(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
振動板と、前記振動板と平行に延びるアーマチュアと、導線が前記アーマチュアを周回した状態で巻かれたコイルと、前記アーマチュアに対向する磁石と、前記磁石を支持するヨークと、前記アーマチュアの振動を振動板に伝達する伝達体と、が設けられた発音装置において、
駆動側フレームと振動側フレームとが設けられ、
前記アーマチュアと前記コイルと前記磁石を支持するヨークとが、前記駆動側フレームに搭載され、前記振動板が前記振動側フレームに形成された開口部の内部に振動自在に支持されており、
前記駆動側フレームと前記振動側フレームとが重ねられていることを特徴とする発音装置。
前記振動側フレームに形成された前記開口部内に前記振動板が配置されて、前記開口部の縁部と前記振動板の縁部との間が可撓性シートで塞がれており、前記振動側フレームに形成された前記開口部は、前記駆動側フレームに形成されたどの開口部よりも、開口面積が大きい請求項1または2記載の発音装置。
前記駆動側フレームと前記振動側フレームは異なる材料で形成されており、前記可撓性シートと前記振動側フレームとの接着強度が、前記可撓性シートを前記駆動側フレームに接着したと仮定したときの接着強度よりも高い請求項3記載の発音装置。
前記アーマチュアの先端部に、アーマチュアが延びる方向に向けて解放された凹部が形成され、前記伝達体の連結端部よりも前記凹部の開口幅が広く形成されており、前記連結端部が前記凹部内に位置して、前記連結端部と前記アーマチュアとが固定されている請求項1ないし6のいずれかに記載の発音装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されている従来の発音装置は、ケース体とカバー体とで挟まれている1つの保持枠に振動板が保持されているとともに、同じ保持枠に、振動部を有しさらにコイルを支持しているアーマチュアと、マグネットを支持するヨークとが固定されている。
【0008】
しかしながら、保持枠は、その開口部内に振動板を支持するものであるため、開口部の面積を広く確保することが必要であり、特許文献1に記載された保持枠は、文字通りの枠形状となっている。一方で、保持枠には、アーマチュアの被固定部やヨークの壁部が位置決めされて固定されるが、被固定部やヨークを固定するのが保持枠の周囲の枠部分に限られるため、アーマチュアやヨークの位置決めと固定が不安定である。
【0009】
また、保持枠には中央に広い開口部が形成されているため、マグネットを保持枠に直接に位置決めして固定することができず、Uの字形状のヨークの内側に固定しなくてはならない。同様に、コイルも保持枠に直接に固定することができず、アーマチュアに固定しなくてはならなくなっている。
【0010】
そのため、アーマチュアの振動部とマグネットおよびコイルの互いの相対位置関係に、複数の部品の寸法公差と取付け公差が累積して関与することになり、組立作業のみで互いの相対位置を高精度に決めることは難しい。よって、保持枠にアーマチュアとヨークを取付けるときに、振動部とマグネットとコイルの相対位置が所定の公差内に入るように複数段階の調整を行うことが必要になり、組立調整作業が煩雑になる。
【0011】
次に、保持枠は、振動板が接合された樹脂フィルムを貼り付けるための接着剤が馴染みやすい材料で形成する必要がある。一方で、保持枠はコイル電流でアーマチュアに誘導される磁界の磁路を阻害しない材料で形成されることが必要である。しかしながら、前記の双方の機能を満足する材料で保持枠を形成するのは難しく、いずれかの前記機能を劣化させなくてはならなくなる。
【0012】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、振動板の配置スペースを十分に広く確保しながら、アーマチュアと磁石およびコイルを安定して固定することができる発音装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、振動板と、前記振動板と平行に延びるアーマチュアと、導線が前記アーマチュアを周回した状態で巻かれたコイルと、前記アーマチュアに対向する磁石と、前記磁石を支持するヨークと、前記アーマチュアの振動を振動板に伝達する伝達体と、が設けられた発音装置において、
駆動側フレームと振動側フレームとが設けられ、
