特許第6449479号(P6449479)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6449479太陽電池封止材用樹脂組成物、太陽電池封止材および太陽電池モジュール
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  • 特許6449479-太陽電池封止材用樹脂組成物、太陽電池封止材および太陽電池モジュール 図000009
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6449479
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】太陽電池封止材用樹脂組成物、太陽電池封止材および太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/08 20060101AFI20181220BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20181220BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
   C08L23/08
   C08K5/14
   C08L91/00
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-547736(P2017-547736)
(86)(22)【出願日】2016年10月17日
(86)【国際出願番号】JP2016080665
(87)【国際公開番号】WO2017073386
(87)【国際公開日】20170504
【審査請求日】2017年10月30日
(31)【優先権主張番号】特願2015-213871(P2015-213871)
(32)【優先日】2015年10月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】三井化学東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】室伏 貴信
(72)【発明者】
【氏名】徳弘 淳
(72)【発明者】
【氏名】池永 成伸
【審査官】 今井 督
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/066783(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/070245(WO,A1)
【文献】 沖田泰介,エチレン・プロピレンゴム,株式会社 大成社,1972年 7月10日,9頁,表5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00− 13/08
H01L 31/00− 31/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・α−オレフィン共重合体と、有機過酸化物と、潤滑油とを含む太陽電池封止材用樹脂組成物であって、
前記エチレン・α−オレフィン共重合体と前記潤滑油との合計を100質量部としたとき、
前記潤滑油の含有量が6質量部以上48質量部以下であり、
前記潤滑油の40℃における動粘度が20.0mm/s以上2,500mm/s以下であり、
前記エチレン・α−オレフィン共重合体がエチレン由来の構成単位と炭素数3〜20のα−オレフィン由来の構成単位のみからなる共重合体である太陽電池封止材用樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の太陽電池封止材用樹脂組成物において、
前記潤滑油の臭素価が1g−Br/100g以下である太陽電池封止材用樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の太陽電池封止材用樹脂組成物において、
前記エチレン・α−オレフィン共重合体が以下の要件a1)および要件a2)の少なくとも一方を満たす太陽電池封止材用樹脂組成物。
a1)ASTM D1505に準拠して測定される密度が0.865g/cm以上0.890g/cm以下である
a2)ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるMFRが0.1g/10分以上50g/10分以下である
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか一項に記載の太陽電池封止材用樹脂組成物において、
前記潤滑油がパラフィン系オイルおよび炭化水素系合成油から選択される少なくとも一種を含む太陽電池封止材用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか一項に記載の太陽電池封止材用樹脂組成物において、
当該太陽電池封止材用樹脂組成物中の前記エチレン・α−オレフィン共重合体および潤滑油の合計含有量は、当該太陽電池封止材用樹脂組成物全体を100質量%としたとき、50質量%以上である太陽電池封止材用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか一項に記載の太陽電池封止材用樹脂組成物により構成された太陽電池封止材。
【請求項7】
シート状である、請求項6に記載の太陽電池封止材。
【請求項8】
請求項6または7に記載の太陽電池封止材において、
下記方法により測定されるヤングモジュラスが25MPa以下である太陽電池封止材。
(方法)
前記太陽電池封止材を150℃で3分間真空減圧した後、150℃で10分間加熱して架橋硬化させることで前記太陽電池封止材の架橋体を得る。次いで、JIS−K7113に準じて、スパン間:40mm、引張速度:100mm/min、23℃の条件で、得られた前記架橋体のヤングモジュラスを測定する。
【請求項9】
請求項6乃至8いずれか一項に記載の太陽電池封止材において、
下記方法により測定されるゲル分率が30質量%以上である太陽電池封止材。
(方法)
前記太陽電池封止材を150℃で3分間真空減圧した後、150℃で10分間加熱して架橋硬化させることで前記太陽電池封止材の架橋体を得る。次いで、得られた前記架橋体約1g(秤量値をA(g))をキシレン100mLに仕込み、110℃で12時間静置する。得られた抽出液を30メッシュのステンレスメッシュでろ過し、前記ステンレスメッシュを110℃にて8時間減圧乾燥を行い、前記ステンレスメッシュ上の残存量B(g)を算出し、下記式を用いてゲル分率を算出する。
ゲル分率(質量%)=100×B/A
【請求項10】
表面側透明保護部材と、
裏面側保護部材と、
太陽電池素子と、
請求項6乃至9いずれか一項に記載の太陽電池封止材の架橋体により構成された、前記太陽電池素子を前記表面側透明保護部材と前記裏面側保護部材との間に封止する封止層と、
を備えた太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池封止材用樹脂組成物、太陽電池封止材および太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境問題、エネルギーの問題等が深刻さを増す中、クリーンかつ枯渇の恐れの無いエネルギー生成手段として太陽電池が注目されている。太陽電池を建物の屋根部分等の屋外で使用する場合、太陽電池モジュールの形で使用することが一般的である。
