特許第6449300号(P6449300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6449300最適化されたエネルギー回収を伴う燃焼方法および設備
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  • 特許6449300-最適化されたエネルギー回収を伴う燃焼方法および設備 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6449300
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】最適化されたエネルギー回収を伴う燃焼方法および設備
(51)【国際特許分類】
   C03B 5/237 20060101AFI20181220BHJP
【FI】
   C03B5/237
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-541388(P2016-541388)
(86)(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公表番号】特表2017-501956(P2017-501956A)
(43)【公表日】2017年1月19日
(86)【国際出願番号】FR2014053472
(87)【国際公開番号】WO2015097385
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2017年10月30日
(31)【優先権主張番号】1363477
(32)【優先日】2013年12月23日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】ルーク・ジャリー
(72)【発明者】
【氏名】ユーセフ・ジョウマニ
(72)【発明者】
【氏名】バートランド・リュークス
(72)【発明者】
【氏名】レミ・ツィーアヴァ
【審査官】 若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第2456204(EP,A1)
【文献】 特開2004−257721(JP,A)
【文献】 特表2009−513920(JP,A)
【文献】 特開2013−019552(JP,A)
【文献】 特表2011−523012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 1/00−5/44
C03B 8/00−8/04
C03B 19/00−20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室(100)の中で、燃料(32)を予熱された酸素富化酸化剤(43)で燃焼させ、前記燃焼室(100)の内部で熱と高温の排ガス(11)が生成されるプロセスであって、
−前記高温の排ガス(11)は前記燃焼室(100)から排出され、前記排出された排ガス(11)は残留熱を含み、
−残留熱は、補助熱交換器(10)において補助ガス(21)を前記排出された高温の排ガス(11)の少なくとも一部との熱交換によって加熱することにより回収され、高温の補助ガス(22)と低温化された排ガス(12)が得られ、
−前記高温の補助ガスの少なくとも第一の部分が主交換器(40b)の中に導入され、その中で酸素富化酸化剤が、前記高温の補助ガスの前記少なくとも第一の部分を含む第一の熱交換ガス(23)との熱交換によって予熱され、予熱された酸化剤(43)と低温化された熱交換ガス(45)が得られ、
−前記予熱された酸素富化酸化剤が前記燃料の前記燃焼のための前記燃焼室に供給されるプロセスにおいて、
−前記排出された高温の排ガス(11)の一部(13)は前記補助交換器(10)の中に導入されずに、前記高温の補助ガス(22)の前記少なくとも第一の部分と混合されてから、前記主交換器(40b)の中へと導入されることにより、前記熱交換ガス(23)の熱エネルギー量を増大させることを特徴とするプロセス。
【請求項2】
前記第一の熱交換ガス(23)が高温の補助ガス(22)と前記排出された高温の排ガス(11)の前記部分(13)との混合物からなる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記補助ガス(21)は、好ましくは蒸気、CO、およびこれら2種のガスの混合物から選択される、ほぼ不活性のガスである、請求項1または2のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項4】
