(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記hFCの48%がCD8+/アルファベータTCR-/CD3イプシロン+であり、前記hFCの33%がCD8+/アルファベータTCR-/CD19+であり、前記hFCの44%がCD11c+であり、前記hFCの40%がCD11b+であり、前記hFCの42%がFoxp3であり、前記hFCの30%がHLA-DRである、請求項1に記載の治療用細胞組成物。
前記hFCの25%がCD8+/アルファベータTCR-/IFN-ガンマであり、前記hFCの31%がCD8+/アルファベータTCR-/CXCR4である、請求項6に記載の治療用細胞組成物。
【発明を実施するための形態】
【0025】
初期の幹細胞生着を促進し、持続したHSC生着のために必要なヒトhFC(hFC)が提供される。このようなhFCを骨髄または造血細胞のその他の生理的ソースから精製する方法も提供される。様々な分離手順が提供され、これらは、本明細書で開示する特異的マーカーの存在または非存在に全般的に基づく。
【0026】
ヒト促進細胞(hFC)、hFCを含有する細胞組成物および作製方法
ヒト促進細胞(hFC)が同定され、本明細書に記載される。hFCは、一般的に、CD8+およびアルファベータTCR-として特徴付けられる。hFCは、ガンマデルタTCR-またはガンマデルタTCR+でもあり得る(すなわちガンマデルタTCR細胞の非存在は必要とされない)。CD8+/アルファベータTCR- hFCは、以下のマーカーを発現する細胞の存在により特徴付けることができる:CD3イプシロン(hFCの約48%により発現される)、CD19(hFCの約33%により発現される)、CD11c(hFCの約44%により発現される)、CD11b(hFCの約40%により発現される)、Foxp3(hFCの約42%により発現される)、HLA-DR(hFCの約30%により発現される)およびCD123(hFCの約8%により発現される)(
図1A)。hFCは、IFN-ガンマ(hFCの約25%)およびCXCR4(hFCの約31%)を発現する細胞の存在により特徴付けることもできる(
図1B)。さらに、hFCの約65%は、免疫寛容誘発性形質細胞様樹状細胞(B220+/CD11c+/CD11b-)に似ており、hFCは、抗原特異的T
reg細胞を誘導できる。さらに、hFCは、限定することなく、CD16、CD52、NKp30、NKp44、NKp46、CD162、CD11aおよびCD62Lのようなマーカーのより低いレベルでの存在により特徴付けることができる。
【0027】
CD8+/アルファベータTCR- hFC集団内に、2つの亜集団が存在する:CD8+/アルファベータTCR-/CD56
dim/neg(hFCの約55%)およびCD8+/アルファベータTCR-/CD56
bright(hFCの約45%)(
図2)。当業者により理解されるように、CD56
dim/neg細胞とは、比較的少量のCD56を発現する細胞(CD56
dim)と、CD56を発現しない細胞(CD56
neg)との集団のことをいい、CD56
bright細胞とは、比較的多量のCD56を発現する細胞(CD56
bright)のことをいう。
【0028】
hFCのCD8+/アルファベータTCR-/CD56
dim/neg亜集団内で、大多数の細胞はCD3イプシロンを発現し(約80%)、およそ3分の1の細胞はHLA-DRを発現し(約30%)、より低いパーセンテージの細胞はCD11c(約17%)、CD19(約16%)、CD11b(約14%)およびCD123(約11%)を発現する(
図3A)。よって、CD8+/アルファベータTCR-/CD56
dim/neg hFC亜集団内の大多数の細胞は、CD3イプシロン+/CD19-である。hFCのCD8+/アルファベータTCR-/CD56
bright亜集団内で、およそ65%の細胞はCD11cを発現し、約67%の細胞はCD11bを発現し、約40%の細胞はHLA-DRを発現するが、CD3イプシロン、CD19およびCD123は、この亜集団中でかなりより低いレベルで発現される(それぞれ約29%、約25%および約10%)(
図3B)。よって、CD8+/アルファベータTCR-/CD56
bright hFC亜集団内の大多数の細胞は、CD3イプシロン-/CD19+である。
【0029】
hFCは、骨髄、または限定することなく、脾臓、胸腺、血液、胚性卵黄嚢もしくは胎児肝のような造血細胞の任意のその他の生理的ソースから得ることができる。一実施形態では、hFCは、動員末梢血(例えば顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)または顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)の存在下で)から得られる。別の実施形態では、hFCは、脊椎骨髄から得られる。
【0030】
造血細胞が一旦得られると、特定のマーカーを有する(または欠く)細胞を選択するためにこれらの特定のマーカーに特異的に結合する抗体を典型的に用いる様々な方法により、hFCを濃縮、精製(または実質的に精製)できる。細胞分離技術は、例えば、蛍光活性化細胞ソーター(FACS)および特異的蛍光色素を用いる細胞選別;細胞表面マーカー特異的抗体にコンジュゲートしたビオチンと固体支持体(例えば親和性カラムマトリクスまたはプラスチック表面)に結合したアビジンまたはストレプトアビジンとを用いるビオチン-アビジンまたはビオチン-ストレプトアビジン分離;抗体被覆磁性ビーズを用いる磁性分離;あるいは抗体および補体または細胞毒もしくは放射活性同位体に結合した抗体のような破壊的分離を含む。細胞分離において用いることができる抗体を作製する方法は、当該技術において公知である。例えば、米国特許第6,013,519号を参照されたい。
【0031】
特異的マーカーに対する抗体を用いる分離は、ネガティブまたはポジティブ選択に基づき得る。ネガティブ選択に基づく分離において、所望でない細胞(非hFC)上に存在するマーカーに特異的な抗体および所望の細胞(hFC)上に存在しない抗体を用いる。抗体が結合したこれらの(所望でない)細胞を除去または溶解し、未結合の細胞を保持する。ポジティブ選択に基づく分離において、所望の細胞(hFC)上に存在するマーカーに特異的な抗体を用いる。抗体が結合したこれらの細胞を保持する。ポジティブおよびネガティブ選択分離を同時または逐次的に用いてよいことが理解される。本開示は、本明細書に記載するhFCを濃縮または精製するために用いることができる任意の分離技術を包含することも理解される。
【0032】
抗体に基づく分離についてのある公知の技術は、例えばFACSを用いる細胞選別である。簡単に述べると、造血細胞の懸濁混合物を遠心分離し、培地に再懸濁する。蛍光色素にコンジュゲートした抗体を加えて、抗体が特異的細胞表面マーカーに結合することを可能にする。細胞混合物を次いで洗浄し、FACSに流し、FACSが細胞を、特異的抗体-マーカーの結合により指図されるそれらの蛍光に基づいて分離する。細胞選別以外の他の分離技術をそれに加えてまたはその代わりに用いてhFCを得ることができる。あるそのような方法は、親和性クロマトグラフィーを用いるビオチン-アビジン(またはストレプトアビジン)に基づく分離である。典型的に、このような技術は、造血細胞を、特異的マーカーに結合するビオチン結合抗体とインキュベートし、その後、アビジンカラムに細胞を通すことにより行われる。ビオチン-抗体-細胞複合体は、ビオチン-アビジン相互作用によりカラムに結合するが、複合体を形成していない細胞は通過する。カラムに結合した細胞は、撹乱またはその他の既知の方法により遊離できる。ビオチン-アビジン系の特異性は、迅速分離に適している。
【0033】
細胞選別およびビオチン-アビジン技術は、細胞分離に高度に特異的な手段を提供する。所望であれば、特異性がより低い分離を用いて、造血細胞ソースから非hFCの部分を除去できる。例えば、磁性ビーズ分離を用いて、限定されないが、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞およびマクロファージ(MAC)を含む非促進分化造血細胞集団ならびに巨核球、肥満細胞、好酸球および好塩基球を含むマイナー細胞集団を初期に除去できる。さらに、細胞は、密度勾配分離を用いて分離できる。簡単に述べると、造血細胞を例えばFicollまたはPercollまたはEurocollins媒体を用いて調製した密度勾配中に入れることができる。分離を、次いで、遠心分離によりまたは例えばCobel & Cell Separator '2991(Cobev、Lakewood、CO)を用いて自動的に行うことができる。造血細胞混合物のソースおよびその含量により、さらなる分離手順が望ましいことがある。例えば、血液を造血細胞のソースとして用いるならば、いずれの画分をも分離する前に赤血球を溶解することが望ましいことがある。
【0034】
特異的マーカーに基づく分離について開示するが、本開示は、hFCが濃縮された細胞組成物をもたらす任意の分離技術(その分離がネガティブ分離、ポジティブ分離またはネガティブおよびポジティブ分離の組み合わせのいずれであるか、そして分離が細胞選別または例えば抗体と補体とでの処置、カラム分離、パニング、ビオチン-アビジン技術、密度勾配遠心分離もしくは当業者に既知のその他の技術のようないくつかの他の技術のいずれを用いるかに関わらず)を包含することが理解される。造血細胞のほとんどのソースは、天然に、約0.5%〜約8%(例えば典型的に約1%)のhFCを含有する。本明細書に開示するもののような分離は、hFCが濃縮された(すなわち生理的な造血細胞ソースで天然に見出されるよりも大きい数のhFCを含む)細胞組成物を産生できる。例えば、細胞の少なくとも約5%(例えば少なくとも約8%、10%、12%、15%、20%以上)が本明細書に記載するhFCである細胞組成物が提供される。これらの組成物は、hFCが「濃縮された」という。別の例では、細胞の少なくとも約30%(例えば少なくとも約35%、40%、50%以上)が本明細書に記載するhFCである細胞組成物が提供される。この組成物は、hFCが「精製された」という。ポジティブまたはネガティブ選択のいずれかまたは両方によるさらなる処理は、細胞の少なくとも約60%(例えば少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%)が本明細書に記載するhFCである細胞組成物を産生できる。
