特許第6449296号(P6449296)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6449296水素化物リザーバから出る熱を利用した水素中不純物用のトラップの再生
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6449296
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】水素化物リザーバから出る熱を利用した水素中不純物用のトラップの再生
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/00 20060101AFI20181220BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20181220BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20181220BHJP
   B01J 20/02 20060101ALI20181220BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20181220BHJP
   F17C 11/00 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
   C01B3/00 A
   C01B3/56 Z
   B01D53/04 220
   B01J20/02 A
   B01J20/34 H
   F17C11/00 C
【請求項の数】19
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-539454(P2016-539454)
(86)(22)【出願日】2014年8月8日
(65)【公表番号】特表2016-536260(P2016-536260A)
(43)【公表日】2016年11月24日
(86)【国際出願番号】EP2014067085
(87)【国際公開番号】WO2015032587
(87)【国際公開日】20150312
【審査請求日】2017年7月20日
(31)【優先権主張番号】1358571
(32)【優先日】2013年9月6日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510094104
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ エナジーズ アルタナティブス
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100129861
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 滝治
(74)【代理人】
【識別番号】100182176
【弁理士】
【氏名又は名称】武村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】シャイゼ,アルビン
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−163796(JP,A)
【文献】 特開2007−223861(JP,A)
【文献】 特開2001−322801(JP,A)
【文献】 特開平01−267322(JP,A)
【文献】 特開2001−026401(JP,A)
【文献】 特開2005−183042(JP,A)
【文献】 特表2011−508855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00−3/58
B01D 53/04
B01J 20/02
B01J 20/34
F17C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵されるためにタンク内に入る水素中に含まれる不純物を濾過する少なくとも一つのトラップ(1、1A、1B)に対して実施される浄化ステップを含む、水素化物タンク(10)内に水素を貯蔵し且つ前記水素を放出するための方法において、水素の放出後に前記タンクから出る水素により運ばれる熱を利用して前記少なくとも一つのトラップを再生するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記再生ステップは、所定の再生実施時間の後に、又は前記少なくとも一つのトラップから出る水素流の水分含有量が所定のしきい値未満である場合に停止されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
以下の連続するステップ、すなわち
前記浄化ステップと、
前記タンクの水素化物によって前記少なくとも一つのトラップから出る浄化された水素を吸着するステップと、
前記タンクの前記水素化物により水素を放出するステップと、
前記放出ステップの時点で放出される水素により前記タンクから外部に運ばれる熱が、前記吸着の前に水素中に含まれる不純物を前記浄化ステップの最中に可逆的に保持することが可能な前記少なくとも一つのトラップ(1)の材料(2)を加熱するために利用される、前記再生ステップと、
のサイクルを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記再生ステップは、前記放出を受けた水素流の全て又は一部と前記トラップの前記材料との間において交換を行うステップ(4)を含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記再生ステップは、前記材料により事前に濾過及び保持された不純物を前記トラップから排出するステップを含むことを特徴とする、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記再生ステップは、
前記放出を受けた水素の全流(FT)を第1の分離流及び第2の分離流(F1、F2)に分離するステップ(13)と、
