特許第6448819号(P6448819)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エアバス ディフェンス アンド スペース エスアーエスの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6448819
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】人工衛星
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/22 20060101AFI20181220BHJP
   B64G 1/50 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
   B64G1/22
   B64G1/50 Z
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-557101(P2017-557101)
(86)(22)【出願日】2016年6月1日
(65)【公表番号】特表2018-514442(P2018-514442A)
(43)【公表日】2018年6月7日
(86)【国際出願番号】FR2016051307
(87)【国際公開番号】WO2016193618
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2017年10月31日
(31)【優先権主張番号】1555013
(32)【優先日】2015年6月2日
(33)【優先権主張国】FR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507142074
【氏名又は名称】エアバス ディフェンス アンド スペース エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー,アンドルー
【審査官】 志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0110531(US,A1)
【文献】 特開2000−036329(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02530366(EP,A1)
【文献】 特開平07−237600(JP,A)
【文献】 特開2002−046700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工衛星(38、100)であって、中心構造(44)を支持する反地球面(46)と、地球面(42)と、東面および西面と、北面(48)および南面(50)と、熱を放散可能な少なくとも1つのバッテリパック(62)と、前記バッテリパック(62)によって放散された熱を宇宙へ伝達可能な少なくとも1つのラジエータ(64)と、250ワット/m2未満の個々の電力束密度を有する少なくとも1つのいわゆる低損失設備(52、54、56、58、60、97)と、を備えており、前記人工衛星(38、100)の内部の領域を前記ラジエータ(64)とともに、輻射によって熱制御を行う等温領域(68)として区切る断熱カバー(66)を備え、前記バッテリパック(62)および前記低損失設備(52、54、56、58、60、97)は、前記断熱カバー(66)内に配置されており、前記バッテリパック(62)は、0℃と50℃との間の動作範囲をしており、前記バッテリパック(62)はリチウムバッテリパックであり、
前記断熱カバー(66)は、鎧装(70)および断熱材の十分に平坦な部分(72)を備えており、前記鎧装(70)は前記ラジエータの上側の部分(75)に取り付けられている、周縁部(74)を有しており、前記少なくとも1つのラジエータの下側の部分(77)に固定されている断熱材から作られた前記平坦な部分(72)は、前記鎧装(70)、および前記少なくとも1つのラジエータ(64)とともに、閉じた外被を形成することを特徴とする人工衛星(38、100)。
【請求項2】
前記バッテリパック(62)は10℃と30℃との間の動作範囲を有しており、該バッテリパックはリチウムイオンバッテリパックであることを特徴とする請求項1に記載の人工衛星(38、100)。
【請求項3】
前記低損失設備(52、54、56、58、60、97)は、推進剤貯蔵配分システムを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の人工衛星(38、100)。
