(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記投影レンズは、該投影レンズの上部領域の後側焦点が該上部領域以外の一般領域の後側焦点よりも下方に位置するように形成されている、ことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の車両用灯具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記「特許文献1」に記載された車両用灯具においては、上記灯具ユニットがロービーム用配光パターンを形成するための灯具ユニットとは別に配置された構成となっているので、灯具が大型化してしまう、という問題がある。
【0006】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ロービーム照射とハイビーム照射とを選択的に行い得るように構成された車両用灯具において、コンパクトな構成によりハイビーム用の付加配光パターンを複数種類の照射パターンで形成することができる車両用灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、単一の投影レンズを用いたプロジェクタ型の光学系によりロービーム照射とハイビーム照射とを選択的に行う構成とした上で、その具体的構成に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0008】
すなわち、本願発明に係る車両用灯具は、
ロービーム照射とハイビーム照射とを選択的に行い得るように構成された車両用灯具において、
投影レンズとこの投影レンズの後方に配置された光源とを備え、上記光源からの出射光を上記投影レンズを介して前方へ向けて照射するように構成されており、
上記投影レンズの後方に、ロービーム用配光パターンを形成するために上記投影レンズへ向かう上記光源からの光の一部を遮光するシェードと、上記ロービーム用配光パターンに対してハイビーム用の付加配光パターンを付加的に形成するために上記投影レンズに光を入射させる複数の発光素子とが配置されており、
上記複数の発光素子は、上記投影レンズの後側焦点よりも下方において左右方向に並列に配置されており、個別に点灯し得るように構成されて
おり、
その上で、本願第1の発明においては、
上記投影レンズの上部領域の後方に、上記各発光素子からの出射光の一部を上記投影レンズに向けて反射させる第1リフレクタが配置されている、ことを特徴とするものであり、
一方、本願第2の発明においては、
上記投影レンズの下部領域の後方に第2リフレクタが配置されるとともに、上記投影レンズの上部領域の後方に第3リフレクタが配置されており、
上記各発光素子からの出射光の一部を上記第2および第3リフレクタで順次反射させて上記投影レンズに入射させるように構成されている、ことを特徴とするものである。
【0009】
本願発明に係る車両用灯具は、光源からの光を直射光として投影レンズに入射させる構成となっていてもよいし、光源からの光をリフレクタで反射させて投影レンズに入射させる構成となっていてもよい。
【0010】
上記「光源」の種類は特に限定されるものではなく、例えば、発光ダイオードやレーザダイオード等の発光素子あるいは光源バルブ等が採用可能である。
【0011】
上記「発光素子」は、投影レンズの後側焦点よりも下方において左右方向に並列に配置された状態で個別に点灯し得る構成となっていれば、その具体的な構成や配置は特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0012】
上記構成に示すように、本願発明に係る車両用灯具は、ロービーム照射とハイビーム照射とを選択的に行うプロジェクタ型の灯具として構成されており、その投影レンズに複数の発光素子からの出射光を入射させることによりハイビーム用の付加配光パターンを形成する構成となっているが、その際、複数の発光素子は、投影レンズの後側焦点よりも下方において左右方向に並列に配置された状態で個別に点灯し得る構成となっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0013】
すなわち、複数の発光素子を同時点灯させて付加配光パターンを形成することにより、ハイビーム用配光パターンを形成することができる。また、複数の発光素子のうちの一部を選択的に点灯させることにより、上記付加配光パターンの一部が欠けた付加配光パターンを形成することができ、これによりロービーム用配光パターンとハイビーム用配光パターンとの中間に位置する形状の中間的配光パターンを形成することができる。
【0014】
しかもこれを、単一の投影レンズを用いたプロジェクタ型の光学系により実現することができる。
【0015】
このように本願発明によれば、ロービーム照射とハイビーム照射とを選択的に行い得るように構成された車両用灯具において、コンパクトな構成によりハイビーム用の付加配光パターンを複数種類の照射パターンで形成することができる。
【0016】
