特許第6449257号(P6449257)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6449257
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】梯子安全機構
(51)【国際特許分類】
   E06C 7/18 20060101AFI20181220BHJP
   E06C 7/46 20060101ALI20181220BHJP
   E06C 1/06 20060101ALI20181220BHJP
   E06C 1/12 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
   E06C7/18
   E06C7/46
   E06C1/06
   E06C1/12
【請求項の数】29
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-517096(P2016-517096)
(86)(22)【出願日】2014年6月5日
(65)【公表番号】特表2016-524668(P2016-524668A)
(43)【公表日】2016年8月18日
(86)【国際出願番号】AU2014000588
(87)【国際公開番号】WO2014194366
(87)【国際公開日】20141211
【審査請求日】2017年5月30日
(31)【優先権主張番号】2013902102
(32)【優先日】2013年6月5日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】515338472
【氏名又は名称】オーディー テック ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】オドンネル,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,イアン
(72)【発明者】
【氏名】レジク,ジョージ
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0242328(US,A1)
【文献】 特開昭64−001890(JP,A)
【文献】 特開平07−026863(JP,A)
【文献】 米国特許第04311209(US,A)
【文献】 特開2000−345783(JP,A)
【文献】 実開昭51−096525(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3072566(JP,U)
【文献】 実開昭58−011100(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06C 7/18
E06C 1/06
E06C 1/12
E06C 7/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのクランプであって、各クランプは梯子の一対の離間したレールのそれぞれのレールに沿った途中に取り付け可能であり、各クランプは、前記梯子を構造物の一部分に固定するために、構造物の一部分に引っかけるための一対の離間した顎部と、前記クランプのハウジング内に枢動可能に装着された少なくとも1つのクローアームとを備え、少なくとも1つのクローアームの各々は前記構造物の前記一部分を前記顎部の間に固定するため閉じることが可能である、クランプと、
前記梯子に取り外し可能に取り付け可能な一対のトラックであって、各クランプが前記一対のトラックのそれぞれのトラックに沿って摺動可能である、トラックと、
前記各クランプの少なくとも1つのクローアームに連結されて、前記梯子の最下部にいるユーザがクランプを開いて前記顎部の間から前記構造物の前記一部分を解放できるようにする少なくとも1つの手動操作アクチュエータとを備え
前記各クランプの前記少なくとも1つのクローアームが、前記ハウジング内で可動であるスライダブロックに枢動可能に装着されている、梯子安全機構。
【請求項2】
前記各クランプが、前記クランプを前記構造物の前記一部分に配置することにより、前記構造物の前記一部分に自動的に固定される、請求項1に記載の梯子安全機構。
【請求項3】
前記少なくとも1つの手動操作アクチュエータにより、前記梯子の最下部にいるユーザが前記各クランプを開いて構造物の前記一部分を受けることができる、請求項1に記載の梯子安全機構。
【請求項4】
前記梯子の最下部にいるユーザが前記梯子の端部からの前記各クランプの距離を調節できるようにする1または複数の手動操作アジャスタをさらに備える、請求項1または3に記載の梯子安全機構。
【請求項5】
前記トラックが、前記梯子の1つまたは複数の段に取り付けられる、請求項1に記載の梯子安全機構。
【請求項6】
前記一対のトラックの各トラックが、前記梯子のそれぞれのレールの外側に取り付けられる、請求項1または5に記載の梯子安全機構。
【請求項7】
トラックがU字形クランプによりそれぞれのレールの内側の前記梯子の1つまたは複数の段に取り付けられ、前記U字形クランプが、前記段の周りでの前記U字形クランプの回転を防止する先端を備える、請求項1、5または6に記載の梯子安全機構。
【請求項8】
前記各クランプが、前記それぞれのトラックに沿った複数の所定の位置の1つにロック可能なスライダを介して、前記一対のトラックのそれぞれのトラックに摺動可能に取り付けられる、請求項1または請求項5〜7のいずれか一項に記載の梯子安全機構。
【請求項9】
前記スライダが、一対のそれぞれのピンの、前記それぞれのトラック内のそれぞれの開口に対する挿入および引抜きを制御する一対の手動操作アクチュエータを備える、請求項8に記載の梯子安全機構。
【請求項10】
前記一対のそれぞれのピンの各ピンが、前記トラック内のそれぞれの開口に位置合わせされたときに、それぞれの付勢要素によりロック位置に独立して付勢される、請求項9に記載の梯子安全機構。
【請求項11】
前記スライダが、前記スライダがロック位置にあるかロック解除位置にあるかを示す視覚インジケータを備える、請求項8〜10のいずれか一項に記載の梯子安全機構。
【請求項12】
前記視覚インジケータが、前記スライダがロック解除位置にあるときに前記スライダの本体の開口を通して見える、前記一対のそれぞれのピンの着色端部を含む、請求項11に記載の梯子安全機構。
【請求項13】
前記少なくとも1つのクローアームが前記クランプの前記ハウジングおよび前記スライダブロックに枢動可能に装着されて、前記少なくとも1つのクローアームの開閉速度が前記スライダブロックの下降または上昇のそれぞれの速度よりも速くなるようにする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の梯子安全機構。
【請求項14】
前記少なくとも1つのクローアームが前記クランプの前記ハウジングに枢動可能に装着されて、前記構造物のサイズに関係なく、前記構造物の前記一部分と前記少なくとも1つのクローアームとの間の間隔が最小になるようにする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の梯子安全機構。
【請求項15】
前記少なくとも1つのクローアームが、可動ピボット、腎臓形カム、ばね作動カムのうちの1つを介して、前記クランプの前記ハウジングに枢動可能に装着される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の梯子安全機構。
【請求項16】
ウェッジが前記スライダブロックに係合して、前記スライダブロックおよび前記少なくとも1つのクローアームを定位置にロックする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の梯子安全機構。
【請求項17】
前記ウェッジが前記スライダブロックから係合解除されて、前記ウェッジに接続された
ロープまたはケーブルなどの前記手動操作アクチュエータを介して前記スライダブロックおよび前記少なくとも1つのクローアームを解放する、請求項16に記載の梯子安全機構。
【請求項18】
前記ユーザが前記手動操作アクチュエータを操作し続ける必要なく前記ウェッジを係合解除位置に保持する付勢ラッチをさらに備える、請求項17に記載の梯子安全機構。
【請求項19】
前記各クランプは、前記クランプがロック位置およびロック解除位置にあるときを視覚表示する視覚インジケータを備える、請求項1〜18のいずれか一項に記載の梯子安全機構。
【請求項20】
前記視覚インジケータが、前記ウェッジ側に設けられた2つの着色領域の形であり、前記2つの着色領域の一方または他方が前記クランプの前記ハウジングの開口を通して見えて、前記クランプがロック位置またはロック解除位置にあることを示す、請求項19に記載の梯子安全機構。
【請求項21】