【0003】
太陽電池モジュールは、例えば、以下の手順によって製造される。
まず、多結晶シリコン、単結晶形シリコン等により形成される結晶型太陽電池素子、あるいはアモルファスシリコンや結晶シリコン等をガラス等の基板の上に数μmの非常に薄い膜を形成して得られる薄膜型太陽電池素子(以下、結晶型太陽電池素子および薄膜型太陽電池素子をまとめて、単に「太陽電池素子」あるいは「セル」と表記する場合がある。)を製造する。
次に、結晶型太陽電池モジュールを得るには、太陽電池モジュール用保護シート(表面側透明保護部材)/太陽電池封止材シート(以下、シート状の太陽電池封止材を太陽電池封止材シートとも呼ぶ。)/結晶型太陽電池素子/太陽電池封止材シート/太陽電池モジュール用保護シート(裏面側保護部材)の順に積層する。
一方、薄膜型太陽電池モジュールを得るには、薄膜型太陽電池素子/太陽電池封止材シート/太陽電池モジュール用保護シート(裏面側保護部材)の順に積層する。
その後、これらを真空吸引して加熱圧着するラミネーション法等を利用することにより、太陽電池モジュールが製造される。このようにして製造される太陽電池モジュールは、耐候性を有し、建物の屋根部分等の屋外での使用にも適したものとなっている。
【0004】
太陽電池封止材シートとしては、従来からエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)シートが、透明性、柔軟性、および接着性等に優れていることから、広く用いられてきた。例えば、特許文献1には、架橋剤およびトリメリット酸エステルを含むEVA組成物からなる、接着性と製膜性の双方に優れた封止膜が開示されている。
しかしながら、EVA組成物を太陽電池封止材の構成材料として使用する場合、EVAが分解して発生する酢酸ガス等の成分が、太陽電池素子に悪影響を与える可能性が懸念されていた。
【0005】
これに対して、ポリオレフィン系の材料、特にポリエチレン系材料が絶縁性に優れることから、太陽電池封止材として用いることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、エチレン・α−オレフィン共重合体を用いた太陽電池封止材用樹脂組成物も提案されている(例えば、特許文献3参照)。さらに、ポリオレフィンとシランと1種以上の架橋剤と可塑剤を含む太陽光発電モジュール用フィルムも提案されている(例えば特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−53298号公報
【特許文献2】特開2006−210906号公報
【特許文献3】国際公開第2011/162324号パンフレット
【特許文献4】特表2015−503219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、太陽電池モジュールのコストダウンの要望が高くなり、その対応の中で太陽電池素子の薄肉化への動向もある。
しかし、本発明者らの検討に拠れば、特許文献2および3に記載のエチレン・α−オレフィン共重合体を用いた太陽電池封止材では剛性が高いため、薄肉化された太陽電池素子では、太陽電池素子の欠け、割れが発生する懸念があることが明らかになった。
また、特許文献4に記載の太陽光発電モジュール用フィルムは、柔軟性が不十分であり、薄肉化された太陽電池素子では、太陽電池素子の欠け、割れが発生する懸念があることが明らかになった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ブリードアウトが少なく、柔軟性および架橋特性のバランスに優れた、エチレン・α−オレフィン共重合体をベースとする太陽電池封止材用樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、エチレン・α−オレフィン共重合体と有機過酸化物に、特定の潤滑油をある範囲の量で組み合わせることにより、ブリードアウトが少なく、柔軟性および架橋特性のバランスに優れた太陽電池封止材用樹脂組成物が得られることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明によれば、以下に示す太陽電池封止材用樹脂組成物、太陽電池封止材および太陽電池モジュールが提供される。
【0011】
[1]
エチレン・α−オレフィン共重合体と、有機過酸化物と、潤滑油とを含む太陽電池封止材用樹脂組成物であって、
上記エチレン・α−オレフィン共重合体と上記潤滑油との合計を100質量部としたとき、
上記潤滑油の含有量が6質量部以上48質量部以下であり、
上記潤滑油の40℃における動粘度が20.0mm/s以上2,500mm/s以下である太陽電池封止材用樹脂組成物。
[2]
上記[1]に記載の太陽電池封止材用樹脂組成物において、
上記潤滑油の臭素価が1g−Br/100g以下である太陽電池封止材用樹脂組成物。
[3]
上記[1]または[2]に記載の太陽電池封止材用樹脂組成物において、
上記エチレン・α−オレフィン共重合体が以下の要件a1)および要件a2)の少なくとも一方を満たす太陽電池封止材用樹脂組成物。
a1)ASTM D1505に準拠して測定される密度が0.865g/cm以上0.890g/cm以下である
a2)ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるMFRが0.1g/10分以上50g/10分以下である
[4]
上記[1]乃至[3]いずれか一つに記載の太陽電池封止材用樹脂組成物において、
上記潤滑油がパラフィン系オイルおよび炭化水素系合成油から選択される少なくとも一種を含む太陽電池封止材用樹脂組成物。
[5]
上記[1]乃至[4]いずれか一つに記載の太陽電池封止材用樹脂組成物において、
当該太陽電池封止材用樹脂組成物中の上記エチレン・α−オレフィン共重合体および潤滑油の合計含有量は、当該太陽電池封止材用樹脂組成物全体を100質量%としたとき、50質量%以上である太陽電池封止材用樹脂組成物。
[6]
上記[1]乃至[5]いずれか一つに記載の太陽電池封止材用樹脂組成物により構成された太陽電池封止材。
[7]
シート状である、上記[6]に記載の太陽電池封止材。
[8]
上記[6]または[7]に記載の太陽電池封止材において、
下記方法により測定されるヤングモジュラスが25MPa以下である太陽電池封止材。
(方法)
上記太陽電池封止材を150℃で3分間真空減圧した後、150℃で10分間加熱して架橋硬化させることで上記太陽電池封止材の架橋体を得る。次いで、JIS−K7113に準じて、スパン間:40mm、引張速度:100mm/min、23℃の条件で、得られた上記架橋体のヤングモジュラスを測定する。
[9]
上記[6]乃至[8]いずれか一つに記載の太陽電池封止材において、
下記方法により測定されるゲル分率が30質量%以上である太陽電池封止材。
(方法)