前記排出ステップを実施するために前記第1の流れ(F1)のみを利用するステップと、
前記放出ステップの最中に発生して前記第2の流れにより運ばれる熱が、前記第1の流れにより前記排出ステップを実施させ得るように前記材料を加熱するために使用されるように、前記第2の流れ(F2)と前記材料との間のみにおいて交換を行うステップと、
を含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の流れのみを利用する前記ステップは、前記材料と直接接触状態にある前記第1の流れで前記材料を洗浄することを含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記排出ステップ後に実施される、前記第1の流れと前記排出ステップの最中に前記材料から放出される不純物とを外部雰囲気(16)に押し出すステップを含むことを特徴とする、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
体水を凝縮するために前記第1の流れと前記排出ステップの最中に前記材料から放出される不純物とを冷却するステップと、その後の前記第1の冷却された流れと前記第2の流れとを混合するステップとを含み、前記混合するステップは、前記熱交換を行うステップ後に実施されることを特徴とする、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項10】
前記再生ステップは、
中性ガス源(15)から来るアルゴン又は窒素などの中性ガスの流れ(F3)を供給するステップと、
前記排出ステップを実施するために中性ガスの流れを利用するステップと、
前記放出ステップの最中に発生して全流により運ばれる熱が、前記排出ステップが実施され得るように前記材料を加熱するために利用されるように、前記放出を受けた水素の前記全流と前記材料との間で交換を行うステップと、
を含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
中性ガスの流れを利用する前記ステップは、前記材料と直接接触状態にある中性ガスの流れで前記材料を洗浄することを含み、前記方法が、前記排出ステップ後に実施される、中性ガスの流れと前記排出ステップの最中に前記材料から放出される不純物とを外部雰囲気(16)に押し出すステップを含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップのサイクルが、前記再生ステップの後に、後のステップのサイクルの実施前に実施される記少なくとも一つのトラップを冷却するステップを含むことを特徴とする、請求項3から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも一つのトラップを冷却する前記ステップは、以下の連続するステップ、すなわち
冷却要素(12)に対して実施される、前記放出ステップの後に反応装置から出る水素を冷却するステップと、
水素が前記材料から熱を奪うように、前記冷却ステップを受けた水素と前記少なくとも一つのトラップの前記材料との間で交換を行うステップと、
前記熱交換ステップを受けた水素を前記少なくとも一つのトラップから排出することにより実施される、前記熱交換ステップの最中に前記材料から奪った熱を前記少なくとも一つのトラップから排出するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記浄化ステップは、同期的に動作する異なる第1のトラップ及び第2のトラップ(1A、1B)において交互に実施され、それにより、前記第1のトラップ(1A)を冷却するステップは、前記第2のトラップ(1B)により実施される浄化ステップの最中に実施され、前記第2のトラップ(1B)を冷却するステップは、前記第1のトラップ(1A)により実施される浄化ステップの最中に実施されることを特徴とする、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
水素を貯蔵及び放出するための設備であって、水素が入って貯蔵され、水素が出て放出される水素化物タンク(10)と、貯蔵されるために前記タンク内に入る水素中に含まれる不純物を濾過除去するための少なくとも一つのトラップ(1、1A、1B)と、前記少なくとも一つのトラップの再生が水素の放出後に前記タンクから出る前記水素により運ばれる熱を利用するのを確実にするデバイスを備える、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法を実施するソフトウェア及び/又は材料手段と、を備えている設備。
【請求項16】
前記少なくとも一つのトラップは、前記タンク内での水素の貯蔵前に水素中に含まれる不純物を可逆的に保持することが可能な材料(2)を備え、前記デバイスは、前記タンクから出る水素の全流(FT)の全て又は一部と前記トラップの前記材料との間において交換を行うための熱交換要素(4)を備えていることを特徴とする、請求項15に記載の設備。
【請求項17】
前記デバイスは、前記材料と直接接触状態にあるガス流で前記材料を洗浄するための要素(3、4、5)を備え、それにより前記ガス流は、前記材料により事前に濾過及び保持された不純物を前記トラップから排出することを特徴とする、請求項16に記載の設備。
【請求項18】
前記ガス流が前記タンクから出る水素の全流(FT)の一部(F1)により構成されることを確実にするための要素(13)を備えていることを特徴とする、請求項17に記載の設備。
【請求項19】
前記水素化物タンク(10)は、マグネシウムベース水素化物を備えていることを特徴とする、請求項15から18のいずれか一項に記載の設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵のためにタンク内へと入る水素内に含まれる不純物を濾過除去する少なくとも一つのトラップに対して実施される浄化ステップを含む、水素化物タンク内に水素を貯蔵し且つそれを放出するための方法に関する。