上記構成において、複数の発光素子を投影レンズの後側焦点面から前後方向に変位させて配置すれば、各発光素子によって形成される配光パターンを互いに隣接する配光パターン相互間で部分的に重複させることが可能となり、また、ロービーム用配光パターンと付加配光パターンとがロービーム用配光パターンのカットオフラインの部分において途切れてしまわないようにすることが可能となる。
【0017】
上記構成において、シェードを投影レンズの後側焦点面の近傍から斜め上後方へ延びるように形成した上で、その前端縁よりも後方に複数の発光素子が配置された構成とすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0018】
すなわち、複数の発光素子を投影レンズの光軸に近い高さ位置に配置することができるので、付加配光パターンをその下端領域が相対的に明るい配光パターンとして形成することができる。
【0019】
上記構成において、投影レンズの上部領域の後方に、各発光素子からの出射光の一部を投影レンズに向けて反射させる第1リフレクタが配置された構成とすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0020】
すなわち、第1リフレクタで反射して投影レンズに入射した各発光素子からの出射光は、投影レンズから下向きの光として前方へ向けて出射するので、ロービーム用配光パターンと付加配光パターンとをロービーム用配光パターンのカットオフラインの部分において部分的に重複させることができる。そしてこれによりロービーム用配光パターンと付加配光パターンとの連続性を高めることができる。
【0021】
このような構成とする代わりに、投影レンズの下部領域の後方に第2リフレクタが配置されるとともに投影レンズの上部領域の後方に第3リフレクタが配置された構成とした上で、各発光素子からの出射光の一部を第2および第3リフレクタで順次反射させて投影レンズに入射させる構成とすることも可能である。
【0022】
このような構成を採用した場合には、第3リフレクタで反射して投影レンズに入射する光の量をより多くすることができ、これにより付加配光パターンにおいてロービーム用配光パターンと重複する部分の明るさを増大させることができる。
【0023】
上記構成において、投影レンズの構成として、その上部領域の後側焦点が該上部領域以外の一般領域の後側焦点よりも下方に位置するように形成された構成とすることも可能である。
【0024】
このような構成を採用することによっても、ロービーム用配光パターンと付加配光パターンとをロービーム用配光パターンのカットオフラインの部分において部分的に重複させることができ、これによりロービーム用配光パターンと付加配光パターンとの連続性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0027】
図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用灯具10を示す正面図である。また、
図2は、
図1のII−II線断面図であり、
図3は、車両用灯具10の主要構成要素を示す斜視図である。
【0028】
これらの図に示すように、本実施形態に係る車両用灯具10は、ロービーム照射とハイビーム照射とを選択的に行い得るように構成されたヘッドランプであって、プロジェクタ型の灯具ユニットとして構成されている。
【0029】
すなわち、この車両用灯具10は、車両前後方向に延びる光軸Axを有する投影レンズ12と、この投影レンズ12の後側焦点Fよりも後方側に配置された光源としての発光素子14と、この発光素子14を上方側から覆うように配置され、該発光素子14からの光を投影レンズ12へ向けて反射させるリフレクタ16とを備えた構成となっている。
【0030】
さらに、この車両用灯具10は、ロービーム用配光パターンを形成するために投影レンズ12へ向かう発光素子14からの光の一部を遮光するシェード20と、ロービーム用配光パターンに対してハイビーム用の付加配光パターンを付加的に形成するために投影レンズ12に光を入射させる複数の発光素子30とを備えた構成となっている。
【0031】
なお、この車両用灯具10は、その光軸調整が完了した状態では、光軸Axが車両前後方向に対して僅かに下向きになるように構成されている。
【0032】
以下、車両用灯具10の具体的な構成について説明する。
【0033】
投影レンズ12は、その前面が凸面でその後面が平面の平凸非球面レンズであって、その後側焦点Fを含む焦点面である後側焦点面上に形成される光源像を、反転像として灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に投影するようになっている。
【0034】
この投影レンズ12は、その外周フランジ部においてレンズホルダ18に支持されている。そして、このレンズホルダ18はベース部材22に支持されている。
【0035】
発光素子14は白色発光ダイオードであって、横長矩形状の発光面を有している。そして、この発光素子14は、その発光面を光軸Axを含む水平面上に位置させた状態で上向きに配置されている。この発光素子14はベース部材22に支持されている。