【0035】
hFCを含む細胞組成物を得る例示的な方法を本明細書に記載する。当業者は、本明細書に記載する例をいくつかの様式で改変して、hFCをまだ得ることができるかまたは異なる量でhFCを得ることができることを理解している。以下の例では、骨髄が造血幹細胞のソースである。骨髄は、当業者に公知の様々な方法により(例えばドナーから)採集できる。例えば、骨髄は、長骨(例えば大腿骨または脛骨)から採集できるが、他の骨小腔または脊椎から得ることもできる。
【0036】
ある例示的な方法では、非hFCおよび非HSCは、骨髄から、本明細書に記載する1または複数のネガティブ選択を用いて除去できる。例えば、移植片対宿主病(GVHD)生成細胞としても知られるT細胞は、細胞組成物から、アルファベータTCR+のようなT細胞特異的マーカーに対する抗体を用いて特異的に除去できる。あるいくつかの実施形態では、デルタガンマTCR+に対する抗体を用いて、T細胞のさらなるサブセットを除去できる。得られる細胞組成物は、hFCおよびHSCが濃縮され、未熟リンパ球系および骨髄系前駆細胞のような他の未熟前駆細胞も含有する。
【0037】
別の例示的な方法では、hFCは、骨髄から、本明細書に記載する1または複数のポジティブ選択を用いて得ることができる。例えば、hFCは、本明細書に記載する1または複数のマーカー(例えばCD8+、CD19、CD56)を用いる細胞選別(例えばFACSを用いて)により精製できる。
【0038】
あるいくつかの場合(例えば非治療的)では、HSCを細胞組成物から除去することが望ましいことがある。HSCは、骨髄から、例えばCD34+と場合によってCD45+とに結合する抗体を用いて除去できる。例えば、米国特許第5,061,620号またはLC実験細胞分離システム、CD34キット(CellPro、Inc.、Bothell、WA)を参照されたい。
【0039】
hFCを用いる方法およびhFCを含有する細胞組成物
レシピエントにおけるドナー骨髄細胞の生着を増進するhFCの能力は、hFCが様々な治療プロトコールの促進において有用であることを示す。hFCが濃縮された(例えば約5%〜約12%のhFCを含有する)細胞組成物は、耐久性のある生着を著しく改善し、移植片対宿主病(GVHD)を排除する。いずれの特定の機構にも結び付けられないが、一旦投与されると、hFCは、骨小腔、脾臓、胎児または成体の肝臓および胸腺を含むレシピエントの体内の様々な造血細胞部位に帰ると考えられる。hFCは、正しい部位に播種され、生着し、キメラ免疫系を確立し始める。幹細胞およびhFCの両方が複合体を形成して、生着のための適当な部位に播種される可能性がある。
【0040】
hFCを含む治療用細胞組成物をレシピエントに投与する方法も本明細書に記載する。治療用細胞組成物は、本明細書で用いる場合、hFCおよびHSCを含む組成物のことをいう。このような組成物は、本明細書に記載する任意の方法を用いて生成できる(例えばポジティブおよび/またはネガティブ選択)。レシピエントへの投与用の治療用細胞組成物は、レシピエントの投与体重1キログラムあたり合計で細胞数約1×10
8から細胞数3×10
8の間を含んでよい。治療用細胞組成物内で、HSCの数は、レシピエントの投与体重1kgあたり約1×10
5から18×10
6の間のHSCであることができ、同様の範囲のhFCを投与できる。しかし、用いられる細胞の厳密な数は、造血幹細胞の元々のソース中の細胞の数、処理(例えば濃縮および/または精製)後に存在する細胞の数(例えばhFCおよび/またはHSC)、ならびにレシピエントの健康状態を含む多くの因子に依存する。
【0041】
本明細書に記載する場合、hFCを得ることは、典型的に、アルファベータTCR+ T細胞を枯渇させることを含むが、これは、これらがGVHD生成細胞と考えられるからである。しかし、治療的に、アルファベータTCR+ T細胞の存在が、HSCおよびhFCの細胞組成物において有益であることが見出されている。本明細書の実施例の項で示すように、治療的であると一般的に考えられるよりも大きいレベルでアルファベータTCR+ T細胞を含む細胞組成物は、キメリズムおよび生着を驚くべきことに助長した。レシピエントの体重1kgあたり約1×10
5のアルファベータTCR+ T細胞が、T細胞の致死量であると考えられることが一般的に受け入れられている。しかし、本明細書に記載する方法では、それより大きい量が、有害な影響なくレシピエントに定期的に投与された。具体的に、約2.0×10
6から5.0×10
6の間のアルファベータTCR+ T細胞の量(例えばレシピエントの体重1kgあたり約2.5×10
6から4.5×10
6の間のアルファベータTCR+ T細胞;レシピエントの体重1kgあたり約3.0×10
6から4.0×10
6の間のアルファベータTCR+ T細胞;レシピエントの体重1kgあたり約3.0×10
6から4.2×10
6の間のアルファベータTCR+ T細胞;レシピエントの体重1kgあたり約3.2×10
6のアルファベータTCR+ T細胞;またはレシピエントの体重1kgあたり約3.8×10
6のアルファベータTCR+ T細胞)を治療用細胞組成物に含めることができる。
【0042】
よって、HSCおよびhFC治療用細胞組成物を得るために用いる手順および方法に依存して、組成物中のアルファベータTCR+ T細胞の数を調整する必要があることがある。例えば、あるいくつかの実施形態では、アルファベータTCR+ T細胞を、T細胞枯渇HSCおよびhFC組成物に戻して加えて、所望の数を得ることができる。他の実施形態では、枯渇ステップを、所望量のT細胞だけが枯渇されるように改変することにより、組成物中に所望量のT細胞を残すことができる。治療用細胞組成物中に所望量のT細胞を達成するために、T細胞の数を、例えば枯渇前(例えば出発物質中で)または枯渇ステップの後に決定できる。試料中の細胞(例えばT細胞)の数を決定する方法は、当該技術において公知である(例えばFACS)。
【0043】
治療用細胞組成物は、一般的に、静脈内投与されるが、直接骨注射のような他の投与様式を用いることができる。本明細書に記載する治療用細胞組成物は、治療レベルより高いアルファベータTCR+ T細胞が存在していても、耐久性のあるキメリズムをもたらす。本明細書で用いる場合、耐久性のあるキメリズムとは、移植後6ヶ月を超えて(例えば移植後1年以上)少なくとも約1%(例えば少なくとも約2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、25%、50%、75%以上(例えば100%))ドナー起源であるレシピエントの免疫系のことをいう。さらに、耐久性のあるキメリズムは、ドナーとHLAが一致していないかまたはドナーと部分的にだけ一致しているレシピエントにおいてさえ、本明細書に記載する治療用細胞組成物を用いて達成できる。よって、本明細書に記載する治療用細胞組成物は、互いに同系であるドナーとレシピエントとの間の移植を可能にし、互いに同種であるドナーとレシピエントとの間の移植を可能にするはずである。
【0044】
伝統的に、キメラ免疫系を確立する方法は、レシピエントの免疫系を破壊することを必要とし、このことは、レシピエントのHSCの消失をもたらす。このことは、当業者に公知の技術により遂行でき、限定することなく、選択されたレベルの全身放射線照射をレシピエントに照射すること、レシピエントに特定の毒素もしくは化学療法剤を投与すること、毒素もしくは放射活性同位体に結合した特異的モノクローナル抗体またはモノクローナル抗体をレシピエントに投与すること、あるいはこれらの組み合わせを含む。顕著なことに、本明細書に記載するhFC(例えば治療用細胞組成物中の)をレシピエントに投与することにより、生着の成功のためにレシピエントに必要とされる前処置の量が著しく低減され、移植後に必要な免疫抑制薬の量も著しく低減される。例えば、レシピエントの免疫系を破壊することは、しばしば、レシピエントに950センチグレイ(cGy)の全身放射線照射(TBI)を致死的に照射することを含むが、本明細書に記載する手順は、25cGy〜200cGyほど低いTBIでの前処置計画を用いる。
【0045】
キメリズムをうまく確立する能力は、移植後の生存を著しく改善する。本開示は、例えば臓器、組織または細胞のようなドナー生理的構成要素を移植する方法を提供する。本明細書に開示する方法においてhFCを用いることは、キメラ免疫系を有するレシピエントをもたらし、該免疫系は、移植されたドナー臓器、組織または細胞に対して完全に免疫寛容であるが、第三者の移植片は完全に拒絶する。移植されたドナー臓器、組織または細胞は、レシピエントにおいてそれらのそれぞれの機能を果たすことができる。例えば、移植された島細胞は、糖尿病のための効果的な処置を提供できる。さらに、内分泌組織移植片(甲状腺、副甲状腺、副腎皮質、副腎髄質、島)ならびに腎臓、肝臓、心臓ならびに顔、手および他の四肢のような複合組織の永続的な受け入れが証明されている。混合キメラ免疫系は、レシピエントにおいて、臓器、組織もしくは細胞の移植前、移植中または移植後に生成できるが、典型的に、移植前または移植と同時に生成されることが理解される。
【0046】
キメラ免疫系の確立におけるhFCの使用は、骨髄移植を用いて処置できる疾患の範囲を著しく拡張できる。移植(例えば心臓、腎臓、肝臓、膵島および手または顔)を超えて、レシピエントにおいてうまくキメラ造血系を確立する能力は、GVHDに伴う罹患率および死亡率のために骨髄移植により現在処置されていない他の疾患または障害を処置するために用いることができる。自己免疫疾患は、自己の免疫系による臓器または組織への攻撃に関わる。しかし、キメラ免疫系が確立された場合、体は、何が外来で何が自己であるかを再学習できる。本明細書に記載するhFCを用いてキメラ免疫系を確立することは、この状態を引き起こす自己免疫攻撃を低減または停止できる。本明細書に記載するhFCを用いて処置できる自己免疫疾患は、例えば、I型糖尿病、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、関節リウマチ、乾癬または結腸クローン病を含む。