【0002】
また、本発明の対象は、水素が入って貯蔵される及び水素が出て放出される水素化物タンクと、貯蔵用タンク内に入る水素中に含まれる不純物を濾過除去する少なくとも一つのトラップとを備える、水素を貯蔵及び放出するための設備に関する。
【背景技術】
【0003】
水素貯蔵は、水素ベースエネルギーベクトル鎖(hydrogen-based energy vector chain)の展開において非常に重要な点である。輸送されることが必要である用途のために水素を貯蔵することは、基本的なことであり、断続的な一次エネルギーを用いる用途のために水素をどのように貯蔵するかを知ることは、非常に有利である。
【0004】
水素の貯蔵は、700バールの圧力まで水素を加圧することにより収容可能な体積にすることによって気体の形態で、又は非常に低い温度(約20ケルビン)にて液体の形態で行い得る。
【0005】
水素の貯蔵体積を減少させるために、表面に水素原子を付着させ得る特定の非常に多孔性の高い材料の性能を活用することは、知られている慣行である。吸着として知られるこの現象は、現時点では、低温時(液体窒素の温度未満)においてのみ有意であり、本質的には依然として基礎研究下にある。
【0006】
別の解決策は、水素の可逆的な吸着及び脱着を達成するために特定の「水素化物」材料の性能を活用することにある。例えば金属水素化物(ニッケル、チタン、及びマグネシウムの合金)では、気体二水素の原子が、材料内に入り、新たな相を形成する。
【0007】
貯蔵の目的の一つは、高体積エネルギー密度を達成することである。水素の場合、水素原子同士は、可能な限り緊密になるように一体になされることが必要である。水素化物中での貯蔵は、加圧下貯蔵に比べて及びさらには液体形態での貯蔵に比べて、この目的を達成するための最も効果的な手段である。しかし、これは、結局は、水素が挿入された状態になる水素化物材料の重量を付加する必要があるため、重量を犠牲にすることで行われる。水素化物材料は、自然発生的な粉末形態である。これは、二つの利点を有する。第1は、これにより、水素がこの材料に均一にアクセスすることが可能となる点であり、第2は、この多孔性が、水素が吸着される場合の材料の膨張を許容し得る緩衝体を構成する点である。
【0008】
水素化物材料の水素吸着反応は、発熱性であり、したがって熱の発生を伴う。水素の放出からなる脱着反応は、それ自体において吸熱性であり、したがって熱の入力を不可避に伴う。一般には、所与の温度にて水素を吸着するために、二水素ガスが、水素化物を形成してその一方で同時に発生した熱を排出するために、平衡圧力を上回る圧力で注入される。水素化物タンクの充填速度は、冷却熱交換の効果により左右される。他方で、水素化物タンクから水素を放出するためには、システムは、この反応の平衡圧力に対して負圧下に置かれるのと同時に、熱を供給する必要がある。
【0009】
この動作原理は、熱の入力がある場合にのみ水素が放出されるため、重要な安全性因子を構成する。第2の安全性因子は、特定の水素化物に関して段階圧力が適温に対して高すぎることがない点に関連する(平衡圧力は例えば約数バールなどである)。
【0010】
200℃以上で機能する可逆的な水素化物の中でも、興味深いものとしては、マグネシウムをベースとする以下のもの、すなわちMgH2、Mg2Ni、LaNi4Mn、NaAlH4が挙げられる。これらにより、水素は可逆的に貯蔵され得る。例えば、マグネシウムの場合には、可逆的反応は、次の通りに、すなわちMg+H2=MgH2となる。
【0011】
水素は、圧力及び温度に応じて、発熱反応にしたがったマグネシウムによる吸着ステップ、又は、マグネシウム水素化物との吸熱反応にしたがった脱着ステップを被る。典型的には、吸着は、10バールの絶対圧力及び380℃の温度にて実施され、脱着は、4バールの絶対圧力及び340℃の温度にて実施される。図1の曲線は、圧力(MPaで表される)及び温度(℃で表される)に応じたMg化合物及びMgH2化合物の存在領域を示す。
【0012】
所与の温度において、平衡圧力プラトー(equilibrium pressure plateau)が化合物Mg及びMgH2に関して水平になる。すなわち、平衡圧力は、図2の曲線により示されるように水素成分量に左右されない(図2のx軸は、水素の質量パーセンテージとして表され、そのy軸は、kPaで表された圧力である)。マグネシウム水素化物以外の水素化物については、平衡圧力は、大多数の場合では水素化物の水素含有量により左右される。
【0013】
さらに、マグネシウム水素化物は、殆どの水素化物と同様に、水、酸素、硫黄ベース化合物及び塩化化合物、一酸化炭素、並びに炭化水素に対して非常に高い反応性を有する。したがって、水素化物中のこれらの化合物の濃度が低いと、水素化物の貯蔵性能は著しく低下する。例えば、電解により水素が発生する用途では、多量の水及び酸素が、水素化物タンク内に貯蔵されることとなる水素中に存在する。したがって、特に水又は酸素から、しかしさらには例えば天然ガスの改質により生じる水素中に存在する他の汚染物質からこれらの水素化物の中のマグネシウムを保護することが重要となる。
【0014】
水素化物は、一般には圧力チャンバであるタンク内で使用される。水素化物タンクは、熱交換システムをしばしば備え、このシステムは、水素化物が水素脱着反応に必要な熱を供給されることと、水素吸着反応時に水素化物により放出される熱を排出することとを可能にする。代替形態は、相転移材料中に水素化物に近い反応エネルギーを貯蔵することである。
【0015】
したがって、近年では、水素を貯蔵するためのマグネシウム水素化物を使用したタンクが展開されてきた。かかるタンクの二つの変形形態が、現行で製造及び販売されている。第1の変形形態は、タンクが金属合金の相転移を伴うため、等温(340℃)である反応熱を蓄積するためのシステムでタンクを囲むことからなる。第2の変形形態は、水素化物の付近に油を循環させることによってタンクを加熱及び冷却することからなる(300〜380℃)。
【0016】
