【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1Aおよび
図1Bは、衛星1における等温領域の配置の例を示す概略図である。この例によれば、衛星1は、5種類の等温領域を備えている。各等温領域は、多層断熱材6、あるいはラジエータによって囲まれている。各等温領域は、さらに、加熱設備7を備えている。
【0005】
したがって、等温領域4の第1の種類は、バッテリ2の組と、第1のラジエータ3とを備えている。バッテリ2がNiHバッテリであるとき、領域4の第1の種類は、−20℃と−10℃との間で温度が維持される。バッテリ2がリチウムイオンバッテリであるとき、領域4の第1の種類は、+10℃と+30℃との間の温度が維持される。
【0006】
等温領域11の第2の種類は、反動輪8、オンボードコンピュータ5、電力供給ユニット10、および第2のラジエータ9を備えている。この、等温領域11の第2の種類は、−20℃と+50℃との間で温度が維持される。
【0007】
等温領域12の第3の種類は、低電力で駆動するペイロード16、および第3のラジエータ13を備えている。この、等温領域12の第3の種類は、−10℃と+50℃との間で温度が維持される。
【0008】
領域18の第4の種類は、高電力で駆動するペイロード14、および第4のラジエータ15を備えている。この、等温領域18の第4の種類は、−20℃と+70℃との間で温度が維持される。
【0009】
最後に、推進剤貯蔵配分システム22は、推進領域24として呼ばれる、領域の第5の種類に配置される。本発明において、「推進剤」という語句は、化学推進またはプラズマ推進といった、推進の目的のために用いられる物質に拘らずに使用される。この推進領域は、0℃と+50℃との間で温度が維持される。この推進領域24の設置は、特に時間および費用が掛かるものである。そのような設置の間、加熱器は、
推進剤貯蔵庫26、弁、およびフィルタ30に接着される。多層断熱材6はその後、これら設
備のそれぞれの周囲、およびノズル32の位置の上にかけられる。最後に、
図2に示すように、加熱器はらせん状の配置にしたがって、推進剤配分用導管28の全体に沿って配置される。アルミニウムで作られた粘着テープ36が、加熱器に接着される。多層断熱材6は、その後、
推進剤配分用導管34の周りにかけられる。加熱器は、推進剤を凍結させないために駆動する。多層断熱材は、推進剤を加熱するために必要な加熱用電力を最小化すること可能とし、したがって電力消費量を削減する。
【0010】
しかしながら、加熱器、テープ、および多層断熱材の配置は、
推進剤貯蔵庫とノズルとの間のすべての
推進剤配分用導管に対して手動でなされる。この配置は、したがって非常に時間を消費するものである。加えて、
推進剤配分用導管28を保持するブラケット34は、コストのかかる、熱伝導性が低い材料から作られている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、衛星に対する設
備の構成(例えば、位置および向き)に大きな自由度を与えるが、有効性を維持することで、実施が容易であり、したがって衛星を製造するために必要な時間およびコストを削減することを可能とする、衛星のすべての設
備に対する熱制御の解決法を提案する。
【0012】
前記の目的のために、本発明は、熱を放散可能なバッテリパックと、前記バッテリパックによって放散された熱を宇宙へ伝達可能な少なくとも1つのラジエータと、250ワット/m2未満の個々の電力束密度を有する少なくとも1つのいわゆる低損失設
備と、を備えており、前記ラジエータとともに、輻射によって熱制御を行
う等温領域を区切る断熱カバーを備え、前記バッテリパックおよび前記低損失設
備は、前記断熱カバー内に配置されており、前記バッテリパックは、0℃と50℃との間の動作範囲、好適には10℃と30℃との間の動作範囲を有することを特徴とする。
【0013】
バッテリパックおよび低損失設備の両方を備えている単一の熱領域を規定する単一のカバーを配置することは、衛星の設計のための時間およびコストの点で有利である。
【0014】
カバー内に含まれる設
備を加熱するための電力消費量は、これらと同一の設
備がいくつかの等温領域内に配置されたときの電力消費量と比較して、削減される点で有利である。
【0015】
特定の実施形態によれば、前記バッテリパックはリチウムバッテリパックであり、特にリチウムイオンバッテリパックである。
【0016】
特定の実施形態によれば、前記低損失設備は、推進剤貯蔵配分システムを備えている。
【0017】
推進体も含
む等温領域の配置が容易になる点で有利である。実際、こ
の等温領域は、
推進剤貯蔵庫、弁、およびエンジンを接続する
推進剤配分用導管のすべてを含むので、当該
推進剤配分用導管はもはや熱的に包まれる必要がない。カバーは、貯蔵配分システム内の小さな設
備のすべてを、一挙に、かつ非常に早く囲むことを可能とする。
【0018】
こ
の等温領域は、また、旧式の推進領域よりも配置により融通がきく点で有利である。実際、例えば
推進剤貯蔵庫の大きさの変更、または推進剤配分用導管の変更を、加熱器、アルミニウムテープ、および多層断熱材の再配置を行うことなく、可能とする。
