(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6448898
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】部品実装機の部品保持ヘッド
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20181220BHJP
H05K 1/14 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
H05K13/04 Z
H05K1/14 C
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-240027(P2013-240027)
(22)【出願日】2013年11月20日
(65)【公開番号】特開2015-99878(P2015-99878A)
(43)【公開日】2015年5月28日
【審査請求日】2016年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】500548884
【氏名又は名称】ハンファエアロスペース株式会社
【氏名又は名称原語表記】Hanwha Aerospace Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】緒方 雄二
(72)【発明者】
【氏名】大村 達也
【審査官】
中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−123895(JP,A)
【文献】
特開2005−197493(JP,A)
【文献】
特開2001−156407(JP,A)
【文献】
実開昭56−167575(JP,U)
【文献】
特開2004−134695(JP,A)
【文献】
特開2002−353571(JP,A)
【文献】
実開昭59−072757(JP,U)
【文献】
特表2006−515715(JP,A)
【文献】
特開2008−091684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00−13/08
H05K 1/02
H05K 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に部品を実装するための部品実装機の部品保持ヘッドであって、
固定配置されたヘッド本体と、このヘッド本体に対して垂直軸周りに回転可能に取り付けられたロータリーヘッドと、前記ヘッド本体から前記ロータリーヘッドに非接触式で電力を伝送すると共に前記ヘッド本体と前記ロータリーヘッドとの間で非接触式で信号を伝送する非接触伝送装置と、前記ロータリーヘッド側に配置された回路基板構造とを備え、
前記回路基板構造は、平板状の第1の回路基板と、この第1の回路基板の上方に間隔をおいて配置された平板状の第2の回路基板と、前記第1の回路基板と前記第2の回路基板との間の空間を取り囲むように配置され、前記第1の回路基板及び前記第2の回路基板に電気的に接続されたフレキシブル回路基板からなる第3の回路基板とを有し、
前記第1の回路基板及び前記第2の回路基板は平行に配置されるとともに平面視で同一の外郭形状を有し、前記第3の回路基板は前記第1の回路基板及び前記第2の回路基板の外郭に沿うように配置されており、さらに、前記第1の回路基板及び前記第2の回路基板の中心部には前記垂直軸が挿通されており、
前記非接触伝送装置は、前記垂直軸周りに配置された第1コアと、前記垂直軸周りに前記第1コアの下方に対向配置された第2コアと、前記第1コアに巻回された電力伝送のための第1コイルと、前記第2コアに巻回された電力伝送のための第2コイルと、前記第1コアに巻回された信号伝送のための第3コイルと、前記第2コアに巻回された信号伝送のための第4コイルとを有し、前記第1コア及び前記第2コアのそれぞれの中心部には前記垂直軸が挿通されており、
前記回路基板構造は前記第2コアと一体的に前記垂直軸周りに回転可能であり、
前記非接触伝送装置及び前記回路基板構造の外郭形状は、平面視で同じ大きさの円である、部品実装機の部品保持ヘッド。
【請求項2】
前記第1の回路基板、前記第2の回路基板及び前記第3の回路基板が、1枚のフレキシブル回路基板からなる、請求項1に記載の部品実装機の部品保持ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に部品を実装するための部品実装機の
部品保持ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に部品実装機は、ノズル等の保持具を有する部品保持ヘッドにより、部品を部品供給部からピックアップし保持して基板上に移送し、基板上の所定位置に実装するように構成されている。
