特許第6448812号(P6448812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6448812
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】干渉抑圧合成方法、装置及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/08 20060101AFI20181220BHJP
【FI】
   H04B7/08 372A
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-543385(P2017-543385)
(86)(22)【出願日】2015年12月29日
(65)【公表番号】特表2018-511215(P2018-511215A)
(43)【公表日】2018年4月19日
(86)【国際出願番号】CN2015099430
(87)【国際公開番号】WO2016131342
(87)【国際公開日】20160825
【審査請求日】2017年8月16日
(31)【優先権主張番号】201510085527.3
(32)【優先日】2015年2月16日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516010548
【氏名又は名称】セインチップス テクノロジー カンパニーリミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100125874
【弁理士】
【氏名又は名称】川端 純市
(74)【代理人】
【識別番号】100189544
【弁理士】
【氏名又は名称】柏原 啓伸
(72)【発明者】
【氏名】ウー・ガン
【審査官】 北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−012613(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0243502(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0089040(US,A1)
【文献】 特開2010−154087(JP,A)
【文献】 特開2013−021545(JP,A)
【文献】 Nokia, NSN,TP for link to system modelling for E-LMMSE-IRC receiver[online],3GPP TSG-RAN WG1#75 R1-135905,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_75/Docs/R1-135905.zip>,2013年11月13日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/02−7/12
IEEE Xplore
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−2
CT WG1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信ダイバーシティをサポートする干渉抑圧合成方法であって、
送信ダイバーシティにおけるN(N≧3)個の受信アンテナのセル固有参照信号(CRS)リソースの位置での受信信号から、一つのサブ搬送波に対応するN×N次元の干渉と雑音の共分散行列を生成することと、
前記N×N次元の干渉と雑音の共分散行列に対して、Cholesky分解を行って上三角行列の逆演算を行い、N×N次元のブロック行列を獲得することと、
前記N×N次元のブロック行列を2N×2N次元の雑音白色化行列に拡張することと、
前記雑音白色化行列に基づいて、受信信号とチャネル推定値に対して白色化を行い、白色化された受信信号とチャネル推定値を用いて、最小平均2乗誤差−干渉抑圧合成(MMSE−IRC)の処理結果を獲得することと、
を含む、前記干渉抑圧合成方法。
【請求項2】
前記送信ダイバーシティにおけるN(N≧3)個の受信アンテナのCRSリソースの位置での受信信号から、一つのサブ搬送波に対応するN×N次元の干渉と雑音の共分散行列を生成することは、
送信ダイバーシティにおけるN(N≧3)個の受信アンテナのCRSリソースの位置での受信信号から、対応するチャネル推定値とCRSシンボルとの乗積を減算し、それによって得られる信号に対して自己相関を行い、一つのサブ搬送波に対応するN×N次元の干渉と雑音の共分散行列を生成すること、
