(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2排気流路部の流れ断面積は前記第1排気流路部の流れ断面積より大きく、前記第1排気流路部と前記第2排気流路部との接続において、前記第1排気流路部からの排気ガスとともに外気が前記第2排気流路部に流入するように横断方向での隙間が形成され、前記隙間が前記第1排気流路部と前記第2排気流路部との接続部分の流路方向に沿って、前方上方を向いて開口している請求項1または2に記載の作業車。
前記第2排気流路部は、前記排出ガス浄化装置の一方側端部の側方を下方に延びる下向き部と、前記排出ガス浄化装置の下方を直線的に水平に延びる横向き部と、前記下向き部と前記横向き部とを連結する二次元屈曲路とからなる請求項1から3のいずれか一項に記載の作業車。
前記ディーゼルエンジンの前方に配置されたラジエータの高さ方向での中央部が前記ディーゼルエンジンと前記ディーゼルエンジンの上方に配置されたエアクリーナとの境界領域となるように、前記ラジエータが配置されている請求項1から6のいずれか一項に記載の作業車。
【背景技術】
【0002】
近年の環境問題を改善及び解決するために、ディーゼルエンジンなどに対する排出ガス規制が強化されている。建設機械や農業機械などの作業車両においても、このような排出ガス規制に対処するために排出ガスに含まれる粒子状物質(パーティキュレートマター)を低減させる技術が様々に開発されている。例えば、従来のマフラーに代えて、排出ガスに含まれる粒子状物質を捕集する排出ガス浄化装置が作業車両に搭載されている。排出ガス浄化装置は、排出ガスを内部に設けたディーゼルパーティキュレートフィルタ(以下単にDPFと称する)に通過させて粒子状物質を捕集する。この捕集された粒子状物質は排出ガス浄化装置のDPFに徐々に堆積するので、DPFが目詰まりを起こして排気系の空気抵抗が大きくならないように、粒子状物質を燃焼させて除去して、DPFを再生しなくてはならない。このため、DPFを内蔵する排出ガス浄化装置の外面を冷却しすぎないようにするとともに、排出ガス浄化装置からの外部に放出される排気ガスを低温化するために排気管を効果的に冷却しなければならない。
【0003】
特許文献1に開示された作業車は乗用型草刈機として構成されており、左右一対の前輪と後輪との間で機体フレームの下方にモ−アユニットが配置され、機体フレームの中央部には運転座席が、機体フレームの後部にはボンネットで覆われたエンジンルームが形成され、そのエンジンルーム内にエンジン及びエンジン補機が配置されている。エンジンは、ラジエータ及び冷却ファンを前側に配備したディーゼルエンジンである。ディーゼルエンジンの後方側且つ上方側の位置には、エンジン排気ガスを浄化するDPF(排気ガス浄化装置)が配置され、エンジンの上方の位置には、エアクリーナが配置されている。DPFの左前方側から流入した排気ガスは、DPFの右側後方の排気口からさらに機体後方に水平に延びて機体後方に向けて開口している短い排気管を通じて排出される。この最終的な排気ガスを排出する排気管が短いのは、機体の長さを長くしないための措置であるが、その冷却が不十分であれば、排気口から比較的高温の排ガスが放出される可能性がある。
【0004】
特許文献2に開示された同様な形式の乗用型草刈機では、排気管長さを十分に確保するために、排気ガス浄化装置から出ていく排ガスが流れる排気流路は、排気ガス浄化装置から前方上向きに延出された後に排気ガス浄化装置の前上方を機体横断方向にディーゼルエンジンを超えまで延び、さらに前方に下降するようにディーゼルエンジンの側壁に沿って延びた後、反転してディーゼルエンジンの側壁に沿って後方に延びて排出口で終端している。このような排気管の配管レイアウトでは、エンジン後部の上方空間及びエンジン後半部の側方空間が排気管によって占められる。特に排出口近くの排気管の流れ断面が大きいことから、これに必要とされるエンジン後半部の側方空間が大きくなり、その結果ボンネット幅が大きくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記実情に鑑み、狭いエンジンルーム内で、排気ガス浄化装置から最終的な排ガス排出口までの排気管の配管レイアウトの改善が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による作業車は、機体フレームの後部に
