(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補強リブは、平面視略台形状を呈し、その長辺としての第一辺は前記鋼管杭本体の外周面に当接するように配置され、その短辺としての第二辺は前記鋼管杭本体から離隔するように配置され、前記第一辺及び前記第二辺に対して直角な第三辺は前記螺旋状羽根の上面に当接するように配置されており、
前記第一辺と前記第三辺とから形成される角部に切欠部が形成されている、請求項5に記載の合成杭。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年においては、東南アジア等の近隣諸国における地盤を改良するための技術の開発が進められている。
【0005】
日本の地盤は、地域差はあるものの比較的堅い(例えば地表面下数m程度の浅い位置に堅い支持層が存在している)ことが知られているが、東南アジア諸国(例えばベトナム)の地盤は、地表面下数十mの深い位置まで粘土層や砂質層が存在しており比較的軟弱である。このため、特許文献1及び2に記載されたような従来の合成杭造成技術が他国における軟弱地盤の改良には必ずしも有効ではないことが近年明らかとなっている。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、地表面下数十mの深い位置まで粘土層等が存在する比較的軟弱な地盤を効果的に改良することができる螺旋状羽根付鋼管杭と、その螺旋状羽根付鋼管杭を用いた合成杭と、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明に係る螺旋状羽根付鋼管杭は、鋼管杭本体と、この鋼管杭本体に取り付けられた一つ以上の螺旋状羽根と、を備えるものであって、螺旋状羽根の直径(D)が鋼管杭本体の直径(d)の3倍以上に設定されてなるものである。
【0008】
かかる構成を採用すると、螺旋状羽根の直径(D)を、鋼管杭本体の直径(d)の3倍以上に設定していることから、螺旋状羽根付鋼管杭を用いて造成した杭(合成杭)の周面積を大きくすることができる。従って、合成杭の支持力を向上させることができるので、軟弱地盤を効果的に改良することができる。従来の螺旋状羽根付鋼管杭においては、我が国の比較的堅い地盤に起因する貫入抵抗の大きさを考慮して螺旋状羽根の直径(D)の上限が定められており、また、耐震性の観点から水平荷重を受け持つ鋼管杭本体の直径(d)の下限が定められていたため、螺旋状羽根の直径(D)が鋼管杭本体の直径(d)の1.5倍〜2.5倍程度に設定されていた。これに対し、地表面下数十mの深い位置まで粘土層等が存在する他国の比較的軟弱な地盤の改良を想定した本鋼管杭においては、貫入抵抗や耐震性を考慮する必要がないため、螺旋状羽根の直径(D)を相対的に大きくし、鋼管杭本体の直径(d)を相対的に小さくすることが可能となる。よって、鋼管杭本体の製造コスト(材料費等)を低減させることもできる。
【0009】
本発明に係る螺旋状羽根付鋼管杭において、螺旋状羽根の直径(D)を、鋼管杭本体の直径(d)の3倍以上4倍以下に設定するのが好ましい。
【0010】
かかる構成を採用すると、鋼管杭本体の直径(d)を相対的に小さくして製造コストを低減させつつ、適正な支持力を確保することができる。螺旋状羽根の直径(D)が鋼管杭本体の直径(d)の4倍を超える(鋼管杭本体を細くし過ぎる)と適正な支持力を確保できない場合があり、好ましくない。
【0011】
本発明に係る螺旋状羽根付鋼管杭において、鋼管杭本体の先端部に取り付けられた先端羽根と、鋼管杭本体の先端部を除く部分に取り付けられた中間羽根と、から螺旋状羽根を構成し、先端羽根と最下端にある中間羽根との間隔(L
1)を2.0m以上に設定し、中間羽根同士の間隔(L
m)を3.0m以上に設定し、最上端にある中間羽根と鋼管杭本体の杭頭部との間隔(L
