(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6449070
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】断熱床下構造及び断熱床下用人通口の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/76 20060101AFI20181220BHJP
E02D 27/01 20060101ALI20181220BHJP
E04B 1/80 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
E04B1/76 500Z
E02D27/01 Z
E04B1/80 100F
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-61369(P2015-61369)
(22)【出願日】2015年3月24日
(65)【公開番号】特開2016-180254(P2016-180254A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2018年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010065
【氏名又は名称】フクビ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】吉田 賢二郎
【審査官】
星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−256970(JP,A)
【文献】
特開平08−209713(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3078345(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/76
E02D 27/01
E04B 1/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下空間の内外を連通する人通口を備えた断熱床下構造において、
前記床下空間を間仕切り、且つ前記人通口の一部を構成する開口が予め形成されている基礎と、
前記開口と連通する前記人通口の出口が形成された状態で、前記基礎の床下空間側に固定される基礎断熱材と、
前記基礎の前記開口に装着されて前記人通口の入口を枠取る枠体と、
前記枠体の前記入口に着脱可能に嵌合されることにより、嵌合時に断熱性を保持した状態で前記入口を閉じる蓋体と
を備え、
前記基礎断熱材は、前記出口の縁を構成するとともに前記開口の縁よりも幅方向内側に突出した状態で前記枠体の背面に対向する延長部を有し、
前記枠体は、前記延長部に当該枠体の背面を接合することにより前記開口に装着される
ことを特徴とする断熱床下構造。
【請求項2】
請求項1に記載の断熱床下構造において、
前記出口の間口は、前記入口の間口以上に設定されている
ことを特徴とする断熱床下構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の断熱床下構造において、
前記蓋体は、幅方向が長い長方形に形成されており、
前記蓋体の下側の長辺には、背面側に寄せられて下方に突出する下実が形成されているとともに、前記蓋体の上側の長辺には、正面側に寄せられて上方に突出する上実が形成されており、
前記入口には、前記下実及び前記上実と適合した溝が形成されている
ことを特徴とする断熱床下構造。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載の断熱床下構造において、
前記枠体は、発泡樹脂製品である
ことを特徴とする断熱床下構造。
【請求項5】
請求項4に記載の断熱床下構造において、
前記枠体は、前記蓋体の横側に延びる袖壁部を有する
ことを特徴とする断熱床下構造。
【請求項6】
床下空間を形成する基礎に前記床下空間の内外を連通する人通口を施工する断熱床下用人通口の施工方法において、
前記基礎の打設時に前記人通口の一部を構成する開口を形成する形成工程と、
前記開口と連通する前記人通口の出口が形成された状態で、打設された前記基礎の床下空間側に基礎断熱材を固定する固定工程と、
