(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
鉄道車両を構成する第1部材と第2部材とを連結するピン付き弾性体ブッシュに使用されるピンが、前記第1部材に形成された取付穴に配置されるピン本体部と、前記ピン本体部より小径であって前記第2部材に固定される端部と、前記ピン本体部から前記端部に向かって径を小さくする径変化部とを備えており、前記ピンに装着されること、
前記径変化部の外周面と同一形状に成形された内側筒部材と、
弾性部材を環状に成形したものであって、内周面が前記内側筒部材の外周面に加硫接着された弾性体と、
前記弾性体の外周面に加硫接着されており、前記内側筒部材に対して前記内側筒部材の小径側に張り出して配置される外側筒部材と、
を有すること、
前記ピンに装着された状態で環状部材に収容された場合に、前記外側筒部材が前記内側筒部材の大径側に変位し、前記弾性体が予圧縮される一方、前記環状部材に収容されない場合に、前記ピンの軸線方向に沿って前記ピン本体部と反対向きに移動させて前記ピンから分離させることができること
を特徴とする弾性組立部品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のピン付き弾性体ブッシュは、ゴム製緩衝リングをピンと環状ケースに接着していないため、ピンの軸部と環状ケースの孔部内壁との間の隙間からゴム製緩衝リングが細く飛び出すことがあった。この飛び出しを防止するために、環状ケースの孔部を小さくすると、ピンのこじり変位を発生させることができず、鉄道車両に発生する振動や衝撃を吸収しにくくなる。また、ゴム製緩衝リングは、ピンに対して座りが不安定であるため、ピンのこじりに対する復元力が小さくなったり、環状ケースに擦れて傷ついたりすることがあった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、防振性能及び弾性体の耐久性に優れ、弾性体の交換が容易なピン付き弾性体ブッシュ、鉄道車両用台車、及び、弾性組立部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、次のような構成を有している。
(1)鉄道車両を構成する第1部材と第2部材とを連結するピン付き弾性体ブッシュにおいて、ピンと、前記ピンの外周面に
前記ピンの軸線方向に沿って着脱可能に装着される第1弾性組立部品及び第2弾性組立部品と、前記第1弾性組立部品及び前記第2弾性組立部品を収容するものであって、前記第1弾性組立部品及び前記第2弾性組立部品を前記ピンの軸線方向に沿って引き寄せる引寄荷重を発生する環状部材と、を有すること、前記ピンは、前記第1部材に設けられた取付穴に配置されるピン本体部と、前記ピンの軸線方向に沿って前記ピン本体部の両側に突設され、前記ピン本体部より小径に設けられた第1端部及び第2端部とを有し、前記ピン本体部が、前記ピンの中心側から前記第1端部に向かって径を小さくする第1径変化部と、前記ピンの中心側から前記第2端部に向かって径を小さくする第2径変化部とを含むこと、前記第1弾性組立部品は、前記第1径変化部の外周面と同一形状に成形された第1内側筒部材と、弾性部材を環状に成形したものであって、内周面が前記第1内側筒部材の外周面に加硫接着される第1弾性体と、前記第1弾性体の外周面に加硫接着された第1外側筒部材と、を有すること、前記第2弾性組立部品は、前記第2径変化部の外周面と同一形状に成形された第2内側筒部材と、弾性部材を環状に成形したものであって、内周面が前記第2内側筒部材の外周面に加硫接着された第2弾性体と、前記第2弾性体の外周面に加硫接着された第2外側筒部材と、を有すること、前記第1弾性組立部品及び前記第2弾性組立部品を前記ピンに装着した状態で、且つ、前記環状部材に収容した状態で、前記第1外側筒部材と前記第2外側筒部材が引き寄せられて前記第1弾性体及び前記第2弾性体を予圧縮され
る一方、前記第1弾性組立部品と前記第2弾性組立部品を前記環状部材に収容しない状態では、前記第1弾性組立部品と前記第2弾性組立部品を前記ピンの軸線方向に沿って前記ピン本体部と反対向きに移動させて前記ピンから分離させることができるものであることを特徴とする。
【0008】
上記構成のピン付き弾性体ブッシュは、ピンに装着した第1及び第2弾性組立部品を環状部材に収容した場合に、第1及び第2弾性組立部品が引寄荷重を付与される。第1及び第2弾性組立部材は、第1及び第2内側筒部材を第1及び第2径変化部に押し付けた状態で、第1及び第2外側筒部材が引き寄せられ、第1及び第2弾性体が予圧縮される。第1及び第2弾性筒部材は、第1及び第2弾性体の反発力が、第1及び第2内側筒部材と第1及び第2径変化部との接触部分に、心軸の軸芯に向かって作用し、ピンから抜けなくなる。よって、ピン付き弾性体ブッシュは、第1及び第2弾性体をピンに加硫接着しなくても、ピンに一体的に組み付けることができる。また、第1及び第2弾性組立部品は、環状部材が取り外されて引寄荷重を解除されると、ピンから簡単に分離する。よって、第1及び第2弾性体は、ピンとの接着を剥離する手間をかけずに、ピンに脱着できる。第1及び第2弾性体は、第1及び第2内側筒部材と第1及び第2外側筒部材の間にそれぞれ配置されるので、軸線方向の変形が制限されない。よって、第1及び第2弾性体は、ピンのねじり変位やこじり変位に従って弾性変形し、ばね力を発揮できる。そして、第1及び第2弾性体は、第1及び第2内側筒部材と第1及び第2外側筒部材にそれぞれ加硫接着されているので、心軸がこじり変形やねじり変形する場合に他の部材に擦れて損傷せず、耐久性に優れている。