2)を0.3m以上0.5m以下に設定することが好ましい。
【0012】
かかる構成を採用すると、先端羽根と最下端中間羽根との間隔(L
1)と、中間羽根同士の間隔(L
m)と、の双方が比較的長く設定されるため、杭長に対する螺旋状羽根の枚数を少なくして施工性能を向上させる(貫入速度の上昇、最大施工長の拡大、工期の短縮等を実現させる)ことができることに加え、支持力性能に対する費用(材料費、溶接費、加工費等)を格段に低減させることができる。また、最上端中間羽根と杭頭部との間隔(L
2)が比較的短く設定されるため、水平荷重に対する抵抗力を大きくすることができる。この結果、施工性能の向上と、支持力の維持と、の双方を実現させることが可能となる。さらに、螺旋状羽根の枚数低減に伴い、ソイルセメント柱体に占める鋼管杭の体積率が減少することから発生残土量が低減し、この結果、残土処理費を削減することが可能となる。
【0013】
先端羽根と最下端中間羽根との間隔(L
1)が2.0m未満であり、かつ、中間羽根同士の間隔(L
m)が3.0m未満であると、杭長に対する螺旋状羽根の枚数が増大するため、好ましくない。最上端中間羽根と杭頭部との間隔(L
2)が0.3m未満であると、最上端中間羽根と鋼管杭本体の杭頭部との間にパイルキャップ等の部材を取り付け難くなるため、好ましくない。一方、最上端中間羽根と杭頭部との間隔(L
2)が0.5mを超えると、水平荷重に対する抵抗力を充分に確保することができないため、好ましくない。
【0014】
本発明に係る螺旋状羽根付鋼管杭において、先端羽根と最下端にある中間羽根との間隔(L
1)を、最上端にある中間羽根と鋼管杭本体の杭頭部との間隔(L
2)の2倍以上に設定し、中間羽根同士の間隔(L
m)を、最上端にある中間羽根と鋼管杭本体の杭頭部との間隔(L
2)の3倍以上に設定することが好ましい。
【0015】
かかる構成を採用すると、先端羽根と最下端中間羽根との間隔(L
1)と、中間羽根同士の間隔(L
m)と、の双方が比較的長く設定されるため、杭長に対する螺旋状羽根の枚数を少なくして施工性能を向上させることができる。また、最上端中間羽根と杭頭部との間隔(L
2)が比較的短く設定されるため、水平荷重に対する抵抗力を大きくすることができる。
【0016】
先端羽根と最下端中間羽根との間隔(L
1)最上端中間羽根と杭頭部との間隔(L
2)2倍未満であり、かつ、中間羽根同士の間隔(L
m)が最上端中間羽根と杭頭部との間隔(L
2)の3倍未満であると、杭長に対する螺旋状羽根の枚数が増大するため、好ましくない。
【0017】
本発明に係る螺旋状羽根付鋼管杭において、螺旋状羽根の上面に鋼管杭本体を中心として放射状に複数設けられた板状の補強リブを備えることができる。
【0018】
かかる構成を採用すると、螺旋状羽根付鋼管杭をソイルセメント柱体の内部に捩り込む際にセメント等から作用する反力(曲げモーメント)に耐えることができるようになるため、螺旋状羽根の肉厚を低減させることができ、また、撹拌効果を得ることができる。
【0019】
本発明に係る螺旋状羽根付鋼管杭において、平面視略台形状を呈する補強リブを採用し、その長辺としての第一辺を鋼管杭本体の外周面に当接するように配置し、その短辺としての第二辺を鋼管杭本体から離隔するように配置し、第一辺及び第二辺に対して直角な第三辺を螺旋状羽根の上面に当接するように配置し、第一辺と第三辺とから形成される角部に切欠部を形成することができる。
【0020】
かかる構成を採用すると、補強リブの第一辺と第三辺とから形成される角部に切欠部を形成しているため、螺旋状羽根付鋼管杭をソイルセメント柱体の内部に捩り込む際に補強リブの第一辺と第三辺とから形成される角部にセメント等が滞留するのを抑制することができ、貫入抵抗を低減させることができる。
【0021】
