者を撮影する運転者カメラ、109はスピーカ、110はレーザーレーダーや車速センサ等の車載各センサ、111は障害物判定部、112は危険度判定部、113は視点位置判定部、114は表示位置調整部、115は画像処理部、116は音声処理部である。なお以降の実施形態ではコンバイナ105をスクリーンとして用いる構成について説明するが、フロントシールドをスクリーンとして虚像を投影する構成も可能である。
【0016】
運転に関わる補助情報は、虚像として投影手段103から投影され、ミラー104にて反射され、コンバイナ105に投影される。投影された虚像は、運転者102からは虚像面106として、フロントシールド越しの外界視野と重畳されたものとして認識される。投影手段103では走査手段としてMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーなどを用いた方法や、またミラー104として非球面凹面鏡などを用いた方法があるが、ここでは、虚像を投影するための幾つかの適当な手法について詳細な説明は省略する(例えば特許文献2等参照)。
【0017】
ここで
図1における情報表示システムの情報表示の処理について、
図4の動作フローを用いて説明する。まず自車両101のエンジン始動、あるいは運転者102の起動指示操作により処理を開始する(401)。運転者の起動指示操作は、前述のインストパネル中央近傍に設置されたディスプレイにおけるタッチパネル等を介して行われても良いし、専用の起動スイッチを設けても良い。前方カメラ107において自車両101前方の画像が撮影され、またその他レーザーレーダーや車速センサなどの各車載センサ110で複数の情報が取得される(402)。障害物判定部111は前記取得された画像や情報に基づき、障害物を人、自転車、バイク、自動車、その他などとして判定する(403)。さらに危険度判定部112は、前記障害物の判定結果と、前記車速センサ110などから取得された情報を基に、障害物の危険度を判定する(404)。
【0018】
前記障害物の判定は画像認識技術等を用いた手法として、公知技術を用いることが可能である。また前記危険度の判定は、例えば前記特許文献1に記載のように障害物までの距離と自車両102の速度情報から判定することが可能であり、さらに障害物の進行方向の予測を加味することにより、複数の危険度を設定して障害物がどの危険度であるかを判定することができる。ここでは危険度を0(危険度最低)から100(危険度最高)までで表すものとして、障害物の危険度Dを判定する。例えば、A、Bを閾値(A>B)として、危険度Dが次のどの範囲に入るかを知ることができる。(1)D>A:現状の車速だと接触する、あるいは障害物が自車の動線上に存在する。(2)A≧D>B:現状の車速だと接触しないが、障害物の近距離(例えば2m以内)を通過することになる。(3)B≧D>0:現状の車速だと障害物が最近傍となるのは近距離外。(4)D=0:障害物の危険度無し。
【0019】
これに基づき、まず前記危険度がD>Bであるかを判定する(405)。D>Bである場合、画像処理部115が障害物の全体輪郭を虚像の画像データとして生成する(406)。次に危険度がD>Aであるかを判定する(407)。D>Aである場合は前記虚像の点滅設定を行い(408)、D>Aではない場合は前記虚像の点滅設定は行わない。一方ステップ405において危険度がD>Bではなかった場合、続いて危険度がD≠0であるかを判定する(410)。D≠0である場合は画像処理部115が障害物の部分輪郭(例えば下方半分のみ)を虚像の画像データとして生成し、D≠0ではない(D=0)場合は何もせずにステップ402に戻る。前記虚像の画像データが生成された場合は、画像処理部115は、当該画像データを投影部103に出力する(412)。またステップ407でD>Aである場合は、合わせて音声処理部116からスピーカ109に警告音出力を行う(409)。なお前記虚像は、画像処理部115から出力されるコンバイナ105に表示可能なフルサイズの画像データ(画像プレーンと呼ぶ)内で任意の位置に生成して、実際の障害物に重畳表示させることが可能である。特にステップ404の危険度判定で、障害物と自車の予測動線との関係も反映されるが、この自車予測動線(車幅に相当)も、破線などの虚像として障害物の虚像と合わせて画像プレーン上に生成して表示することが可能である。