【0009】
(2)(1)に記載のピン付き弾性体ブッシュにおいて、前記第1弾性体と前記第2弾性体との間に配置される中間部材を有することが好ましい。これによれば、例えば、鉄道車両がブレーキをかけた場合でも、中間部材が、環状部材に当接することで、第1及び第2弾性体の過剰な変形を抑制する。よって、ピン付き弾性体ブッシュは、第1弾性体と第2弾性体の耐久性が向上する。
【0010】
(3)(1)又は(2)に記載のピン付き弾性体ブッシュにおいて、前記ピンに脱着可能に設けられ、前記第1径変化部の外周面に装着された前記第1内側筒部材の脱落を防止する第1脱落防止部材と、前記ピンに脱着可能に設けられ、前記第2径変化部の外周面に装着された前記第2内側筒部材の脱落を防止する第2脱落防止部材と、を有することが好ましい。これによれば、第1及び第2弾性組立部品は、第1及び第2内側筒部材をピンの第1及び第2径変化部に密着させた状態を維持することによって、ピンからの脱落をより確実に防止される。
【0011】
(4)(1)乃至(3)の何れか一つに記載のピン付き弾性体ブッシュにおいて、前記第1内側筒部材が前記ピンに対して軸芯を中心とする回転方向に変位することを防ぐ第1内側回転阻止機構と、前記第2内側筒部材が前記ピンに対して軸芯を中心とする回転方向に変位することを防ぐ第2内側回転阻止機構と、前記第1外側筒部材が前記環状部材に対して軸芯を中心とする回転方向に変位することを防ぐ第1外側回転阻止機構と、前記第2外側筒部材が前記環状部材に対して軸芯を中心とする回転方向に変位することを防ぐ第2外側回転阻止機構とを有することが好ましい。これによれば、第1及び第2内側筒部材がピンと一体的に変位し、第1及び第2外側筒部材が環状部材と一体的に変位するので、第1及び第2弾性体が、例えば、ピンのこじり変位やねじり変位に応じてばね力を発揮できる。
【0012】
(5)(1)乃至(4)の何れか一つに記載のピン付き弾性体ブッシュにおいて、前記環状部材は、前記第1及び第2外側筒部材に摺接する摺接部と、前記第1外側筒部材を第2弾性組立部品側に向かって加圧する第1加圧部と、前記第1加圧部に加圧力を与える第1加圧力付与部と、前記第2外側筒部材を第1弾性組立部品側に向かって加圧する第2加圧部と、前記第2加圧部に加圧力を与える第2加圧力付与部とを有することが好ましい。これによれば、第1及び第2外側筒部材を摺接部に挿入し、第1及び第2加圧部を第1及び第2加圧力付与部により加圧するだけで、第1及び第2弾性組立部品に引寄荷重を加えることができるので、組立作業性が良く、弾性組立部品の脱着・交換性にも寄与する。
【0013】
(6)(1)乃至(4)の何れか一つに記載のピン付き弾性体ブッシュにおいて、環状部材は、前記ピンに装着された前記第1及び前記第2弾性組立部品が圧入されることが好ましい。これによれば、ボルトを使用しなくても、第1及び第2弾性組立部品を環状部材に収容できるので、ボルトの締め付け具合を点検する手間を省くことができる。
【0014】
(7)(1)乃至(6)の何れか一つに記載のピン付き弾性体ブッシュにおいて、前記環状部材は、前記第1部材と一体的に設けられていることが好ましい。これによれば、環状部材を省略してコストダウンできる。
【0015】
(8)本発明の鉄道車両用台車は、上記(1)乃至(7)の何れか一つに記載するピン付き弾性体ブッシュが用いられていることを特徴とする。これによれば、第1及び第2弾性体の耐久性が優れているので、ピン付き弾性体ブッシュが、初期時のばね特性を維持して鉄道車両用台車に発生する振動及び衝撃を吸収できる。
【0016】
(9)鉄道車両を構成する第1部材と第2部材とを連結するピン付き弾性体ブッシュに使用されるピンが、前記第1部材に形成された取付穴に配置されるピン本体部と、前記ピン本体部より小径であって前記第2部材に固定される端部と、前記ピン本体部から前記端部に向かって径を小さくする径変化部とを備えており、前記ピンに装着されること、前記径変化部の外周面と同一形状に成形された内側筒部材と、弾性部材を環状に成形したものであって、内周面が前記内側筒部材の外周面に加硫接着された弾性体と、前記弾性体の外周面に加硫接着されており、前記内側筒部材に対して前記内側筒部材の小径側に張り出して配置される外側筒部材と、を有すること、前記ピンに装着された状態で環状部材に収容された場合に、前記外側筒部材が前記内側筒部材の大径側に変位し、前記弾性体が予圧縮される