【0036】
リフレクタ16の反射面16aは、光軸Axと略同軸の長軸を有するとともに発光素子14の発光中心を第1焦点とする略楕円面状の曲面で構成されており、その離心率が鉛直断面から水平断面へ向けて徐々に大きくなるように設定されている。そしてこれにより、リフレクタ16は、発光素子14からの光を鉛直断面内においては後側焦点Fのやや前方に位置する点に収束させるとともに水平断面内においてはその収束位置をかなり前方へ移動させるようになっている。このリフレクタ16はベース部材22に支持されている。
【0037】
シェード20は、リフレクタ16で反射した発光素子14からの光の一部を遮光した上で、この遮光した光を上向きに反射させる上向き反射面20aを有している。そして、この上向き反射面20aで反射した光を投影レンズ12に入射させて、これを下向き光として投影レンズ12から出射させるようになっている。
【0038】
このシェード20は、ベース部材22と一体で形成されており、その上向き反射面20aはベース部材22の上面にアルミニウム蒸着等による鏡面処理を施すことにより形成されている。
【0039】
この上向き反射面20aは、光軸Axよりも左側(灯具正面視では右側)に位置する左側領域が光軸Axを含む水平面で構成されており、光軸Axよりも右側に位置する右側領域が、短い斜面を介して左側領域よりも一段低い水平面で構成されている。この上向き反射面20aの前端縁20a1は、後側焦点Fから左右両側へ向けて延びるように形成されている。
【0040】
複数の発光素子30は、投影レンズ12の後側焦点Fよりも下方において左右方向に並列に配置されており、図示しない点灯制御回路によって個別に点灯し得るように構成されている。本実施形態においては、いずれも同様の構成を有する11個の発光素子30が、光軸Axの真下の位置を中心にして左右方向に等間隔で配置された構成となっている。
【0041】
これら各発光素子30は白色発光ダイオードであって、縦長矩形状の発光面30aを有している。そして、これら各発光素子30は、その発光面30aを灯具正面方向へ向けた状態で、シェード20の上向き反射面20aの前端縁20a1から斜め下後方へ離れた位置においてベース部材22の前壁面22aに支持されている。
【0042】
ベース部材22の前壁面22aの上端部には、各発光素子30からの出射光の一部を前方へ向けて反射させる平面状の反射面22bが形成されている。この反射面22bは、シェード20の上向き反射面20aの前端縁20a1からベース部材22の前壁面22aにおける11個の発光素子30の上方近傍位置まで斜め下後方へ向けて延びるように形成されている。
【0043】
各発光素子30から出射して投影レンズ12へ向かう光は、その後側焦点面をある程度の拡がりをもって通過するが、その光線束の範囲は互いに隣接する発光素子30相互間において僅かに重複するものとなる。その際、各発光素子30からの出射光の一部は、ベース部材22の反射面22bで反射して投影レンズ12へ向かう光となる。
【0044】
図4は、車両用灯具10から前方へ向けて照射される光により、車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを透視的に示す図であって、同図(a)はハイビーム用配光パターンPH1、同図(b)は中間的配光パターンPM1を示す図である。
【0045】
同図(a)に示すハイビーム用配光パターンPH1は、ロービーム用配光パターンPL1とハイビーム用の付加配光パターンPAとの合成配光パターンとして形成されている。
【0046】
ロービーム用配光パターンPL1は、左配光のロービーム用配光パターンであって、その上端縁に左右段違いのカットオフラインCL1、CL2を有している。このカットオフラインCL1、CL2は、灯具正面方向の消点であるH−Vを鉛直方向に通るV−V線を境にして左右段違いで水平方向に延びており、V−V線よりも右側の対向車線側部分が下段カットオフラインCL1として形成されるとともに、V−V線よりも左側の自車線側部分が、この下段カットオフラインCL1から傾斜部を介して段上がりになった上段カットオフラインCL2として形成されている。
【0047】
このロービーム用配光パターンPL1は、リフレクタ16で反射した発光素子14からの光によって投影レンズ12の後側焦点面上に形成された発光素子14の光源像を、投影レンズ12により上記仮想鉛直スクリーン上に反転投影像として投影することにより形成され、そのカットオフラインCL1、CL2は、シェード20の上向き反射面20aの前端縁20a1の反転投影像として形成されるようになっている。
【0048】
このロービーム用配光パターンPL1において、下段カットオフラインCL1とV−V線との交点であるエルボ点Eは、H−Vの0.5〜0.6°程度下方に位置している。
【0049】
ハイビーム用配光パターンPH1においては、付加配光パターンPAがカットオフラインCL1、CL2から上方に拡がるようにして横長の配光パターンとして追加形成されることにより、車両前方走行路を幅広く照射するようになっている。
