(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6448832
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】建物の耐震補強構造
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20181220BHJP
【FI】
E04G23/02 D
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-50716(P2018-50716)
(22)【出願日】2018年3月19日
【審査請求日】2018年3月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500240863
【氏名又は名称】株式会社ランドビジネス
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】亀井 正通
【審査官】
兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−203217(JP,A)
【文献】
特開2009−209585(JP,A)
【文献】
特開2008−057125(JP,A)
【文献】
特開2003−120043(JP,A)
【文献】
特開平09−032311(JP,A)
【文献】
特許第6019710(JP,B2)
【文献】
特開2005−163452(JP,A)
【文献】
特開2010−047926(JP,A)
【文献】
特開2013−007204(JP,A)
【文献】
特開2014−141794(JP,A)
【文献】
特開2006−052543(JP,A)
【文献】
英国特許出願公開第02414269(GB,A)
【文献】
中国特許出願公開第103711330(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存のRC造、SRC造またはS造の建物の外周の複数の柱に沿って、前記柱または建物の外面に接する補強用鉄骨柱を配置し、前記補強用鉄骨柱の下端部は地中に根入れして前記建物の基礎とは別個に設けられた基礎に固定され、前記補強用鉄骨柱の上端部どうしが連結されていることで、前記既存の建物を外周面から取り囲む形で地震時の変形を拘束するようにした建物の耐震補強構造であって、前記補強用鉄骨柱と前記既存の建物の外面は固定せずに単に面で接する構造とし、地震で建物に変形が生じる際、前記建物の地震時の変形を拘束しつつ、前記補強用鉄骨柱と前記既存の建物の外面との接触面での摩擦により地震エネルギーを吸収させるようにしたことを特徴とする建物の耐震補強構造。
【請求項2】
請求項1記載の建物の耐震補強構造において、前記補強用鉄骨柱の上端部は、前記既存の建物の頂部より上方に突出し、補強用鉄骨柱の上端部どうしがトラスまたはパネルを介して連結されていることを特徴とする建物の耐震補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の集合住宅やオフィスビルなどに適用される建物の耐震補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震国である我が国おいては、過去の大地震による教訓をもとに、耐震に関する考え方が都度見直されている。そのような状況下において、旧耐震の設計による既存の建物の構造では、今後予想される大地震に対しては耐震性能が十分ではないという問題がある。
【0003】
このようなことから、既存の建物については、建て替えによらずに耐震性能を大幅に向上させることができる耐震補強構造あるいは耐震補強方法が望まれており、種々の構造、方法が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、水平外力を効率よく負担して、建物の耐震性を向上させる補強構造として、建物の外側面に鉄骨造の補強フレームが配設されてなり、該補強フレームが、上下方向に延在する補強柱と、水平方向に延在する補強梁と、これら補強柱と補強梁との間に架設された補強ブレースとから構成され、該補強ブレースが互いに斜め方向において隣接する千鳥状に配置されている建物の補強構造が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、既存鉄筋コンクリート建築物の建物上部に増築することを目的として、既存鉄筋コンクリート建築物の外側に補