一方、前記環状部材に収容されない場合に、前記ピンの軸線方向に沿って前記ピン本体部と反対向きに移動させて前記ピンから分離させることができることを特徴とする。
【0017】
上記構成の弾性組立部品は、環状部材に収容された場合には、ピンから抜けないようにピンに装着され、鉄道車両の振動及び衝撃を吸収する。鉄道車両の振動及び衝撃を吸収する防振機能を維持するために弾性体を交換する場合には、環状部材からピンと一緒に抜き出される。この場合、弾性体の予圧縮が解除されるので、弾性組立部品はピンから簡単に分離する。よって、上記構成の弾性組立部品によれば、鉄道車両の防振機能及び弾性体の耐久性を向上させることができ、弾性体の交換を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0018】
従って、本発明によれば、防振性能及び弾性体の耐久性に優れ、弾性体の交換が容易なピン付き弾性体ブッシュ、鉄道車両用台車、及び、弾性組立部品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係るピン付き弾性体ブッシュ、鉄道車両用台車、及び、弾性組立部品の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
<鉄道車両用台車の概略構成>
鉄道車両用台車は、レール方向に沿った左右の側梁が枕木方向に沿った図示しない横梁によって連結された台車枠によって構成され、その前後に輪軸が配置されている。輪軸は、軸箱に設けられた軸受に軸支されている。軸箱と台車枠との間には、弾性支持された軸箱支持装置が構成されている。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る鉄道車両用台車1に設けられた軸箱支持装置2の上面図である。
図2は、
図1に示す軸箱支持装置2の正面図である。軸箱支持装置2は、軸箱10と、軸箱10を台車枠12に結合し、固定するリンク20と、軸箱10と台車枠12の間に設けられて台車枠12を支持する軸ばね14とを備えている。
【0023】
図1及び
図2に示すように、リンク20は、軸箱側で二股に分岐しており、各端部にそれぞれピン付きゴムブッシュ4A,4B,4C(以下、ブッシュ4A,4B,4Cともいう)が設けられている。ブッシュ4A,4B,4Cが、ピン付き弾性体ブッシュの一例になる。
【0024】
図2に示すように、各ブッシュ4A,4B,4Cは、リンク20の各端部20a,20b,20cに形成された各取付孔23a,23b,23cに対して配置されている。ブッシュ4A,4Bが軸箱10に対して取付ボルト22a,22bで固定され、ブッシュ4Cが台車枠12に対して取付ボルト22cで固定されることにより、軸箱10と台車枠12とが前後方向でリンク20を介して連結されている。なお、この構成において、リンク20が鉄道車両を構成する第1部材の一例になり、軸箱10と台車枠12が鉄道車両を構成する第2部材の一例になる。
【0025】
軸ばね14は、軸箱10の上に配置されたばね座30と、台車枠12の側梁先端に形成されたばね帽32に取り付けられたばね受け34との間に配置され、台車枠12に対する軸箱10の上下方向の動きを吸収し、車体などの荷重バランスを調整する他、台車枠12に対する軸箱10の水平方向の動きも吸収する。
【0026】
このような軸箱支持装置2では、上下方向(鉛直方向)の荷重は、軸ばね14と上下方向にオフセットして配置されたリンク20のブッシュ4A,4Bによって支えられる。左右方向(車両幅方向)の荷重は、軸ばね14の水平剛性成分と左右方向にオフセットして配置されたリンク20のブッシュ4A,4Bによって支えられる。前後方向(車両の進行方向)の荷重は、リンク20のブッシュ4A,4B,4Cによって支えられる。つまり、ブッシュ4A,4B,4Cには、鉄道車両の走行中、鉛直方向と車両幅方向と車両の進行方向の荷重が複合的に作用し、ねじり方向やこじり方向の力が作用する。
【0027】
<ブッシュの構成>
次に、ブッシュ4A,4B,4Cの構成を説明する。ブッシュ4A,4B,4Cは、同じ構成であるので、以下では、ブッシュ4として説明する。
図3は、本発明の実施形態に係るブッシュ4の側面図である。
図4は、
図3に示すブッシュ4のAA断面図である。
図5は、
図3に示すブッシュ4のBB断面図である。
図6は、
図3に示すブッシュ4の分解斜視図である。
図7は、第1弾性組立部品6Aの断面図である。
図8は、ブッシュ4の予圧縮を説明する図である。
【0028】
図4、
図5、
図6に示すように、ブッシュ4は、心軸5と、第1弾性組立部品6Aと、第2弾性組立部品6Bと、環状ケース7などを備える。心軸5がピンの一例になり、環状ケース7が環状部材の一例になる。
【0029】
図6に示すように、心軸5は、外周面が三次元形状にされた棒材である。心軸5は、曲げやねじり、引張、圧縮などに対する剛性を高めるために、鍛造等により成形されている。心軸5は、軸線方向中心を挟んで左右対称の形状にされ、荷重が心軸全体にバランス良く分散するようにされている。
【0030】
図4及び