【0050】
付加配光パターンPAは、11個の配光パターンPaの合成配光パターンとして形成されている。
【0051】
これら各配光パターンPaは、各発光素子30からの出射光によって投影レンズ12の後側焦点面上に形成された該発光素子30の光源像の反転投影像として形成される配光パターンである。
【0052】
その際、これら各配光パターンPaは、上下方向にやや長い略矩形状を有している。これは、各発光素子30の発光面30aが縦長矩形状の外形形状を有していることに対応するものである。
【0053】
また、これら各配光パターンPaは、互いに隣接する配光パターンPa相互間で僅かに重複するようにして形成されている。これは、各発光素子30が投影レンズ12の後側焦点面よりも後方に配置されており、互いに隣接する発光素子30相互間で投影レンズ12の後側焦点面を通過する光線束の範囲が僅かに重複することによるものである。
【0054】
さらに、これら各配光パターンPaは、その下端縁の位置がカットオフラインCL1、CL2の位置と一致している。これは、各発光素子30からの出射光の一部を前方へ向けて反射させる反射面22bが、シェード20の上向き反射面20aの前端縁20a1から斜め下後方へ延びるように形成されていることによるものである。
【0055】
同図(b)に示す中間的配光パターンPM1は、ハイビーム用配光パターンPH1に対して、付加配光パターンPAの代わりに、その一部が欠けた付加配光パターンPAmを有する配光パターンとなっている。
【0056】
具体的には、この付加配光パターンPAmは、11個の配光パターンPaのうち右から3番目と4番目の配光パターンPaが欠落した配光パターンとなっている。この付加配光パターンPAmは、11個の発光素子30のうち左から3番目と4番目の発光素子30を消灯することによって形成される。
【0057】
このような中間的配光パターンPM1を形成することにより、車両用灯具10からの照射光が対向車2に当たらないようにし、これにより対向車2のドライバにグレアを与えてしまわない範囲内でできるだけ車両前方走行路を幅広く照射するようになっている。
【0058】
そして、対向車2の位置が変化するのに伴って、消灯の対象となる発光素子30を順次切り換えることにより付加配光パターンPAmの形状を変化させ、これにより対向車2のドライバにグレアを与えてしまわない範囲内でできるだけ車両前方走行路を幅広く照射する状態を維持するようになっている。
【0059】
なお、対向車2の存在は、図示しない車載カメラ等によって検出するようになっている。そして、車両前方走行路に前走車が存在したり、その路肩部分に歩行者が存在するような場合にも、これを検出して一部の配光パターンPaを欠落させることによりグレアを与えてしまわないようにしている。
【0060】
次に本実施形態の作用効果について説明する。
【0061】
本実施形態に係る車両用灯具10は、ロービーム照射とハイビーム照射とを選択的に行うプロジェクタ型の灯具として構成されており、その投影レンズ12に11個の発光素子30からの出射光を入射させることによりハイビーム用の付加配光パターンPAを形成する構成となっているが、その際、11個の発光素子30は、投影レンズ12の後側焦点Fよりも下方において左右方向に並列に配置された状態で個別に点灯し得る構成となっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0062】
すなわち、11個の発光素子30を同時点灯させて付加配光パターンPAを形成することにより、ハイビーム用配光パターンPH1を形成することができる。また、11個の発光素子30のうちの一部を選択的に点灯させることにより、付加配光パターンPAの一部が欠けた付加配光パターンPAmを形成することができ、これによりロービーム用配光パターンPL1とハイビーム用配光パターンPH1との中間に位置する形状の中間的配光パターンPM1を形成することができる。
【0063】
しかもこれを、単一の投影レンズ12を用いたプロジェクタ型の光学系により実現することができる。
【0064】
このように本実施形態によれば、ロービーム照射とハイビーム照射とを選択的に行い得るように構成された車両用灯具10において、コンパクトな構成によりハイビーム用の付加配光パターンPA、PAmを複数種類の照射パターンで形成することができる。
【0065】
その際、本実施形態においては、11個の発光素子30が投影レンズ12の後側焦点面から後方に変位して配置されているので、各発光素子30によって形成される配光パターンPaを、互いに隣接する配光パターンPa相互間で僅かに重複させることができ、また、ロービーム用配光パターンPL1と付加配光パターンPAとがカットオフラインCL1、CL2の部分において途切れてしまわないようにすることができる。
【0066】
