特許第6449277号(P6449277)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6449277イミダゾールカルボキサミドおよびFAAH阻害剤としてのそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6449277
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】イミダゾールカルボキサミドおよびFAAH阻害剤としてのそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/12 20060101AFI20181220BHJP
   C07D 405/12 20060101ALI20181220BHJP
   A61K 31/164 20060101ALI20181220BHJP
   A61K 31/4178 20060101ALI20181220BHJP
   A61P 1/08 20060101ALI20181220BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20181220BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20181220BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20181220BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20181220BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20181220BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20181220BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20181220BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20181220BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20181220BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20181220BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20181220BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20181220BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20181220BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20181220BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20181220BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20181220BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20181220BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20181220BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20181220BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20181220BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20181220BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20181220BHJP
   A61P 25/32 20060101ALI20181220BHJP
   A61P 25/34 20060101ALI20181220BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20181220BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20181220BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20181220BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20181220BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20181220BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20181220BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
   C07D401/12CSP
   C07D405/12
   A61K31/164
   A61K31/4178
   A61P1/08
   A61P1/14
   A61P1/16
   A61P3/00
   A61P3/04
   A61P9/00
   A61P9/10
   A61P9/12
   A61P11/06
   A61P17/02
   A61P19/02
   A61P19/10
   A61P21/02
   A61P25/00
   A61P25/04
   A61P25/08
   A61P25/14
   A61P25/16
   A61P25/18
   A61P25/20
   A61P25/22
   A61P25/24
   A61P25/28
   A61P25/32
   A61P25/34
   A61P25/36
   A61P27/06
   A61P29/00
   A61P35/00
   A61P37/08
   A61P39/02
   A61P43/00 111
   A61P43/00 121
【請求項の数】14
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-529739(P2016-529739)
(86)(22)【出願日】2014年7月24日
(65)【公表番号】特表2016-525543(P2016-525543A)
(43)【公表日】2016年8月25日
(86)【国際出願番号】PT2014000049
(87)【国際公開番号】WO2015012708
(87)【国際公開日】20150129
【審査請求日】2017年7月21日
(31)【優先権主張番号】1313202.2
(32)【優先日】2013年7月24日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1313203.0
(32)【優先日】2013年7月24日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1313204.8
(32)【優先日】2013年7月24日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】509095086
【氏名又は名称】ビアル−ポルテラ エ コンパニア,ソシエダッド アノニマ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100203828
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多村 久美
(72)【発明者】
【氏名】カルラ パトリシア ダ コスタ ペレイラ ローザ
(72)【発明者】
【氏名】リタ グスマン デ ノロンハ
(72)【発明者】
【氏名】ラスゾロ エルノ キス
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−513990(JP,A)
【文献】 特許第6317345(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 401/00−401/14
C07D 405/00−405/14
A61K 31/00−31/80
A61P 1/00−43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
【化1】
から選択される構造を有する化合物、又はそれらの薬学的に許容される塩。
【請求項2】