【0019】
貯蔵配分システムは、いかなる熱も放散しないので、その等温領域内でラジエータの放散面を増やす必要なく、バッテリパックを含む当該等温領域に追加することができる点で有利である。
【0020】
カバーに含まれる設
備は、すべての衛星およびその形式に存在する設
備であり、カバーとともに、当該設
備が追加される基準ベースを形成する点で有利である。設
備の大きさは、ペイロード、オンボードコンピュータなどの、衛星の任務に必要なものによってその大きさを変化させる。
【0021】
特定の実施形態によれば、前記推進剤貯蔵配分システムは、
推進剤貯蔵庫、
推進剤配分用導管、弁、フィルタ、およびノズルの一部の中から少なくとも1つの設
備を備えている。
【0022】
さらに、
図1Bを参照すると、反動輪8が、ヒートパイプや金属の編組のような熱リンク37を介してラジエータに対して通常、熱的に接続されている。熱リンクは、反動輪およびラジエータに手動で取り付けられる。この取り付け作業は、配置に時間を消費するものである。加えて、衛星を設計するときに、衛星内部の反動輪8の位置または向きの変更を所望すると、熱リンク37は除去され、異なる位置に再配置されなければならないか、その長さを適合させる必要がある。この作業は手動でなされるものであり、また時間を消費するものであるため、したがってコストがかかる。
【0023】
次に、第2の実施形態によれば、前記低損失設備は、少なくとも1つの反動輪を備えている。
【0024】
この第2の実施形態によれば、反動輪とラジエータとの間の熱リンクをもはや取り付ける必要がない点で有利である。反動輪は第1の等温領域に自由に熱を放散することができる。この配置は、衛星の組み立てを容易にする。
【0025】
この配置は、また、顧客の要求に応じた変更内容と歩調を揃えて、反動輪を第1の等温領域内の容易に移動させること、または異なる向きにすることが可能とするので、衛星を設計するときに大きな自由度を与えることを可能とする。
【0026】
反動輪はほとんど熱を放散しないので、これらの低損失設
備を、その等温領域内のラジエータの放散面を実質的に増やすことなく、バッテリパックを含む等温領域に追加することができる点で有利である。
【0027】
第2の実施形態による衛生は、反動輪とラジエータとの間の熱リンクの取り付けが不要であり、衛星の製造時間および製造コストを削減する点で有利である。
【0028】
特定の実施形態によれば、断熱カバーは、柔軟な材料から作られており、好適には多層断熱材から作られている。
【0029】
カバーが一定体積を有するものであったとしても、その自由度から、当該カバーは、中心構造の異なる形状、バッテリパックの異なる形状、貯蔵配分システムの異なる形状、設
備(例えば、中心構造に取り付けられた設
備、または他の設
備)の異なる形状、または反動輪の異なる形状に適合することを可能とする。
【0030】
特定の実施形態によれば、衛星はまた、前記ラジエータに取り付けられる加熱設備を備えている。
【0031】
加熱用の設
備は、ラジエータの内側のプレートに直接取り付けられる点で有利である。加熱用の設
備は当該プレートを加熱し、したがってカバー内に含まれる設
備のすべてを加熱することを可能とする。
【0032】
特定の実施形態によれば、衛星は、中心構造と、前記中心構造に固定される少なくとも1つの推進剤貯蔵庫と、前記中心構造の少なくとも一部に取り付けられた推進剤配分用導管と、前記
推進剤配分用導管に取り付けられた弁と、を備えており、前記断熱カバーは、前記中心構造の上を滑る鎧装を備えており、前記鎧装は前記中心構造、前記
推進剤貯蔵庫、前記
推進剤配分用導管の少なくとも一部、および前記弁を含む。
【0033】
カバーは、衛星の設計に対する変更の発生に応じて容易に追加および削除することができる点で有利である。
【0034】
カバーは、囲む必要がある設
備の数および大きさにかかわらず異なる衛星のベースに適合することができる、標準フォーマットで作ることができる点で有利である。実際、低重量のカバーについて、取り得る衛星の構成すべてについて用いることができる、(含まれる最大体積によって決定される)取り得る最大の規格の大きさであるカバーを規定することによって、(衛星を重くすることなく)配置時間が抑制される。
【0035】
特定の実施形態によれば、前記鎧装は、第1のラジエータの上側の部分に取り付けられている、周縁部を有する。
【0036】
特定の実施形態によれば、衛星は前記中心構造を支持する反地球面を備えており、断熱材の十分に平坦な部分を備える前記断熱カバーが前記反地球面を被覆しており、少なくとも1つのラジエータの下側の部分に固定されている断熱材から作られた前記部分は、前記鎧装、および前記少なくとも1つのラジエータとともに、閉じた外被を形成する。
−特定の実施形態によれば、前記衛星の前記低損失設
備は、40ワット未満の熱流束を放散する。
【0037】
40ワットの値は、(すなわち、ヒートパイプの助力またはラジエータへの直接接続なしに)カバー内に非常にやっかいな設備を有することを避けるための、一般的な輻射損失の限界である。