【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行者名: 公益社団法人 空気調和・衛生工学会 刊行物名: 空気調和・衛生工学会論文集 No.210 第1〜9頁 発行年月日: 平成26年9月5日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第一実施形態)
図1は、本発明に係る空調システム1の第一実施形態を示す概要図である。
本実施形態に係る空調システム1は、データセンタ10に適用した場合について説明する。
【0026】
データセンタ10は、サーバ室などの空調対象空間11と、空調対象空間11に隣接する機械室20とを有する。空調対象空間11内には、情報処理機器(例えば、サーバ、ルータ、ゲートウエイ、サーバの周辺機器であるネットワークデバイス等)をそれぞれ収容する複数台のラック12の列が、通路12aを挟んで対向配置されている。空調対象空間11には、図中に矢印で示す給気風路11aを形成するための二重床が備えられている。空調対象空間11の床13には複数の吹出口14が設けられており、二重床による床下空間15からは空調機21により給気される空調空気が吹出口14から空調対象空間11に導入される。また、空調対象空間11は、二重天井を備えている。空調対象空間11内の排熱は、空調対象空間11側の天井16に設けた複数の還気口17を介して、天井16よりも上側に位置する天井空間18内へ排出される。これにより、空調対象空間11内にはコールドアイルおよびホットアイルが形成される。
【0027】
天井空間18には、温湿度を計測する温湿度計19bが設けてある。
床下空間15と天井空間18とは、機械室20に配置した空調機21に繋がっている。空調対象空間11から排出される排熱を帯びた還気RAは、空調機21が内蔵するファン22により、天井16に設けた複数の還気口17を介して天井空間18内に吸引される。排熱を帯びた還気RAは、天井空間18から空調機21に吸い込まれ、その後に空調機21の冷却コイル23によって冷却される。
空調機21は、冷却コイル23とファン22とを内蔵する混合室21aを備えている。空調機21の混合室21aには、天井空間18から還気RAを取り込む吸入口24と、外気OAを取り込む外気取込口25とが繋がっている。吸入口24には、フィルタ26が設けられており、吸入口24は、取り込んだ還気RAを、モータダンパ27が設けられた空調機21の還気導入室28内に流入させる。外気取込口25には、外気ガラリ29とモータダンパ30とフィルタ31とが設けられている。外気取込口25は、天井空間18に連なる機械室20に設けられており、空調機21のファン22によって、空調機21の混合室21a内に外気OAを吸引する。
【0028】
空調機21のファン22から冷気を床下空間15に吹き出す吹出口22aの近傍には、室内設定湿度(室内設定露点温度)を計測する温湿度計19aが設けられている。
機械室20において、加湿が乗り易い高温の還気側には、気化式加湿器32と排気ファン33とが設けられている。気化式加湿器32は、室内湿度条件を満たすよう運転される。気化式加湿器32は、ファン32aを内蔵し、天井空間18内に設けた温湿度計19bの計測結果に基づいて還気に加湿し、加湿した空気を機械室20内に排出する。気化式加湿器32の加湿能力は、気化式加湿器32の飽和効率とファン32aの能力、及び室内湿度条件から求められる。
【0029】
排気ファン33は、外気条件に応じてデータセンタ10への導入外気量を変化させ、導入外気量と同量の空気をガラリ35から排気する。また、排気ファン33は、最小風量(定格30%)で運転されると共に、導入外気量が排気ファン33の最小風量未満のときに、一部を機械室20に還流する排気バイパス34が設けられている。
空調機21の冷水コイル23は、冷水循環路40に接続されている。
冷水循環路40は、冷水コイル23に冷水を供給する冷水往き路41と、冷水コイル23で暖められた冷水を冷水往き路41に戻す冷水還り路43とを備えている。冷水往き路41には、冷水二次ポンプ42が設けられている。
【0030】
冷水循環路40には、冷水往き路46と冷水還り路48とを介して外気冷房専用の密閉式冷却塔44が接続されている。冷水往き路46には冷却塔冷水ポンプ45が設けられており、冷水還り路48には第一切替弁47が設けられている。
また、冷水循環路40には、冷水往き路51と冷水還り路52とを介して冷凍機49が接続されている。冷水往き路51には、冷水一次ポンプ50が設けられている。
冷凍機49は、冷却水往き路54と冷却水還り路57とを介して外気冷房運転、冷凍機運転兼用の密閉式冷却塔55に接続されている。冷却水往き路54には冷却水ポンプ53が設けられており、冷却水還り路57には第四切替弁56が設けられている。
冷却水往き路54には、外気冷房専用の密閉式冷却塔44の冷水還り路48から分岐する冷水往きバイパス路58が接続されている。冷水往きバイパス路58は、第一切替弁47よりも冷水還り路48の上流側から分岐しており、冷水往きバイパス路58の途中には、第二切替弁59が設けられている。
【0031】
外気冷房専用の密閉式冷却塔44の冷水還り路48に設けられた第一切替弁47は、冷水往きバイパス路58に設けられた第二切替弁59が開の場合には閉となるように設定され、第二切替弁59が閉の場合には開となるように設定されている。
冷却水還り路57には、外気冷房専用の密閉式冷却塔44の冷水還り路48から分岐する冷水還りバイパス路60が接続されている。冷水還りバイパス路60は、第一切替弁47よりも冷水還り路48の下流側から分岐し、冷却水還り路57の第四切替弁56よりも冷却水還り路57の上流側に接続されている。
外気冷房専用の密閉式冷却塔44の冷水還り路48に設けられた第一切替弁47は、冷水還りバイパス路60に設けられた第三切替弁61が開の場合には閉となるように設定され、第三切替弁61が閉の場合には開となるように設定されている。
【0032】
外気冷房専用の密閉式冷却塔44及び外気冷房運転、冷凍機運転兼用の密閉式冷却塔55の近傍には温湿度計測部62が配置されている。温湿度計測部62は、外気温度t
OA(乾球温度[℃])及び相対湿度RH[%]を測定し、絶対湿度x
OA(絶対湿度[kg/kg’])を演算する。温湿度計測部62は、外気OAの温湿度が日射や風の影響を受けずに計測できるよう設けられている。
データセンタ10の監視室には、
図3に示すように、温湿度計測部62で演算された絶対湿度に基づいて、運転モードの切り替えを行う外気冷房コントローラ(制御装置)63が設置されている。外気冷房コントローラ(制御装置)63は、
図2に示すh−x線図に規定する運転モード切替マップMの情報を記憶するメモリ(ROM66)を備えている。そして、外気冷房コントローラ(制御装置)63は、運転モード切替マップM上に対応付けされた複数の運転モードのうち、演算された絶対湿度の条件に対応する運転モードを求める。なお、本実施形態では、運転モード切替マップMの情報を記憶するメモリとしてROM66を用いる場合について説明したが、随時書き換えることが可能なRAMを用いても良い。
【0033】
運転モード切替マップMには、
図2に示すように、運転モード1(直接)と、運転モード2(間接)と、運転モード3(混合)と、運転モード4(冷凍機単独)との4つの運転モードが実験により予め求められている。
運転モード1(直接)は、直接型外気冷房運転を表す。直接型外気冷房運転では、
図5に示すように、冷水二次ポンプ42を停めて空調機21の冷水コイル23への冷水を停止し、外気OAを空調機21から空調対象空間11に導入する。運転モード1(直接)は、低エンタルピかつ高湿度の条件で運転される。
【0034】
運転モード2(間接)は、間接型外気冷房運転を表す。間接型外気冷房運転では、
図6に示すように、空調機21の冷水コイル23に冷水循環路40の冷水を供給し、空調機21への外気OAの導入を停止する。また、間接型外気冷房運転では、密閉式の外気冷房専用冷却塔44と外気冷房運転、冷凍機運転兼用冷却塔55とを、冷水分岐往き路58及び冷水分岐往き路60を介して直列にして冷水循環路40の冷水を冷却して空調機21の冷水コイル23に供給する。運転モード2(間接)は、低エンタルピかつ低湿度の条件で運転される。
【0035】
運転モード3(混合)は、混合型外気冷房運転を表す。混合型外気冷房運転では、
図7に示すように、空調機21の冷水コイル23に冷水循環路40の冷水を供給し、外気OAを空調機21に導入する。また、混合型外気冷房運転では、密閉式の外気冷房専用冷却塔44と外気冷房運転、冷凍機運転兼用冷却塔55とを、冷水分岐往き路58及び冷水分岐往き路60を介して直列にして冷水循環路40の冷水を冷却して空調機21の冷水コイル23に供給する。運転モード3(混合)は、中エンタルピかつ室内設定湿度以下で運転される。
【0036】
運転モード4(冷凍機単独)は、冷凍機単独運転を表す。冷凍機単独運転では、