図5に示すように、心軸5は、軸線方向中央部に本体部51が設けられ、その本体部51を挟んで反対向きに第1端部52Aと第2端部52Bが心軸5の軸線方向に沿って突設されている。本体部51はピン本体部の一例になる。本体部51は、第1及び第2端部52A,52Bより大径に設けられ、心軸5の剛性を高めている。ブッシュ4は、例えば、本体部51をリンク20の取付孔23a(
図2参照)内に配置した状態で、第1及び第2端部52A,52Bに形成した貫通穴53A,53Bに挿通した取付ボルト22a(
図2参照)を軸箱10(
図2参照)に締結することによって、リンク20と軸箱10を結合する。なお、ブッシュ4は、これと同様にして、リンク20と台車枠12とを結合する。
【0031】
本体部51には、心軸5の軸線方向中心側から第1端部52A側に向かって径を小さくする第1テーパ部512Aと、心軸5の軸線方向中心側から第2端部52B側に向かって径を小さくする第2テーパ部512Bが、設けられている。第1テーパ部512Aが第1径変化部の一例になり、第2テーパ部512Bが第2径変化部の一例になる。つまり、心軸5は、本体部51が、第1テーパ部512Aを介して第1端部52Aに、第2テーパ部512Bを介して第2端部52Bに、それぞれ滑らかに接続され、径が変化する部分に応力が集中するのを防いでいる。なお、第1テーパ部512Aと第2テーパ部512Bのテーパ角は同じにされ、第1及び第2テーパ部512A,512Bに装着される弾性組立部品の互換性を確保している。
【0032】
本体部51は、第1テーパ部512Aと第2テーパ部512Bとの間に大径部511が円柱状に設けられている。そして、本体部51は、第1テーパ部512Aを挟んで大径部511と反対側に第1小径部513Aが設けられている。第1小径部513Aは、大径部511より小径であって第1端部52Aより大径の円柱状に形成されている。また、本体部51は、第2テーパ部512Bを挟んで大径部511と反対側に第2小径部513Bが設けられている。第2小径部513Bは、大径部511より小径であって第2端部52Bより大径の円柱状に形成されている。つまり、本体部51は、第1及び第2弾性組立部品6A,6Bを軸線方向に沿ってガイドできるように、大径部511と第1及び第2小径部513A,513Bが設けられている。
【0033】
第1弾性組立部品6Aは、第1内側筒部材61Aと第1外側筒部材63Aとの間に第1円筒ゴム62Aを配置した一体化したサンドイッチ構造をなす。第1円筒ゴム62Aが第1弾性体の一例になる。また、第2弾性組立部品6Bは、第2内側筒部材61Bと第2外側筒部材63Bとの間に第2円筒ゴム62Bを配置した一体化したサンドイッチ構造をなす。第2円筒ゴム62Bが第2弾性体の一例になる。第1及び第2弾性組立部品6A,6Bは、
図7に示すように、環状ケース7に収容されていない状態では、心軸5に着脱自在に設けられ、
図8に示すように、環状ケース7に収容された状態では、第1及び第2円筒ゴム62A,62Bが予圧縮されて、心軸5から抜けないように構成されている。尚、第1及び第2弾性組立部品6A,6Bは、同じ構成であるので、以下では、第1弾性組立部品6Aの構成について説明し、第2弾性組立部品6Bの構成については説明を省略する。
【0034】
図7に示すように、第1弾性組立部品6Aは、第1内側筒部材61Aと第1外側筒部材63Aが径の異なる筒状をなす。第1内側筒部材61Aと第1外側筒部材63Aは、径方向の荷重に対する剛性を高めるために、金属で形成されている。第1円筒ゴム62Aは、ゴムを円筒形状に成形した弾性体であり、径方向の肉厚が均一にされている。第1円筒ゴム62Aは、内周面が第1内側筒部材61Aの外周面に加硫接着され、外周面が第1外側筒部材63Aの内周面に加硫接着されている。そのため、第1外側筒部材63Aは、第1内側筒部材61Aに対して軸線方向に沿って相対的に移動することができる。
【0035】
第1内側筒部材61Aは、心軸5に設けられた本体部51の外形と同じ形状にプレス成形によって成型されている。第1内側筒部材61Aは、第1テーパ部512Aに対応して軸線方向に径を変化させるテーパ付きリング部612Aを備える。つまり、テーパ付きリング部612Aは、第1テーパ部512Aに面接触するように設けられている。
【0036】
第1内側筒部材61Aは、テーパ付きリング部612Aの大径側の開口端部に、大径リング部611Aが延設されている。大径リング部611Aは、心軸5の大径部511に嵌合可能な円筒形状をなす。また、第1内側筒部材61Aは、テーパ付きリング部612Aの小径側の開口端部に、小径リング部613Aが延設されている。小径リング部613Aは、心軸5の第1小径部513Aに嵌合可能な円筒形状をなす。よって、第1内側筒部材61Aは、テーパ付きリング部612Aを第1テーパ部512Aに当接させた場合に、大径リング部611Aが大径部511に支持され、小径リング部613Aが第1小径部513Aに支持されるので、径方向にがたつかないように心軸5に取り付けられる。
【0037】