クランク軸を機体前後方向に向けて搭載されたディーゼルエンジンと、前記ディーゼルエンジンの前方に配置された冷却ファンと、前記ディーゼルエンジンの後方に配置されるとともに、前記ディーゼルエンジンから排出された排出ガスに含まれる粒子状物質を捕集するフィルタを備え
、前記ディーゼルエンジンの後方に横置きされた排出ガス浄化装置と、前記排出ガスを機体外に放出する放出口を形成する排気終端部と、前記ディーゼルエンジンの排気マニホールドと前記排出ガス浄化装置の流入口とを接続する流入側排気流路と、前記排出ガス浄化装置の流出口と前記排気終端部とを接続している流出側排気流路と、前記流出口と連結されるともに前記排出ガス浄化装置の上方を経て前記排出ガス浄化装置の一方側端部の側方に達する、前記流出側排気流路を構成する第1排気流路部と、前記第1排気流路部に連結されるとともに前記排出ガス浄化装置の一方側端部の側方から前記排出ガス浄化装置の下方を機体横断方向に延びて前記排気終端部に達する、前記流出側排気流路を構成する
パイプ構造からなる第2排気流路部とを備えている。
【0008】
この構成によれば、排出ガス浄化装置から出た排気ガスを冷却しながら外部に放出する流出側排気流路は、排出ガス浄化装置の上方に立ち上がってから反転して排出ガス浄化装置の側方を排出ガス浄化装置の下端まで降下した後、排出ガス浄化装置の下方を機体横断方向に延びる。これにより、排出ガス浄化装置の上方の大部分が冷却流をスムーズに流す空間となり、排出ガス浄化装置より機体前後方向前方及び後方には、実質的に流出側排気流路が存在しない。つまり、冷却ファンによってエンジンルーム内に導入された冷却風の一部がディーゼルエンジンの上方及び排出ガス浄化装置の後方をスムーズ通り抜けて排出ガス浄化装置の下方を機体横断方向に延びる流出側排気流路に達することができ、流出側排気流路を流れる排ガスを効率よく冷却することができる。
【0009】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記第1排気流路部は前記ディーゼルエンジンの上端より高い位置を延びている。この構成により、第1排気流路部は、ディーゼルエンジンの上方を流れてきた冷却風によって効果的冷却される。
【0010】
第2排気流路部は、空間的に余裕のある排出ガス浄化装置の側方及び排出ガス浄化装置の下方を延びているので、必要十分な大きさの流れ断面をもって形成することが容易である。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記第2排気流路部の流れ断面積は前記第1排気流路部の流れ断面積より大きく、前記第1排気流路部と前記第2排気流路部との接続において、前記第1排気流路部からの排気ガスとともに外気が前記第2排気流路部に流入するように横断方向での隙間が形成され
、前記隙間が前記第1排気流路部と前記第2流路部との接続部分の流路方向に沿って、前方上方を向いて開口している。
【0011】
排気流路は、板金加工により金属パイプで構成されるので、その延び形状は単純であればあるほど、製造コストが安くなる。このため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記第2排気流路部は、前記排出ガス浄化装置の一方側端部の側方を下方に延びる下向き部と、前記排出ガス浄化装置の下方を直線的に水平に延びる横向き部と、前記下向き部と前記横向き部とを連結する二次元屈曲路(屈曲中心線が実質的に二次平面上に位置する)とからなる。