図8に示すように、空調機21の冷水コイル23に冷水循環路40の冷水を供給し、空調機21への外気0Aの導入を停止する。また、冷凍機単独運転では、冷凍機49の冷却水を外気冷房運転、冷凍機運転兼用冷却塔55で冷却し、冷水循環路40の冷水を冷凍機49で生成して空調機21の冷水コイル23に供給する。
【0037】
また、
図2に示すように、運転モード切替マップMには、運転モード1(直接)と運転モード3(混合)との境界上の等エンタルピ線h
13と、運転モード2(間接)と運転モード3(混合)との境界上の等エンタルピ線h
23と、運転モード3(混合)と運転モード4(冷凍機単独)との境界上の等エンタルピ線h
34と、運転モード3(混合)と運転モード4(冷凍機単独)との境界絶対湿度x
34と、運転モード1(直接)と運転モード2(間接)との温度判定式x
12(t)=at+b(ここで、xは絶対湿度[kg/kg’]、tは乾球温度[℃])、aは勾配、bは切片を表す)が実験により予め求められている。
【0038】
運転モード切替マップMにおいて、h
13は、(9℃(乾球温度)、0.00700kg/kg’(絶対湿度))、エンタルピが27kJ/kg(DA)である。h
23は、(13℃(乾球温度)、0.00480kg/kg’(絶対湿度)〜20℃(乾球温度)、0.00200kg/kg’(絶対湿度))、エンタルピ25kJ/kg(DA)である。h
34は、(27℃(乾球温度)、0.00460kg/kg’(絶対湿度))、エンタルピ39kJ/kg(DA)である。x
34は、12.4℃(乾球温度)、0.00888kg/kg’(絶対湿度)〜16℃(乾球温度)、0.00888kg/kg’(絶対湿度)である。x
12は、0℃(乾球温度)、0.00248kg/kg’(絶対湿度)〜14℃(乾球温度)、0.00500kg/kg’(絶対湿度)である。給気SAは19℃(乾球温度)、0.00888kg/kg’(絶対湿度)、還気RAは27℃(乾球温度)、0.00888kg/kg’(絶対湿度)である。
【0039】
次に、運転モード1(直接)と運転モード3(混合)との境界上のエンタルピh
13の設定について説明する。
h
13は、全負荷が直接外気冷房で処理できる場合の外気エンタルピ[kJ/kg(DA)]である。
全負荷が冷却可能な外気量 V
h[m
3/h]は、次式(1)で求められる。
V
h=3600(Q+Q
AC+Q
F)/ρα△h ・・・(1)
ここに、
V
h :全負荷が冷却可能な外気量 [m
3/h]
Q :空調機1台あたりのラック発熱負荷 [kW]
Q
AC:空調機電力 [kW]
Q
F :加湿器ファンと排気ファンの発熱負荷 [kW]
ρα:空気密度(1.2) [kg/m
3]
△h:室内外等エンタルピ線差 [kJ/kg(DA)]
【0040】
導入外気量の最大値は、V
EF(排気ファン風量[m
3/h])であるため、V
h=V
EFとおき、
そのときの△h=h
RA−h
13(h
RA:室内等エンタルピ線[kJ/kg(DA)])とおくと、
式(1)は、下式(1’)になる。
h
13=h
RA−3600(Q+Q
AC+Q
F)/ραV
EF ・・・(1’)
本実施形態では、(Q+Q
AC+Q
F)=60kW、V
EF=8,000m
3/h、h
RA=49.8kJ/kg’のとき、h
13=27.3kJ/kg’となる。
【0041】
次に、運転モード2(間接)と運転モード3(混合)との境界上のエンタルピh
23の設定について説明する。
冷却塔の特性、冷却水入口温度(19℃)、冷却水流量(2,000L/min)、冷却水温度設定値(12℃))より、湿球温度を変化させた場合の冷却塔出口温度を計算し、
図22のようなグラフを得る。
図22から、冷却塔2台直列のときの、出口温度12℃となる湿球温度は8.4℃と読み取れる。
空気線図より湿球温度8.4℃のとき、エンタルピは26kJ/kg(DA)と読み取れる。これをh
23とする。
【0042】
次に、運転モード3(混合)と運転モード4(冷凍機単独)との境界上のエンタルピh
34の設定について説明する。
厳密には、運転モード3(混合)と運転モード4(冷凍機単独)との電力比較をして決定すべきであるが、下記の手順で判定することにより、ほぼ電力上有利な方を選択できる。
先ず、間接外気冷房を100%運転するときの間接冷却量を計算する。
次に、残りの負荷(負荷−間接冷却量)を直接外気冷房で処理する。
次に、必要外気量が排気ファン33の能力を超えたり、必要加湿量が気化式加湿器32の能力を超える場合は、運転モード4(冷凍機単独)に変更する。
以上より、運転モードの計算結果を
図13のように作成し、運転モード3(混合)と運転モード4(冷凍機単独)との境界エンタルピを読み取り、h
34とする。
【0043】
次に、運転モード3(混合)と運転モード4(冷凍機単独)との境界絶対湿度x
34の設定について説明する。
室内設定温度を入力する。例えば、乾球温度27℃、相対湿度40%のとき、x
34=0.089kg/kg’である。運転モード3(混合)が外気OAを取り入れる方式であるため、外気OAの絶対湿度x
OAが給気SAや還気RAの設定絶対湿度(0.00888kg/kg’)を超えると、給気SAや還気RAの絶対湿度も給気SAや還気RAの設定絶対湿度を超えてしまう。よって、給気SAや還気RAの設定絶対湿度を運転モード3(混合)と運転モード4(冷凍機単独)との境界絶対湿度x
34とする。
【0044】
次に、運転モード1(直接)と運転モード2(間接)との温度判定式xの定数a,bの設定について説明する。
電力が間接外気冷房=直接外気冷房のときの温度、
図13から読み取って計算する。
図13は、計算ツールとして国土交通省官庁営繕部監修のLCEMツールVer.3.03を用い、外気条件として拡張アメダス設計用気象データ(t[℃],x[kg/kg’])(東京における1時間ごとの標準年データ)を用いて各運転モード1〜4の消費電力を計算し、各設計用気象データにおいて最も消費電力が小さい運転モードをプロットした結果を示すものである。例えば、乾球温度4℃、絶対湿度0.0032kg/kg’、乾球温度14℃、絶対湿度0.005kg/kg’の場合、東京では、x=0.00018t+0.00248である。
【0045】
外気冷房コントローラ(制御装置)63は、
図3に示すように、CPU64と、運転モード算出部65と、ROM66と、外気温度、外気湿度入力部67と、外気比エンタルピ算出部68と、室内設定湿度入力部69と、h
13、h
23、x
12、h
34入力部70と、直接外気冷房機器に対して運転信号を出力するモード1(直接)出力部71と、直接外気冷房機器に対して運転信号を出力するモード2(間接)出力部72と、混合外気冷房機器に対して運転信号を出力するモード3(混合)出力部73と、冷凍機廻りの機器に対して運転信号を出力するモード(冷凍機単独)出力部74と、バス75とを備えている。
【0046】
ROM66は、運転モード切替マップMの情報を格納する。外気温度、外気湿度入力部67は、温湿度計測部62から乾球温度及び絶対湿度の情報を受け付ける。外気比エンタルピ算出部68は、外気温度、外気湿度入力部67に入力された乾球温度及び絶対湿度を演算処理する。室内設定湿度入力部69は、外部入力手段によって入力される、事前に計算した室内設定湿度の情報又は人為的に設定変更した室内設定湿度の情報を受け付ける。h
13、h
23、x
12、h
34入力部70は、外部入力手段によって入力される、h
13、h
23、x
12、h
34の情報を受け付ける。バス75は、CPU64、運転モード算出部65、ROM66、外気比エンタルピ算出部68、モード1(直接)出力部71、モード2(間接)出力部72、モード3(混合)出力部73及びモード4(冷凍機単独)出力部74を繋ぐ。
【0047】
CPU64は、運転モード切替マップMや各算出部65、68からの情報をもとに各出力部71〜74に対して制御信号を出力する。尚、外気冷房コントローラ63に備え付けられた外部入力手段の一例としてのタッチパネルからh
13、h
23、x
12、h
34を入力してもよく、外気冷房コントローラ63に接続された外部入力手段の一例としてのPCを通してh
13、h
23、x
12、h
34を入力しても良い。
【0048】
モード1(直接)出力部71は、気化式加湿器32、排気ファン33,外気導入用のモータダンパ30及び空調機用のモータダンパ27の発停を行う信号を出力する。
モード2(間接)出力部72は、冷却塔冷水ポンプ45、外気冷房専用の密閉式冷却塔44、外気冷房運転、冷凍機運転兼用の密閉式冷却塔55、第一切替弁47、第二切替弁59、第三切替弁61及び冷水二次ポンプ42の発停を行う信号を出力する。
【0049】
モード3(混合)出力部73は、気化式加湿器32、排気ファン33,外気導入用のモータダンパ30、空調機用のモータダンパ27、冷却塔冷水ポンプ45、外気冷房専用の密閉式冷却塔44、外気冷房運転、冷凍機運転兼用の密閉式冷却塔55、第一切替弁47、第二切替弁59、第三切替弁61及び冷水二次ポンプ42の発停を行う信号を出力する。