また、本発明に係る合成杭の造成方法は、前記螺旋状羽根付鋼管杭を、地盤中に造成されるソイルセメント柱体に挿入する工程を備えるものである。
【0022】
また、本発明に係る合成杭は、前記螺旋状羽根付鋼管杭を、地盤中に造成されるソイルセメント柱体に挿入することにより形成したものである。
【0023】
本発明に係る合成杭において、ソイルセメント柱体の最深位置から螺旋状羽根付鋼管杭の先端位置までの間隔を0.2m以上に設定することが好ましい。
【0024】
かかる構成を採用すると、ソイルセメント柱体の最深位置から螺旋状羽根付鋼管杭の先端位置までの間隔(コラム余長)を0.2m以上に設定しているため、合成杭の先端支持力を充分に確保することができる。コラム余長が0.2m未満となると充分な先端支持力を確保することができなくなるため、好ましくない。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、地表面下数十mの深い位置まで粘土層等が存在する比較的軟弱な地盤を効果的に改良することができる螺旋状羽根付鋼管杭と、当該鋼管杭を用いた合成杭と、を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態はあくまでも好適な適用例であって、本発明の適用範囲がこれに限定されるものではない。
【0028】
まず、
図1〜
図6を用いて、本実施形態に係る螺旋状羽根付鋼管杭(以下、「本鋼管杭」という)1の構成について説明する。本鋼管杭1は、
図1に示すように、金属製の中空管である鋼管杭本体10と、鋼管杭本体10に取り付けられた複数の螺旋状羽根20と、を備えている。
【0029】
鋼管杭本体10は、炭素(C)、珪素(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)及び硫黄(S)の五元素(普通元素)を含有する鉄鋼で構成することができる。また、耐候性及び耐酸性を向上させる目的で、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)等の特殊元素を添加した鉄鋼で鋼管杭本体10を構成してもよい。このとき添加される特殊元素の割合(重量)としては、例えば銅(Cu)、ニッケル(Ni)及びクロム(Cr)を各々0.40%程度に設定し、モリブデン(Mo)を0.15%程度に設定することができる。
【0030】
螺旋状羽根20は、
図1に示すように、鋼管杭本体10の先端部11に取り付けられた先端羽根21と、鋼管杭本体10の先端部11を除く部分に取り付けられた中間羽根22と、から構成されている。螺旋状羽根20は、鋼管杭本体10と同じ材料で構成することができる。本実施形態においては、
図3に示すように、隣接する螺旋状羽根20を180°回転させた状態で鋼管杭本体10に取り付けている。このように螺旋状羽根20を取り付けることにより、後述するソイルセメント柱体2(
図7)の内部に本鋼管杭1をバランス良く捩り込むことができる。なお、
図4に示すように、隣接する螺旋状羽根20を90°回転させた状態で鋼管杭本体10に取り付けることもできる。
【0031】
本実施形態においては、螺旋状羽根20の直径Dを、鋼管杭本体10の直径dの3倍以上に設定している。このようにすることにより、本鋼管杭1を用いて造成した合成杭の周面積を大きくすることができる。従来の螺旋状羽根付鋼管杭(以下、「従来杭」という)100においては、
図2に示すように、耐震性及び貫入抵抗を考慮して螺旋状羽根120の直径Dの上限値と鋼管杭本体110の直径dの下限値とが規定されており、螺旋状羽根120の直径Dが鋼管杭本体110の直径dの1.5倍〜2.5倍程度になるように制限されていた。これに対し、地表面下数十mの深い位置まで粘土層等が存在する他国(例えばベトナム)の比較的軟弱な地盤の改良を想定した本鋼管杭1においては、耐震性や貫入抵抗を考慮する必要がないことから、螺旋状羽根20の直径Dを相対的に大きくし、鋼管杭本体10の直径dを相対的に小さくすることが可能となる。よって、鋼管杭本体10の製造コスト(材料費等)を低減させることもできる。