【0012】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記排気終端部は、前記放出口が機体横断方向を向くように配置されている。この構成により、第2排気流路部の終端と排気終端部とが同軸状に位置することが可能となり、排気終端部を単純な筒体で構成することができる。また、後方排気の形態を採用することに比べて、ボンネット長さを短くすることができる。
【0013】
第2排気流路部を効果的に冷却するためには、冷却ファンによってエンジンルームの上方空間に導入された冷却風を、エンジンボンネットの後壁領域においてスムーズに下方に偏向させて、直接第2排気流路部に到達させると好都合である。このため、本発明の好適な実施形態の1つでは、エンジンボンネットが、前記冷却ファンと前記ディーゼルエンジンと流入側排気流路とを覆う前ボンネットと、前記排出ガス浄化装置と流出側排気流路とを覆う後ボンネットとから構成され、前記後ボンネットは、冷却ファンによる冷却風が前記ディーゼルエンジンの上方を通過した後、前記排出ガス浄化装置の後方を通過して前記排出ガス浄化装置の下方に達するように下向き偏向板として形成されている。
【0014】
排出ガス浄化装置はその再生時に高熱を発するので、排出ガス浄化装置周辺の熱気を押し流すことも必要である。このため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記ディーゼルエンジンの前方に配置されたラジエータの高さ方向での中央部が前記ディーゼルエンジンと前記ディーゼルエンジンの上方に配置されたエアクリーナとの境界領域となるように、前記ラジエータが配置されている。ラジエータを通り抜けてエンジンルームに入り込む空気流の下半分は、ディーゼルエンジンに直接当たりながらエンジン表面を冷却し、空気流の上半分は、ディーゼルエンジンの上方に上昇した熱気を押し流してエンジンルーム内の温度を下げる。この構成では、ディーゼルエンジン自体の冷却及びエンジン上方の熱気や排出ガス浄化装置周辺の熱気の流し出しが効率よく実現する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明によるディーゼルエンジン(以下単にエンジンと称する)を搭載した草刈機の具体的な実施形態を説明する前に、
図1と
図2とを用いて、本発明の基本構造を説明する。本発明による作業車の一例として、草刈機が
図1で示されている。
図1での草刈機は模式化されており、機体前後方向に延びた機体フレーム2、前輪ユニット、後輪ユニット、運転座席53、モ−アユニット6、トランスミッション4、ディーゼルエンジン(以下単にエンジンと略称する)3、エンジン周辺機器が図示されているだけである。エンジン周辺機器として、ラジエータ31、エアクリーナ32、冷却ファン33、排出ガス浄化装置36、排気流路が含まれている。排気流路には、排出ガスを機体外に放出する放出口390を有する排気終端部39、エンジン3の排気マニホールドと排出ガス浄化装置36の流入口361とを接続する流入側排気流路37、排出ガス浄化装置36の流出口362と排気終端部39とを接続する流出側排気流路38が含まれている。
なお、この明細書において、原則的には、前後方向は芝刈機の長手方向(走行方向)を意味し、横方向(左右方向)は芝刈機の幅方向(前後方向に直交する方向)を意味し、上下方向は、地面(水平面)に対する鉛直方向を意味する。
【0017】
次に、本発明を特徴づけている、排気系機器の配置とその冷却構造を説明する。エンジン3は機体フレーム2の後部に搭載され、エンジン3の前方に冷却ファン33が配置されている。これにより、冷却ファン33によって生じた冷却風がエンジン3に向かって機体後方に流れる。エンジン3から排出された排出ガスに含まれる粒子状物質を捕集するフィルタ(一般にはDPFと呼ばれるフィルタが用いられる)を備えた排出ガス浄化装置36がエンジン3の後方に、好ましくは、エンジン後壁の上部のすぐ後方に、配置されている。流入側排気流路37は、エンジン3の排気マニホールドと排出ガス浄化装置36の流入口361とを接続している。流出側排気流路38は、排出ガス浄化装置36の流出口362と排気終端部39とを接続している。流出側排気流路38は、第1排気流路部381と第2排気流路部382とからなる。第1排気流路部381は、排出ガス浄化装置36の流出口362と連結されるともに排出ガス浄化装置36の上方を経て排出ガス浄化装置36の一方側端部の側方(
