【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によれば、これは、高温の排ガスを予熱に使用される熱交換流体の中へと導入することによる熱の直接的な寄与によって実行される。
【0021】
本発明は、より詳しくは、燃焼室における予熱された酸素富化酸化剤での燃料燃焼のための第一の改善されたプロセスに関する。この燃焼により、前記燃焼室内で熱と高温の排ガスが生成される。高温の排ガスは残留熱を含み、燃焼室から排出される。排出された排ガスからの残留熱はその後、補助ガスと呼ばれるガスを、補助熱交換器と呼ばれる第一の熱交換器の中で、排出された排ガスの少なくとも一部との熱交換によって加熱することにより回収される。このようにして、高温の補助ガスと低温化された排ガスが得られる。
【0022】
こうして得られた高温の補助ガスの少なくとも第一の部分は、主交換器と呼ばれる第二の交換器へと導入され、その中で酸化剤が、高温の補助ガスの前記少なくとも第一の部分を含む熱交換ガスとの熱交換によって予熱される。このようにして、予熱された酸化剤と低温化された熱交換ガスが得られる。
【0023】
予熱された酸化剤は燃料燃焼のために燃焼室へと供給される。
【0024】
本発明によれば、排出された高温の排ガスのうちの、補助交換器の中に導入されない一部を高温の補助ガスの少なくとも第一の部分と混合させてから、高温の補助ガスの前記少なくとも一部が酸化剤の予熱のために主交換器の中へと導入されるようにすることにより、熱交換ガスの熱エネルギー量を増大できる。
【0025】
熱交換ガスの熱エネルギー量をこのように大きくすることにより、本発明は、燃焼室でのより大きな熱エネルギー必要量、例えば設備の基準必要量より大きい熱エネルギーの需要に対応できる。
【0026】
本発明はまた、例えば設備の老朽化による熱交換器の1つまたは複数の効率低下を補償することもできる。
【0027】
本願の内容において、
・「酸素富化」または「富化」ガスとは、酸素含有量が70vol%より多いかこれと等しい、好ましくは90vol%より多いかこれと等しい、さらには95vol%より多いかこれと等しい(すなわち、95vol%〜100vol%)のガスを意味すると理解される。
・「ほぼ不活性の」ガスとは、燃焼室内の条件下で燃焼に(燃料としても酸化剤としても)関与しない1種または複数の物質を50vol%より多く含むガスを意味すると理解される。ほぼ不活性のガスはそれゆえ、必然的に50vol%未満の酸素を含む。
・「熱交換」とは、熱に寄与する第一の流体(気体)と加熱対象の流体(気体)が別の空間内で循環し、第一の流体が加熱対象の流体へと、2つの空間を分離する1枚または複数の壁を通じて、すなわち2種の流体間で直接接触せずに、および混ざり合うことなく熱を伝達する加熱設備または装置を意味すると理解される。
・「バーナ」とは、少なくとも1種の燃料を少なくとも1種の酸化剤と接触させて、前記少なくとも1種の酸化剤による前記少なくとも1種の燃料の燃焼を可能にする装置または装置一式を意味すると理解される。バーナは一般に、燃料と酸化剤を燃焼領域へと注入するためのインジェクタおよび/またはランスを含む。バーナはまた、他の構成要素、例えば点火装置、火炎検出器、その他を含むことができる。
・「残留熱」とは、燃焼室から燃焼により生成された排ガスと共に排出される熱を意味すると理解される。
・「予熱」とは、燃料、酸化剤または、加熱もしくは溶融対象の供給材料等の生産物を、それが燃焼室内に導入される前に加熱することを意味すると理解される。
【0028】
本願の文脈において、2つの構成要素または装置は、これら2つの構成要素が少なくとも1つのパイプラインまたは少なくとも1つのパイプによって接続され、前記少なくとも1つのパイプラインを通じて、または前記少なくとも1つのパイプを通じて、流体を2つの構成要素のうちの一方から2つの構成要素の他方に向かって輸送することが可能となる場合に、「流体接続」される。
【0029】
本発明によれば、補助ガスは好ましくは空気またはほぼ不活性の補助ガス、あるいは空気とほぼ不活性のガスとの混合物である。
【0030】
補助ガスは特に、空気、蒸気、CO
2、または前記ガスのうちの少なくとも2種の混合物から選択でき、補助ガスは好ましくは空気である。
【0031】
上述のように、このような補助ガスによる残留熱の回収は、安全性が高いという利点を呈する。
【0032】
本発明によれば、熱交換ガス中の高温の排ガスの含有量がかなり低いままであるかぎり、この安全性は保たれる。
【0033】