前記補助ガス(21)は空気または空気とほぼ不活性のガスとの混合物から選択される、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記第一の熱交換ガス(23)の排出された高温の排ガス(11)の含有量は30vol%以下であり、好ましくは20vol%以下である、請求項1〜4の何れか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記熱交換ガスの中の、一方で排出された高温の排ガスの、他方で第一の高温の補助ガスに対する体積比は45vol%以下であり、好ましくは25vol%以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記燃焼室(100)は溶融室、精錬・清澄室、溶融/精錬・清澄室、またはボイラの燃焼室である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記燃焼室(100)はガラス溶融室、ガラス清澄室、またはガラス溶融/清澄室である、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
燃焼室の中で、燃料を予熱された酸素富化酸化剤(43)で燃焼させ、前記燃焼室の内部で熱と高温の排ガス(11)が生成されるプロセスであって、
−前記高温の排ガスは前記燃焼室(100)から排出され、前記排出された排ガス(11)は残留熱を含み、
−残留熱は、補助熱交換器(10)において補助ガス(21)を前記排出された高温の排ガス(11)の少なくとも一部との熱交換によって加熱することにより回収され、高温の補助ガス(22)と低温化された排ガス(12)が得られ、
−前記高温の補助ガス(22)の少なくとも第一の部分が主交換器(40b)の中に導入され、その中で酸素富化酸化剤(42)が、前記高温の補助ガス(22)の前記少なくとも第一の部分を含む第一の熱交換ガス(23)との熱交換によって予熱され、
−前記予熱された酸素富化酸化剤(43)が前記燃料(32)の前記燃焼のための前記燃焼室(100)に供給されるプロセスにおいて、
・前記熱交換ガス(23)が排出された高温の排ガス(13)を含まない第一の動作モードと、
・請求項1〜8のいずれか1項に記載の前記プロセスに対応する第二の動作モードと、
を含むことを特徴とするプロセス。
【請求項10】
前記第一の動作モードにおいて、前記熱交換ガス(23)は高温の補助ガス(22)からなる、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
燃焼室(100)と、補助交換器と呼ばれる第一の熱交換器(10)と、主交換器と呼ばれる第二の熱交換器(40b)と、を含み、
−前記燃焼室(100)には、前記燃焼室(100)の中に燃料(32)を注入するため、および酸化剤(43)を注入するためのインジェクタと排ガスのための出口(300)が設けられ、
−前記補助交換器(10)は、一方で高温の排ガス(11)のための入口および低温化された排ガス(12)のための出口と、他方で加熱対象の補助ガス(21)のための入口および高温の補助ガス(22)のための出口を含み、前記燃焼室(100)の前記高温の排ガスのための出口(300)は前記補助交換器(10)の前記高温の排ガス(11)のための入口と流体接続され、
−前記主交換器(40b)は、一方で高温の熱交換ガス(23)のための入口および低温化された熱交換ガス(45)のための出口と、他方で予熱対象の酸化剤(42)のための入口および予熱された酸化剤(43)のための出口が設けられ、前記補助交換器(10)の前記高温の補助ガス(22)のための出口は前記主交換器(40b)の前記高温の熱交換ガス(23)のための入口に流体接続され、前記予熱された酸化剤のための出口は前記燃焼室(100)の前記インジェクタの少なくとも1つに流体接続される設備において、
前記設備はまた、前記主交換器(40b)の前記高温の排ガスのための出口を前記熱交換ガスのための入口に、前記補助交換器(10)と並列に流体接続することのできるパイプラインをさらに含んで、前記排ガスのための出口(300)からの前記高温の排ガス(11)のうちの制御された部分が前記主交換器(40b)の前記高温の熱交換ガス(23)のための入口に向かって流れることができるようにすることを特徴とする設備。
【請求項12】
前記燃料(32)および酸化剤(43)の注入のための前記インジェクタはバーナ(200)および/または注入ランスの中に組み込まれる、請求項11に記載の設備。