前記視覚インジケータが、前記梯子の下段に取り付けられたそれぞれのクリートで複製再現されて、前記それぞれのクランプがロック位置にあるかロック解除位置にあるかを、前記梯子の最下部にいる前記ユーザに示す、請求項20に記載の梯子安全機構。
【請求項22】
前記手動操作アクチュエータが、前記梯子の第1の梯子部および第2の梯子部が互いに対して動くときにロープまたはケーブルに略同一の張力を維持する構成において、前記梯子を通して引き回された前記ロープまたはケーブルの形である、請求項1〜21のいずれか一項に記載の梯子安全機構。
【請求項23】
前記梯子の上部に取り付け可能な落下保護デバイスをさらに備え、前記落下保護デバイスが、前記ユーザに取り付け可能であり、前記ユーザの落下速度を制限する速度リミッタを備える、請求項1〜22のいずれか一項に記載の梯子安全機構。
【請求項24】
前記落下保護デバイスが巻き取り巻き出し安全ラインを備える、請求項23に記載の梯子安全機構。
【請求項25】
前記落下保護デバイスのコネクタが前記梯子の最下部に確実にあって、前記ユーザが前記梯子に登る前に前記ユーザに接続されるようにするために、
前記コネクタの一端部に取り付けられ、前記梯子の最下部で、または最下部に向かって他端部に固定されたフライリード、
前記梯子の最下部に、または最下部に向かって固着され、前記コネクタに連結された引き込み式ラインを含む引き込み機構、
前記梯子のレールに装着された、前記コネクタが連結されるロープまたはラインループ、のうちの1つをさらに備える、請求項23または24に記載の梯子安全機構。
【請求項26】
前記安全機構の1つまたは複数の部品を前記梯子に後付けすることができる、請求項1〜25のいずれか一項に記載の梯子安全機構。
【請求項27】
各クランプが、前記梯子が取り付けられる前記構造物の一部分に対して略垂直に向けられている、請求項1〜26のいずれか一項に記載の梯子安全機構。
【請求項28】
請求項1〜27のいずれか一項に記載の梯子安全機構を備える梯子。
【請求項29】
梯子を、構造物の一部分に固定し、および構造物から解放する方法であって、
一対のトラックを前記梯子の離間したレールのそれぞれの一対に取り外し可能に装着する工程と、
2つのクランプを前記一対のトラックのそれぞれのトラックに取り付ける工程であって、各クランプは前記一対のトラックの前記それぞれのトラックに沿って摺動可能であり、各クランプは、一対の離間した顎部と、前記クランプのハウジング内で可動であるスライダブロックに枢動可能に装着された少なくとも1つのクローアームとを備え、工程と、
前記構造物の前記一部分に一対の顎部の各々を引っかける工程と、
前記顎部の間の前記構造物の前記一部分を、前記梯子を固定するために、少なくとも1つのクローアームの各々を閉じることによって、前記構造物の前記一部分に固定する工程と、
前記各クランプの前記少なくとも1つのクローアームに連結された少なくとも1つの手動操作アクチュエータにより前記各クランプの前記顎部の間から前記構造物の前記一部分を解放する工程であって、前記手動操作アクチュエータが前記梯子の最下部にいるユーザによって操作可能である工程とを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全機構、特に、梯子安全機構に関する。
【背景技術】
【0002】
梯子は、一般的に、表面上のかなりの高さにある場所に到達するために使用される。使用時には、一般的に、梯子を表面に載置し、物体または構造物に対して斜めに立てかける。その後、ユーザが梯子に登る。
【0003】
梯子を使用する1つの危険は、ユーザが梯子から落下したときに、かなりの距離を落下して負傷または死亡するおそれがあることである。梯子からの落下は、ユーザが梯子から滑り落ちること、および/または梯子が不安定になる、および/または倒れることによって発生し得る。例えば、ユーザが梯子を急な角度で配置し、梯子に力を加えるようにして構造物または物体から離れると、梯子が構造物または物体から離れて倒れ、負傷または死亡につながるおそれがある。同様に、ユーザが梯子に横向きの力を加えるように物体に沿って動くと、梯子は横に傾いて倒れ、ユーザに対して同様の結果となり得る。
【0004】
先行技術は、梯子を足場またはレールなどの構造物に固定するための多くのデバイスを開示しているが、多くのそのような先行技術デバイスでは、梯子の第1のユーザが梯子に登り、デバイスを用いて梯子を定位置に固定する必要がある。したがって、そのようなデバイスは、梯子の第1のユーザを全く保護しない。
【0005】
先行技術では、英国特許第GB2426544号は、梯子を構造物に装着するための梯子装着アセンブリを開示している。梯子装着アセンブリは、構造物をつかむ顎部を備える。顎部は、装着部材に装着された2つの顎部材を備え、装着部材は、梯子に取り付けられたトラックに装着される。遠隔制御されたモータを設けて、装着部材の一方または両方をトラックに沿って動かし、構造物をつかんで梯子を定位置に保持することができる。しかしながら、GB2426544に開示された発明に関する問題は、それが大きくて複雑である点である。そのため、製造に費用がかかるおそれがあり、梯子にかなりの重量を加えるため、梯子の携帯性が制限される可能性がある。また、モータは電源を必要とする。したがって、GB2426544の装着アセンブリは特定の適用に限定される。
【0006】
英国特許出願第GB2447359号は、梯子をポールに固定することにより梯子の安定性を高めることを開示している。GB2447359は、梯子の上部に取り付けられた、水平に配置されたU字形部材を備える梯子を教示している。U字形部材は垂直なポールを受け、弧状部材がU字形部材に対して枢動可能になっている。下向きの力がロープに加えられると、弧状部材およびU字形部材がポールを囲むように、弧状部材が枢動する。その後、ロープはジャムクリートを介して固定され、弧状部材を定位置に維持する。
【0007】
GB2447359は、GB2426544よりも、簡単で軽量な、梯子を固定する解決法を教示しているが、GB2447359の発明は、梯子をポールに固定する非常に特定の使用に限定されているため、その適用も限定される。
【0008】
先行技術では、ユーザが梯子から落下する影響を最小限にするデバイスも開発されている。GB2447359は、従来のロープグラブを使用して、ユーザが自身を固定されたロープに取り付け可能であることを教示している。ユーザが落下した場合、ロープグラブがロープに係合して、ユーザの落下を止める。
【0009】
米国特許出願第2012/0080263号は、屋根に取り付ける屋根梯子を開示している。ばね阻止アンカが、ユーザが屋根から滑り落ちたときに延び、その後、ユーザが梯子に再び登るときに後退する。
【0010】
本明細書中における先行技術への言及は、先行技術が共通の一般的な知識の一部を形成することを認めるもの、または何らかの形で提示するものではなく、そのように解釈すべきではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の実施形態の好ましい目的は、先行技術の前述した問題の1つまたは複数に対処し、もしくは少なくともこれを改善し、かつ/または有用な商用の代替案を提供するシステムおよび/または方法および/または装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下を提供する。
[1]梯子を構造物の一部分に固定するために、上記梯子に沿った途中に取り付け可能な少なくとも1つのクランプと、
上記少なくとも1つのクランプに連結されて、上記梯子の最下部にいるユーザが上記少なくとも1つのクランプを開いて構造物の上記一部分を解放できるようにする少なくとも1つの手動操作アクチュエータとを備え、
上記少なくとも1つのクランプが、上記梯子が取り付けられる上記構造物の一部分に対して略垂直に向けられる、梯子安全機構。
[2]上記少なくとも1つのクランプが、上記クランプを上記構造物の上記一部分に配置することにより、上記構造物の上記一部分に自動的に固定される、上記[1]に記載の梯子安全機構。
[3]上記少なくとも1つの手動操作アクチュエータにより、上記梯子の最下部にいるユーザが上記少なくとも1つのクランプを開いて構造物の上記一部分を受けることができる、上記[1]に記載の梯子安全機構。
[4]上記梯子の最下部にいるユーザが上記梯子の端部からの上記少なくとも1つのクランプの距離を調節できるようにする手動操作アジャスタをさらに備える、上記[1]または[3]に記載の梯子安全機構。
[5]上記梯子に取外し可能に取り付けられて、上記少なくとも1つのクランプがそれに沿って摺動可能な少なくとも1つのトラックをさらに備える、上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の梯子安全機構。
[6]上記少なくとも1つのトラックが、上記梯子の1つまたは複数の段に取り付けられる、上記[5]に記載の梯子安全機構。