モード4(冷凍機単独)出力部74は、冷凍機49、冷水一次ポンプ50、冷却水ポンプ53、冷却塔冷水ポンプ45、外気冷房専用の密閉式冷却塔44、外気冷房運転、冷凍機運転兼用の密閉式冷却塔55、第一切替弁47、第二切替弁59、第三切替弁61及び冷水二次ポンプ42の発停を行う信号を出力する。
【0050】
次に、本実施形態の作用を説明する。
本実施形態に係る空調システム1が始動すると、制御装置63は、
図4に示すフロー図に基づいて以下のように運転する。
先ず、制御装置63は、温湿度計測部62から入力される外気温度t
OA(乾球温度[℃])及び外気湿度x
OA(絶対湿度[kg/kg’])を外気比エンタルピ算出部68で演算処理する。制御装置63は、ステップS1で読み込まれた外気エンタルピh
OAが、ステップS2において、エンタルピh
13と同等又はエンタルピh
13より低く、かつ温湿度計測部62から入力される外気の絶対湿度x
OAが、温度判定式x
12(t)=at+bに外気の乾球温度t
OAを代入した値x
12(t
OA)=at
OA+bと同等又はx
12(t
OA)=at
OA+bより高い(h
OA≦h
13,x
OA≧x
12(t
OA))と判定する(ステップS2のYes)と、モード1(直接)を選択する(ステップS1〜S3)。
【0051】
次に、制御装置63は、ステップS2の条件が成立しないと判定する(ステップS2のNo)と、ステップS4での判定を行う。ステップS4において、外気比エンタルピ算出部68で演算処理した外気エンタルピh
OAが、エンタルピh
23と同等又はエンタルピh
23より低い(h
OA≦h
23)と判定する(ステップS4のYes)と、モード2(間接)を選択する(ステップS5)。
【0052】
次に、制御装置63は、ステップS4の条件が成立しないと判定する(ステップS4のNo)と、ステップS6での判定を行う。ステップS6において、外気比エンタルピ算出部68で演算処理した外気エンタルピh
OAが、エンタルピh
34と同等又はエンタルピh
34より低く、かつ温湿度計測部62から入力される絶対湿度x
OAが、境界絶対湿度x
34と同等又は境界絶対湿度x
34より低い(h
OA≦h
34,x
OA≦x
34)と判定する(ステップS6のYes)と、モード3(混合)を選択する(ステップS7)。
【0053】
次に、制御装置63は、ステップS6において、外気温湿度計62で求められる外気エンタルピh
OAが、エンタルピh
34より高く、、温湿度計測部62から入力される絶対湿度x
OAが、絶対湿度x
34より高い(h
OA>h
34,x
OA>x
34)と判定する(ステップS6のNo)と、運転モード4(冷凍機単独)を選択する(ステップS8)。
【0054】
次に、
図5に基づいて運転モード1(直接)の運転状態を説明する。
運転モード1(直接)は、
図4のステップS2において、空調対象空間11内の等エンタルピ線25kJ/kg(DA)に比べて外気OAの等エンタルピ線が低く、外気OAの絶対湿度が0.00248kg/kg’(DA)〜0.00500kg/kg’(DA)より低いと判定された場合に運転される。
【0055】
制御装置63のモード1(直接)出力部71は、直接外気冷房機器に対して運転信号を出力する。空調システム1は、モード1(直接)出力部71からの指令に基づいて、冷水二次ポンプ42を停止して空調機21の冷水コイル23への冷水供給を停止すると共に、モータダンパ30を開き、空調機21のファン22を運転して外気取込口25から外気OAを空調機21の混合室21a内に導入する。同時に、空調システム1は、冷却塔冷水ポンプ45を停止、外気冷房専用の密閉式冷却塔44を停止、第一切替弁47、第二切替弁59、第三切替弁61を閉、冷水一次ポンプ50を停止、冷凍機49を停止、冷却水ポンプ53を停止、外気冷房運転、冷凍機運転兼用の密閉式冷却塔55を停止とする。
【0056】
空調機21から導入された外気OAは、床下空間15から床13に設けた複数の吹出口14を介して矢印で示す給気風路11aを形成しながら空調対象空間11内に流入しコールドアイルからラック12の列内に通過し熱を奪ってホットアイル側へ流出される。そして、ホットアイル側に流出する空気は、天井16の複数の還気口17を介して空調対象空間11から天井空間18内に排出され、排気ファン33によってガラリ35から外部へ排気される。排気ファン33は、外気条件に応じて導入外気量を変化させ、同量をガラリ35から排気する。また、排気ファン33は最小風量(定格30%)で運転され、要求外気量が排気ファン33の最小風量未満のときに、排気バイパス34を介して一部を機械室20に還流する。
【0057】
また、気化式加湿器32は、温湿度計19bに基づいて還気に加湿し、内蔵するファン32aによって加湿した空気を機械室20内に排出する。気化式加湿器32の加湿能力は、気化式加湿器32の飽和効率とファン32aの能力、及び室内湿度条件から求められる。
【0058】
次に、
図6に基づいて運転モード2(間接)の運転状態を説明する。
制御装置63のモード2(間接)出力部72は、直接外気冷房機器に対して運転信号を出力する。空調システム1は、モード2(間接)出力部72からの指令に基づいて、モータダンパ30は閉じて外気OAの導入を停止し、気化式加湿器32及び排気ファン33を停止させる。
【0059】
同時に、空調システム1は、冷却塔冷水ポンプ45を運転し、第一切替弁47を閉、第二切替弁59を開、第四切替弁56を閉、第三切替弁61を開にして、外気冷房専用の密閉式冷却塔44と外気冷房、冷凍機運転兼用の密閉式冷却塔55とをバイパス往き路58とバイパス還り路60を介して直列に連結し、冷水循環路40の還り路43の冷水を、外気冷房専用の密閉式冷却塔44と外気冷房運転、冷凍機運転兼用の密閉式冷却塔55との直列で冷却した後、冷水循環路40の往き路41へ供給し、冷水二次ポンプ42を運転して空調機21の冷水コイル23へ冷水を供給し、還気RAを冷却する。
【0060】
冷却された還気RAは、床下空間15から床13に設けた複数の吹出口14を介して矢印で示す給気風路11aを形成しながら空調対象空間11内に流入しコールドアイルからラック12の列内に通過し熱を奪ってホットアイル側へ流出される。そして、ホットアイル側に流出する空気は、天井16の複数の還気口17を介して空調対象空間11から天井空間18内に排出され、吸入口24から還気導入室28を経由して空調機21の混合室21a内にファン22によって吸引させる。
なお、運転モード2(間接)では、空調システム1は、制御装置63からの指令に基づいて、冷水一次ポンプ50を停止、冷凍機49を停止、冷却水ポンプ53を停止、第四切替弁56を閉とする。
【0061】
次に、
図7に基づいて運転モード3(混合)の運転状態を説明する。
制御装置63のモード3(混合)出力部73は、混合外気冷房機器に対して運転信号を出力する。空調システム1は、モード3(混合)出力部73からの指令に基づいて、モータダンパ30を開いて外気OAの導入を行い、気化式加湿器32及び排気ファン33を運転させる。
【0062】
同時に、空調システム1は、冷却塔冷水ポンプ45を運転し、第一切替弁47を閉、第二切替弁59を開、第四切替弁56を閉、第三切替弁61を閉にして、外気冷房専用の密閉式冷却塔44と外気冷房運転、冷凍機運転兼用の密閉式冷却塔55とをバイパス往き路58とバイパス還り路60を介して直列に連結し、冷水循環路40の還り路43の冷水を、外気冷房専用の密閉式冷却塔44と外気冷房運転、冷凍機運転兼用の密閉式冷却塔55との直列で冷却した後、冷水循環路40の往き路41へ供給し、冷水二次ポンプ42を運転して空調機21の冷水コイル23へ冷水を供給する。ファン22によって外気OAと還気RAを混合部21aに吸引することにより、冷水コイル23で熱交換された冷気は空調機21から床下空間15から床13に設けた複数の吹出口14を介して矢印で示す給気風路11aを形成しながら空調対象空間11内に流入し、コールドアイルからラック12の列内に通過し熱を奪ってホットアイル側へ流出される。そして、ホットアイル側に流出する空気は、天井16の複数の還気口17を介して空調対象空間11から天井空間18内に排出され、排気ファン33によってガラリ35から外部へ排気される。排気ファン33は、外気条件に応じて導入外気量を変化させ、同量をガラリ35から排気する。また、排気ファン33は最小風量(定格30%)で運転され、要求外気量が排気ファン33の最小風量未満のときに、排気バイパス34を介して一部を機械室20に還流する。
【0063】
また、気化式加湿器32は、温湿度計19bに基づいて還気に加湿し、内蔵するファン32aによって加湿した空気を機械室20内に排出する。気化式加湿器32の加湿能力は、気化式加湿器32の飽和効率とファン32aの能力、及び室内湿度条件から求められる。
なお、運転モード2(間接)では、空調システム1は、制御装置63からの指令に基づいて、冷水一次ポンプ50を停止、冷凍機49を停止、冷却水ポンプ53を停止、第四切替弁56を閉とする。
