特許第6448816号(P6448816)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6448816流動床反応器システム用ガス分配装置、前記ガス分配装置を含む流動床反応器システム、および前記流動床反応器システムを利用した粒子状ポリシリコンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6448816
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】流動床反応器システム用ガス分配装置、前記ガス分配装置を含む流動床反応器システム、および前記流動床反応器システムを利用した粒子状ポリシリコンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 8/24 20060101AFI20181220BHJP
   C01B 33/027 20060101ALI20181220BHJP
   C23C 16/442 20060101ALI20181220BHJP
   C23C 16/24 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
   B01J8/24 311
   C01B33/027
   C23C16/442
   C23C16/24
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-548414(P2017-548414)
(86)(22)【出願日】2016年3月24日
(65)【公表番号】特表2018-514370(P2018-514370A)
(43)【公表日】2018年6月7日
(86)【国際出願番号】KR2016002990
(87)【国際公開番号】WO2016159568
(87)【国際公開日】20161006
【審査請求日】2017年9月14日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0046386
(32)【優先日】2015年4月1日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0053976
(32)【優先日】2015年4月16日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】501014658
【氏名又は名称】ハンワ ケミカル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】グイ・リョン・アン
(72)【発明者】
【氏名】サン・ア・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ホ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョ・ヒ・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ギル・ホ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・イク・イ
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−526877(JP,A)
【文献】 特表2009−502704(JP,A)
【文献】 特開平10−001445(JP,A)
【文献】 特表平11−510560(JP,A)
【文献】 特開昭52−141079(JP,A)
【文献】 特開2008−049259(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102013208274(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 8/00− 8/46
C01B 33/00− 33/193
C23C 16/00− 16/56
B01J 4/00− 7/02
C10L 3/00− 3/12
C10L 8/00
C10J 1/00− 3/86
F23G 5/00
F23G 5/40− 5/42
F23G 5/50
B01J 10/00− 12/02
B01J 14/00− 19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレナムチャンバー(210)と多孔板(290)を通じて流動床反応チャンバー(100)内にガスを噴出させる流動床反応器システム用ガス分配装置(200)であって、
前記プレナムチャンバー(210)は、同心円状に離隔して配列された複数の環状隔壁(220);前記環状隔壁により区画され、少なくとも一つのガス流入口(232)および複数のガス排出口(235)をそれぞれ独立的に有する複数の環状空間(230);
前記ガス流入口(232)に連結されて前記環状空間(230)にそれぞれ独立的にガスを供給する複数のガス供給管(240);および前記ガス排出口(235)に対応して連結された複数のガス排出管(250)を含み、
前記多孔板(290)は、前記プレナムチャンバー(210)のガス排出管250の末端に接し、前記ガス排出管(250)に対応する複数の開口部を有する、
流動床反応器システム用ガス分配装置。
【請求項2】
前記プレナムチャンバー(210)は、3乃至10個の環状隔壁220を有する、請求項1に記載の流動床反応器システム用ガス分配装置。
【請求項3】
前記複数のガス排出管(250)は、スロットルノズル(throttle nozzle)、ベンチュリノズル(venturi nozzle)、およびジェットノズル(jet nozzle)からなる群より選択された1種以上の形態を有する、請求項1に記載の流動床反応器システム用ガス分配装置。
【請求項4】
前記複数のガス排出管(250)に隣接して各ガス排出管を冷却させる複数の冷却チャンネル(257)をさらに含む、請求項1に記載の流動床反応器システム用ガス分配装置。
【請求項5】
前記多孔板(290)は、周縁よりも中心が凹形の形態を有する、請求項1に記載の流動床反応器システム用ガス分配装置。
【請求項6】
前記同心円の中心に位置する環状空間と前記多孔板の中心を貫通する生成物回収管(260)とをさらに含む、請求項1に記載の流動床反応器システム用ガス分配装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のガス分配装置(200);