[7]上記少なくとも1つのトラックが、上記梯子のレールの外側に取り付けられる、上記[5]または[6]に記載の梯子安全機構。
[8]上記少なくとも1つのトラックがU字形クランプにより上記梯子の1つまたは複数の段に取り付けられ、上記U字形クランプが、上記段の周りでの上記U字形クランプの回転を防止する先端を備える、上記[5]〜[7]のいずれか一項に記載の梯子安全機構。
[9]上記少なくとも1つのクランプが、上記少なくとも1つのトラックに沿った複数の所定の位置の1つにロック可能なスライダを介して、上記少なくとも1つのトラックに摺動可能に取り付けられる、上記[5]〜[8]のいずれか一項に記載の梯子安全機構。
[10]上記スライダが、一対のそれぞれのピンの、上記トラック内のそれぞれの開口に対する挿入および引抜きを制御する一対の手動操作アクチュエータを備える、上記[9]に記載の梯子安全機構。
[11]各ピンが、上記トラック内のそれぞれの開口に位置合わせされたときに、それぞれの付勢要素によりロック位置に独立して付勢される、上記[10]に記載の梯子安全機構。
[12]上記スライダが、上記スライダがロック位置にあるかロック解除位置にあるかを示す視覚インジケータを備える、上記[9]〜[11]のいずれか一項に記載の梯子安全機構。
[13]上記視覚インジケータが、上記スライダがロック解除位置にあるときに上記スライダの本体の開口を通して見える、上記ピンの着色端部を含む、上記[12]に記載の梯子安全機構。
[14]上記少なくとも1つのクランプが、上記構造物の上記一部分を受ける一対の離間した顎部と、上記構造物の上記一部分を上記クランプ内に固定する少なくとも1つのクローアームとを備える、上記[1]〜[13]のいずれか一項に記載の梯子安全機構。
[15]上記少なくとも1つのクローアームが、上記クランプのハウジングに枢動可能に装着され、かつ上記ハウジング内で可動なスライダブロックに枢動可能に装着される、上記[14]に記載の梯子安全機構。
[16]上記少なくとも1つのクローアームが上記ハウジングおよび上記スライダブロックに枢動可能に装着されて、上記少なくとも1つのクローアームの開閉速度が上記スライダブロックの下降または上昇のそれぞれの速度よりも速くなるようにする、上記[15]に記載の梯子安全機構。
[17]上記少なくとも1つのクローアームが上記ハウジングに枢動可能に装着されて、上記構造物のサイズに関係なく、上記構造物の上記一部分と上記少なくとも1つのクローアームとの間の間隔が最小になるようにする、上記[15]または[16]に記載の梯子安全機構。
[18]上記少なくとも1つのクローアームが、可動ピボット、腎臓形カム、ばね作動カムのうちの1つを介して、上記ハウジングに枢動可能に装着される、上記[15]〜[17]のいずれか一項に記載の梯子安全機構。
[19]ウェッジが上記スライダブロックに係合して、上記スライダブロックおよび上記少なくとも1つのクローアームを定位置にロックする、上記[15]〜[18]のいずれか一項に記載の梯子安全機構。
[20]上記ウェッジが上記スライダブロックから係合解除されて、上記ウェッジに接続されたロープまたはケーブルなどの上記手動操作アクチュエータを介して上記スライダブロックおよび上記少なくとも1つのクローアームを解放する、上記[19]に記載の梯子安全機構。
[21]上記ユーザが上記アクチュエータを操作し続ける必要なく上記ウェッジを係合解除位置に保持する付勢ラッチをさらに備える、上記[20]に記載の梯子安全機構。
[22]上記クランプは、上記クランプがロック位置およびロック解除位置にあるときを視覚表示する視覚インジケータを備える、上記[19]〜[21]のいずれか一項に記載の梯子安全機構。
[23]上記視覚インジケータが、上記ウェッジ側に設けられた2つの着色領域の形であり、上記2つの着色領域の一方または他方が上記クランプの上記ハウジングの開口を通して見えて、上記クランプがロック位置またはロック解除位置にあることを示す、上記[22]に記載の梯子安全機構。
[24]上記視覚インジケータが、上記梯子の下段に取り付けられたそれぞれのクリートで複製再現されて、上記それぞれのクランプがロック位置にあるかロック解除位置にあるかを、上記梯子の最下部にいる上記ユーザに示す、上記[23]に記載の梯子安全機構。
[25]上記手動操作アクチュエータが、上記梯子の第1の梯子部および第2の梯子部が互いに対して動くときにロープまたはケーブルに略同一の張力を維持する構成において、上記梯子を通して引き回された上記ロープまたはケーブルの形である、上記[1]〜[24]のいずれか一項に記載の梯子安全機構。
[26]上記梯子の上部に取り付け可能な落下保護デバイスをさらに備え、上記落下保護デバイスが、上記ユーザに取り付け可能であり、上記ユーザの落下速度を制限する速度リミッタを備える、上記[1]〜[25]のいずれか一項に記載の梯子安全機構。
[27]上記落下保護デバイスが巻き取り巻き出し安全ラインを備える、上記[26]に記載の梯子安全機構。
[28]上記落下保護デバイスのコネクタが上記梯子の最下部に確実にあって、上記ユーザが上記梯子に登る前に上記ユーザに接続されるようにするために、
上記コネクタの一端部に取り付けられ、上記梯子の最下部で、または最下部に向かって他端部に固定されたフライリード、
上記梯子の最下部に、または最下部に向かって固着され、上記コネクタに連結された引き込み式ラインを含む引き込み機構、
上記梯子のレールに装着された、上記コネクタが連結されるロープまたはラインループ、のうちの1つをさらに備える、上記[26]または[27]に記載の梯子安全機構。
[29]上記梯子の下部に取り付け可能な安定装置をさらに備える、上記[1]〜[28]のいずれか一項に記載の梯子安全機構。
[30]上記安定装置が、上記梯子に対する上記安定装置の角度を調節する1つまたは複数の可変長さコネクタを備える、上記[29]に記載の梯子安全機構。
[31]上記安全機構の1つまたは複数の部品を上記梯子に後付けすることができる、上記[1]〜[30]のいずれか一項に記載の梯子安全機構。
[32]上記[1]〜[31]のいずれか一項に記載の梯子安全機構を備える梯子。
本発明の実施形態は、一般に、安全機構、特に梯子安全機構に関する。
【0013】
必ずしも最も広い態様ではないが、一態様によれば、本発明は、梯子を構造物に固定するために、梯子に沿った途中に取り付け可能な少なくとも1つのクランプと、少なくとも1つのクランプに連結されて、梯子の最下部にいるユーザが少なくとも1つのクランプを開いて構造物の一部分を解放できるようにする少なくとも1つの手動操作アクチュエータとを備え、少なくとも1つのクランプが、梯子が取り付けられる構造物の一部分に対して略垂直に向けられる、梯子安全機構に属する。
【0014】
好ましくは、少なくとも1つのクランプが、クランプを構造物の一部分に配置することにより、構造物の一部分に自動的に固定される。
【0015】
適切には、少なくとも1つの手動操作アクチュエータにより、梯子の最下部にいるユーザが少なくとも1つのクランプを開いて構造物の一部分を受けることができる。
【0016】
好ましくは、梯子安全機構が、梯子の最下部にいるユーザが梯子の端部からの少なくとも1つのクランプの距離を調節できるようにする手動操作アジャスタをさらに備える。
【0017】
梯子安全機構は、梯子に取外し可能に取り付けられて、少なくとも1つのクランプがそれに沿って摺動可能な少なくとも1つのトラックをさらに備えてもよい。
【0018】
少なくとも1つのトラックは、梯子の1つまたは複数の段に取り付けられてもよく、かつ/または梯子のレールの外側もしくは内側に取り付けられてもよい。
【0019】
適切には、少なくとも1つのトラックがU字形クランプにより梯子の1つまたは複数の段に取り付けられ、U字形クランプが、段の周りでのU字形クランプの回転を防止する先端を備えることができる。
【0020】
少なくとも1つのクランプは、トラックに沿った複数の所定の位置の1つにロック可能なスライダを介して、少なくとも1つのトラックに摺動可能に取り付けられてもよい。
【0021】
スライダは、一対のそれぞれのピンの、トラック内のそれぞれの開口に対する挿入および引抜きを制御する一対の手動操作アクチュエータをさらに備えることができる。
【0022】
適切には、各ピンは、トラック内のそれぞれの開口に位置合わせされたときに、それぞれの付勢要素によりロック位置に独立して付勢される。
【0023】
好ましくは、スライダは、スライダがロック位置にあるかロック解除位置にあるかを示す視覚インジケータを備える。視覚インジケータは、スライダがロック解除位置にあるときにスライダの本体の開口を通して見える、ピンの着色端部を含んでもよい。
【0024】
好ましくは、少なくとも1つのクランプが、構造物の一部分を受ける一対の離間した顎部と、構造物の一部分をクランプ内に固定する少なくとも1つのクローアームとを備える。
【0025】