上記太陽電池封止材を150℃で3分間真空減圧した後、150℃で10分間加熱して架橋硬化させることで上記太陽電池封止材の架橋体を得る。次いで、得られた上記架橋体約1g(秤量値をA(g))をキシレン100mLに仕込み、110℃で12時間静置する。得られた抽出液を30メッシュのステンレスメッシュでろ過し、上記ステンレスメッシュを110℃にて8時間減圧乾燥を行い、上記ステンレスメッシュ上の残存量B(g)を算出し、下記式を用いてゲル分率を算出する。
ゲル分率(質量%)=100×B/A
[10]
表面側透明保護部材と、
裏面側保護部材と、
太陽電池素子と、
上記[6]乃至[9]いずれか一つに記載の太陽電池封止材の架橋体により構成された、上記太陽電池素子を上記表面側透明保護部材と上記裏面側保護部材との間に封止する封止層と、
を備えた太陽電池モジュール。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ブリードアウトが少なく、柔軟性および架橋特性のバランスに優れた太陽電池封止材用樹脂組成物および該樹脂組成物を用いた太陽電池封止材を提供することができる。
また、本発明によれば、この様な太陽電池封止材を用いることで、柔軟性および架橋特性のバランスに優れた太陽電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0014】
図1】本発明の太陽電池モジュールの代表的な実施形態を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いながら説明する。なお、数値範囲の「A〜B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。
【0016】
[太陽電池封止材用樹脂組成物]
本実施形態の太陽電池封止材用樹脂組成物は、エチレン・α−オレフィン共重合体と、有機過酸化物と、潤滑油とを含み、エチレン・α−オレフィン共重合体と潤滑油との合計を100質量部としたとき、潤滑油の含有量が6質量部以上48質量部以下、好ましくは8質量部以上45質量部以下、より好ましくは10質量部以上45質量部以下、特に好ましくは10質量部以上35質量部以下であり、潤滑油の40℃における動粘度が20.0mm/s以上2,500mm/s以下、好ましくは20.0mm/s以上1,500mm/s以下、より好ましくは32.0mm/s以上1,200mm/s以下、さらに好ましくは50.0mm/s以上1,000mm/s以下、特に好ましくは50.0mm/s以上500mm/s以下である。
ここで、潤滑油の40℃における動粘度はJIS K2283に準じて測定することができる。
【0017】
<エチレン・α−オレフィン共重合体>
本実施形態の太陽電池封止材用樹脂組成物はエチレン・α-オレフィン共重合体を含む。
上記エチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合することによって得られる。α−オレフィンとしては、通常、炭素数3〜20のα−オレフィンを1種類単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、直鎖状または分岐状のα−オレフィン、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等を挙げることができる。これらの中でも好ましいのは、炭素数が10以下であるα−オレフィンであり、特に好ましいのは炭素数が3〜8のα−オレフィンである。入手の容易さからプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−オクテンが好ましい。なお、エチレン・α−オレフィン共重合体はランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、柔軟性の観点からランダム共重合体が好ましい。
【0018】
さらに、上記エチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンと非共役ポリエンとを含む共重合体であってもよい。α−オレフィンは前述と同様であって、非共役ポリエンとしては、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)、ジシクロペンタジエン(DCPD)等が挙げられる。これら非共役ポリエンを1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
上記エチレン・α−オレフィン共重合体は、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン、メトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、p−クロロスチレン、ジビニルベンゼン、3−フェニルプロピレン、4−フェニルプロピレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン等の炭素数が3〜20の環状オレフィン類等を併用してもよい。
【0020】
上記エチレン・α―オレフィン共重合体は、以下の要件a1)およびa2)のうち少なくとも一つの要件を満たすことが好ましく、以下の要件a1)およびa2)をともに満たすことが特に好ましい。
【0021】
(要件a1)
ASTM D1505に準拠して測定されるエチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、好ましくは0.865〜0.890g/cm、より好ましくは0.866〜0.885g/cm、さらに好ましくは0.866〜0.884g/cm、特に好ましくは0.867〜0.880g/cmである。エチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、エチレン単位の含有割合とα−オレフィン単位の含有割合とのバランスにより調整することができる。すなわち、エチレン単位の含有割合を高くすると結晶性が高くなり、密度の高いエチレン・α−オレフィン共重合体を得ることができる。一方、エチレン単位の含有割合を低くすると結晶性が低くなり、密度の低いエチレン・α−オレフィン共重合体を得ることができる。
【0022】
エチレン・α−オレフィン共重合体の密度が上記上限値以下であると、結晶性がより適度となり、得られる太陽電池封止材の透明性をより高くすることができる。
【0023】
一方、エチレン・α−オレフィン共重合体の密度が上記下限値以上であると、十分に架橋させられるため、太陽電池封止材の耐熱性の低下をより抑制することができる。
【0024】
(要件a2)
ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるエチレン・α−オレフィン共重合体のメルトフローレ−ト(MFR)は、通常0.1g/10分以上50g/10分以下であり、好ましくは1g/10分以上40g/10分以下であり、より好ましくは2g/10分以上30g/10分以下であり、さらに好ましくは5g/10分以上10g/10分以下である。
エチレン・α−オレフィン共重合体のMFRは、重合反応の際の重合温度、重合圧力、並びに重合系内のエチレンおよびα−オレフィンのモノマー濃度と水素濃度のモル比率等を調整することにより、調整することができる。
【0025】