前記ガス分配装置の多孔板上に配置され、シリコンシード投入口を有する流動床反応チャンバー(100);
前記ガス分配装置(200)のガス供給管(240)とそれぞれ独立的な流動化ガス流量調節器(350)を介して連結された流動化ガスタンク(300);
前記ガス分配装置(200)のガス供給管(240)とそれぞれ独立的なシリコン原料ガス流量調節器450を介して連結されたシリコン原料ガスタンク(400);および
前記流動床反応チャンバー(100内部に形成されたシリコンシードの流動層の状態を観察してそれぞれの流動化ガス流量調節器(350)およびシリコン原料ガス流量調節器(450)に電気信号(530)を伝達する流動層モニタリング装置(500)
を含む粒子状ポリシリコン製造用流動床反応器システム。
【請求項8】
前記流動床反応チャンバー(100)は、前記ガス分配装置の多孔板(290)上に順に連結されて一つの内部空間を形成する第1ボディー部(110)、第2ボディー部(120)およびヘッド部(130)を有し;
前記第1ボディー部(110は、前記多孔板上に放射状に互いに離隔配置されて前記第2ボディー部(120)に連結された複数の反応空間を提供する複数の反応管(115)と、前記反応管(115)の外周面の少なくとも一部をそれぞれ囲む複数の加熱部(117)とを有し;
前記第2ボディー部(120)は、前記第1ボディー部(110)の複数の反応管(115)と連結された一つの反応空間を提供し;
前記ヘッド部(130)は、前記流動床反応チャンバーの上部を密閉し、前記第2ボディー部(120)よりも大きい直径を有する、請求項7に記載の粒子状ポリシリコン製造用流動床反応器システム。
【請求項9】
請求項7に記載の流動床反応器システムを利用した粒子状ポリシリコンの製造方法。
【請求項10】
流動床反応チャンバーに流動化ガスおよびシリコン原料ガスを供給してシリコンシードの流動層を形成する段階、
前記シリコン原料ガスと接触するシリコンシードの表面にシリコンを蒸着させて前記シリコンシードを成長させる段階、
前記成長により流動性が減少したシリコンシードを前記流動床反応チャンバーから回収する段階、および
前記流動床反応チャンバーにシリコンシードを投入する段階を含み;
前記段階は、連続的且つ反復的に行われ;
前記流動床反応器システムの流動層モニタリング装置で観察された流動層の状態により、複数のガス供給管を通じて各環状空間に供給される流動化ガスおよびシリコン原料ガスの流量がそれぞれ独立的に調節される、請求項9に記載の粒子状ポリシリコンの製造方法。
【請求項11】
前記シリコンシードの流動層は、
前記流動床反応チャンバーの直径に対して3倍乃至6倍の高さに維持され、85mol%以上の流動化ガスと15mol%未満のシリコン原料ガスが前記プレナムチャンバーの複数の環状空間に均等に供給される気泡流動層;および
前記気泡流動層の初期高さに対して1.2倍乃至1.7倍の高さに維持され、前記プレナムチャンバー半径の1/3以内に位置する環状空間に85mol%未満の流動化ガスと15mol%以上のシリコン原料ガスが供給され、残りの環状空間に流動化ガスのみが供給される噴出流動層であって、製造工程全体にかけて連続的且つ反復的に転換され、
前記シリコンシードの流動層が噴出流動層から気泡流動層に転換される区間において、前記成長により流動性が減少したシリコンシードを回収する、請求項10に記載の粒子状ポリシリコンの製造方法。
【請求項12】
前記流動床反応器システムのガス分配装置(200)において、前記プレナムチャンバー(210)の最外郭に位置する環状空間には、製造工程全体にかけて流動化ガスのみが供給される、請求項10に記載の粒子状ポリシリコンの製造方法。
【請求項13】
前記シリコン原料ガスは、モノシラン(SiH)、ジシラン(Si)、ジクロロシラン(SiHCl)、トリクロロシラン(SiHCl)、およびシリコンテトラクロライド(SiCl)からなる群より選択された1種以上を含有するガスである、請求項10に記載の粒子状ポリシリコンの製造方法。
【請求項14】
前記流動化ガスは、水素、窒素、アルゴン、およびヘリウムからなる群より選択された1種以上を含有するガスである、請求項10に記載の粒子状ポリシリコンの製造方法。
【請求項15】
前記流動床反応チャンバーに投入されるシリコンシードは、50乃至800μmの粒径を有する、請求項10に記載の粒子状ポリシリコンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年4月1日付韓国特許出願第10−2015−0046386号および2015年4月16日付韓国特許出願第10−2015−0053976号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、流動床反応器システム用ガス分配装置、前記ガス分配装置を含む流動床反応器システム、および前記流動床反応器システムを利用して粒子状の多結晶シリコン(polycrystalline silicon、以下、「ポリシリコン」という)を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリシリコンは、太陽光発電産業および半導体産業の基礎原料であって、最近、当該産業分野の発展と共にその需要が飛躍的に増加している。
【0004】
ポリシリコンは、シリコン含有原料ガスの熱分解および/または水素還元反応を通じてシリコン表面にシリコン元素を析出させる方法により主に製造されており、代表的に ベルジャー型反応器(bell−jar type reactor)を利用した方法(いわゆるシーメンス法)と、流動床反応器(fluidized bed reactor)を利用した方法を例に挙げられる。
【0005】
そのうちシーメンス法は、ベルジャー型反応器内に備えられたシリコンロッド(rod)の表面にシリコンを析出させる伝統的な方法である。シーメンス法は、シリコンの析出に必要な表面積が制約的であり、析出反応により増加するシリコンロッドの直径に限界があるため、連続的な工程が不可能である。またシーメンス法は、製造されるポリシリコンの単位重量当たりの電力消費量が大きいため、生産性が落ちるという限界がある。
【0006】
流動床反応器を利用した方法は、高温で加熱されて流動しているシリコンシード(seed)の流動層にシリコン原料ガスを注入し、前記シードの表面にシリコンを蒸着させて粒子状ポリシリコンを得る方法である。流動床反応器を利用した方法は、シリコンの蒸着が起き得るシードの表面積が広く、相対的に低い温度でシリコンの蒸着が行われ、後処理工程が単純であるため、シーメンス法に比べて生産性が高いという長所を有する。