少なくとも1つのクローアームは、クランプのハウジングに枢動可能に装着され、かつハウジング内で可動なスライダブロックに枢動可能に装着されて、好ましくは、少なくとも1つのクローアームの開閉速度がスライダブロックの下降または上昇のそれぞれの速度よりも速くなるように、かつ好ましくは、構造物のサイズに関係なく、構造物の一部分と少なくとも1つのクローアームとの間の間隔が最小になるようにしてもよい。
【0026】
適切には、少なくとも1つのクローアームが、可動ピボット、腎臓形カム、またはばね作動カムを介して、ハウジングに枢動可能に装着される。
【0027】
適切には、ウェッジがスライダブロックに係合して、スライダブロックおよび少なくとも1つのクローアームを定位置にロックする。
【0028】
好ましくは、ウェッジがスライダブロックから係合解除されて、ウェッジに接続されたロープまたはケーブルなどの手動操作アクチュエータを介してスライダブロックおよび少なくとも1つのクローアームを解放する。
【0029】
安全機構は、ユーザがアクチュエータを操作し続ける必要なくウェッジを係合解除位置に保持する付勢ラッチをさらに備えてもよい。
【0030】
好ましくは、クランプは、クランプがロック位置およびロック解除位置にあるときを視覚表示する視覚インジケータを備える。
【0031】
適切には、視覚インジケータは、ウェッジ側に設けられた2つの着色領域の形であり、2つの着色領域の一方または他方がクランプのハウジングの開口を通して見えて、クランプがロック位置またはロック解除位置にあることを示す。
【0032】
好ましくは、視覚インジケータは、梯子の下段に取り付けられたそれぞれのクリートで複製再現されて(replicated)、それぞれのクランプがロック位置にあるかロック解除位置にあるかを、梯子の最下部にいるユーザに示す。
【0033】
適切には、手動操作アクチュエータは、梯子の第1の梯子部および第2の梯子部が互いに対して動くときにロープまたはケーブルに略同一の張力を維持する構成において、梯子を通して引き回されたロープまたはケーブルの形である。
【0034】
好ましくは、梯子安全機構は、梯子の上部に取り付け可能な落下保護デバイスをさらに備え、落下保護デバイスは、ユーザに取り付け可能であり、ユーザの落下を制限するリミッタを備える。
【0035】
適切には、リミッタは、ユーザの落下速度を制限する速度リミッタである。
【0036】
適切には、リミッタは、ユーザの落下を止める落下アレスタである。
【0037】
好ましくは、梯子の端部からの少なくとも1つのクランプの距離を調節することができる。
【0038】
好ましくは、落下保護デバイスは、巻き取り巻き出し安全ラインを備える。
【0039】
安全機構は、好ましくは、落下保護デバイスのコネクタが梯子の最下部に確実にあって、ユーザが梯子に登る前にユーザに接続されるようにするために、コネクタの一端部に取り付けられ、梯子の最下部で他端部に固定されたフライリード、梯子の最下部に固着され、コネクタに連結された引き込み式ラインを含む引き込み機構、梯子のレールに装着された、コネクタを連結可能なロープまたはラインループのうちの1つをさらに備える。
【0040】
好ましくは、梯子安全機構は、梯子の最下部に取り付け可能な安定装置をさらに備える。
【0041】
好ましくは、安定装置は、梯子に対する安定装置の角度を調節する1つまたは複数の可変長さコネクタを備える。
【0042】
好ましくは、限定されないが、少なくとも1つのクランプ、少なくとも1つの手動操作アクチュエータ、落下保護デバイスおよび/または安定装置などの梯子安全システムのうちの1つまたは複数の部品を、梯子に後付けすることができる。
【0043】
別の態様によれば、本発明は、前述の梯子安全機構を備える梯子に属する。
【0044】
以下の詳細な説明から、本発明のさらなる態様および/または特徴が明らかになろう。
【0045】
本発明を容易に理解し実用的効果に移すことができるようにするため、以下で、添付図面を参照しながら本発明の実施形態に言及する。図中、同一の参照符号は同一の要素を示す。図面は例としてのみ提示される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本発明の実施形態による、梯子に取り付けられた梯子安全機構の斜視図である。
図2】梯子安全機構の一態様が取り付けられた、梯子の後面図である。
図3図1に示す梯子安全機構の、閉じたときのクランプを示す図である。
図4】開いたときの図1に示すクランプを示す図である。
図5】梯子安全機構のクランプを取り付け可能な構造物の例を示す図である。
図6図1に示す梯子安全機構の落下保護デバイスを示す図である。
図7図6に示す落下保護デバイスの実施形態の上面図である。
図8図6に示す落下保護デバイスの実施形態の側面図である。
図9】梯子に取り付けられた、本発明の他の実施形態による梯子安全機構の斜視図である。
図10図9に示す、梯子に連結された落下保護デバイスの斜視図である。
図11図9に示す梯子安全機構の拡大斜視図である。
図12図9に示す梯子安全機構のトラックの斜視図である。
図13図9に示す梯子安全機構のスライダの斜視図である。
図14】ハウジングの一部分を取り外した、図9に示す梯子安全機構のクランプの斜視図である。
図15図9に示す梯子安全機構のクリートの部分透視斜視図である。
図16図15に示すクリートの反対側の部分透視斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
当業者は、図中の要素は簡単かつ明確にするために示されたものであり、必ずしも縮尺通りに描かれていないことを理解するだろう。例えば、本発明の実施形態の理解向上を助けるために、図中の一部の要素の相対寸法が歪んでいてもよい。
【0048】
本発明の実施形態は安全機構に関し、梯子と共に実施することに関してこれを説明する。
【0049】
図1は、本発明の一実施形態による梯子安全機構100の図である。梯子安全機構100は梯子102に取り付けられる。梯子102は剛性梯子であり、レール104間に連結された複数の段106を備える。安全機構100を製造中に梯子102に取り付けてもよく、または、例えば供給業者もしくは梯子のユーザが梯子に後付けできるキットとして供給してもよい。
【0050】
梯子安全機構100は、梯子102に沿った途中に装着可能な少なくとも1つのクランプ110を備える。図1に示す実施形態は、2つのクランプ110を備え、各レール104に1つのクランプが取り付けられる。しかしながら、梯子102の適用および構成に応じて、3つ以上のクランプを使用してもよいことが想定される。
【0051】
各クランプ110を、梯子102を固定する構造物の一部分に略垂直に向けることができる。例えば、図1に示すように、クランプ110は、略水平に向いた足場のポールまたは他の構造物に取り付けるように略垂直な向きに取り付けられてよい。あるいは、クランプ110は、足場または他の構造物の略垂直に向いた部品に取り付けるように略水平な向きに取り付けられてもよい。
【0052】
一部の実施形態では、クランプを固定する構造物の一部分の向きに合わせてクランプ110を傾斜させることができるように、クランプ110が回転可能であることが想定される。したがって、梯子を取り付け可能な構造物の一部分を、垂直、水平、または別の角度に向けることができ、建設現場などにおける足場、金属棒、または他の適切な固定点の一部分とすることができる。そのような構造物の例が図5に示される。
【0053】
クランプ110は、足場ポールなどの円形横断面を有する構造物に締め付けるのに適したものとして図1に示されるが、クランプ110はそのような形状に限定されない。クランプ110を、異なる横断面形状および/もしくはサイズを有する構造物またはその一部分に取り付けるように成形することができる。したがって、クランプ110は、正方形横断面などを有する構造物に取り付けるように正方形形状を有していてもよい。
【0054】
少なくとも1つのアクチュエータは、少なくとも1つのクランプ110に連結される。アクチュエータにより、梯子100の最下部、例えば地面にいるユーザが、少なくとも1つのクランプ110を開いて構造物の一部分を受け、かつ少なくとも1つのクランプ110を閉じて梯子を構造物に固定することができる。一部の実施形態では、アクチュエータが手動操作アクチュエータ120である。少なくとも1つの手動操作アクチュエータ120により、梯子102の最下部にいるユーザと少なくとも1つのクランプ110とが機械的に接続される。あるいは、アクチュエータは電子アクチュエータであってもよい。例えば、電子アクチュエータはモータであってよく、このモータは、クランプ110に連結され、かつ梯子に取り付けられたコントローラ、または遠隔コントローラであるコントローラを介して制御される。
【0055】
図1に示す実施形態は、各クランプ110に1つずつの2つの手動操作アクチュエータ120を備える。手動操作アクチュエータ120を、使用する各クランプ100について設けても、手動操作アクチュエータ120を2つ以上のクランプ110と共に使用してもよい。