MFRが0.1g/10分以上10g/10分未満であると、カレンダー成形によって好適にシートを製造することができる。MFRが0.1g/10分以上10g/10分未満であると、エチレン・α−オレフィン共重合体を含む樹脂組成物の流動性が低いため、シートと電池素子をラミネートする際にはみ出した溶融樹脂によるラミネート装置の汚れを防止できる点で好ましい。
【0026】
さらに、MFRが2g/10分以上、好ましくはMFRが10g/10分以上であると、エチレン・α−オレフィン共重合体を含む樹脂組成物の流動性が向上し、シート押出成形時の生産性を向上させることができる。MFRが50g/10分以下であると、分子量が大きくなるため、チルロール等のロール面への付着を抑制できるため、剥離を不要とし、均一な厚みのシートに成形することができる。さらに、「コシ」がある樹脂組成物となるため、0.1mm以上の厚いシートを容易に成形することができる。また、太陽電池モジュールのラミネート成形時の架橋特性が向上するため、十分に架橋させて、耐熱性の低下を抑制することができる。MFRが27g/10分以下であると、さらに、シート成形時のドローダウンを抑制でき幅の広いシートを成形でき、また架橋特性および耐熱性がさらに向上し、最も良好な封止シートを得ることができる。
太陽電池モジュールのラミネート工程において樹脂組成物の架橋処理を行わない場合は、溶融押出工程において架橋剤の分解の影響が小さいため、MFRが0.1g/10分以上10g/10分未満、好ましくは0.5g/10分以上8.5g/10分未満の樹脂組成物を用い、押出成形によってシートを得ることもできる。樹脂組成物中の架橋剤の含有量が0.15質量部以下である場合には、MFRが0.1g/10分以上10g/10分未満の樹脂組成物を用い、シラン変性処理、または微架橋処理を行いつつ170〜250℃の成形温度で押出成形によってシートを製造することもできる。MFRがこの範囲にあると、シートを太陽電池素子にラミネートする際にはみ出した溶融樹脂によるラミネート装置の汚れを防止できる点で好ましい。
【0027】
(エチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法)
エチレン・α−オレフィン共重合体は、以下に示す種々のメタロセン化合物を触媒として用いて製造することができる。メタロセン化合物としては、例えば、特開2006−077261号公報、特開2008−231265号公報、特開2005−314680号公報等に記載のメタロセン化合物を用いることができる。ただし、これらの特許文献に記載のメタロセン化合物とは異なる構造のメタロセン化合物を使用してもよいし、二種以上のメタロセン化合物を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
エチレン・α−オレフィン共重合体の重合は、従来公知の気相重合法、およびスラリー重合法、溶液重合法等の液相重合法のいずれでも行うことができる。好ましくは溶液重合法等の液相重合法により行われる。
【0029】
<有機過酸化物>
本実施形態の太陽電池封止材用樹脂組成物は、架橋剤(有機過酸化物)を含む。太陽電池封止材用樹脂組成物に有機過酸化物を含有させることによって、例えば、上記エチレン・α-オレフィン共重合体にシランカップリング剤をグラフトすることができたり、上記エチレン・α-オレフィン共重合体を架橋することができたりする。これにより、得られる太陽電池封止材の耐熱性および耐候性がより良好となる。
太陽電池モジュールの生産性を考慮すると、上記有機過酸化物としては、半減期が10時間以下であり、かつ分解温度が105℃以下であるものが好ましい。また安全性の面から、最高保存温度が10℃以上であるものが好ましい。
また、上記有機過酸化物は、押出成形、カレンダー成形等のシート成形での生産性と太陽電池モジュールのラミネート成形時の架橋速度のバランスから、有機過酸化物の1分間半減期温度が100℃以上170℃以下であるものが好ましい。有機過酸化物の1分間半減期温度が100℃以上であると、シート成形をより容易にし、かつ、太陽電池封止材シートの外観をより良好にすることができる。また、得られる太陽電池封止材シートの絶縁破壊電圧の低下をより一層防ぐことができ、透湿性の低下も防止でき、更に接着性も向上する。有機過酸化物の1分間半減期温度が170℃以下であると、太陽電池モジュールのラミネート成形時の架橋速度の低下を抑制できるため、太陽電池モジュールの生産性の低下を防ぐことができる。また、太陽電池封止材シートの耐熱性、接着性の低下を防ぐこともできる。
【0030】
上記有機過酸化物の例としては、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジベンゾイルパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーフタレート、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキセン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、1,1−ジ(t−アミルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−アミルパーオキシ)シクロヘキサン、t−アミルパーオキシイソノナノエート、t−アミルパーオキシノルマルオクトエート、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−アミル−パーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソノナノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−ジ(ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)プチレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、エチル−3,3−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブチレート、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、1,1,3,3−テトララメチルブチルハイドロパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等が挙げられる。上記有機過酸化物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
これらのうち好ましくは、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキセン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエートである。
【0031】