先に示したように、このタイプの水素貯蔵は、水素化物レベルでのタンクの機能を低下させ得る貯蔵されることとなる水素中に存在し得る汚染物質から保護されなければならない。
【0017】
水素の従来の浄化方法は、吸着により不純物を可逆的に固定することが可能な材料を含むトラップを使用するものである。「吸着」という用語は、弱い化学結合(水素結合、ファンデルワールス力)により多孔性材料の表面に気体分子を結合することが可能となることを意味する。この材料は、粉末又は粒子(圧縮粉末)の形態であってもよい。この材料は、捕獲されるべき不純物のタイプに応じて並びにトラップの上流及び下流の濃度に応じて、分子ふるい、活性アルミナ、又はシリカゲルであってもよい。分子ふるいの中でも、天然ゼオライト又は合成ゼオライトは、水素化物での貯蔵のために水素を浄化するのに特に適している。これらの材料は、室温領域内の温度にて水素中に存在する不純物を捕獲し、不純物の温度が上昇した場合(一般に約200℃)及び汚染物質の分圧が低下した場合に不純物を戻す能力を有する。「再生」という用語は、材料の温度を上昇させ、清浄ガスで材料を洗浄して、材料により以前に吸着された不純物を除去することからなる方法を指す。
【0018】
捕獲されるべき不純物は、優先的には水から構成されるが、またO2、CO、CO2、N2、SO2、H2S、KOH、HCl、及び有機化合物の中のものであってもよい。特定のタイプの汚染物質を吸着するようになされた構造を有する複数のゼオライトが存在する。
【0019】
少量の水素を浄化するために、除去され得るカートリッジ(すなわち、吸着により不純物を可逆的に結合し得る材料を含む低圧チャンバの形態の)から構成されるトラップが使用されてもよい。このタイプのトラップは、再生させるために供給業者に返還されなければならず、そのため、浄化すべき水素量が多い場合には適用不能となる。
【0020】
多量の水素を必要とする設備では、交互に動作する二つのトラップを有する浄化デバイスが、非常に頻繁に使用される。トラップの一方が動作している場合に、他方が再生される。また、これらのトラップは、吸着により不純物を可逆的に結合し得る材料を含む。これにより、水素流の連続的浄化を実施することが可能となる。以下の二つの再生モードが、通常利用される。
温度変調:外部エネルギー源(油の循環又は電気抵抗)が、材料を加熱して再生するために使用されるが、これは、システムを大幅に複雑化させ、エネルギーを消費する。
圧力変調:再生は、温度上昇を伴わずに、材料周囲のガス圧を低下させることによって実施されるが、これにより、材料の能力を完全に利用することが不可能となる。
【0021】
二つのトラップを使用するデバイスは、嵩張り、より大きな投資を必要とする。しかし、水素化物タンクの上流で水素を浄化するための他の解決策が可能であり、これは、浄化デバイスが占める容積を最小限に抑えることを可能にする。すなわち、タンクは特定の時間にわたってのみ吸着するため、浄化は連続的である必要はない。したがって、トラップは、水素化物タンクの貯蔵能力のみに対して寸法設定されてもよい。さらに、浄化デバイスは、各サイクルにて再生されてもよい。これは、使用されることとなる材料の質量と、結果的には設置コストとを最小限に抑える。
【0022】
FR2411626A1に記載される解決策は、水素中に含有される酸素を水へと変換する接触改質装置を使用し、その後に水を捕獲するために分子ふるいを使用する。したがって、タンクにより10.5バール超の圧力にて吸着される水素は、水及び酸素を含まない。しかし、ふるいの再生段階は、フィルタの洗浄と分子ふるいに吸着された水の脱着のための取去りとが、水素吸着と脱着との間の圧力差に基づくため、問題を孕む。この周知の方法は、入口圧力がタンクの出口圧力よりも若干のみ高い(又は低い)場合には機能せず、その場合にはフィルタの再生が不可能となり、それによりフィルタは、水で飽和状態になり、もはや水分から水素化物タンクを保護しない。さらに、吸着圧力は、10.5バール超でなければならない。これらの原理は、水素吸着圧力が一般に10バール未満であり且つ出口圧力が6バールとなり得るマグネシウムベース水素化物タンクに適用することは不可能である。
【0023】
水素を放出する電池に適用される米国特許第5,250,368号に記載される解決策は、分子ふるいに水素の水分を捕獲することと、再生段階で分子ふるいを電気的に加熱してそこから水分を抽出することとを提案する。この方法は、効率的であるが、分子ふるいを加熱するために電池から電気エネルギーが導出されなければならないため、効率の低下をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は、上記に挙げた欠点を解消し、水素化物タンクに水素を貯蔵し且つそれを放出するための解決策を提案することである。
【0025】
特に、本発明の目的は、以下のこと、すなわち
マグネシウムベース水素化物の使用に特に適するが、これが限定的なものでないことと、
優れた浄化及び再生効率を実現しつつ、同時に優れた貯蔵及び放出効率を有することと、
多量の水素の浄化に適用可能であることと、
定位置で及び任意選択で連続的に再生を実施することと
を可能にする、かかる解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
これらの目的は、貯蔵されるためにタンク内に入る水素中に含まれる不純物を濾過する少なくとも一つのトラップに対して実施される浄化ステップと、水素の放出後にタンクから出る水素により運ばれる熱を利用して前記少なくとも一つのトラップを再生するステップとを含む、水素化物タンク内に水素を貯蔵し且つ水素を放出するための方法によって達成され得る。
【0027】
優先的には、再生ステップは、所定の再生実施時間の後に、又は前記少なくとも一つのトラップから出る水素流の水分含有量が所定のしきい値未満である場合に停止される。
【0028】
優先的な一実施形態では、この方法は、以下のステップ、すなわち
前記浄化ステップと、
タンクの水素化物によって前記少なくとも一つのトラップから出る浄化された水素を吸着するステップと、