【請求項4】
前記推進剤貯蔵配分システムは、推進剤貯蔵庫(56)、推進剤配分用導管(58)、弁(59)、フィルタ(60)、およびノズル(54)の一部の中から少なくとも1つの設備を備えていることを特徴とする請求項3に記載の人工衛星(38、100)。
【請求項5】
前記低損失設備(52、54、56、58、60、97)は、少なくとも1つの反動輪(97)を備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の人工衛星(38、100)。
【請求項6】
前記断熱カバー(66)は、柔軟な材料から作られていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の人工衛星(38、100)。
【請求項7】
前記ラジエータ(64)に取り付けられる加熱設備(78)をさらに備えていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の人工衛星(38、100)。
【請求項8】
中心構造(44)と、前記中心構造(44)に固定される少なくとも1つの推進剤貯蔵庫(56)と、前記中心構造(44)の少なくとも一部に取り付けられた推進剤配分用導管(58)と、前記推進剤配分用導管(58)に取り付けられた弁(59)と、を備えており、前記鎧装(70)は前記中心構造(44)、前記推進剤貯蔵庫(56)、前記推進剤配分用導管(58)の少なくとも一部、および前記弁(59)を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の人工衛星(38、100)。
【請求項9】
熱材の前記平坦な部分(72)は、前記反地球面(46)を被覆していることを特徴とする請求項に記載の人工衛星(38、100)。
【請求項10】
前記人工衛星の前記低損失設備は、40ワット未満の熱流束を放散することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の人工衛星(38、100)。
【請求項11】
前記柔軟な材料は、多層断熱材であることを特徴とする請求項6に記載の人工衛星(38、100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工衛星の分野に関し、より詳細には静止衛星の分野に関する。
【0002】
特に、本発明は、衛星の熱制御に関する。
【背景技術】
【0003】
衛星は、バッテリ、ペイロード、オンボードコンピュータなどの設備を含む。これらの設備は、適切な動作を行い、したがって当該衛星が任務を成功裡に完了することを保証するためには、温度が制御されなければならない。これらの設備は異なる動作温度の範囲を有するので、これらの動作温度にしたがって互換性のある熱領域内に隔離される。これらの領域は、ラジエータに接触する多層断熱材によって囲まれている。そのような断熱の実施を単純化するために、同等の動作温度の範囲を有する設備が同一の領域内に取りまとめられるものとする。最も冷たい温度を維持する必要がある等温領域には、最も大きいラジエータが必要である。そのようなラジエータは扱いづらく、衛星を重くしてしまう。衛星の製造会社は、したがって最も冷たい領域における設備の量を最小にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1Aおよび図1Bは、衛星1における等温領域の配置の例を示す概略図である。この例によれば、衛星1は、5種類の等温領域を備えている。各等温領域は、多層断熱材6、あるいはラジエータによって囲まれている。各等温領域は、さらに、加熱設備7を備えている。
【0005】
したがって、等温領域4の第1の種類は、バッテリ2の組と、第1のラジエータ3とを備えている。バッテリ2がNiHバッテリであるとき、領域4の第1の種類は、−20℃と−10℃との間で温度が維持される。バッテリ2がリチウムイオンバッテリであるとき、領域4の第1の種類は、+10℃と+30℃との間の温度が維持される。
【0006】
等温領域11の第2の種類は、反動輪8、オンボードコンピュータ5、電力供給ユニット10、および第2のラジエータ9を備えている。この、等温領域11の第2の種類は、−20℃と+50℃との間で温度が維持される。
【0007】
等温領域12の第3の種類は、低電力で駆動するペイロード16、および第3のラジエータ13を備えている。この、等温領域12の第3の種類は、−10℃と+50℃との間で温度が維持される。
【0008】