前記薬学的に許容される塩が、塩酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ヒドロキシプロパン−1,2,3−トリカルボン酸塩、(2R,3R)−2,3−ジヒドロキシコハク酸塩、リン酸塩、硫酸塩、安息香酸塩、2−ヒドロキシ−安息香酸塩、S−(+)−マンデル酸塩、S−(−)−マレイン酸塩、S−(−)ピログルタミン酸塩、ピルビン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、1−R−(−)−カンファースルホン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩又はシュウ酸塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の化合物を、1又は2以上の薬学的に許容される賦形剤とともに含む医薬組成物。
【請求項4】
経口投与向けである、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
殺菌済み注射可能な調製物の形態である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
症状の発症又は兆候がFAAH酵素の基質と関連する症状の処置又は予防における使用のための、請求項3から5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記症状が、エンドカンナビノイド系と関連する疾患である、請求項に記載の医薬組成物
【請求項8】
前記疾患が、食欲抑制、肥満、代謝疾患、悪液質、無食欲症、疼痛、炎症、神経毒性、神経外傷、脳卒中、多発性硬化症、脊髄損傷、パーキンソン病、レボドパ誘発性ジスキネジア、ハンチントン病、ジル‐ド‐ラ‐ツレット症候群、遅発性ジスキネジア、ジストニア、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、てんかん、統合失調症、不安症、うつ病、不眠症、悪心、嘔吐、アルコール疾患薬物依存症、高血圧、循環性ショック、心筋再潅流傷害、アテローム性動脈硬化、ぜんそく、高眼圧症(ocular hypertension)、緑内障、網膜症、癌、炎症性腸疾患、急性及び慢性肝疾患関節炎並びに骨粗しょう症から選択される、請求項7に記載の医薬組成物
【請求項9】
前記薬物依存症が、オピエート、ニコチン、コカイン、アルコール及び精神刺激薬の依存症から選択される、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記急性及び慢性肝疾患が、肝炎及び肝硬変から選択される、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
1又は2以上の追加の医薬的活性成分をさらに含む、請求項3から10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記1又は2以上の追加の医薬的活性成分が、アナンダミド、オレイルエタノールアミド及びパルミトイルエタノールアミドから選択される、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
1又は2以上の追加の医薬活性成分と同時に、又はずらして投与するための、請求項3から10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記1又は2以上の追加の医薬的活性成分が、アナンダミド、オレイルエタノールアミド及びパルミトイルエタノールアミドから選択される、請求項13に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、化合物及びその使用に関し、特に化合物及び脂肪酸アミドヒドロラーゼ (fatty acid amide hydrolase)(FAAH)酵素によって分解される基質、例えば神経伝達物質であるアナンダミドと関連する症状の処置又は予防におけるその化合物の治療用途に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景技術
FAAH酵素は、アナンダミド(N−アラキドノイルエタノールアミン)、N−オレイルエタノールアミン(OEA)、N−パルミトイルエタノールアミン(PEA)、及びオレアミドなどの脂肪酸アミドを分解する。アナンダミドは、N−アラキドノイルエタノールアミン、又はAEAとしても知られ、動物及びヒトの臓器内、特に脳内に見出される内因性のカンナビノイド神経伝達物質である。アナンダミドが、バニロイド受容体に結合することも見出されている。アナンダミドは、脂肪酸アミドヒドロラーゼ(FAAH)酵素により、エタノールアミン及びアラキドン酸に分解される。従って、FAAHの阻害剤は、アナンダミドのレベル上昇を引き起こす。
【0003】
アナンダミドは、エンドカンナビノイド系における神経伝達物質であり、カンナビノイド受容体を刺激する。カンナビノイド受容体、例えばCB1及びCB2は、Gタンパク質共役型受容体である。CB1は主に中枢神経系に見出される一方、CB2は主に末梢組織に見出される。エンドカンナビノイド系は、中枢及び末梢神経系、並びに末梢臓器の両方において、ますます多くの生理学的機能に関与するとされてきた。エンドカンナビノイド系の活性の調節は、広範囲の全く異なる疾患及び病理学的状態に可能性のある治療効果を有することが示されてきた。従って、エンドカンナビノイド系、及びFAAH酵素は特に、多くの疾患に向けた可能性のある処置を開発するための治療標的となっている。エンドカンナビノイド系は、食欲抑制(appetite regulation)、肥満(obesity)、代謝疾患(metabolic disorders)、悪液質(cachexia)、無食欲症(anorexia)、疼痛(pain)、炎症(inflammation)、神経毒性(neurotoxicity)、神経外傷(neurotrauma)、脳卒中(stroke)、多発性硬化症(multiple sclerosis)、脊髄損傷(spinal cord injury)、パーキンソン病(Parkinson’s disease)、レボドパ誘発性ジスキネジア(levodopa-induced dyskinesia)、ハンチントン病(Huntington’s disease)、ジル‐ド‐ラ‐ツレット症候群(Gilles de la Tourette’s syndrome)、遅発性ジスキネジア(tardive dyskinesia)、ジストニア(dystonia)、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis)、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、てんかん(epilepsy)、統合失調症(schizophrenia)、不安症(anxiety)、うつ病(depression)、不眠症(insomnia)、悪心(nausea)、嘔吐(emesis)、アルコール疾患(alcohol disorders)、オピエート、ニコチン、コカイン、アルコール及び精神刺激薬などの薬物依存症、高血圧(hypertension)、循環性ショック(circulatory shock)、心筋再潅流傷害(myocardial reperfusion injury)、アテローム性動脈硬化(atherosclerosis)、ぜんそく(asthma)、緑内障(glaucoma)、網膜症(retinopathy)、癌(cancer)、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease)、急性及び慢性肝疾患、例えば肝炎及び肝硬変、関節炎(arthritis)並びに骨粗しょう症(osteoporosis)に関与するとされてきた。エンドカンナビノイド系、及びそれに付随する症状は、Pacherら(2006) Pharmacol. Rev. 58:389-462において考察されている。
【0004】
内因性のFAAH基質、例えばアナンダミドなどのレベルを調節して、この基質が、今度はエンドカンナビノイド系を調節するようにするために、FAAH酵素の阻害剤が開発されている。これにより、エンドカンナビノイド系に付随する症状及び疾患の、少なくとも部分的な処置又は予防が可能になる。
【0005】
FAAHの基質は、その他の受容体、例えばバニロイド受容体に結合する、及び/又はその他の情報伝達経路に関与するので、FAAHの阻害剤により、その他の経路、又は系、例えばバニロイド系に付随する症状又は疾患の、少なくとも部分的な処置又は予防が可能になることもある。
【0006】
国際公開第2010/074588号には、FAAHの阻害剤である化合物が開示されている。Kasnanenら(Heikki Kasnanen, Mikko J. Myllymaki, Anna Minkkila, Antti O. Kataja, Susanna M. Saario, Tapio Nevalainen, Ari M. P. Koskinen、及びAntti Poso. Chem Med Chem 2010, 5(2), 213 − 231)には、FAAH阻害剤であるカルバメート化合物が開示されている。特に、化合物6bは、イミダゾール構造を含有するFAAH阻害剤である。しかしながらこの化合物は、この論文に記載の、イミダゾール構造を含有していないその他多くのカルバメート化合物と比較して、弱いFAAH阻害剤である。
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
第1の態様では、本発明は、以下:
【0008】
【化1】
【0009】
から選択される構造を有する化合物、又は薬学的に許容される塩を提供する。
