(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外周側最大傾斜部は、前記軸方向において、ダクト入口から前記第2タービン側に前記ダクト長の50%の長さ進んだ位置から、70%以下の長さ進んだ位置までの範囲に設けられることを特徴とする請求項1に記載のトランジションダクト。
ダクト出口における前記ガス流路の平均径とダクト入口における前記ガス流路の平均径との差分と、前記ダクト長との比は、1.5以上1.6以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトランジションダクト。
前記内周側流路面のダクト入口における前記傾斜角及び前記外周側流路面の前記ダクト入口における前記傾斜角は、0°であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のトランジションダクト。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、低圧タービンは高圧タービンよりも径が大きいため、トランジションダクトのガス流路の内面は、高圧タービン側から低圧タービン側に向かうにしたがって拡径するように、軸方向に対して傾斜しながら延びる。また、タービンの効率向上及び重量低減を図るためには、ガス流路を十分に拡径しつつ、ダクト長を短くしたい。その結果、ガス流路の内面の軸方向に対する傾斜角が大きくなり、ガス流路の内面から主流ガスの流れが剥離しやすくなるおそれがある。主流ガスの流れの剥離は、圧力損失の増加につながり、結果的にタービンの効率低下を招く。上記特許文献1に記載のトランジションダクトは、半径方向外側の壁の傾きをガス流路の途中までは増加させ、ガス流路の途中からは減少させることで、主流ガスの流れの剥離抑制を図っている。しかしながら、主流ガスの流れの剥離抑制は、さらに改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、タービンの効率向上及び重量低減の両立を図りながら、トランジションダクト内の主流ガスの流れの剥離をより良好に抑制して、さらなるタービンの効率向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、第1タービンから第2タービンへと流れる主流ガスが流通する環状のガス流路を形成するトランジションダクトであって、前記ガス流路は、前記第1タービン及び前記第2タービンの回転軸の中心側の内周側流路面と、前記内周側流路面の外周側に、前記内周側流路面と対向して設けられた外周側流路面とを有し、前記内周側流路面及び前記外周側流路面は、前記第1タービンから前記第2タービンに向かうにしたがって、前記回転軸の軸方向に対する傾斜角が変化しつつ、前記回転軸の径方向外側に延び、前記内周側流路面の前記傾斜角が最大となる内周側最大傾斜部は、前記軸方向において、前記外周側流路面の前記傾斜角が最大となる外周側最大傾斜部と並ぶ位置から、前記第2タービン側にダクト長の20%以下の長さ進んだ位置までの範囲に設けられることを特徴とする。
【0007】
本発明のトランジションダクトは、軸方向において、内周側最大傾斜部を外周側最大傾斜部と並ぶ位置から、第2タービン側にダクト長の20%以下の長さ進んだ位置までの範囲に配置する。これにより、内周側最大傾斜部によって、外周側最大傾斜部の近傍に、内周側から外周側へと向かう主流ガスの流れを形成することができるため、外周側最大傾斜部の周囲において、主流ガスが内周側に向って剥離することを抑制することができる。その結果、ガス流路の内面(内周側流路面及び外周側流路面)の傾斜角を全体として比較的に大きくしてガス流路の十分な拡径とダクト長の短縮化とを実現しつつ、ガス流路内で発生する圧力損失をより低減させることが可能となる。したがって、本発明のトランジションダクトによれば、タービンの効率向上及び重量低減の両立を図りながら、トランジションダクト内の主流ガスの流れの剥離をより良好に抑制して、さらなるタービンの効率向上を図ることができる。
【0008】
また、前記外周側最大傾斜部は、前記軸方向において、ダクト入口から前記第2タービン側に前記ダクト長の50%の長さ進んだ位置から、70%以下の長さ進んだ位置までの範囲に設けられることが好ましい。これにより、外周側最大傾斜部をトランジションダクトの後半側に設け、外周側最大傾斜部に至るまでの外周側流路面の傾斜角の変化を比較的に緩やかにすることができるため、外周側流路面からの主流ガスの流れの剥離をさらに良好に抑制することが可能となる。
【0009】
