(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6449079
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】建築物
(51)【国際特許分類】
E02D 27/00 20060101AFI20181220BHJP
E02D 27/12 20060101ALI20181220BHJP
E02D 5/34 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
E02D27/00 C
E02D27/12 Z
E02D5/34 A
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-66834(P2015-66834)
(22)【出願日】2015年3月27日
(65)【公開番号】特開2016-186184(P2016-186184A)
(43)【公開日】2016年10月27日
【審査請求日】2017年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(72)【発明者】
【氏名】甲田 輝久
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰
(72)【発明者】
【氏名】西成田 由
(72)【発明者】
【氏名】平野 秀和
(72)【発明者】
【氏名】平田 裕一
(72)【発明者】
【氏名】田野 健治
(72)【発明者】
【氏名】小田 稔
(72)【発明者】
【氏名】貫洞 覚
(72)【発明者】
【氏名】中野 翔太
(72)【発明者】
【氏名】高橋 絵里
【審査官】
石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−293350(JP,A)
【文献】
特開2013−002070(JP,A)
【文献】
特開2010−065422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00
E02D 27/12
E02D 5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設されてなると共に略円柱状で鉄筋コンクリート製の複数の基礎杭と、該複数の基礎杭の上端に接合される鉄筋コンクリート製の基礎梁と、を備えた建築物において、
該基礎梁の長手方向を“梁長手方向”とし、該基礎梁の幅方向を“梁幅方向”とした場合に、
前記基礎杭には複数の杭主筋が略円周状に配列されて埋設され、
鉛直方向に延設された状態で該梁長手方向に沿って並設された複数の第1接合筋と、鉛直方向に延設された状態で該梁幅方向に沿って並設された複数の第2接合筋とが、前記基礎杭と前記基礎梁とを接続するように少なくともそれらの境界部分に埋設されており、
前記複数の第1接合筋のうち、梁長手方向両端にある第1接合筋は、それぞれ前記杭主筋の配置位置にまで達しており、
前記複数の第2接合筋のうち、梁幅方向両端にある第2接合筋は、それぞれ前記杭主筋の配置位置にまで達している、
ことを特徴とする建築物。
【請求項2】
前記複数の第1接合筋は前記梁長手方向に沿って略等間隔に配置され、前記複数の第2接合筋は前記梁幅方向に沿って略等間隔に配置された、
ことを特徴とする請求項1に記載の建築物。
【請求項3】
前記複数の第1接合筋は少なくとも2列に配列されると共に、前記複数の第2接合筋も少なくとも2列に配列され、
該2列に配列された第1接合筋と該2列に配列された第2接合筋は略矩形状に配列された、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の建築物。
【請求項4】
前記複数の杭主筋の少なくとも一部は、前記第1及び第2接合筋よりも細い鉄筋である、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の建築物。
【請求項5】
前記複数の杭主筋を“埋設杭主筋”とし、該埋設杭主筋の内の一部の杭主筋であって前記基礎杭の側から前記基礎梁の側に突設される該杭主筋を“突設杭主筋”とした場合に、
該突設杭主筋どうしの間隔が前記埋設杭主筋どうしの間隔よりも広くなるように、該突設杭主筋の総数が前記埋設杭主筋の総数よりも少なく設定された、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の建築物。
【請求項6】
前記突設杭主筋は、前記第1及び第2接合筋よりも細い鉄筋である、
ことを特徴とする請求項5に記載の建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設されてなる複数の鉄筋コンクリート製の基礎杭と、該複数の基礎杭の上端に接合される鉄筋コンクリート製の基礎梁と、を備えた建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基礎杭等を備えた建築物については種々の構造のものが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
図5(a)は、杭主筋の配列構造の従来例を示す模式図であり、同図(b)は、該杭主筋と梁主筋の相対位置関係を示す模式図である。これらの図中の符号102は、地中に埋設されてなる鉄筋コンクリート製の基礎杭を示し、符号Dは、該基礎杭102に埋設されてなる杭主筋を示し、符号Eは、基礎梁(不図示)に埋設されてなる梁主筋を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−37492号公報
