特許第6449072号(P6449072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6449072
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】車両用ブレーキ液圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/1761 20060101AFI20181220BHJP
   B60T 8/26 20060101ALI20181220BHJP
   B60T 8/58 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
   B60T8/1761
   B60T8/26 H
   B60T8/58
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-62388(P2015-62388)
(22)【出願日】2015年3月25日
(65)【公開番号】特開2016-179791(P2016-179791A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2018年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】315019735
【氏名又は名称】ヴィオニア日信ブレーキシステムジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】小林 正史
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−297805(JP,A)
【文献】 特開2014−210497(JP,A)
【文献】 特開2001−191907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/1761
B60T 8/26
B60T 8/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧源から複数の車輪ブレーキへの液圧路に介装された常開型比例電磁弁である入口弁と、前記入口弁を制御する制御部とを有する車両用ブレーキ液圧制御装置であって、
前記制御部は、
アンチロックブレーキ制御を実行するアンチロックブレーキ制御手段と、
前後輪の制動力を適切な配分に制御する前後輪制動力配分制御を実行可能であり、前記前後輪制動力配分制御の開始時において、後輪に対応した入口弁に、後輪のホイールシリンダ圧を保持可能な駆動電流を供給した後、駆動電流を減少させることで後輪のホイールシリンダ圧を増圧させる制動力配分制御手段と、
車体減速度から、後輪のアンチロックブレーキ制御開始時における後輪のホイールシリンダ圧であるロック圧を推定するロック圧推定手段と、
後輪のアンチロックブレーキ制御開始時の前記入口弁の駆動電流から、当該入口弁の上下流の差圧を推定する差圧推定手段と、
前記ロック圧と前記差圧とから、前記入口弁の上流液圧を推定する上流液圧推定手段と、を備えたことを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項2】
前記制動力配分制御手段は、前輪のアンチロックブレーキ制御が開始された場合に、駆動電流を減少させることを特徴とする請求項1に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項3】
前記制動力配分制御手段は、前輪のアンチロックブレーキ制御が開始される前に、駆動電流を減少させることを特徴とする請求項1に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項4】
前記ロック圧推定手段は、前記車体減速度と前記ロック圧とを対応付けたマップを用いて、前記ロック圧を推定することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項5】
前記差圧推定手段は、前記駆動電流と前記差圧とを対応付けたマップを用いて、前記差圧を推定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ブレーキ液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンチロックブレーキ制御(以下、ABS制御ともいう。)を実行可能な車両用ブレーキ液圧制御装置として、上下流の差圧を調整可能な常開型比例電磁弁を入口弁として採用したものが知られている(特許文献1参照)。この構成では、ABS制御における増圧制御において、圧力センサで検出したマスタシリンダ圧(入口弁の上流液圧)に基づいて駆動電流の大きさを設定することで、入口弁の開弁量を調整して増圧制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−23468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来技術のようにマスタシリンダ圧を検出する圧力センサを設ける場合には、コストが高くなるといった問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、高価な圧力センサを用いることなく、入口弁の上流液圧を推定することで、コスト削減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る車両用ブレーキ液圧制御装置は、液圧源から複数の車輪ブレーキへの液圧路に介装された常開型比例電磁弁である入口弁と、前記入口弁を制御する制御部とを有する。