それゆえ、熱交換ガス中の排出された高温の排ガスの含有量は、有利な点として、30vol%以下、好ましくは20vol%以下で保持される。熱交換流体の熱エネルギー量を大幅に増大させるために、熱交換ガス中の排出された高温の排ガスの含有量は好ましくは少なくとも10vol%である。熱交換ガス中の、一方で排出された高温の排ガスの、他方で高温の補助ガスに対する体積比は好ましくは、43vol%以下であり、好ましくは25vol%以下であり、好ましくは少なくとも11vol%である。
【0034】
上述のように、補助交換器と主交換器は一般に、燃焼室を含む産業設備の基準条件下で最適に動作するような設計およびサイズである。
【0035】
この場合、高温の補助ガスの第一の部分の熱エネルギー量は、産業設備の通常の動作条件下で酸化剤を予熱するのに十分であり、これらの通常の条件下では熱交換ガスの熱エネルギー量を増大させる必要はなく、プロセスが回収する必要のある排出された排ガスの残留熱が多い場合のみそれが必要となる。
【0036】
本発明はそれゆえ、燃焼室において、予熱された酸素富化酸化剤で燃料を燃焼させるための第二の柔軟なプロセスにも関し、前記燃焼室内で熱と高温の排ガスが生成される。本発明による第一のプロセスに関連してすでに上述したように、残留熱を含む高温の排ガスが燃焼室からに排出される。残留熱は、前記排出された高温の排ガスから、補助ガスを補助熱交換器の中で排出された高温の排ガスの少なくとも一部との熱交換によって加熱することにより回収される。このようにして、高温の補助ガスと低温化された排ガスが得られる。
【0037】
高温の補助ガスの少なくとも一部はすると、主交換器へと導入され、その中で、酸素富化酸化剤が熱交換ガスとの熱交換によって予熱され、前記熱交換ガスは高温の補助ガスの前記少なくとも一部を含む。このようにして、予熱された酸化剤と低温化された熱交換ガスが得られる。
【0038】
予熱された酸素富化酸化剤はその後、燃料燃焼のために燃焼室へと供給される。
【0039】
本発明による第二のプロセスは、それがいくつかの動作モードを示すという点で柔軟である。
・第一の動作モードでは、熱交換ガスが排出された排ガスを含まず、この第一の動作モードは例えば、産業設備の基準動作中に使用される。
・第二の動作モードでは、熱交換ガスの熱エネルギー量が、排出された高温の排ガスのうち、補助交換器に導入されず、それゆえその残留熱が補助ガスを加熱するために回収されなかった部分をそこに追加することによって増大される。
【0040】
そのため、前記第二の動作モードは本発明による第一のプロセスに対応し、その異なる実施形態は前述した。
【0041】
第二のプロセスの第一の動作モードにおいて、熱交換ガスは高温の補助ガスからなる。
【0042】
本発明によるプロセスは、有利な点として、燃料もまた、燃料交換器と呼ばれる熱交換器の中で第二の熱交換ガスとの熱交換によって予熱される。
【0043】
第二の熱交換ガスが第一の熱交換ガスに対応する場合、酸化剤と燃料の予熱は逐次的に行われる。燃料の予熱に使用される第二の熱交換ガスが、第一の熱交換ガスの高温の補助ガスのうちの少なくとも1つの第一の部分とは異なる、高温の補助ガスのうちの第二の部分を含む場合、酸化剤の予熱と燃料の予熱は逐次的に行われる。
【0044】
それゆえ、本発明により、排出された高温の排ガスの残留熱のうち、補助交換器だけで回収可能なものより多くを回収することが可能となる。
【0045】
換言すれば、本発明により、排出された排ガスの残留熱を、設備の基準動作中に補助交換器により最適に回収できる(第一の動作モード)だけでなく、設備の熱エネルギー必要量の増大に、産業熱のより多くの部分を回収することによって(第二の動作モード)対応でき、残留熱の第一の部分は、補助交換器における排出された高温の排ガスと補助ガスとの間の熱交換によって回収され、残留熱の第二の部分は、排出された高温の排ガスと高温の補助ガスとを直接混合することによって回収される。
【0046】
本発明による燃焼プロセスは、多く用途にとって有利である。燃焼室はそれゆえ、例えばガラス(エナメルを含む)を溶融させるため、または金属を溶融させるための溶融室、清澄・精錬室、または溶融/清澄・精錬室とすることができる。溶融室はまた、ボイラの燃焼室とすることもできる。本発明は、燃焼室がガラス溶融室、ガラス清澄室、またはガラス溶融/清澄室、例えば、板ガラス製造のためのフロート型ガラス炉の溶融/清澄室である場合に特に有用である。
【0047】
本発明はまた、本発明による燃焼プロセスの実行に適した設備にも関する。
【0048】
このような設備は、燃焼室と、補助交換器と呼ばれる第一の熱交換器と、主交換器と呼ばれる第二の熱交換器と、を含む。