前記アーマチュアと前記コイルと前記磁石を支持するヨークとが、前記駆動側フレームに搭載され、前記振動板が前記振動側フレームに形成された開口部の内部に振動自在に支持されており、
前記駆動側フレームと前記振動側フレームとが重ねられていることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の発音装置は、振動側フレームに広い開口部を設けることで、開口部内に可能な限り広い面積の振動板を配置できるようになり、一方で、駆動側フレームには、アーマチュアとコイル及び磁石を安定して位置決めし固定することができるようになる。
【0015】
本発明は、前記アーマチュアの基端部と前記ヨークとが、前記駆動側フレームの取付け面を基準として取り付けられていることが好ましい。
【0016】
本明細書での「駆動側フレームの取付け面を基準として取り付けられ」とは、アーマチュアの基端部と磁石を支持するヨークとが前記取付け面に直接に取付けられることの他、例えばアーマチュアの基端部が支持部材を介して取付け面に固定され、ヨークが他の部材を介して取付け面に固定されることも意味している。駆動側フレームには広い開口部を形成する必要がないため、前記取付け面を広く確保でき、よってアーマチュアの基端部やヨークを、前記取付け面を基準として高い取付け精度で固定することができる。
【0017】
本発明の発音装置は、前記振動側フレームに形成された前記開口部内に前記振動板が配置されて、前記開口部の縁部と前記振動板の縁部との間が可撓性シートで塞がれており、前記振動側フレームに形成された前記開口部は、前記駆動側フレームに形成されたどの開口部よりも、開口面積が大きいものとすることが可能である。
【0018】
また、本発明の発音装置は、前記駆動側フレームは磁性材料で形成され、前記振動側フレームは非磁性材料で形成されているものにできる。
【0019】
この場合には、前記駆動側フレームと前記アーマチュアとで磁路を構成することができる。
【0020】
本発明の発音装置は、前記駆動側フレームと前記振動側フレームは異なる材料で形成されており、前記可撓性シートと前記振動側フレームとの接着強度が、前記可撓性シートを前記駆動側フレームに接着したと仮定したときの接着強度よりも高いことが好ましい。
【0021】
上記のように本発明では、駆動側フレームと振動側フレームとを異なる材料で形成することで、振動板の支持に適した材料と、アーマチュアや磁石の支持に適した材料の双方を選択することが可能になる。
【0022】
本発明の発音装置は、前記アーマチュアの先端部に、アーマチュアが延びる方向に向けて解放された凹部が形成され、前記伝達体の連結端部よりも前記凹部の開口幅が広く形成されており、前記連結端部が前記凹部内に位置して、前記連結端部と前記アーマチュアとが固定されていることが好ましい。
【0023】
例えば、前記伝達体は、前記振動板との固定部よりも前記連結端部の方が断面積が小さいものである。あるいは、前記伝達体は、前記振動板との固定部よりも前記連結端部の方が断面積が大きいものである。
【0024】
上記のようにアーマチュアの先端部に凹部を形成すると、伝達体の固定部を振動板に固定した状態で、アーマチュアを振動板と平行な向きで差し込むようにして組み込むことにより、伝達体に過大な外力を与えることなく、アーマチュアと伝達体とを容易に連結させることが可能になる。
【0025】
本発明の発音装置は、前記駆動側フレームがケースに固定され、前記振動側フレームが前記駆動側フレームに固定されているものとして構成できる。
【0026】
または、前記振動側フレームがケースに固定され、前記駆動側フレームが前記振動側フレームに固定されているものとして構成できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、振動側フレームを広い開口部を有する枠体形状にして、広い面積の振動板を動作自在に支持できる。一方で、駆動側フレームには大きな開口部を設けずに、アーマチュアやヨークなどを支持するための基準となる取付け面を広く形成することができ、アーマチュアと磁石を支持したヨークおよびコイルを安定した状態で位置決めして固定できるようになる。
【0028】
上記構造により、アーマチュアと磁石およびコイルの相対位置を決めやすくなり、従来より調整作業を簡素化しまたは減らすことが可能になる。
【0029】
また、振動側フレームは振動板の支持に適した材料で形成し、駆動側フレームはアーマチュアを磁気駆動するのに適した材料で形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1ないし