前記制御部は、アンチロックブレーキ制御を実行するアンチロックブレーキ制御手段と、前後輪の制動力を適切な配分に制御する前後輪制動力配分制御を実行可能であり、前記前後輪制動力配分制御の開始時において、後輪に対応した入口弁に、後輪のホイールシリンダ圧を保持可能な駆動電流を供給した後、駆動電流を減少させることで後輪のホイールシリンダ圧を増圧させる制動力配分制御手段と、車体減速度から、後輪のアンチロックブレーキ制御開始時における後輪のホイールシリンダ圧であるロック圧を推定するロック圧推定手段と、後輪のアンチロックブレーキ制御開始時の前記入口弁の駆動電流から、当該入口弁の上下流の差圧を推定する差圧推定手段と、前記ロック圧と前記差圧とから、前記入口弁の上流液圧を推定する上流液圧推定手段と、を備える。
【0007】
この構成によれば、車体減速度から推定したロック圧と、アンチロックブレーキ制御開始時の駆動電流から推定した差圧とに基づいて、上流液圧を推定する。そのため、高価な圧力センサを用いることなく、上流液圧を推定することができ、コスト削減を図ることができる。また、後輪について入口弁の駆動電流を減少させる増圧制御を早期に開始することで、早期にロック圧と差圧を取得して上流液圧を推定することができるので、前輪のアンチロックブレーキ制御の精度を向上させることができる。
【0008】
また、前記した構成において、前記制動力配分制御手段は、前輪のアンチロックブレーキ制御が開始された場合に、駆動電流を減少させるように構成することができる。
【0009】
これによれば、例えば前輪のアンチロックブレーキ制御が開始された時点から所定時間後に駆動電流を減少させる構成と比べ、上流液圧を推定するための駆動電流を早期に取得することができるので、上流液圧を早期に推定することができる。
【0010】
また、前記した構成において、前記制動力配分制御手段は、前輪のアンチロックブレーキ制御が開始される前に、駆動電流を減少させるように構成することができる。
【0011】
これによれば、例えば前輪のアンチロックブレーキ制御が開始された時点で駆動電流を減少させる構成と比べ、上流液圧を推定するための駆動電流を早期に取得することができるので、上流液圧を早期に推定することができる。
【0012】
また、前記した構成において、前記ロック圧推定手段は、前記車体減速度と前記ロック圧とを対応付けたマップを用いて、前記ロック圧を推定するように構成することができる。
【0013】
これによれば、車体減速度とロック圧とを対応付けたマップを、実験やシミュレーション等によって予め設定しておくことで、車体減速度からロック圧を容易に推定することができる。
【0014】
また、前記した構成において、前記差圧推定手段は、前記駆動電流と前記差圧とを対応付けたマップを用いて、前記差圧を推定するように構成することができる。
【0015】
これによれば、駆動電流と差圧とを対応付けたマップを、実験やシミュレーション等によって予め設定しておくことで、駆動電流から差圧を容易に推定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高価な圧力センサを用いることなく、入口弁の上流液圧を推定することができるので、コスト削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置を備えた車両の構成図である。
図2】液圧ユニットの構成を示す構成図である。
図3】制御部の構成を示すブロック図である。
図4】制御部の動作の一部を示すフローチャートである。
図5】制御部の残りの動作を示すフローチャートである。
図6】後輪についてEBD制御が実行され、前輪についてABS制御が実行された場合における、各車輪に対応した各パラメータを比較したタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、車両用ブレーキ液圧制御装置1は、車両2の各車輪3に付与する制動力を適宜制御する装置である。車両用ブレーキ液圧制御装置1は、油路や各種部品が設けられる液圧ユニット10と、液圧ユニット10内の各種部品を適宜制御するための制御部100とを主に備えている。
【0019】
各車輪3には、それぞれ車輪ブレーキFL,RR,RL,FRが備えられ、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRには、液圧源としてのマスタシリンダ5から供給される液圧により制動力を発生するホイールシリンダ4が備えられている。マスタシリンダ5とホイールシリンダ4とは、それぞれ液圧ユニット10に接続されている。そして、ブレーキペダル6の踏力(運転者の制動操作)に応じてマスタシリンダ5で発生したブレーキ液圧が、制御部100および液圧ユニット10で制御された上でホイールシリンダ4に供給される。