【請求項13】
前記燃焼室(100)は溶融室、清澄・精錬室、溶融/清澄・精錬室、またはボイラの燃焼室、好ましくはガラス溶融室、ガラス清澄室、またはガラス溶融/清澄室である、請求項11および12のいずれか1項に記載の設備。
【請求項14】
燃焼室(100)と、補助交換器と呼ばれる第一の熱交換器(10)と、主交換器と呼ばれる第二の熱交換器(40b)と、を含む設備を改造するためのプロセスであって、
−前記燃焼室(100)には、前記燃焼室(100)の中に燃料(32)を注入するため、および酸化剤(43)を注入するためのインジェクタと排ガスのための出口(300)が設けられ、
−前記補助交換器(10)は、一方で高温の排ガス(11)のための入口および低温化された排ガス(12)のための出口と、他方で加熱対象の補助ガス(21)のための入口および高温の補助ガス(22)のための出口を含み、前記燃焼室(100)の前記高温の排ガスのための出口(300)は前記補助交換器(10)の前記高温の排ガス(11)のための入口と流体接続され、
−前記主交換器(40b)は、一方で高温の熱交換ガス(23)のための入口および低温化された熱交換ガス(45)のための出口と、他方で予熱対象の酸化剤(42)のための入口および予熱された酸化剤(43)のための出口が設けられ、前記補助交換器(10)の前記高温の補助ガス(22)のための出口は前記主交換器の前記高温の熱交換ガス(23)のための入口に流体接続され、前記予熱された酸化剤のための出口は前記燃焼室(100)の前記インジェクタの少なくとも1つに流体接続されるプロセスにおいて、
前記高温の排ガスのための出口(300)を前記主交換器(40b)の前記熱交換ガス(23)のための入口に、前記補助交換器と並列に流体接続できるパイプラインが前記設備に追加されて、前記排ガスのための出口(300)からの前記高温の排ガス(11)の制御された一部を前記主交換器(40b)の前記高温の熱交換ガス(23)のための入口に向かって流すことができることを特徴とするプロセス。
【請求項15】
前記燃焼室(100)は溶融室、精錬・清澄室、溶融/精錬・清澄室、またはボイラの燃焼室、好ましくはガラス溶融室、ガラス清澄室、またはガラス溶融/清澄室である、請求項14に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化剤として予熱された酸素富化ガスを使って燃料を燃焼するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
産業界では、酸化剤、すなわち燃焼オキシダイザとしては空気が依然として最もよく使用されている。
【0003】
しかしながら、燃焼室を含む産業設備の燃焼効率と、それゆえエネルギー収量を改善することにより、燃焼室内で生成される熱エネルギーを最大限に利用し、燃焼室のNO等の汚染排出物を削減するために、酸化剤として空気の代わりに酸素を使用することが知られている。
【0004】
酸素を用いた燃焼のエネルギーおよび環境面の利点はよく知られ、認められているものの、空気のそれと比較した酸素のコストにより、産業界における酸化剤としての酸素の使用が引き続き限定されている。
【0005】
酸素燃焼効率をさらに改善し、それゆえある産業工程について必要な燃料および酸素の量を減らすために、酸素を予熱するプロセスが開発されてきた。
【0006】
特に、酸素を熱交換器内で予熱することが知られている。
【0007】
特に、燃焼室の出口において、燃焼ガス(排ガス)中に存在する残留熱で酸素を間接的に予熱する方法が知られている。この方法によれば、補助流体が補助交換器の中で、高温の排ガスとの直接交換によって予熱される。酸素はその後、少なくとも1つの主交換器の中で、補助交換器からの高温の補助流体との直接交換によって予熱される。適当であれば、燃料もまた、別の熱交換器の中で高温の補助流体との直接交換によって予熱される。この方法の各種の実施形態が、特に欧州特許出願公開第A−0 872 690号明細書および国際公開第2006/054015号パンフレットに記載されている。
【0008】
欧州特許出願公開第A−2 546 204号明細書には、間接的予熱方法の他の実施形態を用いたガラス溶融プロセスが記載されている。欧州特許出願公開第A−2 546 204号明細書の主旨であるプロセスの第一段階において、第一の流速DO1の酸素富化酸化剤が燃焼室での燃料の燃焼のために提供され、この酸素富化オキシダイザは、酸素濃度がより低いオキシダイザとの熱交換によって予熱されており、前記より低濃度のオキシダイザは、燃焼室において生成された燃焼排ガスとの熱交換によって加熱される。第二段階では、より低い流速DO2の酸素富化オキシダイザと、流速DA2の加熱された、より低濃度のオキシダイザが利用される。