当該太陽電池封止材用樹脂組成物中の上記有機過酸化物の含有量は、エチレン・α−オレフィン共重合体と潤滑油との合計を100質量部としたとき、0.1質量部以上1.5質量部以下が好ましく、0.2質量部以上1.2質量部以下がより好ましく、0.2質量部以上1.0質量部以下がさらに好ましい。有機過酸化物の含有量が上記下限値以上であると、太陽電池封止材用樹脂組成物の架橋特性がより良好となり、耐熱性がより一層向上する。また、シランカップリング剤のエチレン・α−オレフィン共重合体の主鎖へのグラフト反応をより良好にして、耐熱性、接着性がより一層良好となる。また、有機過酸化物の含有量が上記上限値以下であると、上記の架橋特性、耐熱性、接着性がより良好な上に、シート成形時のゲル化をより一層抑制でき、シート外観がより良好な太陽電池封止材を得ることができる。さらに、有機過酸化物の分解生成物等の発生量が一層低下し、太陽電池封止材中に気泡が発生するのをより一層抑制することができる。
【0032】
<潤滑油>
本実施形態の太陽電池封止材用樹脂組成物は、エチレン・α−オレフィン共重合体と潤滑油との合計を100質量部としたとき、潤滑油の含有量が6質量部以上、好ましくは8質量部以上、より好ましくは10質量部以上であり、潤滑油の含有量が48質量部以下、好ましくは45質量部以下、より好ましくは35質量部以下である。
潤滑油の含有量が上記下限値以上であると、太陽電池封止材用樹脂組成物および太陽電池封止材の柔軟性を向上させることができ、薄肉化された太陽電池素子であっても、ラミネート加工時の割れ、欠けを防止することができる。潤滑油の含有量が上記上限値以下であると、ペレットおよびシートでのブロッキング性を抑制でき、封止材の押出生産性を損なうことなく、またシートの繰り出し性を悪化させることなくハンドリング性に優れる。また、架橋特性も良好で、耐熱性に優れる。
【0033】
潤滑油の40℃における動粘度が20.0mm/s以上、好ましくは32.0mm/s以上、より好ましくは50.0mm/s以上であり、潤滑油の40℃における動粘度が2,500mm/s以下、好ましくは1,500mm/s以下、より好ましくは1,200mm/s以下、さらに好ましくは1,000mm/s以下、特に好ましくは500mm/s以下である。
潤滑油の40℃における動粘度が上記下限値以上であると、太陽電池封止材用樹脂組成物および太陽電池封止材の高温環境下での潤滑油のブリードアウトを抑制でき、長期の耐熱性が良好である。潤滑油の40℃における動粘度が上記上限値以下であると、太陽電池封止材用樹脂組成物および太陽電池封止材の保管時の潤滑油のブリードアウトを抑制できる。
【0034】
さらに、上記潤滑油の臭素価が1g−Br/100g以下であることも好ましい態様の一つである。上記臭素価が上記上限値以下であると、有機過酸化物により発生したラジカルが潤滑油同士の架橋で消費されることを抑制でき、エチレン・α−オレフィン共重合体の架橋反応に有機過酸化物を効果的に用いることができるので、得られる太陽電池封止材の耐熱性がより良好となる傾向にある。上記潤滑油の臭素価はJIS K2605に準じて測定できる。
【0035】
潤滑油は、従来公知の潤滑油を用いることができる。潤滑油としては、例えば、パラフィン系オイル、炭化水素系合成油等が挙げられる。
パラフィン系オイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル(例えば、ダイアナプロセスオイル(登録商標)(出光興産社製))、流動パラフィン(例えば、モレスコホワイト(登録商標)(MORESCO社製))等が挙げられる。
上記炭化水素系合成油としては、例えば、エチレン・α−オレフィンコオリゴマー(例えば、三井化学社製のルーカント(登録商標))、ポリ−α−オレフィン(例えば、エクソンモービル社製のSpectraSyn(商標登録))等が挙げられる。
これらの中でも、耐熱性、柔軟性、シートおよびペレットのブロッキング性のバランスにより優れる観点から、パラフィン系オイル好ましく、パラフィン系プロセスオイルがより好ましい。
【0036】
当該太陽電池封止材用樹脂組成物中の上記エチレン・α−オレフィン共重合体および潤滑油の合計含有量は、当該太陽電池封止材用樹脂組成物全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上である。これにより、透明性、接着性、耐熱性、柔軟性、架橋特性、電気特性等の諸特性のバランスにより優れた太陽電池封止材を得ることができる。
【0037】
<その他の添加剤>
本実施形態の太陽電池封止材用樹脂組成物には、上述のエチレン・α-オレフィン共重合体、架橋剤(有機過酸化物)、および潤滑油以外の各種成分を、本発明の目的を損なわない範囲において、適宜含有させることができる。
例えば、シランカップリング剤、架橋助剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、酸化防止剤、充填剤、顔料、染料、帯電防止剤、抗菌剤、防黴剤、難燃剤、および分散剤等から選ばれる一種または二種以上の添加剤を適宜含有させることができる。
【0038】
(シランカップリング剤)
本実施形態の太陽電池封止材用樹脂組成物はシランカップリング剤を含有してもよい。このシランカップリング剤を含有することにより、得られる太陽電池封止材と他の部材との接着強度をより優れたものにすることができる。
上記シランカップリング剤としては、アルコキシ基を有するケイ素化合物が好ましい。このようなケイ素化合物としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。中でも3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0039】
当該太陽電池封止材用樹脂組成物中の上記シランカップリング剤の含有量は、エチレン・α−オレフィン共重合体と潤滑油との合計を100質量部としたとき、0.01質量部以上5質量部以下が好ましく、0.1質量部以上4質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上2質量部以下がさらに好ましく、0.1質量部以上1質量部以下がさらにより好ましく、0.1質量部以上0.5質量部以下が特に好ましい。
【0040】
上記シランカップリング剤の含有量が上記下限値以上であると、太陽電池封止材と他の部材との接着強度をより良好なものとすることができる。
一方、上記シランカップリング剤の含有量が上記上限値以下であると、太陽電池モジュールのラミネート時にシランカップリング剤をエチレン・α-オレフィン共重合体にグラフト反応させるために使用する有機過酸化物の添加量を抑制できる。また、シランカップリング剤同士の縮合を抑制し、接着強度をより良好なものとすることができる。
【0041】
(架橋助剤)
本実施形態の太陽電池封止材用樹脂組成物は、架橋助剤を含有してもよい。
架橋助剤の例としては、ジビニルベンゼン、ジ−i−プロペニルベンゼン等のジビニル芳香族化合物;トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のシアヌレート化合物;ジアリルフタレート等のジアリル化合物;ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等のトリルアリル化合物;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物;p−キノンジオキシム、p−p'−ジベンゾイルキノンジオキシム等のオキシム化合物;m−フェニレンジマレイミド等のマレイミド化合物が挙げられる。