【0007】
一方、流動床反応器を利用した方法で流動層のパターンは大きく気泡流動層(bubbling bed)と噴出流動層(spout bed)に区分される。
【0008】
気泡流動層は、小さい気泡が流動層全般に均等に分布して一定且つ反復的な乱流形状の流動パターンを形成するため、物質および熱の伝達に有利である。このような気泡流動層を利用した方法は、低速および低濃度運転で均一な粒子大きさと高い純度を有する製品の獲得に適し、反応器の内部摩耗も激しくない。しかし、気泡流動層の場合、供給される反応ガスの運動量が大きくないため、粒子が一定の大きさ以上に成長する時に発生する層分離現象に対処することが難しい。それによって、気泡流動層を利用した方法は、製品の排出とシードの補充が短い周期で行われなければならないという限界がある。
【0009】
噴出流動層は、高速および高濃度の反応ガスを反応器の中央で集中的に注入して中心部の粒子は上昇し、外郭の粒子は下降する形態の流動パターンを示す。このような噴出流動層では、粒子の凝集体形成と微粉発生現象に対する対処が有利であるため、シリコン原料ガスの濃度を気泡流動層の運転時よりも高く設定することができる。そして、噴出流動層は、高い運動量を有するガスが供給されるため、抵抗が増加しても非流動化現象が簡単に発生しない。また、噴出流動層では高速の反応ガスが流動層で反応せずに通過することを防止するために、流動層の高さが気泡流動層に比べて高く設定される。しかし、流動層高さの増加は反応器の高さの増加を意味し、高速の粒子流動により反応機内部摩耗が激しくなり得るため、噴出流動層を利用した方法は、反応器の設置および維持費用が高いという短所がある。また、噴出流動層でシードの大きさが小さい場合、強い流速による飛まつ同伴(entrainment)現象が発生することがあるため、一定の大きさ以上のシードを使用しなければならないという制約がある。
【0010】
このように流動床反応器を利用した方法において、流動層のパターンにより工程の安定性と生産性はトレードオフ(trade−off)の関係にあるため、ポリシリコン製造工程の安定性と生産性を同時に向上させることができる方法と手段が切実に要求されている実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国登録特許公報US8,075,692(2011.12.13)
【特許文献2】米国登録特許公報US5,382,412(1995.01.17)
【特許文献3】米国登録特許公報US6,827,786(2004.12.07)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、プレナムチャンバー内の区域別にガスの流量調節およびガスの組成調節を可能にする流動床反応器システム用ガス分配装置を提供することにある。
【0013】
また、本発明の目的は、流動層の形状制御(特に、気泡流動層と噴出流動層間の転換)を可能にする流動床反応器システムを提供することにある。
【0014】
そして、本発明の目的は、工程の安定性と生産性を同時に向上させることができる粒子状ポリシリコンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の一実施形態によると、
プレナムチャンバー210と多孔板290を通じて流動床反応チャンバー100内にガスを噴出させる流動床反応器システム用ガス分配装置200であって、
前記プレナムチャンバー210は、同心円状に離隔して配列された複数の環状隔壁220;前記環状隔壁により区画され、少なくとも一つのガス流入口232および複数のガス排出口235をそれぞれ独立的に有する複数の環状空間230;前記ガス流入口232に連結されて前記環状空間230にそれぞれ独立的にガスを供給する複数のガス供給管240;および前記ガス排出口235に対応して連結された複数のガス排出管250を含み、
前記多孔板290は、前記プレナムチャンバー210のガス排出管250の末端に接し、前記ガス排出管250に対応する複数の開口部を有する、
流動床反応器システム用ガス分配装置が提供される。
【0016】
前記プレナムチャンバー210は、3乃至10個の環状隔壁220を有することができる。
【0017】
前記複数のガス排出管250は、スロットルノズル(throttle nozzle)、ベンチュリノズル(venturi nozzle)、およびジェットノズル(jet nozzle)からなる群より選択された1種以上の形態を有するものであってもよい。
【0018】
前記ガス分配装置は、前記複数のガス排出管250に隣接して各ガス排出管を冷却させる複数の冷却チャンネル257をさらに含むことができる。
【0019】
前記多孔板290は、周縁よりも中心が凹形の形態を有することができる。
【0020】
前記ガス分配装置は、前記同心円の中心に位置する環状空間と前記多孔板の中心を貫通する生成物回収管260とをさらに含むことができる。
【0021】
一方、発明の他の一実施形態によると、
前記ガス分配装置200;
前記ガス分配装置の多孔板上に配置され、シリコンシード投入口を有する流動床反応チャンバー100;
前記ガス分配装置200のガス供給管240とそれぞれ独立的な流動化ガス流量調節器350を介して連結された流動化ガスタンク300;
前記ガス分配装置200のガス供給管240とそれぞれ独立的なシリコン原料ガス流量調節器450を介して連結されたシリコン原料ガスタンク400;および
前記流動床反応チャンバー100内部に形成されたシリコンシードの流動層の状態を観察してそれぞれの流動化ガス流量調節器350およびシリコン原料ガス流量調節器450に電気信号530を伝達する流動層モニタリング装置500
を含む粒子状ポリシリコン製造用流動床反応器システムが提供される。
【0022】
前記流動床反応チャンバー100は、前記ガス分配装置の多孔板290上に順に連結されて一つの内部空間を形成する第1ボディー部110、第2ボディー部120およびヘッド部130を有し;
前記第1ボディー部110は、前記多孔板上に放射状に互いに離隔配置されて前記第2ボディー部120に連結された複数の反応空間を提供する複数の反応管115と、前記反応管115の外周面の少なくとも一部をそれぞれ囲む複数の加熱部117とを有し;
前記第2ボディー部120は、前記第1ボディー部110の複数の反応管115と連結された一つの反応空間を提供し;
前記ヘッド部130は、前記流動床反応チャンバーの上部を密閉し、前記第2ボディー部120よりも大きい直径を有することができる。
【0023】