【0047】
本明細書に記載する細胞組成物を用いてアルツハイマー病を処置することも可能である。本明細書に開示する細胞組成物は、例えば鎌状赤血球貧血、球状赤血球症またはサラセミアのようなヘモグロビン異常症、ならびにハンター病、ハーラー病、慢性肉芽腫症、白質ジストロフィーおよび酵素欠損症のような代謝障害を処置するために用いることもできる。さらに、本明細書に記載する細胞組成物は、白血病もしくは他の希な小児期の障害(例えばADA欠乏症、再生不良性貧血またはSCID)を処置するために用いることができるか、または本明細書に記載する細胞組成物は、再生修復(例えば黄斑変性、心筋梗塞または膵島再生)において用いることができる。
【0048】
本開示に従って、当該技術の熟練の範囲内の従来の分子生物学、細胞生物学、微生物学および生化学の技術を用いてよい。このような技術は文献に詳細に説明されている。方法および組成物を以下の実施例においてさらに記載するが、これらは、特許請求の範囲に記載する方法および組成物の範囲を限定しない。
【0049】
(実施例)
項A-コロニー形成細胞アッセイ
(実施例1)
HSCおよびhFCの精製
HSCおよびhFCを、ヒト脊椎骨髄(VBM)または動員末梢血(MPB)から、マルチパラメータ滅菌生細胞選別により単離した(FACSVantage SE:Becton Dickinson)。簡単に述べると、VBMまたはMPBを、直接標識モノクローナル抗体(mAb)で飽和濃度にて30分間染色した。HSC:CD34+/CD45+;およびhFC:CD8+/TCR-/CD56
dim/neg。両方の細胞集団を選別し、純度について分析した。85%以上の純度レベルだけを許容した。
【0050】
(実施例2)
HSCおよびhFC選別および計数
HSCを、ISHAGEプロトコールに基づいて選別および計数した。Sutherlandら、1996、「The ISHAGE guidelines for CD34+ cell determination by flow cytometry」、J. Hematotherapy、5:213〜26頁を参照されたい。簡単に述べると、CD45-FITC/CD34-PE組み合わせパラメータは、末梢血幹細胞/前駆細胞区画を臨床的に適切に反映した。プロット1は、前方散乱(FSC;x軸)対側方散乱(SSC;y軸)を用いてフォーマットし、領域(R1)は、デブリを除くリンパ球、単球および顆粒球の集団の周囲に描いた。R1から、プロット2を、CD45 FITC対側方散乱を用いてフォーマットし、CD45-イベントを除くようにR1を描いた。R2から、プロット3を、CD34 PE対側方散乱を用いてフォーマットし、R3を、CD34+集団の周囲にだけ描いた。R3から、プロット4を、CD45-FITC対CD34+細胞のSSCを用いてフォーマットした。特徴的な低SSCおよび低〜中間のCD45蛍光を有するクラスタを形成する細胞をゲーティングし、R4とした。非特異的染色イベントは、この領域から除いた。R4から、プロット5を、FSC(x軸)対SSC(y軸)を用いてフォーマットした。CD34+幹細胞/前駆細胞の全ての蛍光および光散乱基準を満たすイベントのクラスタがプロット5に出現した。
【0051】
図4は、ISHAGEプロトコールを用いるヒトHSCの選別および計数のためのゲーティング方策を示す。
図5は、ヒトhFCの選別および計数のためのゲーティング方策を示す。
【0052】
(実施例3)
hFCを用いるコロニー形成細胞アッセイ
細胞選別の後に、HSC(CD45+/CD34+)単独またはHSCとhFC(CD45+/CD34+とCD8+/TCR-/CD56
dim/neg)または対照としてのHSCとT細胞を、メチルセルロースに直ちに播種(0時間)したかまたは細胞培養培地中で18時間予備インキュベートした後にメチルセルロースに播種した。全ての細胞試料を、4重で培養した。37℃および5%CO
2にて14日間培養した後に、50より多い細胞を含有するコロニーを得た。
【0053】
予備インキュベーションなしで、HSC単独対HSCとhFCとにより生じたコロニーに著しい差はなかった。著しいことに、HSCをhFCと18時間同時インキュベートした後にCFCアッセイを行った場合、hFCは、HSC単独およびCD8+ T細胞と同時インキュベートしたHSCと比較して、コロニー形成を有意に(p<0.005)増進した。これらの結果は、マウスhFCと同様に、ヒトhFCが、HSCに対する保護効果を奏し、より多くの原始多能性前駆細胞のin vitroでの発生を助長することを示す。
【0054】
(実施例4)
hFCの亜集団を用いるコロニー形成細胞アッセイ
コロニー形成培養(CFC)アッセイ:15,000のHSCを、30,000のCD8+/アルファベータTCR-/CD56
dim/neg hFCとともにまたはなしで、96ウェルプレート中の培養培地中で0時間または18時間培養し、37℃にてインキュベートした。培養後、細胞をメチルセルロースに再懸濁し、CFCアッセイに用いた。コロニーは、14日目に数えた。
【0055】
まとめおよび結果:CD8+/アルファベータTCR-/CD56
dim/neg hFCのin vitroでの機能を評価するために、HSCをCD8+/アルファベータTCR-/CD56
dim/neg hFCと18時間インキュベートし、メチルセルロース中で14日間、コロニー形成細胞アッセイにおいて培養した。HSCとCD8+/アルファベータTCR-/CD56
dim/neg hFCは、HSC単独と比較して有意により多くのコロニーを生じ(p=0.0038)、このことは、CD8+/アルファベータTCR-/CD56
dim/neg hFCが、HSCのコロニー形成能に対して直接的な効果を有することを証明した。
【0056】
項B-ヒトhFCのIn Vivoでの特徴付け
(実施例1)
マウスモデルにおけるキメリズムおよび生着
CD8
+/TCR
- hFCが同種および同系のマウスレシピエントにおける精製HSCの生着を増進することが以前に示されている(Fugierら、2005、J. Exp. Med.、201(3):373〜383頁)。さらに、マウスにおいて、hFCがコロニー形成能を増進し、より多くの原始多能性HSC前駆細胞のin vitroでの発生を助長することが示されている(Rezzougら、2008、J. Immunology、180(1):49〜57頁)。
【0057】
ある目的は、ヒトHSCキメリズムをマウスモデルにおいて達成することであった。簡単に述べると、CD34
+、CD45
+ヒトHSCを、G-CSF動員末梢血から選別し、100,000の選別ヒトHSCを、325cGyのTBIで前処置したNOD/SCID/IL2受容体(IL2R)γ鎖
nullマウスに移植した。全血を、移植マウスから、移植の1ヶ月後に回収し、PBLタイピングを、ヒトT細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞および単球に特異的な抗体を用いて行った。結果は、平均で3.2%のヒトHSCキメリズムが、100,000のhHSCを移植した後に達成されたことを示した。
【0058】
次いで、100,000のhHSC単独または100,000のhHSC+300,000のhFCを、325cGyのTBIで前処置したNOD/SCID/IL2Rγ
nullマウスに移植する実験を行った。多系列PBLタイピングを、上記のようにして移植の30日後に行った。
【0059】
これらの実験の結果は、HSC+hFC群が、HSC単独群と比較して、より高いパーセンテージのヒトT細胞(CD4、CD8、DC;Table 1(表1)を参照されたい)およびヒト単球(CD33;Table 2(表2))を生成したことを証明した。リンパ球系ゲートおよび骨髄系ゲートにおけるドナーキメリズムのパーセンテージをTable 3(表3)にまとめる。
【0063】
(実施例2)
マウスモデルにおけるCD8+/アルファベータTCR-/CD56
dim/negの生着
動物:5〜6週齢の雄の非肥満糖尿病(NOD)/SCID/インターロイキン-2受容体(IL-2r)ガンマ鎖ノックアウト(NSG)マウスを、Jackson Laboratory(Bar Harbor、ME)から購入した。
【0064】
HSCおよびhFCの精製:HSCおよびFCを、ヒトG-CSF動員末梢血から、マルチパラメータ滅菌生細胞選別(FACSVantage SEおよびFACSAria;Becton Dickinson、Mountain View、CA)により選別した。
【0065】
ヒトCD8+/アルファベータTCR- hFCの表現型:G-CSF動員PBMCを、抗ヒトCD8アルファ、アルファベータTCR、デルタガンマTCR、CD56、CD3イプシロン、CD19、CD11c、CD11b、HLA-DR、Foxp3、INF-ガンマ、TGF-ベータ、CXCR4およびSDF-1モノクローナル抗体で染色し、Cell Questソフトウェア(Becton Dickinson)を用いるLSRにより分析した。
【0066】
HSCおよびFC移植:ヒトHSC+FC異種モデルにおいて、100,000のヒトHSCを、300,000の選別されたCD8+/アルファベータTCR-/CD56
dim/neg hFCとともにまたはなしで、325cGy TBIで前処置したNOD/SCID/IL-2rガンマ
nullマウスレシピエントに移植した。
【0067】
キメリズムの評価:ドナー細胞生着を、末梢血リンパ球、骨髄細胞および脾細胞において、7色フローサイトメトリーを用いて評価した。
【0068】
まとめ:ヒトCD8+/アルファベータTCR-/CD56