【0010】
本発明の化合物は、酵素脂肪酸アミドヒドロラーゼ(FAAH)の活性を調節することが見出されている。さらには、それらが比較的強力であって、比較的高い末梢選択性を有し(すなわちそれらが、中枢神経系組織と比較して末梢組織においてさらに高い程度にまでFAAHを阻害し)、比較的、代謝安定であることが示されている。本発明の化合物は、国際公開第2010/074588号に開示されている化合物と比較して、一つ又は複数の特性に関連してさらに良好な結果を与えることも示されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の化合物の「薬学的に許容される塩」には、無機塩基を有する塩、有機塩基を有する塩、無機酸を有する塩、有機酸を有する塩、及び、塩基性又は酸性アミノ酸を有する塩が挙げられる。酸を有する塩は特に、場合によって使用してもよい。代表的な塩には、塩酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ヒドロキシプロパン−1,2,3−トリカルボン酸塩、(2R,3R)−2,3−ジヒドロキシコハク酸塩、リン酸塩、硫酸塩、安息香酸塩、2−ヒドロキシ−安息香酸塩、S−(+)−マンデル酸塩、S−(−)−マレイン酸塩、S−(−)ピログルタミン酸塩、ピルビン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、1−R−(−)−カンファースルホン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩及びシュウ酸塩が挙げられる。本発明の化合物は、溶媒和物(例えば水和物)又は非溶媒和物(例えば非水和物)の形態のいずれかであってもよい。溶媒和物の形態をとる場合では、加えられる溶媒は、アルコール、例えばプロパン−2−オールであってもよい。
【0012】
塩を調製する一般的方法は、当業者に周知である。塩の薬学的許容性は、製剤処理工程の性質、及びイン・ビボでの挙動など、多様な因子に依存するであろうし、当業者は本開示を考慮して、そのような因子を容易に評価できるであろう。
【0013】
本発明の第2の態様に準拠して、本発明の第1の態様に従う化合物を、一つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤とともに含む医薬組成物を提供する。
【0014】
本発明の医薬組成物は、本発明の第1の態様の化合物を、薬学的に許容されるいずれかの、担体、助剤、又はビヒクルとともに含む。本発明の医薬組成物において使用してもよい、薬学的に許容される、担体、助剤、及びビヒクルは、従来から製剤処方の分野において使用されているものであり、砂糖、糖アルコール、でんぷん、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばリン酸塩、グリセリン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質、例えばプロタミン硫酸塩、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸塩、ろう、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、及び羊毛脂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
本発明の医薬組成物は、経口的に、非経口的に、吸入噴霧剤により、直腸に、経鼻的に、口腔内に、経膣的に、又は埋め込み式リザーバーを通じて投与されてもよい。経口投与が好ましい。本発明の医薬組成物は、従来の非毒性の薬学的に許容される、担体、助剤、又はビヒクルのいずれかを含有していてもよい。非経口という用語は、本明細書で使用する場合、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、腱滑液鞘内、胸骨内、髄こう内、病変内、及び頭蓋内への、注射又は点滴技術を含む。
【0016】
医薬組成物は、殺菌済み注射可能な調製物の形態をとって、例えば、殺菌済み注射可能な水溶液、又は油性の懸濁液としてであってもよい。この懸濁液は、当該技術分野で公知の技術に従い、好適な分散剤又は湿潤剤(例えば、Tween 80等)、及び沈殿防止剤を使用して処方してもよい。殺菌済み注射可能な調製物はまた、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の、殺菌済み注射可能な溶液又は懸濁液、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液としてであってもよい。使用してもよい、許容されるビヒクル及び溶媒には、マンニトール、水、リンゲル液、及び等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、殺菌済み不揮発性油は、従来、溶媒、又は懸濁媒質として使用されている。この目的のために、合成されたモノ又はジグリセリドを含むあらゆる無刺激性の不揮発性油を使用してもよい。脂肪酸、例えばオレイン酸、及びそのグリセリド誘導体は、注射液の調製に有用であり、天然の薬学的に許容される油、例えばオリブ油又はヒマシ油、特にそれらのポリオキシエチル化版がそうである。これらの油溶液、又は懸濁液は、長鎖アルコールの希釈剤若しくは分散剤、例えばPh.Helvに記載のもの、又は同様なアルコールを含有してもよい。
【0017】
本発明の医薬組成物は、カプセル、錠剤、粉末、顆粒、及び水性の懸濁液、及び溶液を含むがこれらには限定はされない、経口的に許容されるあらゆる剤形で経口投与されてもよい。これらの剤形は、製剤処方の技術分野で周知の技術に従って調整される。経口使用向けの錠剤の場合、一般に使用される担体には、ラクトース及びトウモロコシデンプンが挙げられる。潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウムも、典型的に添加される。カプセル剤形での経口投与向けでは、有用な希釈剤には、ラクトース、及び乾燥させたトウモロコシデンプンが挙げられる。水性懸濁液が経口投与される場合には、活性成分は、乳化剤及び沈殿防止剤と配合される。もし所望であれば、特定の甘味料、及び/又は香味料、及び/又は着色剤を添加してもよい。
【0018】
本発明の医薬組成物は、直腸内投与向けの坐薬の形態で投与されてもよい。これらの組成物を、室温で固体であるが直腸温では液体であり、従って直腸内で融解して活性成分を放出することになる好適な非刺激性賦形剤と、本発明の化合物とを混合することにより調製することができる。そのような物質には、ココアバター、蜜ろう、及びポリエチレングリコールが挙げられるが、これらには限定されない。
【0019】
本発明の医薬組成物は、経鼻的なエアロゾル又は吸入により、投与されてもよい。そのような組成物は、製剤処方の技術分野で公知の技術に従って調製され、通常生理食塩水中の溶液として、ベンジルアルコール、若しくはその他の好適な保存剤、生物学的利用能を強化する吸収促進剤、フッ化炭素、及び/又はその他の当該技術分野で公知の可溶化剤、若しくは分散剤を使用して、調製してもよい。
【0020】
本発明の化合物は、1回の投与当たり、約1〜約20,000μg/kgの投与量、例えば、約1〜約10,000μg/kg、約1〜約5,000μg/kg、約1〜約3,000μg/kg、約1〜約2,000μg/kg、約1〜約1,500μg/kg、約1〜約1,000μg/kg、約1〜約500μg/kg、約1〜約250μg/kg、約1〜約100μg/kg、約1〜約50μg/kg、又は約1〜約25μg/kgで投与されてもよく、これは、処置又は予防すべき症状、及び化合物を投与されることになる対象の性質による。多くの例では、投与量は、1回の投与当たり、約1〜約10μg/kgであってもよい。特定の実施形態では、投与量は、1回の投与当たり、約250μg/kg、約100μg/kg、約50μg/kg、又は約10μg/kgであってもよい。所与の化合物向けの投与計画は、本開示を入手できる当業者によって容易に決定することができる可能性がある。
【0021】
特定の一実施形態では、本発明の医薬組成物はさらに、一つ又は複数の追加の医薬活性成分を含む。本発明の化合物は、一つ又は複数の追加の医薬活性成分、例えばアナンダミド、オレイルエタノールアミド、又はパルミトイルエタノールアミドとともに投与されてもよい。これは、本発明の化合物と、一つ又は複数の追加の医薬的活性成分とを含む、単一組成物の形態をとってもよい。あるいはこれは、二つ以上の別個の組成物であってもよく、この場合、本発明の化合物は、一つの組成物に含有されていてもよく、一つ又は複数のさらなる医薬的活性成分は、一つ又は複数の別個の組成物に含まれていてもよい。
【0022】
従って、本発明の化合物の投与は、一つ又は複数の追加の医薬活性成分に関して、同時、又は交互であってもよい。
【0023】
第3の態様では、本発明は、治療における使用のための、本発明の第1の態様に従う化合物、又は第2の態様に従う組成物を提供する。
【0024】
第4の態様では、本発明は、発症又は兆候がFAAH酵素の基質に関連する症状の処置又は予防において使用するための、本発明の第1の態様に従う化合物、又は第2の態様に従う組成物を提供する。
【0025】