【0032】
螺旋状羽根20の直径Dは、鋼管杭本体10の直径dの3倍以上4倍以下に設定されるのが好ましい。このようにすると、鋼管杭本体10の直径dを相対的に小さくして製造コストを低減させつつ、適正な支持力を確保することができる。螺旋状羽根20の直径Dが鋼管杭本体10の直径dの4倍を超える(鋼管杭本体10を細くし過ぎる)と適正な支持力を確保できない場合があり、好ましくない。
【0033】
また、本実施形態においては、先端羽根21と最下端にある中間羽根22との間隔L
1を2.0m以上(例えば2.5m)に設定し、中間羽根22同士の間隔L
mを3.0m以上(例えば3.0m)に設定し、最上端にある中間羽根22と鋼管杭本体10の杭頭部12との間隔L
2を0.3m以上0.5m以下(例えば0.5m)に設定している。従来杭100においては、
図2に示すように、先端羽根121と最下端中間羽根122との間隔が約1.5m、中間羽根122同士の間隔が約2.0mに設定されていた。これに対し、本鋼管杭1においては、先端羽根21と最下端中間羽根22との間隔L
1と、中間羽根22同士の間隔L
mと、の双方を比較的長く設定することにより、杭長に対する螺旋状羽根20の枚数を少なくすることができる。また、最上端中間羽根22と杭頭部12との間隔L
2が比較的短く設定されるため、水平荷重に対する抵抗力を大きくすることができる。
【0034】
先端羽根21と最下端中間羽根22との間隔L
1が2.0m未満であり、かつ、中間羽根22同士の間隔L
mが3.0m未満であると、杭長に対する螺旋状羽根20の枚数が増大するため、好ましくない。最上端中間羽根22と杭頭部12との間隔L
2が0.3m未満であると、最上端中間羽根22と杭頭部12との間にパイルキャップ等の部材を取り付け難くなるため、好ましくない。一方、最上端中間羽根22と杭頭部12との間隔L
2が0.5mを超えると、水平荷重に対する抵抗力を充分に確保することができないため、好ましくない。
【0035】
先端羽根21と最下端中間羽根22との間隔L
1は、最上端中間羽根22と杭頭部12との間隔L
2の2倍以上(例えば5倍)に設定されるのが好ましい。また、中間羽根22同士の間隔L
mは、最上端中間羽根22と杭頭部12との間隔L
2の3倍以上(例えば6倍)に設定されるのが好ましい。このようにすると、先端羽根21と最下端中間羽根22との間隔L
1と、中間羽根22同士の間隔L
mと、の双方が比較的長く設定されるため、杭長に対する螺旋状羽根20の枚数を少なくして施工性能を向上させることができる。また、最上端中間羽根22と杭頭部12との間隔L
2が比較的短く設定されるため、水平荷重に対する抵抗力を大きくすることができる。
【0036】
先端羽根21と最下端中間羽根22との間隔L
1が最上端中間羽根22と杭頭部12との間隔L
2の2倍未満であり、かつ、中間羽根22同士の間隔L
mが最上端中間羽根22と杭頭部12との間隔L
2の3倍未満であると、杭長に対する螺旋状羽根20の枚数が増大するため、好ましくない。
【0037】
本実施形態においては、先端が尖った掘削用の補助金具に代えて、鋼管杭本体10の先端部11に(図示していない)平滑な底蓋を取り付けている。このように掘削用の補助金具を省くことにより、杭の先端部11より深い位置の地盤やソイルセメント柱体2(
図7)に緩みが発生することを防ぐことができ、充分な先端支持力を確保することができる。なお、鋼管杭本体10の先端部11に平滑な底蓋を取り付けずに開放状態とすることもできる。
【0038】
また、本実施形態においては、螺旋状羽根20(先端羽根21及び中間羽根22)の上面に、