また、ダクト出口における前記ガス流路の平均径とダクト入口における前記ガス流路の平均径との差分と、前記ダクト長との比は、1.5以上1.6以下であることが好ましい。これにより、ガス流路の拡径量(上記差分)を確保しつつ、ダクト長の短縮化を図ることができる。また、このようにガス流路の十分な拡径とダクト長の短縮化を図った場合にも、本発明のトランジションダクトによれば、主流ガスの流れの剥離をより良好に抑制することができる。
【0010】
また、前記外周側最大傾斜部における前記傾斜角は、35°以上45°以下であることが好ましい。これにより、外周側流路面の傾斜角を全体として比較的に小さくすることができるため、外周側流路面からの主流ガスの流れの剥離をさらに良好に抑制することが可能となる。
【0011】
また、前記外周側最大傾斜部における前記傾斜角は、35°以上40°未満であることが好ましい。これにより、外周側流路面の傾斜角を全体として比較的に小さくすることができるため、外周側流路面からの主流ガスの流れの剥離をさらに良好に抑制することが可能となる。
【0012】
また、前記内周側流路面のダクト入口における前記傾斜角及び前記外周側流路面の前記ダクト入口における前記傾斜角は、0°であることが好ましい。これにより、ダクト入口付近における主流ガスの流れの剥離をより良好に抑制することができる。
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のタービンは、第1タービンと、前記第1タービンよりも低圧の第2タービンと、前記第1タービンから前記第2タービンに流れる前記主流ガスが流通する前記ガス流路を形成する前記トランジションダクトと、を備えることを特徴とする。
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のガスタービンエンジンは、空気を圧縮する圧縮機と、燃料を噴射すると共に、噴射された前記燃料と前記圧縮機で圧縮された空気とを混合させて燃焼させる燃焼器と、前記燃料を燃焼させることで発生した前記主流ガスによって駆動する前記タービンと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかるトランジションダクト、タービン、及びガスタービンエンジンは、タービンの効率向上及び重量低減の両立を図りながら、トランジションダクト内の主流ガスの流れの剥離をより良好に抑制して、さらなるタービンの効率向上を図ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明にかかるトランジションダクト、タービン、及びガスタービンエンジンの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0018】
図1は、本発明の実施形態にかかるトランジションダクト、タービン及びガスタービンエンジンを示す概略構成図である。実施形態にかかるガスタービンエンジン10は、航空用ガスタービンエンジン(ジェットエンジン)である。
図1に示すように、ガスタービンエンジン10は、ファンケーシング11と、本体ケーシング12とを有する。ファンケーシング11は、内部にファン13を収容する。本体ケーシング12は、内部に圧縮機14と、燃焼器15と、タービン16とを収容する。圧縮機14と、燃焼器15と、タービン16とは、回転軸21の軸心Rの延在方向に沿って設けられている。
【0019】
ファン13は、回転軸21の外周部に複数のファンブレード22が装着されて構成されている。回転軸21は、ファンケーシング11および本体ケーシング12に対して軸心Rの廻りに回転可能に支持されている。ファン13は、回転軸21の回転に伴って軸心Rの廻りに回転し、当該軸心Rに沿って本体ケーシング12に空気を送る。
【0020】
圧縮機14は、空気の流れの上流側から下流側に配置された低圧コンプレッサ23と高圧コンプレッサ24とを有する。圧縮機14は、低圧コンプレッサ23と高圧コンプレッサ24とにより空気を圧縮する。燃焼器15は、圧縮機14よりも空気の流れの下流側に位置し、回転軸21の周りである周方向に沿って配置されている。燃焼器15は、燃料を噴射すると共に、噴射された燃料と圧縮機14で圧縮された空気とを混合させて燃焼させる。
【0021】
タービン16は、燃焼器15より空気の流れの下流側に位置し、高圧タービン(第1タービン)25と低圧タービン(第2タービン)26とを有する。低圧タービン26は、高圧タービン25よりも、空気の流れの上流側から下流側に配置される。本実施形態において、低圧タービン26は、高圧タービン25よりも径が大きい。高圧タービン25と低圧タービン26との間には、高圧タービン25から低圧タービン26へと流れる主流ガス(燃焼ガス)が流通するガス流路40(