【0020】
制御部100には、各車輪3の車輪速度を検出する車輪速センサ91が接続されている。そして、この制御部100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)および入出力回路を備えており、車輪速センサ91などからの入力と、ROMに記憶されたプログラムやデータに基づいて各種演算処理を行うことによって、制御を実行する。なお、制御部100の詳細は、後述することとする。
【0021】
図2に示すように、液圧ユニット10は、運転者がブレーキペダル6に加える踏力に応じたブレーキ液圧を発生する液圧源であるマスタシリンダ5と、車輪ブレーキFR,FL,RR,RLとの間に配置されている。
【0022】
液圧ユニット10は、ブレーキ液が流通する油路(液圧路)を有する基体であるポンプボディ11に油路と各種の電磁バルブが配置されることで構成されている。マスタシリンダ5の出力ポート5a,5bは、ポンプボディ11の入力ポート11aに接続され、ポンプボディ11の出力ポート11bは、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRに接続されている。そして、通常時はポンプボディ11内の入力ポート11aから出力ポート11bまでが連通した油路となっていることで、ブレーキペダル6の踏力が各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRに伝達されるようになっている。なお、マスタシリンダ5の出力ポート5aに接続された液圧系統は、車輪ブレーキFL,RRに接続され、マスタシリンダ5の出力ポート5bに接続された液圧系統は、車輪ブレーキRL,FRに接続され、これらの各系統は、略同様の構成を有している。
【0023】
各液圧系統には、入力ポート11aと出力ポート11bを繋ぐ液圧路上に、供給する電流に応じてその上下流の液圧の差を調整可能な常開型比例電磁弁である調圧弁12が設けられている。調圧弁12には、並列して、出力ポート11b側へのみの流れを許容するチェック弁12aが設けられている。
【0024】
調圧弁12よりも車輪ブレーキRL,FR,RL,FR側の液圧路は途中で分岐して、それぞれが出力ポート11bに接続されている。そして、各出力ポート11bに対応する各液圧路上には、それぞれ常開型比例電磁弁である入口弁13が配設されている。各入口弁13には、並列して、調圧弁12側へのみの流れを許容するチェック弁13aが設けられている。
【0025】
各出力ポート11bとこれに対応する入口弁13との間の液圧路からは、それぞれ、常閉型電磁弁からなる出口弁14を介して調圧弁12と入口弁13の間に繋がる還流液圧路19Bが設けられている。
【0026】
この還流液圧路19B上には、出口弁14側から順に、過剰なブレーキ液を一時的に吸収するリザーバ16、チェック弁16a、ポンプ17およびオリフィス17aが配設されている。チェック弁16aは、調圧弁12と入口弁13の間へ向けての流れのみを許容するように配置されている。ポンプ17は、モータ21により駆動され、調圧弁12と入口弁13の間へ向けての圧力を発生するように設けられている。オリフィス17aは、ポンプ17から吐出されたブレーキ液の圧力の脈動および調圧弁12が作動することにより発生する脈動を減衰させている。
【0027】
入力ポート11aと調圧弁12を繋ぐ導入液圧路19Aと、還流液圧路19Bにおけるチェック弁16aとポンプ17の間の部分とは、吸入液圧路19Cにより接続されている。そして、吸入液圧路19Cには、常閉型電磁弁である吸入弁15が配設されている。
【0028】
以上のような構成の液圧ユニット10は、通常時には、各電磁弁に通電がなされず、入力ポート11aから導入されたブレーキ液圧は、調圧弁12、入口弁13を通って出力ポート11bに出力され、各ホイールシリンダ4にそのまま付与される。そして、アンチロックブレーキ制御を行う場合など、ホイールシリンダ4の過剰なブレーキ液圧を減圧する場合には、対応する入口弁13を閉じ、出口弁14を開くことで還流液圧路19Bを通してブレーキ液をリザーバ16へと流し、ホイールシリンダ4のブレーキ液を抜くことができる。また、運転者のブレーキペダル6の操作が無い場合にホイールシリンダ4の加圧を行う場合には、吸入弁15を開き、モータ21を駆動することで、ポンプ17の加圧力により積極的にホイールシリンダ4へブレーキ液を供給することができる。さらに、ホイールシリンダ4の加圧の程度を調整したい場合には、調圧弁12に流す電流を調整することで調整することができる。
【0029】
次に、制御部100の詳細について説明する。
図3に示すように、制御部100は、車輪速度取得手段110と、車体減速度算出手段120と、ロック圧推定手段130と、上流液圧推定手段140と、アンチロックブレーキ制御手段150と、制動力配分制御手段160と、制御実行手段170と、差圧推定手段180と、記憶手段190とを備えている。
【0030】