dim/neg hFCがヒトHSCのin vivoでの生着を増進するかを評価するために、100,000のHSC単独または300,000のCD8+/アルファベータTCR-/CD56
dim/neg hFCとともに、325cGyの全身放射線照射で前処置したNOD/SCID/IL2rg
null(NSG)レシピエントマウスに移植した。移植の30日後に、21匹のうち8匹(38%)のHSC単独レシピエントが生着した。これとは対照的に、HSCとCD8+/アルファベータTCR-/CD56
dim/neg hFCを受けたレシピエントの81%(n=16)が生着し、末梢血におけるドナーリンパ球およびドナー単球のキメリズムは、それぞれ0.53%±0.16%および3.93%±1.28%であった。
【0069】
移植の6ヶ月後に、HSC単独のNSGレシピエントは、末梢血におけるドナーキメリズムを喪失し、脾臓および骨髄においてほとんどまたは全くドナー細胞が検出されなかった。これとは対照的に、HSCとCD8+/アルファベータTCR-/CD56
dim/neg hFCのNSGレシピエントは、末梢血において耐久性のあるドナーキメリズムを示し、HSC単独のレシピエントと比較して、有意により高いレベルの脾臓(約3倍多いドナーリンパ球および約2倍多いドナー単球)および骨髄(約10倍多いドナーリンパ球および約4倍多いドナー単球)におけるドナーキメリズムを示した。
【0070】
項C-ヒトにおける鎌状赤血球症(SCD)の処置
(実施例1)
鎌状赤血球症(SCD)予備実験
2名の鎌状赤血球症(SCD)患者を、パイロット実験において予め処置して、混合キメリズムを確立することを試みた。これらのSCD患者はともに、彼らの疾患からの合併症について高い危険性があった。200cGyのTBIとフルダラビン、MMFおよびCyAとの組み合わせが、SCD患者における生着を確立できるかを評価した。しかし、一過性の生着だけが達成された。前処置は耐容性がよく、重度の有害事象は発生しなかった。しかし、内因性の造血が再出現した。
【0071】
輸血/感作バリアを克服するために、プロトコールに改良を加えた。例えば、成熟T細胞、B細胞およびNK細胞について強力な溶解剤であるヒト化抗CD52モノクローナル抗体であるCampathを、臨床前処置計画に加えた。最初のサイクルで成熟B細胞が枯渇し、メモリーB細胞の恒常的な増殖が枯渇B細胞を置き換えるようにし、2回目のサイクルで増殖メモリーB細胞が枯渇するという基本原理により、2サイクルのCampathを投与した(-2ヶ月目および-1ヶ月目)。Campathの広いリンパ球系特異性が、輸血療法により誘導されるアロ反応性を媒介するレシピエントにおけるTおよびB細胞を標的にするための強力なアプローチを提供すると仮定した。
【0072】
一例では、4回の用量の10mg/日のCampath-1Hを-53日目〜-50日目に投与し、別の4回の用量の7mg/日のCampath-1Hを-24日目〜-21日目に投与した。30mg/m
2のフルダラビンを-5日目〜-3日目に投与し、200cGyの全身放射線照射を-1日目に、ミコフェノール酸モフェチルおよびシクロスポリンとともに投与し、これを耐久性のある生着まで継続した。FC+HSCは0日目に移植した。
【0073】
SCDの2名の対象は、改作プロトコールの下でうまく移植を受けた。これらの対象はともに、移植後27および24ヶ月で生着を維持し、無症状で輸血に依存していない。部分的レシピエント前処置と、その後のHSCおよびhFCの移植により、感作レシピエントにおいて最小限の毒性で混合キメリズムが確立でき、生着を保っている間のGVHDの危険性を低減できることが証明された。本明細書に記載する強さが低減された前処置アプローチは、安全で耐容性がよく、HSC+hFC移植片と組み合わせると、輸血患者において安定な混合キメリズムおよび優勢な正常RBC生成が十分に誘導される。PHA、カンジダ(Candida)および同種抗原に応答する免疫能は、移植後1ヶ月で回復した(
図6A;>3の刺激インデックス(グラフ上の水平な線)が陽性である)。最下点は、両方の患者について9日目から24日目の間に発生した(好中球絶対数[ANC]<1,000)(
図6B)。
【0074】
(実施例2)
SCD患者#3-2005年11月に移植
SCD#3(誕生日98年2月11日)は、アフリカ系米国人女性であり、複数の疼痛発作および急性胸部症候群のエピソードを経験した。彼女は輸血療法を維持した。彼女の鎌状赤血球形質を有するHLA同一の姉妹が、彼女のドナーとなった。この患者は、4回の用量のCampath-1H(30mg/日)での前処置を-53日目に開始し、4回の用量のCampath-1H(30mg/日)で2回目を-24日目に開始した。彼女は、3回の用量のフルダラビン(30mg/m
2 IV)を-4日目に開始し、次いで200cGyのTBIを0日目に受けた。
【0075】
移植後に、彼女は、シクロスポリン(1.5mg/kg/bid)およびMMFでの処置を22ヶ月間受けた。免疫抑制は、その後漸減し、完全に中止した。患者は、14.1×10
6のCD34+細胞/kg体重、43.5×10
6のアルファベータTCR細胞/kg体重および5.4×10
6のhFC/kg体重を受けた。彼女は、5%ドナー細胞キメリズムを17日目に、および78%ドナー細胞キメリズムを32日目に示した。彼女は、移植後に無症状であり、輸血を必要としなかった。移植後727日目に、彼女は、21%ドナー細胞キメラであり(
図7A)、GVHDの証拠を示さなかった。彼女の全ドナーキメリズムはおよそ30%であったが、彼女は、ほぼ100%のドナー由来形質のRBCを生成していた(
図7B)。移植後1259日目に、彼女は、100%ドナーRBCを生成し、10〜30%の範囲のT、Bおよび骨髄系のキメリズムを有した。彼女は、まだ輸血に依存せず、彼女のSCDからのいずれの合併症も有さなかった。
【0076】
SCD#3のための処理手順中に、SCD形質の骨髄細胞の密度のために細胞分離(Percoll)手順において正しい画分を回収することが困難になることがあった。ドナー/レシピエントの対のHLAは一致していたので、このプロセスを打ち切り、生成物を枯渇させないことに決定した。よって、患者は、骨髄全体を受けた。しかし、この候補者において前処置の効力が確立された。
【0077】
(実施例3)
SCD患者#4-2006年3月に移植
SCD#4(誕生日96年5月23日)は、ナイジェリア人の男性であり、複数の疼痛発作と2回の急性胸部症候群に罹患した後に、1999年に赤血球交換を開始した。この患者の鎌状赤血球形質を有するHLA同一の同胞が、彼のドナーとなった。患者は、SCD#3と同じ非骨髄破壊的前処置を受けた。彼のHSC+hFCの用量は、5.24×10
6/kgのCD34細胞、0.55×10
6/kgのαβ-TCR細胞および0.35×10
6/kgのhFCであった。彼は、前処置に非常によく耐容性があり、FISHに基づいて1ヶ月で生着してキメラであった(88%ドナー細胞)。彼のドナーキメリズムは、697日目に28%であった(
図8A)。ドナーT細胞キメリズムは、501日目に34%であった。患者は、移植の後無症状のままであり、優勢に正常RBCを生成している(
図8B)。患者SCD#4についての網状赤血球数は、0.5%から1%の間であり、これは正常範囲である(
図8C)。
【0078】
(実施例4)
まとめ
この項では、同胞ドナーからのHLA同一骨髄を用いた2名の重度輸血SCD患者の移植の成功について記載した。これらの患者はともに、強さを低減した非骨髄破壊的前処置を用いてうまく移植を受け、2年を超えて疾患なしのままである。参加の時点で、彼らは輸血に依存しており、疼痛発作およびその他の合併症の危険性が非常に高かった。これらの患者はともに、免疫抑制から離脱することに成功した。
【0079】
項D-ヒトにおける鎌状赤血球症の処置
サラセミアからの罹患性および死亡についての危険性が高い5名の個体が、以下の参加および除外基準に従うプロトコールにより参加した。
【0080】
(実施例1)
参加基準
以下の基準を確立して、高い罹患性が予測され、早期の死亡の危険性にあるサラセミアの個体を同定した:アルファまたはベータ重症型サラセミアの患者;または他の複合型および輸血依存性ヘモグロビン異常症の患者。個体は、以下の包括的参加基準も全て満たさなければならない:個体は、関連ドナー(同一または1、2もしくは3のHLA-A、-Bもしくは-DR遺伝子座のミスマッチ)を有さなければならない;個体は、心エコー図もしくは放射性核種スキャンにより文書化された適切な心肺機能を有さなければならない(短縮率>26%または駆出率>40%もしくは年齢についての正常値の>80%);個体は、年齢について予測される≧50%のFEV1および/もしくは10歳を超える年齢の患者について、年齢について予測される≧50%のDLCO(ヘモグロビンについて補正)により文書化された適切な肺機能を有さなければならない(患者がPFTを行うことができない場合、小児もしくは成人の呼吸器科医による室内空気もしくはクリアランスについての安静時パルスオキシメータ>85%が必要である);個体は、血清アルブミン>3.0mg/dL、およびSGPTもしくはSGOT<正常な上限値の5倍により証明される適切な肝機能を有さなければならない;そして、個体は、血清クレアチニン<2mg/dLにより証明される適切な腎機能を有さなければならない。血清クレアチニンが>2mg/dLであるならば、クレアチニンクリアランス試験または核医学GFRが、≧50ml/分/1.73m
2のGFRを文書化すべきである。このプロトコールについて、年齢制限はない。
【0081】
(実施例2)
除外基準
個体は、以下の基準のいずれかを満たすとこの試験から除外される:個体は、関連ドナーを欠く;個体は、管理不能な感染または重度の併発疾患を有し、低下した強さの移植に耐容性でない可能性がある;個体は、<70%のKarnofsky(16歳を超える患者)またはLansky(16歳未満の小児)スコアにより証明されるように機能性能に重度の障害を示す;個体は、腎機能不全を示す(GFR<50ml/分/1.73m