発明のまた他の一実施形態によると、前記流動床反応器システムを利用した粒子状ポリシリコンの製造方法が提供される。
【0024】
前記粒子状ポリシリコンの製造方法は、
流動床反応チャンバーに流動化ガスおよびシリコン原料ガスを供給してシリコンシードの流動層を形成する段階、
前記シリコン原料ガスと接触するシリコンシードの表面にシリコンを蒸着させて前記シリコンシードを成長させる段階、
前記成長により流動性が減少したシリコンシードを前記流動床反応チャンバーから回収する段階、および
前記流動床反応チャンバーにシリコンシードを投入する段階を含み;
前記段階は、連続的且つ反復的に行われ;
前記流動床反応器システムの流動層モニタリング装置で観察された流動層の状態により、複数のガス供給管を通じて各環状空間に供給される流動化ガスおよびシリコン原料ガスの流量がそれぞれ独立的に調節され得る。
【0025】
前記シリコンシードの流動層を形成する段階において、前記シリコンシードの流動層は、
前記流動床反応チャンバーの直径に対して3倍乃至6倍の高さに維持され、85mol%以上の流動化ガスと15mol%未満のシリコン原料ガスが前記プレナムチャンバーの複数の環状空間に均等に供給される気泡流動層;および
前記気泡流動層の初期高さに対して1.2倍乃至1.7倍の高さに維持され、前記プレナムチャンバー半径の1/3以内に位置する環状空間に85mol%未満の流動化ガスと15mol%以上のシリコン原料ガスが供給され、残りの環状空間に流動化ガスのみが供給される噴出流動層であって、製造工程全体にかけて連続的且つ反復的に転換され、
前記シリコンシードの流動層が噴出流動層から気泡流動層に転換される区間において、前記成長により流動性が減少したシリコンシードが回収され得る。
【0026】
前記流動床反応器システムのガス分配装置200において、前記プレナムチャンバー210の最外郭に位置する環状空間には、製造工程全体にかけて流動化ガスのみが供給され得る。
【0027】
前記シリコン原料ガスは、モノシラン(SiH)、ジシラン(Si)、ジクロロシラン(SiHCl)、トリクロロシラン(SiHCl)、およびシリコンテトラクロライド(SiCl)からなる群より選択された1種以上を含有するガスであってもよい。
【0028】
前記流動化ガスは、水素、窒素、アルゴン、およびヘリウムからなる群より選択された1種以上を含有するガスであってもよい。
【0029】
前記流動床反応チャンバーに投入されるシリコンシードは、50乃至800μmの粒径を有することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明による流動床反応器システム用ガス分配装置は、プレナムチャンバー内の区域別にガスの流量調節およびガスの組成調節を可能にする。そして、前記ガス分配装置を適用した流動床反応器システムは、流動層の形状制御(特に、気泡流動層と噴出流動層間の転換)を可能にする。このような流動床反応器システムを利用した粒子状ポリシリコンの製造方法は、工程の安定性と生産性を同時に向上させることができるだけでなく、非正常的な状況の発生時により柔軟な対処を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】発明の一実施形態に係る流動床反応器の縦断面図である。
図2】発明の一実施形態に係るガス分配装置の縦断面図である。
図3】発明の一実施形態に係るガス分配装置の横断面図である。
図4】発明の一実施形態に係る流動床反応器システムの概略図である。
図5】発明の一実施形態に係る流動床反応チャンバーの構造を模式的に示す斜視図である。
図6】発明の一実施形態に係る流動床反応チャンバーの構造を模式的に示す斜視図である。
図7】本発明の一実施形態に係る粒子状ポリシリコンの製造方法で運転時間による流動層の高さ変化を概略的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明による流動床反応器システム用ガス分配装置、前記ガス分配装置を含む流動床反応器システム、および前記流動床反応器システムを利用した粒子状ポリシリコンの製造方法についてより詳細に説明する。
【0033】
それに先立ち、本明細書全体において明示的な言及がない限り、専門用語は単に任意の実施形態を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。
【0034】
本明細書で使用される単数の形態は、文句がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数の形態も含む。また、明細書で使用される「含む」という意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるものではない。
【0035】
本明細書で「第1」または「第2」などのように序数を含む用語は、多様な構成要素を説明するために使用することができるが、前記構成要素は前記用語により限定されない。前記序数を含む用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみで使用される。例えば、本発明の権利範囲を逸脱せずに第1構成要素は第2構成要素とも命名されてもよく、類似に第2構成要素も第1構成要素と命名されてもよい。
【0036】
I.ガス分配装置
従来知られた粒子状ポリシリコン製造用流動床反応器の大部分は、気泡流動層または噴出流動層の形成が可能なように設計されたものであるため、一つの反応器で気泡流動層と噴出流動層間の転換は事実上不可能であった。
【0037】
しかし、本発明者らの研究によると、流動床反応器システムにおいて、プレナムチャンバー内の区域別にガスの流量および/または組成の調節が独立的に可能な構造を有するガス分配装置を適用する場合、一つのシステム内で気泡流動層と噴出流動層間の転換が可能であることが確認された。
【0038】
そして、このような流動床反応器システムを粒子状ポリシリコンの製造に適用する場合、工程の安定性と生産性を同時に向上させることができるだけでなく、工程の運用過程で発生し得る非正常的な状況(例えば、層分離、反応器壁に対する蒸着、凝集体形成など)により柔軟な対処が可能であることが確認された。
【0039】
このような発明の一実施形態によると、
プレナムチャンバー210と多孔板290を通じて流動床反応チャンバー100内にガスを噴出させる流動床反応器システム用ガス分配装置200であって、