領域18の第4の種類は、高電力で駆動するペイロード14、および第4のラジエータ15を備えている。この、等温領域18の第4の種類は、−20℃と+70℃との間で温度が維持される。
【0009】
最後に、推進剤貯蔵配分システム22は、推進領域24として呼ばれる、領域の第5の種類に配置される。本発明において、「推進剤」という語句は、化学推進またはプラズマ推進といった、推進の目的のために用いられる物質に拘らずに使用される。この推進領域は、0℃と+50℃との間で温度が維持される。この推進領域24の設置は、特に時間および費用が掛かるものである。そのような設置の間、加熱器は、推進剤貯蔵庫26、弁、およびフィルタ30に接着される。多層断熱材6はその後、これら設備のそれぞれの周囲、およびノズル32の位置の上にかけられる。最後に、図2に示すように、加熱器はらせん状の配置にしたがって、推進剤配分用導管28の全体に沿って配置される。アルミニウムで作られた粘着テープ36が、加熱器に接着される。多層断熱材6は、その後、推進剤配分用導管34の周りにかけられる。加熱器は、推進剤を凍結させないために駆動する。多層断熱材は、推進剤を加熱するために必要な加熱用電力を最小化すること可能とし、したがって電力消費量を削減する。
【0010】
しかしながら、加熱器、テープ、および多層断熱材の配置は、推進剤貯蔵庫とノズルとの間のすべての推進剤配分用導管に対して手動でなされる。この配置は、したがって非常に時間を消費するものである。加えて、推進剤配分用導管28を保持するブラケット34は、コストのかかる、熱伝導性が低い材料から作られている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、衛星に対する設備の構成(例えば、位置および向き)に大きな自由度を与えるが、有効性を維持することで、実施が容易であり、したがって衛星を製造するために必要な時間およびコストを削減することを可能とする、衛星のすべての設備に対する熱制御の解決法を提案する。
【0012】
前記の目的のために、本発明は、熱を放散可能なバッテリパックと、前記バッテリパックによって放散された熱を宇宙へ伝達可能な少なくとも1つのラジエータと、250ワット/m2未満の個々の電力束密度を有する少なくとも1つのいわゆる低損失設備と、を備えており、前記ラジエータとともに、輻射によって熱制御を行う等温領域を区切る断熱カバーを備え、前記バッテリパックおよび前記低損失設備は、前記断熱カバー内に配置されており、前記バッテリパックは、0℃と50℃との間の動作範囲、好適には10℃と30℃との間の動作範囲を有することを特徴とする。
【0013】
バッテリパックおよび低損失設備の両方を備えている単一の熱領域を規定する単一のカバーを配置することは、衛星の設計のための時間およびコストの点で有利である。
【0014】
カバー内に含まれる設備を加熱するための電力消費量は、これらと同一の設備がいくつかの等温領域内に配置されたときの電力消費量と比較して、削減される点で有利である。
【0015】
特定の実施形態によれば、前記バッテリパックはリチウムバッテリパックであり、特にリチウムイオンバッテリパックである。
【0016】
特定の実施形態によれば、前記低損失設備は、推進剤貯蔵配分システムを備えている。
【0017】
推進体も含む等温領域の配置が容易になる点で有利である。実際、この等温領域は、推進剤貯蔵庫、弁、およびエンジンを接続する推進剤配分用導管のすべてを含むので、当該推進剤配分用導管はもはや熱的に包まれる必要がない。カバーは、貯蔵配分システム内の小さな設備のすべてを、一挙に、かつ非常に早く囲むことを可能とする。
【0018】
の等温領域は、また、旧式の推進領域よりも配置により融通がきく点で有利である。実際、例えば推進剤貯蔵庫の大きさの変更、または推進剤配分用導管の変更を、加熱器、アルミニウムテープ、および多層断熱材の再配置を行うことなく、可能とする。
【0019】
貯蔵配分システムは、いかなる熱も放散しないので、その等温領域内でラジエータの放散面を増やす必要なく、バッテリパックを含む当該等温領域に追加することができる点で有利である。
【0020】
カバーに含まれる設備は、すべての衛星およびその形式に存在する設備であり、カバーとともに、当該設備が追加される基準ベースを形成する点で有利である。設備の大きさは、ペイロード、オンボードコンピュータなどの、衛星の任務に必要なものによってその大きさを変化させる。
【0021】
特定の実施形態によれば、前記推進剤貯蔵配分システムは、推進剤貯蔵庫、推進剤配分用導管、弁、フィルタ、およびノズルの一部の中から少なくとも1つの設備を備えている。