【0042】
架橋助剤としてはビニル基等の架橋性不飽和結合を1分子中に3官能以上有する化合物が好ましく、中でも、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートが、架橋性が良好でより好ましい。
当該太陽電池封止材用樹脂組成物中の上記架橋助剤の含有量は、エチレン・α−オレフィン共重合体と潤滑油との合計を100質量部としたとき、10質量部以下が好ましく、0.15質量部以上5質量部以下がより好ましい。これにより、適度な架橋構造を有する太陽電池封止材が得られ、太陽電池封止材の耐熱性、機械物性、接着性をより良好なものとすることができる。
【0043】
(紫外線吸収剤)
本実施形態の太陽電池封止材用樹脂組成物は紫外線吸収剤を含有してもよい。
紫外線吸収剤の例としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ノルマル−オクチルオキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ第3ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−第3オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;フェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレート等のサリチル酸エステル系紫外線吸収剤等が挙げられる。
当該太陽電池封止材用樹脂組成物中の上記紫外線吸収剤の含有量は、エチレン・α−オレフィン共重合体と潤滑油との合計を100質量部としたとき、例えば、0.005質量部以上3質量部以下である。
【0044】
(ヒンダードアミン系光安定剤)
本実施形態の太陽電池封止材用樹脂組成物はヒンダードアミン系光安定剤を含有してもよい。
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(下記の式(1)で示される化合物)、メタクリル酸1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル(下記の式(2)で示される化合物)、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル(下記の式(3)で示される化合物)、1,6−ヘキサンジアミン,N,N'−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−,ポリマーウィズモルホリン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン(下記の式(4)で示される化合物)、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンエタノールの重合物等が挙げられる。
【0045】
【化1】
【0046】
【化2】
【0047】
【化3】
【0048】
【化4】
【0049】
ここで、式(4)中のnは2以上10以下の整数であることが好ましく、2以上5以下の整数であることがより好ましい。
【0050】
当該太陽電池封止材用樹脂組成物中の上記ヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、エチレン・α−オレフィン共重合体と潤滑油との合計を100質量部としたとき、0.01質量部以上1質量部以下が好ましく、0.02質量部以上0.8質量部以下がより好ましく、0.05質量部以上0.5質量部以下がさらに好ましく、0.05質量部以上0.3質量部以下が特に好ましい。
ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が上記下限値以上であると、得られる太陽電池封止材の耐候性および耐熱性のバランスをより良好なものとすることができる。ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が上記上限値以下であると、有機過酸化物で発生したラジカルの消滅をより抑制でき、得られる太陽電池封止材の接着性、耐熱性、架橋特性のバランスをより良好なものとすることができる。
【0051】
(酸化防止剤)
本実施形態の太陽電池封止材用樹脂組成物は酸化防止剤を含有してもよい。
酸化防止剤としては、例えば、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4'−ジイルビスホスフォナイト、およびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等のホスファイト系酸化防止剤;3−ヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン−2−オンとo−キシレンとの反応生成物等のラクトン系酸化防止剤;3,3',3",5,5',5"−ヘキサ−tert−ブチル−a,a',a"−(メチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ベンジルベンゼン、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のヒンダードフェノール系酸化防止剤;硫黄系酸化防止剤;アミン系酸化防止剤等を挙げることができる。また、これらを一種単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることもできる。中でも、ホスファイト系酸化防止剤、およびヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
当該太陽電池封止材用樹脂組成物中の上記酸化防止剤の含有量は、エチレン・α−オレフィン共重合体と潤滑油との合計を100質量部としたとき、例えば、0.005質量部以上1質量部以下である。
【0052】
[太陽電池封止材]
本実施形態の太陽電池封止材は、上記太陽電池封止材用樹脂組成物により構成されたものであれば特に制限はないが、その全体形状がシート状であることが好ましい。また、本実施形態の太陽電池封止材は上記太陽電池封止材用樹脂組成物からなるシートのみからなるものであっても上記太陽電池封止材用樹脂組成物からなる層と、他の層とを積層した2層以上からなる積層体であってもよいが、本実施形態の上記太陽電池封止材用樹脂組成物からなるシートのみが好ましい。
太陽電池封止材シートの厚みは特に限定されないが、通常0.2〜1.2mm程度である。厚みがこの範囲内であると、ラミネート工程における、表面側透明保護部材、太陽電池素子、薄膜電極等の破損が抑制でき、かつ、十分な光線透過率を確保することにより高い光発電量を得ることができる。さらには、低温での太陽電池モジュールのラミネート成形ができるので好ましい。
【0053】
<ヤングモジュラス>
本実施形態の太陽電池封止材は、下記方法により測定されるヤングモジュラスが25MPa以下であることが好ましく、20MPa以下であることがより好ましく、10MPa以下であることがさらに好ましく、8MPa以下であることが特に好ましい。本実施形態の太陽電池封止材の上記ヤングモジュラスの下限値は特に限定されないが、例えば、2MPa以上が好ましい。