前記プレナムチャンバー210は、同心円状に離隔して配列された複数の環状隔壁220;前記環状隔壁により区画され、少なくとも一つのガス流入口232および複数のガス排出口235をそれぞれ独立的に有する複数の環状空間230;前記ガス流入口232に連結されて前記環状空間230にそれぞれ独立的にガスを供給する複数のガス供給管240;および前記ガス排出口235に対応して連結された複数のガス排出管250を含み、
前記多孔板290は、前記プレナムチャンバー210のガス排出管250の末端に接し、前記ガス排出管250に対応する複数の開口部を有する、
流動床反応器システム用ガス分配装置が提供される。
【0040】
図1を参照すると、発明の実施形態に係る流動床反応器は、流動床反応が起きる空間を提供する流動床反応チャンバー100と、前記流動床反応チャンバー100内にガスを噴出させるガス分配装置200とを含む。
【0041】
図2および図3にはガス分配装置200がより詳細に図示されている。発明の実施形態によると、ガス分配装置200は、プレナムチャンバー(plenum chamber)210と多孔板290が結合された形態である。
【0042】
具体的に、プレナムチャンバー210は、同心円状に離隔して配列された複数の環状隔壁220;前記環状隔壁により区画され、少なくとも一つのガス流入口232および複数のガス排出口235をそれぞれ独立的に有する複数の環状空間230;前記ガス流入口232に連結されて前記環状空間230にそれぞれ独立的にガスを供給する複数のガス供給管240;および前記ガス排出口235に対応して連結された複数のガス排出管250を含む。
【0043】
ここで、プレナムチャンバー210は、3乃至10個の環状隔壁220を有することができる。つまり、プレナムチャンバー210は、環状隔壁220により区画された3乃至10個の環状空間230を有することができる。
【0044】
各環状空間230には、ガスが流入される少なくとも一つのガス流入口232が下部に位置する。そして、各環状空間230の上部にはガスが排出される複数のガス排出口235が位置する。つまり、少なくとも一つのガス流入口232を通じて各環状空間230の下部に流入されたガスは各環状空間230の上部に位置する複数のガス排出口235を通じて排出される。
【0045】
そして、前記ガス流入口232には、環状空間230にそれぞれ独立的にガスを供給する複数のガス供給管240が連結されている。そして、前記複数のガス排出口235には、これに対応する複数のガス排出管250が連結されている。
【0046】
ここで、前記複数のガス排出管250は、それぞれの環状空間230から排出されるガスの流速(運動量)を増幅可能な形態を有することができる。好ましくは、前記複数のガス排出管250は、スロットルノズル(throttle nozzle)、ベンチュリノズル(venturi nozzle)、およびジェットノズル(jet nozzle)からなる群より選択された1種以上の形態を有することができる。
【0047】
発明の実施形態によると、前記複数のガス排出管250に隣接して各ガス排出管を冷却させる複数の冷却チャンネル257が備えられてもよい。冷却チャンネル257には、ガス排出管250を冷却させるための空気または冷却水などの流体が循環する。これによって、ガス排出管250の周辺で原料ガスが熱分解されて堆積することを防止することができる。
【0048】
一方、前記多孔板290は、プレナムチャンバー210のガス排出管250の末端に接し、ガス排出管250に対応する複数の開口部(図示せず)を有する。例えば、前記ガス排出管250が円錐(cone)形態のスロットルノズル(throttle nozzle)である場合、各円錐の末端は前記多孔板290に接し、多孔板290には各スロットルノズルに対応する複数の開口部が形成されている。この時、各円錐の末端は互いに当接していてもよい。
【0049】
前記多孔板290は、周縁よりも中心が凹形の形態を有することができる。つまり、前記多孔板290の周縁に接するガス排出管は、多孔板290の中心部に接するガス排出管よりも長い長さを有することができる。これによって、流動床反応チャンバー100でシードが停滞するデッドゾーン(dead zone)が最小化することができる。
【0050】
そして、発明の実施形態によると、前記環状隔壁200と同心円状に位置する生成物回収管260が備えられてもよい。前記生成物回収管260は、前記同心円の中心に位置する環状空間と前記多孔板の中心を貫通する。流動床反応チャンバー100で流動性が減少した生成物は前記生成物回収管260を通じて回収されて貯蔵庫に移送される。
【0051】
II.流動床反応器システム
一方、発明の他の一実施形態によると、
前述したガス分配装置200;
前記ガス分配装置の多孔板上に配置され、シリコンシード投入口を有する流動床反応チャンバー100;
前記ガス分配装置200のガス供給管240とそれぞれ独立的な流動化ガス流量調節器350を介して連結された流動化ガスタンク300;
前記ガス分配装置200のガス供給管240とそれぞれ独立的なシリコン原料ガス流量調節器450を介して連結されたシリコン原料ガスタンク400;および
前記流動床反応チャンバー100内部に形成されたシリコンシードの流動層の状態を観察してそれぞれの流動化ガス流量調節器350およびシリコン原料ガス流量調節器450に電気信号530を伝達する流動層モニタリング装置500
を含む粒子状ポリシリコン製造用流動床反応器システムが提供される。
【0052】
図4を参照すると、発明の実施形態に係る流動床反応器システムは、流動床反応チャンバー100とガス分配装置200が備えられた流動床反応器、流動化ガスタンク300、シリコン原料ガスタンク400、流動層モニタリング装置500を含む。
【0053】
特に、前記ガス分配装置200で環状空間230にガスを供給する複数のガス供給管240は、それぞれ独立的に流動化ガス流量調節器350を介して流動化ガスタンク300に連結されている。同時に、複数のガス供給管240は、それぞれ独立的にシリコン原料ガス流量調節器450を介してシリコン原料ガスタンク400に連結されている。
【0054】
このような連結構造を有することによって、それぞれのガス供給管240には流動化ガスおよびシリコン原料ガスの組成および/または流量が個別的に調節されたガスが供給され得る。
【0055】
そして、これによって前記ガス分配装置200でそれぞれの環状空間230には組成および/または流量が個別的に調節されたガスの供給が可能であり、必要に応じて流動層の形状制御(特に気泡流動層と噴出流動層間の転換)が容易に行われ得る。
【0056】