図1では機体右側)に達する排気流通路である。第1排気流路部381はエンジン3の上端より高い位置を延びている。第2排気流路部382は、第1排気流路部381に連結されるとともに排出ガス浄化装置36の一方側端部の側方から排出ガス浄化装置36の下方を機体横断方向に延びて排気終端部39に達する排気流通路である。
【0018】
図2を用いて、流出側排気流路38と排気終端部39との具体的な構成を説明する。第2排気流路部382の流れ断面積は第1排気流路部381の流れ断面積より大きく、第1排気流路部381と第2排気流路部382との接続において、第1排気流路部381からの排気ガスとともに外気が第2排気流路部382に流入するように横断方向での隙間が形成されている。さらに、第2排気流路部382は、排出ガス浄化装置36の一方側端部の側方を下方に延びる下向き路3821と、排出ガス浄化装置36の下方を直線的に水平に延びる横向き路3822と、下向き路3821と横向き路3822とを連結する二次元屈曲路3823とからなる。
図2の例では、下向き路3821と横向き路3822と二次元屈曲路3823とは一体的に形成されている。横向き路3822の終端に略同軸心で接続している排気終端部39は円筒体であり、その終端に形成される放出口390は、機体横断方向を向いている。
【0019】
エンジンルームを作り出すボンネット16は、ラジエータ31と冷却ファン33とエンジン3とを覆う前ボンネット(ここでは可動ボンネット15A)と、排出ガス浄化装置36と流出側排気流路38とを覆う後ボンネット(ここでは固定ボンネット16B)とから構成されている。固定ボンネット16Bは、冷却ファン33による冷却風がエンジン3の上方を通過した後、排出ガス浄化装置36の後方を通過して排出ガス浄化装置36の下方に達するように下向き偏向板として機能する。
【0020】
次に、ボンネット16によって覆われた、エンジンルームにおける、ラジエータ31、冷却ファン33、エアクリーナ32、排出ガス浄化装置36の好適な配置の一例を説明する。
図1に示されているように、運転座席53は機体フレーム2の中央領域の上方に配置されており、トランスミッション4は運転座席53の下方で後方に配置されている。後輪ユニットの後車軸はトランスミッション4の後部から機体横断方向に延びている。エンジン3は、トランスミッション4の後方で、トランスミッション4の下端より高い位置(地上高さ)に配置されている。したがって、機体フレーム2の、エンジン3を搭載している下端部分の地上高さは、トランスミッション4を搭載している下端部分の地上高さより高くなっている。このことは、前輪ユニットが乗り上げた際に地面と機体後部とが接触するまでの許容長さが長くなり、機体の乗り越え性能が向上する。
【0021】
排出ガス浄化装置36は、エンジン3の機体横断方向の長さとほぼ同じ長さの略円筒形ハウジングを有し、その円筒軸が機体横断方向に沿うように、かつほぼエンジン3と同じ高さ位置に機体フレーム2に固定されている。同様に略円筒形ハウジングを有するエアクリーナ32は、エンジン3の機体前後長さのほぼ中央位置でエンジン3の上方にその円筒軸が機体横断方向に沿うように配置されている。
【0022】
ラジエータ31は、トランスミッション4とエンジン3との間の領域にほぼ直立姿勢で配置されている。その際、ラジエータ31の下端は、エンジン3からの動力をトランスミッション4に伝達するためにクランク軸に連結している入力軸30のすぐ上方に位置し、ラジエータ31の上端は、エアクリーナ32より上方に突き出している。