上記ヤングモジュラスが上記上限値以下であると、太陽電池封止材の柔軟性がより良好となり、得られる太陽光発電モジュールにおいて、薄肉化された太陽電池素子の欠け、割れの発生をより一層抑制することができる。一方、上記ヤングモジュラスが上記下限値以上であると、ブリードアウトをより一層抑制することができ、外観および取扱い性のバランスにより一層優れた太陽電池封止材を得ることができる。
(方法)
上記太陽電池封止材を150℃で3分間真空減圧した後、150℃で10分間加熱して架橋硬化させることで上記太陽電池封止材の架橋体を得る。次いで、JIS−K7113に準じて、スパン間:40mm、引張速度:100mm/min、23℃の条件で、得られた上記架橋体のヤングモジュラスを測定する。
【0054】
<ゲル分率>
本実施形態の太陽電池封止材は、下記方法により測定されるゲル分率が30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。本実施形態の太陽電池封止材の上記ゲル分率の上限値は特に限定されないが、例えば、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。
上記ゲル分率が上記下限値以上であると、太陽電池封止材の耐熱性がより良好となる。一方、ゲル分率が上記上限値以下であると、太陽電池封止材の柔軟性がより良好となる。
(方法)
上記太陽電池封止材を150℃で3分間真空減圧した後、150℃で10分間加熱して架橋硬化させることで上記太陽電池封止材の架橋体を得る。次いで、得られた上記架橋体約1g(秤量値をA(g))をキシレン100mLに仕込み、110℃で12時間静置する。得られた抽出液を30メッシュのステンレスメッシュでろ過し、上記ステンレスメッシュを110℃にて8時間減圧乾燥を行い、上記ステンレスメッシュ上の残存量B(g)を算出し、下記式を用いてゲル分率を算出する。
ゲル分率(質量%)=100×B/A
【0055】
<太陽電池封止材シートの製造方法>
本実施形態の太陽電池封止材シートの製造方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、エチレン・α-オレフィン共重合体と、潤滑油と、有機過酸化物と、必要に応じてその他の添加剤と、をドライブレンドする。次いで、得られた混合物をホッパーから押出機に供給して必要に応じて有機過酸化物の一時間半減期温度よりも低い温度で溶融混練する。その後、押出機の先端からシート状に押出成形して太陽電池封止材シートを製造する。成形は、T−ダイ押出機、カレンダー成形機、インフレーション成形機等を使用する公知の方法によって行なうことができる。
また、有機過酸化物を含まない太陽電池封止材シートを上記方法により作製し、作製したシートに有機過酸化物を含浸法により添加してもよい。なお、有機過酸化物が二種以上含有されている場合には、最も低い有機過酸化物の一時間半減期温度よりも低い温度にて溶融混練すればよい。
【0056】
[太陽電池モジュール]
本実施形態の太陽電池封止材は、太陽電池モジュールにおいて、太陽電池素子を封止するために用いられる。
太陽電池モジュールの構成としては、例えば表面側透明保護部材/受光面側太陽電池封止材シート/太陽電池素子/裏面側太陽電池封止材シート/裏面側保護部材(バックシート)をこの順に積層した構成が挙げられるが、特に限定されない。
本実施形態の太陽電池封止材は、上記受光面側太陽電池封止材シートおよび裏面側太陽電池封止材シートのいずれか一方、あるいは両方に用いられる。なお、受光面側太陽電池封止材シートや裏面側太陽電池封止材シート等の太陽電池封止材を架橋させて形成された層を封止層とも呼ぶ。
【0057】
図1に、本実施形態の太陽電池モジュールの断面図の一例を示す。
太陽電池モジュール10は、複数の太陽電池素子13と、太陽電池素子13を挟んで封止する一対の受光面側太陽電池封止材シート11と裏面側太陽電池封止材シート12、および表面側透明保護部材14および裏面側保護部材(バックシート)15とを備える。
【0058】
(太陽電池素子)
太陽電池素子13としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン等のシリコン系、ガリウム−砒素、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルル等のIII−V族やII−VI族化合物半導体系等の各種太陽電池素子を用いることができる。
太陽電池モジュール10においては、複数の太陽電池素子13は、導線および半田接合部を備えたインターコネクタ16を介して電気的に直列に接続されている。
【0059】
(表面側透明保護部材)
表面側透明保護部材14としては、ガラス板;アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、フッ素含有樹脂等により形成された樹脂板等が挙げられる。
本実施形態の太陽電池封止材シートは、表面側透明保護部材14に対して良好な接着性を示す。
【0060】
(裏面側保護部材)
裏面側保護部材(バックシート)15としては、金属や各種熱可塑性樹脂フィルム等の単体もしくは多層のシートが挙げられる。例えば、錫、アルミ、ステンレススチール等の金属;ガラス等の無機材料;ポリエステル、無機物蒸着ポリエステル、フッ素含有樹脂、ポリオレフィン等により形成された各種熱可塑性樹脂フィルム等が挙げられる。
裏面側保護部材15は、単層であってもよく、複層であってもよい。
本実施形態の太陽電池封止材シートは、裏面側保護部材15に対して良好な接着性を示す。
【0061】
<太陽電池モジュールの製造方法>
本実施形態の太陽電池モジュールの製造方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、インターコネクタ16を用いて電気的に接続した複数の太陽電池素子13を一対の受光面側太陽電池封止材シート11と裏面側太陽電池封止材シート12で挟み、さらにこれら受光面側太陽電池封止材シート11と裏面側太陽電池封止材シート12を表面側透明保護部材14と裏面側保護部材15とで挟んで積層体を作製する。次いで、積層体を加熱して、受光面側太陽電池封止材シート11と裏面側太陽電池封止材シート12、受光面側太陽電池封止材シート11と表面側透明保護部材14、裏面側太陽電池封止材シート12と裏面側保護部材15とを接着する。
太陽電池モジュールの製造に当たっては、太陽電池封止材からなるシートを予め作っておき、封止材が溶融する温度で圧着するという従来同様のラミネート方法によって、例えば、ラミネート温度が145〜170℃、真空圧10Torr以下で、0.5〜10分間真空下で加熱する。次いで、大気圧による加圧を2〜30分間程度行い、既に述べたような構成のモジュールを形成することができる。この場合、太陽電池封止材は有機過酸化物を含有することで優れた架橋特性を有しており、モジュールの形成において二段階の接着工程を経る必要はなく、高温度で短時間に完結することができ、モジュールの生産性を格段に改良することができる。また、オーブン等を用いた二段階の接着工程を経ることも可能であり、二段階の接着工程を経る場合は、例えば、120〜170℃の範囲で1〜120分加熱し、モジュールを生産することも可能である。