【0064】
次に、
図8に基づいて運転モード4(冷凍機単独)の運転状態を説明する。
制御装置63のモード4(冷凍機単独)出力部74は、冷凍機廻りの機器に対して運転信号を出力する。空調システム1は、モード4(冷凍機単独)出力部74からの指令に基づいて、モータダンパ30を閉じて外気OAの導入を停止し、気化式加湿器32及び排気ファン33を停止させる。
同時に、空調システム1は、冷水一次ポンプ50を運転し、冷凍機49を運転することで冷水循環路40の冷水還り路43の冷水を冷却した後、冷水循環路40の往き路41に供給し、冷水二次ポンプ42を運転して空調機21の冷水コイル23へ冷水を供給し、ファン22によって還気RAを吸引し、還気RAを冷却する。
【0065】
冷却された還気RAは、床下空間15から床13に設けた複数の吹出口14を介して矢印で示す給気風路11aを形成しながら空調対象空間11内に流入しコールドアイルからラック12の列内に通過し熱を奪ってホットアイル側へ流出される。そして、ホットアイル側に流出する空気は、天井16の複数の還気口17を介して空調対象空間11から天井空間18内に排出され、吸入口24から還気導入室28経由して空調機21の混合室21a内にファン22によって吸引させる。
【0066】
なお、モード4(冷凍機単独)では、空調システム1は、制御装置63からの指令に基づいて、冷却塔冷水ポンプ45を停止、外気冷房専用の密閉式冷却塔44を停止、第一切替弁47、第二切替弁59、第三切替弁61を閉とする。
以上のように、本実施形態によれば、直接外気冷房機器(排気ファン、気化式加湿器)と間接外気冷房機器(外気冷房専用冷却塔,冷却塔冷水ポンプ)を設置したので、外気条件に応じて運転モード1〜4の何れかにを切り替えることができる。
【0067】
次に、本実施形態における各パラメータについて詳述する。なお、下記の説明における電力の計算は、第二実施形態で説明するように、国土交通省大臣官房官庁営繕部設備・環境課が発行した『LCEMツールVer3.03 主要オブジェクトの計算アルゴリズム(中央熱源編)』(以下、LCEMツールと称する)を用いた。
先ず、
図4のステップS2及びステップ4における運転モード1(直接)と運転モード2(間接)との判別について説明する。
【0068】
冷却塔は入口の水温と外気OAの湿球温度(WB)の差によって冷却する装置であるから、外気OAが低湿度になるほど外気湿球温度が下がり冷却塔の効率が向上し、レンジ一定(12℃〜19℃)の場合ファン電力が少なくなる。また、外気OAが高湿度になるほど気化式加湿器32の加湿量が少なくなり、気化式加湿器32の消費電力が少なくなる。
よって、低湿度の場合は、冷却塔を通した外気との熱交換により間接的に冷却する間接外気冷房に切り替え、高湿度の場合は、外気を取り入れると共に気化式加湿器32により直接的に冷却する直接外気冷房に切り替えることで、全体として省エネルギーを図ることができる。
【0069】
そこで、外気OAのx
OA(絶対湿度[kg/kg’])、t
OA(乾球温度[℃])が、x
OA<at
OA+b(式中、aは傾き、bは切片)の関係式を満たすとき低湿度と判別して間接外気冷房に切替え、x
OA≧at
OA+bの関係式を満たすとき高湿度と判別して直接外気冷房に切り替える。
また、外気OAの相対湿度RHが60%未満のとき低湿度と判別して間接外気冷房に切り替え、外気OAの相対湿度RHが60%以上のとき高湿度と判別して直接外気冷房に切り替えても良い。
【0070】
次に、
図4のステップ2におけるx
12(t)=at+b、相対湿度RHの具体的な導出方法について説明する。
図12は、直接外気冷房と間接外気冷房とのシステム電力(消費電力)が記載されている。図中、○点で表される直接外気冷房(相対湿度RH>70%)が、点線で表される間接外気冷房の下側に散在し、△点で表される直接外気冷房(相対湿度RH<40%)が、点線で表される間接外気冷房の上側に散在している。また、点線で表される間接外気冷房によって◇点で表される直接外気冷房(相対湿度RH40〜70%)が上下に分断されている。
【0071】
図12のグラフから所定の相対湿度として相対湿度RH40%〜70%の間の値である相対湿度RH60%を読み取ることができる。点線が境界と完全に一致しないことからも相対湿度RHはあまりよい指標とはいえないが、相対湿度RHに基づいて直接外気冷房と間接外気冷房とに切り替える制御はシンプルで複雑な演算がいらないため、本実施形態では相対湿度RHに基づく制御も盛り込んである。
直接外気冷房と間接外気冷房の境界に直線を引くことでx
12(t)=at+bが読み取れる。
図13から、4℃(乾球温度)のときの絶対湿度は、0.0032kg/kg’、14℃のときの絶対湿度は、0.005kg/kg’であるから、x
12(t)=0.00018t+0.00248となり、判定式の勾配aは0.00018、切片bは0.00248と求められる。すなわち、LCEMツールVer.3.03を用いて各設計用気象データにおける各運転モード1〜4の消費電力を比較し、消費電力が一番小さい運転モードをプロットした
図13より、直接外気冷房と間接外気冷房の境界に直線を引いたり、直接外気冷房と間接外気冷房の境界に位置する点(t,x)を2つとり、それら点を結ぶ直線を引くことでx
12(t)=at+bが読み取れる。
【0072】
次に、間接外気冷房と直接外気冷房の判定式(x
12(t)=at+b)の定式化について考察する。
システム構成は、
図1に示されている通りである。
(空調機21+排気ファン33+気化式加湿器32)に要する電力と、(冷却塔冷水ポンプ45+冷却塔(外気冷房専用)44+冷却塔(外気冷房運転、冷凍機運転兼用)55+冷水二次ポンプ42+空調機21)に要する電力とのどちらが大きいかによるが、冷水二次ポンプ42、冷却塔(外気冷房専用)44、冷却塔冷水ポンプ45、冷凍機49,冷却塔(外気冷房運転、冷凍機運転兼用)55、冷却水ポンプ53のいずれも機器固有の特性値が影響する。空調機21は、外気を導入することで生じる圧損を含める。
【0073】
冷水二次ポンプ42、冷却塔冷水ポンプ45、空調機21、外気を導入することで生じる圧損を含める空調機21の動力は、乾球温度t(DB)と絶対湿度xの関数ではなく、気化式加湿器32、排気ファン33は、エンタルピhと絶対湿度xの関数であり、冷却塔(外気冷房専用)44、冷却塔(外気冷房運転、冷凍機運転兼用)55は湿球温度WBの関数であることから、下記の式(2a)のように整理し、fやgを1次式で近似することを試みた。
【0074】
C21’+f33(h)+f32(h、x)=C45+C42+C21+f44(WB)+f55(WB)・・・(2a)
式中、Cは定数、f,gは関数、WB=g(DB、x)、
C21は、空調機21の定数
C21’は、外気を導入することで生じる圧損を含める空調機21の定数
C45は、冷却塔冷水ポンプ45の定数
C42は、冷水二次ポンプ42の定数
f33は、排気ファン33の関数
f32は、気化式加湿器の関数
f44は、冷却塔(外気冷房専用)44の関数
f55は、冷却塔(外気冷房運転、冷凍機運転兼用)55の関数
【0075】
C45、C50、C53、C42のポンプ電力は、LCEMツールの第9頁〜第11頁に記載の3.ポンプに基づいて求めた。C21、C21’の空調機電力は、LCEMツールの第13頁〜第14頁に記載の4.空気調和機における4.1送風機(給気用送風機、給気・還気用送風機)に基づいて求めた。
C45、C50、C53、C42は、主に、圧力、流量、流体密度、効率の関数であるが、効率は機器によって定まり、圧力は揚程と流量によって定まり、本実施形態では冷却水ポンプ53の流量は、定格(3803L/min)から電力が最小になる所定の流量(2662L/min)に低減され、冷水一次・二次ポンプ50、42の流量は、定格(3218L/min)から冷水往き路41と冷水還り路43の温度差が約7℃になる所定の流量(2000L/min)に低減され、基本的に外気条件に対して変更しないので、定数とする。
負荷が小さくなった場合は、流量を減らす運転を行うことはあるが、本実施形態では負荷はほぼ一定としているので、流量は一定としても給気温度が一定に保たれるため問題はない。実際のデーターセンタもラック発熱負荷が主であり負荷の変動は小さい。
【0076】
C21は、主に、圧力、流量(風量)、空気密度、効率の関数であり、本実施形態では、基本的に外気条件に対して変更しないので、定数である。
負荷が小さくなった場合に流量を減らす運転を行うことはあるが、本実施形態では負荷をほぼ一定としているので、風量は一定としても給気温度が一定に保たれるしている。
C21の電力は、5.50kWである。C21’の電力は、6.42kWであり、C21の電力よりやや高めになる。これは、外気を導入することで生じる圧損の分だけ電力を消費するためである。
f32の気化式加湿器のファンの電力は、圧力、風量、空気密度、効率の関数であることは、C21と同様である。
【0077】