本発明はまた、発症又は兆候がFAAH酵素の基質に関連する症状の処置又は予防のための薬剤の製造における、本発明の第1の態様に従う化合物、又は第2の態様に従う組成物の使用を提供する。
【0026】
発症又は兆候がFAAH酵素の基質に関連する複数の症状は、当業者には既知である。これらのいくつかは、上に記載されている。
【0027】
第5の態様では、本発明は、発症又は兆候がFAAH酵素の基質に関連する症状の処置又は予防の方法も提供し、方法は、そのような処置又は予防を必要とする対象に、本発明の第1の態様に従う化合物、又は第2の態様に従う組成物の、治療上有効な量を投与する方法を含む。
【0028】
症状がエンドカンナビノイド系と関連する疾患である場合の、第4の態様に従う化合物、又は第5の態様に従う方法。
【0029】
特定の実施形態では、治療されることになる症状は:
(i)疼痛、特に急性又は慢性の神経原性の疼痛(neurogenic pain)、例えば偏頭痛(migraine)及び神経障害性の疼痛(例えば代謝性神経障害性の疼痛、ヘルペス後神経痛(post-herpetic neuralgia)、三叉神経痛(trigeminal neuralgia));偏頭痛;急性又は慢性炎症性疼痛、炎症性疾患、例えば関節炎、リウマチ性関節炎(rheumatoid arthritis)、骨関節炎(osteoarthritis)、骨粗しょう症、脊椎炎(spondylitis)、痛風(gout)、血管炎(vasculitis)、クローン病、及び過敏性腸症候群に関連するもの等;急性又は慢性の末梢疼痛;癌疼痛;
【0030】
(ii)特に化学療法の結果として生じる、眩暈(dizziness)、嘔吐、及び悪心;
【0031】
(iii)摂食障害(eating disorders)、特に食欲障害(appetite disorder)、代謝疾患、無食欲症、及び様々な性質の悪液質;
【0032】
(iv)神経性の及び精神医学的な病因、例えば震せん、ジスキネジア、ジストニア、悪心、嘔吐、嗜癖性障害(addictive disorders)(例えば、薬物又はアルコール中毒)、痙攣、強迫行動、トゥレット症候群、あらゆる性質及び起源の、すべての形態のうつ病並びに不安症、不眠症、気分障害(mood disorders)、及び精神病、例えば統合失調症(schizophrenia);
【0033】
(v)急性及び慢性の神経変性疾患、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、老年認知症(senile dementia)、ハンチントン舞踏病、脳虚血(cerebral ischaemia)と頭蓋及び延髄の外傷とに関連する病変;
【0034】
(vi)てんかん;
【0035】
(vii)睡眠時無呼吸(sleep apnoea)を含む、睡眠障害;
【0036】
(viii)心血管疾患、例えば心不全(heart failure)、高血圧、循環性ショック、心筋再潅流傷害、心臓の不整脈(cardiac arrhythmias)、動脈硬化症/アテローム性動脈硬化、心臓発作(heart attack)、心虚血(cardiac ischaemia)、血管炎(vasculitis)、及び腎虚血(renal ischaemia);
【0037】
(ix)癌、例えば良性の皮膚腫瘍、脳腫瘍及び乳頭腫(papillomas)、前立腺腫瘍、及び脳腫瘍(神経膠芽腫(glioblastomas)、髄様上皮腫(medulloepitheliomas)、髄芽細胞腫(medulloblastomas)、神経芽細胞腫(neuroblastomas)、胚起源の腫瘍、星状膠細胞腫(astrocytomas)、星細胞腫(astroblastomas)、上衣細胞腫(ependymomas)、希突起膠細胞腫(oligodendrogliomas)、叢腫瘍(plexus tumour)、神経上皮腫(neuroepitheliomas)、骨端腫瘍(epiphyseal tumour)、上衣芽細胞腫(ependymoblastomas)、悪性髄膜腫(malignant meningiomas)、肉腫症(sarcomatosis)、悪性黒色腫(malignant melanomas)、及び神経鞘腫(schwannomas));
【0038】
(x)免疫系の障害、特に自己免疫疾患、例えば乾癬(psoriasis)、エリテマトーデス(lupus erythematosus)、結合組織の疾患又は膠原病(collagen diseases)、シェーグレン症候群(Sjogren’s syndrome)、強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis)、未分化型の脊椎炎(spondylitis)、ベーチェット病(Behcet’s disease)、自己免疫性溶血性貧血(autoimmune haemolytic anaemia)、多発性硬化症(multiple sclerosis)、筋萎縮性側索硬化症、アミロイドーシス(amyloidosis)、移植片拒絶(graft rejection)、形質細胞系に作用する疾患、アレルギー性疾患;即時性又は遅発性過敏症、アレルギー性鼻炎(allergic rhinitis)又は結膜炎(conjunctivitis)、接触性皮膚炎(contact dermatitis);
【0039】
(xi)寄生虫、ウイルス、又は細菌による感染症、例えばAIDS、及び髄膜炎(meningitis);
【0040】
(xii)炎症性疾患、特に関節疾患、例えば関節炎、リウマチ性関節炎、骨関節炎、脊椎炎、痛風、血管炎、クローン病、過敏性/炎症性腸症候群、ぜんそく;
【0041】
(xiii)骨粗しょう症;
【0042】
(xiv)眼症状、例えば高眼圧症(ocular hypertension)、網膜症(retinopathy)、及び緑内障(glaucoma);
【0043】
(xv)気道の疾患を含む肺症状、気管支痙攣(bronchospasm)、がいそう(coughing)、ぜんそく、慢性気管支炎(chronic bronchitis)、気道の慢性閉塞、及び気腫(emphysema);
【0044】
(xvi)胃腸の疾患、例えば過敏性/炎症性腸症候群(irritable/inflammatory bowel syndrome)、炎症性腸管障害(inflammatory intestinal disorders)、潰瘍(ulcers)、下痢症(diarrhoea)、尿失禁(urinary incontinence)、及び膀胱炎症(bladder inflammation);
【0045】
(xvii)急性及び慢性肝疾患、例えば肝炎(hepatitis)及び肝硬変(cirrhosis);
【0046】
(xviii)神経性の障害例えば神経外傷、脳卒中、多発性硬化症、脊髄損傷、パーキンソン病、レボドパ誘発性ジスキネジア、ハンチントン病/舞踏病、ジル−ド−ラ−ツレット、遅発性ジスキネジア、ジストニア、筋委縮性側索硬化症、アルツハイマー病、及びてんかん
から選択されてもよい。
【実施例】
【0047】
発明の詳細な説明
本発明は、以下でさらに詳細に、例としてのみ記載される:
1. 合成の方法論
本発明の化合物の合成に使用した方法を、以下の一般的なスキーム及び具体的な合成により例示する。すべての化合物及び中間体は、核磁気共鳴法(NMR)により特性評価した。これらの化合物を調製するのに使用した出発物質及び試薬は、市販品の供給元から入手可能である、又は当業者に自明の方法により調製することができる。これらの一般的なスキーム及び具体的な合成は、本発明の化合物を合成することができる方法を単に例示するだけのものであって、これらのスキーム及び合成に様々な修正を行うことは可能であり、本開示を参照した当業者に提案されることになるであろう。
【0048】
本発明の化合物は、融点及びNMRにより特性評価した。NMRスペクトルは、Bruker Avance III 600MHzスペクトロメーター上で、内部標準として使用した溶媒を用いて記録した。13Cスペクトルは、150MHzで記録し、1Hスペクトルは600MHzで記録した。データは、以下の順で報告した:近似的な化学シフト(ppm)、プロトン数、多重度(br,broad;d,doublet;m,multiplet;s,singlet;t,triplet)、及び結合定数(Hz)。
【0049】
以下のスキームにおける室温は、20℃〜25℃の範囲の温度を意味する。
【0050】
1.1. N−メチル−4−(3−(スルファモイルアミノ)フェニル)−N−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド(化合物1)の合成に向けた一般的スキーム
【0051】
【化2】
【0052】
4−(3−ニトロフェニル)−1H−イミダゾール−1−カルボン酸フェニル
【0053】
【化3】
【0054】
クロロギ酸フェニル(3.2mL、25.4mmol)を、4−(3−ニトロフェニル)−1H−イミダゾール(4g、21.1mmol)及びDCM(100mL)中、ピリジン(2.0mL、25.4mmol)の攪拌溶液に0℃で加えた。反応混合物を室温で2時間、攪拌放置した。水を加え、有機層を分離し、乾燥させ(MgSO4)、真空中で蒸発させてベージュ色の固体を得た。固体をその後、プロパン−2−オール及びDCMの混合物から再結晶させ、生成物をベージュ色の固体として単離した。4−(3−ニトロフェニル)−1H−イミダゾール−1−カルボン酸フェニル(2.89g、44%の収率)。
