(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6449128
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】高枝鋏
(51)【国際特許分類】
A01G 3/02 20060101AFI20181220BHJP
B26B 13/26 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
A01G3/02 501C
B26B13/26
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-201737(P2015-201737)
(22)【出願日】2015年10月13日
(65)【公開番号】特開2017-73978(P2017-73978A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2017年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】399074927
【氏名又は名称】株式会社大進
(73)【特許権者】
【識別番号】515283552
【氏名又は名称】崇成工廠股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100103654
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100165755
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 典彦
(72)【発明者】
【氏名】脇坂 善哲
(72)【発明者】
【氏名】脇坂 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】劉 宜▲龍▼
【審査官】
竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−067899(JP,A)
【文献】
特開平04−078782(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3090433(JP,U)
【文献】
特開2011−138417(JP,A)
【文献】
特開平08−084528(JP,A)
【文献】
実開昭55−048221(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0299936(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 3/02
B26B 13/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長寸法の支持杆の先端に固定される固定刃と、該固定刃に対して支持軸によって回動可能に軸支する可動刃で構成する鋏を配置し、可動刃の基端部に伝達軸の先端を連結し、該伝達軸は支持杆の基端部に配置したレバーの操作によって軸方向に移動させて鋏の可動刃を開閉させる高枝鋏において、
前記レバーの先端は、支持杆の基端部に固定する把持柄の基部に軸支して把持柄の先方部分である把持部とレバーとを握ることを可能とし、把持部と前記レバーの間に操作杆を配置し、該操作杆の先端を前記レバーの軸支位置と把持部の間に軸支し、該操作杆はバネで先端部を先方に付勢し、操作杆の中間位置に前記伝達軸の基端部を連結するとともに、操作杆の先端部をレバーの中間位置に当接させてレバーの回動操作によって操作杆を回動し、該操作杆の回動に連動させて伝達軸を軸方向に移動させて支持杆先端に配置した鋏の可動刃を回動させ、
レバーは所定位置から把持部方向への回動を許容し、レバーと操作杆の双方にバネを装着してレバーと操作杆の先端部を先方に付勢し、
操作杆を付勢するバネと、レバーを付勢するバネは、連続する一本のバネで構成し、バネを構成する線材の一端をレバーに係止させてレバーの軸を巻回させ、中間位置を折り返して該折り返し部分を把持柄などの固定部に支持させ、折り返した線材の先方部分を操作杆の軸を巻回させ、その先端を操作杆の一部に係止させることによって、一本のバネによって操作杆及びレバーを同じ方向に付勢することを特徴とする高枝鋏。
【請求項2】
