(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の発明では、ロール状シートを支えるホルダーの形状によっては、紙管に混入したマイクロカプセルにマイクロカプセルが破裂するほどの荷重が付与されず、芳香物質や消臭物質の多くが発散されずに残ってしまうことがある。
【0007】
本発明の主たる課題は、使用時に効率よく芳香を発生させることのできる紙管及び当該紙管を使用したロール状シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
ロール状シートの芯となる紙管において、
紙管原紙からなる原紙層と、前記原紙層の内面に形成された香料含有層を有し、
前記香料含有層は、香料を内包して、所定の接触刺激を受けた際に破裂するマイクロカプセルと、接着層と、を備え、
前記マイクロカプセルは、前記原紙層内面に、前記接着層を介して、一部が露出した状態で固定され、
前記
香料含有層は網点状又は紙管の回転方向に断続的に形成され
、前記マイクロカプセルの間隙において前記接着層が前記紙管内面に露出していることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の紙管において、
前記香料含有層は、紙管の回転軸方向両端部に、回転軸方向の幅20〜40mmに亘って形成されることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の紙管において、
前記マイクロカプセルは、平均粒径が10〜20μmであることを特徴とする。
【0012】
請求項
4に記載の発明は、ロール状シートにおいて、
請求項1〜
3の何れか1項に記載の紙管と、
前記紙管を芯として捲回されたシートと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、紙管内面にマイクロカプセルの一部が露出しているので、紙管を支えるホルダーの接触等により刺激を受けた時にマイクロカプセルが確実に破裂し、内包する香料が揮発することとなって、使用時に効率よく芳香を発生させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図を参照して、本発明に係る紙管及び当該紙管を使用したロール状シートについて詳細に説明する。なお、発明の範囲は図示例に限定されない。
本実施の形態では、シートとしてトイレットペーパーを例示し、ロール状シートとしてロール状トイレットペーパーを例示して、説明することとする。
【0016】
<ロール状トイレットペーパー>
ロール状トイレットペーパー10は、例えば、
図1に示すように、紙管30と、紙管30を芯として捲回されたトイレットペーパー20と、を備えて構成され、紙管30内にペーパーホルダーの支持部を挿入した状態で、トイレットペーパー20を引き出して使用するのが一般的である。
ロール状トイレットペーパー10の大きさは特に限定されないが、直径100〜120mm、幅100〜115mm、紙管径35〜50mmのものが一般的であり、本発明においても好適である。
【0017】
トイレットペーパー20を構成する原紙は、原料パルプを主原料とする薄葉紙用抄紙原料により製造できる。その原料パルプは、特に限定されるものではなく、トイレットペーパー20の具体的な用途に応じて適宜の原料パルプを選択し、また適宜配合して使用することができる。
【0018】
また、トイレットペーパー20のプライ数及び坪量は、その用途によって適宜調整することができるが、プライ数が1プライから3プライ、全体での紙厚が100〜270μm、坪量は10〜30g/m
2の範囲内にあるものを使用するのが望ましい。坪量が10g/m
2未満では、柔らかさの向上の観点からは好ましいものの、使用に耐えうる十分な強度を適正に確保することが困難となる。逆に、坪量が30g/m
2を超えると紙全体が硬くなるとともに、ゴワ付き感が生じてしまい肌触りが悪くなる。なお、坪量の測定方法としては、例えば、JIS P8124に準じた方法等が挙げられる。
【0019】
<紙管>
紙管30は、例えば、
図2に示すように、略中空円筒形状をなし、紙管原紙からなる原紙層31と、原紙層31の内面に配置された香料含有層40と、を有している。
【0020】
原紙層31は、例えば、2枚の紙管原紙がともに螺旋状に巻かれて接着剤で貼り合わされた二層積層構造のスパイラル紙管、平巻き紙管を用いることができる。好ましくは、米坪120〜220g/m
2、紙厚150〜500μmの紙管原紙を螺旋状に巻いて二層積層構造にしたスパイラル紙管が紙管30の強度及び後述の香料含有層40の強度を確保しやすい。
なお、原紙層31は、1枚の紙管原紙からなる層であっても良いし、3枚以上の紙管原紙を貼り合わせてなる層であっても良い。
【0021】
<香料含有層>
香料含有層40は、
図2に示すように、接着剤からなる接着層41と、接着層41によって紙管30の内面に固定された香料入りのマイクロカプセル42と、を有している。
紙管30の回転軸方向両端部のみを支える形状のホルダーは、通常、紙管30の回転軸方向の長さが30mm程度である。そこで、