【0022】
さらに、図1Bを参照すると、反動輪8が、ヒートパイプや金属の編組のような熱リンク37を介してラジエータに対して通常、熱的に接続されている。熱リンクは、反動輪およびラジエータに手動で取り付けられる。この取り付け作業は、配置に時間を消費するものである。加えて、衛星を設計するときに、衛星内部の反動輪8の位置または向きの変更を所望すると、熱リンク37は除去され、異なる位置に再配置されなければならないか、その長さを適合させる必要がある。この作業は手動でなされるものであり、また時間を消費するものであるため、したがってコストがかかる。
【0023】
次に、第2の実施形態によれば、前記低損失設備は、少なくとも1つの反動輪を備えている。
【0024】
この第2の実施形態によれば、反動輪とラジエータとの間の熱リンクをもはや取り付ける必要がない点で有利である。反動輪は第1の等温領域に自由に熱を放散することができる。この配置は、衛星の組み立てを容易にする。
【0025】
この配置は、また、顧客の要求に応じた変更内容と歩調を揃えて、反動輪を第1の等温領域内の容易に移動させること、または異なる向きにすることが可能とするので、衛星を設計するときに大きな自由度を与えることを可能とする。
【0026】
反動輪はほとんど熱を放散しないので、これらの低損失設備を、その等温領域内のラジエータの放散面を実質的に増やすことなく、バッテリパックを含む等温領域に追加することができる点で有利である。
【0027】
第2の実施形態による衛生は、反動輪とラジエータとの間の熱リンクの取り付けが不要であり、衛星の製造時間および製造コストを削減する点で有利である。
【0028】
特定の実施形態によれば、断熱カバーは、柔軟な材料から作られており、好適には多層断熱材から作られている。
【0029】
カバーが一定体積を有するものであったとしても、その自由度から、当該カバーは、中心構造の異なる形状、バッテリパックの異なる形状、貯蔵配分システムの異なる形状、設備(例えば、中心構造に取り付けられた設備、または他の設備)の異なる形状、または反動輪の異なる形状に適合することを可能とする。
【0030】
特定の実施形態によれば、衛星はまた、前記ラジエータに取り付けられる加熱設備を備えている。
【0031】
加熱用の設備は、ラジエータの内側のプレートに直接取り付けられる点で有利である。加熱用の設備は当該プレートを加熱し、したがってカバー内に含まれる設備のすべてを加熱することを可能とする。
【0032】
特定の実施形態によれば、衛星は、中心構造と、前記中心構造に固定される少なくとも1つの推進剤貯蔵庫と、前記中心構造の少なくとも一部に取り付けられた推進剤配分用導管と、前記推進剤配分用導管に取り付けられた弁と、を備えており、前記断熱カバーは、前記中心構造の上を滑る鎧装を備えており、前記鎧装は前記中心構造、前記推進剤貯蔵庫、前記推進剤配分用導管の少なくとも一部、および前記弁を含む。
【0033】
カバーは、衛星の設計に対する変更の発生に応じて容易に追加および削除することができる点で有利である。
【0034】
カバーは、囲む必要がある設備の数および大きさにかかわらず異なる衛星のベースに適合することができる、標準フォーマットで作ることができる点で有利である。実際、低重量のカバーについて、取り得る衛星の構成すべてについて用いることができる、(含まれる最大体積によって決定される)取り得る最大の規格の大きさであるカバーを規定することによって、(衛星を重くすることなく)配置時間が抑制される。
【0035】
特定の実施形態によれば、前記鎧装は、第1のラジエータの上側の部分に取り付けられている、周縁部を有する。
【0036】
特定の実施形態によれば、衛星は前記中心構造を支持する反地球面を備えており、断熱材の十分に平坦な部分を備える前記断熱カバーが前記反地球面を被覆しており、少なくとも1つのラジエータの下側の部分に固定されている断熱材から作られた前記部分は、前記鎧装、および前記少なくとも1つのラジエータとともに、閉じた外被を形成する。
−特定の実施形態によれば、前記衛星の前記低損失設備は、40ワット未満の熱流束を放散する。
【0037】
40ワットの値は、(すなわち、ヒートパイプの助力またはラジエータへの直接接続なしに)カバー内に非常にやっかいな設備を有することを避けるための、一般的な輻射損失の限界である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本発明は、単に例として与えられた以下の説明と、与えられた図面を参照することによってよりよく理解されるだろう。