しかも本実施形態においては、ベース部材22の前壁面22aの上端部に、各発光素子30からの出射光の一部を前方へ向けて反射させる反射面22bが、シェード20の上向き反射面20aの前端縁20a1からベース部材22の前壁面22aにおける11個の発光素子30の上方近傍位置まで斜め下後方へ向けて延びるように形成されているので、各配光パターンPaをその下端領域の光度が高い光度分布で形成することができる。したがって、これらの合成配光パターンとして形成される付加配光パターンPAもカットオフラインCL1、CL2に沿った領域が明るい配光パターンとして形成することができ、これをハイビーム用配光パターンPH1の形成に適したものとすることができる。
【0067】
なお、このような反射面22bが形成されていない構成とすることも可能である。
【0068】
上記実施形態においては、11個の発光素子30を備えているものとして説明したが、これ以外の個数の発光素子30を備えた構成とすることも可能である。
【0069】
上記実施形態においては、各発光素子30が投影レンズ12の後側焦点Fの後方側に配置されているものとして説明したが、後側焦点Fの前方側に配置された構成とすることも可能である。
【0070】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0071】
まず、上記実施形態の第1変形例について説明する。
【0072】
図5は、本変形例に係る車両用灯具110を示す、
図2と同様の図である。
【0073】
同図に示すように、この車両用灯具110の基本的な構成は上記実施形態の車両用灯具10と同様であるが、発光素子14、リフレクタ16およびシェード20の姿勢が上記実施形態の場合と異なっており、これに伴ってベース部材122の形状が上記実施形態の場合と異なっている。
【0074】
すなわち、本変形例のシェード20は、その上向き反射面20aが投影レンズ12の後側焦点面の近傍から斜め上後方へ延びるように形成されている。その際、上向き反射面20aの水平面からの傾斜角度は10〜30°程度の値に設定されており、その前端縁20a1の位置は上記実施形態の場合と略同じ位置に設定されている。
【0075】
発光素子14およびリフレクタ16は、その構成自体は上記実施形態の場合と同様であるが、シェード20の上向き反射面20aの傾斜角度分だけ水平面から傾斜した状態で配置されている。ただし、この程度の傾斜角度では、リフレクタ16で反射した発光素子14からの光が投影レンズ12の後側焦点面を通過する領域は、上記実施形態の場合と略同様である。
【0076】
本変形例においても、11個の発光素子30が、投影レンズ12の後側焦点Fよりも下方において左右方向に等間隔で並列に配置されており、これらは個別に点灯し得るように構成されている。
【0077】
これら11個の発光素子30は、ベース部材122の前壁面122aに支持されているが、その位置は上記実施形態の場合よりも高い位置(すなわち光軸Axに近い位置)に設定されている。
【0078】
本変形例においても、ベース部材122の前壁面122aの上端部には、各発光素子30からの出射光の一部を前方へ向けて反射させる平面状の反射面122bが形成されている。この反射面122bは、シェード20の上向き反射面20aの前端縁20a1からベース部材122の前壁面122aにおける11個の発光素子30の上方近傍位置まで斜め下後方へ向けて延びるように形成されている。その際、この反射面122bの傾斜角度は上記実施形態の場合よりも小さい値となっている。
【0079】
図6は、車両用灯具110から前方へ向けて照射される光により、上記仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを透視的に示す図であって、同図(a)はハイビーム用配光パターンPH2、同図(b)は中間的配光パターンPM2を示す図である。
【0080】
同図(a)に示すハイビーム用配光パターンPH2は、ロービーム用配光パターンPL2とハイビーム用の付加配光パターンPBとの合成配光パターンとして形成されている。
【0081】
ロービーム用配光パターンPL2は、上記実施形態のロービーム用配光パターンPL1と略同様の形状で形成されている。
【0082】
付加配光パターンPBは、11個の配光パターンPbの合成配光パターンとして形成されている。
【0083】
これら各配光パターンPbは、各発光素子30からの出射光によって投影レンズ12の後側焦点面上に形成された発光素子30の光源像の反転投影像として形成される配光パターンである。
【0084】
付加配光パターンPBは、上記実施形態の付加配光パターンPAよりもその下端領域が明るい配光パターンとなっている。これは、各発光素子30が上記実施形態の場合よりも高い位置にあり、かつ、シェード20の上向き反射面20aの前端縁20a1から斜め下後方へ向けて延びる反射面122bが上記実施形態の場合よりも小さい傾斜角度で形成されていることによるものである。
【0085】
同図(b)に示す中間的配光パターンPM2は、ハイビーム用配光パターンPH2に対して、付加配光パターンPBの代わりに、その一部が欠けた付加配光パターンPBmを有する配光パターンとなっている。
【0086】