図3に示すように、紙管30の回転軸方向両端部に、回転軸方向の幅20〜40mmに亘って香料含有層40を形成すると、添加した香料が使用時に無駄なく揮発されることとなり、経済的である。
【0022】
香料をマイクロカプセル42に封入して塗布することにより、紙管30に香料を直接塗布する場合に比して、香料が常時発散するのを抑えることができ、徐放性が高まるという効果がある。
また、マイクロカプセル42は、一部が露出するように接着層41に固定されているため、紙管30を支えるホルダーの接触などにより刺激を受けた時にマイクロカプセル42が確実に破裂するようになっている。
【0023】
マイクロカプセル42の素材は任意であるが、具体的には、例えば、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、ゼラチン、寒天、各種天然ゲル化剤等である。
通常、香料は疎水性であるため、製造の容易さ等の観点から、マイクロカプセル42には疎水性の素材を用いると好適である。
【0024】
マイクロカプセル42の平均粒径が大きいほど、多くの香料を内包できるため徐放性が高いという効果が得られるが、製造加工中の壊れにくさ、塗布のしやすさ等の製造上の問題が生じる。マイクロカプセル42の素材及び内包する香料の種類に応じて、十分な芳香効果が得られ、かつ、操業性の良い大きさのものを適宜選択すると良く、具体的には、マイクロカプセル42の平均粒径は10〜20μmの範囲が好ましい。
ここで、「平均粒径」とは、粉状または粒状である原料物質の各粒子の粒径を平均した値をいうが、全原料物質を母集団とする統計指標としての平均を意味することは勿論である。つまり、母集団(全原料物質)から適当なサンプル(各粒子)を抽出し、このサンプルの粒径を測定して算術平均した値を「平均粒径」とする。統計的手法により求める値であるから測定ごとに値が変動する可能性があることはいうまでもない。
【0025】
マイクロカプセル42は、所定の閾値を超える荷重が付与されると破裂する。具体的には、トイレットペーパー20を引き出す際に紙管30の内面とホルダーが接触することによってマイクロカプセル42が壊れ、内包する香料が揮発する程度の強度のものが好ましい。
なお、マイクロカプセル42の大きさ及び強度は全て同一ではなく、一度のわずかな接触で破壊されるものから複数回の接触を経て破壊されるものまでが混合されていると、より長期間に亘って芳香を維持することができるため好適である。
【0026】
マイクロカプセル42に内包される香料は、芳香を有する揮発性の物質であれば任意であるが、揮発しやすさなどの観点から、香りのピラミッドでトップノートに分類される揮発性の高い香料が好ましい。
香りのピラミッドとは、香料を揮発度によって、トップノート、ミドルノート及びベースノート(ラストノート)の3つに分類する手法である。具体的には、保留性が小さく揮発度の高い香料はトップノートに属し、中間の揮発度と保留性を持つ香料はミドルノートに属し、揮発度が低く保留性の大きい香料はベースノートに属する。
【0027】
マイクロカプセル42に内包される香料は、例えば、リュウゼン香、安息香、海狸香、霊猫香、丁字油、ガルバナム、ジャスミンアブソリュート、ラブタナム、マテ茶、メリロット、ミモザ、ムスクトンキン、ミルラ、オークモスまたはモスドシェーヌ、乳香、ビャクシ香、オリス、バチュリ、ローズマリー油、白檀油、ベチバー油、バイオレットリーフアブソリュートなどの天然香料、高級アルコール、アルデヒド、ベンズアルデヒド、安息香酸、ケイ皮酸、ケイ皮アルデヒド、ケイ皮アルコール、クマリン、エステル、インドール、ケトン、サリチル酸と関連化合物、テルペノイド、バニリンなどの各種の合成香料あるいはこれらの2つ以上の混合物を挙げることができる。市販品を使用することもできる。
【0028】
また、マイクロカプセル42は、消臭物質を内包しても良い。内包される消臭物質は、臭い成分を分解、中和、吸着等して除去できる揮発性の物質であれば任意である。
具体的には、例えば、緑茶等より抽出されたフラボノイド系化合物を含有する消臭物質、オオバコ、ムジナオオバコ、ヘラオオバコの中から選択された少なくとも一種以上のオオバコ科植物の全草抽出物を含有する消臭物質、マメ科クララ属植物に含まれる消臭作用を有する成分を有効成分とする消臭物質、ひのき油や、ひば油、杉油、芳油、樟脳油などを構成成分とする消臭物質等である。
【0029】
マイクロカプセル42に内包する香料の添加量および紙管30へのマイクロカプセル42の塗布量は、香料の揮発性や残香性、コスト等に応じて適宜任意に変更可能である。
【0030】
接着層41は、例えば、ウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ハロゲン化樹脂、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体等により形成される。
【0031】
また、マイクロカプセル42が疎水性の場合には、接着層41として疎水性樹脂を用いると、マイクロカプセル42が接着層41から脱落し難いため好ましい。同様の理由により、マイクロカプセル42が水溶性の場合には、接着層41として水溶性樹脂を用いると好ましい。
【0032】