を含む、請求項1に記載の干渉抑圧合成方法。
【請求項3】
前記Cholesky分解を、上三角行列の逆演算を行うことと並行して行う、
請求項1に記載の干渉抑圧合成方法。
【請求項4】
前記N×N次元のブロック行列を2N×2N次元の雑音白色化行列に拡張することは、
前記N×N次元のブロック行列と前記N×N次元のブロック行列の共役を2N×2N次元の雑音白色化行列に組成し、ここで、主対角は前記N×N次元のブロック行列と前記N×N次元のブロック行列の共役であり、非対角は0であること
を含む、請求項1に記載の干渉抑圧合成方法。
【請求項5】
前記雑音白色化行列に基づいて、受信信号とチャネル推定値に対して白色化を行うことは、
雑音白色化行列Uに基づいて、受信信号に対して
【数1】
に白色化を行い、チャネル推定値に対して
【数2】
に白色化を行うことを含み、
Yは受信信号を表し、Hはチャネル推定値行列を表す、
請求項1に記載の干渉抑圧合成方法。
【請求項6】
送信ダイバーシティをサポートする干渉抑圧合成装置であって、
送信ダイバーシティにおけるN(N≧3)個の受信アンテナのセル固有参照信号(CRS)リソースの位置での受信信号から、一つのサブ搬送波に対応するN×N次元の干渉と雑音の共分散行列を生成するように構成される生成モジュールと、
前記N×N次元の干渉と雑音の共分散行列に対して、Cholesky分解を行って上三角行列の逆演算を行い、N×N次元のブロック行列を獲得し、前記N×N次元のブロック行列を2N×2N次元の雑音白色化行列に拡張するように構成される第1獲得モジュールと、
前記雑音白色化行列に基づいて、受信信号とチャネル推定値に対して白色化を行うように構成される白色化モジュールと、
白色化された受信信号とチャネル推定値を用いて、MMSE−IRCの処理結果を獲得するように構成される第2獲得モジュールと、
を含む、前記干渉抑圧合成装置。
【請求項7】
前記生成モジュールは、送信ダイバーシティにおけるN(N≧3)個の受信アンテナのCRSリソースの位置での受信信号から、対応するチャネル推定値とCRSシンボルとの乗積を減算し、それによって得られる信号に対して自己相関を行い、一つのサブ搬送波に対応するN×N次元の干渉と雑音の共分散行列を生成するように構成される、
請求項6に記載の干渉抑圧合成装置。
【請求項8】
前記第1獲得モジュールは、前記N×N次元の干渉と雑音の共分散行列に対して、Cholesky分解を、上三角行列の逆演算を行うことと並行して行い、N×N次元のブロック行列を獲得するように構成される、
請求項6に記載の干渉抑圧合成装置。
【請求項9】
前記第1獲得モジュールは、前記N×N次元のブロック行列と前記N×N次元のブロック行列の共役を、2N×2N次元の雑音白色化行列に組成するように構成され、
主対角は前記N×N次元のブロック行列と前記N×N次元のブロック行列の共役であり、非対角は0である、
請求項6に記載の干渉抑圧合成装置。
【請求項10】
レシーバーであって、
請求項6〜9のいずれか1項に記載の干渉抑圧合成装置を含む、前記レシーバー。
【請求項11】
コンピュータ実行可能命令が記憶されているコンピュータ記憶媒体であって、
前記コンピュータ実行可能命令がコンピュータにより実行される場合、前記コンピュータが請求項1〜5のいずれか1項に記載の干渉抑圧合成方法を実行する前記のコンピュータ記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線通信技術に関し、特に送信ダイバーシティをサポートする干渉抑圧合成方法、装置及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
3GPP高度なロング・ターム・エボリューション(LTE−A:LTE−Advanced)システムの下りリンク送信において、物理下りリンク制御チャネル(PDCCH)と物理下りリンク共有チャネル(PDSCH)が、いずれも送信ダイバーシティの伝送モードを構成する可能性があり、そして、システムは無線伝送チャネルにおいてダイバーシティ利得を得て受信性能を向上させることができる。
【0003】
LTE−Aシステムにおける送信ダイバーシティの物理層の主な処理フローを図1に示すように、情報ビットは、エンコーダを経由してコードワード(Codeword)を生成してから、マスキング(Scrambling)し、そして変調マッパー(Modulation mapper)を経由してシンボルを生成し、その後、レイヤマッパー(Layer mapper)を経由してプリエンコーダ(Precoding)に到着し、プリエンコーダの伝送モードが送信ダイバーシティモードに設定されても良く、最後にリソースマッピング(Resource mapping)と直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)によって、変調信号が複数の送信アンテナポート(antenna ports)より送信される。