【0020】
一方前記ステップ401で処理開始後、運転者カメラ108は運転者の顔周辺の画像を撮影し、運転者の視点位置判定に必要な情報を取得する(413)。視点位置判定部113は取得した情報を用いて、運転者の視点位置を判定し(414)、虚像表示のための位置調整が必要かどうかを判断する(415)。具体的には、例えば前記視点位置と投影手段103及びミラー104の最適な位置関係を記憶し、視点位置のずれに応じて投影手段103あるいはミラー104、またはその両方の位置調整が必要かどうかを判断する。位置調整が必要な場合は、前記の通り表示位置調整部114の指示に基づき投影手段103の位置やミラー104の回転角など表示デバイスの位置調整を行う(416)。また画像プレーン内での、虚像の表示位置の微調整のみで済む場合、あるいは前記表示デバイスの位置調整に伴う虚像の表示位置の調整が必要な場合などは、表示位置調整部114が前記生成された虚像の画像データ出力に、前記位置調整のための情報が反映されるような処理を行う(417)。
【0021】
次に、前記処理によりコンバイナ105に投影され、運転者102に視認される前方風景について、
図2及び
図3を用いて説明する。
【0022】
図2は、前記危険度が(3)B≧D>0の範囲であるとして、障害物の虚像が生成されて表示された場合の一例である。
図1で使用のものには同一符号を付しており、105がコンバイナで、その枠内に示されるのが運転者102に視認される前方風景である(以降同様)。201はステアリング、202はインストパネル、203は障害物(この場合は歩行者)、204は自車予測動線の虚像、205は生成された障害物の虚像であり、109Lは左スピーカ、109Rは右スピーカである。
【0023】
この場合、虚像205は障害物203の下方半分のみの部分輪郭として生成され表示されている。運転者102は少なくとも歩行者の足元下半身を輪郭として認識可能で安全性を確保でき、また危険度が高くない状態で不要な虚像表示が行われないため、表示される情報が運転の妨げとなることはない。
【0024】
図3は、前記危険度が(2)A≧D>B、あるいは(1)D>Aの範囲の場合の、障害物の虚像の表示例を説明するための図である。
図2で使用のものには同一符号を付して説明を省略する。301が生成された虚像である。
【0025】
まず前記危険度が(2)A≧D>Bと判定された場合の虚像表示について説明する。虚像301は障害物203の全体輪郭として表示される。ある程度危険度が高い状態で、運転者102は歩行者を明確に認識可能であり、とっさの判断でも見逃すことがなくなる。
【0026】
また前記危険度が(1)D>Aと判定された場合の虚像表示について説明する。(2)A≧D>Bの場合と同じ図で説明可能なのは、障害物203の自車予測動線204への相対位置が同じでも、自車速度、歩行者の進行方向、距離、その他の条件によって危険度判定の結果が変わる場合があるためである。
図3において、虚像301は前記と同様に障害物203の全体輪郭として表示される。さらにこの場合は、危険度は最高レベルとして、虚像305の点滅が行われ、さらに左スピーカ109L、右スピーカ109Rより警告音を出力する。危険度が最も高い状態で、虚像とその点滅、さらに音声により運転者102は障害物を明確に認識可能であり、障害物203との衝突回避行動への移行が可能となる。
【0027】
以上のように本発明の第1の実施形態によれば、障害物の危険度に応じてその輪郭表示の割合を変更させることにより、運転者が明確に障害物を認識可能で運転を妨げることのない、運転支援のための安全な情報表示システムを提供することができる。運転者の視点に応じて虚像の表示位置は調整されるため、障害物と虚像の表示位置にずれが生じることはない。
【0028】
(実施の形態2)
次に本発明による情報表示システムの第2の実施形態を、虚像表示の別の例として、
図5及び