前記流動化ガス流量調節器350およびシリコン原料ガス流量調節器450に対する個別的な制御は、前記流動層モニタリング装置500によるPLC(programmable logic control)方式または手動制御方式により行われる。
【0057】
具体的に、前記流動層モニタリング装置500は、流動床反応チャンバー100内部に形成された流動層の状態(例えば、シードの成長による差圧増加量、流動層の高さ変動量、反応チャンバーの加熱による電力量変化量など)を観察する。
【0058】
そして、前記流動層モニタリング装置500は、流動層の状態に対応するプログラミングされた設定または手動設定により、流動化ガス流量調節器350およびシリコン原料ガス流量調節器450に個別的な電気信号530を伝達して、プレナムチャンバー210の各環状空間230に供給されるガスの組成および/または流量を制御する。
【0059】
一方、前記流動床反応チャンバー100は、流動化ガスおよびシリコン原料ガスが供給されてシリコンシードの流動層が形成される空間であり、本発明が属する技術分野に知られた通常の形態の反応チャンバーであってもよい。
【0060】
好ましくは、前記流動床反応チャンバー100は、前記ガス分配装置の多孔板290上に順に連結されて一つの内部空間を形成する第1ボディー部110、第2ボディー部120およびヘッド部130を有し;前記第1ボディー部110は、前記多孔板上に放射状に互いに離隔配置されて前記第2ボディー部120に連結された複数の反応空間を提供する複数の反応管115と、前記反応管115の外周面の少なくとも一部をそれぞれ囲む複数の加熱部117とを有し;前記第2ボディー部120は、前記第1ボディー部110の複数の反応管115と連結された一つの反応空間を提供し;前記ヘッド部130は、前記流動床反応チャンバーの上部を密閉し、前記第2ボディー部120よりも大きい直径を有するものであってもよい。
【0061】
本発明者らの研究によると、流動床反応チャンバーの下部に形成される流動層を複数の隔壁で領域を分割し、分割された領域をそれぞれ外部で加熱する場合、加熱効率の向上を通じたポリシリコンの生産性の増大を可能にすることが確認された。このように改善された加熱方式を通じて、従来の外部加熱方式による反応器内温度の不均一現象、および従来の内部加熱方式によるポリシリコンの汚染および工程運用の不安定性が簡単に解消され得る。さらには、このような改善された加熱方式は、生産規模の増大のために反応器規模の拡張が要求される場合にも、分割される領域の個数を増やして同等な加熱効率の達成を可能にする。
【0062】
図5図6は、それぞれ発明の一実施形態に係る流動床反応チャンバーの構造を模式的に示す斜視図である。
【0063】
前記第1ボディー部110、第2ボディー部120およびヘッド部130は独立的に個別に形成されて互いに結合されたりまたは一体に形成されて一つの内部空間を提供する。
【0064】
そのうち、前記ヘッド部130は、前記流動床反応チャンバー100の上部を密閉し、前記第2ボディー部120と連結される。
【0065】
発明の実施形態によると、前記ヘッド部130は、第2ボディー部120よりも大きい直径を有することが好ましい。これは第2ボディー部120からヘッド部130に進入するガスまたは微細粒子の流速を減少させるためであり、これによって反応器の運転後に排出されるガスまたは微細粒子に対する後処理負担を軽減させることができる。
【0066】
前記第1ボディー部110は、ヘッド部130の下に位置してヘッド部130と連結され、ポリシリコンの析出反応が起きる空間を提供する。
【0067】
そして、前記第1ボディー部110は、第2ボディー部120の下に位置して第2ボディー部120および前述したガス分配装置の多孔板290と接して連結され、ポリシリコンの析出反応または加熱反応のうちの少なくとも一つの反応が起きる空間を提供する。
【0068】
特に、前記第1ボディー部110は、複数の反応管115と、各反応管の外周面を囲む複数の加熱部117とを有する。
【0069】
つまり、流動床反応チャンバーの内部が一つの反応空間からなる通常の流動層反応器とは異なり、発明の一実施形態に係る流動層反応器システムは、一つの内部空間を有する流動床反応チャンバー100の下部領域(流動層形成領域)が複数の反応空間に分割されたものであってもよい。
【0070】
具体的に、前記第1ボディー部110は、前記多孔板290上に放射状に互いに離隔配置されて前記第2ボディー部120に連結された複数の反応空間を提供する複数の反応管115を有する。
【0071】
前記反応管115は、複数の反応空間(複数の流動層形成領域)を提供し、前記第2ボディー部120と連結されて一つの内部空間を形成する。
【0072】
ここで、前記反応管115は、前述したガス分配装置200のガス排出口235にそれぞれ対応する位置に配置されてもよい。
【0073】
そして、前記第1ボディー部110は、前記反応管115の外周面の少なくとも一部を囲む複数の加熱部117を有する。前記加熱部117は、前記反応管115内でシリコンシードの表面にシリコンが蒸着されるようにそれぞれの反応空間を加熱する。前記加熱部117は、前記反応管215の外周面の全体をそれぞれ囲むように形成されることが加熱効率向上の側面で好ましい。
【0074】
このように、発明の一実施形態に係る流動床反応器システムは、個別的に加熱される複数の反応空間を有することによって、一つの反応空間に対する外部加熱方式の反応器に比べて、反応空間の均一な加熱が可能である。
【0075】
そして、このような改善された加熱方式は、前記多孔板290上に放射状に互いに離隔配置された反応管115の個数を必要に応じて適切な範囲に調節することができ、これに対する個別的な加熱を通じて同等な加熱効率の達成を可能にする。したがって、前述した流動床反応チャンバーが適用された流動床反応器システムは、生産性の向上と共に、生産規模の拡張にもより柔軟に対処できるという長所を有する。
【0076】
以下、粒子状ポリシリコンの製造方法を例に挙げて前記流動床反応器システムの運転方法を説明する。
【0077】
III.粒子状ポリシリコンの製造方法
一方、発明のまた他の一実施形態によると、前述した流動床反応器システムを利用した粒子状ポリシリコンの製造方法が提供される。
【0078】
具体的に、発明の実施形態に係る粒子状ポリシリコンの製造方法は、
流動床反応チャンバーに流動化ガスおよびシリコン原料ガスを供給してシリコンシードの流動層を形成する段階、
前記シリコン原料ガスと接触するシリコンシードの表面にシリコンを蒸着させて前記シリコンシードを成長させる段階、