【0056】
一部の実施形態では、手動操作アクチュエータ120が、少なくとも1つのクランプ110に取り付けられたロープまたはケーブル122を備える。ロープまたはケーブル122を、梯子102の最下部近く、例えば梯子102の最下部から上に3番目の段106より下のレール104上に取り付けることができる。一部の実施形態では、手動操作アクチュエータ120が、梯子の最上部近く、例えば梯子102の最上部から下に3番目の段106より上のレール104上に取り付けられた車輪124、例えば綱車を備える。ロープまたはケーブル122は、梯子102の最下部近くから車輪124を介して少なくとも1つのクランプ110へ延びて、少なくとも1つのクランプ110を上方へ作動させることができる。
【0057】
一部の実施形態では、梯子安全機構100が、落下保護デバイス130をさらに備える。落下保護デバイス130は、梯子100の上部、例えば最上段106より上のレール104に取り付け可能なリールデバイス140を備える。リールデバイスは、例えば、ユーザのベルトまたはハーネスに連結するカラビナなどのコネクタ134によってユーザに取り付け可能な引き込み式ケーブル132に連結される。引き込み式ケーブル132は、取り付けられたユーザがそれぞれリールデバイス側へ、またはリールデバイスから離れて動くときに、自動的にリールデバイス140に巻き取られ、リールデバイス140から巻き出される。ユーザが梯子上にいない間、例えば、ユーザが梯子の近くで作業しているとき、または梯子間を移動しているときに、ユーザは落下保護デバイスに取り付けられたままであってよい。落下保護デバイス130は、リールデバイス140に連結されたリミッタ146を備える。一部の実施形態では、リミッタ146は、引き込み式ケーブル132をリールデバイス140から巻き出し可能な速度を制限する速度リミッタである。速度リミッタ146は、負荷依存性であり、梯子102のユーザが落下し得る速度を制限する。速度リミッタ146は、図6により明瞭に示されており、以下でより詳細に説明する。加えてまたはあるいは、リミッタ146は、ユーザの落下を止める落下アレスタであってもよい。一部の実施形態では、ケーブル132は、伸び、かつ/または切れて(stretch and/or snap)、落下中にユーザに加わる最大の力を減少させるように設計される。
【0058】
一部の実施形態では、梯子安全機構100は、梯子102の下部に取り付け可能な安定装置150を備える。安定装置150は、梯子の基部に取り付けられる1つまたは複数の調節可能な足部154と、1つまたは複数の調節可能な足部154および梯子102に連結された1つまたは複数の可変長さコネクタ152とを備える。1つまたは複数の可変長さコネクタ152は、梯子102に対する1つまたは複数の調節可能な足部154の角度を調節して、梯子102を表面に対してある角度範囲で安定して着座させることができる。一部の実施形態では、1つまたは複数の調節可能な足部154は可撓性であり、1つまたは複数の調節可能な足部154を粗面および/または凹凸面に安定して着座させることができる。一部の実施形態では、1つまたは複数の調節可能な足部154および/または1つまたは複数の可変長さコネクタ152は、ばね押しされて、ユーザが梯子102をより容易に位置決めできるようにする。安定装置150により、梯子102が表面上で滑らないようにすることを助ける。
【0059】
図2は、本発明の実施形態による梯子安全機構100の一態様の後面図である。これらの実施形態では、梯子の端部、例えば梯子102の基部からの少なくとも1つのクランプ110の距離を調節することができる。梯子の端部からの少なくとも1つのクランプ110の距離を、クランプを直接動かすことによって調節することができ、かつ/または、梯子安全機構100は、梯子102の最下部にいるユーザなどのユーザが距離を調節できるようにする少なくとも1つの手動操作アジャスタ160を備えることができる。手動操作アジャスタ160により、ユーザは、少なくとも1つのクランプ110を構造物の一部分と位置合わせして、ユーザが梯子の最下部、例えば地面にいる間に、梯子を構造物に容易に固定できるようにする。一部の実施形態では、手動操作アジャスタ160は、少なくとも1つのクランプ110の、梯子102に沿った位置を調節する。例えば、少なくとも1つのクランプ110は、梯子102に連結されたトラックに連結されてもよい。一部の実施形態では、手動操作アジャスタ160が、梯子102の一部分を梯子102の別の部分に対して動かして、梯子102の端部からのクランプ110の距離を調節する。例えば、梯子は、地上で操作される継足し梯子の形であり、クランプ110が継足し梯子の上部に取り付けられていてもよい。一部の実施形態では、手動操作アジャスタ160は、梯子102の最下部にいるユーザが梯子102の端部からのクランプ110の距離を調節できるようにするロープまたはケーブル162を備える。
【0060】
図3は、本発明の一実施形態による、クランプ100が閉鎖位置にある梯子安全機構100を示す。クランプ110は、互いに枢動可能に取り付けられた第1のフック112と第2のフック114とを備える。第1のフック112および第2のフック114は、梯子102または手動操作アジャスタ160に取り付けられてもよい。第1のフック112は、梯子102に平行な、固定された位置合わせを有して、梯子102を構造物の水平部分に引っ掛けることができるようにする。一部の実施形態では、第1のフック112の角度が前述したように調節可能である。第2のフック114は第1のフック112および梯子102に対して枢動し、クランプ110を開いて、クランプ110により構造物の一部分を受けることができるようにする。車輪124がクランプ110上方に取り付けられて、梯子に沿ったクランプ110の位置を調節できるようにし、ロープまたはケーブル122が第2のフック114を上方へ作動できるようにする。第2のフック114を上方へ作動することにより、図4に示すようにクランプ112が開く。
【0061】
図4は、本発明の一実施形態による、クランプが開放位置にある梯子安全機構100を示す。ユーザによりロープまたはケーブル122に加えられる力によって、第2のフック114が図3に示す位置から反時計方向に回転してクランプ110を開いている。構造物の一部分に対して第1のフック112の位置が固定されていることにより、第1のフック112を構造物にしっかりと引っ掛けることができ、その後、第2のフック114を閉じて梯子102を固定することができる。梯子102は、そのようにして、ある範囲の横断面形状および横断面積を有する構造物に固定され得る。例えば、構造物の一部分は、建造物の足場、レールの一部分または他の適切な固定点であってよい。
【0062】
図5は、梯子安全機構100のクランプ110を取り付け可能な構造物500の例を示す。構造物は、略水平部分510と略垂直部分520とを備える。少なくとも1つのクランプ110を略垂直に向けて、梯子102を構造物の略水平部分510の1つまたは複数に固定することができる。あるいは、少なくとも1つのクランプ110を略水平に向けて、梯子102を構造物の略垂直部分510の1つまたは複数に固定することができる。
【0063】
図6図7、および図8は、落下保護デバイス130をより詳細に示す。落下保護デバイス130は、梯子102のレール104の上端部を覆って設置されて、落下保護デバイス130を梯子102にしっかりと取り付けることのできるシース142を備える。シース142は、留め具144を介して梯子102のレール104に固定される。ピン148は、リールデバイス140をシース142に回転可能に取り付ける。一部の実施形態では、ピン148は、リールデバイス140がその上で回転可能な軸である。一部の実施形態では、リミッタ146が、リールデバイス140が予め設定された負荷を超えたときを検出して、リールデバイス140が回転可能な速度を制限する。一部の実施形態では、リミッタ146は、リールデバイス140が予め設定された負荷を超えたときに検出し、リールデバイスの回転を止めてユーザの落下を阻止する。
【0064】
代替実施形態では、ロープまたはケーブル122が、伸びること、および/または伸びた状態でブレーキがかかることにより、ユーザの落下速度を制限し、かつ/または遅くすることによって、リミッタとしての機能を果たすことができる。
【0065】
次に、図9図16を参照して、本発明のさらなる実施形態について説明する。
【0066】
図9は、梯子102に取り付けられた梯子安全機構100の別の実施形態を示す。梯子102は、第1の梯子部103Aと、梯子102を所望の高さまで延ばすことができるように第1の梯子部103Aに対して摺動可能である第2の梯子部103B(フライ部と呼ぶこともある)とを備える公知のタイプのものである。第1の梯子部と第2の梯子部とは、ブラケット105を介して摺動可能に接合される。梯子102の段106は円形横断面を有し、一対の離間した段106が各高さに設けられる。第1の梯子部103Aの扇形に開いた足部間の最下段は、上面が平坦で、補強のために厚さが広がっている。しかしながら、他の形状の段を本発明に適応させてもよい。さらに、本発明のこれらの実施形態は、単一の梯子部を含む梯子、および3つ以上の梯子部を含む梯子に等しく適用可能である。