一方、第1外側筒部材63Aは、第1内側筒部材61Aより大径の筒状に形成され、第1内側筒部材61Aの外側に所定間隔を開けて配置されている。第1外側筒部材63Aの内周面は、第1内側筒部材61Aに対応する形状に形成されている。第1外側筒部材63Aの内周面には、テーパ付きリング部612Aに対応して傾斜するテーパ面632Aを備える。そして、第1外側筒部材63Aの内周面は、テーパ面632Aの大径側に、大径内周部631Aが円筒状に形成されている。また、第1外側筒部材63Aの内周面は、テーパ面632Aの小径側に、小径内周部633Aが形成されている。第1外側筒部材63Aは、第1円筒ゴム62Aを介して、テーパ面632Aをテーパ付きリング部612Aに対向させるように、第1内側筒部材61Aに結合される。
【0038】
第1円筒ゴム62Aは、
図7に示すように、第1内側筒部材61Aのテーパ付きリング部612Aと第1外側筒部材63Aのテーパ面632Aに倣った形状で、加硫成形されている。第1円筒ゴム62Aは、加硫成形すると同時に、第1内側筒部材61Aと第1外側筒部材63Aに加硫接着される。なお、第1円筒ゴム62Aは、例えば、成形後に第1内側筒部材61Aと第1外側筒部材63Aに加硫接着されるなど、成形と接着が異なるタイミングで行われても良い。
【0039】
第1外側筒部材63Aの外周面634Aは、環状ケース7のケース本体71(
図4及び
図5参照)に摺接可能な円柱面によって構成されている。第1外側筒部材63Aの外周面634Aは、小径内周部633A側(第1内側筒部材61Aの小径側)に位置する端部が切り欠かれ、押圧面635Aが形成されている。
【0040】
図3〜
図5に示すように、環状ケース7は、ケース本体71が円筒形状をなす。ケース本体71は、一方の端面に第1リングプレート72Aが複数のボルト73で固定され、他方の端面に第2リングプレート72Bが複数のボルト73で固定されている。
図4及び
図5に示すように、第1及び第2リングプレート72A,72Bは、内径がケース本体71の内周面より小さくされ、第1及び第2弾性組立部品6A,6Bの第1及び第2外側筒部材63A,63Bに設けられた押圧面635A,635Bに当接するようにされている。つまり、環状ケース7は、心軸5に装着された第1及び第2弾性組立部品6A,6Bを引き寄せる引寄荷重を発生するように設けられている。そのため、第1及び第2弾性組立部品6A,6Bは、環状ケース7に隙間嵌めすることができ、組立作業性を良くすることができる。また、弾性組立部品の脱着・交換性にも寄与することができる。なお、本実施形態では、ケース本体71が摺接部の一例になり、第1及び第2リングプレート72A,72Bが第1及び第2加圧部の一例になり、ボルト73が第1及び第2加圧力付与部の一例になる。
【0041】
図3に示すように、第1弾性組立部品6Aは、第1外側筒部材63Aに形成された複数の外側凹条636Aに、環状ケース7の第1リングプレート72Aに設けられた複数のケース側凸条74Aを係合することにより、環状ケース7に対して軸線を中心に回転することを制限されている。また、
図6に示すように、第1弾性組立部品6Aは、第1内側筒部材61Aの大径側の端部に設けられた複数の内側凸条614Aを、心軸5に設けられた複数の軸側凹条515Aに係合することにより、心軸5に対して軸線方向を中心に回転することを制限されている。第2弾性組立部品6Bも、同様にして、心軸5と環状ケース7に対して軸線を中心に回転することを制限されている。尚、本実施形態では、内側凸条614Aと軸側凹条515Aが第1内側回転阻止機構の一例になり、内側凸条614Bと軸側凹条515Bが第2内側回転阻止機構の一例になる。また、外側凹条636Aとケース側凸条74Aが第1外側回転阻止機構の一例になり、外側凹条636Bとケース側凸条74Bが第2外側回転阻止機構の一例になる。
【0042】
更に、
図6に示すように、ブッシュ4は、心軸5の本体部51が大径部511の外周面中央に沿って凸部514が形成され、ストッパリング8が凸部514に装着される。ストッパリング8は中間部材の一例になる。凸部514は、軸線方向の幅がストッパリング8の軸線方向の長さと同じにされ、ストッパリング8の装着位置の目印になっている。
【0043】
図4及び
図5に示すように、ストッパリング8は、第1弾性組立部品6Aと第2弾性組立部品6Bの間に配置され、第1円筒ゴム62Aと第2円筒ゴム62Bの間まで突出するように径方向の高さが設定されている。つまり、ストッパリング8は、第1及び第2円筒ゴム62A,62Bの過度な変形を抑制する。ストッパリング8は、金属製のリング部材81とゴム製の緩衝部材82を備える。緩衝部材82は、リング部材81の少なくとも内周面を除く面に設けられ、第1及び第2円筒ゴム62A,62Bの損傷を防いでいる。
【0044】
尚、ブッシュ4は、Cリング9A,9Bが心軸5の第1及び第2小径部513A,513Bの外周面に装着され、第1及び第2弾性組立部品6A,6Bが抜けるのを防止している。つまり、第1及び第2弾性組立部品6A,6Bは、心軸5の凸部514、第1及び第2テーパ部512A,512B、Cリング9A,9Bにより軸線方向の移動を制限される。なお、Cリング9Aが第1脱落防止部材の一例になり、Cリング9Bが第2脱落防止部材の一例になる。