前記基礎の前記開口に前記人通口の入口を枠取る枠体を装着する装着工程と
を備え、
前記固定工程は、前記出口の縁部に延設される延長部を、前記入口を開放することのできる状態で前記開口に臨ませる工程を含み、
前記装着工程は、前記延長部に当該枠体の背面を接合する工程を含む
ことを特徴とする断熱床下用人通口の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱床下構造及び断熱床下用人通口の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
寒冷地の住宅や、浴室ユニットが配置される浴室等には、所定の温度を確保するため、布基礎等の基礎の内側に基礎断熱材を貼着した断熱床下構造が設けられる。
【0003】
例えば、浴室ユニットは、化粧パネルで囲まれた空間内にバスタブ、洗い場床、換気扇等をユニット化し、建物のユニット設置場所に設置又は組み付けられる工業生産部品である。断熱床下構造は、このようなユニット設置場所に採用される。
【0004】
断熱床下構造を保守点検するため、特許文献1、2には、入口を屋内側に設けられる基礎に開閉可能に設けた構造が提案されている。
【0005】
特許文献1の構成では、基礎に固着される枠体と、枠体に対し、着脱可能な蓋体とを備えており、蓋体の設置は、基礎のコンクリート打設時に基礎の形成と同時に行われている。
【0006】
特許文献2の構成では、枠体と蓋体を有する入口が開示されている。特許文献2の入口は、枠体の開口部を塞ぎ、基礎に配置後に打ち抜くことができる打抜き板を有している。当該打抜き板は、枠体の後縁部に沿った肉薄部を介して枠体に一体的に形成されている。そして、基礎形成時にコンクリートを打設する際、打抜き板によって枠体の形状を維持し、基礎完成後に打ち抜くように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3078345号公報
【特許文献2】特許第5281813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、特許文献1、2に開示されている先行技術においては、何れも基礎の打設時に入口の枠体を設置し、コンクリートと一体化されたものであった。そのため、施工に手間がかかり、コスト高の原因となっていた。
【0009】
一方、予め基礎に開口を形成し、この開口に枠体を後付けする工法も想定されるが、単純に後付けしようとする場合には、ばらつきの大きい開口に対し、枠体を設けたときに、枠体と基礎の開口との間の断熱性を確保することが困難となり、やはり施工が困難になることが想定される。
【0010】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、施工が容易で、しかも断熱性の高い断熱床下構造及び断熱床下用人通口の施工方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、床下空間の内外を連通する人通口を備えた断熱床下構造において、前記床下空間を間仕切り、且つ前記人通口の一部を構成する開口が予め形成されている基礎と、前記開口と連通する前記人通口の出口が形成された状態で、前記基礎の床下空間側に固定される基礎断熱材と、前記基礎の前記開口に装着されて前記人通口の入口を枠取る枠体と、前記枠体の前記入口に着脱可能に嵌合されることにより、嵌合時に断熱性を保持した状態で前記入口を閉じる蓋体とを備え、前記基礎断熱材は、前記出口の縁を構成するとともに前記開口の縁よりも幅方向内側に突出した状態で前記枠体の背面に対向する延長部を有し、前記枠体は、前記延長部に当該枠体の背面を接合することにより前記開口に装着されることを特徴とする断熱床下構造である。
【0012】