【0004】
それに応じて、受信側の処理は図2に示す通りである。受信信号は、OFDM復調、リソースのデマッピング、チャネル推定を経由し、送信ダイバーシティ処理ユニットに到着して処理されてから、レイヤデマッパー、復調及びデコーディングを経由してから、最後に情報ビットとして出力される。
【0005】
LTE−Aにおいて、特にRelease 11バージョンのヘテロジニアスネットワークにおける複雑な干渉環境をサポートするために、レシーバーは、隣接セルによる強い干渉を対抗するために、通常、干渉抑圧合成(IRC:Interference Rejection Combining)技術を採用する必要がある。通常の方法は、3GPPの技術レポートに記載されている最小平均2乗誤差−干渉抑圧合成(MMSE−IRC:Minimum Mean Square Error−IRC)である。しかし、LTE−Aにおいて、2より多くの階層のマルチ入力マルチ出力(MIMO:Multiple Input Multiple Output)の伝送をサポートさせる場合、受信アンテナの数が4個に達する可能性があり、このように通常のMMSE−IRCの処理に従った場合、IRCが8×8行列に対して逆演算を行うことを当面することになり、レシーバーの処理は複雑になる一方である。
【発明の概要】
【0006】
本発明の実施例は、送信ダイバーシティをサポートする干渉抑圧合成方法及び装置を提供して、少なくとも一部の干渉抑圧の複雑度を低減することにある。
【0007】
本発明の実施例の技術案は下記のように実現されている。
【0008】
本発明の実施例は、送信ダイバーシティをサポートする干渉抑圧合成方法を提供し、該方法は、
送信ダイバーシティにおけるN(N≧3)個の受信アンテナのセル固有参照信号(CRS)リソースの位置での受信信号から、一つのサブ搬送波に対応するN×N次元の干渉と雑音の共分散行列を生成することと、
前記N×N次元の干渉と雑音の共分散行列に対して、Cholesky分解を行って上三角行列の逆演算を行い、N×N次元のブロック行列を獲得することと、
前記N×N次元のブロック行列を2N×2N次元の雑音白色化行列に拡張することと、
前記雑音白色化行列に基づいて、受信信号とチャネル推定値に対して白色化を行い、白色化された受信信号とチャネル推定値を用いて、最小平均2乗誤差−干渉抑圧合成(MMSE−IRC)の処理結果を獲得することと、
を含む。
【0009】
上記の技術案に基づいて、前記送信ダイバーシティにおけるN(N≧3)個の受信アンテナのセル固有参照信号(CRS)リソースの位置での受信信号から、一つのサブ搬送波に対応するN×N次元の干渉と雑音の共分散行列を生成することは、
送信ダイバーシティにおけるN(N≧3)個の受信アンテナのCRSリソースの位置での受信信号から、対応するチャネル推定値とCRSシンボルとの乗積を減算し、それによって得られる信号に対して自己相関を行い、一つのサブ搬送波に対応するN×N次元の干渉と雑音の共分散行列を生成すること、を含む。
【0010】
上記の技術案に基づいて、前記Cholesky分解を、上三角行列の逆演算を行うことと並行して行う。
【0011】
上記の技術案に基づいて、前記N×N次元のブロック行列を2N×2N次元の雑音白色化行列に拡張することは、
前記N×N次元のブロック行列と前記N×N次元のブロック行列の共役を2N×2N次元の雑音白色化行列に組成し、ここで、主対角は前記N×N次元のブロック行列と前記N×N次元のブロック行列の共役であり、非対角は0であることを含む。
【0012】
上記の技術案に基づいて、前記雑音白色化行列に基づいて、受信信号とチャネル推定値に対して白色化を行うことは、
雑音白色化行列Uに基づいて、受信信号に対して
【数1】
に白色化を行い、チャネル推定値に対して
【数2】
に白色化を行うことを含み、ここで、Yは受信信号を表し、Hはチャネル推定値行列を表す。
【0013】
本発明の実施例はさらに、送信ダイバーシティをサポートする干渉抑圧合成装置を提供し、該装置は、
送信ダイバーシティにおけるN(N≧3)個の受信アンテナのセル固有参照信号(CRS)リソースの位置での受信信号から、一つのサブ搬送波に対応するN×N次元の干渉と雑音の共分散行列を生成するように構成される生成モジュールと、