タンクの水素化物により水素を放出するステップと、
前記放出ステップの時点で放出される水素によりタンクから外部に運ばれる熱が、前記吸着の前に水素中に含まれる不純物を浄化ステップの最中に可逆的に保持することが可能な前記少なくとも一つのトラップの材料を加熱するために利用される、前記再生ステップと、
の連続サイクルを含む。
【0029】
優先的には、再生ステップは、前記放出を受けた水素流の全て又は一部とトラップの前記材料との間において特に非接触で熱交換を行うステップを含む。
【0030】
再生ステップは、前記材料により事前に濾過及び保持された不純物をトラップから排出するステップを含んでもよい。特に、再生ステップは、
前記放出を受けた水素の全流を第1の分離流及び第2の分離流に分離するステップと、
前記排出ステップを実施するために前記第1の流れのみを利用するステップと、
放出ステップの最中に発生して前記第2の流れにより運ばれる熱が、第1の流れにより前記排出ステップを実施させ得るように前記材料を加熱するために使用されるように、前記第2の流れと前記材料との間のみにおいて特に非接触で熱交換を行うステップと、
を含んでもよい。
【0031】
前記第1の流れのみを利用するこのステップは、優先的には、前記材料と直接接触状態にある前記第1の流れで前記材料を洗浄することを含む。
【0032】
また、この方法は、前記排出ステップ後に実施される、前記第1の流れと前記排出ステップの最中に前記材料から放出される不純物とを外部雰囲気に押し出すステップ、及び/又は、特に冷却-凝縮装置要素で実施される、液体水を凝縮するために前記第1の流れと前記排出ステップの最中に前記材料から放出される不純物とを冷却するステップと、その後の前記第1の冷却された流れと前記第2の流れとを混合するステップとを含んでもよい。
【0033】
優先的には、再生ステップは、
中性ガス源から来るアルゴン又は窒素などの中性ガスの流れを供給するステップと、
前記排出ステップを実施するために中性ガスの流れを利用するステップと、
前記放出ステップの最中に発生して全流により運ばれる熱が、前記排出ステップが実施され得るように前記材料を加熱するために利用されるように、前記放出を受けた水素の全流と前記材料との間で特に非接触で熱交換を行うステップと、
を含む。
【0034】
特に、中性ガスの流れを利用する前記ステップは、前記材料と直接接触状態にある中性ガスの流れで前記材料を洗浄することを含んでもよく、その方法は、前記排出ステップ後に実施される、中性ガスの流れと前記排出ステップの最中に前記材料から放出される不純物とを外部雰囲気に押し出すステップを含んでもよい。
【0035】
ステップのサイクルは、優先的には、再生ステップの後に、後のステップのサイクルの実施前に実施される、特に前記材料のレベルにて前記少なくとも一つのトラップを冷却するステップを含む。特に、前記少なくとも一つのトラップを冷却する前記ステップは、以下の連続するステップ、すなわち
冷却要素に対して実施される、放出ステップの後に反応装置から出る水素を冷却するステップと、
水素が前記材料から熱を奪うように、前記冷却ステップを受けた水素と前記少なくとも一つのトラップの前記材料との間で特に非接触で熱交換を行うステップと、
前記熱交換ステップを受けた水素を前記少なくとも一つのトラップから排出することにより実施される、前記熱交換ステップの最中に前記材料から奪った熱を前記少なくとも一つのトラップから排出するステップと、
を含んでもよい。
【0036】
前記浄化ステップは、同期的に動作する別々の第1のトラップ及び第2のトラップにおいて交互に実施され得るものであり、それにより、第1のトラップを冷却するステップは、第2のトラップにより実施される浄化ステップの最中に実施されるとともに、第2のトラップを冷却するステップは、第1のトラップにより実施される浄化ステップの最中に実施される。
【0037】
水素貯蔵及び放出設備が、水素が入って貯蔵され、水素が出て放出される水素化物タンクと、貯蔵されるためにタンク内に入る水素中に含まれる不純物を濾過除去するための少なくとも一つのトラップと、前記少なくとも一つのトラップの再生が水素の放出後にタンクから出る水素により運ばれる熱を利用するのを確実にするデバイスを備える、かかる方法を実施するソフトウェア及び/又は材料手段と、を備えてもよい。
【0038】
前記少なくとも一つのトラップは、タンク内での水素の貯蔵前に水素中に含まれる不純物を可逆的に保持することが可能な材料を特に備えてもよく、前記デバイスは、タンクから出る水素の全流の全て又は一部とトラップの前記材料との間において特に非接触で熱交換を実施するための熱交換要素を備える。
【0039】
このデバイスは、前記材料と直接接触状態にあるガス流で前記材料を洗浄するための要素を備えてもよく、それにより前記ガス流は、前記材料により事前に濾過及び保持された不純物をトラップから排出する。特に、この設備は、前記ガス流がタンクから出る水素の全流の一部により構成されることを確実にするための要素を備えてもよい。
【0040】
優先的には、水素化物タンクは、マグネシウムベース水素化物を備える。
【0041】
他の利点及び特徴は、非限定的な例として提示されて添付の図面に示される以下の本発明の特定の実施形態の説明からより明確になろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】温度に応じた化合物MgとH2とMgH2との間の平衡圧力の曲線を示す図である。
図2】水素成分量に応じた300℃での平衡圧力曲線を示す図である。
図3】本発明を実施するためのトラップの一例を示す図である。
図4】本発明を実施するためのトラップの一例を示す図である。
図5】本発明による水素化物タンク内に水素を貯蔵し且つそれを放出するための設備の第1の例を示す図である。
図6図5の設備と、水素を貯蔵及び浄化する段階の最中のその様々な構成要素間における水素の循環とを示す図である。
図7図5の設備と、水素を放出してトラップを再生する段階の最中のその様々な構成要素間における水素の循環とを示す図である。