図6を用いて説明する。
図4のフローに基づく各処理は、前述の
図2及び
図3の場合と同様なので、詳細な説明は省略する。
【0029】
図5は、前記危険度が(3)B≧D>0の範囲であるとして、障害物203の虚像が生成されて表示された場合の別の一例である。
図2で使用のものには同一符号を付しており、詳細な説明を省略している。501が生成された虚像となっている。
【0030】
図2と異なるのは虚像501の形状であり、この場合虚像501は障害物203の下方半分を示すが、部分輪郭ではなく枠線として生成され表示されている。運転者102は、
図2の場合と同様に少なくとも歩行者の下半身を認識可能で安全性を確保でき、また危険度が高くない状態で不要な虚像表示が行われないため、表示される情報が運転の妨げとなることはない。また複数の障害物が重なっていたり、諸条件により前方カメラ107により障害物203の輪郭が明確に捉えられない場合でも、障害物203の位置を虚像501として大枠認識することが可能となる。
【0031】
図6は、前記危険度が(2)A≧D>B、あるいは(1)D>Aの範囲の場合の、障害物の虚像表示の別の例を説明するための図である。
図3で使用のものには同一符号を付して説明を省略する。601が生成された虚像である。
【0032】
まず前記危険度が(2)A≧D>Bと判定された場合の虚像表示について説明する。虚像601は障害物203の全体を囲う枠線として表示される。
図3の場合と同様に、ある程度危険度が高い状態で、運転者102は歩行者を明確に認識可能であり、とっさの判断でも障害物を見逃すことがなくなる。
【0033】
また前記危険度が(1)D>Aと判定された場合の虚像表示について説明する。(2)A≧D>Bの場合と同じ図で説明可能なのは、
図3の場合と同様の理由である。
図6において、虚像601は前記と同様に障害物203の全体を囲う枠線として表示される。さらにこの場合は、危険度は最高レベルとして、虚像601の点滅が行われ、さらに左スピーカ109Lあるいは右スピーカ109Rより警告音を出力する。
図3の場合と同様に、危険度が最も高い状態で、虚像とその点滅、さらに音声により運転者102は障害物を明確に認識可能であり、障害物との衝突回避行動への移行が可能となる。また前記同様に、複数の障害物が重なっていたり、諸条件により前方カメラ107により障害物203の輪郭が明確に捉えられない場合でも、障害物203の位置を虚像601として大枠認識することが可能となる。
【0034】
ここで
図2及び
図3における虚像表示の方法を、障害物が複数、離れた位置に存在する状態で適用した場合の虚像表示の一例を、
図7を用いて説明する。なお
図2で使用のものには同一符号を付して説明を省略する。701は障害物203とは異なる障害物(歩行者)であり、702は障害物701に対して生成された虚像である。
【0035】
図7において、障害物203は前述の説明の通り、危険度が(3)B≧D>0の範囲であるので、虚像205は障害物203の下方半分のみの部分輪郭として生成され表示されている。これに対し障害物701は危険度が(2)A≧D>Bとして判定された場合であり、虚像702は障害物701の全体輪郭として生成され表示されている。運転者102は複数の障害物がある場合でも、輪郭の付き方で危険度を直感的に認識できるため、運転における安全性を確保でき、また不要な虚像表示が行われないため、表示される情報が運転の妨げとなることはない。
【0036】
以上のように本発明の第2の実施形態によれば、障害物の危険度に応じてその枠線の表示割合を変更させることにより、複数の障害物が存在したり、障害物の輪郭が明確でない場合でも、運転者が明確に障害物を認識可能で運転を妨げることのない、運転支援のための情報表示システムを提供することができる。
【0037】
以上の実施形態において、危険度が(1)〜(3)に変化するのに応じて、虚像の色調、線の太さ等を変化させるのも別の実施形態となる。例えば
図7で説明した実施形態で、危険度の上昇に伴い虚像205、702の色調を青色系から赤色系に変化させるなどの対応により、運転者102の障害物の認識を、より直感的に行わせることが可能となる。