【0067】
図9に示す梯子安全機構100は、レール510などの構造物の一部分に取り付けるための一対の離間したクランプ110を備え、その2つの小さい部分が図9に示される。各クランプ110は、梯子102の第2の梯子部103Bの各側に固着されたそれぞれのトラック200に沿って可動である。各クランプ110は、梯子102の段106を通って引き回されたロープまたはケーブル122を含むそれぞれの手動操作アクチュエータ120によって操作される。ロープまたはケーブル122は、梯子の下段の1つに取り付けられたクリート108に取外し可能に固定され、これにより、地面などの梯子の最下部にいるユーザが、ロープまたはケーブル122に到達することができる。また、梯子安全機構100は、第2の梯子部103Bの上部に取り付けられた落下保護デバイス130の別の実施形態を備える。以下で、図9に示す前述の特徴についてさらに詳細に説明する。
【0068】
図10は、図9に示す落下保護デバイス130を示す。第2の梯子部103Bの最上部に取り付けられたシース142は、梯子102のレール104から離れて延びて、落下保護デバイス130が動いて動作するための間隙をもたらす。シース142は、レール104の上端部を受けるサイズおよび形状の中空本体136を備える。シース142は、中空本体136の最上部から延びるアーム138と、中空本体136とアーム138との間に垂直に延びてシース142を補強する1つまたは複数のガセットまたはウェブ139を備える。1つまたは複数のガセットまたはウェブ139は、中空本体139からアーム138の遠位端側へテーパ状になっている。例えば、1つまたは複数のガセットまたはウェブ139のいずれかの側の適切な留め具により、シース142を、レール104に固着することができる。シース142は、必要な形状に成形された適切なプラスチック材料から作られてもよく、または適切な金属から形成されてもよい。
【0069】
アーム138の遠位端は開口141を備え、カラビナまたは他のリングなどのコネクタ145がこの開口141を通る。コネクタ145は、リールデバイス140およびリミッタ146を支持し、リミッタ146は、従来の落下制限デバイスまたは落下阻止デバイスの形であってよい。リールデバイス140は、例えばハーネスまたはベルトを介してユーザに接続するコネクタ134を備える。
【0070】
コネクタ134は、第1のユーザが梯子に登る前に使用するために梯子102の最下部になければならず、いくつかの異なる方法でこれを確実にすることができる。フライリードは、一端部でコネクタ134に取り付けられ、他端部で梯子102の最下部に、または最下部に向かって固定され得る。ユーザは、フライリードを引いてコネクタを取り出し、梯子に登る前にユーザに取り付けるだけでよい。あるいは、引き込み機構が梯子の最下部に、または最下部に向かって固着された状態で、引き込み式ラインをコネクタ134に連結して、使用時にユーザに接続する準備ができていないときにコネクタ134が梯子102の最下部で、または最下部に向かって保持されるようにする。さらなる代替案として、ロープまたはラインループを梯子のレール104の1つに装着することができ、コネクタ134をループに連結することができる。ループを引くことにより、コネクタ134を梯子の最下部の位置に引いて、梯子に登る前にユーザに接続する。
【0071】
また、上記代替案の各々により、第1のユーザがコネクタ134から外れ、次のユーザがコネクタ134を梯子の最下部に動かして、梯子に登る前に次のユーザに接続することができる。
【0072】
図11は、図9に示す梯子安全機構100の拡大図を示す。クランプ110は、梯子102の各側に固着されたそれぞれのトラック200に沿って可動である。各トラック200は、それぞれのレール104に平行に、レール104の外側で延びる。各トラック200は、トラック200の最上部および最下部に向かって位置する略U字形のクランプ202により、梯子の段106に取外し可能に固着される。U字形クランプ202は、U字形の内部でレール104の1つを受けるが、クランプ202のU字形とレール104との間に十分な間隙があり、梯子102の第1の梯子部103Aと第2の梯子部103Bとを接続するブラケット105がそれらの間を通ることができる。
【0073】
レール104の内側に位置するU字形クランプ202の一側は、2つの部分204、206を含み、これらの部分204、206は一対の留め具を用いて段106の周りで留め合わされる。部分204、206は各々、段106の一部分を収容する凹部を含む。部分204は、U字形クランプ202が段106の周りを回転しないようにする先端208を含む。部分204、206および先端208は、安全機構100が固着される梯子102の段106のサイズおよび形状に応じてサイズ決めされ成形される。部分204、206の凹部および先端208のサイズならびに形状は、異なるタイプの梯子の段106のサイズおよび形状に応じて変化してもよいことが理解されよう。トラック200は、1つまたは複数の適切な留め具を用いて、レール104の外側でU字形クランプ202の他側に固着される。
【0074】
U字形クランプ202により、梯子に穴を開けたり、または他の方法で損傷を与えたりする必要なく、トラック200を梯子102に取外し可能に固着することができる。これにより、安全機構が梯子に後付けされる場合に、梯子に対する製造者の保証が無効になる可能性が避けられ、梯子102を必要に応じてその元の状態に戻すことが可能になる。
【0075】
図12を参照すると、一実施形態によれば、軽量のトラック200は、Bosch Rexroth AGから入手可能な公知の細長部または押出部の形であってよいが、他の部分をトラック200に使用してもよい。インサート210が、適切な手段によりトラック200内に受けられ、トラック200に固定される。インサート210は、トラック200をU字形クランプ202に固着する留め具を受ける。複数の離間した開口214を含む研磨された棒鋼などの棒またはロッド212が、トラックのインサート210とは反対側にある適切な手段により、トラック200内に受けられ、トラック200に固定される。本明細書でさらに詳細に説明するように、開口214は、クランプ110のそれぞれの1つを、トラック200に沿って複数の所定の位置の1つに固定するためのピンを受ける。一部の実施形態によれば、トラック200は、クランプ110を位置決め可能な約2mの距離を提供する。しかしながら、トラック200の長さは、梯子安全機構100を適用する梯子のサイズおよびタイプに応じて変化し得ることを理解されたい。
【0076】
図13を参照すると、各クランプ110は、スライダ216によってそれぞれのトラック200に沿って可動である。スライダ216は、フランジ220を有する本体218を備え、例えば複数の留め具を介してクランプ110がフランジ220に固着される。本体218は、トラック200を受けるためのチャネル222を備える。チャネル222の内壁がトラック200に係合して、スライダ216がトラック200に沿って動くことができるようにする。本実施形態では、スライドストリップ224がチャネル222の内壁内に受けられ、内壁に固着される。スライドストリップ224は、トラック200の外形により受けられるT字形突起を有する。スライドストリップ224は、適切な耐摩耗性の低摩擦材料から作られてもよい。
【0077】
明確にするために、図13の本体216からカバープレートが取り外されている。スライダ216の本体218は、一対の手動操作アクチュエータまたはボタン226を収容する。ボタン226は、ボタン226のつまみ228間に保持されたばね227などの一対の付勢要素により、図13に示す非作動位置まで付勢される。明確にするために、ばね227の1つが図13から取り外されている。各ボタンは、スロット232を有するウェッジ230を備える。ウェッジ230の下側は一対の突起(図示せず)を含み、この突起の各々が、スライダ216の本体218のそれぞれのガイド234内に受けられて、ユーザにより作動されたときにボタン226の動きを案内する。
【0078】
また、スライダ216は、トラック200の開口214に係合する一対の離間したピン236を備える。各ピン236は、ばねなどの付勢要素により独立して付勢されて、ピンが開口214の1つと位置合わせされたときに、その開口内に受けられるようにする。各ピン236は、傾斜面240を有するブロック238を通る。ブロック238は、付勢要素とスライダ216の本体218との間に設けられる。
【0079】