【0045】
<ブッシュの組立手順>
本形態のブッシュ4の組立手順について
図6を参照しながら説明する。心軸5の凸部514にストッパリング8を装着する。第2弾性組立部品6Bをケース本体71の一端開口部に挿入し、第2リングプレート72Bをケース本体71に対してボルト73で固定したら、ケース本体71の他端開口部側から心軸5の第2端部52Bを第2弾性組立部品6Bに挿通し、第2弾性組立部品6Bを心軸5に装着する。そして、心軸5の第1端部52Aを第1弾性組立部品6Aに挿通し、第1弾性組立部品6Aを心軸5に装着する。
【0046】
このとき、第1及び第2内側筒部材61A,61Bが心軸5の本体部51の外周面と同じ形状にプレス成形によって成形されているので、第1及び第2弾性組立部品6A,6Bを心軸5に簡単に装着できる。つまり、第1及び第2弾性組立部品6A,6Bは、大径リング部611A,611Bと小径リング部613A,613Bが心軸5の大径部511と第1及び第2小径部513A,513Bに案内されながら、テーパ付きリング部612A,612Bを心軸5の第1及び第2テーパ部512A,512Bにそれぞれ面接触させることができる。
【0047】
それから、第1リングプレート72Aをケース本体71に対してボルト73で固定し、Cリング9A,9Bを心軸5に取り付ける。ここで、
図8に示すように、第1及び第2弾性組立部品6A,6Bは、第1リングプレート72Aをケース本体71に固定するときに、押圧面635A,635Bが第1及び第2リングプレート72A,72Bによって近づく方向に押圧され、引寄荷重F11,F21を付与される。第1及び第2弾性組立部品6A,6Bは、第1及び第2内側筒部材61A,61Bが、テーパ付きリング部612A,612Bを心軸5の第1及び第2テーパ部512A,512Bに当接させ、しかも、大径側端部を心軸5の凸部514に突き当てて係止されているため、引寄荷重F11,F21の作用方向に移動できない。これに対して、第1及び第2外側筒部材63A,63Bは、第1及び第2円筒ゴム62A,62Bを介して第1及び第2内側筒部材61A,61Bに対して相対的に移動できる。そこで、第1及び第2弾性組立部品6A,6Bは、第1及び第2外側筒部材63A,63Bが引寄荷重F11,F21の作用方向に沿って移動する。このとき、第1及び第2円筒ゴム62A,62Bは、第1及び第2外側筒部材63A,63Bの移動に従って圧縮される。
【0048】
すると、第1円筒ゴム62Aの反発力F12は、第1内側筒部材61Aのテーパ付きリング部612Aと心軸5の第1テーパ部512Aとの接触部分に径方向内向きに作用する。これにより、第1弾性組立部品6Aが心軸5に圧接されて心軸5から抜けなくなる。また、第2円筒ゴム62Bの反発力F22は、第2内側筒部材61Bのテーパ付きリング部612Bと心軸5の第2テーパ部512Bとの接触部分に径方向内向きに作用する。これにより、第2弾性組立部品6Bが心軸5に圧接されて心軸5から抜けなくなる。つまり、第1及び第2円筒ゴム62A,62Bは、心軸5に加硫接着されていなくても、心軸5に一体的に組み付けることができる。
【0049】
<ブッシュの分解手順>
ブッシュ4を分解して第1及び第2円筒ゴム62A,62Bを交換する場合には、ボルト73を緩め、第1及び第2リングプレート72A,72Bをケース本体71から分離させる。すると、第1及び第2弾性組立部品6A,6Bは、引寄荷重F11,F21が解除される。これにより、第1及び第2円筒ゴム62A,62Bの反発力F12,F22がなくなる。そこで、Cリング9A,9Bを心軸5から取り外し、心軸5の本体部51から第1及び第2弾性組立部品6A,6Bを分離させる。そして、新しい弾性組立部品を上記組立手順と同様にして心軸5に取り付ける。よって、ブッシュ4は、第1及び第2円筒ゴム62A,62Bを心軸5から剥離する手間をかけずに、第1及び第2円筒ゴム62A,62Bを簡単に交換できる。また、第1及び第2円筒ゴム62A,62Bの交換時に心軸5に接着剤などが残らないため、心軸5を再利用できる。心軸5は、複雑な三次元形状をなし、製造コストが高い。そのため、心軸5を再利用できることは、メンテナンスコストを低減できるなど、有益である。
【0050】
<ブッシュの機能等>
上記のようにして組み立てられたブッシュ4は、例えば、リンク20の取付孔23a(
図2参照)に挿入され、心軸5の第1及び第2端部52A,52Bが取付ボルト22a(
図2参照)によって軸箱10(
図2参照)に固定される。このとき、第1及び第2円筒ゴム62A,62Bが本圧縮される。鉄道車両が走行する場合、鉄道車両用台車1には、上下方向、枕木方向(左右方向)、鉄道車両の進行方向の振動が発生し、それらが複合的にブッシュ4に作用する。つまり、心軸5がねじり変位したり、こじり変位したりする。
【0051】