【0038】
(実施の形態3)
次に本発明による情報表示システムの第3の実施形態について、
図8から
図10を用いて説明する。なお情報表示システムとしての構成は
図1に示す場合と同様なので、
図1の各構成要素に付した番号を用いて説明する。
【0039】
図10は本実施形態の動作フローを示す図である。まず自車両101のエンジン始動、あるいは運転者102の起動指示操作により処理を開始する(1001)。前述の実施形態と同様に、運転者の起動指示操作は、インストパネル中央近傍に設置されたディスプレイにおけるタッチパネル等を介して行われても良いし、専用の起動スイッチを設けても良い。前方カメラ107において自車両101前方の画像が撮影され、またその他レーザーレーダーや車速センサなどの各車載センサ110で複数の情報が取得される(1002)。障害物判定部111は前記取得された画像や情報に基づき、障害物を人、自転車、バイク、自動車、その他などとして判定する(1003)。前述の実施形態でも、障害物の判定から危険度の判定において、障害物の進行方向の予測を加味することについて言及していたが、本実施形態では障害物の判定(1003)において明示的に障害物の進行方向、速度等を判断する。危険度判定部112は、前記障害物の形状、進行方向、速度等を含めた判定結果と、前記車速センサなどから取得された情報を基に、障害物の危険度を判定する(1004)。
【0040】
前記障害物の形状判定は、前述の画像認識技術等を用いた手法により実行し、これに加えて前方カメラ107で撮影された動画像データを数秒分ずつ保持することにより、障害物の進行方向、速度等を予測判断する。前記危険度判定は、障害物までの距離、自車両102の速度情報、障害物の形状、進行方向、速度の予測等を含めて、統合的に判定する。ここでは前述の実施形態と同様に、危険度DがA、Bの閾値により(1)〜(4)のどの範囲に入るかで処理が変わる場合について説明するが、前述の実施形態と異なるのは、危険度に加えて障害物の進行方向、速度予測の情報が、生成される虚像に反映される点である。
【0041】
まず前記危険度がD>Bであるかを判定する(1005)。D>Bである場合、画像処理部115が障害物の全体輪郭を虚像の画像データとして生成する(1006)。次に危険度がD>Aであるかを判定する(1007)。D>Aである場合は前記虚像の点滅設定を行い(1008)、D>Aではない場合は前記虚像の点滅設定は行わない。一方ステップ1005において危険度がD>Bではなかった場合、続いて危険度がD≠0であるかを判定する(1010)。D≠0である場合は、画像処理部115が障害物の部分輪郭を、障害物の進行方向を反映して虚像の画像データとして生成する。例えば障害物が自車予測動線方向に向かっている場合は部分輪郭として下方半分のみ、自車予測動線と逆方向に向かっている場合は部分輪郭として下方1/5のみなどとする。D≠0ではない(D=0)場合は何もせずにステップ1002に戻る。
【0042】
次に画像処理部115は前記障害物の全体輪郭、あるいは部分輪郭に加えて、障害物の進行方向、速度予測情報を基に、障害物の予測動線を虚像として生成する(1018)。前記生成された障害物の輪郭及び予測動線の虚像の画像データは、画像処理部115より、投影部103に出力される(1012)。またステップ1007でD>Aである場合は、合わせて音声処理部116からスピーカ109に警告音出力を行う(1009)。なお前記虚像は、前述の実施形態と同様に画像プレーン内で任意の位置に生成して、実際の障害物に重畳表示させることが可能であり、自車予測動線の虚像も合わせて表示させることが可能である。
【0043】
一方前記ステップ1001で処理開始後、運転者カメラ108からの入力に基づき運転者の視点位置を判定して虚像の位置調整を行うが、ステップ1013からステップ1017の動作については、
図4におけるステップ413からステップ417の動作と同様のため、詳細な説明は省略する。
【0044】
次に、前記処理によりコンバイナ105に投影され、運転者102に視認される前方風景について、
図8及び
図9を用いて説明する。