車輪速度取得手段110は、各車輪速センサ91から各車輪3の車輪速度を取得する手段である。車輪速度取得手段110は、各車輪3の車輪速度を取得すると、取得した各車輪速度を車体減速度算出手段120に出力する。
【0031】
車体減速度算出手段120は、各車輪3の車輪速度に基づいて、各車輪3の車体減速度を算出する機能を有している。詳しくは、車体減速度算出手段120は、いずれの車輪3もABS制御が実行されていないと判定した場合には、車輪速度の前回値と今回値との差を、車体減速度として算出する。
【0032】
また、車体減速度算出手段120は、アンチロックブレーキ制御手段150から出力されてくる信号に基づいて、所定の車輪3について、ABS制御が実行されており、かつ、ABS制御の増圧制御開始時の車輪速度を2回以上取得したと判定した場合に、直近に取得した2つの増圧制御開始時の車輪速度の差を、車体減速度として算出する。つまり、車体減速度算出手段120は、ABS制御が行われている所定の車輪3の車輪減速度を車体減速度として算出する。
【0033】
また、車体減速度算出手段120は、アンチロックブレーキ制御手段150から出力されてくる信号に基づいて、所定の車輪3についてABS制御が実行されていないと判定した場合に、この所定の車輪3の車輪速度の前回値と今回値との差、つまり車輪減速度を、車体減速度として算出する。なお、車体減速度算出手段120は、所定の車輪3以外でABS制御が実行されている車輪3がある場合、ABS制御中の車輪3について、増圧制御開始時の車輪速度が2回以上取得された後は、2つの増圧制御開始時の車輪速度の差から求まる車輪減速度を、ABS制御が実行されていない所定の車輪3の車輪減速度よりも優先して、車体減速度として設定する。
【0034】
そして、車体減速度算出手段120は、いずれの車輪3についても増圧制御開始時の車輪速度が2回以上取得されていない場合には、算出した車体減速度をロック圧推定手段130および上流液圧推定手段140に出力し、いずれかの車輪3について増圧制御開始時の車輪速度が2回以上取得された場合には、算出した車体減速度をロック圧推定手段130に出力する。
【0035】
ロック圧推定手段130は、車体減速度算出手段120から出力されてくる車体減速度に基づいて、ABS制御における増圧制御から減圧制御の切り替え時のホイールシリンダ圧であるロック圧を推定する機能を有している。また、ロック圧推定手段130は、後輪3が後述するEBD制御中である場合には、後輪3についてABS制御が開始されたときに、この開始時のロック圧を、後輪3の車輪速度に基づいて算出した車体減速度から推定する機能を有している。ここで、車体減速度は路面μに比例し、ロック圧も路面μに比例する関係であることから、この関係を利用して、車体減速度からロック圧を推定することができる。詳しくは、ロック圧推定手段130は、車体減速度とロック圧とを対応付けたマップを用いて、ロック圧を推定している。なお、マップは、実験やシミュレーション等によって予め作成しておけばよい。ロック圧推定手段130は、ロック圧を推定すると、推定したロック圧を上流液圧推定手段140に出力する。
【0036】
上流液圧推定手段140は、ABS制御が実行されている場合に、ロック圧推定手段130から出力されてくるロック圧と、後述する差圧推定手段180から出力されてくる差圧とから、入口弁13の上流液圧を推定する機能を有している。詳しくは、上流液圧推定手段140は、ロック圧に差圧を加算することで、上流液圧を推定している。ここで、上流液圧は、ポンプ17や調圧弁12が作動していない状態においては、マスタシリンダ圧と同じ値となっている。
【0037】
また、上流液圧推定手段140は、ABS制御が実行されていない場合には、車体減速度算出手段120から出力されてくる車体減速度に基づいて、上流液圧を推定する。具体的には、上流液圧推定手段140は、例えば、車体減速度と上流液圧とを対応づけたマップに基づいて、上流液圧を推定する。なお、マップは、実験やシミュレーション等によって予め作成しておけばよい。上流液圧推定手段140は、上流液圧を推定すると、推定した上流液圧をアンチロックブレーキ制御手段150と制御実行手段170に出力する。なお、上流液圧推定手段140は、上流液圧の推定を行っていない場合には、上流液圧を前回値に保持している。
【0038】
アンチロックブレーキ制御手段150は、車輪速センサ91で検出される車輪速度と、各車輪速度に基づいて推定される車体速度とに基づいて、ABS制御を実行するか否かを車輪3ごとに判定し、実行すると判定した場合には、ABS制御時の液圧制御の指示(減圧制御、保持制御および増圧制御のいずれにするかの指示)を車輪3ごとに決定する機能を有している。具体的には、例えば、アンチロックブレーキ制御手段150は、車輪速度と車体速度とに基づいて定まるスリップ率が、所定値以上になり、かつ、車輪加速度が0以下であるとき(車輪3の減速中)に車輪3がロックしそうになったと判定して、液圧制御の指示を減圧制御に決定する。ここで、車輪加速度は、例えば車輪速度から算出される。
【0039】
アンチロックブレーキ制御手段150は、車輪加速度が0よりも大きいときに、液圧制御の指示を保持制御に決定する。アンチロックブレーキ制御手段150は、スリップ率が所定値未満となり、かつ、車輪加速度が0以下であるときに、液圧制御の指示を増圧制御に決定する。