図2参照)を形成するトランジションダクト30が配置されている。そして、ファン13の回転軸21と低圧コンプレッサ23とが連結され、低圧コンプレッサ23と低圧タービン26とが回転軸21と同軸上に配置された第一ロータ軸27により連結されている。また、高圧コンプレッサ24と高圧タービン25とが、第一ロータ軸27の外周側で、回転軸21と同軸上に配置された円筒形状をなす第二ロータ軸28により連結されている。つまり、高圧タービン25及び低圧タービン26は、回転軸21の軸心Rを中心に回転する。
【0022】
したがって、ファン13により送られて圧縮機14にて取り込まれた空気が、低圧コンプレッサ23と高圧コンプレッサ24における複数の静翼と動翼を通過して圧縮されることで高温・高圧の圧縮空気となる。そして、この圧縮空気に対して燃焼器15にて燃料が供給され、作動流体である高温・高圧の燃焼ガスが生成される。この燃焼器15で生成された燃焼ガスが、タービン16を構成する高圧タービン25における複数の静翼及び動翼を通過し、さらに、トランジションダクト30のガス流路40を介して低圧タービン26へと送られ、低圧タービン26の複数の静翼及び動翼を通過することで、回転力が発生する。それにより、低圧タービン26の回転力が第一ロータ軸27により低圧コンプレッサ23に伝達されて駆動する。また、高圧タービン25の回転力が第二ロータ軸28により高圧コンプレッサ24に伝達されて駆動する。また、低圧コンプレッサ23の回転力が回転軸21によりファン13に伝達されて駆動する。その結果、タービン16から排出される排気ガスにより推力を得ることができる。
【0023】
次に、本発明の実施形態にかかるトランジションダクトについて説明する。
図2は、実施形態にかかるトランジションダクトを示す断面図である。
【0024】
トランジションダクト30は、内筒部材31と、外筒部材32とを備える。内筒部材31は、筒状の部材である。内筒部材31は、高圧タービン25及び低圧タービン26の回転軸21の軸心Rと同軸に配置される。内筒部材31は、高圧タービン25の最終段における動翼251の直後に設けられる。また、内筒部材31は、低圧タービン26の1段目の静翼261の直前に設けられ、静翼261を支持するシュラウド26aに接続される。外筒部材32は、内筒部材31の外側に当該内筒部材31と同軸(回転軸21の軸心Rと同軸)に配置された筒状部材である。外筒部材32は、図示しない連結部材を介して内筒部材31に連結される。外筒部材32は、高圧タービン25の動翼251の直後に設けられる。また、外筒部材32は、低圧タービン26の1段目の静翼261の直前に設けられ、静翼261を支持するシュラウド26aに接続される。
【0025】
トランジションダクト30のガス流路40は、高圧タービン25及び低圧タービン26の回転軸である回転軸21の中心(軸心R)側の内周側流路面41と、内周側流路面41の外周側に、内周側流路面41と対向して設けられた外周側流路面42とを有する。内周側流路面41は、内筒部材31の外周面により形成される。また、外周側流路面42は、外筒部材32の内周面により形成される。すなわち、ガス流路40は、回転軸21の軸心Rと同軸上に配置された内筒部材31及び外筒部材32により形成される。以下、回転軸21の軸方向を「軸方向」といい、回転軸21の径方向を「径方向」という。
【0026】
図3は、実施形態にかかるトランジションダクトの内周側流路面及び外周側流路面のプロフィールを示す説明図である。
図3の横軸は、トランジションダクト30のダクト入口30aからの軸方向距離を示し、縦軸は、トランジションダクト30の中心301(回転軸21の軸心R。
図2参照)からの径方向距離を示す。なお、
図3の横軸及び縦軸は、トランジションダクト30のダクト長Lによって除算することで、無次元化されている。以下の説明においては、ダクト入口30aからのダクト長Lのα%進んだ軸方向位置をX=α/100と記載する。つまり、以下の説明において、X=0.0の位置は、トランジションダクト30のダクト入口30aであり、X=1.0の位置は、トランジションダクト30のダクト出口30bである。また、
図3には、比較例としてのトランジションダクト50のプロフィールを記載している。
【0027】
また、
図4は、実施形態にかかるトランジションダクトの内周側流路面の軸方向に対する傾斜角及び外周側流路面の軸方向に対する傾斜角の変化を示す説明図である。