【0009】
欧州特許出願公開第A−1 338 848号明細書には、酸素富化された酸化剤を使用して炉からの排ガスから熱を回収するプロセスが記載されている。排出された排ガスは、直接または間接熱交換システムの中の燃料および/または酸化剤の直接または間接予熱のために使用される。排ガスはその後、熱回収ボイラ内に導入され、機械的エネルギーを生成する。直接または間接熱交換システム(複数の場合もある)には、前記排ガスのうち、熱交換システム内に実際に導入される部分を調整するために、排ガスのためのバイパスを設けることができる。
【0010】
酸素を予熱するための他の既知の方法と比較して、間接予熱方法には、安全性がより高いという大きな利点がある。そのため、腐食による、または補助交換器内部の浸食による穿孔が発生した場合に、残留可燃物質を含む傾向のある高温の排ガスが補助流体としか接触しない。同様に、主または追加交換器の内部に穿孔が発生した場合も、酸素または燃料は補助流体としか接触しない。
【0011】
この方法のエネルギー収支は大きくプラスである。
【0012】
しかしながら、この方法の1つの欠点は、異なる交換器により、および特に補助交換器により空間が必要となる点であり、熱損失を回避するために、前記交換器を燃焼室からの排ガスの出口のできるだけ近くに位置付けることが知られている。
【0013】
他の欠点は各種の熱交換器のコストであり、これは、内部で循環する流体の温度と性質を考えると、特に堅牢でなければならない。
【0014】
交換器は、燃焼室を含む産業設備の基準条件、すなわち産業設備の通常の動作条件に対応する条件(交換器内で循環する流体の温度と流速)の下で最適に動作するような設計およびサイズとされる。
【0015】
しかしながら、産業設備は、例えば設備の老朽化または摩耗によって、または溶融炉の出力増大期間中等、その基準条件以外で、より詳しくは、その通常の動作中より高い熱必要量で動作させられることがありうる。
【0016】
この場合、予熱方法の動作は、補助交換器が排出された排ガスから残留熱を回収できる能力は熱必要量に対して低すぎるという事実から、最適とは言えず、すると、実際に回復される残留熱は、その用途、またはそれを利用することが望ましい異なる用途、例えば酸素の予熱、燃料の予熱、および/またはその他の用途にとって不十分である。その結果、より多くのエネルギーが消費され、特に、より多くの燃料が消費される。
【0017】
設備の基準動作に対応するものより多くの熱を回収する能力を有する熱交換器の利用が想定されてもよく、または、設備の基準動作中より多くの熱を回収する必要がある場合にのみ、補足の補助交換器が使用される設備が想定されてもよい。しかしながら、この結果、空間が必要となり、設備のコストがはるかに高くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、上述の問題を少なくとも部分的に克服することである。
【0019】
特に、本発明の目的は、プロセスを実施するためのコストを増大させずに、実際にはこのコストを削減さえしながら、熱交換器の効率向上を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によれば、これは、高温の排ガスを予熱に使用される熱交換流体の中へと導入することによる熱の直接的な寄与によって実行される。
【0021】
本発明は、より詳しくは、燃焼室における予熱された酸素富化酸化剤での燃料燃焼のための第一の改善されたプロセスに関する。この燃焼により、前記燃焼室内で熱と高温の排ガスが生成される。高温の排ガスは残留熱を含み、燃焼室から排出される。排出された排ガスからの残留熱はその後、補助ガスと呼ばれるガスを、補助熱交換器と呼ばれる第一の熱交換器の中で、排出された排ガスの少なくとも一部との熱交換によって加熱することにより回収される。このようにして、高温の補助ガスと低温化された排ガスが得られる。
【0022】
こうして得られた高温の補助ガスの少なくとも第一の部分は、主交換器と呼ばれる第二の交換器へと導入され、その中で酸化剤が、高温の補助ガスの前記少なくとも第一の部分を含む熱交換ガスとの熱交換によって予熱される。このようにして、予熱された酸化剤と低温化された熱交換ガスが得られる。
【0023】
予熱された酸化剤は燃料燃焼のために燃焼室へと供給される。