【0040】
そして、アンチロックブレーキ制御手段150は、液圧制御の指示を決定すると、その指示を制御実行手段170に出力する。また、アンチロックブレーキ制御手段150は、増圧制御の指示を制御実行手段170に出力する場合には、入口弁13の駆動電流の値を決めるための要求圧も制御実行手段170に出力するようになっている。この要求圧を算出するために、アンチロックブレーキ制御手段150は、下流液圧算出部151と、制御量算出部152と、要求圧算出部153とを備えている。
【0041】
下流液圧算出部151は、上流液圧推定手段140から出力されてくる上流液圧と、入口弁13および出口弁14の制御の履歴とに基づいて、入口弁13の下流液圧、つまりホイールシリンダ圧を算出する機能を有している。下流液圧算出部151は、下流液圧を算出すると、算出した下流液圧を要求圧算出部153に出力する。
【0042】
制御量算出部152は、ABS制御の状態に基づいて、下流液圧の増減量を制御量として算出する機能を有している。制御量算出部152は、制御量を算出すると、算出した制御量を要求圧算出部153に出力する。
【0043】
要求圧算出部153は、下流液圧算出部151から出力されてくる下流液圧と、制御量算出部152から出力されてくる制御量とに基づいて、下流液圧の目標値である要求圧を算出する機能を有している。具体的に、要求圧算出部153は、下流液圧に制御量を加算することで要求圧を算出する。要求圧算出部153は、要求圧を算出すると、算出した要求圧を制御実行手段170に出力する。
【0044】
また、アンチロックブレーキ制御手段150は、各車輪3の少なくとも1つについてABS制御の開始条件が揃った場合には、該当する車輪3についてABS制御を開始したことを示す信号をロック圧推定手段130に出力するように構成されている。
【0045】
制動力配分制御手段160は、前輪3に付与する制動力よりも後輪3に付与する制動力を小さな値に抑える前後輪制動力配分制御(以下、「EBD制御」ともいう。)を、後輪3に対して実行する機能を有している。具体的に、制動力配分制御手段160は、例えば後輪3のスリップ率がEBD制御用の閾値よりも大きくなり、かつ、車輪加速度が0以下であるとき(車輪3の減速中)に、EBD制御を開始する。ここで、EBD制御用の閾値は、例えば、ABS制御の減圧制御におけるスリップ率の閾値よりも小さな値に設定される。
【0046】
制動力配分制御手段160は、EBD制御を開始すると、後輪3に対応した入口弁13に、後輪3のホイールシリンダ圧を保持可能な駆動電流を供給することで、後輪3のホイールシリンダ圧を保持させる。ここで、保持可能な駆動電流は、入口弁13を閉弁可能な電流値であり、例えば最大値に設定される。その後、前輪3についてABS制御が開始されると、制動力配分制御手段160は、駆動電流を徐々に減少させていくことで、後輪3のホイールシリンダ圧を徐々に増圧させる。
【0047】
詳しくは、制動力配分制御手段160は、後輪3のEBD制御を開始してから前輪3のABS制御を開始するまでの間、EBD制御時の後輪3に対する液圧制御の指示を、保持制御に決定し、この指示を制御実行手段170に出力する。また、制動力配分制御手段160は、EBD制御中において前輪3のABS制御を開始したときから、液圧制御の指示を増圧制御に決定し、この指示と、増圧制御に用いる要求圧とを制御実行手段170に出力する。なお、要求圧は、例えば、実験やシミュレーション等により決定された固定値とすることができる。制動力配分制御手段160は、EBD制御中の後輪3についてABS制御が実行された場合に、EBD制御を終了する。
【0048】
制御実行手段170は、アンチロックブレーキ制御手段150または制動力配分制御手段160から出力されてくる液圧制御の指示や要求圧に基づいて、入口弁13および出口弁14等を制御することで、下流液圧を制御する機能を有している。具体的に、制御実行手段170は、液圧制御の指示が減圧制御である場合には、入口弁13および出口弁14に電流を流すことで、入口弁13を閉じ、出口弁14を開けるように制御する。また、制御実行手段170は、液圧制御の指示が保持制御である場合には、入口弁13に電流を流し、出口弁14に電流を流さないことで、入口弁13および出口弁14を両方とも閉じるように制御する。
【0049】
そして、制御実行手段170は、液圧制御の指示が増圧制御である場合には、出口弁14に電流を流さないことで出口弁14を閉じ、入口弁13に要求圧に対応した駆動電流を流すことで、入口弁13の上下流の差圧をコントロールして、下流液圧を意図した増圧レートで増圧するようになっている。このような増圧制御を実現すべく、制御実行手段170は、主に、目標差圧設定手段171と、駆動電流設定手段172とを備えている。さらに、制御実行手段170は、後述する差圧推定手段180での計算に必要な駆動電流を取得するための駆動電流取得手段173を備えている。
【0050】