強を兼ねた増築建物用支柱を立設して既存建築物と接続し、その支柱を介して既存建築物の屋上に一層又は複数層の増築用建物を設ける構造が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、既存建物の外面の柱梁接合部にピン支持部を形成し、梁方向に連続する外殻梁と、該外殻梁と前記ピン支持部で柱梁接合部を形成するように各層からそれぞれ上方と下方に延びた外殻柱とからなる外殻補強フレームを前記ピン支持部で支持し、上方あるいは下方に延びた外殻柱間の隙間を連結させて格子状の外殻補強構造を既存建物の外側面に構築し、既存建物の機能をそのまま存続させて、既存建物の耐震性能を高める構造が開示されている。
【0007】
また、特許文献4には、耐震架構により建物内部からの視界が遮られることを防止すると共に、意匠性の低下を抑制し、かつ十分な耐震補強の効果を得るための耐震補強構造として、複数階建ての既存建物の外側に、その戸境または柱に対応してそれぞれ配された複数の鉄骨柱と、該鉄骨柱間に架設された部材とを備える耐震架構が設置されて、該耐震架構が前記既存建物に連結されることにより、前記既存建物に耐震補強が施された既存建物の耐震補強構造が開示されている。
【0008】
この特許文献4記載の構造における耐震架構は、各階の高さ方向の一部が、鉛直面内に配された鉄骨柱間に架設された部材としての面状の補強材又は筋かいにより補強された補強部であり、耐震架構に水平力が作用した際に、鉄骨柱のせん断変形は各階における補強部よりも上側の範囲に集中するように構成され、鉄骨梁各階の高さ方向の前記補強部を除く残部が、開口であることを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−018639号公報
【特許文献2】特開2006−052543号公報
【特許文献3】特許第5069534号公報
【特許文献4】特許第6019710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した特許文献1記載の構造は、補強柱と補強梁との間に補強ブレースが架設され、その補強ブレースが互いに斜め方向において隣接する千鳥状に配置されている構造であるため、耐震補強をすることによって、その部分の視界が遮られ、意匠性も損なわれるという問題がある。
【0011】
特許文献2記載の構造は、既存建物の上部に増築するための補強であり、耐震性能を向上させるものではない。
【0012】
特許文献3記載の外殻補強構造は、補強のための構造体の自重を既存の建物で支持する構造であるため、既存の建物および既存の基礎の荷重負担が大きくなり、それに対する補強が必要と考えられる。
【0013】
特許文献4記載の耐震補強構造は、耐震架構により建物内部からの視界が遮られることを防止すると共に、意匠性の低下を抑制するとしながらも、実際には補強ブレースを必須とする構造であり、その効果は限定的である。
【0014】
本発明は、上述のような従来技術における課題の解決を図ったものであり、既存の建物の外装位置に、それ自体が構造的に自立でき、既存の建物の外周柱位置を中心に、窓などの開口部を避けた形で視界や意匠性を損なうことなく建物を外側から取り囲むS造の補強体を設けることで、既存建物の耐震性能を飛躍的に向上させることができる耐震補強構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の建物の耐震補強構造は、既存のRC造、SRC造またはS造の建物の外周の複数の柱に沿って、柱または建物の外面に接する補強用鉄骨柱を配置し、この補強用鉄骨柱の下端部は地中に根入れして建物の基礎とは別個に設けられた基礎に固定され、補強用鉄骨柱の上端部どうしが連結されていることで、既存の建物を外周面から取り囲む形で地震時の変形を拘束するようにし
た建物の耐震補強構造であって、前記補強用鉄骨柱と前記既存の建物の外面は固定せずに単に面で接する構造とし、地震で建物に変形が生じる際、前記建物の地震時の変形を拘束しつつ、前記補強用鉄骨柱と前記既存の建物の外面との接触面での摩擦により地震エネルギーを吸収させるようにしたことを特徴とするものである。
【0016】
本発明の耐震補強の対象となる既存の建物は、RC造(鉄筋コンクリート構造)、SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート構造)、S造(鉄骨構造)などであり、集合住宅やオフィスビルに適している。
【0017】