前記成長により流動性が減少したシリコンシードを前記流動床反応チャンバーから回収する段階、および
前記流動床反応チャンバーにシリコンシードを投入する段階を含み;
前記段階は、連続的且つ反復的に行われ;
前記流動床反応器システムの流動層モニタリング装置で観察された流動層の状態により、複数のガス供給管を通じて各環状空間に供給される流動化ガスおよびシリコン原料ガスの流量がそれぞれ独立的に調節される。
【0079】
前記シリコンシードの流動層を形成する段階において、シリコンシードは高純度のポリシリコン塊りを粉砕および分級して準備されてもよい。この時、流動床反応チャンバー100に投入されるシリコンシードの粒径は、最小流動化速度など粒子の流動化に適した範囲で決定されてもよい。好ましくは、前記シリコンシードは、50乃至800μm、または100乃至700μm、または100乃至500μmの粒径を有するものであってもよい。
【0080】
準備されたシリコンシードは流動床反応チャンバー100に適正量が供給され、供給されたシリコンシードはガス分配装置200を通じて流動床反応チャンバー100に排出されるガスにより流動層を形成する。この時、ガス分配装置200を通じて排出されるガスの組成と流量はプレナムチャンバー210の環状空間230に対応する流動床反応チャンバー100の領域および流動層の状態により変わり得る。
【0081】
流動床反応チャンバー100の領域および流動層の状態により組成と流量には差があるが、前記流動床反応チャンバー100に供給されるガスは、流動化ガス、シリコン原料ガス、またはこれらの混合ガスである。ここで、前記流動化ガスは、水素、窒素、アルゴン、およびヘリウムからなる群より選択された1種以上を含有するガスであってもよい。前記シリコン原料ガスは、モノシラン(SiH)、ジシラン(Si)、ジクロロシラン(SiHCl)、トリクロロシラン(SiHCl)、およびシリコンテトラクロライド(SiCl)からなる群より選択された1種以上を含有するガスであってもよい。
【0082】
そして、流動床反応チャンバー100の内部温度は、前記シリコン原料ガスの分解温度とシリコンの溶融温度内に維持され、好ましくは500乃至1000℃、または600乃至800℃に維持されてもよい。
【0083】
流動床反応チャンバー100の内部温度を維持するためには、反応器壁体の外部に配置される電気抵抗ヒーターなど、通常の加熱システムが用いられてもよい。ここで、図5図6に示したように、複数の反応管115を有する流動床反応チャンバー100が利用される場合、各反応管の外周面の少なくとも一部を囲む複数の加熱部117を導入して加熱効率を図ることができる。
【0084】
そして、流動床反応チャンバー100の内部圧力は、常圧またはそれ以上(例えば1乃至10barの圧力)に維持されてもよい。
【0085】
一方、シリコンシードの流動層に供給された前記シリコン原料ガスは、加熱されたシリコンシードの表面で熱分解される(例えばSiH⇔Si+2H)。その結果、シリコンシードの表面にはシリコンが蒸着(析出)されて、シリコンシードの粒径が漸次に増加する。
【0086】
このような成長により流動性が減少したシリコンシードは、流動層の下部に順次に沈む。流動性が減少したシリコンシードは、生成物回収管260を通じて回収される。そして、回収された生成物の量と流動層の状態などを考慮して流動床反応チャンバー100には新たなシリコンシードが投入される。
【0087】
このような一連の工程は連続的且つ反復的に行われてもよい。
【0088】
特に、発明の実施形態に係る粒子状ポリシリコンの製造方法では、前述した流動床反応器システムを利用して、流動層モニタリング装置500で観察された流動層の状態により、複数のガス供給管240を通じて各環状空間230に供給される流動化ガスおよびシリコン原料ガスの流量がそれぞれ独立的に制御され得る。
【0089】
これと関連して、従来知られた粒子状ポリシリコン製造用流動床反応器の大部分は、気泡流動層または噴出流動層の形成が可能なように設計されたものであるため、一つの反応器で気泡流動層と噴出流動層間の転換は事実上不可能であった。
【0090】
しかし、本発明による流動床反応器システムは、前述のように、プレナムチャンバー210内の各環状空間230別にガスの流量および/または組成が独立的に制御可能であるため、一つのシステム内で気泡流動層と噴出流動層間の転換が簡単に行われ得る。本発明はこのような流動床反応器システムを粒子状ポリシリコン製造方法に適用することによって気泡流動層と噴出流動層を利用した方法の長所を同時に有することができる。
【0091】
例えば、前記粒子状ポリシリコンの製造方法において、前記シリコンシードの流動層は、
前記流動床反応チャンバーの直径に対して3倍乃至6倍の高さに維持され、85mol%以上の流動化ガスと15mol%未満のシリコン原料ガスが前記プレナムチャンバーの複数の環状空間に均等に供給される気泡流動層;および
前記気泡流動層の初期高さに対して1.2倍乃至1.7倍の高さに維持され、前記プレナムチャンバー半径の1/3以内に位置する環状空間に85mol%未満の流動化ガスと15mol%以上のシリコン原料ガスが供給され、残りの環状空間に流動化ガスのみが供給される噴出流動層であって、製造工程全体にかけて連続的且つ反復的に転換され、
前記シリコンシードの流動層が噴出流動層から気泡流動層に転換される区間において、前記成長により流動性が減少したシリコンシードが回収され得る。
【0092】
図7を参照すると、運転初期に前記シリコンシードの流動層は、気泡流動層Bで運転される。具体的に、運転初期にシリコン原料ガスの濃度は15mol%未満または10mol%以下に維持されてもよく;流動床反応チャンバー100に供給されるガスの流速比(U/Umf)は3乃至5に維持されてもよい。ここで、前記ガスの流速比(U/Umf)は、最小流動化速度(minimum fluidization velocity、Umf)とガスの実際投入速度(U)の比を意味する。前記最小流動化速度は、シリコン原料ガスの分解による運動量減少を考慮して、反応温度より300℃以上低い多孔板290の表面温度を基準に設定されてもよい。
【0093】
前記組成と流量で調節されたガスは、各ガス供給管240を通じて各環状空間230に供給され、供給されたガスは各環状空間230から流動床反応チャンバー100に均一に排出される。この時、流動床反応チャンバー100の内壁にシリコンが蒸着されることを最小化するために、前記プレナムチャンバー210の最外郭に位置する環状空間には製造工程全体にかけて流動化ガスのみが供給されるようにすることが好ましい。