しかしながら、外気条件により風量は変化するため、外気等エンタルピ線hの関数となる。
運転モード1(直接)では、上述した式(1)により、外気量Vが外気等エンタルピ線hより求まる。
空調対象空間11の湿度を一定とするためには、外気量及び内外絶対湿度差Δxに比例して加湿量を確保する必要がある。気化式加湿器32の風量は加湿量の関数となるため、f32は絶対湿度と等エンタルピ線hの関数f32(h、x)となる。
【0078】
運転モード3(混合)では、間接冷房による冷却部分があるため、f32(h、x)≠f32’(h、x)である。運転モード1(直接)≠運転モード3(混合)となる。
f33の排気ファンの電力は、圧力、風量、空気密度、効率の関数であることは、f33と同様である。
しかしながら、外気条件により風量は変化するため、外気等エンタルピ線hの関数f33(h)となる。
運転モード1(直接)では、全負荷と排気冷房で冷却するため、風量VはVhとイコールとし、上述の式(1)より求めることができる。
風量が等エンタルピ線hの関数となるため、排気ファン33の電力もhの関数となる。Q、Q
AC、Q
F、ραはほぼ一定である。
【0079】
運転モード3(混合)では、間接冷房による冷却部分があるため、式(1)の負荷Qより冷却分を差し引いて風量を求める。このため、f33(h)≠f33’(h)である。運転モード1(直接)≠運転モード3(混合)となる。
C45は、運転モード2(間接)で冷却塔が、冷却塔(外気冷房専用)44と冷却塔(外気冷房運転、冷凍機運転兼用)55との2段と、冷却塔(外気冷房専用)44の1段と異なるため、圧力も異なる。
【0080】
例えば、冷却塔が2段の場合、C45のポンプ電力は8.31kW、冷却塔が1段の場合、C45のポンプ電力は5.87kWである。
また、C42のポンプ電力は3.46kWである。
f44、f55は、主に、外気湿球温度WB、冷却水入口温度、冷却水流量、冷却水温度設定値、冷却塔特性値の関数である。本実施形態では、外気湿球温度WB以外は、ほぼ一定となるため、外気条件に対してWBの関数、f44(WB)、f55(WB)となる。
【0081】
運転モード2(間接)では、f44(WB)となるが、後段の冷却水入口温度が前段と異なるため、f44(WB)=f55(WB)とはならない。
なお、湿球温度は、乾球温度tと絶対湿度xとの関数である。WB=g(t、x)となる。また、等エンタルピ線hは、ほぼ湿球温度WBの関数であるから、h=g’(WB)=g’(g(t、x))となる。
これらを式(2a)に外気条件(設計用気象データ)を入力し、この式(2a)をほぼ満たす点(t,x)を一次式で最小二乗フィッティングすることで傾きaや切片bを求めることができる。また、式(2a)のうちWB又はh及びxの関数であるf33(h)、f32(h、x)、f44(WB)、f55(WB)にh=g’(g(t、x))、WB=g(t、x)を代入してtとxの関数とし、その関数を一次式で近似すれば、傾きaや切片bを求めることができる。
【0082】
次に、
図4のステップS3に示す運転モード1(直接)と同ステップS7に示す運転モード3(混合)との判別について説明する。
低エンタルピ(h<h
13)の場合は、直接外気冷房を選択し、中エンタルピ(h
13<h<h
34)の場合は、直接外気冷房と間接外気冷房を混合した混合外気冷房を選択することで、冷凍機廻り機器を長期間停止でき、冷凍機廻りの機器の電力を減らして省エネルギーを図ることができる。
【0083】
次に、
図4のステップS2におけるh
13の具体的な導出方法について説明する。
全負荷が冷却可能な外気は、上述の式(1)で表される。
ここで、式(1)に、V
h(排気ファンの定格風量)=8,000m
3/hを代入し、Q+Q
AC+Q
F(発熱負荷)=60,000Wを代入し、ρ。(空気密度)=1.2kg/m
3を代入すると、△h(室内外等エンタルピ線差)=2 2.5kJ/kgとなる。RA(還気の温度=27℃、相対湿度=40%)の等エンタルピ線は50kJ/kgなので、OAの等エンタルピ線(=h
13)は2 7.5(=50−22.5)kJ/kgとなる。このように、還気RAのエンタルピから、排気ファンの定格風量と発熱負荷に基づいて求められた室内外等エンタルピ線差を差し引くことで、運転モード1(直接)と運転モード3(混合)との境界上の等エンタルピ線h
13を求めることができる。
【0084】
本実施形態では、外気OAを増やすと還気RAが減りレタン加湿できなくなるので、SA(空調機21からの給気の温度=19℃)を通る等エンタルピ線のところまで直接外気冷房できない。排気ファン33の定格風量程度の外気導入量であれば、ファン電力もそれほど大きくならないので、直接外気冷房できるのならば直接外気冷房した方が省エネルギーになる。
【0085】
次に、
図4のステップS7の運転モード3(混合)の判別について説明する。
低エンタルピ(h<h
23)の場合は、間接外気冷房を選択し、中エンタルピ(h
23<h<h
34)の場合は、混合外気冷房を選択することで、冷凍機廻り機器を長期揚停止でき、冷凍機廻りの機器の電力を減らして省エネルギーを図ることができる。
【0086】
次に、
図4のステップS4のh
23の具体的な導出方法について説明する。
間接外気冷房で冷水が12℃を超える場合、間接外気冷房でできるだけ負荷を処理し、残りの負荷を直接外気冷房で処理する。外気OAの等エンタルピ線が25kJ/kg(8℃WB)以上だと出口水温が12℃を超えてしまうので、h
23は25kJ/kgとなる。
このように、冷却塔2台直列のときの、出口水温が12℃を超えない湿球温度、言い換えると、冷却水温度設定値を維持できる上限の湿球温度に対応するエンタルピを、運転モード2(間接)と運転モード3(混合)との境界上の等エンタルピ線h
23として求めることができる。
一般的に、冷却塔のメーカーから冷却塔性能予想曲線が配布されており、冷却塔性能予想曲線は出口水温と湿球温度の関数になっていることから、この曲線を使って出口水温(12℃)から湿球温度を読み取ることでOAの等エンタルピ線を求めている。
運転モード3(混合)は、間接冷房による冷却分があるため、f32(h、x)≠f32’(h、x)である。
【0087】
次に、
図4のステップS8に示す運転モード4(冷凍機単独)の判別について説明する。
外気OAの絶対湿度がSA以上だと絶対湿度をSAに合わせられないので、外気OAの絶対湿度が給気SA以上のときは冷凍機単独冷房とする。
高エンタルピ(h>h
34)の場合は、外気から取り入れることができるエンタルピが少なくなるので、冷凍機単独冷房を選択して作動機器を減らしたほうがむしろ省エネルギーになる。
h
34は給気SAの湿球温度(15(℃WB))〜SAの湿球温度から1(〜2)WB低い温度(13〜14℃WB)の範囲内であればよい。
【0088】
次に、
図4のステップS6における間接外気冷房、直接外気冷房、混合外気冷房のそれぞれにおける、h
34の具体的な導出方法について説明する。
間接外気冷房の場合、
図15に示すように、冷凍機単独運転(基準方式)と間接外気冷房と冷凍機との併用運転(冷凍機同時運転あり)における湿球温度とシステム電力の関係から、外気OAの湿球温度が15℃WBを超えると単独運転のほうが省エネルギーになることが読み取れる。
【0089】
もう少し考察してみると、単独運転のシステム電力は、冷却塔(外気冷房運転、冷凍機運転兼用)55+冷水一次ポンプ50+冷凍機49+冷却水ポンプ53+冷水二次ポンプ42+空調機21=(f55(WB)+C50+C49+C53+C42+C21)であり、併用運転のシステム電力は、冷却塔冷水ポンプ45+冷却塔(外気冷房専用)44+冷却塔(外気冷房運転、冷凍機運転兼用)55+冷水一次ポンプ50+冷凍機49+冷却水ポンプ53+冷水二次ポンプ42+空調機21=(C45+f44(WB)’+f55(WB)’+C50’+C49’+C53’+C42+C21)であり、どちらのシステム電力も湿球温度WBのみの関数となることが判る。
【0090】
ここで、併用運転のC50、C49、C53にカンマがついているのは、単独運転と併用運転ではポンプや冷凍機の電力が異なると考えられるためである。
単独運転のとき使用する冷却塔は1つだが、併用運転のとき使用する冷却塔は2つである。
図14をみても、8℃WB〜15℃WBの範囲において、単独運転に比べて併用運転のほうがグラフの傾きが2倍強になっている。よって、外気OAの湿球温度が15℃WBを超えると、冷却塔を2つ使用する併用運転のほうがシステム電力は大きくなってしまうと考えられる。
【0091】
以上により、単独運転と併用運転のグラフの線が交わる点、つまり、f55(WB)+C50+C49(WB)+C53+C42+C21=C45’+f55(WB)’+f44(WB)’+C50’+C49’(WB)+C53’+C42+C21となる点の外気OAのエンタルピh
34は4 2.5kJ/kg(15℃WB)となる。
h
34は、厳密には、運転モード3(混合)と運転モード4(冷凍機単独)との電力比較をして決定すべきであるが、下記の手順で判定することにより、ほぼ電力上有利な方を選択できる。