図8図5の設備と、水素を放出してトラップを冷却する段階のその様々な構成要素間における水素の循環とを示す図である。
図9】水素を放出してトラップを再生する段階の、本発明による水素化物タンク内に水素を貯蔵し且つそれを放出するための設備の第2の例を示す図である。
図10】二つのトラップが交互に動作する、本発明による水素化物タンク内に水素を貯蔵し且つそれを放出するための設備の第3の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
一般に、及び図3図10を参照すると、本発明は、水素化物タンク10内に水素を貯蔵し且つそれを放出するための方法並びに設備に関する。水素化物タンク10は、マグネシウムベース水素化物を特に備えてもよいが、これは適用範囲を限定するものではない。
【0044】
提案される解決策は、低圧(1〜20バール)にて及び高温(200〜400℃の間)にて機能する水素化物に特に適している。これらの水素化物は、本来的に、貯蔵された水素を放出し得るように高温になされなければならない。次いで、水素は、タンクから高温にて出る。これは、燃料電池、水素タービン、熱機関、又は水素を使用する産業に供給するための水素貯蔵分野に関し得る。
【0045】
この方法は、貯蔵用のタンク10内に入る水素中に含まれる不純物を濾過除去する少なくとも一つのトラップに対して実施される浄化ステップと、水素の放出後にタンク10から出る水素によって運ばれる熱を利用して前記少なくとも一つのトラップを再生するステップとを含む。
【0046】
不純物は、優先的には水から構成されるが、またO2、CO、CO2、N2、SO2、H2S、KOH、HCl、及び有機化合物の中のものであってもよい。
【0047】
したがって、一般原理は、水素化物タンク10からの放出の最中に水素により運ばれる熱を利用して、トラップに含まれ、不純物を可逆的に保持し得る材料を再生することからなる。この再生は、水素貯蔵段階の最中に事前に吸着された不純物を材料から抽出することからなる。
【0048】
図5を参照すると、水素貯蔵及び放出設備は、水素が入って貯蔵され、水素がそこから出て放出される水素化物タンク10と、貯蔵されることとなるタンク10に入る水素中に含まれる不純物を濾過除去するための少なくとも一つのトラップ1と、前記少なくとも一つのトラップ1の再生が放出後のタンク10から出る水素により運ばれる熱を利用するのを確実にするデバイスを備える、以降で詳細に説明されることとなる方法を実施するためのソフトウェア及び/又は材料手段とを備える。特に、この目的のために、この設備は、図3及び図4のトラップ1の少なくとも一方を備え得る。すなわち、図3及び図4の各トラップ1は、タンク10内に貯蔵されることとなる水素中に含まれる不純物を濾過するために配置され、トラップ1の再生が水素の放出後にタンク10から出る水素により運ばれる熱を利用するのを確実にする。図10を参照すると、及び以降で詳細に説明されるように、この設備は、交互に動作するように配置及び制御される二つのかかるトラップ1を備え得る。
【0049】
明瞭化のために、図3及び図4において同一の機能を有する要素は、異なる構造を有するが、同一の参照符号が与えられる。
【0050】
図3及び図4を参照すると、前記少なくとも一つのトラップ1は、タンク10内への水素の貯蔵前に水素中に含まれる不純物を可逆的に保持し得る材料2を含む。このトラップは、タンク10から出る全水素流の全て又は一部とトラップ1の材料2との間における特に非接触の熱交換を確実にする熱交換要素4を備える。
【0051】
一般に、前記少なくとも一つのトラップ1の再生が水素の放出後にタンク10から出る水素によって運ばれる熱を利用するのを確実にするデバイスは、材料2と直接接触状態にある気体流で材料2を洗浄するための要素を備え、この気体流は、材料2により事前に濾過及び保持された不純物をトラップ1から排出するようにする。
【0052】
以降で詳細に説明されるように、この設備は、このガス流がタンク10から出る全水素流の一部により又は代替的には天然ガス流により構成されるのを確実にする要素を備えてもよい。
【0053】
やはり図3及び図4を参照すると、各トラップ1は、内圧を受けるチャンバである。このチャンバは、材料2で充填され、この材料2は、特に粒子形態である。トラップ1内に存在する材料2の量は、好ましくは水素化物タンク10が収容し得る最大の二水素の質量の浄化に必要な最小量の1〜5倍の間である。
【0054】
トラップ1は、優先的には実質的に垂直に配置される。トラップ1は、ガスタップ(gas tap)5及び6を頂端部及び底端部にそれぞれ備え、それにより水素は、材料2と接触した状態でトラップ1内に拡散され得る。
【0055】
トラップ1は、フィルタ3を各端部に備え、このフィルタ3は、材料2がトラップ1から出るのを防止するが、タップ5及び6に水素を通過させ得る。
【0056】
熱交換器4は、トラップ1の内部又は周囲に配置され、それにより熱交換器4内を循環する水素は、材料2を加熱又はさらには冷却し得る。この熱交換器4は、例えばトラップ1の周囲のスリーブ、トラップ1の中若しくは周囲のコイル、材料2を貫通するチューブ束、又はトラップ1の内部のフィンを有するチューブなどであってもよい。熱交換器4は、トラップ1の頂部側に入口7を、及び底部側に出口8を有する。
【0057】
トラップ1は、頂部を経由してタップ5にて汚染された水素の供給源9に、及び底部を経由してタップ6にてタンク10に連結される。したがって、タンク内に水素を貯蔵する最中に、ガス流は材料2を流動化することはできない。材料2の流動化は、材料2と材料2を洗浄するガスとの間の接触を低減することにより効率を低下させる。
【0058】
優先的には、前記少なくとも一つのトラップ1の再生ステップは、再生の所定の実施時間後に、又は前記少なくとも一つのトラップ1から出る水素流の水分含有量が所定のしきい値未満である場合に停止される。例えば、再生は、トラップから出るガスの露点が室温未満である場合に停止され得る。しかし、より低い露点まで再生を継続することを選択してもよい。これは、浄化-貯蔵段階の最中のガスの所望の品質により決定される。すなわち、再生をより徹底したものにする程、トラップはより多量の純ガスを発生することが可能となる。