この態様では、基礎に枠体を取り付け、枠体に蓋体を着脱自在に嵌合することにより、人通口の入口を開閉することができる。従って、従来の構成と同様に、蓋体を枠体に装着しているときは断熱性を保持することができる一方、蓋体を枠体から取り外した際には、人通口の入口を開き、この入口を通して床下のメンテナンス作業等を行うことができる。ここで、本態様では、予め基礎に開口が形成されているので、基礎のコンクリート打設時に人通口の入口を枠取る枠体を基礎に嵌め込むための施工が不要となる。しかも、基礎に既設された開口には、基礎断熱材の延長部が臨んでおり、枠体を開口に装着する際には、この延長部に枠体の背面を接合させることにより、施工することができる。従って、枠体の装着作業が格段に容易になる。加えて、枠体の背面を延長部に接合させるので、枠体と基礎の開口との間に隙間が形成されていたとしても、枠体と延長部との間の高い断熱性を保持することができる。
【0013】
好ましい態様の断熱床下構造において、前記出口の間口は、前記入口の間口以上に設定されている。この態様では、人通口の入口が開放された際、延長部のはみ出しがなくなり、通行がスムーズになる。しかも、枠体と延長部とを接合することにより、両者間の高い断熱性が確保されているので、枠体と基礎の開口との間に隙間が形成されていても、依然、高い断熱性を保持することが可能となる。
【0014】
好ましい態様の断熱床下構造において、前記蓋体は、幅方向が長い長方形に形成されており、前記蓋体の下側の長辺には、背面側に寄せられて下方に突出する下実が形成されているとともに、前記蓋体の上側の長辺には、正面側に寄せられて上方に突出する上実が形成されており、前記入口には、前記下実及び前記上実と適合した溝が形成されている。この態様では、枠体と蓋体とがあいじゃくり構造を構成するので、蓋体の装着時には、枠体と蓋体との断熱性を一層確実に確保することができる。しかも、下実が背面側(すなわち、床下の内側)に寄せられて形成されている一方、上実が正面側(すなわち、床下の外側)に寄せられて形成されているので、装着時に荷重のかかりやすい下実を回動軸にして押し込み操作を行い、嵌合作業を行うことができるので、作業性が向上する。
【0015】
好ましい態様の断熱床下構造において、前記枠体は、発泡樹脂製品である。この態様では、枠体自身が高い断熱性能を発揮するとともに、加工が容易になるので、基礎の開口に枠体を装着する際に枠体の外縁を切除する必要等が生じた場合においても、その加工が容易になる。
【0016】
好ましい態様の断熱床下構造において、前記枠体は、前記蓋体の横側に延びる袖壁部を有する。この態様では、蓋体の側部に配管等の施工をする際、枠体の袖壁部に加工を施すことが容易になり、作業性が向上する。また、袖壁部によって、基礎断熱材と枠体との接合面積が増加するので、断熱性が一層向上する。
【0017】
本発明の別の態様は、床下空間を形成する基礎に前記床下空間の内外を連通する人通口を施工する断熱床下用人通口の施工方法において、前記基礎の打設時に前記人通口の一部を構成する開口を形成する形成工程と、前記開口と連通する前記人通口の出口が形成された状態で、打設された前記基礎の床下空間側に基礎断熱材を固定する固定工程と、前記基礎の前記開口に前記人通口の入口を枠取る枠体を装着する装着工程とを備え、前記固定工程は、前記出口の縁部に延設される延長部を、前記入口を開放することのできる状態で前記開口に臨ませる工程を含み、前記装着工程は、前記延長部に当該枠体の背面を接合する工程を含むことを特徴とする断熱床下用人通口の施工方法である。この態様では、簡単な施工で断熱性の高い入口を床下用の基礎に施工することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、施工が容易で、しかも断熱性の高い断熱床下構造及び断熱床下用人通口の施工方法を提供することができるという顕著な効果を奏する。
【0019】
本発明のさらなる特徴、目的、構成、並びに作用効果は、添付図面と併せて読むべき以下の詳細な説明から容易に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の一形態に係る断熱床下構造を採用した浴室部分の断面略図である。
【
図3】
図1の断熱床下構造の要部を示す正面部分略図である。
【
図4】
図1の断熱床下構造の要部を拡大して示す斜視図である。
【
図5】
図1の断熱床下構造の要部を示す断面略図である。
【
図6】
図1の断熱床下構造に係る人通口を蓋体で閉じる過程を示す斜視図である。
【
図7】
図1の断熱床下構造の要部全体を示す斜視図である。
【
図8】本発明の別の実施形態に係る断熱床下構造の要部を示す正面部分略図である。
【
図9】