【0045】
図8は、前記危険度が(3)B≧D>0の範囲で、かつ障害物が自車予測動線方向に進行している場合の、障害物の虚像表示の一例である。
図2で使用のものには同一符号を付して説明は省略している。801は生成された障害物の虚像であり、802は障害物の予測動線を示す虚像である。
【0046】
この場合、虚像801は障害物203が自車予測動線204の方向に進行しているということで、第1の実施形態の場合と同様に、障害物203の下方半分のみの部分輪郭として生成され表示されている。また虚像802は障害物203の予測動線として、その進行方向を明示する位置に複数のマークとして表示されている。虚像802として表示されるマークの数は、障害物203が自車予測動線204の方向に進行しているかどうかで所定の数に決めることもできるし、障害物203の予測速度に応じて増減させることも可能である。運転者102は歩行者のあしもと下半身を輪郭として認識可能であり、これに加えて予測動線を視覚的に捉えることができるため、より安全性を確保でき、また危険度に応じて不要な虚像表示が行われないため、表示される情報が運転の妨げとなることはない。
【0047】
図9は、前記
図8の場合と同様の危険度(3)だが、障害物が自車予測動線から遠ざかる方向に進行している場合の、障害物の虚像表示の一例である。
図2で使用のものには同一符号を付して説明は省略している。901は生成された障害物の虚像であり、902は障害物の予測動線を示す虚像である。
【0048】
この場合、虚像901は障害物203が自車予測動線204から遠ざかる方向に進行しているということで、障害物203の下方1/5のみの部分輪郭として生成され表示されている。また虚像902は障害物203の予測動線として、その進行方向を明示する位置に単一のマークとして表示されている。虚像902として表示されるマークの数は、
図8の場合と同様に障害物203の予測速度に応じて増減させることもできるが、障害物203は自車予測動線204から遠ざかる方向に進行しているということで、単一のマークとして進行方向のみの明示とした方が、運転者102を煩わせることがない。運転者102は歩行者の足元を輪郭として認識可能であり、これに加えて予測動線を視覚的に捉えることができるため、的確に障害物とその状況を認識することができ、また危険度に応じて不要な虚像表示が行われないため、表示される情報が運転の妨げとなることはない。
【0049】
なお本実施形態においては、
図8、
図9によりいずれも危険度が(3)B≧D>0の場合について説明したが、危険度が(2)A≧D>B、(1)D>Aの場合にも第1の実施形態と同様に適用可能である。ただし危険度が高い場合は、障害物の進行方向が自車予測動線に向かう方向なのか遠ざかる方向なのかによらず、いずれも障害物の全輪郭を虚像として表示し、運転者が確実に認識できるようにする。また障害物の輪郭を虚像として表示するのに変えて、第2の実施形態で説明したような、障害物の枠線のサイズに変化を加えて、障害物の予測動線の虚像表示と組み合わせることも可能である。なお
図8、
図9では同じ危険度(3)B≧D>0で、障害物の進行方向が異なる場合に虚像表示を変化させる例を説明したが、危険度判定部112の動作として、当初より障害物の進行方向が異なる場合は別の危険度とすることも当然可能である。また本実施形態では、障害物の予測動線を障害物の進行方向を示す複数のマークで表示する場合について述べたが、予測動線としては単純に幅を持った直線や矢印を用いて、その長さを障害物の進行方向や速度に応じて変化させる形で表示するなど、予測動線を明示するものであればその形状は特に限定されるものではない。
【0050】
以上のように本発明の第3の実施形態によれば、障害物の虚像を表示するのに合わせて、障害物の予測動線を表示させることにより、運転者が直感的に障害物を認識可能で運転を妨げることのない、運転支援のための情報表示システムを提供することができる。
【0051】
(実施の形態4)
次に本発明による情報表示システムの第4の実施形態について、
図11と