【0024】
本発明によれば、排出された高温の排ガスのうちの、補助交換器の中に導入されない一部を高温の補助ガスの少なくとも第一の部分と混合させてから、高温の補助ガスの前記少なくとも一部が酸化剤の予熱のために主交換器の中へと導入されるようにすることにより、熱交換ガスの熱エネルギー量を増大できる。
【0025】
熱交換ガスの熱エネルギー量をこのように大きくすることにより、本発明は、燃焼室でのより大きな熱エネルギー必要量、例えば設備の基準必要量より大きい熱エネルギーの需要に対応できる。
【0026】
本発明はまた、例えば設備の老朽化による熱交換器の1つまたは複数の効率低下を補償することもできる。
【0027】
本願の内容において、
・「酸素富化」または「富化」ガスとは、酸素含有量が70vol%より多いかこれと等しい、好ましくは90vol%より多いかこれと等しい、さらには95vol%より多いかこれと等しい(すなわち、95vol%〜100vol%)のガスを意味すると理解される。
・「ほぼ不活性の」ガスとは、燃焼室内の条件下で燃焼に(燃料としても酸化剤としても)関与しない1種または複数の物質を50vol%より多く含むガスを意味すると理解される。ほぼ不活性のガスはそれゆえ、必然的に50vol%未満の酸素を含む。
・「熱交換」とは、熱に寄与する第一の流体(気体)と加熱対象の流体(気体)が別の空間内で循環し、第一の流体が加熱対象の流体へと、2つの空間を分離する1枚または複数の壁を通じて、すなわち2種の流体間で直接接触せずに、および混ざり合うことなく熱を伝達する加熱設備または装置を意味すると理解される。
・「バーナ」とは、少なくとも1種の燃料を少なくとも1種の酸化剤と接触させて、前記少なくとも1種の酸化剤による前記少なくとも1種の燃料の燃焼を可能にする装置または装置一式を意味すると理解される。バーナは一般に、燃料と酸化剤を燃焼領域へと注入するためのインジェクタおよび/またはランスを含む。バーナはまた、他の構成要素、例えば点火装置、火炎検出器、その他を含むことができる。
・「残留熱」とは、燃焼室から燃焼により生成された排ガスと共に排出される熱を意味すると理解される。
・「予熱」とは、燃料、酸化剤または、加熱もしくは溶融対象の供給材料等の生産物を、それが燃焼室内に導入される前に加熱することを意味すると理解される。
【0028】
本願の文脈において、2つの構成要素または装置は、これら2つの構成要素が少なくとも1つのパイプラインまたは少なくとも1つのパイプによって接続され、前記少なくとも1つのパイプラインを通じて、または前記少なくとも1つのパイプを通じて、流体を2つの構成要素のうちの一方から2つの構成要素の他方に向かって輸送することが可能となる場合に、「流体接続」される。
【0029】
本発明によれば、補助ガスは好ましくは空気またはほぼ不活性の補助ガス、あるいは空気とほぼ不活性のガスとの混合物である。
【0030】
補助ガスは特に、空気、蒸気、CO、または前記ガスのうちの少なくとも2種の混合物から選択でき、補助ガスは好ましくは空気である。
【0031】
上述のように、このような補助ガスによる残留熱の回収は、安全性が高いという利点を呈する。
【0032】
本発明によれば、熱交換ガス中の高温の排ガスの含有量がかなり低いままであるかぎり、この安全性は保たれる。
【0033】
それゆえ、熱交換ガス中の排出された高温の排ガスの含有量は、有利な点として、30vol%以下、好ましくは20vol%以下で保持される。熱交換流体の熱エネルギー量を大幅に増大させるために、熱交換ガス中の排出された高温の排ガスの含有量は好ましくは少なくとも10vol%である。熱交換ガス中の、一方で排出された高温の排ガスの、他方で高温の補助ガスに対する体積比は好ましくは、43vol%以下であり、好ましくは25vol%以下であり、好ましくは少なくとも11vol%である。
【0034】
上述のように、補助交換器と主交換器は一般に、燃焼室を含む産業設備の基準条件下で最適に動作するような設計およびサイズである。
【0035】
この場合、高温の補助ガスの第一の部分の熱エネルギー量は、産業設備の通常の動作条件下で酸化剤を予熱するのに十分であり、これらの通常の条件下では熱交換ガスの熱エネルギー量を増大させる必要はなく、プロセスが回収する必要のある排出された排ガスの残留熱が多い場合のみそれが必要となる。
【0036】