したがって、ボタン226がユーザにより作動されると、ウェッジ230がガイド234に沿って摺動し、それぞれのブロック238の傾斜面240に対して摺動し、これにより、ブロックおよびそれぞれのピン236を持ち上げて、ピンをトラック200の開口214から引き抜く。両方のピン236が引き抜かれると、スライダ216は、取り付けられたクランプ110と共に所望の位置へ動くことができる。ユーザは、スライダ216が動いたときにボタン226を解放することができる。ピン236が再びトラック200のそれぞれの開口214に位置合わせされると、付勢要素によりピン236が開口214に係合して、スライダ216を定位置に固定する。各ピンは独立して付勢され作動されて、ピン236の1つが動かなくなった場合にフェイルセーフとなる。ピン236は、デフォルト位置で開口214に係合される。
【0080】
スライダ216は、ピン236がロック位置にあるかロック解除位置にあるかを示す視覚インジケータを備える。一部の実施形態では、ピン236の端部が赤に着色される。ピンが持ち上げられて、トラック200の開口214に挿入されていないときには、ピン236の赤色の端部が、本体216のカバープレートの開口241(図11に示す)を通して見える。
【0081】
各スライダ216および取り付けられたクランプ110を、それぞれのトラック200に沿ったいくつかの所定の位置の1つに独立して位置決めして、梯子102を構造物のある範囲に固定する際に最大の可撓性をもたらすようにすることができる。
【0082】
図14を参照すると、各クランプ110は、適切な留め具によって接合された2つの部分から形成されたハウジング242を備える。2部分ハウジング242により、メンテナンスおよび修理のためにクランプの機構に到達することができる。一実施形態では、ハウジング242が約36mmの厚さであり、その強度および低質量のためにアルミニウムから作られるが、適用に応じてクランプ110の他の材料およびサイズを使用してもよい。
【0083】
図14は、クランプ110の機構を示すためにハウジング242の一部分が取り外されたクランプ110を示す。クランプ110は、梯子102を固定するレール510などの構造物の一部分を間に受けるための一対の離間した顎部244を備える。顎部244の各々は、レール510を受けるための開口部を最大化する傾斜縁部246を備え、梯子102の最下部にいるユーザによる、クランプ110とレールとの位置合わせを容易にする。一部の実施形態では、顎部244が直径30〜60mmのレール510を受けて固定することができるが、他のサイズのレールおよび他の構造物に適応させるために、本発明の範囲内で異なるサイズのクランプを製造してもよいことを理解されたい。
【0084】
クランプ110は、レールが顎部244間にあるときにクランプをレール510に固定するための爪248を備える。本実施形態では、爪248は2つのクローアーム248A、248Bを備え、クローが閉鎖位置または部分閉鎖位置にあるときにクローアームの一方が少なくとも部分的に他方に受けられる。例えば、クローアーム248Bは、クローアーム248Aを受けるためのスロット250を備える。各クローアームは、例えば、図14に示すような腎臓形カム252などの可動ピボットを介して、ハウジング242の一部分に枢動可能に装着される。腎臓形カム252により、クローアーム248A、248Bのピボット点の動きを可能にし、これにより、レールの直径に関係なく、クローアームとレール510との接触を最大化し、かつクローアームとレール510との間の間隔を最小化するのを助ける。
【0085】
各クローアーム248A、248Bの端部が、適切な留め具により、スライダブロック254内に、かつスライダブロック254に枢動可能に連結される。スライダブロック254は、ハウジング242内で上下に動くことができる。ばね(図示せず)などの付勢要素が、ハウジング242の凹部256間でスライダブロック254の開口258内へ延びる。付勢要素は、クローアーム248A、248Bが開放位置になるように、スライダブロック254を図14に示す下方位置へ付勢する。また、クランプ110の機構は、スライダブロックが上方位置にあるときにスライダブロック254に係合可能なウェッジ260を備える。例えば、ウェッジ260は、スライダブロック254を受けるためのチャネル261を備え、スライダブロック254は、ウェッジ260を受けるためのウェッジ状凹部263を備える。ばね(図示せず)などの付勢要素が、ハウジング242の別の凹部間でウェッジ260の後部の開口(図示せず)内へ延びて、ウェッジをハウジング242の右側に付勢する。しかしながら、ウェッジ260は、スライダブロック254の最上部により、図14に示すハウジング242の左側へ向かって係合解除位置に保持される。図14では間隔が示されるが、ウェッジ260は通常、スライダブロック254に接触する
【0086】
使用時に、ユーザがクランプ110を構造物またはレール510などの構造物の一部分に配置すると、レール510がスライダブロック254をさらにハウジング242内へ上方に押す。これにより、クローアーム248A、248Bがスライダブロック254を有するピボット点および腎臓形カム252の周りを枢動して、クローアームをレール510の周りで閉じる。最終的に、レール510はクランプ110の顎部244に当接し、クローアームはレール510に当接する。これが生じると、ウェッジ260が右側に付勢されてスライダブロック254に係合し、スライダブロック254、およびしたがってクローアームを定位置にロックする。これにより、レール510は、クランプ110内にしっかりと保持される。したがって、ユーザが梯子102の最下部のユーザの位置からクランプを構造物に配置することにより、クランプ110は構造物510の一部分に自動的に固定される。
【0087】
クランプ110をロック解除するために、ユーザはウェッジ260に接続されたロープまたはケーブル122などのアクチュエータ120を引き、これにより、ウェッジ260をハウジング242の左側へ引く。これが生じると、ばね264などの付勢要素を介して上方へ付勢されるラッチ262が上方へ押されて、ユーザがロープ/ケーブル122を引き続けるなどのアクチュエータ120の操作を続ける必要なく、ウェッジ260をハウジング242の左側に向かって保持する。これにより、スライダブロック254は、ロック解除され、そのそれぞれの付勢要素の力によって自由に下方へ動く。スライダブロック254が下方へ動くと、クローアーム248A、248Bは開いてクランプ110をレール510から解放する。スライダブロック254が下方へ動くと、スライダブロックはラッチ262を下方へ押してウェッジ260を解放し、ウェッジ260はそのそれぞれの付勢要素の力によって開始位置へ右に押される。
【0088】
スライダブロック254およびクローアーム248A、248Bの配置は、クローアームの開く速度がスライダブロックの下降速度よりも速くなるようになっている。これにより、クランプ110をレール510から取り外すことができるように、クローアームが確実に十分に後退する。同様に、クローアームは、スライダブロック254の上昇よりも速い速度で閉じて、レール510がクランプ110内で完全に定位置に入る前に、レール510または構造物の他の部分が解放されないようにする。
【0089】
クランプ110は、1つまたは複数の交換可能な摩耗ストリップ274を備え、この摩耗ストリップ274は、ハウジング242の内側に固着されて、平滑な動きを容易にし、スライダブロック254および/またはウェッジ260の付着を最小限にする。
【0090】
ウェッジ260は、ウェッジの側面に視覚インジケータ266を備えて、クランプ110がロック位置およびロック解除位置にあるときを視覚表示する。図示した実施形態では、視覚インジケータは、例えば、2つの着色領域の形である。第1の大きい領域268を緑に着色して、クランプ110がロック位置にあることを示してもよい。第2の小さい領域270を赤に着色して、クランプ110がロック解除位置にあることを示してもよい。2つの着色領域の一方または他方が、クランプ110のハウジング242の開口272を通して見える。第2の小さい領域270は、ウェッジ260が左側に向かい、スライダブロック254から係合解除されるときに開口272を通して見える。第1の大きい領域268は、ウェッジ260が右側に向かい、スライダブロック254に係合するときに、開口272を通して見える。
【0091】
図15および図16に示す部分透視図を参照すると、視覚インジケータ266は、梯子102の下段106の1つに取り付けられたそれぞれのクリート108で複製再現されて、それぞれのクランプ110がロック位置にあるかロック解除位置にあるかを、梯子の最下部にいるユーザに示す。ウェッジ260に接続されたロープまたはケーブル122は、梯子102を通して引き回されて、クリート108内で保持される。クリート108は、ハウジング276内に摺動可能に保持されたブロック275に取り付けられる。ブロック275は、それぞれのクランプ110のウェッジ260の位置に対応するばねまたは他の付勢要素を介して付勢される。ハウジング276は、適切なブラケット280を介して段106の1つに固着される。図16に示すように、ブロック275の面は、視覚インジケータ266の第1の大きい領域268と第2の小さい領域270とを含み、これらの領域の一方または他方がハウジング276の開口278を通して見えて、それぞれのクランプ110のロック状態またはロック解除状態を示す。