2);個体は、陽性のヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗体試験結果を有する;個体は、陽性の血清HCG試験により示されるように妊娠している;個体の唯一のドナーは、移植を意図する時点で妊娠している;個体は、妊娠可能であり、適切な避妊を行っていない;個体は、TBIを妨げ得る放射線療法に以前に曝露された;個体は、エホバの証人である;個体は、管理されない脾機能亢進症を有する;または個体は、重度の同種免疫を示し、適切なPRBCドナーの供給を保証できない。
【0082】
(実施例3)
レシピエント評価
個体の完全な履歴および身体の検査を行う。プレHSCT LanskyまたはKarnofsky状態を推定する。履歴は、診断時の年齢、全体的な成長および発育、輸血の頻度および回数、いずれかの再生不良性発作、以前の処置(例えばヒドロキシ尿素)、ベースラインHbFとA2レベル、同種免疫状態、処置および日時、いずれかのMRIスキャン、輸血療法、感染、無菌性壊死、肝炎の履歴、鉄過剰症、以前の肝生検および病理的知見を含む。
【0083】
以下の血液学的試験を行う:CBC(Hgb、Hct、MCV、MCHC、RDW、血小板、白血球数)、白血球百分率数、網状赤血球数、フェリチン、葉酸、定量的Hgb電気泳動、PT、PTT、フィブリノゲン、直接および間接Coombs試験。さらに、アルファ遺伝子数を決定し、ベータ-グロビンハプロタイプを決定し、グロビン鎖合成研究を行い、対象のABO Rh型を決定し、スクリーニングする。
【0084】
以下の化学的値を得る:総ビリルビンおよび直接ビリルビン、SGPT、SGOT、アルカリホスファターゼ、プロテインC、IgGサブクラス、アルブミン、Ca++/PO4++/Mg++、血清電解質、BUN/クレアチニン、尿検査、クレアチニンクリアランス/GFR;ならびにT4、TSH、FSH、LHおよび成長ホルモンの内分泌レベル。
【0085】
個体のHLA型を分子分析に基づいて決定する(HLA A、B、C、DQおよびDRタイピング)。
【0086】
以下の診断試験を個体について行う:CTスキャン(脳、洞、胸部、腹部、骨盤)、PFT(従来のPFTを行うことができない年少の小児について啼泣時肺活量、10歳を超える患者についてDLCO)、EKG、心エコー図もしくはMUGAスキャン、肝臓および脾臓スキャン、胆嚢超音波、骨年齢、ならびにエストラジオールまたはテストステロン。
【0087】
個体を、以下の感染マーカーについてスクリーニングする:CMV、IgG、PCR、HSVおよびVZV IgG、HIV1および2抗体ならびにPCR、HTLV1および2抗体、B型肝炎表面抗原、B型肝炎コア抗体、C型肝炎抗体およびPCR、EBV IgGおよびIgM、トキソプラズマIgGおよびIgM、西ナイルウイルスNAT、トリパノゾーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi)(Chagas)抗体、RPRまたは等価物。
【0088】
(実施例4)
ドナー評価および選択
HLA同一のドナーとレシピエントを用いるか、またはドナーおよびレシピエントのミスマッチの対(例えばハプロタイプ一致まで(親、おば、おじ、いとこ、または同胞))を用いる。骨髄の提供を望む家族メンバーは、HLAの型を決定する。最良の利用可能なマッチを選択する。参加する全てのドナーは、幹細胞採集の前にドナースクリーニングについてのFDAの規則に従って評価する。全ての評価は、移植の30日以内に完了する。小児のドナーは、動員のために考慮する。ドナーがアフェレーシスの良好な候補でないならば、骨髄は腸骨稜から採集する。1名より多くの関連ドナーが利用可能であるならば、より近いマッチング、より若いものおよび/またはCMV陰性ドナーを選択する。全てのドナーを、鉄補充療法に供する。フェレーシスを行ったドナーには、ビタミンKおよび/またはカルシウムを補充できる。
【0089】
ドナーは、本明細書に記載するようにしてスクリーニングし、以下の情報を得る。妊娠および輸血の履歴を含むドナーの履歴および身体の検査を得る。ドナーは、CBC、百分率数;INR、PTTおよびフィブリノゲンとともにPT;ABOおよびRh型およびスクリーニング、フェリチン、鉄およびTIBC;HLAタイピング:分子分析によるHLAクラスI(-A、-B、-C)およびクラスII(-DR、-DQ)タイピング;ヘモグロビン電気泳動(サラセミア形質は許容できる);SGPTまたはSGOT、アルカリホスファターゼおよびビリルビン(総および直接);血清妊娠試験;血清電解質、BUNおよびクレアチニン;CMV、IgG、PCR、HSVおよびVZVのIgG、HIV1および2抗体ならびにPCR、HTLV1および2抗体、B型肝炎表面抗原、B型肝炎コア抗体、C型肝炎抗体およびPCR、EBV IgGおよびIgM、トキソプラズマIgGおよびIgM、西ナイルウイルスNAT、トリパノゾーマ・クルージ(Chagas)、RPRまたは等価な試験;B型肝炎コア抗体(抗体陽性であるならば、ウイルスDNAについてPCRを行い、陰性であればドナーを許容する);B型肝炎表面抗原(B型肝炎抗原陽性ドナーを拒否する);HCV抗体(ウイルスDNAについてのPCRが陰性である場合にのみ陽性ドナーを許容する);ヘルペス単純ウイルス抗体(文書での状態のみ;陽性ドナーは拒否しない);HIV I/II抗体(HIV I/II陽性ドナーを拒否する);HIV PCR(HIV PCR陽性ドナーを拒否する);HTLV I/II抗体(HTLV I/II陽性ドナーを拒否する);CMV抗体力価(もし陽性であり、レシピエントが陰性であるならば、利用可能であれば別のドナーを考慮し、そうでなければCMVスクリーニングおよび予防が義務付けられる);梅毒についての血清学的試験(もし陽性であるならば、蛍光トレポネーマ抗体試験を行う;ドナーは、蛍光トレポネーマ抗体が陰性であるならば許容する);もしドナーが21歳を超えているならば胸部X線;ならびにもしドナーが40歳を超えているならばEKGについてスクリーニングを受ける。
【0090】
(実施例5)
ドナーの移植前の処置
ドナーについて、合計で560ccの血液を、免疫能試験のためのリンパ球をアーカイブに保管するために回収する。これは、移植前の単回の血液提供(450cc)として得ることができる。残りの11の10cc黄色キャップ回収チューブは、1回目の提供の8週間後に得る。小児の骨髄ドナーについて、小児の研究採血についてのNIHガイドラインに従って、1回で3ml/kgより多くを採血せず、6週間にわたって7ml/kgより多くを採血しない。
【0091】
-4日目(HSC+hFC輸血に関して)に開始して+4日目まで、10μg/kgのG-CSFをb.i.d.投与する。回収は-1日目に開始する。最少で合計5×10
6のCD34/kgを回収する。最大で2回の回収を行う。各回の血液幹細胞提供で、5〜10mlの血液を手順の最初および最後に採血して、CD34+細胞の計数を含んで血液細胞数を測定する。
【0092】
提供の2日後および1週間後に、ドナーに接触して、有害事象が発生したかを確認する。ドナーには、提供の1ヶ月後に血液試料(7μl)を提供するように依頼して、血液細胞数が回復したことを確実にする。ドナーは、必要であれば鉄、ビタミンKまたはカルシウム治療薬で処置される。G-CSF投与、血液幹細胞提供および採血のための訪問について、以下のTable 4(表4)にまとめる(例えばXは、各訪問時に発生することを示す)。
【0094】
(実施例6)
レシピエント前処置
放射線療法士が個体を検査して、TBIのための線量測定を決定する。中心静脈アクセスを、前処置の開始前に全ての患者において確立する。Campath-1Hを、第1セッションにおいて-53、-52、-51および-50日目に30mgの最大用量で投与し、第2セッションにおいて20mgの最大用量で-24、-23、-22および-21日目に投与する。Campathの小児用量は、サイクル1において10mg/日およびサイクル2において7mg/日である。より小さいレシピエントおよび1歳未満のレシピエントについて、Campath-1Hは、第1計画について0.4mg/kgの切り上げ用量および第2計画について0.3mg/kgの切り上げ用量である。皮下または静脈内のいずれかでのCampathの投与経路は、担当医師の判断による。Campath投与の開始日時は、予定の衝突に合わせて1〜3日間前後できる。フルダラビンは、-5、-4および-3日目に投与する。個体は、TBIを受け、シクロスポリン免疫抑制を-1日目に開始する。ミコフェノール酸モフェチルでの2回目の免疫抑制薬物投与は、HSC+hFC輸血の日の夜に開始する(0日目)。前処置計画を、以下の表に示す。
【0096】
放射線は、-1日目に送達する。放射線量は、6MV加速器X線で200cGyであり、1の画分で送達する。距離、エネルギーおよび患者の寸法に依存して35〜40cGy/分の線量率を用いる。10%を超える線量変動を計測して、個体ごとに承認する。HSC+hFCの注入は0日目に行う。患者は、毎日、ペニシリンまたは等価な予防を移植後2年間または処置医師の判断によってより長く受ける。
【0097】
(実施例7)
HSC+hFC細胞処理
動員末梢血幹細胞を、アルファベータTCR T細胞およびB細胞に特異的なモノクローナル抗体とインキュベートし、次いで、免疫磁性分離により枯渇させる。注入細胞の組成物を、CD34 HSC;CD8+/TCR-/CD56
dim/neg hFC;γδT細胞およびαβ-TCR+ T細胞について染色する免疫蛍光により評価する。細胞枯渇の妥当性をフローサイトメトリー分析により決定し、臨床医に、注入の前に予備的な細胞用量を知らせる。細胞生成物は、細菌、真菌および内毒素についても分析する。HSC+hFC生成物を、施設のガイドラインに従って、モニタリングされた状況において中心静脈ラインにより注入する。
【0098】
処理した移植片を、全ての対象に投与し、移植片は、最大限に可能なアルファベータTCR用量に基づいてだけ限定される。しかし、最小限に許容できる移植片を受ける対象だけを本明細書に記載するようにして評価する(例えば処理するための回収から入手可能な少なくとも5×10
9の全白血球;レシピエントの体重1kgあたり少なくとも5×10