接着層41の厚みが厚いほど、ホルダーと紙管30の内面との間の摩擦抵抗が増加するため、マイクロカプセル42の破壊効率が上昇するという効果が得られる。一方、接着層41が厚すぎる場合は、ホルダーと紙管30の内面と間の摩擦抵抗が高まりすぎてマイクロカプセル42が接着層41ごと脱落したり、マイクロカプセル42の全体が接着層41に覆われて、ホルダーとの接触によって破壊され難かったり、破壊されても香料が接着層41内部に閉じ込められて揮発し難い可能性がある。これらを加味して、接着層41の平均厚みは20μm以下であることが好ましく、マイクロカプセル42の平均粒径以下とするとさらに好適である。
【0033】
接着層41を、紙管30の回転方向に断続的(
図4(a))或いは網点状(
図4(b))に形成すると、接着層の有無に応じて、ホルダーと紙管30内面との間の摩擦抵抗に差が生じる。そのため、使用時の紙管30の回転に伴ってホルダーが香料含有層40により強く衝突することとなり、マイクロカプセル42が破壊されやすいため、効率よく香料を揮発させることができる。
【0034】
以上説明した実施の形態における紙管30及び紙管30を使用したロール状トイレットペーパー10によれば、香料がマイクロカプセル42に内包されて原紙層31の内面に固定されているため、保香性が高い。
また、マイクロカプセル42の塗布面が紙管30の内面なので、塗布する際に壊れたり輸送時の振動などで脱落し難い範囲内であれば、平均粒径が10〜20μmという大きなマイクロカプセルを付与することができる。その結果、香料を多く内包して高い芳香効果を得ることができ、徐放性も高い。
そして、トイレットペーパー20を引きだす際にマイクロカプセル42にホルダーが直接接触することにより、マイクロカプセル42は効率よく破壊され、トイレットペーパー20の使用直後には新鮮な芳香が特に強く発生するという効果が得られる。
【0035】
<実施例>
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
市販の香料を内包したメラミン樹脂製のマイクロカプセル42(平均粒径約10μm)のスラリーを、水で2倍に希釈した酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤に混合し、刷版を用いたフレキソ印刷によって紙管原紙に塗布して、香料含有層40を形成した。接着層41の平均厚みは、約10μmであった。香料含有層40は、紙管30の回転軸方向両端部に、回転軸方向の幅35mmに亘って、網点状に形成した。
【0036】
表1に示すように、フレキソ版の線数及び網点面積率を調整したサンプル(実施例1〜3、比較例1〜5)を作成し、操業性及び香りの強さを評価した。
操業性は、目詰まり・ベタ塗りになっていないか、塗布ムラがないか、塗布箇所の一部が塊となっていないかについて、〇:操業性問題なし、△:操業性やや問題あり、×:操業性問題あり、の3段階で評価した。なお、線数が多すぎる場合には、目詰まりしてベタ塗りの状態となり易く、線数が少なすぎる場合には、均一に塗布できずに塗布ムラが発生し易くなる。
香りの強さは、ホルダーに設置したロール状トイレットペーパー10からトイレットペーパー20を5ピッチ程度引き出した直後に、ホルダー付近において、◎香りを強く実感する、〇:香りを実感する、△:香りをやや実感する、×:香りを実感できない、の4段階で評価した。
【0038】
表1に示すように、線数が10である比較例2においては、塗布ムラが発生しやすく、塗布箇所の一部が塊となった。線数が15〜20、且つ、面積率が20〜25%である実施例1〜3においては、操業性に問題がなかったが、比較例1のように、線数が20であっても面積率が15%と小さい場合には、塗布ムラが発生しやすく、塗布箇所の一部が塊となった。線数が25である比較例3においては、やや目詰まりの傾向が見られ、さらに線数が多い比較例4、5(線数=30)においては、目詰まりしてベタ塗りに近い塗布状態となった。
【0039】
面積率が15%である比較例1においては、芳香効果が弱いという結果が得られた。面積率が20〜25%である実施例1〜3及び比較例2〜5においては、いずれも香りを実感することができたが、塗布ムラが発生したりベタ塗りとならずに網点状に塗布された実施例1〜3においては、特に強く香りを実感することができた。
【0040】
以上より、本実施例の香料含有層40においては、線数を15〜20、且つ、面積率を20%以上とすることにより、塗布ムラや目詰まりを起こすことなく、網点状に香料含有層40を塗布することができる。香料含有層40を網点状に塗布することで、全面に一様に塗布するよりも高い芳香効果を得ることができる。
【0041】
なお、本発明は、上記実施形態のものに限るものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
接着層41とマイクロカプセル42は、接着剤とマイクロカプセル42を予め混合したものを噴霧又は塗布しても良いし、原紙層31に接着剤を噴霧または塗布して接着層41を形成した後で、マイクロカプセル42を噴霧又は塗布して接着しても良い。
マイクロカプセル42は、接着層41を介することなく、熱融着等によって原紙層31の内面に固定されても良い。