図3は本発明の第1の実施の形態の発音装置1を示している。
発音装置1は、ケース2を有している。ケース2は下ケース3と上ケース4とから構成されている。下ケース3と上ケース4は合成樹脂製または非磁性材料の金属材料を使用しダイキャスト法で形成されている。
【0032】
図2に示すように、下ケース3は、底部3aと、4側面を囲む側壁部3bと、側壁部3bの上端の開口端部3cを有している。上ケース4は天井部4aと、4側面を囲む側壁部4bと、側壁部の下端の開口端部4cを有している。下ケース3の内部空間は、上ケース4の内部空間よりも広く、上ケース4は下ケースの蓋体として機能している。
【0033】
下ケース3の開口端部3cと上ケース4の開口端部4cとの間に駆動側フレーム5が挟まれている。図示省略されているが、下ケース3の開口端部3cと駆動側フレーム5との間に凹凸嵌合の位置決め機構が形成され、上ケース4の開口端部4cと駆動側フレーム5との間に凹凸嵌合の位置決め機構が形成されている。これら位置決め機構で、下ケース3と上ケース4および駆動側フレーム5が位置決めされて、下ケース3と上ケース4と駆動側フレーム5とが接着剤などで互いに固定されている。
【0034】
図2に示すように、駆動側フレーム5は、Z方向の厚さ寸法が均一な板材で形成されており、図示下側の平面が駆動側取付け面5aで、上側の平面が接合面5bとなっている。中央部には、駆動側開口部5cが上下に貫通して形成されている。
【0035】
駆動側フレーム5の図示上側に振動側フレーム6が重ねられている。振動側フレーム6は、中央部に広い開口面積の振動側開口部6cが形成された枠体形状である。振動側フレーム6の枠部はZ方向の厚さ寸法が均一であり、枠部の図示上側の平面が振動側取付け面6aで、下側の平面が接合面6bとなっている。
【0036】
図3に示すように、駆動側フレーム5の上に振動側フレーム6が重ねられ、駆動側フレーム5の接合面5bと、振動側フレーム6の接合面6bとが面接合される。図示省略されているが、駆動側フレーム5と振動側フレーム6との間には凹凸嵌合による位置決め機構が形成されており、駆動側フレーム5と振動側フレーム6は、互いに位置決めされた状態でレーザー溶接や接着剤で固定されている。
【0037】
図2と
図3に示すように、振動側フレーム6に振動板11と可撓性シート12が取り付けられている。振動板11はアルミニウムやSUC304などの薄い金属材料で形成されており、必要に応じて曲げ強度を増強するためのリブがプレス成形されている。可撓性シート12は振動板11よりも撓み変形しやすいものであり、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)やナイロンあるいはポリエステルなどの樹脂シート(樹脂フィルム)で形成されている。
【0038】
振動板11は可撓性シート12の下面に接着されて固定され、可撓性シート12の外周縁部12a(
図2参照)が、振動側フレーム6の枠部の上面である振動側取付け面6aに接着剤を介して固定されている。その結果、振動板11は、可撓性シート12を介して振動側フレーム6に振動動作自在に支持されている。
【0039】
図2と
図3に示すように、振動板11の面積は、振動側開口部6cの開口面積よりも小さく、可撓性シート12の面積は振動板11よりも大きく、可撓性シート12は振動側フレーム6の外形寸法とほぼほぼ一致している。
【0040】
図2に示すよう、振動板11のX方向(幅方向)の両縁部11a,11aと振動側フレーム6との間に隙間(i)(i)が形成されている。振動板11の自由端11bと振動側フレーム6との間に隙間(ii)が形成されている。振動板11の支点側端部11cと振動側フレーム6との間には、前記隙間(i)(ii)よりも狭い隙間(iii)が形成され、あるいはほとんど隙間が形成されていない。そして前記各隙間(i)(ii)(iii)が、可撓性シート12で塞がれている。振動板11は、前記可撓性シート12の撓みと弾性によって、支点側端部11cを支点として、自由端11bがZ方向へ変位するように振動可能である。
【0041】
図2と