6のCD34;および0.5log未満のT細胞枯渇)。
【0099】
(実施例8)
細胞投与アルゴリズム
できるだけ多くのHSC、hFCおよび前駆細胞を、最大限に可能なT細胞用量の関係において投与して、GVHDを回避する。現在、最大限の投与量は、レシピエントの体重1kgあたり3.0×10
6〜4.2×10
6のアルファベータT細胞である(好ましい開始点は、レシピエントの体重1kgあたり3.8×10
6のアルファベータT細胞)。レシピエントを最短で28日間追跡する。生着が観察されないならば、最大限に可能なアルファベータTCR用量を1単位増加する(レシピエントの体重1kgあたり4×10
5)。最大限に可能なアルファベータTCR用量は、著しいGVHDなしで安定な生着が達成されるまで増加する。HLA一致移植片について、最大限のT細胞キャップはなく、細胞用量は、これらの一致移植片の転帰に基づいて増加しない。ミスマッチである患者について、最大限に可能なアルファベータTCR用量を決定する。
【0101】
有意な(>0.5%)ドナー生着が最初の28日以内に観察されるならば、個体をさらに28日間追跡して、急性GVHDの発生を評価する。
【0102】
(実施例9)
移植を受けたさらなる鎌状赤血球患者
対象#5は、移植の時点で9歳であった(2006年3月)。彼は、複数の疼痛発作、2回の急性胸部症候群のエピソードを経験した後に移植を受け、交換輸血で7年間処置された。対象は、HLA一致形質の同胞ドナーの腸骨稜骨髄を受け、上記の項Cに記載したことと本質的に同じ計画で前処置された。移植片は、体重1kgあたり5.24×10
6のCD34+細胞、体重1kgあたり0.55×10
6のアルファベータ-TCR
+細胞および体重1kgあたり0.35×10
6のFC細胞を含有した。対象は、幹細胞移植後に輸血に依存せず、移植後1525日を超えて100%のドナーRBC生成およびFISHにより20〜30%のドナーキメリズムレベルであった。免疫抑制は、移植後23ヶ月で中止した。対象は、移植の後、移植片対宿主病(GVHD)、移植関連毒性または鎌状赤血球合併症を示していない。
【0103】
対象#7は、16歳の男性であり、赤血球輸血療法を必要とする急性胸部症候群エピソードを繰り返し経験した。2009年9月に移植を受ける前に、彼は、右膝の骨髄炎および複数の血管閉塞性有痛性事象のために入院した。対象は、彼の親からハプロタイプ一致移植片を受けた。対象は、上の項Cに記載したことと本質的に同様にして前処置を受けた。対象は、前処置に対して耐容性がよく、移植の経過は良好であった。彼は、体重1kgあたり3.26×10
6のCD34+細胞、体重1kgあたり3.8×10
6のアルファベータTCR+細胞および体重1kgあたり0.5×10
6のFC細胞を受け、外来患者として管理された。残念なことに、この対象は、移植直後の期間に従順でなく、要求された通りにシクロスポリンおよびMMFを定期的に摂取しなかった。キメリズムは、移植後1ヶ月目および2ヶ月目に存在しなかった。移植後に、彼は再発疼痛発作を経験し、これはその後消散した。対象は、有害事象をモニタリングするために研究に残っているが、キメリズム試験は、移植後2ヶ月目に中止した。
【0104】
対象#8は、12歳の女性であり、疼痛発作のために多数の入院を経験した。彼女は、隔離後の脾摘出術および胆嚢摘出術を受けた。彼女は、上の項Cに記載したことと本質的に同様にして前処置を受け、SCD形質を有する彼女の親からハプロタイプ一致移植片を受けた。彼女は、体重1kgあたり19.1×10
6のCD34+細胞、体重1kgあたり3.8×10
6のアルファベータTCR+細胞および体重1kgあたり0.79×10
6のFCを受け、移植後に、外来患者として管理された。彼女は前処置に対して耐容性が非常によく、移植後1ヶ月で71%の堅固なドナー生着を示した。彼女の全血キメリズムは、84%で耐久性のあるままであり、9ヶ月目でリンパ球系キメリズムは58%、骨髄系キメリズムは95%であった。彼女は、ヘモグロビン電気泳動により示される57%のヘモグロビンA、41%のヘモグロビンSおよび2%のヘモグロビンA2により反映されるように、100%ドナーRBCを生成した。対象は、移植の後、輸血療法を必要とせず、無症状である。彼女は、GVHDの証拠を示していない。
【0105】
対象#9は、25歳の男性であり、繰り返しのPRBC輸血、鎌状赤血球症、高血圧症および腎血管疾患に伴う胆嚢摘出術を受けた後に移植を受けた。対象は、上の項Cに記載したことと本質的に同様にして前処置を受け、前処置に対して耐容性がよかった。この対象についてのアルファベータTCR+細胞は、体重1kgあたり細胞数4.2×10
6まで増加し、対象は、体重1kgあたり1.46×10
6のCD34+細胞および体重1kgあたり0.72×10
6のFCも受けた。彼は、移植後1ヶ月目で10%のドナーキメリズムを示した。彼のキメリズムは2ヶ月目で4%に、100日目で2%未満に減少した。対象は、移植後2ヶ月目に、カルシニューリン阻害剤(CNI)感受性によるクレアチニン上昇のために入院した。用量を調整し、SAEは消散した。約1ヶ月後に、彼は、発熱、グラム陽性球菌およびCMV感染のために入院した。彼は、CMV処置についての治験薬に参加するために、研究から離れた。
【0106】
項E-実質臓器移植後の移植片対宿主病(GVHD)の防止
(実施例1)
患者の採用
プロトコールのための候補者を、腎移植を待っている患者または移植について評価されている患者のリストから選択した。この選択プロセスは、University of LouisvilleのInstitute of Cellular Therapeutics(「施設」)の移植外科医および移植看護師コーディネーターが行った。
【0107】
(実施例2)
参加基準
候補患者は、18歳から65歳の間であり、終末器官不全のための腎移植について施設の基準を満たさなければならない。候補患者は、1回目の腎移植を受けなければならない。候補患者は、腎移植だけを受けなければならない。交差適合は、ドナーとレシピエントとの間で陰性でなければならない。妊娠の可能性がある女性は、TBIの開始前48時間以内に妊娠試験(尿検査が許容される)が陰性でなければならず、移植後1年間、信頼できる避妊を用いることに同意しなければならない。候補患者は、現在または過去にドナー特異的抗体の証拠を示してはならない。
【0108】
(実施例3)
除外基準
患者が臨床的に活性な細菌、真菌、ウイルスもしくは寄生体感染であるか、または妊娠しているならば、その患者は候補者でない。患者が、レシピエントが腎移植片を受けることを妨げるウイルス感染の臨床的または血清学的証拠を示すならば、その患者は適格でない。患者が、TBIを妨げる用量の放射線療法を以前に受けているか、ドナーとレシピエントとの間に陽性の交差適合があるか、またはドナーに対向する免疫記憶についての証拠があるならば、その患者は候補者でない。患者の肥満度指数(BMI)が18未満または35を超えても、その患者は除外される。
【0109】
(実施例4)
ドナー選択基準
このプロトコールについてのドナーは、腎臓および幹細胞移植についての施設の基準を全て満たさなければならない。
【0110】
(実施例5)
プロトコール
全ての操作についてのタイミングは、0日目のレシピエントのTBI前処置に関する。-3日目に開始して4日間まで、10μg/kgのG-CSFをb.i.d.投与した。回収は、0日目に開始した。0日目に、CD34計数を行った後に、G-CSFの最終用量を投与した。HSC+hFC移植は、腎臓採集の所望の日時の4〜6週間前に予定した。腎臓の提供および移植は、ドナーの血小板数がベースラインおよび腎臓提供のための安全レベル(例えば100,000/μl全血を超える)に戻るまで予定しない。
【0111】
G-CSF投与のための訪問、血液幹細胞提供および採血をTable 7(表7)にまとめる。「X」は、各訪問時に発生することを示す。
【0113】
(実施例6)
移植前の前処置
細胞用量(HSC+hFC)、ならびにレシピエントの前処置の程度および型は、生着に影響する独立した変数であった。今回のプロトコールにおいて、細胞用量および前処置は、>1%ドナーキメリズムが確立されるまで最適化した。HSC+hFCについての初期の標的細胞用量は、≧1×10
8 CD34+/kgであった。最初の患者は、200cGyのTBI、フルダラビン(-3日目〜-1日目に30mg/m
2)、ならびに6ヶ月間または臨床上の必要性に応じてのMMF(0日目に開始して15mg/kg q 12h)およびFK506(-1日目に開始して0.02mg/kg q 12h)を用いる移植後免疫抑制を受けた。患者によって薬物に対する耐容能力が異なるので、FK506(タクロリムス)またはシクロスポリンのいずれを用いるかの決定は、医師に任せた。骨髄は、+1日目に注入した。予定をTable 8(表8)に示す。
【0115】
レシピエントが透析を必要とするならば、フルダラビンの投与およびHSC+hFC注入は、特定した日の透析の後に行った。HSC+hFC注入の日の午前に、HSC+hFCの容量を受け入れるために、1リットルの容量を余分に透析から除去した。次いで、透析を、HSC+hFC注入の48時間以上後に予定して、細胞が骨髄区画に帰る最適な機会を与えた。
【0116】
(実施例7)
転帰
最小限でHSC+hFC注入後約2週間、またはレシピエントが幹細胞移植手順から完全に回復するために必要なだけ長く経過した後に、腎移植を同じドナーから行った。以下のアルゴリズムは、HSC+hFC移植の転帰に基づいて用いた。
【0117】
1)レシピエントが≧1%のキメリズムを示し、ドナーに対して耐容性があると決定されたならば、腎臓に対するドナー:宿主寛容が確立される間に少なくとも6ヶ月のPrografおよびMMFを投与した。レシピエントは、移植時にCampath-1Hまたはいずれのさらなる免疫抑制薬も受けなかった。
【0118】