図12を用いて説明する。本実施形態は、外的要因(例えば逆光)により運転者の前方視認性が低下した場合の、障害物の虚像表示の例を示すものである。なお情報表示システムとしての構成は
図1に示す場合と同様なので、
図1の各構成要素に付した番号を用いて説明する。
【0052】
図11は本実施形態の動作フローを示す図である。動作フローとしては、
図4あるいは
図10にステップを追加する形になるため、特に説明を示さないステップについては、前述の各ステップの動作と同様のものとする。また簡単のため
図11は
図4にステップを追加した形になっているが、
図10に同様のステップを追加することも可能である。
【0053】
まず自車両101のエンジン始動、あるいは運転者102の起動指示操作により処理を開始する(1101)。前述の実施形態と同様に、運転者の起動指示操作は、インストパネル中央近傍に設置されたディスプレイにおけるタッチパネル等を介して行われても良いし、専用の起動スイッチを設けても良い。前方カメラ107、またその他レーザーレーダーなどの各車載センサ110により取得された情報は、外的要因がないか判定される(1102)。外的要因の判定は、危険度判定部112の動作として危険度判定の一つとして含めても良いし、単独の処理部としても良い。外的要因として、例えば逆光が認識されると、画像処理部115において虚像の明度を調整する処理が行われる(1103)。ステップ406やステップ411で生成された障害物の虚像(全体輪郭、部分輪郭)、及び自車予測動線の虚像は、画像処理部115で前記調整が反映されて投影手段103に出力される(1104)。なお逆光自体は可視光カメラで判断可能であり、その場合でも前記各車載センサ110としてレーザーレーダーや赤外線カメラを用いて複合的に判断することにより、障害物の判定は可能となる。
【0054】
図12は、前記処理によりコンバイナ105に投影され、運転者102に視認される前方風景の一例である。
図2で使用のものには同一符号を付しており、詳細な説明を省略している。1201は障害物203の虚像、1202は自車予測動線の虚像である。また障害物の危険度は(3)B≧D>0の場合を示している。
【0055】
逆光により、フロントシールド方向、つまりコンバイナ105全体の輝度が極端に高くなり、障害物203を含む外界の視認性が低下する。これに対して虚像1201及び虚像1202は一時的に明度を下げた状態(より黒色に近い状態)で表示される。また前述の実施形態では、危険度が(3)の場合は障害物の虚像は輪郭の下半分で表示するというように説明したが、外的要因の影響を受けている場合には、危険度によらず障害物の輪郭は全輪郭で示すようにする。運転者102は、逆光の中でも少なくとも障害物203と自車予測動線1202を認識できるため、外的要因の影響下でも安全性を確保できる。
【0056】
また本実施形態の変形例として、前記ステップ1103において虚像の明度を調整するのではなく、画像プレーンにおける虚像以外の部分の明度の調整を行うことも可能である。虚像以外の部分全体、あるいは逆光の光源を認識して、その部分に一時的に明度を下げるような虚像を生成、表示する。この場合虚像の画素間隔を粗くするなどして、視界遮断にならないような虚像として、安全性を確保することが可能である。
【0057】
本実施形態において、障害物の危険度が(3)B≧D>0の場合について説明したが、危険度はこれに限定されるものではなく、これまでの実施形態で説明したいずれの場合でも、外的要因に対する処理を実施することが可能である。また外的要因として逆光の場合について示したが、雨や雪や霧といった環境要因や、夕暮れから夜間移行による前方視認性の低下時にも、本実施形態は適用可能である。例えば前方カメラ107で取得される画像データの輝度が低い場合は、障害物や自車予測動線の虚像も合わせて輝度を調整して表示するようにする。
【0058】
以上のように本発明の第4の実施形態によれば、障害物の虚像表示において外的要因により視認性の低下がある場合でも、虚像の表示調整を行うことにより、運転者に障害物を認識させることが可能な、安全性の高い情報表示システムを提供することができる。
【0059】
(実施の形態5)