図1に示されているように、この草刈機の側面視において、ラジエータ31の高さ方向での中央部は、運転座席53のシートクッション53Aの上面の高さ位置となっている。また、ラジエータ31の高さ方向での中央部は、エンジン3とエアクリーナ32との境界領域とほぼ同じ高さとなっている。
【0023】
冷却ファン33は、エンジン3の前壁の上部から機体前後方向に延びた回転軸33aを有し、ラジエータ31の冷却面を介して外気を取り込む。なお、
図1では、ラジエータ31と冷却ファン33との間にシュラウド330が設けられている。エンジン3とラジエータ31とエアクリーナ32と排出ガス浄化装置36とを覆うボンネット16のラジエータ31の冷却面に向き合う前壁に吸気用開口部160が形成され、吸気用開口部160には防塵ネットが張り付けられている。運転座席53のシートクッション53Aの上面の高さ位置、つまりラジエータ31の高さ方向での中央部に吸気用開口部160の下端が位置している。運転座席53のシートバック53Bとボンネット16の前壁との間に空気が自由に流通することができる空間が形成されており、ラジエータ31の上半分、エアクリーナ32、排出ガス浄化装置36を通過する冷却風経路(
図1で矢印線で示されている)が作り出される。
【0024】
エアクリーナ32と排出ガス浄化装置36との上端を結ぶ線が後方に下がっていることから、ボンネット16の天壁も同様に傾斜しており、ラジエータ31の上半分を通り抜けた冷却風はボンネット16の天壁に沿って斜め下方に流れるとともにボンネット16の後壁が作り出す偏向板機能により下方に引き込まれるように流れる。第2排気流路部382がこの冷却風の流れに晒されるので、効率よく冷却される。
【0025】
次に、図面を用いて、本発明による乗用草刈機の具体的な実施形態の1つを説明する。この実施形態では、基本的に、
図1と
図2を用いて説明した構造と配置が採用されている。
図3は、草刈機の一例である、ゼロターンモ−アとも称される芝刈機の側面図であり、
図4は平面図である。
図3と
図4とに示されているように、芝刈機は、左右一対の前輪11を有する前輪ユニットと、回転駆動される左右一対の後輪12を有する後輪ユニットとによって対地支持された走行機体10を備えている。走行機体10は、ベース部材として機体フレーム2を有しており、前輪11と後輪12との間で、モ−アユニット6がリンク機構14を介して機体フレーム2から吊り下げられている。走行機体10の機体前後方向中央領域に運転部5が配置されている。このため、運転部5では機体フレーム2の上に座席支持体52が固定されており(
図1参照)、座席支持体52の上面に運転座席53が設けられている。運転座席53は、運転者の臀部を保持するシートクッション53Aと、運転者の背中を保持するシートバック53Bとから構成されている。さらに座席支持体52の左右側面にはフェンダ17が形成されている。運転座席53の前方にステップ50が敷設されている。
【0026】
運転部5の後部にはロプス装置13が設けられている。走行機体10の後端領域にはエンジン3が配置され、エンジン3の前方やや下側にトランスミッション4が配置されている。トランスミッション4には、左後車軸伝動部4aと右後車軸伝動部4bが含まれている。
図3では左後車軸伝動部4aだけが点線で示されているが、機体右側には左後車軸伝動部4aと線対称となる位置に右後車軸伝動部4bが配置されている。左後車軸伝動部4aと右後車軸伝動部4bのそれぞれには、独立して操作可能な静油圧式変速機構(HST)が無段変速機構の一例として内装されている。静油圧式変速機構は、エンジン動力を正転(前進)状態及び逆転(後進)状態で、低速から高速まで無段階に変更して、後輪ユニットの左右それぞれの後輪12a、12bに伝達することができる。これにより、左右の後輪12a、12bの両方が同じまたはほぼ同じ速度で前進方向に駆動することで直進前進が作り出され、左右の後輪12a、12bが同じまたはほぼ同じ速度で後進方向に駆動することで直進後進が作り出される。