本発明はそれゆえ、燃焼室において、予熱された酸素富化酸化剤で燃料を燃焼させるための第二の柔軟なプロセスにも関し、前記燃焼室内で熱と高温の排ガスが生成される。本発明による第一のプロセスに関連してすでに上述したように、残留熱を含む高温の排ガスが燃焼室からに排出される。残留熱は、前記排出された高温の排ガスから、補助ガスを補助熱交換器の中で排出された高温の排ガスの少なくとも一部との熱交換によって加熱することにより回収される。このようにして、高温の補助ガスと低温化された排ガスが得られる。
【0037】
高温の補助ガスの少なくとも一部はすると、主交換器へと導入され、その中で、酸素富化酸化剤が熱交換ガスとの熱交換によって予熱され、前記熱交換ガスは高温の補助ガスの前記少なくとも一部を含む。このようにして、予熱された酸化剤と低温化された熱交換ガスが得られる。
【0038】
予熱された酸素富化酸化剤はその後、燃料燃焼のために燃焼室へと供給される。
【0039】
本発明による第二のプロセスは、それがいくつかの動作モードを示すという点で柔軟である。
・第一の動作モードでは、熱交換ガスが排出された排ガスを含まず、この第一の動作モードは例えば、産業設備の基準動作中に使用される。
・第二の動作モードでは、熱交換ガスの熱エネルギー量が、排出された高温の排ガスのうち、補助交換器に導入されず、それゆえその残留熱が補助ガスを加熱するために回収されなかった部分をそこに追加することによって増大される。
【0040】
そのため、前記第二の動作モードは本発明による第一のプロセスに対応し、その異なる実施形態は前述した。
【0041】
第二のプロセスの第一の動作モードにおいて、熱交換ガスは高温の補助ガスからなる。
【0042】
本発明によるプロセスは、有利な点として、燃料もまた、燃料交換器と呼ばれる熱交換器の中で第二の熱交換ガスとの熱交換によって予熱される。
【0043】
第二の熱交換ガスが第一の熱交換ガスに対応する場合、酸化剤と燃料の予熱は逐次的に行われる。燃料の予熱に使用される第二の熱交換ガスが、第一の熱交換ガスの高温の補助ガスのうちの少なくとも1つの第一の部分とは異なる、高温の補助ガスのうちの第二の部分を含む場合、酸化剤の予熱と燃料の予熱は逐次的に行われる。
【0044】
それゆえ、本発明により、排出された高温の排ガスの残留熱のうち、補助交換器だけで回収可能なものより多くを回収することが可能となる。
【0045】
換言すれば、本発明により、排出された排ガスの残留熱を、設備の基準動作中に補助交換器により最適に回収できる(第一の動作モード)だけでなく、設備の熱エネルギー必要量の増大に、産業熱のより多くの部分を回収することによって(第二の動作モード)対応でき、残留熱の第一の部分は、補助交換器における排出された高温の排ガスと補助ガスとの間の熱交換によって回収され、残留熱の第二の部分は、排出された高温の排ガスと高温の補助ガスとを直接混合することによって回収される。
【0046】
本発明による燃焼プロセスは、多く用途にとって有利である。燃焼室はそれゆえ、例えばガラス(エナメルを含む)を溶融させるため、または金属を溶融させるための溶融室、清澄・精錬室、または溶融/清澄・精錬室とすることができる。溶融室はまた、ボイラの燃焼室とすることもできる。本発明は、燃焼室がガラス溶融室、ガラス清澄室、またはガラス溶融/清澄室、例えば、板ガラス製造のためのフロート型ガラス炉の溶融/清澄室である場合に特に有用である。
【0047】
本発明はまた、本発明による燃焼プロセスの実行に適した設備にも関する。
【0048】
このような設備は、燃焼室と、補助交換器と呼ばれる第一の熱交換器と、主交換器と呼ばれる第二の熱交換器と、を含む。
【0049】
燃焼室には、燃焼室に燃料を注入するため、および酸化剤を注入するためのインジェクタと排ガス用の出口が設けられている。補助交換器は、一方で高温の排ガスのための入口および低温化された排ガスのための出口と、他方で加熱対象の補助ガスのための入口および高温の補助ガスのための出口を含む。燃焼室の高温の排ガスのための出口は、補助交換器の高温の排ガスのための入口と流体接続される。
【0050】
主交換器は、一方で高温の熱交換ガスのための入口および低温化された熱交換ガスのための出口と、他方で予熱対象の酸化剤のための入口および予熱された酸化剤のための出口を含む。補助交換器の高温の補助ガスのための出口は、主交換器の高温の熱交換ガスのための入口と流体接続される。予熱された酸化剤のための出口は、燃焼室のインジェクタのうちの少なくとも1つと流体接続される。
【0051】
本発明によれば、設備はまた、主交換器の高温の排ガスのための出口を熱交換ガスのための入口に補助交換器と並列に流体接続する、または流体接続できるパイプラインを含む。このパイプラインにより、このようにして、排ガスのための出口からの高温の排ガスの制御された一部が主交換器の高温の熱交換ガスのための入口に向かって流れるようにできることが可能となる。