次に本発明による情報表示システムの第5の実施形態について、
図13と
図14を用いて説明する。本実施形態は、フロントシールド越しの前方視野外に存在する障害物について、運転者に警告を通知する虚像表示の例を示すものである。なお情報表示システムとしての構成は
図1に示す場合と同様なので、
図1の各構成要素に付した番号を用いて説明する。
【0060】
図13は本実施形態の動作フローを示す図である。動作フローとしては、
図4、
図10あるいは
図11のいずれにも付加可能なものであるが、ここでは説明のため単独の動作フローとして説明する。
【0061】
まず自車両101のエンジン始動、あるいは運転者102の起動指示操作により処理を開始する(1301)。前述の実施形態と同様に、運転者の起動指示操作は、インストパネル中央近傍に設置されたディスプレイにおけるタッチパネル等を介して行われても良いし、専用の起動スイッチを設けても良い。前方カメラ107、またその他レーザーレーダーなどの各車載センサ110により、自車両前方を基準とする情報が取得される(1302)。例えば前記レーザーレーダーは、フロントシールド越しの前方視野よりも広範囲の情報を取得することが可能であり、また前記車載センサの一つとして、自車両の側面カメラ等を含めることにより、前方視野外に存在する障害物の存在を捉えることができる。障害物判定部111は、前述の実施形態と同様に前記前方視野外に存在する障害物について、その形状、進行方向、速度等を判定する(1303)。また同様に危険度判定部112は、車速センサなどから取得された情報を基に、前記判定結果を用いて前方視野外に存在する障害物の危険度を判定する(1304)。危険度は0かどうかが判断され(1305)、危険度が0であればステップ1302に戻る。危険度が0ではない場合、画像処理部115は運転者への警告用のマークを虚像として生成し、投影部103に出力する(1306)。この際前記マークの表示位置は、画像プレーン内で前記障害物の近傍位置となるようにする。危険度が0ではない場合は、前記虚像と同時に音声処理部116からスピーカ109に警告音を出力する(1307)。この際、前記障害物が前方視野外左側に居る場合は左スピーカから、前方視野外右側に居る場合は右スピーカから警告音を出力するように、音像を定位させる。
【0062】
図14は、前記処理によりコンバイナ105に投影され、運転者102に視認される前方風景、及び前方視野外に障害物(自動車)を示した一例である。
図2で使用のものには同一符号を付しており、詳細な説明を省略している。1401は前方視野外の障害物、1402は前記障害物の警告のために生成されたマークの虚像である。
【0063】
障害物1401は、その進行方向と速度、及び自車両の速度から危険度が0ではないと判定されている。そのためマーク1402が左から右に向かう矢印として、障害物1401の近傍となる位置に点滅表示される。また左スピーカ109Lからは警告音が出力される。運転者102は、前方視野外の障害物を方向を含めてマークと警告音で認識できるため、予め危険回避行動に移るなど、運転時における安全性を高めることができる。
【0064】
なお本実施形態において、前方視野外の障害物の危険度が、0でなければ常に警告用のマーク表示と警告音の出力をするような構成について説明したが、危険度に段階を付けて、所定の危険度以上の場合に警告用のマーク表示と警告音の出力をするようにしたり、危険度に応じてマークの大きさ・形状、警告音の音量レベルを変化させたりすることも可能である。また警告用のマーク表示を行う危険度の段階と、警告音の出力をする危険度を異ならせて、マーク表示は予め行い、警告音はかなり危険度が高い場合のみ出力するようにすることもできる。また警告用のマーク表示を矢印で表示する場合について述べたが、運転者が認識可能なものであれば、その形状は特に限定されるものではない。さらに本実施形態には、自車両が直進する場合の安全性向上という効果だけではなく、側面カメラ等からの情報を利用することにより、右左折時の障害物巻き込みを回避できるという効果もある。
【0065】