【0092】
(1)間接外気冷房を100%運転する。間接冷却量を計算する。
(2)残りの負荷(負荷−間接冷却量)を直接外気冷房で処理する。
(3)必要外気量が排気ファン33の能力を超えたり、必要加湿量が気化式加湿器32の能力を超える場合は、運転モード4(冷凍機単独)にする。
(4)以上より運転モードの計算結果を
図13のように作成し、運転モード3(混合)と運転モード4(冷凍機単独)の境界エンタルピを読み取り、h
34とする。
なお、
図13は、混合外気冷房方式の運転状態を空気線図上に示したものである。約27kJ/kg以下の低い等エンタルピ線のときは、外気冷房の単独運転である。概ね相対湿度60%を境として、高湿度時は直接外気冷房、低湿度時は間接外気冷房となる。間接冷房の方が運転時間は長い。これ以外の条件では、室内絶対湿度より低く、かつ等エンタルピ線が約39kJ/kg以下のとき、混合外気冷房となっている。
【0093】
次に、
図4のステップS6におけるh
34の厳格な決定方法を説明する。
この場合のh
34は、LCEMツールの第14頁〜第15頁に記載の4.空気調和機における4.4空気調和機(気化式加湿器・蒸気加湿器・加湿なし)に基づいて求めた。
運転モード3(混合)と運転モード4(冷凍機単独)とが等しくなる点を下式(2b)により求める。
C45+f44(WB)+f55(WB)+C42+C21’+f32(h、x)+f33(h、x)=C50+f49(WB)+C53+f55’(WB)+C21+C42・・・(2b)
なお、
図17は、基本方式と間接冷房方式と混合外気冷房方式との運転状態を空気線図上に消費電力を湿球温度との関係として示したものである。
図17によると、混合方式は基準方式や間接方式よりも消費電力が少ないことが分かる。
【0094】
このように、LCEMツールVer.3.03を用いて各設計用気象データにおける各運転モード1〜4の消費電力を比較し、消費電力が一番小さい運転モードをプロットした
図13より、運転モード3(混合)と運転モード4(冷凍機単独)との境界上の等エンタルピ線h
34を読み取るだけでなく、運転モード3(混合)および運転モード4(冷凍機単独)における消費電力と湿球温度の関係を示す
図17より、運転モード3(混合)と運転モード4(冷凍機単独)の消費電力がほぼ等しくなる湿球温度、言い換えると、運転モード3(混合)の14℃WB近傍で急上昇する部分を右側に外挿したグラフの線と運転モード4(冷凍機単独)のグラフの線が交わる湿球温度に対応するエンタルピを、等エンタルピ線h
34として求めたり、式(3)に外気条件(設計用気象データ)を入力し、この式をほぼ満たすエンタルピを、等エンタルピ線h
34として求めることができる。なお、
図12や
図17のおおよそ14℃WB以上の湿球温度において運転モード1〜3と運転モード4の消費電力が一致しているが、これは外気冷房で冷房できなくなって冷凍機単独冷房になっているだけである。また、湿球温度14℃WBで基準方式と混合方式がほぼ同じ電力となっており、閾値として39kJ/kgを確認することができた。
【0095】
(第二実施形態)
本実施形態では、データセンタ10における外気冷房の高効率化を追求するために、空調対象空間11に外気を導入して気化式加湿により水の蒸発熱も有効利用する直接型外気冷房(運転モード1(直接))、冷却塔を介して冷水として利用する間接型外気冷房(運転モード2(間接))、運転モード3(混合)及び運転モード4(冷凍機単独)の年間消費電力を計算した。
【0096】
本実施形態では、データセンタ消費電力の計算対象モデルは、空気調和・衛生工学会論文集(No.189(2012−12)、pp.1〜12に記載の『データセンタにおける外気冷房型空調システムに関する研究』(以下、参考文献と称する)を参考に設定し、表1に示すものとした。ラック発熱負荷は840kWである。外皮、照明、人体等の負荷は、これに比べ充分小さいとして無視した。サーバ室では、ラック列が対向してコールドアイル、ホットアイルを形成する一般的な配置を想定した。
【0098】
計算は、LCEMツールを用いた。ただし、空調機の給気温度と室内負荷を一定として扱ったため、室内温度変化と空調機との未処理負荷の発生は無かった。外気条件は、LCEMツール付属の拡張アメダス2000年版における、1時間毎の標準年データを用いた。地域は東京を主用とし、札幌、大阪、鹿児島も比較検討した。
外気冷房のない水熱源システムを基準方式として設定し、その系統を
図9に示す。
図9において、80は還りヘッド、81は冷水一次ポンプ、82は冷凍機、83は冷却水ポンプ、84は冷却塔、85は往き一次ヘッダ、86は冷水二次ポンプ、87は往き二次ヘッダ、88はデータセンタ、89はデータセンタ室、90は空調機、91は二重床をそれぞれ示す。
【0099】
冷凍機82は高効率インバータターボ冷凍機とし、出口温度設定を12℃とする。機械室の下吹き空調機21から二重床91を経由して19℃で給気され、熱処理して27℃で還る。
基準方式と、直接方式(運転モード1(直接))、間接方式(運転モード2(間接))及び混合方式(運転モード3(混合))との共通の機器仕様を表2に示す。冷凍機の定格能力がまかなえるよう、冷却塔やポンプを選定した。機器は、基本的にLCEMツールのオブジェクトから選定した。ただし、ファンについては、メーカカタログから選定した仕様値を、オブジェクトシートに設定入力した。
【0101】
ここで、表2では、ポンプの運転条件を定格値から変更し、水搬送動力を低減した。この理由は、計画時に選定した機器能力と運転時の状態には一般的に差異が生じることから、システム成績係数の過小評価を避けるためである。冷却水ポンプは、冷凍機と冷却塔も含む消費電力と外気湿球温度の関係を事前に計算し、電力が最小になる流量へ低減した。冷水一次・二次ポンプは、本負荷条件での冷水往還温度差が、約7℃になる流量へ低減した。これには、空調機コイルが所定の温度で給気できることを、事前に確認している。以上のポンプ運転揚程は、運転流量と定格流量の比の二乗に定格揚程を掛けて求めた。
【0102】
計算にあたって、冷凍機など熱源に掛かる負荷は、ラック発熱負荷のほか、空調機ファンと冷水ポンプの消費電力分を加算した。
なお、各方式の詳細な計算条件は後述するが、一覧として別途整理し、表3の基準方式(Case−A)、直接方式(Case−B1〜B3)、間接方式(Case−C1〜C3)、混合方式(Case−D)に示した。
【0104】
次に、直接外気冷房方式について説明する。
表4に機器仕様を示す。外気冷房時における空調機の運転静圧は、外気フィルタ等の影響を考慮した。加湿能力は、表4の飽和効率と加湿器ファン能力、及び室内温湿度条件から求めた。排気ファン及び加湿器ファンは、変風量運転を行い、機器の保護目的で最小風量を表4の値に設定した。ファンの運転静圧は、運転風量と定格風量の比の二乗に定格静圧を掛けて求めた。表4に記載のない機器は、共通仕様(表2)と同一である。
【0106】
これらの定格風量の決定方法を、
図10で説明する。
図10は、空調機1台当たりのラック発熱に空調機及び加湿器のファン消費電力を加え、この負荷を60kWと仮定し、排気と加湿器のファン能力を変化させ、各地域の外気条件より外気冷却量を計算したものである。加湿能力上の制限が無い場合、排気ファン能力すなわち最大外気量が増加すれば、外気冷却の利用可能量も増加する。実際には、室内湿度を確保するために、加湿能力に応じて導入外気量が制限される。排気風量すなわち外気風量が増加すると、機械室への還気が減少するため、加湿器の風量と能力が減少し室内湿度が低下する。この問題を回避するために、加湿器風量は還気量と同量という条件を加えた。これより、最大冷却量を示す排気ファン能力は、地域差がそれほどなく、概ね8000m
3/hである。これを定格風量として決定した。
【0107】
次に、外気量計算方法と運転方法について説明する。
図11の運転フローに示すように、直接外気冷房が可能となる条件は、室内に比べ外気の等エンタルピ線が低いとき、かつ、外気の絶対湿度が低いときとした(ステップS10)。なお、
図11は、例えば、
図3に示す制御装置63に基づいて運転されるフローを示している。
導入外気量の計算には、システム上の制約が幾つかある。先ず、次の3つから最小値を求め、外気量の一次算定値とする。そのうち1つは排気ファンの定格風量であり、残り2つは上述した(1)と次式(2)に示すが、全負荷が冷却可能な量(過冷却防止の最大量)と、調湿が可能な量(乾燥防止の最大量)である(ステップS11)。
【0108】
V
x=M
0/ρα△x ・・・(2)
ここに、
V
x :調湿可能な最大外気量 [m
3/h]
M
0 :加湿能力 [kg/h]
△x:室内外絶対湿度差 [kg/kg(DA)]
【0109】