【0055】
N−メチル−4−(3−ニトロフェニル)−N−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド
【0056】
【化4】
【0057】
テトラヒドロフラン(THF)(6mL)中、N−メチルテトラヒドロ−2H−ピラン−4−アミン(2.15g、18.7mmol)の溶液を、THF(40mL)中、4−(3−ニトロフェニル)−1H−イミダゾール−1−カルボン酸フェニル(2.89g、9.3mmol)の攪拌溶液に室温で加えた。黄色の溶液を一晩、還流下で攪拌放置した。溶媒を真空で蒸発させ、生成物をプロパン−2−オールから再結晶させた。N−メチル−4−(3−ニトロフェニル)−N−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド(0.938g、30%の収率)。
【0058】
4−(3−アミノフェニル)−N−メチル−N−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド
【0059】
【化5】
【0060】
エタノール(30.0mL)及び酢酸エチル(30mL)の混合物を、水湿潤パラジウム(0.151g、0.142mmol、活性炭素上10%)に、アルゴン雰囲気下で加えた。この混合物に、N−メチル−4−(3−ニトロフェニル)−N−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド(0.938g、2.84mmol)を加え、懸濁液を室温で一晩、水素雰囲気下で攪拌放置した。得られた灰色の懸濁液はセライトに通してろ過し、セライトはDCMを用いて洗浄した。ろ液を真空中で蒸発させて、無色の生成物を、プロパン−2−オールから再結晶させた。4−(3−アミノフェニル)−N−メチル−N−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド(0.695g、81%の収率)。
【0061】
N−メチル−4−(3−(スルファモイルアミノ)フェニル)−N−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド(化合物1)
【0062】
【化6】
【0063】
スルファモイルクロリド(0.321g、2.78mmol)を、4−(3−アミノフェニル)−N−メチル−N−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド(0.695g、2.314mmol)及びDCM(12mL)中、トリエチルアミン(0.481mL、3.47mmol)の攪拌懸濁液に、室温で加えた。白色懸濁液を室温で一晩、攪拌放置した。水を加え、有機層を、DCM/プロパン−2−オール7:3の混合物を用いて希釈した。有機層を分離し、水層を再抽出した。一つに集めた有機層を乾燥させ(MgSO4)、真空中で蒸発させて透明な油を得た。生成物を、カラムクロマトグラフィー(シリカ、DCM/MeOH 2%、5%、10%)により分離し、無色の固体として単離した。固体を、プロパン−2−オール/DCM混合物を用いて粉砕した。固体をEtOHから2回、再結晶させ、生成物を一晩、60℃、高真空中で乾燥させた。N−メチル−4−(3−(スルファモイルアミノ)フェニル)−N−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド(0.160g、18%の収率)。融点:128℃。
【0064】
NMR (DMSO-d6):
1H : 9.54 (1H, s), 8.14 (1H, s), 7.94 (1H, s), 7.64 (1H, s), 7.44 (1H, d, J = 7.7 Hz), 7.27 (1H, t, J = 7.6 Hz), 7.15 (2H, s), 7.05 (1H, d, J = 8.2 Hz), 4.10 (1H, m), 3.93 (2H, dd, J = 4.0, 11.3 Hz), 3.36 (2H, m), 2.95 (3H, s), 1.86 (2H, dq, J = 4.1, 12.3 Hz), 1.70 (2H, d, J = 12.0 Hz).
13C : 151, 140.6, 139.9, 137.5, 134, 129, 118.6, 116.9, 114.6, 114.4, 66.3, 54.2, 31.6, 29.1.
【0065】
1.2. 4−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)−N−メチル−N−(ピペリジン−4−イル)−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド塩酸塩(中間体1)の合成に向けた一般的スキーム
【0066】
【化7】
【0067】
1−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)エタノン
【0068】
【化8】
【0069】
硫酸ジメチル(17.50mL、183mmol)を、1−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタノン(25g、166mmol)及びアセトン(277mL)中、炭酸カリウム(28.8g、208mmol)の攪拌懸濁液に室温で加えた。懸濁液を一晩、還流下で攪拌放置した。固体をろ過により分離し、アセトンを用いて洗浄し、ろ液を真空中で蒸発させた。有機残渣をEtOAcに溶解させ、水で洗浄した。有機層を分離し、乾燥させ(MgSO4)、真空中で蒸発させて黄色油を得た。さらなる精製無しに使用した。1−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)エタノン(28.7g)。
【0070】
2−ブロモ−1−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)エタノン
【0071】
【化9】
【0072】
THF(122mL)中、フェニルトリメチルアンモニウムトリブロミド(30.2g、80mmol)の溶液を滴下して、THF(122mL)中、1−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)エタノン(12g、73.1mmol)の攪拌溶液に室温で加えた。黄色の懸濁液を室温で1時間、攪拌放置した。固体をろ過により分離し、THFを用いて洗浄した。ろ液を真空中で蒸発させて、有機残渣をEtOAcに溶解させ、水で洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO4)、真空中で蒸発させて、紫色の油を得た。さらなる精製無しに使用した。2−ブロモ−1−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)エタノン(27.9g)。
【0073】
4−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)−1H−イミダゾール
【化10】
【0074】
水(4mL)を、2−ブロモ−1−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)エタノン(27.9g、115mmol)及びホルムアミド(56.7mL、1423mmol)の攪拌懸濁液に室温で加えた。懸濁液を140℃で5時間、攪拌放置した。混合物を200mLの水に注ぎ、暗濃褐色の油を得た。油をろ過により分離し、1NのHClを用いて洗浄し、ろ液を50%のNaOHを用いて塩基性にして、ベージュ色の固体を得た。固体をろ過により分離し、ジエチルエーテル(5×)を用いて洗浄して、純白でない固体を得た。4−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)−1H−イミダゾール(5.2g、24%の収率)。
【0075】
4−(メチルアミノ)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル
【0076】
【化11】
【0077】
メタノール(100mL)中、メタンアミン(38.0mL、442mmol、40%水溶液)の溶液を、水湿潤パラジウム(1.602g、1.506mmol、活性炭素上10%)に、室温、アルゴン雰囲気下で加えた。この混合物に、4−オキソピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(20g、100mmol)を分割して加え、混合物を50℃、20バールで、1時間にわたり攪拌放置した。懸濁液をアルゴンフラッシュし、セライトに通してろ過し、セライトはDCMを用いて洗浄した。ろ液を真空中で蒸発させて、透明な油として生成物を得た。油をEtOAcに溶解させ、水で洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO4)、真空中で蒸発させて透明な油を得た。さらなる精製無しに使用した。4−(メチルアミノ)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(20g、93%の収率)。
【0078】