図4の横軸は、トランジションダクト30のダクト入口30aからの軸方向距離を示し、縦軸は、内周側流路面41の傾斜角Φ1及び外周側流路面42の傾斜角Φ2の値を示す。
図4の横軸も、トランジションダクト30のダクト長Lによって除算することで、無次元化している。
図4には、比較例としてのトランジションダクト50について、内周側流路面51の軸方向に対する傾斜角θ1及び外周側流路面52の軸方向に対する傾斜角θ2の値を記載している。
【0028】
ここで、ダクト入口30aは、トランジションダクト30の高圧タービン25側の開口端である。また、ダクト出口30bは、トランジションダクト30の低圧タービン26側の開口端である。本実施形態において、ダクト出口30bは、低圧タービン26の静翼261とガス流路40の平均径40hに該当する位置を繋いだ線(
図3における一点鎖線)が交わる位置である。ガス流路40の平均径40hは、トランジションダクト30の中心301(
図2参照)から、ガス流路40の中心(内周側流路面41と外周側流路面42との中間位置)までの径方向距離である。また、トランジションダクト30のダクト長Lは、ダクト入口30aからダクト出口30bまでの軸方向距離である。
【0029】
図3に示すように、ガス流路40の内周側流路面41は、高圧タービン25から低圧タービン26に向かうにしたがって、軸方向に対する傾斜角Φ1が変化しつつ、径方向外側に延びる。また、ガス流路40の外周側流路面42も、同様に、高圧タービン25から低圧タービン26に向かうにしたがって、軸方向に対する傾斜角Φ2が変化しつつ、径方向外側に延びる。つまり、ガス流路40(トランジションダクト30)は、高圧タービン25側から低圧タービン26側に向かうにしたがって、拡径する(平均径40hが大きくなる)。トランジションダクト30において、ダクト出口30bにおけるガス流路40の平均径40hとダクト入口30aにおけるガス流路40の平均径40hとの差分H(ガス流路40の拡径量)と、ダクト長Lとの比は、1.5以上1.6以下である。なお、比較例としてのトランジションダクト50も、同様である。
【0030】
実施形態にかかるトランジションダクト30において、外周側流路面42の傾斜角Φ2が最大となる外周側最大傾斜部421は、軸方向において、ダクト入口30aから低圧タービン26側にダクト長Lの50%の長さ進んだ位置から、70%以下の長さ進んだ位置までの範囲A1に設けられる。範囲A1は、
図3及び
図4の横軸において、X=0.5からX=0.7までの範囲である。外周側最大傾斜部421は、X=0.6の位置に設けられることがより好ましい。また、実施形態にかかるトランジションダクト30において、外周側最大傾斜部421における傾斜角Φ2である最大傾斜角Φ2maxは、35°以上45°以下である。
【0031】
また、実施形態にかかるトランジションダクト30において、内周側流路面41の傾斜角Φ1が最大となる内周側最大傾斜部411は、軸方向において、外周側最大傾斜部421と並ぶ位置から、低圧タービン26側にダクト長Lの20%以下の長さ進んだ位置までの範囲A2に設けられる。本実施形態において、範囲A2は、外周側最大傾斜部421がX=0.5に位置する場合、X=0.5からX=0.7の範囲であり、外周側最大傾斜部421がX=0.7に位置する場合、X=0.7からX=0.9の範囲である。内周側最大傾斜部411は、軸方向において、外周側最大傾斜部421と並ぶ位置から、低圧タービン26側にダクト長Lの10%の長さ進んだ位置に設けられることが、より好ましい。また、実施形態にかかるトランジションダクト30において、内周側最大傾斜部411における傾斜角Φ1である最大傾斜角Φ1maxは、外周側最大傾斜部421における傾斜角Φ2である最大傾斜角Φ2maxよりも小さいものとされる(例えば、30°以上40°以下)。
【0032】
また、
図3及び
図4に示すように、実施形態にかかるトランジションダクト30において、内周側流路面41のダクト入口30aにおける傾斜角Φ1及び外周側流路面42のダクト入口30aにおける傾斜角Φ2は、0°である。つまり、内周側流路面41及び外周側流路面42は、ダクト入口30aの近傍において、軸方向と平行に延びる。
【0033】
一方、
図4に示すように、比較例としてのトランジションダクト50において、内周側流路面51の最大傾斜角θ1maxは、X=0.75の位置に設けられる。最大傾斜角θ1maxは、トランジクションダクト30の内周側流路面41の最大傾斜角Φ1maxよりも小さいものとされる。また、比較例としてのトランジションダクト50において、外周側流路面52の最大傾斜角θ2maxは、X=0.25の位置に設けられる。最大傾斜角θ2maxは、トランジクションダクト30の外周側流路面42の最大傾斜角Φ2maxよりも小さいものとされる。