本発明は、上述のように建物の外周の複数の柱に沿って配置した補強用鉄骨柱を利用して既存の建物を外周面から取り囲む構造により、既存のRC構造をSRC構造とし、SRC構造をダブルSRC構造にすることによって、建物の外装から究極の強度を作り出すものである。
【0018】
補強用鉄骨柱の断面や剛性、強度は、既存の建物の強度に影響されることないため、設計の自由度が高い。
【0019】
補強用鉄骨柱と既存の建物の外面は部分的に固定することもできるが、固定せずに単に面で接する構造としてもよい。
【0020】
前者の場合、既存の建物の外装部分を必要に応じてはつるなどして、補強用鉄骨柱を既存の建物の外周柱と部分的に一体化することもできる。
【0021】
一方、後者の場合は地震で建物に変形が生じる際、接触面での摩擦により地震エネルギーを吸収して建物の振動を減衰させる設計も可能である。また、逆に接触面にアンボンド処理を施し、既存の建物の応答と補強用の構造体の応答の差を利用して相互の干渉により地震応答を低減させることも考えられる。
【0022】
本発明の耐震補強構造の場合、集合住宅の場合の居住者あるいはオフィスビルの場合の建物内部のテナントには、工事音以外で迷惑をかけることがなく、かなりの数の旧耐震の建物に適用することができる。建物の構造も1スパンのみならず、2スパン、3スパン以上の建物にも利用可能である。
【0023】
補強用鉄骨柱の下端部は地中に根入れして固定されるため、外装する鉄骨の自重は地下で受けることができる。この場合、地中に根入れされる補強用鉄骨柱の下端部については深めの穴を掘り、できるだけ深く地中におさめコンクリート基礎などで固定することが望ましい。また、構造的に可能であれば地下階の柱と緊結してもよい。
【0024】
また、集合住宅において長手方向の耐力が不足している場合は、上端部および根入れによって強度を確保することは同様であるが、共同住宅にはバルコニーと外廊下があるため、連続したバルコニーと外廊下の床に穴をあけて鉄骨を通して強度を上げることもできる。
【0025】
また、当該バルコニーと外廊下に有効な幅員が取れない場合にはスラブを拡張して有効寸法をとることとする。また、どちらとも不可能な場合はバルコニーと外廊下の外側に鉄骨を渡しバットレスなどを使用し補強することもできる。
【0026】
地下に伸ばした鉄骨に関しては、場合によって横方向にも鉄骨を流して連結し、可能であればコンクリートで覆う。その他個別に体力が足りない場合は適性にさらなる補強やパネルを追加するものとする。
【0027】
補強用鉄骨柱の上端部は、例えば、適用される既存の建物の頂部より上方に突出させ、これら複数の補強用鉄骨柱の上端部どうし連結するが、その場合トラス構造やパネル構造、あるいはこれらの併用などによって連結することで、耐震補強構造体としての剛性を高め、既存の建物に対する拘束効果を高めることができる。
【0028】
また、補強用鉄骨柱どうしは、適宜、横架材などで横方向に連結することで、補強構造体全体の剛性を高めることができる。このような補強用鉄骨柱や横架材は既存の建物の窓などの開口部を塞ぐことなく設置することができる。補強用鉄骨柱や横架材が既存の建物の意匠性に影響すると考えられる場合には、例えば化粧材を利用して逆に意匠性を高める工夫も可能である。
【0029】
本発明の耐震補強構造は、原則的には建物内部の居住者あるいはテナントがいたままでの施工が可能であるが、例えば建物を全空にした状態では、建物の内部の柱に近接する位置に、建物のフロアに建物の上下方向に貫通する貫通孔を設け、この貫通孔を通して内部補強用鉄骨柱を配置し、その下端部を地中に根入れして固定し、内部補強用鉄骨柱の上端を建物の外周の柱に沿って配置した補強用鉄骨柱と連結する構造とすることもできる。
【0030】
あるいは、既存の建物の内部の柱について、鋼板、コンクリート、または炭素繊維シートの巻き立てにより補強してもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明の建物の耐震補強構造では、建物の外周の複数の柱に沿って配置した補強用鉄骨柱を利用して既存の建物を外周面から取り囲む構造により、既存のRC構造をSRC構造とし、SRC構造をダブルSRC構造とすることによって、建物の耐震強度を大幅に増すことができる。
【0032】
本発明の耐震補強構造の場合、建物内部の居住者あるいはテナントがいたままでの施工が可能であり、工事音以外で迷惑をかけることがなく、工程が制限されることなく耐震補強を効率的、かつ経済的に行うことができる。
【0033】