4−(クロロカルボニル(メチル)アミノ)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル
【0079】
【化12】
【0080】
4−(メチルアミノ)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(20g、93mmol)及びTHF(133mL)中、ヒューニッヒ塩基(35.9mL、205mmol)の溶液を滴下して、攪拌されたホスゲン(53.3mL、112mmol、トルエン中20%溶液)に0℃で加えて、白色懸濁液を得た。混合物を、0℃で10分間、室温で2時間、攪拌放置した。懸濁液を氷/水に注ぎ、有機残渣をEtOAcを用いて抽出した。有機層を分離し、1NのHCl溶液を用いて洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO4)、真空中で蒸発させて、黄色油を得た。油を、PE及び数滴のジエチルエーテルの混合物を用いて粉砕して、無色の固体を得た。固体をろ過により分離し、石油エーテルを用いて洗浄した。4−(クロロカルボニル(メチル)アミノ)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(17.4g、67%の収率)。
【0081】
4−(4−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)−N−メチル−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル
【0082】
【化13】
【0083】
水素化ナトリウム(1.313g、32.8mmol、60%油中分散体)を、THF(137mL)中、4−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)−1H−イミダゾール(5.15g、27.4mmol)の攪拌懸濁液に、0℃で分割して加えた。暗青色の溶液を室温で30分間、攪拌放置し、その後、4−(クロロカルボニル(メチル)アミノ)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(11.36g、41.0mmol)を0℃で加えて、暗色の溶液を得た。混合物を室温で2時間、攪拌放置した。水を0℃で加え、有機層を、DCM/プロパン−2−オール7:3の混合物を用いて希釈した。有機層を分離し、乾燥させ(MgSO4)、真空中で蒸発させて、ベージュ色の固体を得た。固体をプロパン−2−オールから再結晶させた。4−(4−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)−N−メチル−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(9.39g、80%の収率)。
【0084】
4−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)−N−メチル−N−(ピペリジン−4−イル)−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド塩酸塩
【0085】
【化14】
【0086】
TFA(30mL)を、4−(4−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)−N−メチル−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル残渣(9.39g、21.91mmol)に、室温で注意深く加えた。黄色の溶液を室温で1.5時間、攪拌放置した。TFAを真空中で蒸発させ、その後、トルエンで2回共沸した。黄色の残渣をその後、酢酸エチル(30mL)に溶解させ、ジエチルエーテル中、2Mの塩化水素の溶液(32.9mL、65.7mmol)を滴下して0℃で加えて、白色懸濁液を得た。混合物を室温で30分間、攪拌放置し、その後、固体をろ過により分離し、EtOAcを用いて洗浄した。4−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)−N−メチル−N−(ピペリジン−4−イル)−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド塩酸塩(11.06g)。
【0087】
1.3. 4−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−N−メチル−N−(1−プロピオニルピペリジン−4−イル)−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド(化合物2)の合成に向けた一般的スキーム
【0088】
【化15】
【0089】
4−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)−N−メチル−N−(1−プロピオニルピペリジン−4−イル)−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド
【0090】
【化16】
【0091】
プロピオニルクロリド(0.287mL、3.29mmol)を、4−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)−N−メチル−N−(ピペリジン−4−イル)−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド塩酸塩(中間体1)(1g、2.74mmol)及びDCM(14mL)中、ヒューニッヒ塩基(0.957mL、5.48mmol)の攪拌懸濁液に、室温で加えた。ピンク色の溶液を室温で一晩、攪拌放置した。水を加え、有機層をDCMを用いて希釈した。有機層を分離し、乾燥させ(MgSO4)、真空中で蒸発させて、純白でない固体を得た。固体をプロパン−2−オールから再結晶させた。4−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)−N−メチル−N−(1−プロピオニルピペリジン−4−イル)−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド(0.496g、45%の収率)。
【0092】
4−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−N−メチル−N−(1−プロピオニルピペリジン−4−イル)−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド(化合物2)
【0093】
【化17】
【0094】
三臭化ホウ素(0.354mL、3.75mmol)を、無水DCM(4mL)中、4−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)−N−メチル−N−(1−プロピオニルピペリジン−4−イル)−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド(0.480g、1.248mmol)の攪拌懸濁液に、−78℃で加えた。懸濁液を−78℃で15分間、室温で2時間、攪拌放置した。水を−50℃で加え、その後、有機層を、DCM/プロパン−2−オール7:3の混合物を用いて希釈した。有機層を分離し;水層をNaClで飽和させ、再抽出した。一つに集めた有機層を乾燥させ(MgSO4)、真空中で蒸発させて、透明な油を得た。生成物を、カラムクロマトグラフィー(シリカ、DCM/MeOH 2%、5%、10%)により分離し、無色の固体として単離した。固体をプロパン−2−オールから再結晶させた。4−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−N−メチル−N−(1−プロピオニルピペリジン−4−イル)−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド(0.22g、45%の収率)。融点:232℃。
【0095】
NMR (DMSO-d6):
1H : 9.34 (1H, s), 8.06 (1H, d, J = 1.2 Hz), 7.77 (1H, d, J = 1.2 Hz), 7.55 (1H, d, J = 1.6 Hz), 7.47 (1H, dd, J = 2, 8.3 Hz), 6.77 (1H, d, J = 8.3 Hz), 4.53 (1H, d, J = 12.5 Hz), 4.10 (1H, m), 3.95 (1H, d, J = 13.5 Hz), 3.06 (1H, mt, J = 13.0 Hz), 2.91 (3H, s), 2.56 (1H, mt, J = 12.8 Hz), 2.34 (2H, q, J = 7.5 Hz), 2.14 (3H, s), 1.76 (3H, m), 1.60 (1H, dq, J = 4.3, 12.3 Hz), 0.98 (3H, t, J = 7.5 Hz).
13C : 171.1, 154.8, 151.1, 141.1, 137.3, 127.3, 124.2, 123.8, 123.4, 114.6, 112.3, 55.1, 43.9, 40.3, 31.6, 28.6, 28, 25.5, 16.1, 9.5.