【0052】
本発明による設備はまた、燃焼室の上流に、第二の可燃性ガスによって燃料を予熱するための燃料交換器を含むことができる。本発明によるプロセスに関連して上述したように、この燃料交換器は、酸化剤を予熱する主交換器と直列に、または並列に動作できる。
【0053】
燃料交換器と主交換器は、別の囲いまたはケーシングによって取り囲むことができ、または1つの同じ囲いの中に収容することもできる。
【0054】
燃料と酸化剤を注入するためのインジェクタは一般に、バーナおよび/または注入ランスに組み込まれている。
【0055】
上述のように、燃焼室はそれゆえ、例えばガラス(エナメルを含む)を溶融するため、または金属を溶融するための溶融室、清澄・精錬室または溶融/清澄・精錬室とすることができる。溶融室はまた、ボイラの燃焼室とすることもできる。
【0056】
本発明は、燃焼室がガラス溶融室、ガラス清澄室、またはガラス溶融/清澄室、例えばフロート型のガラス炉の溶融/清澄室である場合に特に有用である。
【0057】
すでに述べたように、その基準条件外で、およびより詳しくは、その通常の動作中より熱の必要量が多い状態で産業設備を動作させる必要性またはそのように動作させる利点が、設備の立ち上げから特定の時間が経過した後でのみ、例えば設備の、および燃焼室および/または熱交換器のうちの1つまたは複数の老朽化と摩耗によって生じるようにすることができる。
【0058】
すると、本発明の利点は、設備の構築後しばらくしてから明らかとなるかもしれない。すると、例えば2つの動作期間の合間の設備の一時的シャットダウンを利用して、本発明によるプロセスを実行するように設備を調整できる。
【0059】
それゆえ、本発明はまた、燃焼室と、補助交換器と呼ばれる第一の熱交換器と、主交換器と呼ばれる第二の熱交換器と、を含む設備を改造するためのプロセスにも関し、
−燃焼室には、燃焼室の中に燃料を注入するため、および酸化剤を注入するためのインジェクタと排ガスのための出口が設けられ、
−補助交換器は、一方で高温の排ガスのための入口および低温化された排ガスのための出口と、他方で加熱対象の補助ガスのための入口および高温の補助ガスのための出口を含み、燃焼室の高温の排ガスのための出口は補助交換器の高温の排ガスのための入口と流体接続され、
−主交換器は、一方で高温の熱交換ガスのための入口および低温化された熱交換ガスのための出口と、他方で予熱対象の酸化剤のための入口および予熱された酸化剤のための出口が設けられ、補助交換器の高温の補助ガスのための出口は主交換器の高温の熱交換ガスのための入口に流体接続され、予熱された酸化剤のための出口は燃焼室のインジェクタの少なくとも1つに流体接続される。
【0060】
本発明による改造プロセスによれば、高温の排ガスのための出口を主交換器の熱交換ガスのための入口に、補助交換器と並列に流体接続できるパイプラインが前記設備に追加されて、排ガスのための出口からの高温の排ガスの制御された一部を主交換器の高温の熱交換ガスのための入口に向かって流すことが可能となる。
【0061】
すでに述べたように、燃焼室は溶融室、精錬・清澄室、溶融/精錬・清澄室、またはボイラの燃焼室、好ましくはガラス溶融室、ガラス清澄室、またはガラス溶融/清澄室である。
【0062】
本発明を以下に例として説明し、図1を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】本発明による燃焼プロセスを実行するのに適した設備の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
この例において、本発明によるプロセスは、より詳しくは、本出願人の会社の仏国特許第1363459号明細書と同時係属中の公開前特許出願に記載されたプロセスと組み合わされる。
【0065】
前記プロセスにより、酸素富化オキシダイザを加熱するための第一の交換器と、それに続く酸化剤を予熱するための第二の熱交換器を使用することによって酸化剤を予熱するための個々の機器のコストを限定することが可能となり、前記酸化剤は、第一の交換器内で加熱されたオキシダイザを第二の交換器の上流でほぼ不活性のガスと混合することによって得られる。
【0066】