目標差圧設定手段171は、アンチロックブレーキ制御手段150または制動力配分制御手段160から出力されてくる要求圧と、上流液圧推定手段140から出力されてくる上流液圧とに基づいて、入口弁13の上下流の差圧の目標値である目標差圧を算出して設定する機能を有している。具体的に、目標差圧設定手段171は、上流液圧から要求圧を減算することで、目標差圧を算出する。目標差圧設定手段171は、目標差圧を算出すると、算出した目標差圧を駆動電流設定手段172に出力する。
【0051】
駆動電流設定手段172は、目標差圧設定手段171から出力されてくる目標差圧に基づいて入口弁13を駆動するための駆動電流の値を設定する機能を有している。具体的に、駆動電流設定手段172は、目標差圧と駆動電流とを対応づけたマップに基づいて、駆動電流を設定する。なお、マップは、実験やシミュレーション等によって予め作成しておけばよい。
【0052】
詳しくは、駆動電流設定手段172は、入口弁13が現在の上下流の差圧に対して開き始めることが可能な駆動電流の初期値(目標値)を目標差圧に基づいて設定している。なお、駆動電流の初期値を設定した後は、制御実行手段170は、駆動電流を、初期値から徐々に下げていくように制御する。また、駆動電流設定手段172は、目標値の算出を行わないときには、目標値を前回値に保持する。
【0053】
駆動電流取得手段173は、EBD制御により後輪3についてABS制御が開始されたとき、または、液圧制御の指示が増圧制御から減圧制御に切り替わったときに、そのときの駆動電流(以下、各駆動電流を、「ABS制御開始時の駆動電流」、「切り替え時の駆動電流」ともいう。)を取得する機能を有している。駆動電流取得手段173は、ABS制御開始時の駆動電流または切り替え時の駆動電流を取得すると、取得した駆動電流を差圧推定手段180に出力する。
【0054】
差圧推定手段180は、駆動電流取得手段173から出力されてくるABS制御開始時の駆動電流または切り替え時の駆動電流から、入口弁13の上下流の差圧を推定する機能を有している。具体的に、差圧推定手段180は、駆動電流と差圧とを対応付けたマップを用いて、差圧を推定する。なお、マップは、実験やシミュレーション等によって予め作成しておけばよい。差圧推定手段180は、差圧を推定すると、推定した差圧を上流液圧推定手段140に出力する。
【0055】
記憶手段190は、前述したマップや、車輪速度、車体減速度、上流液圧などの各パラメータなどを記憶している。
【0056】
次に、制御部100の動作について図4に示すフローチャートを参照して詳細に説明する。なお、図4のフローチャートの処理は、各車輪3のそれぞれに対して繰り返し行われている。以下の説明では、処理対象の車輪3を「所定の車輪3」とする。
【0057】
図4に示すように、制御部100は、車輪速センサ91から所定の車輪3の車輪速度を取得した後(S1)、ABS制御中に、当該所定の車輪3についての、増圧開始時の車輪速度を2回以上取得したか否かを判断する(S2)。ステップS2において取得していないと判断した場合には(No)、図5に示すように、制御部100は、所定の車輪3についてABS制御が開始されるタイミングであるか否かを判断する(S11)。
【0058】
ステップS11において所定の車輪3についてABS制御の開始タイミングでないと判断した場合には(No)、制御部100は、所定の車輪3について既にABS制御中であるか否かを判断する(S18)。ステップS18において所定の車輪3についてABS制御中でないと判断した場合には(No)、制御部100は、所定の車輪3についてEBD制御が開始されるタイミングであるか否かを判断する(S20)。なお、ステップS18において所定の車輪3についてABS制御中であると判断した場合には(Yes)、制御部100は、本制御を終了する。
【0059】
ステップS20において所定の車輪3についてEBD制御の開始タイミングであると判断した場合には(Yes)、制御部100は、所定の車輪3、つまり後輪3に対応した入口弁13に対して、ホイールシリンダ圧を保持可能な駆動電流を供給した後(S21)、フラグFを1に設定する(S22)。ステップS20において所定の車輪3についてEBD制御の開始タイミングでないと判断した場合には(No)、制御部100は、所定の車輪3について既にEBD制御中であるか否かを判断する(S19)。ここで、EBD制御は後輪3のみに対して行われるので、このフローチャートにより前輪3を制御している場合には、常にステップS20およびステップS19においてNoと判断される。
【0060】
ステップS19においてEBD制御中ではないと判断した場合には(No)、制御部100は、所定の車輪3の車輪速度に基づいて車体減速度を算出し(S25)、車体減速度とマップに基づいて上流液圧を推定する(S26)。
【0061】
ステップS22の後、または、ステップS19において所定の車輪3についてEBD制御中であると判断した場合には(Yes)、つまり所定の車輪3が後輪であり、後輪についてEBD制御が開始もしくは実行されている場合には、制御部100は、前輪3がABS制御中であるか否かを判断する(S23)。ステップS23において前輪3がABS制御中であると判断した場合には(Yes)、制御部100は、所定の車輪3(後輪)に対応した駆動電流を所定量下げて(S24)、ステップS25の処理に移行する。ステップS23において前輪3がABS制御中でないと判断した場合には(No)、制御部100は、ステップS25の処理に移行する。