図3に示すように、駆動側フレーム5に磁界発生ユニット20が搭載されている。磁界発生ユニット20は、上部ヨーク21と下部ヨーク22および一対の側部ヨーク23,23とが組み立てられている。上部ヨーク21と下部ヨーク22は同じ形状で同じ寸法の平板形状であり、側部ヨーク23,23は上部ヨーク21と下部ヨーク22との間に挟まれて設けられている。上部ヨーク21と下部ヨーク22および側部ヨーク23,23は、磁性材料で形成されており、例えばSPCCに代表される冷間圧延鋼板などの鋼板やNi−Fe合金などで形成されている。
【0042】
図2と
図3に示すように、磁界発生ユニット20では、上部ヨーク21の下面に上部磁石24が固定され、下部ヨーク22の上面に下部磁石25が固定されている。
図3に示すように、上部磁石24の下面24aと下部磁石25の上面25aとの間にZ方向にギャップδが形成されている。上部磁石24の下面24aと下部磁石25の上面25aとが互いに逆の極性となるように、各磁石24,25が着磁されている。
【0043】
磁界発生ユニット20は、上部ヨーク21の上面が接合面21aであり、接合面21aは平面である。この接合面21aが駆動側フレーム5の下面の駆動側取付け面5aに接合される。この固定は、接着剤を使用した接着工程やレーザースポット溶接法を用いて行われる。駆動側フレーム5には駆動側開口部5cが形成されているが、振動側フレーム6に形成された振動板11を設置するための振動側開口部6cに比べて、駆動側開口部5cの開口面積を狭くでき、その分だけ駆動側取付け面5aの面積を広くでき、磁界発生ユニット20を安定した状態で位置決めして固定することができる。
【0044】
図2と
図3に示すように、磁界発生ユニット20と並ぶ位置にコイル27が設置されている。コイル27はY方向に延びる巻き中心線を導線が周回するように巻かれている。後に説明するように、コイル27の巻き中心部の空間27cにアーマチュアの振動部32aが挿入され、コイル27は導線がアーマチュアの周囲を周回するように巻かれている。
【0045】
図3に示す実施の形態では、コイル27のY方向の左側に向く端面が接合面27aとなっており、この接合面27aが接着剤層28によって磁界発生ユニット20の上部ヨーク21と下部ヨーク22に固定されている。このとき、コイル27の巻き中心線が、上部磁石24と下部磁石25とのギャップδの中心に一致するように位置決めされて互いに固定される。
【0046】
なお、コイル27の上面27bが、駆動側フレーム5の下面の駆動側取付け面5aに直接に突き当てられ、あるいはスペーサを介して突き当てられて接着剤で固定されてもよい。
【0047】
図3に示すように、駆動側フレーム5の下面の駆動側取付け面5aに支持部材31が固定されており、支持部材31の下面に、アーマチュア32が取り付けられている。アーマチュア32と支持部材31は共に磁性材料で形成されており、例えばNi−Fe合金で形成されている。
【0048】
図7にアーマチュア32の形状が示されている。アーマチュア32は厚さ寸法が均一な板材であり、X方向の幅寸法が大きい基端部32bと、前記基端部32bよりも幅寸法が小さい振動部32aと、振動部32aの先部である先端部32cを有している。先端部32cの幅方向の中心部には凹部32dが形成されている。凹部32dはY方向に向けて開口しておりその開口幅寸法がWで示されている。
【0049】
アーマチュア32は基端部32bが支持部材31の下面に固定されている。駆動側フレーム5と支持部材31は、レーザー溶接や接着剤で固定されており、支持部材31とアーマチュア32の基端部32bも、レーザースポット溶接や半田付けあるいは接着剤で固定されている。振動部32aは、コイル27の巻き中心の空間27cと上部磁石24と下部磁石25とのギャップδ内に挿入されている。そして、アーマチュア32の先端部32cが、前記ギャップδ内からY方向の前方に飛び出している。
【0050】
図3に示すように、振動板11の自由端11bと、アーマチュア32の先端部32cは伝達体33で連結されている。伝達体33は金属または合成樹脂で形成された針状部材であり、上端の固定部33aが振動板11に固定されている。伝達体33の下端部は連結端部33bであり、連結端部33bはアーマチュア32の凹部32dに挿入され、連結端部33bとアーマチュア32とが接着剤で固定されている。
【0051】
この発音装置1は、駆動側フレーム5と振動側フレーム6とが別部材となっている。そのため、駆動側フレーム5と振動側フレーム6を、それぞれの機能に適するように異なる材料で形成することが可能である。
【0052】