【0003】
かかる部品保持ヘッドの一つとして、そのヘッド本体に、複数の保持具を有するロータリーヘッドが垂直軸周りに回転可能に取り付けられた、ロータリー式の部品保持ヘッドが知られており、特許文献1には、非接触式のエネルギ・データ伝達手段を備えたロータリー式の部品保持ヘッドが開示されている(段落0034〜段落0036及び
図1参照)。
【0004】
このような部品保持ヘッドは、ヘッド本体からの制御信号を受信してノズル等の動作を制御したり、ヘッド本体との間でデータのやり取りをしたりするために、多数の電子部品を具備しており、これらの電子部品は回路基板に搭載されるのが一般的である。また、回路基板に搭載すべき電子部品は多数に上ることから、回路基板が複数枚必要になることも多い。従来、このように回路基板が複数枚必要である場合は、例えば
図5に示すように、回路基板101〜103を上下方向に複数段配置した回路基板構造とするのが一般的であった。
【0005】
このような回路基板を上下方向に複数段配置する回路基板構造においては、回路基板101〜103に搭載された電子部品が相互に干渉しないように、回路基板101〜103を上下方向に間隔をおいて配置する必要があり、
図5の回路基板構造では、複数の支持バー104及び基板間コネクタ105を用いることによって回路基板101〜103を上下方向に間隔をおいて配置している。しかし、この回路基板構造では、回路基板101〜103のほかに支持バー104が必要であり、回路基板構造の大型化を招く。また、
図5のように回路基板101〜103を貫通させて支持バー104を設けた場合、回路基板101〜103に電子部品を搭載できる実効面積(以下、単に「実効面積」という。)が小さくなる。更に、
図5の回路基板構造において、回路基板101〜103間は基板間コネクタ105によって連結して電気的に接続する必要があり、この基板間コネクタ105も回路基板101〜103の実効面積を小さくする要因となっている。このように回路基板101〜103の実効面積が小さくなると、必要な実効面積を確保するために回路基板の枚数を増やさざるを得ず、ますます回路基板構造の大型化を招く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2006−515715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、複数枚の回路基板を有する部品実装機の回路基板構造の小型化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によれば、以下の部品実装機の部品保持ヘッドが提供される。
基板に部品を実装するための部品実装機の部品保持ヘッドであって、
固定配置されたヘッド本体と、このヘッド本体に対して垂直軸周りに回転可能に取り付けられたロータリーヘッドと、前記ヘッド本体
から前記ロータリーヘッド
に非接触式で電力を伝送すると共に前記ヘッド本体と前記ロータリーヘッドとの間で非接触式で信号を伝送する非接触伝送装置と、前記ロータリーヘッド側に配置された回路基板構造とを備え、
前記回路基板構造は、平板状の第1の回路基板と、この第1の回路基板の上方に間隔をおいて配置された平板状の第2の回路基板と、前記第1の回路基板と前記第2の回路基板との間の空間を取り囲むように配置され、前記第1の回路基板及び前記第2の回路基板に電気的に接続されたフレキシブル回路基板からなる第3の回路基板とを有し、
前記第1の回路基板及び前記第2の回路基板は平行に配置されるとともに平面視で同一の外郭形状を有し、前記第3の回路基板は前記第1の回路基板及び前記第2の回路基板の外郭に沿うように配置されており、さらに、前記第1の回路基板及び前記第2の回路基板の中心部には前記垂直軸が挿通されており、
前記非接触伝送装置は、前記垂直軸周りに配置された第1コアと、前記垂直軸周りに前記第1コアの下方に対向配置された第2コアと、前記第1コアに巻回された電力伝送のための第1コイルと、前記第2コアに巻回された電力伝送のための第2コイルと、前記第1コアに巻回された信号伝送のための第3コイルと、前記第2コアに巻回された信号伝送のための第4コイルとを有し、前記第1コア及び前記第2コアのそれぞれの中心部には前記垂直軸が挿通されており、
前記回路基板構造は前記第2コアと一体的に前記垂直軸周りに回転可能であり、