次に、負荷を外気で処理しきれないときに冷凍機の同時運転を行う場合には、機器の運転条件を満たすか確認する。具体的には、冷凍機の下限冷却能力以上の負荷を確保し、冷水温度が不安定になるON−OFF動作を回避する。最小負荷運転時の外気量は、次式(3)で求める。一次算定した外気量がこの値を超える場合は、冷凍機が安定運転できないので、この値を二次算定した外気量として扱う。これに該当しない場合は、一次算定値を二次算定値として次に進む(ステップS12)。
【0110】
V
TR=3600/ρα△h×(Q+Q
AC+(Q
CP−Q
min)/N) ・・・(3)
ここに、
V
TR :冷凍機最小負荷運転時の外気量 [m
3/h]
Q
CP :冷水一次・二次ポンプ電力 [kW]
Q
min :冷凍機最小負荷(定格能力の20%) [kW]
N :ファン類数 [台]
【0111】
式(1)にあるファンの発熱負荷は、次式(4)より得る(ステップS13)。加湿器風量を必要加湿量に比例させ、電力を風量の3乗に比例させて同式に整理した。右辺第二項は、最小風量時において、加湿器と排気ファンの発熱を加えたものである。
Q
F=Q
H0(ραV
*△x/M
O)
3+q
F ・・・(4)
ここに、
Q
H0 :加湿器ファン定格電力 [kW]
V
* :外気量の二次算定値 [m
3/h]
q
F :最小風量時のファン発熱負荷 [kW]
【0112】
以上の式より、ニュートン法による逐次計算を行って近似解を求め、決定外気量とした(ステップS14〜S17)。この外気量で全負荷が処理できるときには、外気冷房の単独運転を行い、冷凍機廻りの機器を停止する。部分負荷が処理できるとき、外気冷房と冷凍機の同時運転を行う場合も検討する。これら以外では、冷凍機を単独運転する。
冷凍機同時運転を行う場合には、次式(5)により空調機コイルの温度差を求め、LCEMツールでの電力計算に値を返した。冷水は定流量とした。
【0113】
△t=60/cρ
wW×(Q+Q
AC+Q
F−(ραV△h)/3600) ・・・(5)
ここに、
△t :空調機コイル入口出口温度差 [℃]
c :水の比熱(4.186) [kJ/(kg・K)]
ρ
w :水の密度(1.0) [kg/L]
W :空調機1台あたり冷水流量 [L/min]
V :外気量の決定値 [m
3/h]
【0114】
次に、計算結果について説明する。
図12に、直接外気冷房方式で冷凍機同時運転がある場合(Case−B2)の、湿球温度とシステム電力の関係を示す。
図12の比較のために示した基準方式(Case−A)は、単調増加の関係にある。一方で直接方式では、湿球温度以外の影響もある。約9℃以下の低湿球温度時においては、電力が小さい集合と大きい集合に大別される。前者は冷凍機が停止できており、例えば湿球温度が5℃の場合、基準方式の約190kWに対して約130kWとなり、32%も低減される。後者では、室内湿度を確保するために外気量が制限され、冷凍機が部分負荷運転を行っており、約170kWの電力となり11%の低減である。約15℃以下の湿球温度時は、基準方式と比べて電力が概ね低減できている。この温度以上では、逆に電力増加が散見される。この理由は、外気冷房機器の電力消費に対し、冷凍機廻りの電力低減が充分でないためである。
【0115】
この点を改善するために、外気の等エンタルピ線に制限を設け、40kJ/kg超過のときは同時運転を止め、冷凍機の単独運転とした。この改善運転(Case−B3)について、外気条件に対する運転状態を空気線図上にプロットし、
図13に示す。低等エンタルピ線かつ高湿度時は、外気冷房の単独運転となる。この他で、40kJ/kg以下かつ室内絶対湿度以下では、外気冷房と冷凍機の併用運転となる。
【0116】
図14に、年間消費電力を示す。
図14には、外気冷房時間やシステム成績係数(年間ラック発熱負荷(0.84MW×8760時間)/年間消費電力)も併記した。基準方式(Case-A)の1864MW・h/年(100%)に比べ、直接外気冷房方式の方が優れ、冷凍機同時運転がない場合(Case−B1、94%)、ある場合(Case−B2、91%)、運転条件を改善した場合(Case−B3、91%)の順に低減できている。同時運転により一定の効果が得られ、運転改善により僅かであるが効果が加えられた。後述の各方式を比較する際には、最も省電力である運転改善の場合を、直接外気冷房方式の代表とする。
【0117】
次に、間接外気冷房方式について説明する。
先ず、計算条件と運転方法とについて説明する。
間接外気冷房の効率には、冷却塔の能力が大きく影響する。この点については参考文献で検討されており、本実施形態でも同様に事前計算した。各方式と共通で用いている冷却塔(表2)を1台〜4台と変化させた結果、3台の直列接続が最も省電力であったが、2台の場合でも大差はなかった。これに設置時の合理性も考慮に加えて、2台の直列接続をモデルに設定した。
【0118】
図6に、間接方式の系統を示す。冷却塔2台により12℃で送水が可能なときは、外気冷房の単独運転を行い、冷凍機廻りの機器を停止する。これより送水温度が高くなると、冷却塔1台で予冷した後、冷凍機を同時運転して12℃で送水する場合についても検討した。この運転変更を合理的に行うために、外気冷房用の冷却塔管路と冷凍機管路を、主管経由で直列に配置する配管構成とした。外気湿球温度がさらに高くなると、冷凍機の単独運転を行う。
表5に、冷却塔冷水ポンプの機器仕様を示す。この運転揚程は、外気冷房運転の単独時と併用時で冷却塔使用台数が異なるため、同表の値で区別した。その他の機器は、共通仕様(表2)と同一である。
【0120】
次に、計算結果について説明する。
図15に、間接方式のシステム電力への、湿球温度の影響を示す。約8℃以下の低湿球温度時は、外気冷房の単独運転(Case−C1〜3)により、基準方式(Case−A)と比べて大幅に電力が低減できる。この温度以上になると電力が急増するが、これは冷凍機廻りの機器を運転するためである。ここで、冷凍機の同時運転(Case−C2)により、基準方式よりも電力が少なくできる。ただし、湿球温度が約15℃で以上になると、逆に上回る。このことから、この湿球温度以上では冷凍機を単独運転し、運転条件の改善(Case一C3)を図った。
【0121】
図16に、年間消費電力を示す。
図16より、基準方式(Case−A、100%)に比べ間接方式が優れており、冷凍機の同時運転がない場合(Case−C1、89%)、ある場合(Case−C2、89%)、運転条件を改善した場合(Case−C3、88%)の順に低減できている。同時運転がなくても外気冷房による効果は大きいが、同時運転条件の改善を行うことで、さらに一定の効果を加えることができた。以後、この中で最も電力の少ない運転改善の場合(Case−C3)を、間接外気冷房方式の代表とする。
【0122】
次に、混合外気冷房方式と各方式との比較を行う。
先ず、計算条件について説明する。
直接型と間接型を組合せた混合外気冷房方式とを検討する。この方式の優位性は、寒冷時に両者のうち有利な方を選択できること、中間期に両方式を同時運転することで冷凍機が停止できること、が挙げられる。
【0123】
ここで、これまでの各方式の電力を、
図17に示す。
図17より、基準方式(Case−A)と間接方式(Case−C3)の電力は、外気OAの湿球温度のみで決まる。一方で直接方式(Case−B3)は、湿度の影響も大きいことが分かる。高湿度時は、間接方式よりも直接方式が有利となる。これは、加湿量と共に加湿器ファン電力が少なくて済むため、また、調湿上の外気量制限が少なく、外気冷房の単独運転が行い易いためである。
図7に、混合方式の系統を示す。直接外気冷房用として、空調機への外気導入ダクト、機械室に排気ファン、加湿器を設置する。間接外気冷房用として、冷却塔2台を直列に接続している。機器仕様は、前述の各方式で示したもの(表2〜表4)と同一とした。
【0124】
次に、運転方法について説明する。
混合方式の運転方法として、直接方式又は間接方式の単独で負荷処理できるときは、両者のうち電力が少ない方を選択する。次に、両者の併用により負荷処理できるときは、間接方式で出来るだけ冷水温度を下げ、残りを直接方式で処理した。これら以外のときは、冷凍機の単独運転を行う。直接方式と間接方式、及び冷凍機の3種併用は、電力が上って不利になることから、行わなかった。
【0125】
直接方式と間接方式との混合運転が可能な外気条件では、冷水が12℃を超えることになる。このため、空調機の給気を設定温度まで、ファン発熱分を差し引いたコイル出口を18℃まで下げられるか確認した。
図18に、計算に用いたコイルでの結果を示す。
図18は、冷水入口温度が上昇した場合に、運転冷水量の範囲内で、給気温度確保に必要な入口空気温度を計算したものである。これより、空調機コイルの負荷は直接外気冷房によって軽減されるため、冷水温度が上昇しても設定温度の給気が可能である。なお、図示していないが、空調機コイルの冷水出口温度はほぼ19℃での一定であった。
【0126】
図18の外気量は、還気からコイル入口空気までの必要予冷量と、直接外気による冷却量の等価式を立てて求めた。後者には、冷水入口温度から冷却塔2台での外気温球温度を逆算し、これから等エンタルピ線を近似して用いた。これより、間接外気冷房による冷水温度が15.4℃以下までは、最大外気量(8,000m