本変形例の構成を採用した場合においても、コンパクトな構成によりハイビーム用の付加配光パターンPB、PBmを複数種類の照射パターンで形成することができる。
【0087】
また、本変形例の構成を採用することにより、付加配光パターンPBをその下端領域が明るい配光パターンとすることができ、これによりロービーム用配光パターンPL2との連続性をより高めることができる。
【0088】
次に、上記実施形態の第2変形例について説明する。
【0089】
図7は、本変形例に係る車両用灯具210を示す、
図2と同様の図である。
【0090】
同図に示すように、この車両用灯具210の基本的な構成は上記実施形態の車両用灯具10と同様であるが、第1リフレクタ232が追加配置されている点で上記実施形態の場合と異なっている。
【0091】
この第1リフレクタ232は、投影レンズ12の上部領域の後方に配置されており、レンズホルダ18に支持されている。この第1リフレクタ232は、斜め下後方へ向けて延びる平面状の反射面232aを有している。そして、この第1リフレクタ232は、各発光素子30からの出射光の一部をその反射面232aにおいて投影レンズ12に向けて反射させるように構成されている。
【0092】
その際、この反射面232aの傾斜角度は、該反射面232aで反射した各発光素子30からの出射光が、投影レンズ12の後側焦点面を光軸Axよりも上方に位置する点Aの高さ位置において通過する光として投影レンズ12に入射するような値に設定されている。そして、このようにして投影レンズ12に入射した反射面232aからの反射光は、投影レンズ12から前方へ向けてやや下向きの光として出射する。
【0093】
図9(a)は、車両用灯具210から前方へ向けて照射される光により、上記仮想鉛直スクリーン上に形成されるハイビーム用配光パターンPH3を透視的に示す図である。
【0094】
このハイビーム用配光パターンPH3は、ロービーム用配光パターンPL3とハイビーム用の付加配光パターンPCとの合成配光パターンとして形成されている。
【0095】
ロービーム用配光パターンPL3は、上記実施形態のロービーム用配光パターンPL1と同様の形状で形成されている。
【0096】
付加配光パターンPCは、11個の配光パターンPcの合成配光パターンとして形成されている。
【0097】
これら各配光パターンPcは、各発光素子30からの出射光によって投影レンズ12の後側焦点面上に形成された発光素子30の光源像の反転投影像として形成される配光パターンである。
【0098】
その際、これら各配光パターンPcは、上記実施形態の各配光パターンPaと同様の形状および配置で形成されるが、その下端縁はカットオフラインCL1、CL2よりもやや下方の位置まで延びている。これは、投影レンズ12の上部領域の後方に配置された第1リフレクタ232で反射した各発光素子30からの出射光が投影レンズ12からやや下向きの光として出射することによるものである。
【0099】
本変形例においても、各発光素子30を個別点灯させて、ハイビーム用配光パターンPH3からその付加配光パターンPCの一部が欠けた付加配光パターンを形成することにより、中間的配光パターンを形成し得るようになっている。
【0100】
本変形例の構成を採用した場合においても、上記実施形態の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0101】
本変形例の構成を採用することにより、ハイビーム用配光パターンPH3において、ロービーム用配光パターンPL3と付加配光パターンPCとをカットオフラインCL1、CL2の部分において部分的に重複させることができ、これによりロービーム用配光パターンPL3と付加配光パターンPCとの連続性をより一層高めることができる。この点、中間的配光パターンに関しても同様である。
【0102】
次に、上記実施形態の第3変形例について説明する。
【0103】
図8は、本変形例に係る車両用灯具310を示す、
図2と同様の図である。
【0104】
同図に示すように、この車両用灯具310の基本的な構成は上記実施形態の車両用灯具10と同様であるが、第2および第3リフレクタ334、336が追加配置されている点で上記実施形態の場合と異なっている。
【0105】
第2リフレクタ334は、投影レンズ12の下部領域の後方に配置されており、ベース部材22に支持されている。また、第3リフレクタ336は、投影レンズ12の上部領域の後方に配置されており、レンズホルダ18に支持されている。
【0106】
そして、本変形例においては、各発光素子30からの出射光の一部を第2および第3リフレクタ334、336で順次反射させて投影レンズ12に入射させるように構成されている。
【0107】
第2リフレクタ334は、各発光素子30から斜め下前方へ向けて出射する光の一部を第3リフレクタ336へ向けて反射させるように構成されている。その際、この第2リフレクタ334の反射面334aは平面状に形成されており、後方へ向けてやや下向きに延びるように形成されている。
【0108】