【特許文献2】特許第3448725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記基礎杭102側の杭主筋Dは、
図5(a)に例示するように前記基礎杭102の外周面に沿うように円周状に配列されているため、前記杭主筋D,Dの離間間隔(つまり、隣接する2本の杭主筋D,Dについての前記長手方向xの間隔や、前記幅方向yの間隔)は一定ではなく、杭芯から端部に行くほど狭くなっていた。したがって、前記梁主筋Eが、同図(b)に例示するように該基礎梁の長手方向x(又は幅方向y)に少しでもずれてしまうと、前記杭主筋Dに干渉してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上述の問題を解消することのできる建築物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、
図1に例示するものであって、地中に埋設されてなると共に略円柱状で鉄筋コンクリート製の複数の基礎杭(2)と、該複数の基礎杭(2)の上端に接合される鉄筋コンクリート製の基礎梁(3)と、を備えた建築物(1)において、
該基礎梁(3)の長手方向(x)を“梁長手方向”とし、該基礎梁(3)の幅方向(
図2(a)(b)及び
図3(a)(b)の符号y参照)を“梁幅方向”とした場合に、
前記基礎杭(2)には複数の杭主筋(D,…)が略円周状に配列されて埋設され、
鉛直方向に延設された状態で該梁長手方向(x)に沿って並設された複数の第1接合筋(
図2(a)(b)及び
図3(a)(b)の符号Bx
11,…,Bx
21,…参照)と、鉛直方向に延設された状態で該梁幅方向(y)に沿って並設された複数の第2接合筋(
図2(a)(b)及び
図3(a)(b)の符号By
11,…,By
21,…参照)とが、前記基礎杭(2)と前記基礎梁(3)とを接続するように少なくともそれらの境界部分(
図1の符号C参照)に埋設されて
おり、
前記複数の第1接合筋(Bx11,…,Bx21,…)のうち、梁長手方向両端にある第1接合筋は、それぞれ前記杭主筋の配置位置にまで達しており、
前記複数の第2接合筋(By11,…,By21,…)のうち、梁幅方向両端にある第2接合筋は、それぞれ前記杭主筋の配置位置にまで達している、
ことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記複数の第1接合筋(Bx
11,…,Bx
21,…)が前記梁長手方向(x)に沿って略等間隔に配置され、前記複数の第2接合筋(By
11,…,By
21,…)は前記梁幅方向(y)に沿って略等間隔に配置されたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、前記複数の第1接合筋(Bx
11,…,Bx
21,…)が少なくとも2列に配列されると共に、前記複数の第2接合筋(By
11,…,By
21,…)も少なくとも2列に配列され、
該2列に配列された第1接合筋(Bx
11,…,Bx
21,…)と該2列に配列された第2接合筋(By
11,…,By
21,…)は略矩形状に配列されたことを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発明において、
前記複数の杭主筋(D,…)の少なくとも一部は、前記第1及び第2接合筋(Bx
11,…)よりも細い鉄筋であることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発明において、
図4に例示するように、
前記複数の杭主筋(D,…)を“埋設杭主筋”とし、該埋設杭主筋(D,…)の内の一部の杭主筋(D0,…)であって前記基礎杭(2)の側から前記基礎梁(3)の側に突設される該杭主筋(D0,…)を“突設杭主筋”とした場合に、
該突設杭主筋(D0,…)どうしの間隔(W0)が前記埋設杭主筋(D,…)どうしの間隔(W1)よりも広くなるように、該突設杭主筋(D0,…)の総数が前記埋設杭主筋(D,…)の総数よりも少なく設定されたことを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の発明において、前記突設杭主筋(D0,…)は、前記第1及び第2接合筋(Bx
11,…)よりも細い鉄筋である ことを特徴とする。
【0013】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、前記第1接合筋及び前記第2接合筋は前記梁長手方向及び前記梁幅方向に沿うように配置されているため、前記基礎杭と前記基礎梁との相対的な位置関係が多少ずれたとしてもそれらの接合筋が梁主筋と干渉するおそれを低減することができる。
【0015】
請求項2及び3に係る発明によれば、前記接合筋が梁主筋と干渉するおそれをより一層低減することができる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、前記杭主筋が梁主筋と干渉するおそれを低減することができる。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、前記突設杭主筋が梁主筋と干渉するおそれを低減することができる。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、前記突設杭主筋が梁主筋と干渉するおそれをさらに低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明に係る建築物の構造の一例を示す側面図である。