3/h)の範囲内で予冷することにより、設定温度で給気できる。
【0127】
次に、計算結果について説明する。
図19は、外気条件に対する混合方式(Case−D)の運転状態を、空気線図上に示したものである。約27kg/kg以下の低い等エンタルピ線のときは、外気冷房の単独運転である。概ね相対湿度60%を境として、高湿度時は直接外気冷房、低湿度時に間接外気冷房となる。後者の方が運転時間は長い。これ以外の条件では、室内絶対湿度より低く、かつ等エンタルピ線が約39kJ/kg以下のとき、混合外気冷房となっている。
【0128】
図20に、混合方式の年間消費電力を示す。基準方式(Case−A、100%)に対し、直接方式(Case−B3、91%)、間接方式(Case−C3、88%)、混合方式(Case−D、86%)の順に電力が少ないことがわかる。各方式の機器の内訳をみると、空調機が41〜48%と半分近くを占めており、これ以外の機器の電力が外気冷房により低減可能となる。直接方式(Case−B3)よりも間接方式(Case−C3)の方が、冷凍機廻りの機器(冷却塔、冷却水ポンプ、冷凍機、冷水一次ポンプ)を低減できている。混合方式(Case−D)では、直接外気冷房機器(空調機増分、排気ファン、加湿器ファン)が小さく、間接外気冷房機器(外気冷房用冷却塔、冷却塔冷水ポンプ)が大きい。これは、間接運転が長いことに加え、混合運転時の負担も大きいためである。冷凍機廻りの機器の電力が少ないのは、混合運転により冷凍機が長時間停止できたためである。
【0129】
これまでの各方式について、地域による外気条件の影響を調べたのが、
図21である。
図21(a)の札幌では、間接方式(Case−C3)よりも直接方式(Cae−B3)が僅かに優れており、東京の場合と異なる。これは、直接外気冷房に係る機器が、少ない風量で冷却でき、少ない加湿量で調湿できているためである。全体として外気冷房の低減効果は高く、基準方式(Case−A)の1,759MW・h/年に比べ80〜82%となっている。また、東京と比べて、外気冷房運転が年間1,300〜1,400時間ほど長く採れている。
【0130】
図21(b)の大阪では、基準方式(Case−A)の1,870MW・h/年(100%)に比べ、直接方式(Case−B3、89%)、間接方式(Case−C3、89%)、混合方式(Case−D、88%)と、東京と同じ順で少なくなっている。システムの成績係数も、各方式で東京と大きな差異は見られなかった。
図21(c)の鹿児島では、基準方式(Case−A)の1,923MW・h/年(100%)に比べ、直接方式(Case−B3)と間接方式(Case−C3)が共に92%、混合方式(Case−D)が90%となる。他地域と比べると少ないが、外気冷房の効果は一定量ある。
【0131】
これら各地域の計算より、基準方式と各種外気冷房方式の効率を比較した結果、提案した混合方式が最も優れていることを定量的に確認できた。
以上のように、データセンタにおける外気冷房利用の向上を目的に、熱源から二次側空調機まで含めた各種システムの消費電力を、LCEMツールを用いて計算した。計算では、ラック発熱負荷840kWのモデル施設を対象とし、高効率ターボ冷凍機による水熱源システムを基準方式(外気冷房なし)とした。結果を以下にまとめる。
【0132】
1)直接外気冷房方式について、気化式加湿器を機械室に設置したシステムを設定した。東京での年間消費電力は、基準方式の1,864MW・h/年に対し、外気冷房と冷凍機の同時運転を行わない場合に94%となり、同時運転を行い条件改善した場合に91%とさらに低減された。
2)間接外気冷房方式について、冷却塔容量を定格の2倍とし、冷凍機への予冷も可能なシステムを設定した。東京での年間消費電力は、基準方式に対し、外気冷房と冷凍機の同時運転を行わない場合に89%となり、同時運転を行い条件改善した場合に88%と低減された。
【0133】
3)直接外気冷房方式と間接外気冷房方式を組合せた、混合外気冷房方式のモデルを設定した。東京での年間消費電力は、基準方式に対して86%となり、低減効果を加えることができた。
4)他地域での年間消費電力は、基準方式に対する各外気冷房方式の比率が、札幌で80〜82%、大阪で87〜89%、鹿児島で90〜92%と差異がみられた。最小なのは各地域共に混合方式であるが、次いで小さいのは概ね間接方式であった。
以上より、各外気冷房方式の代表的な効率が把握できた。
【0134】
(第三実施形態)
本実施形態では、運転モード3(混合)に加えて運転モード3’(間接型と冷凍機との併用、以下、併用と称する)を追加した点で、第一実施形態とは相違する。
図23は、運転モード3’(併用)の制御フローを示す。
ステップS21〜S25、S28,S30は、
図4のステップS1〜S8と同じであるから説明を省略する。
【0135】
図24は、モード3’(併用)出力部76を設けた制御装置63Aを示す。
図25は、運転モード3’(併用)での運転状態を示す。
次に、
図23〜
図25に基づいて説明する。
【0136】
制御装置63は、ステップS22、S24がNoのとき、ステップ26において、外気エンタルピh
OAが、エンタルピh
34と同等又はエンタルピh
34より低く、絶対湿度x
OAが、絶対湿度x
34と同等又は絶対湿度x
34より低いと判定(ステップS26のYes)し、更にステップS27において、給気SA温度が設定値と同等又は設定値より低いと判定(ステップS27のYes)すると、運転モード3(混合)を選択する(ステップS28)。
【0137】
しかし、ステップS27において、給気SA温度が設定値より高いと判定(ステップS27のNo)すると、運転モード3’(間接型と冷凍機との併用)を選択する(ステップS29)。
【0138】
図25に基づいて運転モード3’(間接型と冷凍機との併用)の運転状態を説明する。
制御装置63のモード3’(併用)出力部76は、併用外気冷房機器に対して運転信号を出力する。空調システム1は、モード3’(併用)出力部76からの指令に基づいて、モータダンパ30を閉じて外気OAの導入を停止し、気化式加湿器32及び排気ファン33を停止させる。
同時に、空調システム1は、冷却塔冷水ポンプ45を運転し、第一切替弁47を開、第二切替弁59を閉、第三切替弁61を閉にして、冷水循環路40の還り路42の冷水を外気冷房専用の密閉式冷却塔44で冷却した後、冷水循環路40の冷水往き路41へ供給する。
【0139】
そして、空調システム1は、冷水一次ポンプ50及び冷凍機49を運転し、冷水循環路40の冷水往き路41の冷水を、冷水往き路51を介して冷凍機49で冷却した後、冷水循環路40の往き路41に戻し、冷水二次ポンプ42を運転して空調機21の冷水コイル23へ冷水を供給する。空調システム1は、ファン22によって還気RAを吸引する。これにより、冷水コイル23で熱交換された冷気は、床13に設けた複数の吹出口14を介して矢印で示す給気風路11aを形成しながら空調機21から空調対象空間11内に流入し、空調対象空間11においてコールドアイルからラック12の列内に通過し熱を奪ってホットアイル側へ流出される。そして、ホットアイル側に流出する空気は、天井16の複数の還気口17を介して空調対象空間11から排出され、天井空間18を介して機械室20に還流する。
【0140】
冷凍機49の冷却水は、冷却水ポンプ53を設けた冷却水往き路54を介して外気冷房、冷凍機運転兼用の密閉式冷却塔55で冷却された後、第四切替弁56を設けた冷却水還り路57を介して冷凍機49に戻される。
運転モード3’(間接型と冷凍機との併用)と運転モード4(冷凍機単独)との境界エンタルピh’
34は、運転モード3’(間接型と冷凍機との併用)と運転モード4(冷凍機単独)との電力が等しくなる点を次式により求める。
C’45+f44(WB)+f55(WB)+C50+f’49(WB)+C53+C42+C21=C50+f49(WB)+C53+f’44(WB)+C21+C42
【0141】
(第四実施形態)
本実施形態では、運転モード1(直接)と運転モード2(間接)との境界を温度判定式x
12=at+bに変えて相対湿度60%とした点で、第一実施形態及び第三実施形態と相違する。
第一実施形態及び第三実施形態では、電力が間接外気冷房=直接外気冷房のときの温度、湿度を計算して、温度判定式x
12=at+bより求めていたが、本実施形態では、
図19に示す空気線図上から運転モード1(直接)と運転モード2(間接)との境界を求めている。
【0142】
図19に示すように、約27kg/kg以下の低い等エンタルピ線のときは、外気冷房の単独運転であり、概ね相対湿度60%を境として、高湿度時は運転モード1(直接)の直接外気冷房、低湿度時に運転モード2(間接)の間接外気冷房となる。運転モード2(間接)の方が運転時間は長い。これ以外の条件では、室内絶対湿度より低く、かつ等エンタルピ線が約39kJ/kg以下のとき、混合外気冷房となっている。