レバーの中間の定位置に、軸によって回転するガイドローラを配置し、該ガイドローラを操作杆先端部の先方側縁に当接させることを特徴とする請求項1記載の高枝鋏。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、長寸法の支持杆の先端に配置した鋏を、支持杆の基端部に配置したレバーで開閉させ、高木の枝を切断する高枝鋏に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
一般的な高枝鋏は、支持杆の先端に配置した鋏の可動刃に伝達軸の先端を連結し、伝達軸の基端部を支持杆の基端部に配置したレバーに連結し、支持杆に固定された把持柄とレバーを握ることによって、伝達軸を軸方向に移動させ鋏の可動刃を開閉させることができるようにしている。
【0003】
特許文献1や2に記載された発明は、先端を鋏の可動刃に連結した伝達軸の基端部を、先端を把持柄などの固定部材に軸支させたレバーの軸支位置から比較的近い位置に軸支させ、なるべく小さな力で伝達軸を移動させることができるようにしている。これにより、把持柄とレバーを握り、レバーを回動させることにより支持杆の先端に配置した鋏の可動刃を回動させ、高い位置にある枝を切断することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61−175947号公報
【特許文献2】実開平5−82240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や2に記載された発明では、レバーに対する伝達軸との連結位置を選択することによって、小さな力で枝を切断することができるようにすることができる。すなわち、レバーに掛かる力は、先端の軸支位置と伝達軸の連結位置までの寸法と、レバーの握り位置までの寸法比率に比例し、レバーの軸支位置と伝達軸の連結位置までの寸法を短くすることによって、より小さな力で枝の切断作業を行うことができることになる。
しかしながら、レバーで伝達軸を確実に作動させるためには、伝達軸の基端を、レバーの先端の軸支位置からある程度離れた位置に連結させ、作動を確実にする必要があり、ある程度大きな力を必要とする。より小さな力で伝達軸を移動させようとして先端の軸支位置からより近い位置に伝達軸を連結しようとすると、レバーによる伝達軸の移動距離が短くなり、伝達軸を明確に作動させることができない。
上記従来技術の欠点に鑑み本発明は、より小さな力で、より確実に枝を切断することができる高枝鋏を実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する、請求項1記載の発明は、長寸法の支持杆1の先端に固定される固定刃3と、該固定刃3に対して支持軸5によって回動可能に軸支する可動刃4で構成する鋏2を配置する。前記鋏の可動刃4の基端部に伝達軸6の先端を連結し、この伝達軸6は支持杆1の基端部に配置したレバー7の操作によって軸方向に移動させて鋏の可動刃を開閉させる。
前記レバー7の先端は、支持杆1の基端部に固定する把持柄8の基部8bに軸9で軸支して把持柄8の先方部分である把持部8aとレバー7とを握ることを可能とする。すなわち、把持部8aとレバー7とを握ることによってレバー7を回動させる。
【0007】
把持柄8の把持部8aとレバー7の間に操作杆10を配置する。この、操作杆10の先端は、前記レバー7の軸9による軸支位置と把持部8aの間に軸11によって軸支する。そして、この操作杆10はバネ12で先端部を先方に付勢し、操作杆10の中間位置に前記伝達軸6の基端部を連結するとともに、操作杆10の先端部をレバー7の中間位置に当接させてレバー7の回動操作によって操作杆10を回動させ、該操作杆10の回動に連動させて伝達軸6を軸方向に移動させる。この伝達軸6の軸方向の移動によって支持杆1先端に配置した鋏の可動刃4を回動させ、鋏による切断作業を行う。
さらに、レバー7は所定位置から把持部8a方向への回動を許容し、レバー7と操作杆10の双方にバネを装着してレバー7と操作杆10の先端部を先方に付勢し、操作杆10を付勢するバネと、レバー7を付勢するバネは、連続する一本のバネで構成し、バネを構成する線材の一端をレバー7に係止させてレバーの軸9を巻回させ、中間位置を折り返して該折り返し部分16を把持柄8などの固定部に支持させ、折り返した線材の先方部分を操作杆10の軸11を巻回させ、その先端を操作杆10の一部に係止させることによって、一本のバネ17によって操作杆10及びレバー7を同じ方向に付勢する。
【0008】