【0034】
次に、実施形態にかかるトランジションダクト30によるガス流路40内の主流ガスの流れの剥離抑制について、図面に基づいて説明する。
図5は、内周側最大傾斜部及び外周側最大傾斜部の軸方向位置をX=0.4からX=0.7の範囲で変化させた際に、ガス流路内で発生する主流ガスの流れの剥離領域の大きさを示す解析結果である。
図5の解析結果において、内周側最大傾斜部411及び外周側最大傾斜部421は、軸方向位置を同じとする。
図5の横軸は、内周側最大傾斜部411及び外周側最大傾斜部421の軸方向位置を示す。
図5の横軸は、トランジションダクト30のダクト長Lによって除算することで、無次元化されている。
図5の縦軸は、剥離領域の大きさである。「剥離領域の大きさ」は、ガス流路40内において、平均径40hよりも外周側流路面42側で主流ガスの流れの全圧が最大となる位置から外周側流路面42までの径方向距離である。ただし、
図5の縦軸は、外周側最大傾斜部421の軸方向位置及び内周側最大傾斜部411の軸方向位置をX=0.4とした場合の剥離領域の大きさを1.0として、値を無次元化している。
【0035】
図示するように、内周側最大傾斜部411及び外周側最大傾斜部421の軸方向位置をX=0.4から低圧タービン26側(図中右側)へと変化させるにしたがって、剥離領域の大きさが徐々に減少する。剥離領域の大きさは、内周側最大傾斜部411及び外周側最大傾斜部421の軸方向位置がX=0.6の近傍で最小となり、その後、内周側最大傾斜部411及び外周側最大傾斜部421の軸方向位置が低圧タービン26側に向かうにしたがって徐々に増加する。これにより、内周側最大傾斜部411及び外周側最大傾斜部421の軸方向位置がX=0.5からX=0.7の範囲A1において、剥離領域の大きさを比較的に小さくすることができることがわかる。すなわち、外周側最大傾斜部421をトランジションダクト30の後半側(X=0.5からX=0.7の範囲A1)に設けることにより、外周側最大傾斜部421に至るまでの外周側流路面42の傾斜角Φ2の変化を比較的に緩やかにすることができる。その結果、外周側流路面42からの主流ガスの流れ剥離を抑制することが可能となる。
【0036】
次に、
図6は、外周側最大傾斜部の軸方向位置をX=0.6とし、内周側最大傾斜部の軸方向位置をX=0.4からX=0.85まで変化させた際の剥離領域の大きさの変化を示す解析結果である。
図6の横軸は、内周側最大傾斜部411の軸方向位置を示す。
図6の横軸は、トランジションダクト30のダクト長Lによって除算することで、無次元化されている。
図6の縦軸は、剥離領域の大きさである。ただし、
図6の縦軸は、内周側最大傾斜部411の位置をX=0.4とした場合の剥離領域の大きさを1.0として、値を無次元化している。
【0037】
図示するように、内周側最大傾斜部411の軸方向位置をX=0.4から低圧タービン26側へと変化させるにしたがって、剥離領域の大きさが徐々に減少する。剥離領域の大きさは、内周側最大傾斜部411の軸方向位置がX=0.7近傍で最小となる。つまり、剥離領域の大きさは、軸方向において、内周側最大傾斜部411が外周側最大傾斜部421と並ぶ位置(ここでは、X=0.6)から、低圧タービン26側にダクト長Lの10%の長さ進んだ位置(ここでは、X=0.7)の近傍で最小となる。その後、剥離領域の大きさは、内周側最大傾斜部411の軸方向位置が低圧タービン26側に向かうにしたがって徐々に増加する。これにより、内周側最大傾斜部411を、軸方向において、外周側最大傾斜部421と並ぶ位置から低圧タービン26側にダクト長Lの20%以下の長さ進んだ位置までの範囲A2(ここでは、X=0.6からX=0.8までの範囲)に配置すれば、剥離領域の大きさを比較的に小さくすることができることがわかる。すなわち、内周側最大傾斜部411を範囲A2に配置することで、
図3に実線矢印で示すように、内周側最大傾斜部411によって、外周側最大傾斜部421の近傍に、内周側から外周側へと向かう主流ガスの流れを形成することができる。その結果、外周側最大傾斜部421の周囲において、主流ガスが内周側に向って剥離することを抑制することができる。
【0038】
図7は、比較例としてのトランジションダクト内における主流ガスの流れのマッハ数分布を示す解析結果であり、
図8は、実施形態にかかるトランジションダクト内における主流ガスの流れのマッハ数分布を示す解析結果である。