図5(A)〜(C)に示すような補強リブ70を取り付けている。補強リブ70は、
図5(A)に示すように平面視略台形状を呈する板状部材であって、
図6に示すように鋼管杭本体10を中心として放射状に複数(例えば7枚)取り付けられる。この際、
図5(B)に示す長辺(第一辺)71は鋼管杭本体10の外周面に当接するように配置され、
図5(C)に示す短辺(第二辺)72は鋼管杭本体10から離隔するように配置され、
図5(A)に示す第一辺71及び第二辺72に対して直角な辺(第三辺)73は螺旋状羽根20の上面に当接するように配置される。このような補強リブ70を設けることにより、本鋼管杭1をソイルセメント柱体2(
図7)の内部に捩り込む際にセメント等から作用する反力(曲げモーメント)に耐えることができるようになるため、螺旋状羽根20の肉厚を低減させることができ、また、撹拌効果を得ることができる。
【0039】
ところで、補強リブ70を鋼管杭本体10及び螺旋状羽根20に取り付ける際に、第一辺71を鋼管杭本体10に当接させ、第三辺73を螺旋状羽根20に当接させると、本鋼管杭1をソイルセメント柱体2の内部に捩り込む際に、補強リブ70の第一辺71と第三辺73とから形成される角部にセメント等が滞留して、貫入抵抗が増大することが懸念される。そこで、本実施形態においては、補強リブ70の第一辺71と第三辺73とから形成される角部に切欠部74を形成している。このような切欠部74を形成することにより、本鋼管杭1を捩り込む際に補強リブ70の第一辺71と第三辺73とから形成される角部にセメント等が滞留するのを抑制することができ、貫入抵抗を低減させることができる。
【0040】
次に、
図7及び
図8を用いて、本鋼管杭1を用いて合成杭を造成する方法について説明する。
【0041】
まず、
図7(A)及び
図7(B)に示すように、地盤Gの改良対象位置に造成装置30を設置し、機械式深層混合処理工法によってソイルセメント柱体2を造成する(柱体造成工程)。造成装置30としては、オーガモータ41とオーガモータ41の回転を伝達する回転軸42とを有する駆動装置40と、回転軸42に接続した撹拌混合装置50と、を備えるものを採用することができる。撹拌混合装置50としては、
図8(A)に示すように、掘削翼51と、撹拌翼52と、駆動装置40の回転軸42に接続される撹拌軸53と、を有するものを採用することができる。なお、機械式深層混合処理工法とは、セメント(又はセメントを主成分とした固化材)と水とを混練して作成したスラリーを地盤G中に注入しながら、掘削翼51及び撹拌翼52を有する撹拌混合装置50により、地盤Gとスラリーとを機械的に撹拌混合してソイルセメント柱体2を造成する地盤改良工法のことをいう。
【0042】
撹拌混合装置50には、掘削翼51、撹拌翼52及び撹拌軸53に加えて、
図8(B)及び
図8(C)に示すように、掘削径よりも大きい径を持った共回り防止翼54を装着することが好ましく、このような共回り防止翼54を装着することにより、撹拌混合装置50を用いて効率良く地盤Gとスラリーを撹拌混合することが可能である。また、撹拌混合装置50には、撹拌軸53を正転・逆転させる正逆転機構を備えることが好ましい。また、撹拌混合装置50の各撹拌翼52には、
図8(C)に示すように、軸方向(貫入方向)に平行な掘削刃52aを複数設けることが好ましい。このように掘削刃52aを各撹拌翼52に設けることにより、撹拌混合の処理を向上させ、高速施工を実現させて施工費を低減させることができる。
【0043】
柱体造成工程を経た後、
図7(C)に示すように駆動装置40から撹拌混合装置50を取り外すとともに駆動装置40に本鋼管杭1を回転圧入させる治具60を取り付け、その後、
図7(D)に示すように治具60に本鋼管杭1を取り付ける(鋼管杭取付工程)。次いで、