【0059】
好ましくは、この方法は、以下の連続するステップ、すなわち
上述の浄化ステップと、
タンク10の水素化物による、前記少なくとも一つのトラップ1から出る浄化された水素の吸着ステップと、
タンク10の水素化物による水素の放出ステップと、
放出ステップ時に放出される水素によりタンクから外部に運ばれる熱が、前記吸着前に水素中に含まれた不純物を浄化ステップの最中に可逆的に保持し得る前記少なくとも一つのトラップ1の材料2を加熱するために使用される、上述の再生ステップと、
のサイクルを含んでもよい。
【0060】
図6は、図5の設備と、水素貯蔵及び浄化段階の最中のその様々な構成要素間における水素の循環とを示す。
【0061】
水素貯蔵段階とタンク10の水素化物による水素吸着ステップとの最中に、水素流は、水素供給源9から来る。水素温度は、室温(例えば50℃以下)に近い。水素は、タップ5を経由してトラップ1の頂部に、及び材料2を通過させられて運ばれる。材料2により浄化される、したがって洗浄される及び材料2を横断する水素は、タップ6にてトラップ1から出て水素化物タンク10に運ばれ、そこで吸着により水素化物中に貯蔵されることになる。
【0062】
さらに、再生ステップは、放出を受けた水素流の全て又は一部とトラップ1の材料2との間における、熱交換器4で実施される特に非接触の熱交換ステップ(図7及び図9)を含む。これは、熱交換器4が図3のようにトラップ1の内部又は図4のようにトラップ1の外部のいずれにおいてコイルとして配置されるかにかかわらず、熱交換器4の存在の理由の一つである。以降で詳細に説明されるように、熱交換器4は、図8を参照とする前記少なくとも一つのトラップ1の後の冷却の状況(context)でも使用され得る。
【0063】
熱交換器4は、トラップ1の頂部に配置されたそのタップ7を経由して水素化物タンク10の出口に連結され、トラップ1の底部のタップ8を経由して放出された水素用のユーザデバイス11に連結される。
【0064】
タンク10から出る水素を循環させる熱交換器4による材料2の温度のこの上昇によって、材料中に含まれる不純物は、材料から排出され得る。すなわち、再生ステップは、材料2により事前に濾過及び保持された不純物をトラップ1から排出するステップを含む。
【0065】
水素の放出及びトラップ1の再生の段階の最中の図7を参照とする第1の変形形態では、再生ステップは、これを達成するために、
例えばT字形状の分離要素13にて、放出を受けた水素の全流FTを相互に異なる第1の流れF1及び第2の流れF2に分離するステップと、
トラップ1から不純物を排出するステップを実施するために第1の流れF1のみを利用するステップと、
放出ステップの最中に発生して第2の流れF2により運ばれる熱が、第1の流れF1によりトラップ1から不純物を排出するステップの実行を可能にするように材料2を加熱するために利用されるように、第2の流れF2と材料2との間でのみ特に非接触で熱交換を行うステップと、
を含む。
【0066】
次いで、T字形状の分離要素は、タンク10と流体連通状態にある第1の入口/出口と、トラップ1のタップ6と流体連通状態にある第2の入口/出口と、タップ7と流体連通状態にある第3の入口/出口とを有する。
【0067】
好ましくは、トラップから不純物を排出するために第1の流れF1のみを利用するこのステップは、材料2と直接接触状態にある第1の流れF1により材料2を洗浄することを含む。
【0068】
これらの原理の実行は、以下のとおりであり得る。水素化物によるこの水素の放出によりタンク10内の水素を放出する段階の最中に、水素の全流FTは、200〜400℃の間の温度にてタンク10により放出される。この流れFTは、分離要素13にて、熱交換器4を通って流れることとなる第2の流れF2と、材料2と接触状態になるようにトラップ1を通過することになる第1の流れF1とに分割される。流れF1及びF2を分割する利点は、材料2を流動化させ得る及び/又はトラップ1の各側にかなりの圧力低下を生じさせ得るトラップ1内における過剰なガス速度を回避することである。
【0069】
優先的には、第2の流れF2は、水素の全流FTの50%〜100%の間から構成され、水素の熱がこの材料2と直接接触状態になることなく材料2に伝達されるように、熱交換器4内に送られる。水素のこの流れF2は、200〜400℃の間の温度までトラップ1及び材料2を加熱し、それにより材料2は、特に吸着された水分である不純物を放出することが可能となる。高温水素の流れF2は、先行段階の最中に最も汚染されたトラップ1のゾーンに有利となるようにタップ7にて交換機4の頂部を経由して入る。この最終箇所により、水素化物タンク10の充填サイクルの一部において再生を実施することが可能となる。すなわち、このタンクが部分的にサイクルされると、トラップ1の頂部に位置する材料2は、水で飽和されることになる。このゾーンは、優先的に再生されなければならない。次いで、水素の流れF2は、タップ8を経由して交換機4から出て、ユーザデバイス11に運ばれる。この水素は乾燥している。任意選択で、この水素は、使用される前に冷却されてもよい。
【0070】
優先的には、この方法は、第1の変形形態では、排出ステップの後に実施される、第1の流れF1と排出ステップの最中に材料2から放出される不純物とを外部雰囲気16に押し出すステップを含む。
【0071】
しかし、非常に有利な第2の変形形態では、この方法は、押出しステップとは代替的に又はそれと組み合わせて、特に冷却-凝縮要素14において実施される、第1の流れF1と排出ステップの最中に材料2から放出される不純物とを冷却して、液体水を凝縮するステップと、その後の第1の冷却された流れと第2の流れF2とを混合するステップとを含んでもよい。
【0072】