前記N×N次元の干渉と雑音の共分散行列に対して、Cholesky分解を行って上三角行列の逆演算を行い、N×N次元のブロック行列を獲得し、前記N×N次元のブロック行列を2N×2N次元の雑音白色化行列に拡張するように構成される第1獲得モジュールと、
前記雑音白色化行列に基づいて、受信信号とチャネル推定値に対して白色化を行うように構成される白色化モジュールと、
白色化された受信信号とチャネル推定値を用いて、MMSE−IRCの処理結果を獲得するように構成される第2獲得モジュールと、
を含む。
【0014】
ここで、前記生成モジュールは、送信ダイバーシティにおけるN(N≧3)個の受信アンテナのCRSリソースの位置での受信信号から、対応するチャネル推定値とCRSシンボルとの乗積を減算し、それによって得られる信号に対して自己相関を行い、一つのサブ搬送波に対応するN×N次元の干渉と雑音の共分散行列を生成するように構成される。
【0015】
上記の技術案に基づいて、前記第1獲得モジュールは、前記N×N次元の干渉と雑音の共分散行列に対して、Cholesky分解を、上三角行列の逆演算を行うことと並行して行い、N×N次元のブロック行列を獲得するように構成される。
【0016】
上記の技術案に基づいて、前記第1獲得モジュールは、前記N×N次元のブロック行列と前記N×N次元のブロック行列の共役を、2N×2N次元の雑音白色化行列に組成するように構成され、ここで、主対角は前記N×N次元のブロック行列と前記N×N次元のブロック行列の共役であり、非対角は0である。
【0017】
本発明の実施例はさらに、レシーバーを提供し、該レシーバーは本発明に記載されている干渉抑圧合成装置を含む。
【0018】
本発明の実施例はさらに、コンピュータ記憶媒体を提供し、前記コンピュータ記憶媒体には、少なくとも一つの上記方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令が記憶されている。
【0019】
本発明の実施例は、送信ダイバーシティをサポートする干渉抑圧合成方法、装置及びコンピュータ記憶媒体を提供して、送信ダイバーシティにおけるN(N≧3)個の受信アンテナのセル固有参照信号(CRS:cell reference signal)リソースの位置での受信信号から、一つのサブ搬送波に対応するN×N次元の干渉と雑音の共分散行列を生成し、前記N×N次元の干渉と雑音の共分散行列に対して、Cholesky分解を行って上三角行列の逆演算を行い、N×N次元のブロック行列を獲得し、前記N×N次元のブロック行列を2N×2N次元の雑音白色化行列に拡張し、前記雑音白色化行列に基づいて、受信信号とチャネル推定値に対して白色化を行い、白色化された受信信号とチャネル推定値を用いて、MMSE−IRCの処理結果を獲得し、それによって、干渉抑圧合成の複雑度を低減させ、ハードウェアの実行速度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】LTE−Aシステムにおける送信ダイバーシティの物理層の主な処理フローを示す図である。
図2】受信側における処理フローを示す図である。
図3】本発明の実施例により提供されている送信ダイバーシティをサポートする干渉抑圧合成方法のフローを示す図である。
図4】本発明の実施例により提供されている送信ダイバーシティをサポートする干渉抑圧合成方法の原理を示す図である。
図5】本発明の実施例により提供されている送信ダイバーシティをサポートする干渉抑圧合成装置の構成を示す図である。
図6】通常のMMSE−IRCレシーバーと本発明のレシーバーのスループット性能のシミュレーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
仮に第2i個のサブ搬送波の送信信号をxとし、第2i+1個のサブ搬送波の送信信号をxとし、iは任意のPDSCHデータ位置のサブ搬送波の番号であり、チャネル推定値の行列をHとし、隣接セルによる干渉をIとし、雑音をNとし、受信アンテナの数を4とし、任意の前後二つのサブ搬送波の送信信号をXとすれば、任意の前後二つのサブ搬送波の受信信号Yは、
【数3】
である。
【0022】
送信ダイバーシティのIRC処理について、通常のMMSE−IRCは下記のように実現されている。
【0023】
【数4】
【0024】
数式(2)内のRは干渉と雑音の共分散行列であり、Rの数式は、
【数5】
である。
【0025】
ここで、以下のとおりである。