図7(E)に示すように駆動装置40を駆動して本鋼管杭1を回転させつつソイルセメント柱体2に捩り込み貫入させる(杭貫入工程)。続いて、
図7(F)に示すように本鋼管杭1から治具60を切り離し、本鋼管杭1とソイルセメント柱体2とを一体化させることによって、地盤Gにソイルセメント合成杭を造成する(合成杭造成工程)。
【0044】
本実施形態においては、造成された合成杭におけるソイルセメント柱体2の最深位置から本鋼管杭1の先端位置までの間隔(コラム余長)を0.2m以上に設定している。このため、合成杭の先端支持力を充分に確保することができる。コラム余長が0.2m未満となると充分な先端支持力を確保することができなくなるため、好ましくない。
【0045】
<第一実施例>
続いて、
図9を用いて、本鋼管杭1及び従来杭100を各々用いて造成した合成杭の鉛直載荷試験の結果(第一実施例)について説明する。なお、本試験は、地表面下約20mの深さまで粘土層、シルト層、砂質層が混在するベトナムの地盤で実施したものである。
【0046】
本試験で採用した本鋼管杭1は、鋼管杭本体10の直径dを165.2mm、螺旋状羽根20の直径Dを500mm(D=3.027d)、杭長を6000mmに設定したものである。一方、本試験で採用した従来杭100は、鋼管杭本体110の直径dを216.3mm、螺旋状羽根120の直径Dを500mm(D=2.312d)、杭長を6000mmに設定したものである。これら本鋼管杭1及び従来杭100を各々採用してコラム径700mmの合成杭を造成し、鉛直載荷試験を実施した。
【0047】
図9のグラフにおける縦軸は、鋼管杭本体の杭頭部に加えられた鉛直荷重(杭頭荷重)Poを示すものであり、
図9のグラフにおける横軸は、鋼管杭本体の先端部の変位量(先端変位量)Spを示すものである。また、
図9における点●は、本鋼管杭1を用いて造成した合成杭における杭頭荷重Poと先端変位量Spとの関係をプロットしたものであり、
図9における点〇は、従来杭100を用いて造成した合成杭における杭頭荷重Poと先端変位量Spとの関係をプロットしたものである。
【0048】
先端変位量Spが螺旋状羽根の直径D(500mm)の10%(50mm)に達するときの杭頭荷重Pouは、
図9に示すように、従来杭100を用いて造成した合成杭においては509kNであったのに対し、本鋼管杭1を用いて造成した合成杭においては548kNであった。このように、本鋼管杭1を用いて造成した合成杭の鉛直支持力は、従来杭100を用いて造成した合成杭の鉛直支持力とほぼ同等である(ないし若干上回る)ことが本試験によって明らかとなった。
【0049】
<第二実施例>
続いて、
図10を用いて、本鋼管杭1を用いて造成した合成杭の鉛直載荷試験の結果(第二実施例)を、理想的な支持力を有する合成杭と比較して説明する。本試験もまた、地表面下約20mの深さまで粘土層、シルト層、砂質層が混在するベトナムの地盤で実施したものである。
【0050】
本試験で採用した本鋼管杭1は、鋼管杭本体10の直径dを219.1mm、螺旋状羽根20の直径Dを700mm(D=3.195d)、杭長を6000mmに設定したものである。本試験では、本鋼管杭1を採用してコラム径1000mmの合成杭を造成し、鉛直載荷試験を実施した。
【0051】
図10のグラフにおける縦軸は、鋼管杭本体の杭頭部に加えられた鉛直荷重(杭頭荷重)Poを示すものであり、
図10のグラフにおける横軸は、鋼管杭本体の先端部の変位量(先端変位量)Spを示すものである。また、
図10における点■は、本鋼管杭1を用いて造成した合成杭における杭頭荷重Poと先端変位量Spとの関係をプロットしたものであり、
図10における点□を結んだ曲線は、理想的な支持力を有する合成杭のSp−Po近似曲線(理想曲線)である。なお、本試験では、仮想極限支持力(先端変位量Spが螺旋状羽根の直径Dの10%(70mm)に達するときの杭頭荷重5860kN)に基づいて理想曲線を設定した。