以前に説明した方法を実施する一つの方法は、第1の流れF1が、水素化物タンク10から出る水素の全流FTの0〜50%の間の割合で構成されることを想定することである。第1の流れF1は、材料2から不純物を排出するために不純物を運ぶため、運搬水素流を構成する。第1の流れF1は、材料2を洗浄するために、及びトラップ1から汚染物質を排出するために、タップ6を経由してトラップ1内に入る。第1の流れF1による材料2の洗浄は、底部から上方に、すなわち特に最も少ない水分を含む最低汚染物質濃度を有する材料2のゾーンから、特に最も多い水分を含む最高汚染物質濃度を有する材料2のゾーンまで行われる。次いで、運搬水素は、タップ5を経由してトラップ1から出る。この運搬水素は、それが含む水と共に外部雰囲気16に押し出され得るか、又は代替的には冷却-凝縮装置要素14により室温まで冷却されて、水素流F2と混合される前に液体水を凝縮し得る。この第2の解決策は、好ましくはユーザデバイス11が水分の多い水素を許容する場合(例えば燃料電池)に実施され得る。
【0073】
水素を放出する及びトラップ1を再生する段階の最中の図9を参照とする第2の変形形態では、再生ステップは、
中性ガス源15から来るアルゴン又は窒素などの中性ガスの流れF3を供給するステップと、
トラップ1から不純物を排出するステップを実施するために中性ガスの流れF3を使用するステップと、
放出ステップの最中に発生して全流FTにより運ばれる熱が、排出ステップを実施可能にするように材料2を加熱するために使用されるように、放出を受けた水素の全流FTと材料2との間において特に非接触で及び熱交換器4で実施される熱交換ステップと、
を含む。
【0074】
前記中性ガスは、優先的には乾燥している。すなわち、洗浄ガスの純度レベルが、特に再生深度を左右する。中性ガス中のH2O含有量は、優先的には1000ppm未満である。
【0075】
優先的には、中性ガスの流れF3を利用するステップは、材料2と直接接触状態にある中性ガスの流れF3で材料2を洗浄することを含み、この方法は、中性ガスと排出ステップの最中に材料2から放出される不純物との流れF3を外部雰囲気16に押し出すステップを含み、この押出しステップは、先述の排出ステップの後に実施される。この場合に、放出される水素は、純粋であり、ユーザデバイス11に対して完全に利用可能である。
【0076】
水素放出及びトラップ1の冷却の段階の最中の図8を参照すると、ステップのサイクルは、放出された水素から回収した熱によりトラップ1を再生するステップの後に、以降のステップのサイクルの実施前に熱交換器4で実施される特に材料2のレベルで前記少なくとも一つのトラップ1を冷却するステップを含む。前記少なくとも一つのトラップを冷却するこのステップは、以下の連続するステップ、すなわち
冷却要素12で実施される、放出ステップ後に反応装置10から出る水素の冷却ステップと、
水素が材料2から熱を奪うように、この冷却ステップを受けた水素と前記少なくとも一つのトラップ1の材料2との間において特に非接触で及び熱交換器4で実施される熱交換ステップと、
この熱交換ステップを受けた水素を前記少なくとも一つのトラップ1から排出することにより実施される、この熱交換ステップの最中に材料2から奪った熱を前記少なくとも一つのトラップ1から排出するステップと、
を含む。
【0077】
これにより、トラップ1は、水素化物による水素の後の吸着中に再度有効になるように冷却され得る。反応装置10から出る水素の全流FTは、材料2から熱を奪うために、熱交換器4内に進む前に、冷却要素12を経由して進む。
【0078】
次に、図10を参照すると、貯蔵用のタンク10内に入る水素中に含まれる不純物を濾過するために実施される浄化ステップが、相互に異なり同期的に動作する第1のトラップ1A及び第2のトラップ1Bにおいて交互に実施され、それにより、第1のトラップ1Aの冷却ステップは、第2のトラップ1Bにより実施される浄化ステップの最中に実施され、第2のトラップ1Bの冷却ステップは、第1のトラップ1Aにより実施される浄化ステップの最中に実施される。
【0079】
具体的には、二つのトラップ1A及び1Bを並列に及び交互に動作するように配置することが想定され得る。トラップの一方により室温で浄化される水素は、他方のトラップの熱交換器4に送られてこのトラップを冷却し得る。また、熱交換器4から独立した別の冷却システムを使用して、再生されたばかりのトラップの冷却を実施することも可能である。
【0080】
この最後の変形形態を実施する一つの方法は、以下のステップ、すなわち
放出段階の最中に、水素が水素化物タンク10から高温で出て、トラップ1Aを通って進み、トラップ1Aが、温度上昇し、したがって再生を受け、トラップ1Bが、この時点で不活性であるか又は代替的には外部冷却源により冷却され続けるステップと、
後の貯蔵段階の最中に、湿った水素がトラップ1Bを通って進み、すなわちその水分含有量が低下し、ガスがタンク10内に貯蔵される前に浄化され、この段階の最中に、トラップ1Aは、トラップ1Bにより浄化された水素又は外部冷却源のいずれかによって冷却されるステップと、
後のタンク10からの放出段階の最中に、水素がタンク10から高温で出て、トラップ1Bを通って進み、したがってトラップ1Bが再生を受け、トラップ1Aが、この時点では不活性であるか又は代替的には外部冷却減により冷却され続けるステップと、
後の貯蔵段階の最中に、水素がトラップAを通って進み、すなわちその水分含有量が低下し、ガスがタンク10内に貯蔵される前に浄化され、この段階の最中に、トラップ1Bは、トラップ1Aにより浄化された水素又は外部冷却源のいずれかによって冷却されるステップと、
を想定する。
【0081】
図10を参照とするこの交互機能により、トラップ1A、1Bの冷却時間がタンク10の貯蔵時間と同一量である場合に、タンク10内に入る水素を浄化することが可能となる。これらの設備は、特にタンク10のサイクル時間が短く(数時間未満)、単一のトラップの完全な冷却が不可能となる場合には、有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10