【0094】
このように排出されたガスにより一定且つ反復的な乱流形状の流動パターンを有するシリコンシードの気泡流動層Bが形成される。この時、運転初期の流動層高さ(a)は、流動床反応チャンバー100の直径に対して3倍乃至6倍、または4倍乃至5倍に設定されてもよい。
【0095】
このような気泡流動層下でシリコンシードが漸次に成長すると、流動床反応チャンバー100に供給されるガスの組成および/または流量を調節して、気泡流動層Bで噴出流動層Sに徐々に移っていくように運転される。つまり、前記流動層モニタリング装置500は、流動床反応チャンバー100内部に形成された流動層の状態(例えば、シードの成長による差圧増加量、流動層の高さ変動量、反応チャンバーの加熱による電力量変化量など)を観察する。そして、前記流動層モニタリング装置500は、流動層の状態に対応するプログラミングされた設定または手動設定により、流動化ガス流量調節器350およびシリコン原料ガス流量調節器450に個別的な電気信号530を伝達して、プレナムチャンバー210の各環状空間230に供給されるガスの組成および/または流量を制御する。
【0096】
気泡流動層Bから噴出流動層Sに転換するに当たり、ガスの組成と流量はプレナムチャンバー210の外郭に位置する環状空間から中心部に位置する環状空間に向かって順次に変更され得る。例えば、それぞれのシリコン原料ガス流量調節器450を制御して、プレナムチャンバー210の外郭に位置する環状空間から段階的にシリコン原料ガスの供給を中止し、流速比(U/Umf)1乃至2水準の流動化ガスのみを供給する。同時に、外郭で供給が減少したシリコン原料ガスと流動化ガスの流量分だけ中心部の環状空間に供給されるガスの流量を増大させる。ガス全体の流量は初期投入量に維持されたり、初期より10乃至20%程度高く維持され得る。
【0097】
このような転換過程が完了すると、中心部の環状空間に供給されるシリコン原料ガスの流量を漸次に増加させる。最終的にシリコン原料ガスは中心部の環状空間にのみ集中的に供給され、残りの環状空間には流速比(U/Umf)1乃至2水準の流動化ガスのみが供給されて、噴出流動層Sの形態に転換される。
【0098】
前記噴出流動層でシリコン原料ガスが集中的に供給される、前記「中心部の環状空間」は噴出流動層の運転条件に応じて異なって設定されてもよい。好ましくは、前記中心部の環状空間は、プレナムチャンバー210半径の1/3以内または1/5以内に位置する環状空間を意味し得る。また、前記中心部の環状空間は、同心円の中心に位置する一つの環状空間を意味し得る。
【0099】
そして、前記噴出流動層で流動層の高さは、前記気泡流動層の初期高さに対して1.2倍乃至1.7倍に維持されてもよい。前記中心部の環状空間には85mol%未満の流動化ガスと15mol%以上のシリコン原料ガスが供給されてもよい。
【0100】
このような噴出流動層下でシリコンシードが順次に成長すると、前記流動層モニタリング装置500で観察された流動層の状態により、流動床反応チャンバー100に供給されるガスの組成および/または流量を調節して、噴出流動層Sから気泡流動層Bに徐々に移っていくように運転される。そして、前記シリコンシードの流動層が噴出流動層Sから気泡流動層Bに転換される区間で、成長により流動性が減少したシリコンシードが生成物回収管260を通じて回収され得る。
【0101】
前述した方法を通じてシリコンシードの初期粒径に対して1.3乃至4倍または1.5乃至2倍の粒径を有する粒子状ポリシリコン生成物が得られる。このように前述した方法を通じて大きい粒径を有する粒子状ポリシリコン生成物の獲得が可能であり、それに基づいてシリコンシードの投入周期が延長可能であり、ポリシリコンの製造原価も節減可能である。
【0102】
ひいては、前記粒子状ポリシリコンの製造方法は、工程の運用過程で発生し得る非正常的な状況(例えば、層分離、反応器壁に対する蒸着、凝集体形成など)により柔軟な対処を可能にする。
【0103】
例えば、モノシランまたはトリクロロシランをシリコン原料ガスとして使用する粒子状ポリシリコンの製造において、運転停止の非常状況が発生する最も大きい原因は流動層内の凝集体(agglomeration)の形成である。凝集体は、流動層内で非流動区域が存在する時に形成されるが、このような非流動区域はスラギング(slugging)、急激な微粉形成、粒子成長による層分離現象などにより発生する。凝集体の形成有無は、流動層を通過する流体の差圧傾向の不規則な変動、特定区間における非正常的な温度上昇などを通じて把握され得る。
【0104】
このような非正常的な状況の発生時、プレナムチャンバー210の環状空間230に供給されるシリコン原料ガスの量を5mol%以下に減量し、これによって減少するガスの運動量は流動化ガスの流量を増やして補充する。以降、各環状空間230別に流動化ガスの注入量を間歇的に増やすパルス供給(pulse feeding)を行う。このようなパルス供給は、プレナムチャンバー210の最外郭に位置する環状空間で中心に位置する環状空間の順に(またはその反対に)順次に実施することができる。または、各環状空間に無作為的に供給する方法で実施することができる。そして、このようなパルス供給は、凝集体形成の兆候が無くなるまで続けられ得る。
【0105】
前述のように、プレナムチャンバー内の区域別にガスの流量および/または組成の調節が独立的に可能な構造を有するガス分配装置は、一つのシステム内で気泡流動層と噴出流動層間の転換を可能にする。そして、このようなガス分配装置を含む流動床反応器システムを粒子状ポリシリコンの製造に適用することによって、工程の安定性と生産性を同時に向上させることができるだけでなく、工程の運用過程で発生し得る非正常的な状況により柔軟な対処が可能である。
【符号の説明】
【0106】
100 流動床反応チャンバー
110 第1ボディー部
115 反応管
117 加熱部
120 第2ボディー部
130 ヘッド部
200 ガス分配装置
210 プレナムチャンバー
290 多孔板
220 環状隔壁
230 環状空間
232 ガス流入口
235 ガス排出口
240 ガス供給管
250 ガス排出管
257 冷却チャンネル
260 生成物回収管
300 流動化ガスタンク
350 流動化ガス流量調節器
400 シリコン原料ガスタンク
450 シリコン原料ガス流量調節器
500 流動層モニタリング装置
530 電気信号
B 気泡流動層
S 噴出流動層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7