さらに、左右の後輪12a、12bの速度を互いに異ならせることで、走行機体10を任意の方向に旋回移動させることができ、例えば、左右の後輪12a、12bのいずれか一方を零速に近い低速にさせ、他方の後輪12a、12bを高速で前進側あるいは後進側に操作することで小回り旋回させることができる。さらに、左右の後輪12a、12bを互いに逆方向に駆動することで、走行機体10を左右の後輪12a、12bのほぼ中央部を旋回中心としてスピンターンさせることもできる。前輪ユニットは、左右一対のキャスタ輪として構成され、縦軸芯周りで向きを自由に変更することができるので、左右の後輪12駆動による走行方向に応じて向きが修正されることになる。
【0027】
トランスミッション4に対する変速操作、特に左後車軸伝動部4aと右後車軸伝動部4bに対する変速操作は、運転座席53の両側に配置された左右一対の変速レバー51によって行われる。変速レバー51を前後中立位置に保持すると無段変速装置が中立停止状態となり、変速レバー51を中立位置から前方に操作することで前進変速が実現し、後方に操作することで後進変速が実現する。
【0028】
図4に示すように、前記走行機体10の機体フレーム2は横幅の広い前フレーム21と横幅の狭い後フレーム22とで構成されている。前フレーム21及び後フレーム22は、機体前後方向に延びる左右一対の縦ビームと縦ビームを連結するクロスビームとからなる。前フレーム21の横幅(左右の縦ビームの間隔)は後フレーム22の横幅より大きく、平面視で後フレーム22の前部は前フレーム21の後部に入り込んでおり、図示されていない連結部材によって互いに連結されている。後フレーム22の後端には、エンジン3の後方に空間を作り出すように箱状に形成された後端フレーム220が固定されている。
【0029】
後フレーム22の中央にエンジン3が防振搭載されている。エンジン3の前壁の下部から前方に突き出しているクランク軸の延長部と同軸でトランスミッション4にエンジン動力を伝達する入力軸30がほぼ水平延びている。左右の前輪11a、11bの乗り上げをできるだけ許すために走行機体10の後部の地上高さを高くすることが要求されることから、エンジン3は、トランスミッション4より地上から高い位置に配置されている。トランスミッション4のミッションケース40の前壁からはモーアユニット6に動力を伝達するPTO軸41が前方に突き出している。このPTO軸41とモーアユニット6のPTO入力部61とを接続するPTO中継軸62の傾斜角が大きくならないように、トランスミッション4の地上高さは低くなっている。
【0030】
冷却ファン33は、エンジン3の前方で、その上端がエンジン3の上端とほぼ同じ高さになるように配置されている。冷却ファン33は、エンジン3の前壁の上部に設けられ、クランク軸の延長部からベルト伝動で動力が伝達される前後方向に延びた回転軸33aを有する。冷却ファン33の前方にはラジエータ31が配置されている。ラジエータ31は、その冷却面を冷却ファン33の回転軌跡面に対向させて、直立姿勢で、つまり鉛直方向に延びるように設けられている。ラジエータ31の下端は入力軸30に接近しており、その下端高さは、トランスミッション4の上端と入力軸30との間のほぼ中間高さの位置となっている。冷却ファン33とラジエータ31との間にはシュラウド330が形成されている。
図6と
図7に示されているように、シュラウド330の左右の側部はボンネット16の側板部まで延ており、エンジンルームをエンジン側空間とラジエータ側空間とに区分けする隔壁としても機能している。
【0031】
図3に示されているように、エンジンルームを作り出すボンネット16は、後端フレーム220に固定されている後ボンネットである固定ボンネット16Bと、機体横断方向で水平に延びた開閉軸心Pbの周りで開閉する前ボンネットである可動ボンネット16Aとからなる。