ブッシュ4は、第1円筒ゴム62Aが筒状の第1内側筒部材61Aと筒状の第2外側筒部材63Bとの間に配置されているため、端面の変形に制約がない。第2円筒ゴム62Bも同様である。よって、心軸5は、第1及び第2円筒ゴム62A,62Bを弾性変形させながら変位でき、鉄道車両に発生する振動及び衝撃を吸収しやすい。
【0052】
これに加え、
図4及び
図5に示すように、第1円筒ゴム62Aは、軸線方向の両端面621A,622Aが凹状に湾曲した形状をなし、弾性変形時に第1円筒ゴム62Aのゴムボリュームがブッシュ4の外側にはみ出ししにくい。そして、第1円筒ゴム62Aは、第1内側筒部材61Aと第1外側筒部材63Aにそれぞれ加硫接着されているため、変形時に他の部材に擦れて損傷しない。第2円筒ゴム62Bも同様である。よって、ブッシュ4は、第1及び第2円筒ゴム62A,62Bの耐久性に優れている。これにより、第1及び第2円筒ゴム62A,62Bのばね特性を維持でき、鉄道車両の振動及び衝撃を吸収する防振機能を維持できる。
【0053】
もっとも、
図8に示すように、第1及び第2弾性組立部品6A,6Bは、第1及び第2円筒ゴム62A,62Bの反発力F12,F22により心軸5に圧接しているだけなので、心軸5がこじり変形したり、ねじり変形したりする場合に、第1及び第2内側筒部材61A,61Bが心軸5に対して滑る恐れがある。
【0054】
しかし、ブッシュ4は、第1及び第2弾性組立部品6A,6Bが、内側凸条614A,614Bと軸側凹条515A,515Bとを係合させることで、心軸5に対する回転止めが行われている。また、第1及び第2弾性組立部品6A,6Bは、外側凹条636A,636Bにケース側凸条74A,74B係合させることで、環状ケース7に対する回転止めが行われている。これにより、ブッシュ4は、第1及び第2弾性組立部品6A,6Bが心軸5と環状ケース7と一体化され、第1及び第2弾性組立部品と環状ケース7が心軸5と同一の動きをする。そのため、ブッシュ4は、心軸5のこじれ変位やねじり変位の角度に応じて、第1及び第2円筒ゴム62A,62Bにモーメントが作用する。よって、第1及び第2円筒ゴム62A,62Bは、心軸5の変位に応じたばね特性を発揮し、鉄道車両の振動及び衝撃を効率良く吸収できる。
【0055】
ところで、鉄道車両は、質量が大きく、ブレーキ時には、鉄道車両の進行方向に作用する荷重が大きくなる。この場合、ブッシュ4は、第1及び第2円筒ゴム62A,62Bが第1及び第2内側筒部材61A,61Bと第1及び第2外側筒部材63A,63Bの間でそれぞれ強く圧縮される。第1及び第2円筒ゴム62A,62Bは、圧縮力が過大になると、もとの形状に復元できなくなる恐れがある。
【0056】
しかし、ブッシュ4は、心軸5に装着したストッパリング8が、第1円筒ゴム62Aと第2円筒ゴム62Bとの間に配置されている。そのため、ブレーキ時には、ストッパリング8が、環状ケース7のケース本体71に当接することで、第1及び第2円筒ゴム62A,62Bの過剰な変形を抑制する。よって、第1及び第2円筒ゴム62A,62Bは、過大に圧縮されて復元力を失う不具合が生じにくく、耐久性が向上する。
【0057】
なお、ブッシュ4は、第1及び第2弾性組立部品6A,6Bの第1及び第2内側筒部材61A,61Bが心軸5に取り付けられたCリング9A,9Bに係止されるため、心軸5が変位する場合に第1及び第2内側筒部材61A,61Bのテーパ付きリング部612A,612Bを心軸5の第1及び第2テーパ部512A,512Bに密着させた状態を維持できる。よって、ブッシュ4は、第1及び第2弾性組立部品6A,6Bが心軸5から脱落することをより確実に防止できる。
【0058】
<ストッパリングの機能解析>
発明者らは、本形態と同様のブッシュについて、円筒ゴムのばね特性を調べる解析を行った。解析には、FEM解析システムを用いた。解析では、ブッシュに前後方向(軸線に対して直交する方向)の荷重と、左右方向(軸線方向)の荷重を加え、円筒ゴムのたわみを解析した。その結果を
図9に示す。
【0059】
図9に示すように、前後方向の荷重に対しては、約19.6kNまでは、円筒ゴムのたわみが線形に近い特性を示した。しかし、それ以上の荷重では、たわみの増加が抑えられた。つまり、19.6kN以上の荷重では、円筒ゴムがストッパリングに当たって変形が抑えられた。よって、本実施形態のブッシュは、円筒ゴムが過剰に変形するのを抑え、円筒ゴムの耐久性を向上させることができる。
【0060】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
【0061】
例えば、ピン本体部の形状は球形状であっても良い。つまり、第1及び第2テーパ部512A,512Bを半球状にしても良い。この場合、第1及び第2内側筒部材61A,61Bは、プレス成形によって,テーパ付きリング部612A,612Bを半球形状にすると良い。
【0062】
例えば、心軸5の大径部511と第1及び第2小径部513A,513Bはなくても良い。この場合、第1及び第2内側筒部材61A,61Bは、大径リング部611A,611Bと小径リング部613A,613Bがなくても良い。