【0052】
本鋼管杭1を用いて造成した合成杭のSp−Po曲線は、(仮想極限支持力5860kNの1/3に設定した)仮想長期支持力を大きく上回る値(約3000kN)まで理想曲線にほぼ重なっていることが明らかとなった。さらに、本鋼管杭1を用いて造成した合成杭は、採用設計支持力(1350kN)においても、仮想長期支持力(1950kN)に対して30%程度の余裕率を有していることが明らかとなり、先端変位量Spが理想的な支持力を有する合成杭と同等であることが本試験によって明らかとなった。
【0053】
<第三実施例>
続いて、
図11を用いて、本鋼管杭1(二種類)を用いて造成した合成杭の鉛直載荷試験のFEM解析結果(第三実施例)について説明する。なお、本試験は、地表面下約20mの深さまで粘土層、シルト層、砂質層が混在するベトナムの地盤で実施したことを想定したものである。
【0054】
本解析で採用した第一の本鋼管杭(第一鋼管杭)1Aは、鋼管杭本体10の直径dを175.0mm、螺旋状羽根20の直径Dを700mm(D=4.0d)、杭長を6000mmに設定したものである。一方、本解析で採用した第二の本鋼管杭(第二鋼管杭)1Bは、鋼管杭本体10の直径dを140.0mm、螺旋状羽根20の直径Dを700mm(D=5.0d)、杭長を6000mmに設定したものである。これら二種類の鋼管杭(第一鋼管杭1A及び第二鋼管杭1B)を各々採用してコラム径1000mmの合成杭を造成した場合の鉛直載荷試験のFEM解析を実施した。
【0055】
図11のグラフにおける縦軸は、鋼管杭本体の杭頭部に加えられた鉛直荷重(杭頭荷重)Poを示すものであり、
図11のグラフにおける横軸は、鋼管杭本体の先端部の変位量(先端変位量)Spを示すものである。また、
図11における点■は、第二実施例の本鋼管杭1を用いて造成した合成杭における杭頭荷重Poと先端変位量Spとの関係(実験結果)をプロットしたものであり、
図11における点〇を結んだ曲線は、本実施例の第一鋼管杭1Aを用いて造成した合成杭における杭頭荷重Poと先端変位量Spとの関係(FEM解析結果)をプロットしたものであり、
図11における点△を結んだ曲線は、本実施例の第二鋼管杭1Bを用いて造成した合成杭における杭頭荷重Poと先端変位量Spとの関係(FEM解析結果)をプロットしたものである。
【0056】
本実施例の第一鋼管杭1A(D=4.0d)を用いて造成した合成杭のSp−Po曲線は、第二実施例の本鋼管杭1を用いて造成した合成杭のSp−Po曲線にほぼ重なっていることが明らかとなった。すなわち、第一鋼管杭1A(D=4.0d)を用いて造成した合成杭は、採用設計支持力(1350kN)において、先端変位量Spが第二実施例の本鋼管杭1と同等である(ないし若干小さい)ことが本解析によって明らかとなった。
【0057】
本実施例の第二鋼管杭1B(D=5.0d)を用いて造成した合成杭のSp−Po曲線もまた、第二実施例の本鋼管杭1を用いて造成した合成杭のSp−Po曲線に近いものとなった。但し、第二鋼管杭1B(D=5.0d)を用いて造成した合成杭は、採用設計支持力(1350kN)において、先端変位量Spが第二実施例の本鋼管杭1よりも若干大きいことが本解析によって明らかとなった。すなわち、本実施例の第一鋼管杭1A(D=4.0d)の方が第二鋼管杭1B(D=5.0d)よりも高い支持力を有していることがわかる。
【0058】