【0026】
【数6】
【0027】
【数7】
【0028】
【数8】
【0029】
【数9】
【0030】
【数10】
【0031】
このようにすれば、数式(2)内のMMSE−IRCが8×8行列に対して逆演算を行うことを当面することになり、計算の複雑度が高く、しかも、PDSCHのデータの位置に、隣接セルによる強い干渉が存在する場合、通常、データの復調によって干渉と雑音の共分散行列Rを得ることができない。
【0032】
そのため、R00とR11内の要素に対して近似等価処理、R00=R11を行い、このようにすれば、干渉と雑音の共分散行列Rを解く処理は、R00を計算することによって解くように簡略されることができ、R00は入力されたCRSにより得られ、CRS位置
【数11】
の受信信号Y(k)を、
【数12】
とする。R00は、個々のリソースブロック(RB:resource block)の全てのCRSリソースの位置の自セル信号を減少してから、さらに平均することによって、
【数13】
【数14】
が得られる。
【0033】
ここで、Nspは一つのRB内のすべてのCRSポートのサンプルの数であり、例えば2ポート(port0,port1)に16個のサンプルがある。
【0034】
このように、
【数15】
になり、そしてRに対してCholesky分解を行えば、R00に対するCholesky分解によって、
【数16】
を完成させる。
【0035】
ここで、
【数17】
は、まだ上三角行列であり、前記上三角行列に対して逆演算を行い、雑音白色化行列U、
【数18】
が得られる。
【0036】
【数19】
【数20】
【数21】
である場合、Cholesky分解と上三角行列の逆演算を行う過程において、下記のアルゴリズムを用いる。
【0037】
Cholesky分解は下記の通りであり、
【数22】
【数23】
上三角行列の逆演算を行うのは、下記の通りである。
【0038】
【数24】
【数25】
【0039】
i=0,...,3の各列の計算は下記の順で行うことが可能である。
【0040】
【数26】
【0041】
その中の括弧内の各項目とも並行して算出することができ、また(10)と(11)の逆数
【数27】
を求める計算処理はリユースすることが可能である。それによって、Cholesky分解を先に求めてから上三角行列の逆演算を行うことを避けることができ、
【数28】
がリユースできるため、Cholesky分解より一つの処理
【数29】
だけを多く実行すれば、Cholesky分解を求めることと上三角行列の逆演算を行うこととの操作を完成することができる。
【0042】
数式(7)と(8)に基づいて、数式(2)に対して変換を行って、
【数30】
が得られる。
【0043】
ここで、受信信号に対して
【数31】
に白色化を行い、チャネル推定値に対して
【数32】
に白色化を行う。
【0044】
上記の導き出す過程から分かるように、R00に対してCholesky分解を行って上三角行列の逆演算を行うことによって、雑音白色化行列Uを得ることができ、雑音白色化行列Uを用いて受信信号とチャネル推定値に対して白色化を行い、最終的にMMSE−IRCの処理結果を獲得することができる。
【0045】
本発明の実施例において、送信ダイバーシティにおけるN(N≧3)個の受信アンテナのCRSリソースの位置での受信信号から、一つのサブ搬送波に対応するN×N次元の干渉と雑音の共分散行列を生成し、前記N×N次元の干渉と雑音の共分散行列に対して、Cholesky分解を行って上三角行列の逆演算を行い、N×N次元のブロック行列を獲得し、前記N×N次元のブロック行列を2N×2N次元の雑音白色化行列に拡張し、前記雑音白色化行列に基づいて、受信信号とチャネル推定値に対して白色化を行い、白色化された受信信号とチャネル推定値を用いて、MMSE−IRCの処理結果を獲得する。
【0046】
下記において、図面と具体的な実施例によって本発明をさらに詳しく説明する。下記に説明している好ましい実施例は、本発明を説明と解釈するためのものであり、本発明を限定するものではないと理解すべきである。
【0047】
本発明の実施例は、送信ダイバーシティをサポートする干渉抑圧合成方法を実現し、図3図4に示すように、該方法は下記のステップを含む。
【0048】
ステップ301において、送信ダイバーシティにおけるN(N≧3)個の受信アンテナのCRSリソースの位置での受信信号から、一つのサブ搬送波に対応するN×N次元の干渉と雑音の共分散行列を生成する。
【0049】