【0063】
例えば、
図10に示すピン付き弾性体ブッシュ4xのように、第1及び第2弾性組立部品6A,6Bを円筒状の環状部材7xに圧入するようにしても良い。この場合、第1及び第2外側筒部材63A,63Bは押圧面635A,635Bを備えないようにしても良い。ただし、この場合も、環状部材7xは、第1及び第2外側筒部材63A,63Bの外側凹条636A,636Bに嵌合するケース側凸条74A,74Bを設けて回転止めすることが望ましい。また、ストッパリング8xに心軸5を圧入するようにしても良い。このようなピン付き弾性体ブッシュ4xは、次のように組み立てられる。まず、心軸5にストッパリング8xを圧入し、ストッパリング8xを心軸5に固定する。そして、環状部材7xに第1及び第2弾性組立部品6A,6Bを圧入し、第1及び第2弾性組立部品6A,6Bを引き寄せる。第1及び第2弾性組立部品6A,6Bは、第1及び第2円筒ゴム62A,62Bが予圧縮され、心軸5から抜けなくなる。そして、Cリング9A,9Bを心軸5に取り付ける。この構造では、ボルトを使用しなくても、ピン付き弾性体ブッシュ4xを環状部材7xに収容できるので、ボルトの締め付け具合を点検する手間を省くことができる。
【0064】
例えば、
図10に示すように、環状部材7xは、第1リング部材71xの内側に、第1リング部材71xより小径な第2リング部材90を配置しても良い。これによれば、作業者は、例えば、第1弾性組立部品6Aを第2弾性組立部品6B側に向かって押すことにより、第1および第2弾性組立部品6A,6Bを心軸5と共に環状部材7xから外せる。よって、ピン付き弾性体ブッシュ4xは、第1および第2弾性組立部品6A,6Bと心軸5と第1および第2リング部材71x,90とを簡単に分解させることができる。
【0065】
例えば、ブッシュ4は、鉄道車両の台車に含まれるモノリンクや連結装置などの部材連結部分に配置しても良い。
【0066】
例えば、リンク20の取付孔23a,23b,23cに環状ケース7をそれぞれ一体的に設けても良い。つまり、環状ケース7のケース本体71を取付孔23a,23b,23cの内周面により構成し、第1及び第2リングプレート72A,72Bをリンク20に対してボルト73で固定するようにしても良い。また、第1及び第2弾性組立部品6A,6Bを取付孔23a,23b,23cに圧入するようにすれば、第1及び第2リングプレート72A,72Bやボルト73を省略しても良い。Cリング9A,9Bは、省略することも可能であるが、第1及び第2弾性組立部品6A,6Bの抜けをより確実に防止するために、心軸5に装着することが望ましい。
【0067】
例えば、凸部514の径方向高さを第1及び第2円筒ゴム62A,62Bまで高くして、ストッパリング8として機能させても良い。
【0068】
例えば、心軸に軸側凸条を設け、内側筒部材に内側凹条を設け、それらを係合させることによって、内側筒部材が心軸に対して回転することを阻止するようにしても良い。また例えば、外側筒部材に外側凸条を設け、環状ケースにケース側凹条を設け、それらを結合することによって、外側筒部材が環状ケースに対して回転することを阻止するようにしても良い。さらに例えば、回転止め用ピンを環状ケースと弾性組立部品と心軸に貫き通して回転止めしても良い。
【0069】
第1及び第2内側筒部材61A,61Bは、プレス成形以外の方法で成形しても良い。
【符号の説明】
【0070】
4,4A,4B,4C ピン付きゴムブッシュ(ピン付き弾性体ブッシュの一例)
5 心軸(ピンの一例)
6A,6B 第1及び第2弾性組立部品
7 環状ケース(環状部材の一例)
8 ストッパリング(中間部材の一例)
9A,9B Cリング(第1及び第2脱落防止部材の一例)
51 ピン本体部
52A,52B 第1及び第2端部
61A,61B 第1及び第2内側筒部材
62A,62B 第1及び第2円筒ゴム(第1及び第2弾性体の一例)
63A,63B 第1及び第2外側筒部材
71 環状ケース(摺接部の一例)
72A,72B 第1及び第2リングプレート(第1及び第2加圧部の一例)
73 ボルト(第1及び第2加圧力付与部の一例)
512A,512B 第1及び第2テーパ部(第1及び第2径変化部の一例)
515A,515B 軸側凹条(第1及び第2内側回転阻止機構の一例)
614A,614B 内側凸条(第1及び第2内側回転阻止機構の一例)
636A,636B 外側凹条(第1及び第2外側回転阻止機構の一例)
74A,74B ケース側凸条(第1及び第2外側回転阻止機構の一例)
【解決手段】第1及び第2弾性体を第1及び第2内側筒部材と第1及び第2外側筒部材に加硫接着することにより第1及び第2弾性組立部品6A,6Bを構成し、第1及び第2内側筒部材61A,61Bのテーパ付きリング部612A,612Bを心軸5の第1及び第2テーパ部512A,512Bに当接させるように第1及び第2弾性組立部品6A,6Bを心軸5に装着して環状ケース7に収容することにより、第1及び第2弾性体を予圧縮し、心軸5から抜けないようにする。