【0062】
ステップS11において所定の車輪3についてABS制御が開始されるタイミングであると判断すると(Yes)、制御部100は、フラグFが1であるか否か、つまり後輪3に対応する入口弁13に駆動電流が供給されているか否かを判断する(S12)。ここで、制御対象となる所定の車輪3が前輪3である場合には、ステップS19で常にNoと判断され、フラグFが1に設定されることはないので、ステップS12において常にNoと判断される。
【0063】
ステップS12においてフラグFが1であると判断した場合(Yes)、つまり、後輪3についてEBD制御が実行されることで後輪3についてABS制御が開始された場合には(S11:Yes→S12:Yes)、制御部100は、後輪3についてのABS制御開始時の駆動電流を取得する(S13)。
【0064】
ステップS13の後、制御部100は、ABS制御開始時の駆動電流から入口弁13の上下流の差圧を推定する(S14)。ステップS14の後、制御部100は、後輪3の車輪速度から車体減速度を算出する(S15)。
【0065】
ステップS15の後、制御部100は、車体減速度からロック圧を推定し(S16)、ロック圧と差圧から上流液圧を算出する(S17)。ステップS17,S26の後、または、ステップS12でNoと判断した場合には、制御部100は、図4に示すように、それまでに推定または算出した上流液圧に基づいて駆動電流を設定する(S9)。詳しくは、ステップS9において、制御部100は、上流液圧と、要求圧とに基づいて入口弁13の上下流の差圧の目標差圧を決定した後、当該目標差圧に基づいて駆動電流を設定する。
【0066】
ステップS2において増圧開始時の車輪速度を2回以上取得したと判断した場合には(Yes)、制御部100は、直近に取得した2つの増圧開始時の車輪速度から車体減速度を算出する(S3)。ステップS3の後、制御部100は、車体減速度からロック圧を推定する(S4)。
【0067】
ステップS4の後、制御部100は、ABS制御において増圧制御から減圧制御に切り替わったか否かを判断する(S5)。ステップS5において増圧制御から減圧制御に切り替わったと判断した場合には(Yes)、制御部100は、切り替え時の駆動電流を取得する(S6)。ステップS6の後、制御部100は、切り替え時の駆動電流から入口弁13の上下流の差圧を推定する(S7)。
【0068】
ステップS7の後、制御部100は、ロック圧と差圧から上流液圧を算出する(S8)。ステップS8の後、制御部100は、上流液圧に基づいて駆動電流を設定する(S9)。
【0069】
次に、制御部100による駆動電流の設定方法の一例について、図6を参照して詳細に説明する。なお、図6は、後輪3についてEBD制御が実行された後に前輪3についてABS制御が実行された場合における、各車輪3に対応した各パラメータを比較した図である。図6において、実線で示す各グラフは、前輪3についての車輪速度VF、下流液圧PFおよび入口弁13の駆動電流AFを示し、破線で示す各グラフは、後輪3についての車輪速度VR、下流液圧PRおよび入口弁13の駆動電流ARを示す。
【0070】
図6に示すように、ドライバーがブレーキペダル6を踏むと(時刻t0)、左右の車輪3が徐々に減速していく。この間、制御部100は、ステップS25,S26の処理を実行することで、車輪速度VFまたは車輪速度VRから算出した車体減速度とマップに基づいて上流液圧PM(一点鎖線参照)を推定する。
【0071】
後輪3についてEBD制御の開始条件が揃うと(時刻t11)、制御部100は、後輪3に対応した入口弁13に、ホイールシリンダ圧を保持可能な駆動電流ARを供給することで、後輪3について保持制御を実行する。
【0072】
前輪3についてスリップ率が所定値以上になると(時刻t1)、制御部100は、前輪3についてABS制御を開始する。これにより、前輪3において、入口弁13に駆動電流AFが供給されて入口弁13が閉じるとともに、出口弁14に電流が供給されて出口弁が開放されることで、前輪3に対応した下流液圧PFが減圧されていく。なお、この際、入口弁13に供給する駆動電流AFは、入口弁13を閉弁可能な電流値であり、例えば最大値に設定される。
【0073】
また、この際、制御部100は、後輪3に対応した駆動電流ARを徐々に下げていく。このように後輪3側の駆動電流ARを徐々に下げていく際において、制御部100は、S25,S26の処理を実行することで、後輪3の車輪速度VR(例えばVR1,VR2)に基づいて車体減速度を算出した後、当該車体減速度とマップに基づいて上流液圧PMを推定する。徐々に下がっていく駆動電流ARが、まだ入口弁13を開放可能な電流値にならない間は、入口弁13が閉じられるため、後輪3側の下流液圧PRは保持される。
【0074】
徐々に下がっていく駆動電流ARが、入口弁13を開放可能な電流になると(時刻t2)、入口弁13が開いて、後輪3側の下流液圧PRが増圧される。この増圧により後輪3のスリップ率が所定値以上になると(時刻t3)、制御部100は、後輪3についてABS制御を開始して、EBD制御を終了する。
【0075】