図8の実施形態に係る断熱床下構造の要部全体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態について説明する。以下の説明では、断熱床下構造の一例として、浴室ユニットの設置場所について説明する。
【0022】
図1を参照して、断熱床下構造10は、べた基礎11の上に布基礎12を打設し、べた基礎11と布基礎12とによって囲まれたユニット設置場所を形成している。ユニット設置場所の床下空間には、べた基礎11および布基礎12の内側に貼着された基礎断熱材14が設けられており、床下の保温性が確保されている。基礎断熱材14は、ビーズ発泡成形により成形された発泡ポリエチレン等の発泡樹脂で形成されている。
【0023】
ユニット設置場所には、浴室ユニット20が設置又は組み付けられている。浴室ユニット20は、化粧パネル21で囲まれた空間内にバスタブ22、洗い場床23、換気扇(図示せず)等をユニット化した工業生産部品である。また、床下には、洗い場床23に接続された配管24や、バスタブ22に接続された配管25が配置されている。バスタブ22の配管25は、洗い場床23に接続された配管24に接続されており、配管24の下流側が接続管に接続されて布基礎12を貫通している。
【0024】
図2及び
図3を参照して、布基礎12のうち、屋内に面している部分には、人通口が形成されている。人通口は、布基礎12に形成された開口15と、開口15と連通するように基礎断熱材14に形成された出口16と、開口15に装着される枠体30が枠取る入口31(
図2〜
図6参照)とによって形成される。
【0025】
枠体30は、金属製または樹脂製品である。本実施形態では、枠体30を基礎断熱材14と同様の発泡樹脂で形成し、開口15の周囲の断熱性を保持するようにしている。枠体30が枠取る入口31は、蓋体40によって、開閉されるようになっている。
【0026】
図1の実施形態に係る断熱床下用人通口31の施工方法としては、布基礎12の打設時に開口15を形成する形成工程と、打設された布基礎12の床下空間側に基礎断熱材14を固定する固定工程と、布基礎12の開口15に枠体30を装着する装着工程とが実行される。
【0027】
布基礎12の開口15は、布基礎12の打設時に、図略のセパレータを設置してコンクリートを流し込む(形成工程)ことにより、施工される。本実施形態において、開口15は、間口W1が高さhよりも若干長い四角形に形成されている(
図3参照)。
【0028】
また、基礎断熱材14は、布基礎12の打設後に貼着される(固定工程)。本実施形態における固定工程においては、開口15を開放する出口16が形成される。この出口16は、開口15に対向する部位を除いて基礎断熱材14を貼着することにより形成されている。出口16の両側縁部分は、それぞれ延長部17を形成している。延長部17は、例えば、左右対称に開口15の両側から開口15の側方に突出している。この結果、延長部17は、後述する枠体30の入口31を開くことのできる状態で開口15に臨み、当該開口15を通して枠体30の背面(床下側。以下、同様。)に対向する。また、延長部17が設けられていることにより、
図3に示すように、出口16の間口W2は、開口15の間口W1に対して、若干短く設定されている。
【0029】
枠体30は、開口15の間口W1に収まる幅W3に設定され、開口15とほぼ同一寸法の高さの外寸を有する長方形の枠材である。ここで、幅W3は、開口15の間口W1よりも小さく、出口16の間口W2よりも大きい寸法に設定されている。そのため、
図3に示すように、延長部17の正面(床下の反対側。以下、同様。)部分が、それぞれ(W3−W2)/2の長さの接合代Lで枠体30の背面と接合することができる。この結果、予め開口15の間口W1よりも短い幅W3を有する枠体30を用意し、接着剤などで出口16を形成する延長部17の正面に枠体30の裏面を貼着する(装着工程)ことができる。これにより、高い断熱性を保持しつつ簡単に枠体30を布基礎12に固定し、装着することができる。
【0030】
次に、枠体30及び蓋体40の具体的な構造について説明する。
【0031】
まず、