【0092】
ウェッジ260に接続されたロープまたはケーブル122は、図8の構成で梯子102を通して引き回されて、第1の梯子部103Aと第2の梯子部103Bとが互いに対して動くときにロープまたはケーブル122に略同一の張力を維持する。
【0093】
代替実施形態では、あるさらなる変形形態および代替形態が想定される。例えば、腎臓形カム252をばね起動カムに置き換えて、同様の枢動効果を達成することができる。例えば、ラチェットおよび爪機構をスライダブロック254と共に使用してもよい。例えば、クローアーム248A、248Bを、顎部244間の間隔にわたる単一のクローアームに置き換えてもよい。例えば、ウェッジ260を係合解除位置に保持するためのラッチ262を、ウェッジを定位置に保持する適切な機構に置き換えてもよい。単一のクランプ110を使用して、例えば梯子の中心に位置する構造物に梯子102を固定できることが想定されるが、つまずく危険または障害物を避けるために、段106の中心領域を自由にしておくことが好ましい。クランプ110の向きを、例えば、図示した位置から90度回転させてもよいことが想定される。これにより、下方への動きではなく前方への動きでクランプ110を構造物に固定することができ、このことは、ある適用において好ましい場合がある。また、2つ以上のクランプ110を、単一のロープ/ケーブル122などの単一のアクチュエータ120により操作してもよいことが想定される。
【0094】
これにより、本発明の少なくとも1つのクランプ110は、梯子102を定位置に固定して、梯子が構造物から離れて倒れること、または横に摺動することを防止する。地面、またはより高い高さに到達しようとするときには高い台などの、梯子の最下部にいるユーザによって、梯子を定位置に固定することができる。したがって、先行技術のデバイスのいくつかとは異なり、梯子の第1のユーザが梯子に登る前でも、梯子102は定位置に固定される。落下保護デバイス130は、万一ユーザが固定された梯子から落下した場合に、ユーザに落下安全をもたらす。しかしながら、梯子102が固定されるため、落下保護デバイス130も固定される。さらに、本発明の実施形態により、ユーザは、梯子に登る前に、確実に落下保護デバイスに取り付けられる。
【0095】
したがって、落下保護デバイス130を備える本発明の梯子安全機構100は、例えば建設現場などの作業環境における落下安全規則の順守をもたらす。1つまたは複数のクランプ110の位置を梯子102の長さに沿って調節可能にすることができ、クランプの向きを調節可能にすることができ、梯子を多くの適用に合わせることができる。また、梯子安全機構は軽量であるため、梯子の携帯性が維持される。少なくとも1つのクランプ110、アクチュエータ120、落下保護デバイス130および/または安定装置などの安全機構の部品を梯子に後付けしてもよい。したがって、場合により、固定梯子および避難梯子を含む既存の梯子に、これらの機能を作業現場で取り付けることができる。
【0096】
これにより、本発明の実施形態は、例えば建設現場において、ユーザを落下損傷から保護し、かつ安全規則に従う梯子安全機構を提供することにより、梯子のユーザ、梯子のユーザの責任者、および社会全体に役立つ。本発明はまた、梯子安全デバイスを既存の梯子に後付け可能であるという利点をもたらすため、会社は新しい梯子を購入する必要がない。梯子安全システムの実施形態は、梯子構造物の穴開けを必要とせず、または梯子にその他の損傷を生じさせることがなく、梯子に対する保証が保たれ、必要に応じて梯子をその元の状態に戻すことができる。
【0097】
梯子安全システムの実施形態は、ある範囲のサイズを有する構造物に梯子を固定することができる。例えば、円形レールなどの場合、本発明の一実施形態は、レールと少なくとも1つのクローアーム248との間の間隔を最小限にしつつ、直径30〜60mmのレールに梯子を固定することができる。
【0098】
安全機構の実施形態は、例えばスライダブロック254との接触およびクローアームとのピボット式接続により、クランプを構造物の一部分に配置することによって、1つまたは複数のクランプ110を構造物の一部分に自動的に固定する。したがって、クランプは、地面にいるユーザによって構造物に容易に固定されるため、梯子安全機構は、夜間または鉱山内などの光レベルの低い状態で特に有用となる。
【0099】
本発明は、建設現場において、梯子を近くで使用する足場または他の共通の構造物に梯子を安全にロックすることができ、梯子が固定されると、例えばユーザの落下を止めるのではなくユーザの落下速度を制限することにより梯子のユーザを危険な落下から保護して、ユーザが突然の減速によるむち打ち症などの損傷を受けないようにするという利点をさらにもたらす。
【0100】
本発明の実施形態は手動操作されるため、電子機器または電力を必要としない。したがって、バッテリを交換する必要がなく、バッテリ切れにより安全システムが機能停止する危険がない。先行技術の解決法のいくつかとは異なり、主電源がない場合にも本発明の実施形態を使用することができる。
【0101】
システムの実施形態は、1つまたは複数のクランプ110が構造物にしっかりと取り付けられているとき、およびクランプがロック解除されているときを、地面にいるユーザに示す、明瞭な視覚インジケータを備える。システムの実施形態はまた、クランプ110を保持するスライダ216がトラック200上の定位置にしっかりとロックされているとき、またはロック解除されているときをユーザに示す明瞭な視覚インジケータを含んでもよい。
【0102】
本明細書では、第1のおよび第2のなどの形容詞は、単に1つの要素または動作を別の要素または動作から区別するために用いることができ、必ずしも実際のそのような関係もしくは順序を必要とし、または意味するものではない。文脈が許す場合、整数または部品またはステップ(など)への言及は、その整数、部品、またはステップの1つのみに限定されるものと解釈すべきではなく、その整数、部品、またはステップなどの1つまたは複数であり得る。
【0103】
本明細書では、「備える(comprises)、(comprising)」または同様の用語は、非排他的包含を意味するものであり、列記された要素を備える装置が、それらの要素のみを含むのではなく、列記されていない他の要素をも含む可能性があるようになっている。
【0104】
本明細書を通して、目的は、本発明を一実施形態または特定の特徴の集合に限定することなく、本発明を説明することにある。当業者は、本発明の範囲内に含まれる、特定の実施形態からの変形形態を実現することができる。
【符号の説明】
【0105】
100 梯子安全機構
102 梯子
103A 第1の梯子部
103B 第2の梯子部
104 レール
105 ブラケット
106 段
108 クリート
110 クランプ
112 第1のフック
114 第2のフック
122 ロープまたはケーブル
124 車輪
130 落下保護デバイス
132 引き込み式ケーブル
134 コネクタ
136 中空本体
138 アーム
139 ガセットまたはウェブ
140 リールデバイス
141 開口
142 シース
144 留め具
145 コネクタ
146 リミッタ
148 ピン
150 安定装置
152 可変長さコネクタ
154 足部
160 手動操作アジャスタ
162 ロープまたはケーブル
200 トラック
202 U字形クランプ
204、206 部分
208 先端
210 インサート
212 棒またはロッド
214 開口
216 スライダ
218 本体
222 チャネル
224 スライドストリップ
226 ボタン
227 ばね
228 つまみ
230 ウェッジ
232 スロット
234 ガイド
236 ピン
238 ブロック
240 傾斜面
241 開口
242 ハウジング
244 顎部
246 傾斜縁部
248 爪
248A、248B クローアーム
252 腎臓形カム
254 スライダブロック
256 凹部
258 開口
260 ウェッジ
261 チャネル
262 ラッチ
263 ウェッジ状凹部
264 ばね
266 視覚インジケータ
268 第1の大きい領域
270 第2の小さい領域
272 開口
274 摩耗ストリップ
275 ブロック
276 ハウジング
278 開口
500 構造物
510 略水平部分、レール
520 略垂直部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16