駆動側フレーム5は磁性材料で形成されることが好ましい。例えば駆動側フレーム5はSUS430(18クロームステンレス)で形成される。駆動側フレーム5を磁性材料で形成することで、コイル27にボイス電流が通電されてアーマチュア32の内部に磁界が誘導されときに、磁束が、アーマチュア32の先端部32c−空間−駆動側フレーム5−支持部材31−アーマチュア32の基端部32bを周回できるようになり、アーマチュア32の振動部32a内の磁束密度を高めることができる。
【0053】
一方で、振動側フレーム6は、駆動側フレーム5に比較して接着剤の親和性の高い材料を選択することで、可撓性シート12と振動側フレーム6との接着強度を高めることができる。すなわち、振動側フレーム6と可撓性シート12との接着強度は、可撓性シート12を駆動側フレーム5に接着したと仮定したときよりも接着強度よりも高くなるように、振動側フレーム6の材料が選択される。例えば、振動側フレーム6は非磁性のステンレス鋼であるSUS304(18クローム8ニッケルステンレス:18−8ステンレス)で形成される。
【0054】
図3に示すように、下ケース3と上ケース4とが駆動側フレーム5を挟んで接合されて固定されると、振動板11と可撓性シート12とによって、ケース2の内部の空間が上下に区分される。振動板11および可撓性シート12よりも上側であって上ケース4の内部の空間が発音側空間であり、発音側空間は、上ケース4の側壁部4bに形成された発音口4dから外部空間に通じている。下ケース3の側壁部3bには吸排気口3dが形成されており、振動板11および可撓性シート12よりも下側であって下ケース3の内部空間が、吸排気口3dによって外気に通じている。
【0055】
次に、発音装置1の動作を説明する。
ボイス電流がコイル27に与えられると、アーマチュア32に磁界が誘導される。アーマチュア32に誘導される磁界と、上部磁石24と下部磁石25とのギャップδ内に生成される磁界とで、アーマチュア32の振動部32aにZ方向への振動が発生する。この振動が伝達体33を介して振動板11に伝達され振動板11が振動する。このとき、可撓性シート12で支持されている振動板11は、支点側端部11cを支点として自由端11bがZ方向へ振れて振動する。
【0056】
振動板11の振動により、上ケース4の内部の発音空間に音圧が生成され、この音圧が発音口4dから外部へ出力される。
【0057】
この発音装置1は、駆動側フレーム5と振動側フレーム6とが別々に形成されている。振動側フレーム6の振動側開口部6cの開口面積は、駆動側フレーム5のどの開口部よりも開口面積が広くなっている。そのため、振動側開口部6cの開口面積を広くして、その内部に設置される振動板11を可能な限り大きくすることができ、発音出力を高めることができる。
【0058】
一方で、駆動側フレーム5は振動板11を支持する必要がなく、駆動側開口部5cは、伝達体33を通過させる開口面積を有していればよい。そのため、駆動側フレーム5の下面の駆動側取付け面5aを広い面積で形成することができ、磁界発生ユニット20の上部ヨーク21と、アーマチュア32を支持する支持部材31を安定して固定させることができる。
【0059】
また、磁界発生ユニット20と、アーマチュア32を支持する支持部材31が、共通の平面である駆動側取付け面5aを基準として取り付けられるため、上部磁石24と下部磁石25との間のギャップδと、アーマチュア32の振動部32aとのZ方向の相対位置に関与する公差を少なくすることができ、ギャップδの中心に振動部32aを配置しやすくなる。また、振動部32aをギャップδの中心に合わせる調整作業が必要とされる場合であっても、その調整幅を狭くでき、従来よりも調整作業を簡素化できる。
【0060】
さらに、駆動側フレーム5と振動側フレーム6を別々の材料で形成できるため、駆動側フレーム5を磁性材料で形成し、振動側フレーム6を非磁性材料で形成するなどし、振動側フレーム6の材料として、駆動側フレーム6よりも可撓性シート12との接着強度が高くなる材料を選択することが可能になる。
【0061】
次に、前記発音装置1の製造工程において、アーマチュア32と伝達体33とを連結する作業の一例を説明する。
【0062】
発音装置1の製造工程では、振動板11が接合された可撓性シート12を振動側フレーム6に取付け、振動板11の自由端11bに伝達体33の上端の固定部33aを固定する。一方で、コイル27が連結された磁界発生ユニット20を、駆動側フレーム5の駆動側取付け面5aに固定し、支持部材31を駆動側取付け面5aに固定する。