図3に示すように、枠体30の入口31は、枠体30の中央部分に形成された長方形を呈しており、その間口W4は、高さh1よりも長く設定されている。ここで、入口31の間口W4は、人間が這って出入りするために必要充分な長さを有している一方、出口16の間口W2よりも短く設定されている。すなわち、開口15の間口W1と、出口16の間口W2と、枠体30の幅W3と、入口31の間口W4の関係は、
W1>W3>W2>W4 (1)
となっている。このように、開口15の間口W1、出口16の間口W2は、(1)式の大小関係を維持しつつ、入口31が充分な間口W4を確保できる寸法に設定されている。このため、入口31が開放されているときには、何の障害もなく、人や機材を出入りさせることができる。
【0032】
図4を参照して、枠体30の上側の内縁には、枠体30の幅方向に沿って正面側が切り欠かれた上溝32が形成されている。上溝32は、入口31と連通し、且つ入口31と枠体30の正面との間に矩形の段差を形成している。枠体30の下側の内縁には、枠体30の幅方向に沿って背面側が切り欠かれた下溝33が形成されている。下溝33は、入口31と連通し、且つ入口31と枠体30の背面との間に矩形の段差を形成している。さらに枠体30の両側部には、上下方向に沿って正面側が僅かに窪む段差部34が形成されている(
図3に片方のみ図示)。段差部34は、入口31と連続し、且つ入口31と枠体30の正面との間に矩形の段差を形成している。
【0033】
枠体30の入口31を開閉するために、本実施形態では、蓋体40が設けられる。蓋体40は、基礎断熱材14と同様の発泡樹脂で形成された板状の部材である。
【0034】
図2、
図3、
図5を参照して、蓋体40は、枠体30の正面側開口部分(入口31並びに上溝32および両側部の段差部34全体の輪郭)に適合して嵌合する長方形の正面板部41と、正面板部41の背面に延設され、枠体30への嵌合時に入口31の内側壁に接合する外寸を有する長方形の閉塞板部42と、正面板部41の略中央部分に取り付けられた取っ手43を有する。正面板部41の上縁は、断面が四角形に形成され、正面板部41の幅方向全長にわたって延びる上実44を構成している。また、閉塞板部42の下面は、正面板部41の下面と面一になっている一方、閉塞板部42の下辺の背面寄り部分には、断面が四角形に形成され、正面板部41の幅方向全長にわたって正面板部41よりも下側に延設された下実45が形成されている。
【0035】
図5及び
図6に示すように、枠体30の各溝32、33と、蓋体40の実44、45とは、あいじゃくり構造を構成する。枠体30に蓋体40を嵌合する際には、まず、下側が床下の方へ傾斜するように蓋体40を若干斜めに傾斜させ、矢印A1で示すように、下溝33内に下実45を嵌め込む。次いで、矢印A2で示すように、蓋体40を起立させる。これにより、枠体30の各溝32、33と、蓋体40の実44、45とがあいじゃくり状に嵌合し、高い断熱性を維持した状態で入口31が閉塞される。また、取っ手43を把持し、上側から外れるように上記と逆向きに蓋体40を倒すことにより、蓋体40は、入口31から外れ、入口31を開放する。
【0036】
以上説明したように本実施形態によれば、布基礎12に枠体30を取り付け、枠体30に蓋体40を着脱自在に嵌合することにより、人通口の入口31を開閉することができる。従って、従来の構成と同様に、蓋体40を枠体30に装着しているときは断熱性を保持することができる一方、蓋体40を枠体30から取り外した際には、人通口の入口31を開き、この入口31を通して床下のメンテナンス作業等を行うことができる。ここで、本実施形態では、上記形成工程により、予め布基礎12に開口15が形成されているので、布基礎12のコンクリート打設時に人通口の入口31を枠取る枠体30を布基礎12に嵌め込むための施工が不要となる。しかも、布基礎12に既設された開口15には、上記固定工程によって、基礎断熱材14の延長部17が臨んでいる。従って、装着工程において、枠体30を開口15に装着する際には、この延長部17に枠体30の背面を接合させることにより、施工することができる。この結果、枠体30の装着作業が格段に容易になる。加えて、枠体30の背面を延長部17に接合させるので、枠体30と布基礎12の開口15との間に隙間が形成されていたとしても、枠体30と延長部17との間の高い断熱性を保持することができる。
【0037】