前記非接触伝送装置及び前記回路基板構造の外郭形状は、平面視で同じ大きさの円である、部品実装機の部品保持ヘッド。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、平板状の第1の回路基板と第2の回路基板との間の空間を取り囲むようにフレキシブル回路基板からなる第3の回路基板を配置することで、第1の回路基板と第2の回路基板との間の空間を第3の回路基板の配置スペースとして有効利用している。これにより、相互に間隔をおいて配置する平板状の回路基板の枚数を減らすことができ、回路基板構造の小型化を図ることができる。例えば
図5の回路基板構造では平板状の回路基板を3枚使用しているが、本発明によれば、そのうち1枚をフレキシブル回路基板からなる第3の回路基板とすることで、平板状の回路基板は2枚に減らすことができ、特に上下方向の寸法において回路基板構造を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る回路基板構造を適用した部品実装機の部品保持ヘッドの構成を概念的に示す図である。
【
図2】
図1で使用した回路基板構造の構成を示し、(a)はその斜視図、(b)は展開図である。
【
図3】本発明に係る回路基板構造の他の実施例を示す展開図である。
【
図4】本発明に係る回路基板構造の
参考例を示す正面図である。
【
図5】従来の部品実装機の回路基板構造の構成を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る回路基板構造を部品実装機の部品保持ヘッドに適用した実施例に基づき本発明の実施の形態を説明する。
図1は、その部品実装機の部品保持ヘッドの構成を概念的に示す図である。
【0013】
図1に示す部品保持ヘッドは、部品実装機において部品供給部から電子部品をピックアップし保持してプリント基板上に移送し、プリント基板上の所定位置に実装する。この部品保持ヘッドは、固定配置されたヘッド本体10と、このヘッド本体10に対して垂直軸20周りに回転可能に取り付けられたロータリーヘッド30と、ヘッド本体10
からロータリーヘッド30
に非接触式で電力を伝送すると共にヘッド本体10とロータリーヘッド30との間で非接触式で信号を伝送する非接触伝送装置40と、ロータリーヘッド30側に配置された回路基板構造50とを備える。
【0014】
ヘッド本体10は、ロータリーヘッド30を回転させるサーボモータ11及びロータリーヘッド30に配置されているノズル31の昇降を制御するサーボモータ12を内蔵している。また、
図1では省略しているが、ヘッド本体10は、サーボモータ11、12やロータリーヘッド30の回転動作を制御するメインコントローラも内蔵している。
【0015】
ロータリーヘッド30は外形が略円柱状のバレル形状を有し、その中心を垂直軸20が貫通している。サーボモータ11の回転によりロータリーヘッド30は、ヘッド本体10に対して垂直軸20周りのR方向に回転する。また、ロータリーヘッド30には、電子部品を保持する保持具としてのノズル31が、周方向に沿って複数配置されている。各ノズル31は、ロータリーヘッド30に内蔵されたサーボモータ等からなるアクチュエータ(図示省略)により、それぞれ軸線周りのT方向に回転可能であり、サーボモータ12により軸線方向に沿ったZ方向に移動可能に装着されている。
【0016】
非接触伝送装置40は、第1コア41及び第2コア42と、電力伝送のためのコイルとして第1コイル43及び第2コイル44と、信号伝送のためのコイルとして第3コイル45及び第4コイル46とを備えている。第1コア41はヘッド本体10側に一体的に配置され、第2コア42はロータリーヘッド30側に一体的に配置されている。第1コア41及び第2コア42は同一の形状を有し、上下対称となるように一定のギャップGを持って対向配置されている。
【0017】
このような構成において非接触伝送装置40は、第1コイル43と第2コイル44との間の電磁誘導により、ヘッド本体10からロータリーヘッド30に非接触式で電力を伝送し、また、第3コイル45と第4コイル46との間の電磁誘導により、ヘッド本体10とロータリーヘッド30との間で電磁誘導により非接触式で信号を伝送する。なお、非接触式で電力及び信号を伝送する方式としては電磁誘導方式のほかに電界誘導方式を採用することもできる。
【0018】
次に、回路基板構造50の構成を説明する。
図2は
図1で使用した回路基板構造50の構成を示し、(a)はその斜視図、(b)は展開図である。
【0019】
回路基板構造50は、第1の回路基板51、第2の回路基板52及び第3の回路基板53を有する。
【0020】
第1の回路基板51及び第2の回路基板52はいずれも平板状であり、例えばガラスエポキシ基板からなる。本実施例では、第1の回路基板51及び第2の回路基板52は平面視で同一の外郭形状(円形)を有し、上下方向に間隔をおいて平行に配置されている。また、第1の回路基板51及び第2の回路基板52には、