選択肢として、送信ダイバーシティにおけるN(N≧3)個の受信アンテナのCRSリソースの位置での受信信号から、対応するチャネル推定値とCRSシンボルとの乗積を減算し、それによって得られる信号に対して自己相関を行い、一つのサブ搬送波に対応するN×N次元の干渉と雑音の共分散行列R00を生成する。
【0050】
本ステップにおいて、前記CRSリソースの位置はCRSを受信することによって獲得する。
【0051】
ステップ302において、前記N×N次元の干渉と雑音の共分散行列に対して、Cholesky分解を行って上三角行列の逆演算を行い、N×N次元のブロック行列を獲得する。
【0052】
具体的に、R00に対してCholesky分解
【数33】
を行う。
【0053】
00に対して逆演算を行い、ブロック行列U00
【数34】
が獲得される。
【0054】
本ステップにおいて、前記Cholesky分解を、上三角行列の逆演算を行うことと並行して行う。
【0055】
ステップ303において、前記N×N次元のブロック行列を2N×2N次元の雑音白色化行列に拡張する。
【0056】
具体的に、前記N×N次元のブロック行列と前記N×N次元のブロック行列の共役を2N×2N次元の雑音白色化行列に組成し、ここで、主対角は前記N×N次元のブロック行列と前記N×N次元のブロック行列の共役であり、非対角は0である。
【0057】
雑音白色化行列Uは、
【数35】
である。
【0058】
ステップ304において、前記雑音白色化行列に基づいて、受信信号とチャネル推定値に対して白色化を行い、白色化された受信信号とチャネル推定値を用いて、MMSE−IRCの処理結果を獲得する。
【0059】
例えば、雑音白色化行列Uに基づいて、受信信号に対して
【数36】
に白色化し、チャネル推定値に対して
【数37】
に白色化を行い、ここで、Yは受信信号を表し、Hはチャネル推定値行列を表し、数式
【数38】
に基づいて、MMSE−IRCの処理結果を獲得する。
【0060】
本ステップはさらに、MMSE−IRCの処理結果をインターフェース、又は後続の復調モジュール、又はデバイスに出力することを含む。
【0061】
上記の本発明の方法の実施主体について、通常はレシーバーであっても良い。
【0062】
上記の方法を実現するために、本発明の実施例はさらに、送信ダイバーシティをサポートする干渉抑圧合成装置を提供し、図5に示すように、該装置は、生成モジュール51、第1獲得モジュール52、白色化モジュール53、及び第2獲得モジュール54を含む。
【0063】
生成モジュール51は、送信ダイバーシティにおけるN(N≧3)個の受信アンテナのCRSリソースの位置での受信信号から、一つのサブ搬送波に対応するN×N次元の干渉と雑音の共分散行列を生成するように構成される。
【0064】
第1獲得モジュール52は、前記N×N次元の干渉と雑音の共分散行列に対して、Cholesky分解を行って上三角行列の逆演算を行い、N×N次元のブロック行列を獲得し、前記N×N次元のブロック行列を2N×2N次元の雑音白色化行列に拡張するように構成される。
【0065】
白色化モジュール53は、前記雑音白色化行列に基づいて、受信信号とチャネル推定値に対して白色化を行うように構成される。
【0066】
第2獲得モジュール54は、白色化された受信信号とチャネル推定値を用いて、MMSE−IRCの処理結果を獲得するように構成される。
【0067】
ここで、前記生成モジュール51は、送信ダイバーシティにおけるN(N≧3)個の受信アンテナのCRSリソースの位置での受信信号から、対応するチャネル推定値とCRSシンボルとの乗積を減算し、それによって得られる信号に対して自己相関を行い、一つのサブ搬送波に対応するN×N次元の干渉と雑音の共分散行列を生成するように構成される。
【0068】
前記第1獲得モジュール52は、前記N×N次元の干渉と雑音の共分散行列に対して、Cholesky分解を、上三角行列の逆演算を行うことと並行して行い、N×N次元のブロック行列を獲得するように構成される。
【0069】
前記第1獲得モジュール52は、前記N×N次元のブロック行列と前記N×N次元のブロック行列の共役を2N×2N次元の雑音白色化行列に組成するように構成され、ここで、主対角は前記N×N次元のブロック行列と前記N×N次元のブロック行列の共役であり、非対角は0である。
【0070】
前記白色化モジュール53は、雑音白色化行列Uに基づいて、受信信号に対して
【数39】
に白色化を行い、チャネル推定値に対して
【数40】
に白色化を行うように構成され、ここで、Yは受信信号を表し、Hはチャネル推定値行列を表す。
【0071】