請求項2記載の発明は、レバー7の中間の定位置に、軸13によって回転するガイドローラ14を配置し、該ガイドローラ14を操作杆10先端部の先方側縁に当接させることである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、レバー7に掛かる力が、レバー先端の軸9から作用点までの距離
L1と、操作杆との当接位置までの距離
L2の寸法比、及び操作杆10の軸11から当接位置までの距離
l1と軸11から伝達軸6の連結位置までの距離
l2の寸法比の二段階で倍力化される。したがって、レバー操作の倍力効果の大きなものとすることができ、より小さな力で例えば太い枝を確実に切断することができる。
また、レバー操作によって移動させる操作杆10は、レバー操作による操作杆の回動距離をある程度大きな距離とすることができるため、伝動軸6の移動距離にかかわらず
操作杆の回動距離をある程度大きなものとし、確実に作動させることができる。そして、より小さな力で鋏の可動刃の確実な動作で、例えば太い枝を確実に切断することができる効果がある。
さらに、レバー操作を行う際、バネの弾発力に抗して把持することによって円滑な操作、すなわち把持力を解放するとレバーが円滑に先方に回動する状況となる。レバー7を先方に回動させる付勢力は操作杆10のバネだけでも間接的に可能であるが、レバー7と操作杆10の両方に装着することによってより円滑な作動を行わせることができる。この構成を実施する上において、線材を折曲させた一本のバネで、レバー7を付勢するバネと操作杆10を付勢するバネの作用を行わせることができる。すなわち、一本のバネで二本のバネの機能を実現する。このとき、レバー7を付勢するバネ反力と操作杆10を付勢するバネの反力は、バネ16の折り返し部分に作用する。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、レバーと操作杆の当接がガイドローラと操作杆10先端部の先方側縁となるため、レバーを円滑に作動させることができる効果がある
。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、レバーを先方に移動させ鋏を開いた状態を示す、本発明の実施形態を示す高枝鋏の基端部の縦断面図、
【
図2】
図2は、
図1の状態からレバーを引き、鋏を閉じた状態を示す、高枝鋏の基端部の縦断面図
【
図3】
図3は、
図2に示す状態の、高枝鋏の基端部の後方斜視図、
【
図4】
図4は、本発明高枝鋏の基端部の分解斜視図、
【
図6】
図6は、バネ装着部分の、別の実施形態を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る高枝鋏の実施形態を添付の図面に基づいて説明する。
図5は、高枝鋏全体の側面図、
図1は鋏を開いた状態を示す、本発明の実施形態を示す高枝鋏の基端部の縦断面図、
図2は
図1の状態からレバーを引き、鋏を閉じた状態を示す、高枝鋏の基端部の縦断面図である。
【0013】
本発明に係る高枝鋏は、
図5に示すように長寸法の管状である支持杆1の先端に、支持杆1に固定される固定刃3と、固定刃3に対して支持軸5によって回動可能に軸支する可動刃4で構成する鋏2を配置する。この鋏
2は、固定刃3に対して可動刃4を回動させることによって、高い位置の枝を切断する。可動刃4を回動させるために、可動刃4の基端部に伝達軸6の先端を連結し、該伝達軸6は支持杆1の中を通過して、支持杆1の基端部に配置したレバー7の操作によって、伝達軸6を軸方向に移動させて鋏
2の可動刃4を開閉させる。
【0014】
前記レバー7の先端は、支持杆1の基端部に固定する把持柄8、具体的には把持部8の基部8bに軸9によって軸支している。この構成により、支持杆1の基
端部に固定した把持柄8の先方部分である、把持部8aとレバー7とを握ってレバー7を回動させることができる。
前記、把持柄8の把持部8aとレバー7の間に操作杆10を配置する。該操作杆10の先端は、前記レバー7を軸支する軸9と把持部8aの間に軸11によって軸支する。操作杆10はバネ12で先端部を先方に付勢し、操作杆10の中間位置に前記伝達軸6の基端部を連結するとともに、操作杆10の先端部をレバー7の中間位置に当接させてレバー7の回動操作によって操作杆10を回動可能とする。この構成とすることによって、レバー7を握ることによってレバー
7の先端部を
把持部8a方向に回動させ、伝達軸
6の先端に連結した可動刃4を閉じる方向に回動させる。レバー7を開放すると、操作杆10のバネ12の弾性によって操作杆10及び操作杆
10に押されてレバー7が旧位置に復帰して伝達軸
6が先方に移動し、可動刃4が開放され、次の切断操作に備える。