設備は溶融室、例えばガラス溶融室100を含み、これに例えば天然ガス等の燃料を酸素富化酸化剤で燃焼させるバーナ200が設けられている。図1には1つのバーナだけが示されているが、このような溶融室は一般に、いくつかのバーナを含む。この燃焼により燃焼室100内で熱と排ガスが生成される。この燃焼により生成された熱は、燃焼室100の中のガラス形成剤を溶融するために使用される。排ガスは、排ガスのための出口300によって燃焼室から排出される。排出された排ガスは高温(一般に、1200℃〜1600℃程度)であり、そこに含まれる残留熱の量は少なくない。
【0067】
本発明により、残余熱の回収と利用を最適化することが可能である。排出された高温の排ガスの少なくとも一部は補助交換器10の中へと導入され、その中では補助ガス21として使用される空気(以下、「補助空気」と呼ぶ)が循環する。
【0068】
高温の排ガスの一部だけが補助交換器10に導入される場合、この部分は、有利な態様では、排出された排ガスの少なくとも70vol%、好ましくは少なくとも75vol%、より好ましくは少なくとも80vol%に対応する。
【0069】
補助交換器10において、補助空気は高温の排ガスとの熱交換によって加熱される。このようにして、一般に600℃〜900℃の温度の高温の補助空気22と低温化された排ガス12が得られる。高温の補助空気は主交換器40bの中に導入され、その中では酸素富化酸化剤42、一般に少なくとも90vol%、好ましくは少なくとも95vol%の酸素を含むガスが循環する。
【0070】
主交換器40a、40bの内部で、酸化剤は、高温の補助空気22の少なくとも一部を含む高温の熱交換ガス23との熱交換によって予熱される。
【0071】
それゆえ、高温の酸化剤43と低温化された熱交換ガス45が得られる。
【0072】
高温の酸化剤は、燃焼室100のバーナ200の少なくとも1つまたは燃焼室100のバーナ200の全部に供給される。
【0073】
図1において、熱交換器40bは1つだけ示されている。しかしながら、設備はいくつかの主交換器40aおよび40b、特にバーナ200に接続された熱交換器40bのいくつかの例を含むことができる。この場合、各主交換器40bは好ましくは、限定的な数のバーナ200に高温の酸化剤を供給する。例えば、主交換器40bは、酸素富化酸化剤を使用する燃焼室100のバーナ200の各々と組み合わせることができる。
【0074】
本発明によれば、熱交換流体23としての高温の補助空気の代わりに高温の補助空気と排出された高温の排ガスとの混合物を使用することによって、主交換器40aおよび40bに供給される熱を増大させることができる。このために、排出された高温の排ガスの一部13は、補助ガスを加熱するための補助交換器10の中に導入されない。
【0075】
高温の排ガスのこの部分13は、反対に、高温の補助空気22と(または、高温の補助空気のうち、酸化剤42を予熱するための主交換器40aおよび40bの中に導入される部分のみと)混合される。
【0076】
このようにして、酸化剤をより高い温度まで予熱し、および/またはより高い流速の酸化剤を予熱することが可能となる。酸化剤を、例えば周囲温度である低温の酸化剤を交換器40bの中に導入し、主交換器40bの中で前記酸化剤をその最終的な温度まで加熱してからそれをバーナ200に供給することによって1つの段階で予熱できる。
【0077】
しかしながら、図1に示されている例において、酸化剤の予熱は2つの段階で行われる。まず、酸素富化ガス41が主交換器に追加された交換器40aの中に導入され、その中で前記富化ガス41が高温の補助空気の一部24との熱交換によって第一の温度まで加熱される。
【0078】
このようにして、部分的に加熱された富化ガスと低温化された補助空気の流れ44が得られる。
【0079】
部分的に加熱された富化ガス42はすると、酸化剤42として主交換器40bの中に導入される。
【0080】
富化酸化剤42の熱エネルギーを、それが主交換器40bの中に導入される前に、高温の補助空気の限定的な量を部分的に加熱された富化ガスと混合することによって増大させることが可能であり、前記混合物はその後、富化酸化剤42として主交換器40bの中に導入される。
【0081】
この選択肢の欠点は、富化酸化剤42、43の酸素含有量が若干減少することである。この方法とその利点は、本願と同時係属中の前述の特許出願の中により詳しく記載されている。
【0082】
高温の補助空気の一部25はまた、燃料3、例えば天然ガスを燃料交換器と呼ばれる熱交換器30の中で予熱するためにも使用される。
【0083】
このようにして、その後、燃焼室100のバーナ200に供給される予熱された燃料32と、低温化された補助空気33の第三の流れが得られる。
図1