【0063】
そして、前記駆動側フレーム5と振動側フレーム6を重ね、互いに位置決めして固定した後に、アーマチュア32を組み込む。
【0064】
この作業では、自動組み立て装置に設けられた組立アームの先部の吸着部で、アーマチュア32の基端部32bの図示下面を吸着する。
【0065】
振動部32aの先端部32cがコイル27よりも図示右側に外れた位置で、アーマチュア32を
図7(A)に示す(a)方向へ移動させ、前記先端部32cを、コイル27の空間27cに対向させる。その後、組立アームを振動板11と平行なY方向に沿って移動させ、アーマチュア32を
図7(A)に示す(b)方向へ移動させて、アーマチュア32の振動部32aを、コイル27の空間27cおよび上部磁石24と下部磁石25とのギャップδの内部に挿入する。
【0066】
磁界発生ユニット20と支持部材31は、駆動側フレーム5の共通の駆動側取付け面5aを基準として固定されている。そのため、磁界発生ユニット20と支持部材31の寸法精度を高精度に決めておけば、アーマチュア32を組み付ける際に、(a)方向へ移動させて、アーマチュア32を支持部材31の下面に押し付けた後に、支持部材31の下面にアーマチュア32を摺動させながら(b)方向へ移動させることで、アーマチュア32の振動部32aを、上部磁石24と下部磁石25とのギャップδの中心に高精度に一致させることができる。
【0067】
この場合には、調整作業が必要ではなく、アーマチュア32を組み込んで、基端部32bと支持部材31とをハンダや接着剤で接合することで組立を完了できる。
【0068】
または、アーマチュア32の位置を調整して組立作業を行う場合であってもその調整作業を簡素化できる。例えば、組立アームをZ方向へ移動させてアーマチュア32を(a)方向へ移動させ、アーマチュア32を支持部材31の下面に当たらない位置で、且つ駆動側取付け面5aからZ方向へ予め決められた距離に設定する調整を行う。次に、組立アームをZ方向の位置を維持させながらY方向へ移動させて、振動部32aをコイル27の空間27cおよび上部磁石24と下部磁石25とのギャップδの内部に差し込む。この調整作業の完了後に、アーマチュア32の基端部32bと支持部材31の下面との隙間にハンダや接着剤を介在させて、アーマチュア32の固定を終了する。あるいはレーザー溶接で固定する。
【0069】
この調整作業を含んだ取付け工程によっても、アーマチュア32の振動部32aを、上部磁石24と下部磁石25とのギャップδの中心に高精度に一致させることができる。
【0070】
このように、磁界発生ユニット20と支持部材31が、共通の基準面である駆動側取付け面5aを基準として組み付けられているため、ほとんど調整作業なしで、あるいは調整を行っても簡単な作業で、アーマチュア32の振動部32aを、上部磁石24と下部磁石25とのギャップδの中心に一致させることができる。
【0071】
図7(A)に示すように、アーマチュア32の先端部32cには凹部32dが形成され、凹部32dの開口幅寸法Wが、伝達体33の下端部の連結端部33bの幅寸法(直径寸法)よりも広くなっている。よって、
図7(A)に示すように、アーマチュア32を(b)方向へスライドさせて組み込むときに、伝達体33に対して外力を与えることなく、凹部32d内に伝達体33の連結端部33bを導くことができる。
【0072】
アーマチュア32を上記のように組み込んで、アーマチュア32の基端部32bを支持部材31に固定した後に、伝達体33の連結端部33bと、アーマチュア32の先端部32cとを接着剤などで固定する。
【0073】
次に、本発明の他の実施の形態について説明する。
図4は本発明の第2の実施の形態の発音装置1Aを示している。
【0074】
図4に示す発音装置1Aは、振動側フレーム6が駆動側フレーム5よりも大きく形成されている。第1の実施の形態と同様に、振動側フレーム6には、振動板11と可撓性シート12が支持されている。駆動側フレーム5には、駆動側取付け面5aに磁界発生ユニット20と支持部材31とが固定されている。磁界発生ユニット20にはコイル27が固定され、アーマチュア32の基端部32bが支持部材31の下面に固定されている。
【0075】
図4に示す発音装置1Aは、下ケース3と上ケース4との間に、振動側フレーム6の外周部分が挟まれて固定されている。そして、駆動側フレーム5は下ケース3と上ケース4とに挟まれておらず、振動側フレーム6の下面に固定されている。
【0076】