また、本実施形態では、延長部17の出口16の間口W2は、枠体30が枠取る入口31の開口15以上に設定されている。このため本実施形態では、入口31が開放された際、延長部17のはみ出しがなくなり、通行がスムーズになる。しかも、枠体30と延長部17とを接合することにより、両者間の高い断熱性が確保されているので、枠体30と布基礎12の開口15との間に隙間が形成されていても、依然、高い断熱性を保持することが可能となる。
【0038】
また、本実施形態では、蓋体40は、幅方向が長い長方形に形成されており、蓋体40の下側の長辺には、背面側に寄せられて下方に突出する下実45が形成されているとともに、蓋体40の上側の長辺には、正面側に寄せられて上方に突出する上実44が形成されており、枠体30には、下実45及び上実44と適合した溝として、下溝33、上溝32がそれぞれ形成されている。このため本実施形態では、枠体30と蓋体40とがあいじゃくり構造を構成するので、蓋体40の装着時には、枠体30と蓋体40との断熱性を一層確実に確保することができる。しかも、下実45が背面側に寄せられて形成されている一方、上実44が正面側に寄せられて形成されているので、
図5及び
図6に示しているように、装着時に荷重のかかりやすい下実45を回動軸にして押し込み操作を行い、嵌合作業を行うことができるので、作業性が向上する。
【0039】
また、本実施形態では、枠体30は、発泡樹脂製品である。このため本実施形態では、枠体30自身が高い断熱性能を発揮するとともに、加工が容易になるので、布基礎12の開口15に枠体30を装着する際に枠体30の外縁を切除する必要等が生じた場合においても、その加工が容易になる。
【0040】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることはいうまでもない。
【0041】
例えば、
図8及び
図9に示すように、枠体30は、蓋体40の横側に延びる袖壁部50を有するものであってもよい。
【0042】
図8及び
図9に示すように、布基礎12に床下内の配管を貫通する工事は、既設の布基礎12に穿孔する必要があったので、作業に手間がかかるという問題があった。また、施工後に配管を貫通させる必要が生じる場合も考えられる。
【0043】
そのため、本実施形態では、発泡樹脂製品からなる枠体30に袖壁部50を延設し、この袖壁部50に配管を貫通させる構成を採用している。
【0044】
袖壁部50は、幅方向一端側に設けられ、入口31と左右に並んでいる。袖壁部50は、予め布基礎12に形成された開口15内に嵌め込まれて、その背後にある基礎断熱材14に接合し、接着されている。
図8及び
図9においても、開口15の間口W1と、出口16の間口W2と、枠体30の幅W3と、入口31の間口W4の関係は、
図1の実施形態と同様に、(1)式の関係に維持されているが、
図8及び
図9の構成では、袖壁部50と対向する延長部17の幅方向の接合代L2が反対側の延長部17の接合代L1よりも大幅に長く設定されることから、枠体30と基礎断熱材14とのシール性が大幅に高くなり、きわめて高い断熱性を得ることができる。また、袖壁部50が形成されている部位は、発泡樹脂で形成されていることから、配管作業時の加工をきわめて容易に行うことができる。
【0045】
また、入口の形状は、長方形に限らず、例えば、円形であってもよい。断熱床下構造10は、浴室のユニット設置場所を例に説明したが、これに限らず、例えば、厳格な温度管理が必要とする作業室や、寒冷地の住居スペースの床下に適用してもよい。
【0046】
また、開口15の間口W1と、出口16の間口W2と、枠体30の幅W3と、入口31の間口W4の関係は、(1)式が最も好適であるが、これに限らず、例えば、出口16の間口W2と入口31の間口W4とを同じ寸法に設定してもよい。
【0047】
また、人通口が形成される基礎は、断熱床下の床下空間の内外を連通するものであればよく、布基礎に限定されない。
【符号の説明】
【0048】
10 断熱床下構造
12 布基礎(基礎の一例)
14 基礎断熱材
15 開口(人通口の一部)
16 出口
17 延長部
20 浴室ユニット
30 枠体
31 入口
32 上溝
33 下溝
40 蓋体
44 上実
45 下実
h 高さ
h1 高さ
L、L1、L2 接合代
W1 開口の間口
W2 出口の間口
W3 枠体の幅
W4 入口の間口