前記第2獲得モジュール55は、数式
【数41】
によって、MMSE−IRCの処理結果を獲得するように構成され、ここで、Iは隣接セルによる干渉である。
【0072】
実際応用において、前記生成モジュール51、第1獲得モジュール52、白色化モジュール53、及び第2獲得モジュール54の機能は、レシーバー内に位置している中央処理ユニット(CPU)、マイクロプロセッサ(MPU)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)又はプログラマブルゲートアレイ(FPGA)によって実現される。
【0073】
上記の装置に基づいて、本発明の実施例はさらに、レシーバーを提供し、該レシーバーは前記装置を含む。
【0074】
下記において、LTE−Aシステム(Release 11)のレシーバーのシミュレーションを通して、本発明の利点について説明する。具体的なシミュレーション条件は、送信ダイバーシティに関する3GPP標準[3]内の試験例、8.2.1.2.4−1: Transmit diversity Performance (FRC) with TM3 interference modelを参照し、主なパラメータは、帯域幅が10Mであり、チャネルがEVA70であり、マスタセルの伝送モードがTM2であり、MCS=6であり、cell ID=0であり、二つの干渉セルの伝送モードがTM3であり、干渉セルがRank1である確率が80%であり、Rank2である確率が20%であり、cell ID=1/2であり、スループット(Throughput)が70%である所のSINRを−1.4dBとする。
【0075】
通常のMMSE−IRCレシーバーと本発明のレシーバーとのスループット性能、シミュレーション結果は図6に示す通りであり、ここで、「*」は、通常のMMSE−IRCレシーバーのスループット性能を表し、「□」は、本発明のレシーバーのスループット性能を表し、両者の性能が同じである。
【0076】
ここで、両者の計算の複雑度も統計しており、表1に示すように、通常のMMSE−IRCレシーバーにおいて、MMSEに関するHHR−1の操作は全てのサブ搬送波に対して行う必要があることである。本発明のレシーバーにおいて、MMSEに関する増加された左乗算Uの白色化操作UYとUHは、全てのサブ搬送波に対して行う必要があるが、Cholesky分解と上三角行列の逆演算を行う操作は、個々のRBにおいて一回だけ行う。それによって、少量のRBレベルの2乗及び逆数を求める計算が増加されているが、本発明のレシーバーは通常のMMSE−IRCレシーバーと比較して、乗算の量が約半分に低減され、全体の複雑度を大幅に低減することができる。
【0077】
【表1】
【0078】
本発明の実施例に記載されている送信ダイバーシティをサポートする干渉抑圧合成方法は、ソフトウェア機能モジュールの方式で実現し、しかも独立な製品として販売又は使用する場合、コンピュータ読み取り可能の記憶媒体に記憶しても良い。これによって、本発明の実施例の技術案が事実的に、言い換えれば先行技術に貢献した部分がソフトウェア製品の形で体現でき、該コンピュータソフトウェア製品は記憶媒体に記憶され、コンピュータ装置(パソコン、サーバ、またはネットワーク装置などであっても良い)が本発明の各実施例の全部または一部の前記方法を実行するように、複数の命令を含む。上記の記憶媒体は、USBメモリ、移動記憶媒体、読み取り専用メモリ(ROM:Read−Only Memory)、磁気ディスク又はコンパクトディスクなどの各種のプログラムコードが記憶できる媒体を含む。このように、本発明の実施例はいかなるハードウェアとソフトウェアとの結合を限定しない。
【0079】
それに応じて、本発明の実施例はさらに、コンピュータ記憶媒体を提供し、コンピュータプログラムが記憶され、該コンピュータプログラムは、本発明の実施例の送信ダイバーシティをサポートする干渉抑圧合成方法、例えば、図3及び/又は図4に示す方法を実行することに用いられる。前記コンピュータ記憶媒体は、USBメモリ、移動記憶媒体、読み取り専用メモリ(ROM:Read−Only Memory)、磁気ディスク又はコンパクトディスクなどの記憶媒体であっても良く、永久性記憶媒体であっても良い。
【0080】
以上に記載しているのは、単なる本発明の好ましい実施例に過ぎなく、本発明の範囲を限定しない。本発明の原理に基づいて実施される改修は、全て本発明の範囲内であると理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6