この実施の形態では、振動側フレーム6を下ケース3と上ケース4とで挟めるように大きく形成しているため、振動側フレーム6の振動側開口部6cの開口面積を広くでき、振動側開口部6c内に配置されている振動板11の面積も大きく形成することが可能である。
【0077】
図5は本発明の第3の実施の形態の発音装置101を示し、
図6は本発明の第4の実施の形態の発音装置101Aを示している。
【0078】
図5に示す発音装置101は、
図3に示した第1の実施の形態と同様に、駆動側フレーム5が下ケース3と上ケース4との間に挟まれており、振動側フレーム6が駆動側フレーム5の上に重ねられて固定されている。
図5に示す発音装置101と
図3に示した第1の実施の形態とでは、アーマチュアの構造が相違しており、それ以外の構成は同じである。
【0079】
図6に示す発音装置101Aは、
図4に示した第2の実施の形態と同様に、振動側フレーム6が下ケース3と上ケース4との間に挟まれており、駆動側フレーム5が振動側フレーム6の下に重ねられて固定されている。
図6に示す発音装置101Aと
図4に示した第2の実施の形態とでは、アーマチュアの構造が相違しており、それ以外の構成は同じである。
【0080】
図5と
図6に示すアーマチュア132は、振動部132aの基部にU字状の折り返し部132bと、これに連続する基端部132eが一体に形成されている。アーマチュア132の先端部132cには凹部132dが形成されている。凹部132dは、
図7(A)に示した凹部32dと同様に、開口幅寸法Wが、伝達体33の連結端部33bの幅寸法よりも広く形成されている。
【0081】
図5と
図6に示す発音装置101,101Aでは、アーマチュア132は、基端部132eが、駆動側フレーム5の駆動側取付け面5aに固定されている。アーマチュア132は、折り返し部132bと基端部132eとの境界部132fから先端部132cまでが弾性変形可能な領域となっている。よって、アーマチュア132の振動の変位量を大きくとることができ、振動板11の振幅を大きくして発音出力高めることができる。また、発音装置101,101AのY方向の寸法を短くして小型化したときでも、アーマチュア132の変形領域を確保できるようになる。
【0082】
このアーマチュア132は、振動部132aと基端部132eとの間のZ方向の寸法を高精度に形成しておけば、基端部132eを駆動側フレーム5の駆動側取付け面5aに突き当てて固定することで、振動部132aを上部磁石24と下部磁石25とのギャップδの中心に精度良く位置させることができる。または、組立アームの吸着部でアーマチュア132を保持し、
図7(A)に示すようにアーマチュア132を(a)方向へ移動させて、駆動側取付け面5aと振動部132aとの距離を調整した後に、アーマチュア132を(b)方向へ移動させて組み込み、その状態で、基端部132eと駆動側取付け面5aとの隙間内にハンダや接着剤を充填することで、アーマチュア132を位置決めして固定することができる。
【0083】
図8と
図9には、伝達体の変形例を示されている。
図8(A)に示す伝達体133は、X方向の幅寸法がY方向の厚さ寸法よりも大きい薄い板形状である。上端部が折り曲げられて振動板11に固定する固定部133aが形成されており、下端部がアーマチュア32の凹部32dに挿入される連結端部133bとなっている。
【0084】
図8(B)に示す伝達体134は、X方向の幅寸法がY方向の厚さ寸法よりも大きい薄い板形状である。上端部が折り曲げられて振動板11に固定する固定部133aが形成されており、下端部がアーマチュア32の凹部32dに挿入される連結端部133bとなっている。この伝達体134は、固定部134aから連結端部134bにかけてX方向の幅寸法が徐々に小さくなっている。
【0085】
図9(A)に示す伝達体135は、Y方向の幅寸法がX方向の厚さ寸法よりも大きい薄い板形状である。上端部が振動板11に固定する固定部135aに連結されており、下端部がアーマチュア32の凹部32dに挿入される連結端部135bとなっている。
【0086】
図9(B)に示す伝達体136は、Y方向の幅寸法がX方向の厚さ寸法よりも大きい薄い板形状である。上端部が振動板11に固定する固定部136aに連結されており、下端部がアーマチュア32の凹部32dに挿入される連結端部136bとなっている。この伝達体136は、固定部136aから連結端部136bにかけてY方向の幅寸法が徐々に大きくなっている。