【
図2】
図2(a)は、杭主筋及び接合筋の配列構造の一例を示す分解斜視図であり、同図(b)は、杭主筋及び接合筋の配置位置等を示す斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、
図2(b)のA−A断面図であり、同図(b)は、杭主筋及び接合筋の配列構造の他の例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、基礎杭の構成の他の例を示す斜視図である。
【
図5】
図5(a)は、杭主筋の配列構造の従来例を示す模式図であり、同図(b)は、該杭主筋と梁主筋の相対位置関係を示す模式図であり、同図(c)は、梁主筋がずれた場合の問題点を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、
図1乃至
図4に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
本発明に係る建築物は、
図1に符号1で例示するものであって、
・ 地中に埋設されてなると共に略円柱状で鉄筋コンクリート製の複数の基礎杭2と、
・ 該複数の基礎杭2の上端(杭頭)に接合される鉄筋コンクリート製の基礎梁3と、
を備えている。そして、該基礎梁3の長手方向xを“梁長手方向”とし、該基礎梁3の幅方向(
図2(a)(b)及び
図3(a)(b)の符号y参照)を“梁幅方向”とした場合に、
・ 鉛直方向zに延設された状態で前記梁長手方向xに沿って配置(並設)された複数の第1接合筋Bx
11,…,Bx
21,…と、
・ 鉛直方向zに延設された状態で前記梁幅方向yに沿って配置(並設)された複数の第2接合筋By
11,…,By
21,…と
が前記基礎杭2と前記基礎梁3の境界部分(
図1にて符号Cで示す部分であって、該基礎杭2に近接する該基礎梁3の部分C1と、該基礎梁3に近接する該基礎杭2の部分C2の両方)に埋設されて該基礎杭2と該基礎梁3とを接続(接合)するように構成されている。
【0022】
本発明によれば、前記第1接合筋Bx
11,…,Bx
21,…及び前記第2接合筋By
11,…,By
21,…は前記梁長手方向x及び前記梁幅方向yに沿うように配置されているため、
図5(a)〜(c)に示した従来構造のものに比べ、前記基礎杭2と前記基礎梁3との相対的な位置関係が多少ずれたとしてもそれらの接合筋Bx
11,…,Bx
21,…及びBy
11,…,By
21,…が梁主筋Eと干渉するおそれを低減することができる。
【0023】
この場合、
図2(a)に例示するように、前記複数の第1接合筋Bx
11,…,Bx
21,…は該梁長手方向xに沿って略等間隔に配置すると良く、前記複数の第2接合筋By
11,…,By
21,…は該梁幅方向yに沿って略等間隔に配置すると良い。そのようにした場合には、前記接合筋Bx
11,…,Bx
21,…及びBy
11,…,By
21,…が梁主筋Eと干渉するおそれをより一層低減することができる。
【0024】
なお、前記複数の第1接合筋Bx
11,…,Bx
21,…は少なくとも2列に配列し、前記複数の第2接合筋By
11,…,By
21,…も少なくとも2列に配列して、該2列に配列された第1接合筋Bx
11,…及びBx
21,…と該2列に配列された第2接合筋By
11,…及びBy
21,…は略矩形状に配列するようにすると良い(
図2(a)参照)。また、
図2(b)に例示するように、第1接合筋Bx
31,…,Bx
41,…及び第2接合筋By
31,…,By
41,…を3列以上配列して略碁盤の目状に配置するようにしても良い。さらに、
図3(b)にて符号Dで示す位置には、杭主筋よりも細い鉄筋(補助筋)を粗い間隔で(つまり、梁主筋を配列するピッチよりも大きいピッチで)配置するようにすると良い。
【0025】
一方、
図2(a)及び(b)に例示するように複数の杭主筋D,…を、鉛直方向zに延設すると共に略円周状に配列させた状態で前記基礎杭2に埋設しておくと良い。これらの杭主筋D,…は前記基礎杭2の上端2aから突出しないようにしても良いが、
図4に例示するように一部の杭主筋D0,…を前記基礎梁2の上端2aから突出させるようにしても良い。この場合、前記複数の杭主筋D,…の全部又は少なくとも一部は、前記第1及び第2接合筋Bx
11,…よりも細い鉄筋であるようにすると良い。ここで、前記複数の杭主筋D,…を“埋設杭主筋”とし、該埋設杭主筋D,…の内の一部の杭主筋D0,…であって前記基礎杭2の側から前記基礎梁3の側に突設される該杭主筋D0,…を“突設杭主筋”とした場合に、該突設杭主筋D0,…どうしの間隔W0が前記埋設杭主筋D,…どうしの間隔W1よりも広くなるように、該突設杭主筋D0,…の総数を前記埋設杭主筋D,…の総数よりも少なく設定するようにすると良い。そのようにした場合には、前記突設杭主筋D0,…が梁主筋Eと干渉するおそれを低減することができる。この場合、前記突設杭主筋D0,…は、前記第1及び第2接合筋よりも細い鉄筋であるようにすると良い。そのようにした場合には、該突設杭主筋D0,…が前記梁主筋Eと干渉するおそれをさらに低減することができる。なお、
図4においては、各杭主筋Dの配置位置を明確に示すために前記第1及び第2接合筋の図示を省略している。
【符号の説明】
【0026】
1 建築物
2 基礎杭
3 基礎梁
Bx
11,…,Bx
21,… 第1接合筋
By
11,…,By
21,… 第2接合筋
C 基礎杭と基礎梁との境界部分
D,… 杭主筋(埋設杭主筋)
D0… 杭主筋(突設杭主筋)
x 梁長手方向
y 梁幅方向