図1で説明したロータリーヘッド30の回転中心軸としての垂直軸20を挿通可能な円形の貫通孔51a,52aが形成されている。貫通孔51a,52aの中心は垂直軸20の中心軸線上に位置し、直径は垂直軸20の直径より若干大きい。これらの貫通孔51a,52aに垂直軸20を挿通させることで、回路基板構造50はロータリーヘッド52とともに垂直軸20周りに回転可能となる。
【0021】
第3の回路基板53はフレキシブル回路基板(以下「FPC」という。)からなり、第1の回路基板51と第2の回路基板52との間の空間を取り囲むように配置される。本実施例では、第1の回路基板51及び第2の回路基板52は、上述のとおり平行に配置されるとともに平面視で同一の外郭形状(円形)を有しているので、第3の回路基板53は、第1の回路基板51及び第2の回路基板52の外郭に沿うように円筒状に配置されている。この第3の回路基板53は第1の回路基板51及び第2の回路基板52に電気的に接続される。本実施例では、第3の回路基板53の一端が基板間コネクタ54aを介して第1の回路基板51に電気的に接続され、第3の回路基板53の他端が基板間コネクタ54bを介して第2の回路基板52に電気的に接続されている。なお、FPCからなる第3の回路基板53を保護するために、第3の回路基板53を囲むように樹脂ケースを設けることもできる。
【0022】
以上のように、回路基板構造50においては、第1の回路基板51と第2の回路基板52との間の空間を取り囲むように第3の回路基板53を配置することで、第1の回路基板51と第2の回路基板52との間の空間を第3の回路基板31の配置スペースとして有効利用している。これにより、平板状の回路基板を3枚使用している
図5の回路基板構造と同等の実効面積を得ることができ、
図5の回路基板構造に比べ、特に上下方向の寸法において回路基板構造を小型化することができる。なお、第1の回路基板51及び第2の回路基板52は平板状であるので、大きい電子部品はこれらの平板状の回路基板に搭載し、第3の回路基板32には比較的小さい電子部品を搭載するようにすれば、全ての電子部品を問題なく搭載することができる。
【0023】
図3は、本発明に係る回路基板構造の他の実施例を示す展開図である。すなわち、
図3は、
図2(b)と同様に回路基板構造を展開した状態を示す。
【0024】
図2の回路基板構造50では、第1の回路基板51及び第2の回路基板52と第3の回路基板53とを基板間コネクタ54a,54bによって電気的に接続したが、
図3の回路基板構造60では基板間コネクタをなくすために、第1の回路基板61、第2の回路基板62及び第3の回路基板63を1枚の連続したFPCによって構成し、これを折り込むことにより回路基板構造を形成するようにしている。すなわち、第1の回路基板61及び第2の回路基板62を第3の回路基板63に対して直角に折り返すとともに第3の回路基板63を円筒状に折り曲げることで、
図2(a)と同じ形状の回路基板構造60を得ることができる。
【0025】
このように
図3の回路基板構造60では、回路基板間を電気的に接続するための基板間コネクタが不要であるので、
図2の回路基板構造50において基板間コネクタ54a,54bが占めていた領域にも電子部品を搭載でき、結果として回路基板構造をより小型化することができる。
【0026】
図4は、本発明に係る回路基板構造の
参考例を示す正面図である。
【0027】
図4(a)の回路基板構造70は、第1の回路基板71よりも第2の回路基板72が小さく、FPCからなる第3の回路基板73を第2の回路基板72の外郭に沿って円筒状に配置した例である。また、
図4(b)の回路基板構造80は、第1の回路基板81よりも第2の回路基板82が大きく、FPCからなる第3の回路基板83を第1の回路基板81及び第2の回路基板82の外郭に沿って逆円錐台状に配置した例である。ただし、回路基板構造の製作のしやすさ、安定性等を考慮すると、
図2のような形状の回路基板構造とすることが好ましい。なお、
図4(a),(b)においては回路基板間を電気的に接続するための基板間コネクタは省略して示している。
【符号の説明】
【0028】
10 ヘッド本体
11,12 サーボモータ
20 垂直軸
30 ロータリーヘッド
31 ノズル(保持具)
40 非接触伝送装置
41 第1コア
42 第2コア
43 第1コイル
44 第2コイル
45 第3コイル
46 第4コイル
50,60,70,80 回路基板構造
51,61,71,81 第1の回路基板
52,62,72,82 第2の回路基板
53,63,73,83 第3の回路基板
54a,54b 基板間コネクタ