【0015】
操作杆10の先端は、レバー7の表面に当接させるものであってもよいが、図示実施形態においては、レバー7の中間の定位置に軸13によって回転するガイドローラ14を配置し、ガイドローラ14を操作杆10先端部の先方側縁
10aに当接させている。この構成とすることによって、レバー7と操作杆10との接触抵抗が減少し、円滑な作動を行うことができる。
レバー7に配置するガイドローラ14の位置を、レバー7の軸9による軸支位置からの距離
L2とする。レバー7の軸支位置から、レバー
7を握ったときの作用点までの距離を
L1とすると、レバー7に作用する力Fは、L
1/L
2の力として、ガイドローラ14から操作杆10に作用する。さらに、軸11による操作杆10の軸支位置から前記ガイドローラ14との当接位置までの距離をl
1、軸11による軸支位置から前記伝達軸6との連結位置までの距離をl
2とすると、ガイドローラ14に作用する力は、l
1/l
2に増幅されて伝達軸6に作用する。すなわち、レバー7を握る力Fは、L
1/L
2×l
1/l
2といった大きな力に増幅され、伝達軸6を軸方向に移動させ、強い力で枝を切断することができる。
【0016】
レバー7の基端部、すなわち軸9の外周部分は、カム形状18として把持柄
8の一部に当接させ、レバー
7の先端が所定位置よりも前方に回動しないようにし、レバー
7を握る動作を円滑に行うことができるようにしている。すなわち、操作杆10に装着したバネ12の弾発力により、操作杆10及びレバー7は常時先方に付勢され、レバー
7を握る動作を円滑に行うことができる。
前記したように、操作杆10
の軸11に装着した
バネ12の弾発力によって、操作杆10だけでなく、レバー7を間接的に先方に付勢することができる。しかしながら、図示実施形態においては、操作杆
10にバネ12を、レバー7にバネ15を装着することによってより円滑な作動を行うことができるようにしている。
【0017】
図2は、レバー7を握って
図1に示す状態から図面上左方向に回動させ、レバー7を把持柄8の把持部8aに接近させた状態、
図3はその斜視図である。レバー7を左方向に回動させると、ガイドローラ14で押されて操作杆10も左方向に回動する。このとき、レバー7はバネ15によって、操作杆10はバネ12によってバランスよく、図面上の右回動方向に付勢されることになる。このとき、ガイドローラ14は、操作杆10先端部の先方側縁10aに当接することになるが、この先方側縁10aは直線状であるのが望まし
い。すなわち、レバー7の回動中心と操作杆10の回動中心は異なるため必然的に当接位置が移動する。このとき、先方側縁10aが直線状であるとガイドローラ14と先方側縁10aの当接位置は円滑に移動し、操作杆
10をスムーズに回動させることができる。
【0018】
図4は、本発明高枝鋏の基部の分解斜視図である。図において、19は伝達軸6の基端に固定した連結軸であって、操作杆10の嵌合孔20に回動可能に装着する。21は、レバー7に回動可能に装着したロックレバーであって、把持柄8に形成した係合段部22に係合させることによって、
図2、
図3に示す可動刃
4を閉じた状態に維持する。閉じた状態を維持することによって、例えば、安全に保管することができる。
【0019】
図6は、レバー7を付勢するバネ及び操作杆10を付勢するバネの、異なる実施形態を示す断面図である。この実施形態は、操作杆10を付勢するバネと、レバー7を付勢するバネを、連続する一本のバネ17で構成するものである。一本の線材で構成するバネ17は、バネを構成する線材の一端17aをレバー7の一部に係止させ、レバーを軸支する軸9を巻回させ、中間位置を折り返して該折り返し部分16を把持柄
8の固定部に支持させ、折り返した線材17の先方部分17bを、操作杆10を支持する軸11を巻回させ、その先端を操作杆10の一部に係止させている。この構成とすることによって、一本のバネによって操作杆10及びレバー7を同じ方向に、バランスのとれた状態に付勢することができる。また、部品点数を減じることができる。
【符号の説明】
【0020】
1…支持杆、2…鋏、 3…固定刃、 4…可動刃、 5…支持軸、 6…伝達軸、 7…レバー、 8…把持柄、 8a…把持部、 8b…基部、 9…軸、 10…操作杆、 10a…先方側縁、 11…軸、 12…バネ、 13…軸、 14…ガイドローラ、 15…バネ、 16…折り返し部分、 17…バネ、 17a…一端、 17b…先方部分、 18…カム形状、 19…連結軸、 20…嵌合孔、 21…ロックレバー、 22…係合段部。