図7に示されているように、可動ボンネット16Aは、側面を形成する左右一対の側板161と上面を形成する天板162と前面を形成する前板163とからなり、後面は開口されている。前板163の全体にわたって、及び側板161と天板162の前端領域には、複数の開口部165が設けられて、その開口部165に防塵ネットが装着されている。側板161の前側の下半分に長方体形状の凹部164が形成されており、その凹部164の壁面(側面や上面)にも防塵ネット付きの開口部165が形成されている。したがって、
図8に示すように、冷却ファン33は、可動ボンネット16Aの上面及び側面からも冷却風を作り出すため吸い込むことができる。
【0032】
可動ボンネット16Aの前板163は横方向の屈曲線で折れ曲がっており、可動ボンネット16Aの閉鎖状態において、前板163の下半分は鉛直な面となっているのに対して、前板163の上半分は、後方に傾斜した傾斜面となっている。
図5から明らかなように、閉鎖状態の可動ボンネット16Aの前板163と、着座状態のシートバック53Bとの間には、実質的に上に行くほど水平断面積が大きくなる空気流通空間が作り出される。冷却ファン33の駆動により、その空気流通空間から吸い込まれた冷却風がラジエータ31を通過して、エンジン3の領域に流れ込む。前壁に衝突して及びエンジン上方空間に流れ込む。
【0033】
ラジエータ31の前面にも、防塵カバー311が装着されている。この防塵カバー311のメッシュは、開口部165に装着された防塵カバーより細かいものが採用されている。防塵カバー311は、その上端が取っ手3111として機能するように折り曲げられている。防塵カバー311は上方に引き上げられるようにラジエータ31に装着されている。したがって、その取り外し時には、上方から手を入れて、取っ手3111を掴んで、防塵カバー311を引き上げる。この掴み操作が簡単になるように、取っ手3111は90度に折り曲げられているのではなく、それよりやや緩めに、例えば70度程度に折り曲げられている。
【0034】
エンジン3の上方には、円筒状のエアクリーナ32が横置き(円筒軸が機体横断方向に沿っている)されている。エアクリーナ32の流入管331はエアクリーナ32からわずかに斜め上方に延びてシュラウド330の上部を貫通しており、その吸入口320はラジエータ側空間においてラジエータ31の上端部に達している。エアクリーナ32の流出管332はU字状に屈曲しながら下方に延びており、エンジン3の吸入マニホールドに接続している。ラジエータ31の下端の高さは、ほぼクランク軸の高さであり、ラジエータ31の上端の高さは、ほぼエアクリーナ32の吸入口320の高さである。つまり、ラジエータ31は、運転座席53とエアクリーナ32と間の領域をエアクリーナ32の上端より高く上方に突き出すように延びている。
【0035】
図5と
図6に示すように、実質的に円筒形状である排出ガス浄化装置36がエンジン3の後方で、ほぼエンジン3の高さレベルに、横置き(円筒軸心が機体横断方向に沿っている)で配置されている。この排出ガス浄化装置36は、エンジン3から排出された排出ガスに含まれる粒子状物質を捕集する、DPFと呼ばれるフィルタを内蔵している。排出ガス浄化装置36は、エンジン3の排気管システムに介装されている。排気管システムは、排出ガスを機体外に放出する放出口390を形成する排気終端部39と、エンジン3の排気マニホールドと排出ガス浄化装置36の流入口361とを接続する流入側排気流路37と、排出ガス浄化装置36の流出口362と排気終端部39とを接続している流出側排気流路38とからなる。
【0036】
図9と
図10とから明らかなように、流出側排気流路38は、第1排気流路部381と第2排気流路部382とからなる。第1排気流路部381の起端は、排出ガス浄化装置36の流出口362と連結されている。第1排気流路部381は、流出口362から排出ガス浄化装置36の前側斜め上方に立ち上がったのちUターン状に屈曲して、その末端は排出ガス浄化装置36の右側端部の側方に達する。