第3リフレクタ336は、第2リフレクタ334からの反射光を投影レンズ12へ向けて反射させるように構成されている。その際、この第3リフレクタ336の反射面336aは平面状に形成されており、後方へ向けて下向きに延びるように形成されている。
【0109】
その際、この反射面334aの傾斜角度は、該反射面334aで反射した第2リフレクタ334からの反射光が、投影レンズ12の後側焦点面を同図において点Bで示す位置(上記第2変形例の点Aと略同じ位置)において通過する光として投影レンズ12に入射するような値に設定されている。
【0110】
第2リフレクタ334からの反射光の第3リフレクタ336への入射角は、上記第2変形例における各発光素子30からの出射光の第1リフレクタ232への入射角よりも小さい値となっており、これにより投影レンズ12からやや下向きに出射する光の光量をより多く確保するようになっている。
【0111】
図9(b)は、車両用灯具310から前方へ向けて照射される光により、上記仮想鉛直スクリーン上に形成されるハイビーム用配光パターンPH4を透視的に示す図である。
【0112】
このハイビーム用配光パターンPH4は、ロービーム用配光パターンPL4とハイビーム用の付加配光パターンPDとの合成配光パターンとして形成されている。
【0113】
ロービーム用配光パターンPL4は、上記実施形態のロービーム用配光パターンPL1と同様の形状で形成されている。
【0114】
付加配光パターンPDは、11個の配光パターンPdの合成配光パターンとして形成されている。
【0115】
これら各配光パターンPdは、各発光素子30からの出射光によって投影レンズ12の後側焦点面上に形成された発光素子30の光源像の反転投影像として形成される配光パターンである。
【0116】
その際、これら各配光パターンPdは、上記実施形態の各配光パターンPaと同様の形状および配置で形成されるが、その下端縁はカットオフラインCL1、CL2よりもやや下方の位置まで延びている。これは、第2および第3リフレクタ334、336で順次反射した光が投影レンズ12からやや下向きの光として出射することによるものである。
【0117】
付加配光パターンPDは、上記第2変形例の付加配光パターンPCよりもその下端領域が明るい配光パターンとなっている。これは、投影レンズ12からやや下向きに出射する光の光量が上記第2変形例の場合よりも多く確保されることによるものである。
【0118】
本変形例においても、各発光素子30を個別点灯させて、ハイビーム用配光パターンPH4からその付加配光パターンPDの一部が欠けた付加配光パターンを形成することにより、中間的配光パターンを形成し得るようになっている。
【0119】
本変形例の構成を採用した場合においても、上記第2変形例の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0120】
本変形例の構成を採用することにより、付加配光パターンPDを、上記第2変形例の付加配光パターンPCよりもその下端領域が明るい配光パターンとして形成することができ、これをハイビーム用配光パターンPH4の形成により適したものとすることができる。
【0121】
次に、上記実施形態の第4変形例について説明する。
【0122】
図10は、本変形例に係る車両用灯具410を示す、
図2と同様の図である。
【0123】
同図に示すように、この車両用灯具410の基本的な構成は上記実施形態の車両用灯具10と同様であるが、投影レンズ412の構成が上記実施形態の場合と異なっており、また、第4リフレクタ438が追加配置されている点でも上記実施形態の場合と異なっている。
【0124】
すなわち、本変形例の投影レンズ412は、その光軸Axよりも上方に位置する上部領域412Aの後側焦点Faが該上部領域412A以外の一般領域の後側焦点Fよりも下方に位置するように形成されている。
【0125】
具体的には、この投影レンズ412は、その前面412aが、光軸Axよりも上方側の領域において、図中2点鎖線で示す上記実施形態の投影レンズ12の前面よりも後方側に大きく湾曲するようにして形成されている。このため、一般領域の後側焦点Fが光軸Ax上に位置しているのに対し、上部領域412Aの後側焦点Faは後側焦点Fに対して下方に変位している。
【0126】
これにより本変形例においては、シェード20の上向き反射面20aで反射して投影レンズ412の上部領域412Aに入射したリフレクタ16からの反射光および各発光素子30から出射して投影レンズ412の上部領域412Aに入射した光を、上記実施形態の場合よりもやや下向きの光として投影レンズ412から前方へ向けて出射させるようになっている。
【0127】
第4リフレクタ438は、11個の発光素子30の下方に配置されており、ベース部材22に支持されている。この第4リフレクタ438は、各発光素子30から斜め下前方へ向けて出射する光の一部を投影レンズ412の上部領域412Aへ向けて反射させるように構成されている。その際、この第4リフレクタ438の反射面438aは平面状に形成されており、水平面に沿って延びるように形成されている。
【0128】
本変形例においても、各発光素子30の同時点灯により、