以上のように本発明の第5の実施形態によれば、前方視野外の障害物を音像を定位させてマーク表示と警告音出力を行うことにより、運転者が視野外の障害物を事前に認知可能な、安全性の高い情報表示システムを提供することができる。
【0066】
(実施の形態6)
次に本発明による情報表示システムの第6の実施形態について、
図15を用いて説明する。本実施形態は、前述のいずれの実施形態にも組み合わせることが可能であるが、ここでは説明のため、第1の実施形態に組み合わせた場合について述べる。なお情報表示システムとしての構成、動作フローについて特に説明を記さない箇所については、第1の実施形態の場合と同様とする。
【0067】
図15は、本実施形態による処理に基づき、コンバイナ105に投影され、運転者102に視認される前方風景である。
図3で使用のものには同一符号を付しており、詳細な説明を省略している。1501は運転者102へのアクション指示を示すマークの虚像である。障害物203の危険度が(2)A≧D>B、あるいは(1)D>Aである場合に、虚像301を表示するとともに、画像処理部115は運転者102へのアクション指示を示すマークを虚像として生成し、投影手段103よりコンバイナ105に表示する。ここでは障害物203の自車予測動線204に対する位置に応じて、虚像1501として左方向にステアリングを切るというアクション指示を、マークとして表示している。障害物の危険度が高い場合に、運転者102は障害物を認識するとともに、アクション指示をマークとして直感的に認識できるので、運転時における安全性を高めることができる。
【0068】
なお本実施形態における虚像1501の形状は特に限定されるものではなく、運転者が直感的に認識できるものであれば良い。またアクション指示内容はステアリングを切ることに限定されるものではなく、例えば制動(ブレーキ)をかける、クラクションを鳴らす、など複数設定することが可能であり、それぞれの内容に応じて虚像1501として表示するマーク形状を変える構成とすることができる。また虚像1501の表示位置は特に限定されるものではなく、運転者が認識し易い位置として、また障害物203の位置に応じてそれを妨げないように、状況に応じて変化させることもできる。さらに障害物203の危険度に応じて、虚像1501を点滅表示とすることも可能である。
【0069】
以上のように本発明の第6の実施形態によれば、障害物の危険度が高い場合に、運転者へのアクション指示を示すマークを虚像として表示することにより、安全性の高い情報表示システムを提供することができる。
【0070】
以上説明してきた本発明の全ての実施形態において、危険度が所定の閾値で処理が分岐するようなものとして説明している場合があるが、危険度に基づく処理分岐の段階は特に所定の値に限定されるものではない。また障害物の危険度が所定の値の場合に、障害物の輪郭、枠線などを下半分として表示する場合について述べたが、このサイズは特に限定されるものではなく、運転者が煩わしくない範囲で認識可能なサイズであれば良い。また障害物の危険度が高い場合に、虚像と警告音により運転者に通知する方法について述べたが、危険度が高い場合は前記通知と共に自車両の制動制御を行うような構成にすることも可能である。さらに前方風景の表示例において、自車予測動線を常に表示するような場合について述べたが、自車予測動線の表示は必須ではなく、運転者の指示操作により表示/非表示を切り替える構成にすることもできる。さらに以上の実施形態では、対向車線の車両等の表示については特に触れなかったが、対向車と認識したものについても、自車予測動線にかかる場合などは、その他の障害物と同様に警告表示、警告音の出力を行うような構成にすることが可能である。
【0071】
また本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。さらに上記の各機能、処理部等は、それらの一部又は全部を、所定のハードウェアで実現しても良いし、ECU(Electronic Control Unit)内でそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。