第2排気流路部382の起端は第1排気流路部381に連結されている。この実施形態では、第1排気流路部381と第2排気流路部382との連結は、第1排気流路部381より大径に形成された第1排気流路部381の末端が、第2排気流路部382の起端に入り込ませるか、またはほぼ同一面上にあるいはわずからに間隔をあけて位置させることで、相互の間に隙間をあけて、その隙間から冷却風を入り込ませるような連結形態である。第2排気流路部382は、排出ガス浄化装置36の右側端部の側方を通り抜ける略直線状の下向き路3821と、排出ガス浄化装置36の下方を機体横断方向に延びて排気終端部39に達する横向き路3822と、下向き路3821と横向き路3822とを連結する90度の屈曲路3823とからなる。屈曲路3823は、その中心軸が二次面上に位置する二次元屈曲路として形成されている。第2排気流路部382と排気終端部39との連結も、第2排気流路部382より大径に形成された排気終端部39に、第2排気流路部382の末端を入り込ませるか、またはほぼ同一面上にあるいはわずからに間隔をあけて位置させることで、相互の間に隙間をあけて、その隙間から冷却風を入り込ませるような連結形態である
【0037】
図5から明らかなように、固定ボンネット16Bの内面の側面視からの断面は、排出ガス浄化装置36と第1排気流路部381と第2排気流路部382との側面視の後方輪郭線に沿うような形状である。つまり、固定ボンネット16Bの内面は、エアクリーナ32を通過した冷却風を第1排気流路部381から排出ガス浄化装置36の後方を通過して、排出ガス浄化装置36の下方に達するように方向づける下向き偏向板として機能する。この実施形態では、固定ボンネット16Bの上部の内側には、下向き後方に冷却風を流す第1偏向板160aが設けられ、固定ボンネット16Bの下部の内側には、下向き前方に冷却風を流す第2偏向板160bが設けられている。
【0038】
ロプス装置13は、
図3と
図7とに示されているように、左右一対の支柱13aと支柱13aの上端をつなぐ横部材13bとを有する。支柱13aは中間で揺動式に折り曲げ可能となっている。支柱13aの下半分である脚部131は、後フレーム22の上端とほぼ同じ高さ位置で内側に屈曲し、前フレーム21の後端に達するまで延びている。前フレーム21の後端とロプス装置13の脚部131とは連結ブラケットを介して連結されている。支柱13aの上半分である直線状の支柱部132は、脚部131と、揺動連結部を介して垂直姿勢と横向き(または下向き)姿勢との間で揺動可能に連結されている。
【0039】
前フレーム21には、運転座席53の足元領域にはステップ50が装着されている。運転座席53の左右にはフェンダ17が配備され、フェンダ17の下方には燃料タンク18がそれぞれ配備されている。ステップ50の前領域の中央近くにはブレーキペダル191が配置されている。ブレーキペダル191の横側には、ブレーキペダル191を踏込み位置に保持する駐車用のブレーキロックペダル192が配備されている。
【0040】
〔別実施の形態〕
(1)上述した具体的な実施形態では、作業車として、ゼロターンモーアと呼ばれる草刈機が取り上げられたが、前輪11の前方にモーアユニット6を搭載したフロントモーアと呼ばれる草刈機にも本発明は適用できる。さらには、草刈機以外の作業車、例えばトラクタや除雪車などにも適用可能である。
(2)上述した具体的な実施形態では、ボンネット16は、可動ボンネット16Aである前ボンネットと、固定ボンネット16Bである後ボンネットとに分割されていた。これに代えて、両者を可動ボンネットにしてもよいし、分割せずに単一部材でボンネット16を構成してもよい。
(3)上述した具体的な実施形態では、固定ボンネット16Bの上部の内側に、第1偏向板160aと第2偏向板160bとが形成されていたが、その際、これらを固定ボンネット16B自体の部材で形成してもよいし、別部材で形成してもよい。また、2つの部材でなく、単一の部材ないしは3つ以上の部材で冷却風の偏向機能を作り出すような構成を採用してもよい。