補強用鉄骨柱の下端部は地中に根入れして固定されるため、外装する鉄骨の自重は地下で受けることができ、基本的には自立した補強構造体を用いるため、適用対象となる既存の建物の強度に影響されず、設計の自由度が大きい。
【0034】
補強用鉄骨柱や横架材は既存の建物の窓などの開口部を塞ぐことなく設置することができるため、耐震補強によって視野が遮られることがなく、意匠性も大きく損なわれることなく、耐震性の面で建物の価値を大きく高めることができる。
【0035】
このように、本発明の耐震補強構造は、今後予想される一説には被害総額167兆円とも言われる南海トラフ地震などを考えると、強い建物を作ることで、地域および国全体に貢献するものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の耐震補強構造の一実施形態を概念的に示した斜視図である。
【
図2】
図1の構造を桁行き方向にみた正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を添付した図面に基づいて説明する。
図1および
図2は、本発明の一実施形態として、地下1階、地上6階建てのRC造(SRC造でも同様)のオフィスビルに対する耐震補強構造を概念的に示したものである。
【0038】
本発明の基本形態としては、既存の建物10の外周柱の位置に沿って複数の補強用鉄骨柱2を配置し、この補強用鉄骨柱2の下端部は地中に根入れして固定する。図の例では補強用鉄骨柱2の設置位置に深めの穴を掘り、コンクリート基礎8を設け、コンクリート基礎8で補強用鉄骨柱2の下端を固定している。
【0039】
また、図示した例では、既存の建物の床高さに相当する複数の位置で横架材3で補強用鉄骨柱2どうしを連結し、さらに補強用鉄骨柱2の上端部は既存の建物10の上方へ突出させ、桁行き方向の頂部横架材4および梁間方向の頂部横架材5で連結することで、これらの部材から構成される耐震補強構造体1で、既存の建物10を外周面から取り囲み、地震時の変形を拘束するようにしている。
【0040】
なお、この例では、建物10の梁間方向に対向する補強用鉄骨柱2を連結する頂部横架材5によって形成される構面についてはブレース6を設け構面を補剛している。ブレース6に代え、あるいはブレース6と併用して補強用パネル7を設置することもできる。
【0041】
このように、建物10の外周の複数の柱に沿って配置した補強用鉄骨柱2を利用し、既存の建物10を耐震補強構造体1で外周面から取り囲む構造とすることで、既存のRC構造を実質的にSRC構造とし、既存の建物がSRC構造であれば実質的にダブルSRC構造とすることができる。
【0042】
補強用鉄骨2や横架材3としてはH形鋼が適するが、設計によって角型鋼管や丸鋼管などを用いることもできる。横架材3については形鋼や鋼管でなく、テンション材を用いることも考えられる。
【0043】
本発明の耐震補強構造の場合、建物10内部の居住者あるいはテナントには、工事音以外で迷惑をかけることがなく、いながらにしての工事が可能である。
【0044】
補強用鉄骨柱3の下端部は上述のように地中に根入れしてコンクリート基礎8で固定されるため、外装する鉄骨の自重は地下で受けることができる。
【0045】
また、補強用鉄骨柱3や横架材3は既存の建物の窓などの開口部(図示省略)を塞ぐことなく設置することができるため、既存の窓などの開口部からの視界を妨げることがなく、意匠的に必要であれば、補強用鉄骨柱3や横架材3部分に化粧材などを設置して意匠性を高めることができる。
【符号の説明】
【0046】
1…耐震補強構造体、2…補強用鉄骨柱、3…横架材、4…頂部横架材(桁行き方向)、5…頂部横架材(梁間方向)、6…ブレース、7…補強用パネル、8…コンクリート基礎、
10…既存建物
【要約】 (修正有)
【課題】視界や意匠性を損なうことなく建物を外側から取り囲むS造の補強体を設けることで、既存建物の耐震性能を飛躍的に向上させることができる耐震補強構造を提供する。
【解決手段】既存の建物10の外周柱の位置に沿って複数の補強用鉄骨柱2を配置し、この補強用鉄骨柱2の下端部を地中に根入れしてコンクリート基礎8などで固定する。補強用鉄骨柱2どうしは、必要に応じ建物10の床高さに相当する位置で横架材3で連結し、補強用鉄骨柱2の上端部は建物10の上方へ突出させ、桁行き方向の頂部横架材4および梁間方向の頂部横架材5で連結する。これらの部材から構成される耐震補強構造体1で、既存の建物10を外周面から取り囲み、地震時の変形を拘束する。
【選択図】
図1