以上説明した実施形態に係る螺旋状羽根付鋼管杭(本鋼管杭)1においては、螺旋状羽根20の直径Dを、鋼管杭本体10の直径dの3倍以上に設定していることから、本鋼管杭1を用いて造成した合成杭の周面積を大きくすることができる。従って、合成杭の支持力を向上させることができるので、軟弱地盤を効果的に改良することができる。従来の螺旋状羽根付鋼管杭(従来杭)100においては、我が国の比較的堅い地盤に起因する貫入抵抗の大きさを考慮して螺旋状羽根120の直径Dの上限が定められており、また、耐震性の観点から水平荷重を受け持つ鋼管杭本体110の直径dの下限が定められていたため、螺旋状羽根120の直径Dが鋼管杭本体110の直径dの1.5倍〜2.5倍程度に設定されていた。これに対し、地表面下数十mの深い位置まで粘土層等が存在する他国の比較的軟弱な地盤の改良を想定した本鋼管杭1においては、貫入抵抗や耐震性を考慮する必要がないため、螺旋状羽根20の直径Dを相対的に大きくし、鋼管杭本体10の直径dを相対的に小さくすることが可能となる。よって、鋼管杭本体10の製造コスト(材料費等)を低減させることもできる。
【0059】
また、以上説明した実施形態に係る螺旋状羽根付鋼管杭(本鋼管杭)1においては、先端羽根21と最下端中間羽根22との間隔L
1を2.0m以上に設定し、中間羽根22同士の間隔L
mを3.0m以上に設定している(先端羽根21と最下端中間羽根22との間隔L
1を最上端中間羽根22と杭頭部12との間隔L
2の2倍以上に設定し、中間羽根22同士の間隔L
mを最上端中間羽根22と杭頭部12との間隔L
2の3倍以上に設定している)。このように、先端羽根21と最下端中間羽根22との間隔L
1と、中間羽根22同士の間隔L
mと、の双方が比較的長く設定されるため、杭長に対する螺旋状羽根20の枚数を少なくして施工性能を向上させる(貫入速度の上昇、最大施工長の拡大、工期の短縮等を実現させる)ことができることに加え、支持力性能に対する費用(材料費、溶接費、加工費等)を格段に低減させることができる。また、最上端中間羽根22と杭頭部12との間隔L
2が比較的短く設定されるため、水平荷重に対する抵抗力を大きくすることができる。この結果、施工性能の向上と、支持力の維持と、の双方を実現させることが可能となる。さらに、螺旋状羽根20の枚数低減に伴い、ソイルセメント柱体2に占める鋼管杭の体積率が減少することから発生残土量が低減し、この結果、残土処理費を削減することが可能となる。
【0060】
また、以上説明した実施形態に係る螺旋状羽根付鋼管杭(本鋼管杭)1においては、螺旋状羽根20の上面に鋼管杭本体10を中心として放射状に複数設けられた板状の補強リブ70を備えることから、本鋼管杭1をソイルセメント柱体2の内部に捩り込む際にセメント等から作用する反力(曲げモーメント)に耐えることができるようになるため、螺旋状羽根20の肉厚を低減させることができ、また、撹拌効果を得ることができる。
【0061】
また、以上説明した実施形態に係る螺旋状羽根付鋼管杭(本鋼管杭)1においては、補強リブ70の第一辺71と第三辺73とから形成される角部に切欠部74を形成しているため、本鋼管杭1をソイルセメント柱体2の内部に捩り込む際に補強リブ70の第一辺71と第三辺72とから形成される角部にセメント等が滞留するのを抑制することができ、貫入抵抗を低減させることができる。
【0062】
また、以上説明した実施形態に係る合成杭においては、ソイルセメント柱体2の最深位置から本鋼管杭1の先端位置までの間隔(コラム余長)を0.2m以上に設定しているため、合成杭の先端支持力を充分に確保することができる。
【0063】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、この実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。すなわち、前記実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる(例えば、雌雄のスプライン継手を上下入れ替えることができる)。また、前記実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。