【0096】
1.4 N−(1−(シクロプロパンカルボニル)ピペリジン−4−イル)−4−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−N−メチル−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド(化合物3)の合成に向けた一般的スキーム
【0097】
【化18】
【0098】
N−(1−(シクロプロパンカルボニル)ピペリジン−4−イル)−4−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)−N−メチル−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド
【0099】
【化19】
【0100】
シクロプロパンカルボニルクロリド(1.5mL、16.44mmol)を、4−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)−N−メチル−N−(ピペリジン−4−イル)−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド塩酸塩(中間体1)(5g、13.70mmol)及びDCM(70mL)中、ヒューニッヒ塩基(4.8mL、27.4mmol)の攪拌懸濁液に、室温で加えた。ピンク色の溶液を室温で一晩、攪拌放置して、ピンク色の懸濁液を得た。水を加え、有機層をDCMを用いて希釈した。有機層を分離し、乾燥させ(MgSO4)、真空中で蒸発させて、透明な油を得たが、これは純白でない固体に固化した。固体をプロパン−2−オールから再結晶させた。N−(1−(シクロプロパンカルボニル)ピペリジン−4−イル)−4−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)−N−メチル−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド(2.96g、55%の収率)。
【0101】
N−(1−(シクロプロパンカルボニル)ピペリジン−4−イル)−4−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−N−メチル−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド(化合物3)
【0102】
【化20】
【0103】
三臭化ホウ素(0.358mL、3.78mmol)を、無水DCM(4.20mL)中、N−(1−(シクロプロパンカルボニル)ピペリジン−4−イル)−4−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)−N−メチル−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド(0.500g、1.261mmol)の攪拌懸濁液に、−78℃で加えた。懸濁液を−78℃で15分間、室温で2時間、攪拌放置した。水を−50℃で加え、その後、有機層を、DCM/プロパン−2−オール7:3の混合物を用いて希釈した。有機層を分離し;水層をNaClで飽和させ、再抽出した。一つに集めた有機層を乾燥させ(MgSO4)、真空中で蒸発させて、透明な油を得た。生成物を、カラムクロマトグラフィー(シリカ、DCM/MeOH 2%、5%、10%)により分離し、無色の固体として単離した。固体を、プロパン−2−オール及びDCMの混合物から再結晶させた。N−(1−(シクロプロパンカルボニル)ピペリジン−4−イル)−4−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−N−メチル−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド(0.289g、57%の収率)。融点:204℃。
【0104】
NMR (DMSO-d6):
1H : 9.32 (1H, s), 8.06 (1H, d, J = 1.2 Hz), 7.76 (1H, d, J = 1.2 Hz), 7.55 (1H, d, J = 1.6 Hz), 7.47 (1H, dd, J = 2, 8.2 Hz), 6.77 (1H, d, J = 8.2 Hz), 4.51 (1H, d, J = 12.0 Hz), 4.37 (1H, d, J = 13.0 Hz), 4.13 (1H, m), 3.15 (1H, t, J = 13.0 Hz), 2.92 (3H, s), 2.61 (1H, mt, J = 13.0 Hz), 2.14 (3H, s), 2.0 (1H, m), 1.85 (1H, md), 1.77 (2H, m), 1.63 (1H, mq), 0.8-0.66 (4H, m).
13C : 170.8, 154.8, 151.2, 141.1, 137.3, 127.3, 124.2, 123.8, 123.4, 114.6, 112.4, 55.2, 44, 40.8, 31.7, 28.9, 28, 16.1, 10.3, 7, 6.9.
【0105】
2. 生物学的有効性
すべての動物手順は、実験及びその他の科学的目的に使用される脊椎動物の保護に向けた欧州の指導(European Directive for Protection of Vertebrate Animals Used for Experimental and Other Scientific Purposes(86/609CEE)、及びポルトガルの立法(Decreto-Lei 129/92, Portarias 1005/92 e 1131/97)に厳密に沿って実行した。使用した動物の数は、現状の規制及び科学的完全性に従って、最小限とした。
【0106】
イン・ビボでの試験を、以下に記載されるプロトコルに従って実行した。BRh(脳ホモジネート)は、中枢神経組織、この場合には、脳における阻害を示し、LVh(肝ホモジネート)は、末梢組織、この場合には、肝臓における阻害を示した。対照は、反応混合物から試験化合物を差し引いたものであった。従って、試験化合物に対して低い値は、強い阻害を示す。100の値は、測定可能な阻害が生じなかったことを示す。
【0107】
イン・ビボでのプロトコル
マウスにおける実験
動物の処置
実験に使用した動物は、インテルファウナ・イベリカ(Interfauna Iberica(スペイン))から入手した雄のNMRIマウス(体重27〜44g)であった。マウスは、管理された環境条件(12時間の明/暗周期、及び室温22±1℃)下、1ケージ当たり5匹を維持した。餌及び水道水は不断に与え、実験すべて日中の時間に実行した。
【0108】
動物は、化合物の投与前には常に、一晩、絶食させた。
【0109】
動物には、適切な投与量の本発明の化合物を、経口経路を通じて(8ml/kg;0.5%のカルボキシメチルセルロース(CMC)に懸濁させた、又は水に可溶化させた化合物)、又はビヒクル(対照)を、動物用の給餌ステンレス湾曲針(feeding stainless steel curve needles)(パーフェクタム(Perfectum)、U.S.A.)を用いて投与した。動物は、屠殺する15分前に、ペントバルビタール60mg/kgを腹腔内に投与して麻酔した。肝臓及び小脳を除いた脳の断片を除去し、膜緩衝液(3mMのMgCl2、1mMのEDTA、50mMのTris HCl pH7.4)を含有するプラスチック製のバイアルに入れた。組織は、−30℃で分析まで保存した。
【0110】
試薬及び溶液
アナンダミド[エタノールアミン−1−3H−](40〜60Ci/mmol)を、アメリカンラジオケミカルズ社(American Radiochemicals)から入手した。その他すべての試薬は、シグマアルドリッチ社(Sigma-Aldrich)から入手した。Optiphase Supermixをパーキンエルマー社(Perkin Elmer)から入手し、活性炭をシグマアルドリッチ社から入手した。
【0111】
組織の準備
組織を氷上で解凍し、10体積量の膜緩衝液(3mMのMgCl2、1mMのEDTA、50mMのTris HCl pH7.4)中で、Potter−Elvejhem(脳−500rpmで8ストローク)、又はHeidolph Diax(肝臓−30秒の休止を入れて20秒間、5の位置で2ストローク)のいずれかを用いてホモジネートした。
【0112】