2)レシピエントが生着しないならば、患者を、移植前にフロー交差適合により試験して、ドナー特異的抗体が発生していないことを確実にした。ドナー特異的抗体が存在しないならば、患者は、Campath-1Hでの従来のリンパ球枯渇導入を用いる生体腎移植と、その後、FK506およびMMFでの維持免疫抑制とを受けた。ALGのような導入療法についての他のリンパ球枯渇アプローチを、医療の標準に応じてCampathの代わりに用いることができる。
【0119】
3)ドナー特異的抗体が発生しているならば、患者を評価し、臨床的に適当な抗体低減プロトコールを移植の前に実行した。患者の感作は予期されなかった。
【0120】
(実施例8)
細胞投与アルゴリズム
本研究の目的は、GVHDを回避しながら、同種生着のための適当なHSC、hFCおよび前駆細胞を有する移植片を工学的に作製することであった。最大限に可能なアルファベータT細胞用量と結びついた細胞投与アルゴリズムを確立した。例えば、毒性(GVHD)が生じないが生着に耐久性がないならば、最大限に可能なT細胞用量を1単位増加させた(以下を参照されたい)。多くのHSC、hFCおよび前駆細胞を含有する最大限に可能なT細胞用量を投与した。用いたアルゴリズムをTable 9(表9)に示す。
【0122】
この細胞投与は、現在、最大でレシピエントの体重1kgあたり3.0×10
6〜4.2×10
6のアルファベータT細胞を可能にする。レシピエントの体重1kgあたり3.8×10
6のアルファベータT細胞が開始用量であった。各患者を少なくとも28日間追跡した。生着の証拠が観察されないならば、最大限に可能なアルファベータ-TCR用量を1単位(レシピエントの体重1kgあたり4×10
5)増加した。最大限に可能なアルファベータ-TCR用量は、著しいGVHDなしで安定な生着が達成されるまで対象において増加した。HLA一致移植片について、最大T細胞キャップはなく、細胞用量は、一致移植片の転帰に基づいて増加しなかった。ミスマッチである患者について、最大限に可能なアルファベータTCR用量を決定した。
【0123】
有意な(>0.5%)ドナー生着が最初の28日以内に観察されたならば、対象をさらに28日間追跡して、急性GVHDの発生を評価した後に、細胞用量を増加した。急性GVHDの大多数の症例は、移植後8週間までに明らかになると予想された。重度のGVHDの証拠が観察されたならば、最大限に可能なT細胞用量を、安全であると証明されているレベルまで低減した。現在までに、GVHDは観察されていない。
【0124】
(実施例9)
HSC+hFC
ドナーPBMCを処理して、hFCおよびHSCを濃縮した。強磁性アプローチを用いて、GVHD生成T細胞およびB細胞を含む全骨髄組成物のおよそ85%を除去した。得られた生成物は、hFC、HSCおよび前駆細胞が濃縮されていた。処理の妥当性をフローサイトメトリーにより確認した後に、HSC+hFC移植片を注入のために承認した。ドナー細胞採集の72時間後までの骨髄移植の遅延を許容して、骨髄処理および移植を可能にした。用量を調整したBactrimとValcyte(CMV+であるならば)またはValtrex(CMV-であるならば)での予防を開始した。患者は、例えば呼吸、血圧または過敏症を示し得る血管浮腫におけるいずれの変化についても検出するために、骨髄の注入中および注入後に注意深くモニタリングした。
【0125】
(実施例10)
移植後免疫抑制
このプロトコールに参加した対象は、担当医師の判断で、そして施設のプロトコールに従って、標準的な免疫抑制を受けた。1ヶ月目でドナーキメリズムの証拠がない死亡ドナーの腎臓/HSC+hFCのレシピエントおよび生存ドナーのHSC+hFCのレシピエントについて、これは、全般的に、ALGまたはCampathでのリンパ球枯渇導入療法の後のPrografとMMFとを含んだ。Prografのレベルは、8〜12ng/mlの間に維持した。0日目に開始して、MMFを、全般的に、1〜1.5gm b.i.d.で投与した。1回用量のCampathを30mg IVで、手術室において場合によって与えた。SoluMedrolは、Campath用量の1時間前に手術室において500mg IVの用量で、次いで手術後の1日目に250mg IVの用量で、手術後の2日目に125mgの用量で与えた。FK506およびMMFは、キメラである患者において少なくとも6ヶ月間継続して、生着および寛容誘導を助長した。
【0126】
(実施例11)
予備的実質臓器移植プロトコール
予備的実験は、腎移植レシピエントにおけるHSC+hFCおよび免疫に基づく骨髄非破壊的前処置の成功と安全性を証明した。HSC+hFCの投与を行って、安全性を最大限にし、HSCおよびhFC含量を最適化した。全体的な目的は、GVHDを完全に回避することであった。実質臓器寛容プロトコールを、レシピエントの体重1kgあたり最大で0.2×10
6のT細胞を用いて開始して、用量漸増を行った。GVHDについての他のエフェクター細胞(NK、B細胞およびAPC)が、全アルファベータT細胞に対して比例する量で全て存在するため、全アルファベータT細胞を用量漸増実験において用いた。CD34およびhFC用量を、最大限に可能なT細胞用量内で最適化した。著しい免疫学的事象(すなわち拒絶エピソードまたは抗体生成)は、いずれの患者においても観察されなかった。GVHDを発症した患者はいなかったが、一過性のキメリズムだけが観察された。
【0127】
2004年9月以降、9名の心臓患者および11名の腎臓患者に、Table 10(表10)に示す用量漸増方策を用いて移植を行った。Table 10(表10)において強調する患者5、6、12および13について、より詳細に記載する。3名の患者は、生存ドナーからの腎臓/HSC+hFC同時移植を受け、残りの患者は、死亡ドナーから腎臓を受けた。4名の患者は全て、200cGyのTBIで前処置され、Campathでのリンパ球枯渇導入療法を受けた後に、MMFおよびカルシニューリン阻害剤での維持免疫抑制を受けた。彼らは、フルダラビンを受けなかった。これらの4名の患者について、以下に簡単に記載する。
【0128】
患者#5は、55歳の男性であり、2005年9月に死亡ドナー腎臓同種移植/HSC+hFC移植を受けた。患者は、レシピエントの体重1kgあたり3.7×10
6のCD34および0.8×10
6のhFCを受けた。前処置は耐容性がよく、アプローチに関連する有害事象は発生しなかった。ドナーとレシピエントとは、1/6のHLA抗原一致があった。患者は、予測される最下点を経験し、次いで、免疫機能および内因性の造血を回復した。彼は、最近の血清クレアチニンが2.1で、良好である。
【0129】
患者#6は、58歳の男性であり、2005年11月に生体腎臓/HSC+hFC移植を関連のない友人から受けた。患者は、レシピエントの体重1kgあたり1.33×10
6のCD34および0.18×10
6のhFCを受けた。前処置は耐容性がよく、アプローチに関連する有害事象は発生しなかった。ドナーとレシピエントとは、1/6のHLA抗原一致があった。患者は、予測される最下点を経験し、次いで、免疫機能および内因性の造血を回復した。彼は、最近の血清クレアチニンが2.0で、良好である。
【0130】
患者#12は、37歳の女性であり、2007年10月に生体腎臓/HSC+hFC移植を彼女のいとこから受けた。彼女は、レシピエントの体重1kgあたり2.24×10
6のCD34および0.41×10
6のhFCを受けた。前処置は耐容性がよく、アプローチに関連する有害事象は発生しなかった。ドナーとレシピエントとは、2/6のHLA抗原一致があった。患者は、予測される最下点を経験し、次いで、免疫機能および内因性の造血を回復した。彼女は、最近のクレアチニンが1.2で、良好である。
【0131】
患者#13は、49歳の女性で、2007年11月に腎臓/HSC+hFC移植を彼女の兄弟から受けた。患者は、レシピエントの体重1kgあたり3.85×10
6のCD34および0.78 10
6のhFCを受けた。前処置は耐容性がよく、アプローチに関連する有害事象は発生しなかった。ドナーとレシピエントとは、4/6のHLA抗原一致があった。患者は、予測される最下点を経験し、次いで、免疫機能および内因性の造血を回復した。彼女は、最近のクレアチニンが1.2で、良好である。
【0133】
(実施例12)
予備的プロトコールの結果
初期において、観察されたキメリズムは低く(<0.2%)、一過性だけであった。しかし、全細胞用量を増加すると、耐久性のある混合キメリズムが達成された。移植片に対する免疫応答は、混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおける一過性のドナー特異的寛容(より最近移植された患者において観察された)および臨床的または組織学的拒絶エピソードが存在しないことにより証明されるように、骨髄注入により調節された。
【0134】
生着しなかったこれらの患者において内因性の造血が回復したことにより、前処置の非骨髄破壊的性質が確認された。7日間から18日間の間にレシピエントにおいて発生した1,000未満の好中球絶対数(ANC)の予測される最下点があり(
図9Aおよび11A)、これは、患者#12において外来患者として管理された。G-CSFの投与は回復を加速しなかった。MMFおよびFK506を最下点の間に継続して、生着を助長した。B細胞(CD19)、CD4+細胞およびCD8+細胞の回復は、3ヶ月目までにCampath-リンパ球枯渇レシピエント#12において発生した(
図11B)。血小板数を実質臓器移植の後に決定した(
図9B、10Aおよび11C)。存在するならば、血小板最下点は、典型的に短く、通常、輸血療法を必要としなかった。実質移植患者において確立されたキメリズムを、
図9Cおよび10Bに示す。
【0135】
(実施例13)
実質臓器移植についての改変プロトコール
フルダラビン前処置を加え、腎臓移植片を配置する1ヶ月前にHSC+hFCを投与して生体移植を逐次的に行うために、腎臓/HSC+hFC移植プロトコールを改変した。
【0136】
1回目の移植(ステージ1 FCRx)を2008年3月に行った(Table 10(表10)の患者#15)。彼女は、31歳の女性であり、彼女の夫が彼女のドナーであった。患者は、現在、最下点期間にあり、外来患者として良好である。14日目に行ったフロー交差適合は、陰性であった(Table 11(表11))。このアッセイにおいて、ドナーTおよびB細胞への抗体の結合を、MCDF単位でのフローサイトメトリー分析により測定した。