図1A図1Aは、先行技術に係る熱領域を示す概略図である。
図1B図1Bは、先行技術に係る実行衛星の概略図である。
図2図2は、先行技術に係る推進剤配分用導管の位置の概略図である。
図3A図3Aは、本発明の第1の実施形態に係る熱領域を示す概略図である。
図3B図3Bは、本発明の第1の実施形態に係る人工衛星の概略図である。
図4A図4Aは、本発明の第2の実施形態に係る熱領域を示す概略図である。
図4B図4Bは、本発明の第2の実施形態に係る人工衛星の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、人工衛星の分野に関し、より詳細には静止衛星の分野に関する。
【0040】
図3Bを参照すると、本発明の第1の実施形態に係る人工衛星38は、反地球面46、反地球面46を静止させる中空の中心構造44、および地球面42を備えている。人工衛星38の東面および西面は設備を運び、北面48および南面50は、ラジエータおよび設備を運ぶ。
【0041】
本発明に係る衛星は、さらに推進システムを備えている。推進システムは、化学推進システムまたはプラズマ推進システム(図示しない)であってもよく、これらの推進形式を組み合わせて使用する構成であってもよい。
【0042】
推進システムは、推進剤貯蔵配分システム52と、反地球面46に配置された2つまたはそれ以上のノズル54を備えている。
【0043】
推進剤貯蔵配分システム52は、中心構造44に取り付けられた2つの推進剤貯蔵庫56と、各推進剤貯蔵庫を各ノズルに接続する推進剤配分用導管58、推進剤配分用導管58に配置された弁59およびフィルタ60を備えている。個々の、これらの設備はほとんど熱を放散しない(具体的には3ワット未満)。また一般的には250ワット/m2未満という低い電力束密度(その値は、設備の放散面に関して設備によって放散される熱によって示され、この値はワット/m2で表される)を有する。本特許出願において、250ワット/m2未満の熱電力束密度を有する設備は、低損失設備とされる。推進剤貯蔵配分システム52の設備は、したがって本特許出願によれば、低損失設備である。これらの設備は、冷却環境に配置したときに輻射熱交換によって効果的に熱の除去を行うことができるので、いかなる伝導性の熱制御も必要としない。一方、250ワット/m2より大きい特有の電力束密度を個々に有する設備は伝導性の熱制御を必要としており、ラジエータに直接配置されるか、ヒートパイプまたは金属の編組のような伝導性の方法によってラジエータに連結されなければならない。
【0044】
放出動作中に熱を放散可能なバッテリパック62と、バッテリパックによって放散された熱を宇宙へ伝達可能にするために、バッテリパック62と熱的に接続された第1のラジエータには、北面48および南面50のそれぞれが与えられる。
【0045】
本発明によれば、バッテリパック62は、0℃と50℃との間の温度で機能し、好適には+10℃と+30℃との間で機能することができるように選択されている。
【0046】
バッテリパック62は、リチウムイオンバッテリの組を含む点で有利である。これらのバッテリの表面の動作温度は、一般的に+10℃と+30℃との間である。
【0047】
変形例として、推進システムに対して互換性のある、すなわち0℃と+50℃との間の動作温度の範囲を有する、例えば硫化リチウムバッテリのような、任意の他のバッテリを用いることができる。
【0048】
本発明によれば、推進剤貯蔵配分システム52およびバッテリパック62が中に配置された断熱カバーまたは外被66が、第1の2つのラジエータ64を固定し、これらとともに第1の等温領域68を規定する点で有利である。
【0049】
外被66は断熱材から作られている。この材料は、好適には柔軟な材料である。この外被66は、多層断熱材(Multi Layer Insulation:MLI)と呼ばれる材料から作られている。
【0050】
図示した実施例によれば、この断熱カバー66は、断熱材の上側の鎧装70、および下側の部分72を備えている。鎧装70は、鈴型である点で有利である。鎧装は上端で閉じており、下端が広がっている。鎧装70は周縁部74を有する。この周縁部の一部は、第1のラジエータの上側の部分75に沿って取り付けられている。
【0051】