【0049】
燃焼室には、燃焼室に燃料を注入するため、および酸化剤を注入するためのインジェクタと排ガス用の出口が設けられている。補助交換器は、一方で高温の排ガスのための入口および低温化された排ガスのための出口と、他方で加熱対象の補助ガスのための入口および高温の補助ガスのための出口を含む。燃焼室の高温の排ガスのための出口は、補助交換器の高温の排ガスのための入口と流体接続される。
【0050】
主交換器は、一方で高温の熱交換ガスのための入口および低温化された熱交換ガスのための出口と、他方で予熱対象の酸化剤のための入口および予熱された酸化剤のための出口を含む。補助交換器の高温の補助ガスのための出口は、主交換器の高温の熱交換ガスのための入口と流体接続される。予熱された酸化剤のための出口は、燃焼室のインジェクタのうちの少なくとも1つと流体接続される。
【0051】
本発明によれば、設備はまた、主交換器の高温の排ガスのための出口を熱交換ガスのための入口に補助交換器と並列に流体接続する、または流体接続できるパイプラインを含む。このパイプラインにより、このようにして、排ガスのための出口からの高温の排ガスの制御された一部が主交換器の高温の熱交換ガスのための入口に向かって流れるようにできることが可能となる。
【0052】
本発明による設備はまた、燃焼室の上流に、第二の可燃性ガスによって燃料を予熱するための燃料交換器を含むことができる。本発明によるプロセスに関連して上述したように、この燃料交換器は、酸化剤を予熱する主交換器と直列に、または並列に動作できる。
【0053】
燃料交換器と主交換器は、別の囲いまたはケーシングによって取り囲むことができ、または1つの同じ囲いの中に収容することもできる。
【0054】
燃料と酸化剤を注入するためのインジェクタは一般に、バーナおよび/または注入ランスに組み込まれている。
【0055】
上述のように、燃焼室はそれゆえ、例えばガラス(エナメルを含む)を溶融するため、または金属を溶融するための溶融室、清澄・精錬室または溶融/清澄・精錬室とすることができる。溶融室はまた、ボイラの燃焼室とすることもできる。
【0056】
本発明は、燃焼室がガラス溶融室、ガラス清澄室、またはガラス溶融/清澄室、例えばフロート型のガラス炉の溶融/清澄室である場合に特に有用である。
【0057】
すでに述べたように、その基準条件外で、およびより詳しくは、その通常の動作中より熱の必要量が多い状態で産業設備を動作させる必要性またはそのように動作させる利点が、設備の立ち上げから特定の時間が経過した後でのみ、例えば設備の、および燃焼室および/または熱交換器のうちの1つまたは複数の老朽化と摩耗によって生じるようにすることができる。
【0058】
すると、本発明の利点は、設備の構築後しばらくしてから明らかとなるかもしれない。すると、例えば2つの動作期間の合間の設備の一時的シャットダウンを利用して、本発明によるプロセスを実行するように設備を調整できる。
【0059】
それゆえ、本発明はまた、燃焼室と、補助交換器と呼ばれる第一の熱交換器と、主交換器と呼ばれる第二の熱交換器と、を含む設備を改造するためのプロセスにも関し、
−燃焼室には、燃焼室の中に燃料を注入するため、および酸化剤を注入するためのインジェクタと排ガスのための出口が設けられ、
−補助交換器は、一方で高温の排ガスのための入口および低温化された排ガスのための出口と、他方で加熱対象の補助ガスのための入口および高温の補助ガスのための出口を含み、燃焼室の高温の排ガスのための出口は補助交換器の高温の排ガスのための入口と流体接続され、
−主交換器は、一方で高温の熱交換ガスのための入口および低温化された熱交換ガスのための出口と、他方で予熱対象の酸化剤のための入口および予熱された酸化剤のための出口が設けられ、補助交換器の高温の補助ガスのための出口は主交換器の高温の熱交換ガスのための入口に流体接続され、予熱された酸化剤のための出口は燃焼室のインジェクタの少なくとも1つに流体接続される。
【0060】
本発明による改造プロセスによれば、高温の排ガスのための出口を主交換器の熱交換ガスのための入口に、補助交換器と並列に流体接続できるパイプラインが前記設備に追加されて、排ガスのための出口からの高温の排ガスの制御された一部を主交換器の高温の熱交換ガスのための入口に向かって流すことが可能となる。
【0061】
すでに述べたように、燃焼室は溶融室、精錬・清澄室、溶融/精錬・清澄室、またはボイラの燃焼室、好ましくはガラス溶融室、ガラス清澄室、またはガラス溶融/清澄室である。
【0062】
本発明を以下に例として説明し、
図1を参照する。