図7及び
図8において、色が濃い部分ほどマッハ数が低い。
図7に示すように、比較例のトランジションダクト50は、主流ガスの流れが高圧タービン25側から低圧タービン26側に向かうにしたがって、外周側流路面52の近傍における主流ガスのマッハ数の値が低くなっていることがわかる。これは、外周側最大傾斜部521の近傍から低圧タービン26側に向けて、外周側流路面52から剥離する主流ガスの剥離領域が大きくなるためである。一方、実施形態にかかるトランジションダクト30では、
図8に示すように、比較例のトランジションダクト50に比べて、外周側流路面42の近傍において、マッハ数の低下が抑えられていることがわかる。このように、実施形態にかかるトランジションダクト30によれば、比較例のトランジションダクト50に比べて、外周側流路面42から主流ガスの流れが剥離することを、より良好に抑制することができる。
【0039】
以上説明したように、実施形態にかかるトランジションダクト30は、軸方向において、内周側最大傾斜部411を外周側最大傾斜部421と並ぶ位置から、低圧タービン26側にダクト長Lの20%以下の長さ進んだ位置までの範囲A2に配置する。これにより、内周側最大傾斜部411によって、外周側最大傾斜部421の近傍に、内周側から外周側へと向かう主流ガスの流れを形成することができるため、外周側最大傾斜部421の周囲において、主流ガスが内周側に向って剥離することを抑制することができる。その結果、ガス流路40の内面(内周側流路面41及び外周側流路面42)の傾斜角Φ1、Φ2を全体として比較的に大きくしてガス流路40の十分な拡径とダクト長Lの短縮化とを実現しつつ、ガス流路40内で発生する圧力損失をより低減させることが可能となる。したがって、実施形態にかかるトランジションダクト30、タービン16及びガスタービンエンジン10によれば、タービン16の効率向上及び重量低減の両立を図りながら、トランジションダクト30内の主流ガスの流れの剥離をより良好に抑制して、さらなるタービン16の効率向上を図ることができる。
【0040】
また、外周側最大傾斜部421は、軸方向において、ダクト入口30aから低圧タービン26側にダクト長Lの50%の長さ進んだ位置から、70%以下の長さ進んだ位置までの範囲A1に設けられる。これにより、外周側最大傾斜部421をトランジションダクト30の後半側に設け、外周側最大傾斜部421に至るまでの外周側流路面42の傾斜角Φ2の変化を比較的に緩やかにすることができるため、外周側流路面42からの主流ガスの流れの剥離をさらに良好に抑制することが可能となる。なお、外周側最大傾斜部421は、範囲A2以外に設けられてもよい。
【0041】
また、ダクト出口30bにおけるガス流路40の平均径40hとダクト入口30aにおけるガス流路40の平均径40hとの差分Hと、ダクト長Lとの比は、1.5以上1.6以下である。これにより、ガス流路40の拡径量(上記差分H)を確保しつつ、ダクト長Lの短縮化を図ることができる。また、このようにガス流路40の十分な拡径とダクト長Lの短縮化を図った場合にも、本実施形態にかかるトランジションダクト30によれば、主流ガスの流れの剥離をより良好に抑制することができる。なお、差分Hと、ダクト長Lとの比は、1.5以上1.6以下に限られない。
【0042】
また、外周側最大傾斜部421における傾斜角Φ2(最大傾斜角Φ2max)は、35°以上45°以下である。これにより、外周側流路面42の傾斜角Φ2を全体として比較的に小さくすることができるため、外周側流路面42からの主流ガスの流れの剥離をさらに良好に抑制することが可能となる。なお、最大傾斜角Φ2maxは、35°以上45°以下に限られない。
【0043】
また、外周側最大傾斜部421における傾斜角Φ2(最大傾斜角Φ2max)は、35°以上40°未満であってもよい。これにより、外周側流路面42の傾斜角Φ2を全体として比較的に小さくすることができるため、外周側流路面42からの主流ガスの流れの剥離をさらに良好に抑制することが可能となる。
【0044】
また、内周側流路面41のダクト入口30aにおける傾斜角Φ1及び外周側流路面42のダクト入口30aにおける傾斜角Φ2は、0°である。これにより、ダクト入口30a付近における主流ガスの流れの剥離をより良好に抑制することができる。なお、ダクト入口30aにおける傾斜角Φ1及び傾斜角Φ2は、0°よりも大きくてもよい。
【0045】
なお、本実施形態では、ガスタービンエンジン10に本発明のトランジションダクト及びタービンを適用するものとしたが、本発明は、蒸気タービンエンジンに適用されてもよい。