この際、制御部100は、ステップS13の処理を実行することで、ABS制御開始時の駆動電流AR1を取得する。また、制御部100は、ステップS14〜S17の処理を実行することで、駆動電流AR1から差圧を推定した後、後輪3の車輪速度(例えば車輪速度VR1,VR2)から算出した車体減速度に基づいてロック圧を推定し、ロック圧と差圧から、時刻t3における上流液圧PMを算出する。なお、このときのロック圧は、前述した車輪速度VR1,VR2に限らず、後輪3についてEBD制御が開始されてから後輪3についてABS制御が開始されるまでの間における、後輪の車輪速度VRから適宜推定することができる。
【0076】
このようにロック圧と差圧から上流液圧PMを算出した後、時刻t4で、前輪3について増圧条件が揃うと、制御部100は、ステップS9の処理を実行することで、この上流液圧PMに基づいて前輪3側の駆動電流AFを所定の目標値AF1に設定する(時刻t4)。制御部100は、設定した目標値AF1まで駆動電流AFを下げることで、前輪3側の入口弁13を開放させて増圧制御を開始させる。
【0077】
その後、制御部100は、前輪3について増圧開始時の車輪速度VFが2回以上取得されるまでの間、S2:No→S11:No→S18:Yesの流れで処理を行うことで、ステップS17で設定した上流液圧PMと、ステップS9で設定した駆動電流の目標値AF1を保持し続ける。そのため、前輪3について、ABS制御を開始してから最初に行う2回の増圧制御においては、駆動電流AFが目標値AF1に設定されて、増圧制御が実行される(時刻t4,t5)。なお、制御部100は、このような2回の増圧制御の開始時において、ステップS1の処理を実行することで、増圧開始時の車輪速度VF1,VF2を取得する(時刻t4,t5)。
【0078】
前輪3について増圧開始時の車輪速度VF1,VF2が2つ取得されると(時刻t5)、制御部100は、ステップS2〜S4の処理を実行することで、取得した2つの車輪速度VF1,VF2から車体減速度を算出し、当該車体減速度からロック圧を推定する。その後、前輪3について増圧制御から減圧制御に切り替わった場合には(時刻t6)、制御部100は、ステップS5,S6の処理を実行することで、切り替わり時の駆動電流AF2を取得する。
【0079】
また、制御部100は、ステップS7,S8の処理を実行することで、駆動電流AF2から差圧を推定した後、ロック圧と差圧から、時刻t6における上流液圧PMを算出する。制御部100は、上流液圧PMを算出した後、当該上流液圧PMとABS制御の要求圧とに基づいて駆動電流AFの目標値AF3を設定する。その後、前輪3について増圧条件が揃うと(時刻t7)、制御部100は、駆動電流AFを目標値AF3に基づいて制御して、増圧制御を開始する。
【0080】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
車体減速度から推定したロック圧と、ABS制御開始時の駆動電流から推定した差圧とに基づいて、上流液圧PMを推定するので、高価な圧力センサを用いることなく、上流液圧PMを推定することができ、コスト削減を図ることができる。また、後輪3について入口弁13の駆動電流ARを減少させる増圧制御を早期に開始することで、後輪3に対応した駆動電流ARから早期に差圧を推定でき、結果として、早期にロック圧と差圧を取得して上流液圧PMを推定することができるので、前輪3のABS制御の精度を向上させることができる。
【0081】
制動力配分制御手段160が前輪3のABS制御が開始された時点で後輪3側の駆動電流ARを減少させるので、例えば前輪のABS制御が開始された時点から所定時間後に後輪側の駆動電流を減少させる構成と比べ、上流液圧PMを推定するための駆動電流AR1を早期に取得することができ、上流液圧PMを早期に推定することができる。
【0082】
車体減速度とロック圧とを対応付けたマップに基づいてロック圧を推定するので、車体減速度からロック圧を容易に推定することができる。
【0083】
駆動電流と差圧とを対応付けたマップに基づいて差圧を推定するので、駆動電流から差圧を容易に推定することができる。
【0084】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
【0085】
前記実施形態では、前輪3のABS制御が開始された時点で後輪3側の駆動電流ARの減少を開始したが、本発明はこれに限定されず、例えば前輪のABS制御が開始される前に後輪側の駆動電流の減少を開始してもよい。これによれば、前記実施形態よりも、上流液圧を推定するための駆動電流を早期に取得することができるので、上流液圧を早期に推定することができる。
【0086】
前記実施形態では、入口弁13の上下流の差圧やロック圧を、マップを用いて算出したが、本発明はこれに限定されず、例えば計算式などによって算出してもよい。
【符号の説明】
【0087】
13 入口弁
100 制御部
130 ロック圧推定手段
140 上流液圧推定手段
150 アンチロックブレーキ制御手段
160 制動力配分制御手段
180 差圧推定手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6