組織中の全タンパク質を、BioRadタンパク質アッセイ(BioRad)を用い、BSA(50〜250μg/ml)の標準曲線を使用して定量した。
【0113】
酵素アッセイ
反応混合物(200μlの全体積)は:1mMのEDTA、10mMのTris pH7.6中、2μMのAEA(2μMのAEA+5nMの3H−AEA)、脂肪酸を含まない0.1%のBSA、15μg(脳)又は5μg(肝臓)のタンパク質を含有していた。37℃での15分のプレインキュベーション期の後、基質溶液(冷AEA+放射標識されたAEA+BSA)の添加により反応が開始した。反応は、10分間(脳)、又は7分間(肝臓)実行したのち、400μlの活性炭懸濁液(連続して強く攪拌した状態で32ml、0.5MのHCl中、8gの炭)の添加により停止させた。室温で強く攪拌して30分のインキュベーション時間の後、炭を、微量遠心管中で遠心分離(13000rpmで10分)により沈降させた。200μlの上清を、24ウェルプレートに事前に分配されたOptiphase Supermixシンチレーション反応混液800μlに加えた。カウント毎分(cpm)を、MicrobetaTriLuxシンチレーションカウンター中で定量した。
【0114】
各アッセイにおいて、ブランク(タンパク質無し)を準備した。
【0115】
残った酵素活性の百分率を、対照に関して、そしてブランクを差し引いた後に計算した。
【0116】
ラットにおける実験
動物の処置
雄のウィスターラット(体重範囲:190〜230g)は、ハーラン(Harlan(スペイン))から入手した。ラットは、管理された環境条件(12時間の明/暗周期、及び室温22±1℃)下、1ケージ当たり5匹を維持した。餌及び水道水は不断に与え、実験すべて日中の時間に実行した。
【0117】
ラットに、適切な投与量の本発明の化合物を、強制経口投与を通じて(投与容量=4mL/kg体重)、動物用の給餌ステンレス湾曲針(パーフェクタム、U.S.A.)を用いて投与した。ビヒクルはミリQ水中、0.5%のCMCであった。ラットは実験前に少なくとも15時間、絶食させた。
【0118】
動物は、屠殺する15分前に、ペントバルビタール60mg/kg体重の腹腔内投与で麻酔した。肝生検及び脳試料(小脳を除く)を集め、膜緩衝液(3mMのMgCl2、1mMのEDTA、50mMのTris HCl pH7.4)及び、肝臓試料については、ガラスビーズ(2.5mmバイオスペックプロダクツ(BioSpec Products))、を含有するプラスチック製のバイアルに入れた。組織は、−20℃で分析まで保存した。
【0119】
試薬及び溶液
アナンダミド[エタノールアミン−1−3H−]を、アメリカンラジオケミカルズ社から入手した(60Ci/mmolの比放射能)。その他すべての試薬は、シグマアルドリッチ社から入手した。Optiphase Supermixをパーキンエルマー社から入手した。
【0120】
組織の準備
組織を氷上で解凍し; 肝臓をPrecellys 24 Dual Tissue Homogenizer(バーティンテクノロジーズ(Bertin Technologies))によって、氷中、5分のインターバルで5秒の2サイクル、ホモジネートし、脳を、Heidolph Silent Crusher M(probe 8F/M)を用いて、約45秒間、最高速度でホモジネートした。ホモジネート中の全タンパク質を、BioRadタンパク質アッセイ(BioRad)を用い、BSA(50〜250μg/ml)の標準曲線を使用して定量した。
【0121】
酵素アッセイ
反応混合物(200μlの全体積)は:1mMのEDTA、10mMのTris pH7.6中、2μMのAEA(2μMのAEA+5nMの3H−AEA)、脂肪酸を含まない0.1%のBSA、15μg(脳)又は1.5μg(肝臓)のタンパク質を含有していた。37℃での15分のプレインキュベーション期の後、基質溶液(冷AEA+放射標識されたAEA+BSA)の添加により反応が開始した。反応は、肝臓試料については7分間、脳試料については10分間実行し、400μLのクロロホルム:メタノール(1:1、v/v)溶液の添加により停止させた。反応試料を二回ボルテックスし、5分間氷上に放置し、その後、微量遠心管中で遠心分離した(7分、7000rpm)。200μlの上清を、24ウェルプレートに事前に分配されたOptiphase Supermixシンチレーション反応混液800μlに加えた。カウント毎分(cpm)を、MicrobetaTriLuxシンチレーションカウンター中で定量した。各アッセイにおいて、ブランク試料(タンパク質無し)を準備した。残った酵素活性の百分率を、対照に関して、そしてブランクを差し引いた後に計算した。
【0122】
CYPの代謝安定性アッセイ
試験化合物の安定性を、NADPHの存在下、及び非存在下で、MLM(マウスの肝臓のミクロソーム)、又はHLM(ヒトの肝臓のミクロソーム)中で実行した。
【0123】
安定性は、1mg/mlの全タンパク質、5mMのMgCl2、及び50mMのK−リン酸緩衝液を含有するインキュベーション混合物(100μlの全体積)を使用して測定した。試料を、1mMのNADPHの存在下、及び非存在下で、インキュベートした。反応物を5分間、プレインキュベートし、試験下にある化合物(HLMについては5μM、そしてMLMについては50μM)を用いて反応を開始させた。試料を、37℃で振とうさせた水浴中、60分間、インキュベートした。反応を、100μlのアセトニトリルの添加により停止させた。その後、試料を遠心分離し、ろ過して、上清をHLPC−MSDに注入した。試験化合物をDMSOに溶解させ、反応物中のDMSOの最終濃度は0.5%(v/v)未満であった。T0で、アセトニトリルを、化合物の添加前に加えた。すべての実験は、2通りの試料を用いて実行した。
【0124】
試験された化合物:
化合物1=(N−メチル−4−(3−(スルファモイルアミノ)フェニル)−N−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド)。
化合物2=((4−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−N−メチル−N−(1−プロピオニルピペリジン−4−イル)−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド)。
化合物3=((N−(1−(シクロプロパンカルボニル)ピペリジン−4−イル)−4−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−N−メチル−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド)。
【0125】
【表1】
【0126】
上の表からわかる通り、化合物1、2、及び3は、肝臓におけるFAAH阻害の観点ですべて比較的強力な化合物である。
【0127】
末梢選択性は、肝臓におけるFAAH活性を、脳におけるFAAH活性によって除算するにより計算することができる。これを行う場合、値が低いほど、化合物は末梢選択的であることを示している。結果を以下の表に示す:
【0128】
【表2】
【0129】
これらの結果は、化合物2及び3が最も末梢選択性的な化合物であるが、すべての化合物が比較的高い末梢選択性を示すことを示している。
【0130】
化合物についての、様々な濃度でのFAAH活性に関連する追加データを、以下の表に示す:
【0131】
【表3】
【0132】
上記からわかる通り、化合物2及び3は、それらが比較的低い投与量であってもFAAH活性を阻害するため、最も強力である。しかしながら、すべての化合物は比較的強力である。
【0133】
さらに、同様の実験がラットにおいて実行され、以下の結果を得た:
【0134】
【表4】
【0135】
上記からわかる通り、すべての化合物はラットの肝臓において比較的良好な阻害を示し、比較的強力であった。
【0136】
代謝安定性
以下の表に、化合物の代謝安定性を示す。安定性データは、MLM又はHLMに1時間、曝露した後の残留化合物の%として与えられている。100%は、代謝反応が全くないことを意味しており、0%は完全な酵素分解に対応している。「CYP−」は、CYP代謝反応に基本的に重要である補助因子(NADPH)の非存在を指す。従って「CYP−」は、対照値と見なすことができる。「CYP+」は、補助因子の存在を指し、試験化合物の安定性に応じて酵素分解が生じることがある。見てわかる通り、すべての化合物は、代謝的に安定である。
【0137】
【表5】