【0138】
これらの結果は、非骨髄破壊的前処置の安全性、ならびにHSC+hFC処理および生成物の実質臓器移植における実現性を証明した。いずれのレシピエントもドナーに対して感作されなかったことが注目される。
【0139】
項F-腎臓移植
(実施例1)
ドナーおよびレシピエントの適格性
全てのプロトコールは、Northwestern Institutional Review Board、FDA IND 13881により承認され、全てのドナーおよびレシピエントからインフォームドコンセントを得た。ドナーおよびレシピエントは、適切な生体移植ドナーおよびレシピエントとして施設の基準を満たさなければならなかった。参加者は、研究への参加を考慮されるために、移植前ドナーおよびレシピエント評価の全ての段階を完了しなければならなかった。移植レシピエントについての参加基準は、18歳から65歳の間の年齢、フローPRA分析により評価されるドナー特異的抗体の非存在、および生体腎臓移植片だけを受けることを含んだ。妊娠可能年齢の女性は、TBIを受ける前48時間以内に妊娠試験(尿検査が許容される)が陰性でなければならず、移植後1年間、信頼できる避妊を用いることに同意しなければならない。除外基準は、臨床的に活性な細菌、真菌、ウイルスまたは寄生体感染、妊娠、TBIを妨げる用量の以前の放射線療法、ドナーとレシピエントとの間の陽性のフローサイトメトリー交差適合、ドナー特異的抗体の存在、肥満度指数(BMI)>35または<18、ならびにHBV、HCVおよびHIVについての陽性の血清学を含んだ。
【0140】
(実施例2)
前処置およびドナー生成物調製
前処置は、
図12に示すように、腎移植に関して-4、-3、-2日目の3回の用量のフルダラビン(30/mg/kg/用量);-3および+3日目の2回の用量のシクロホスファミド(Cytoxan;50mg/kg/用量);ならびに-1日目の200cGyのTBIからなった。血液透析を、フルダラビンおよびCytoxanの投与後6〜8時間行った。タクロリムス(標的トラフ濃度8〜12ng/ml)およびミコフェノール酸モフェチル(MMF)(Cellcept;レシピエントの体重が<80kgであるならば1gmを経口で1日2回、レシピエントの体重が>80kgであるならば1.25gmを1日2回)を-3日目に開始し、全体を通して継続した。HSC+hFCは、レシピエントに、0日目(すなわち移植と同日)または+1日目に投与できる。
【0141】
(実施例3)
造血幹細胞回収
腎移植の少なくとも2週間前に、ドナーを、10mcg/kg b.i.d.の顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を用いて動員し、アフェレーシスを+4日目に行った。生成物を配達業者によりInstitute for Cellular Therapeutics (ICT)に輸送し、成熟移植片対宿主病(GVHD)生成細胞を除去しながら造血幹細胞(HSC)、促進細胞(FC)および前駆細胞を保持するために処理した。生成物を、次いで、新鮮な生成物または低温保存されたもののいずれかとして、注入のためにNorthwestern Universityに送り返した。
【0142】
(実施例4)
免疫学的モニタリング
PHA、カンジダ、破傷風トキソイド、ドナーおよび第三者同種抗原に対するレシピエントの応答を毎月試験した(例えば、Patelら、2008、J. Allergy Clin. Immunol.、122:1185〜93頁を参照されたい)。ドナー抗体を検出するためのフロー交差適合アッセイを1および6ヶ月目に行った。キメリズム試験を、ショートタンデムリピートを用いる分子アッセイにより行った(Akpinarら、2005、Transplant.、79:236〜9頁)。調査監視生検を1年目に行った。選択された時点にて、末梢血の免疫表現型分析をT細胞、B細胞、NK細胞、単球、CD4
+/CD25
+ Fox P3
+制御性T細胞(T
reg)およびTエフェクター細胞(T
eff)の回復について行った。
【0143】
(実施例5)
キメリズム試験
キメリズムを、ショートタンデムリピート(STR)をコードする単純配列長多型の遺伝子型決定により決定した。系列キメリズム試験のために、CD19
+(B細胞)、CD3
+(T細胞)およびCD66B
+骨髄系細胞を全血から選別し、次いで、分子STRタイピングにより分析した。
【0144】
(実施例6)
免疫抑制の離脱
PrografおよびMMFを、医療の標準に応じて、移植後6ヶ月まで継続した。この時点で、キメリズムまたはドナー特異的寛容が存在するならば、MMFをまず中止し、次いで、Prografを、その後数ヶ月間で治療量未満に漸減させた(例えば9ヶ月間で≦3.0ng/ml)。Prografは、キメリズムおよび/またはin vitroドナー特異的反応性低下の証拠が存在するならば、12ヶ月目に中止した。
【0145】
(実施例7)
結果
対象#1〜対象#9のまとめを以下のTable 12(表12)に示し、Table 13(表13)は、細胞投与計画を示す。数人の対象について、以下により詳細に論じる。
【0146】
対象#3は、43歳の白人男性であり、多発性嚢胞腎疾患によりESRDを発症した。6つのうち1つのHLAが一致した無関係の利他的ドナーが彼のドナーであった。レシピエントの体重1kgあたり合計で3.8×10
6のアルファベータTCR
+ T細胞、2.53×10
6のCD34細胞および4.48×10
6のFCの低温保存生成物を注入した。レシピエントは、1ヶ月目で95%のドナーキメリズムを示し、キメリズムは、移植後18ヶ月にわたって63%から100%の間で変動した(
図13A)。12ヶ月目に、多系列試験は、100%のB細胞、T細胞および骨髄系の生成を明らかにした(
図13B)。フロー交差適合は、1ヶ月目および6ヶ月目に陰性であった。5ヶ月目に、レシピエントは、ドナー特異的寛容および第三者の同種抗原に応答する免疫能を示した(
図13C)。これは12ヶ月間持続した。彼の腎機能は、クレアチニン生成量に基づいて、安定したままである(
図13D)。対象は、6〜15日目の間に一過性の最下点を示し(
図13Eおよび13F)、これは外来患者として管理された。
【0147】
対象#5は、40歳の男性であり、彼の腎機能不全は、続発性から慢性の糸球体腎炎であった。彼は、FC/腎臓の組み合わせ移植を、6つのうち1つのHLAが一致した無関係のドナーから受けた。彼の生成物は、レシピエントの体重1kgあたり3.8×10
6のアルファベータ-TCR
+ T細胞、0.7×10
6のFCおよび3.94×10
6のCD34細胞を含んだ。最下点は、前の対象と同様のパターンをたどった。キメリズムは、1ヶ月目で100%、3ヶ月目で92%および5ヶ月目で94%であった。ドナー特異的寛容プロフィールは、PHAおよび第三者同種抗原に対する(しかし、ドナーに対してでない)応答とともに3ヶ月目に出現し始めた。
【0148】
対象#6は、39歳の女性であり、逆流に続いてESRDを発症した。彼女は、2回目の腎移植を、6つのうち2つのHLAが一致した無関係のドナーから受けた。生成物は、レシピエントの体重1kgあたり3.8×10
6のアルファベータTCR
+ T細胞、8.59×10
6のCD34
+および3.11×10
6のFC細胞からなった。レシピエントは、1ヶ月目に100%のドナーキメリズムを示した。
【0151】
(実施例8)
hFCおよび生体腎移植のまとめ
移植された9名の対象のうち、非骨髄破壊的前処置は耐容性がよかった。さらに、全ての対象についての移植後最下点期間は、外来患者として管理が容易であった。
【0152】
9名の対象のうち8名が、1ヶ月目に6%〜100%の範囲で移植後にマクロキメリズム(macrochimerism)を示した。耐久性のあるキメリズムが、対象の大多数で達成された。
【0153】
1名の対象は、免疫抑制から完全に離脱した。数名の対象は、ドナー特異的反応性低下の証拠を示し、免疫抑制から離脱しようとしている。対象は、マイトジェン(PHA)、カンジダおよびMHCが異なる第三者の同種抗原に応答する免疫適格性があった。
【0154】
対象は、HLAミスマッチにもかかわらず、いずれもGVHDを発症しなかった。
【0155】
項G.代謝障害
(実施例1)
遺伝性代謝障害の処置
対象#1は、異染性白質ジストロフィーの7歳の小児であった。彼は、6つのうち3つのHLAが一致した移植片を、異染性白質ジストロフィーの形質を有する父親から受けた。対象は、上の項C、実施例2に記載したことと本質的に同様にして前処置を受けた。彼は、外来患者として前処置および注入に対して耐容性が非常によかった。彼は、体重1kgあたり14.4×10
6のCD34+細胞、体重1kgあたり3.8×10
6のアルファベータTCR+細胞および体重1kgあたり4.1×10
6のFCを受けた。彼の最下点は短く、輸血療法を必要としなかった。分子STRによる彼のキメリズムは、80%〜98%の間の範囲である。移植後14ヶ月目に、レシピエントはGVHDを示さなかった。この対象についてのMLRの結果は、ドナーに対する寛容を示し、耐久性のある長期の生着の可能性が確認された。移植前に、対象のアリールスルファターゼA酵素レベルは3であったが、これと比較してドナーのレベルは移植後に50であった。対象のレベルは移植後3および6ヶ月でおよそ50であり、移植後1年目で88.6であった。これは、表現型が正常な患者の酵素レベルを示す。
【0156】
その他の実施形態
方法および組成物について、その詳細な説明とともに記載したが、上記の記載は、説明を意図し、本発明の範囲を限定せず、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲により定義されることが理解される。他の態様、利点および改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。