図9(a)に示す上記第2変形例の付加配光パターンPCと同様の付加配光パターンを形成し、これにより上記第2変形例のハイビーム用配光パターンPH3と同様のハイビーム用配光パターンを形成するようになっている。
【0129】
また本変形例においても、各発光素子30の個別点灯により、上記第2変形例の場合と同様の中間的配光パターンを形成し得るようになっている。
【0130】
本変形例の構成を採用した場合においても、上記第2変形例の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0131】
本変形例の構成を採用することにより、各発光素子30からの出射光を、投影レンズ412の上部領域412Aに効率良く入射させることができるので、付加配光パターンをより明るい配光パターンとして形成することができる。
【0132】
なお、この第4変形例においては、投影レンズ412において光軸Axよりも上方に位置する領域を上部領域412Aであるものとして説明したが、上部領域412Aの下端縁の位置は必ずしも光軸Axと一致していなくてもよい。
【0133】
次に、上記実施形態の第5変形例について説明する。
【0134】
図11は、本変形例に係る車両用灯具510を示す、
図2と同様の図である。
【0135】
同図に示すように、この車両用灯具510の基本的な構成は上記第4変形例の車両用灯具410と同様であるが、各発光素子30の配置が上記第4変形例の場合と異なっており、また、11個の発光素子30の下方に第4リフレクタ438は配置されておらず、その前方にレンズ540が配置されている点で上記第4変形例の場合と異なっている。また、これに伴ってベース部材522の構成が上記第4変形例の場合と異なっている。
【0136】
本変形例においても、各発光素子30は、シェード20の上向き反射面20aの前端縁20a1から斜め下後方へ離れた位置においてベース部材522に支持されている。その際、これら各発光素子30は、上記第4変形例の場合よりも下方において、その発光面を灯具正面方向に対して斜め上向きにした状態で配置されている。
【0137】
レンズ540は、左右方向に延びる凸シリンドリカルレンズであって、その前面は単一の凸状曲面で構成されており、その後面は段差付きの凸状曲面で構成されている。
【0138】
このレンズ540は、各発光素子30の斜め上前方において、その光軸を斜め上前方に向けるようにして配置されている。その際、このレンズ540は、その中央部においては各発光素子30から出射光を直接偏向制御するようになっており、その上部および下部においては各発光素子30から出射光をその後面で全反射させてから偏向制御するようになっている。
【0139】
そして、このレンズ540は、各発光素子30からの出射光を、鉛直面内において平行光に近い光線束として投影レンズ412の上部領域412Aへ向けて偏向透過させるようになっている。その際、レンズ540から投影レンズ412の上部領域412Aへ向かう光線束の中に、投影レンズ412の上部領域412Aの後側焦点Faを含ませるようになっている。
【0140】
本変形例においては、ベース部材522の前壁面522aの上端部に、上記第4変形例の反射面22bのような反射面は形成されておらず、代わりに各発光素子30およびレンズ540を支持するための凹部522bが形成されている。そして、ベース部材522の前壁面522aの上端部における凹部522bの上方に位置する前端上端部522cは、シェード20の上向き反射面20aの前端縁20a1から後方へ向けて一定の肉厚で形成されている。
【0141】
本変形例においても、各発光素子30の同時点灯により、
図9(a)に示す上記第2変形例の付加配光パターンPCと同様の付加配光パターンを形成し、これにより上記第2変形例のハイビーム用配光パターンPH3と同様のハイビーム用配光パターンを形成するようになっている。
【0142】
また本変形例においても、各発光素子30の個別点灯により、上記第2変形例の場合と同様の中間的配光パターンを形成し得るようになっている。
【0143】
本変形例の構成を採用した場合においても、上記第2変形例の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0144】
また、本変形例の構成を採用した場合においても、各発光素子30からの出射光を、投影レンズ412の上部領域412Aに効率良く入射させることができるので、付加配光パターンをより明るい配光パターンとして形成することができる。
【0145】
さらに、本変形例の構成を採用することにより、ベース部材522の前端上端部522cを一定の肉厚で形成することができるので、ベース部材522の製造容易化を図ることができる。
【0146】
なお、上記実施形態およびその変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【0147】
また、本願発明は、上記実施形態およびその変形例に記載された構成に限定されるものではなく、これ以外の種々の変更を加えた構成が採用可能である。