鎧装70は、中心構造44に対して、容易に与えたり除去したりすることができる。設置された場合、鎧装70は中心構造44、推進剤貯蔵庫56、推進剤配分用導管58、弁59、およびフィルタ60の上側の部分を囲む。鎧装70は、封をされた囲いを形成するためにともに配置された、1つまたは複数の絶縁材の部品からなるものでもよい。
【0052】
断熱材から作られた部分72は、十分に平坦である。この部分は、ノズルが通過する開口を備えている。この部分72の周縁部76は、第1のラジエータの下側の部分77、および鎧装の周縁部74に沿って取り付けられる。次に、鎧装70、第1のラジエータ64、および断熱材から作られた部分72は、本特許出願における第1の等温領域68に関して三次元空間を規定する、閉じた外被を形成する。このカバー66内で生成された熱の除去は、第1のラジエータ64を用いてなされる。
【0053】
第1の等温領域68内の温度を、バッテリパックおよび加熱設備78が耐えることができる最低温度で維持するために、小さな加熱器の型が前記カバー66内に配置される。前述したように、この最低温度は、リチウムイオンバッテリパックが用いられるとき、+10℃である。
【0054】
図示した実施形態の例によれば、第2のラジエータ80、第3のラジエータ82、および第4のラジエータ84にもまた、北面48および南面50が与えられる。第2のラジエータ80、第3のラジエータ82、および第4のラジエータ84は、オンボードコンピュータ86、電力供給ユニット88、低電力で駆動するペイロード90、および高電力で駆動するペイロード92に接続される。多層断熱材の層94は、各ラジエータと地球面42との間に取り付けられ、鎧装70とともに第2の等温領域96を生成する。
【0055】
第2の等温領域96はまた、反動輪97を備えており、反動輪のそれぞれは、ヒートパイプまたは金属の編組の型の熱リンク98によって、ラジエータに接続されている。
【0056】
最後に、この第2の等温領域96は、当該領域の温度を−10℃と+50℃との間で維持するための、小さな加熱器の型を有する加熱設備99を備えている。
【0057】
図示しない変形例によれば、衛星は2つ以上の等温領域を備えており、等温領域のそれぞれは、多層断熱材の層とラジエータによって区切られている。例えば、衛星は、
図3Bに示された熱領域と同一の、第1の等温領域と、
−+50℃と−20℃との間の温度で維持される第2の等温領域であって、この第2の等温領域は、第2のラジエータ80、反動輪97、オンボードコンピュータ86、電力供給ユニット88、および加熱設備99を備えており、
−−10℃と+50℃との間で温度が維持される第3の等温領域であって、当該第3の等温領域は、第3のラジエータ82、低電力90で駆動するペイロード、および加熱設備99を備え、
−−20℃と+70℃との間で温度が維持される第4の等温領域であって、当該第4の等温領域は、第4のラジエータ84、低電力92で駆動するペイロード、および加熱設備99とを備えている。
【0058】
他の有利な点が少ない変形例によれば、図示しないが、多層断熱材に包まれた、衛星の他の側面に配置されたバッテリアセンブリについて、単一のバッテリアセンブリおよび単一の第1のラジエータ64は第1の等温領域内に含まれる。
【0059】
変形例によれば、低損失設備は、ジャイロスコープを備えている。
【0060】
図4Bは、本発明の第2の実施形態に係る人工衛星100を示す。第2の実施形態に係る人工衛星100は、第2の等温領域96内の代わりに第1の等温領域68内に反動輪または輪97が配置される点を除き、本発明の第1の実施形態に係る衛星38と同一である。
【0061】
各反動輪97は、250ワット/m2未満の熱電力束密度を有する。反動輪または輪は、したがって本特許出願に係る低損失設備の一部である。
【0062】
この第2の実施形態について詳細には説明しない。第2の実施形態に係る衛星100における、第1の実施形態に係る衛星38の部材と同一または同様である部材は、同一の参照番号を含んでおり、その説明を2度繰り返すことはない。
【0063】
第1の実施形態によれば、第2の実施形態に係る衛星は、いくつかの等温領域を含んでもよい。例えば、衛星は、前述したような4つの等温領域を含んでもよい。また、この場合は、第1の等温領域内に反動輪97が配置されてもよい。
【0064】
変形例によれば、ノズル54または追加ノズルが、北面48、南面50、東面、または西面の下側の部分に配置される。この場合、ノズル54および追加ノズルの少なくともいずれかは、鎧装70の下かつ第1の等温領域68の中に含まれる。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B