【0062】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0064】
(1)測定方法
[密度]
ASTM D1505に準拠して、エチレン・α−オレフィン共重合体の密度を測定した。
【0065】
[MFR]
ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件にてエチレン・α−オレフィン共重合体のMFRを測定した。
【0066】
(2)エチレン・α−オレフィン共重合体の合成
(合成例1)
撹拌羽根を備えた内容積50Lの連続重合器の一つの供給口に、共触媒としてメチルアルミノキサンのトルエン溶液を8mmol/hr、主触媒としてビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドのヘキサンスラリーを0.025mmol/hr、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液を0.6mmol/hrの割合で供給し、さらに触媒溶液と重合溶媒の合計が20L/hrとなるように脱水精製したノルマルヘキサンを連続的に供給した。同時に重合器の別の供給口に、エチレンを3kg/hr、1−ブテンを15kg/hr、水素を1.5NL/hrの割合で連続供給し、重合温度90℃、全圧3MPaG、滞留時間1.0時間の条件下で連続溶液重合を行った。
重合器で生成したエチレン・α−オレフィン共重合体のノルマルヘキサン/トルエン混合溶液は、重合器の底部に設けられた排出口を介して連続的に排出させ、エチレン・α−オレフィン共重合体のノルマルヘキサン/トルエン混合溶液が150〜190℃となるように、ジャケット部が3〜25kg/cmスチームで加熱された連結パイプに導いた。なお、連結パイプに至る直前には、触媒失活剤であるメタノールが注入される供給口が付設されており、約0.75L/hrの速度でメタノールを注入してエチレン・α−オレフィン共重合体のノルマルヘキサン/トルエン混合溶液に合流させた。
スチームジャケット付き連結パイプ内で約190℃に保温されたエチレン・α−オレフィン共重合体のノルマルヘキサン/トルエン混合溶液は、約4.3MPaGを維持するように、連結パイプ終端部に設けられた圧力制御バルブの開度の調整によって連続的にフラッシュ槽に送液された。なお、フラッシュ槽内への移送においては、フラッシュ槽内の圧力が約0.1MPaG、フラッシュ槽内の蒸気部の温度が約180℃を維持するように溶液温度と圧力調整バルブ開度設定が行われた。その後、ダイス温度を180℃に設定した単軸押出機を通し、水槽にてストランドを冷却し、ペレットカッターにてストランドを切断し、ペレットとしてエチレン・α−オレフィン共重合体を得た。
得られたエチレン・α−オレフィン共重合体の物性を表1に示す。
【0067】
(合成例2および3)
合成例1の重合条件を元に、各種供給量等を調整し、エチレン・α−オレフィン共重合体を得た。
得られたエチレン・α−オレフィン共重合体の物性を表1に示す。
【0068】
(合成例4)
主触媒としてビス(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1,4,4,7,7,10,10−オクタメチル−1,2,3,4,7,8,9,10−オクタヒドロジベンズ(b,h)−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドのヘキサン溶液を0.003mmol/hr、共触媒としてメチルアルミノキサンのトルエン溶液を3.0mmol/hrの割合でそれぞれ供給したこと;エチレンを4.3kg/hrの割合で供給したこと;1−ブテンの代わりに1−オクテンを6.4kg/hrの割合で供給したこと;1−オクテンと触媒溶液と重合溶媒として用いる脱水精製したノルマルヘキサンの合計が20L/hrとなるように脱水精製したノルマルヘキサンを連続的に供給したこと;水素を10NL/hrの割合で供給したこと;および重合温度を130℃にしたこと以外は、合成例1と同様にしてエチレン・α−オレフィン共重合体を得た。
得られたエチレン・α−オレフィン共重合体の物性を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
(3)潤滑油
潤滑油としては、表2に示す潤滑油を用いた。
【0071】
【表2】
【0072】
[実施例1]
<太陽電池封止材シートの作製>
上記合成例1で得られたエチレン・α−オレフィン共重合体85質量部と、潤滑油3として三井化学社製ルーカントHC−40を15質量部に対して、架橋剤(有機過酸化物)としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネートを0.7質量部、架橋助剤としてトリアリルイソシアヌレートを1.2質量部、シランカップリング剤として3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを0.4質量部、ヒンダードアミン系光安定剤としてビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートを0.2質量部、紫外線吸収剤として2−ヒドロキシ−4−ノルマル−オクチルオキシベンゾフェノンを0.4質量部、酸化防止剤1としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを0.1質量部、酸化防止剤2としてトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトを0.1質量部それぞれ配合し、組成物を得た。
東洋精機社製ラボプラストミルに上記組成物を仕込み、100℃、回転数30rpmにて5分間混練した。次いで、100℃、0MPaで3分プレスし、100℃、10MPaで2分プレスし、冷却プレスにて10MPaで3分プレスすることで、厚さ0.5mmのシートを得た。
このようにして得られた太陽電池封止材シートについて、次のヤングモジュラス、ゲル分率、シートのベタツキ性、120℃×500時間後のシート外観の評価を行った。
得られた評価結果を表3に示す。
【0073】
<ヤングモジュラス>
作製した太陽電池封止材シートの両面からシリカコーティングされたPETフィルムで太陽電池封止材シートを挟んだ。このとき、PETフィルムのシリカコーティング面をそれぞれ封止材シート側にして封止材シートを挟んだ。次いで、得られた積層体を真空ラミネーター内の150℃に温調したホットプレート上に載せて、3分間真空減圧した後、10分間加熱した。得られた積層体よりPETフィルムを剥ぎ取り、厚さ0.5mmの太陽電池封止材シートの架橋体を作製した。
JIS−K7113に準じて、スパン間:40mm、引張速度:100mm/min、23℃の条件で、得られた架橋体のヤングモジュラスを測定した。
【0074】
<ゲル分率>
上記ヤングモジュラスの測定で作成した架橋シートサンプル約1gを秤量し(秤量値をA(g))、キシレン100mLに仕込み、110℃の防爆オーブンに12時間静置した。次いで、30メッシュのステンレスメッシュでろ過後、ステンレスメッシュを110℃にて8時間減圧乾燥を行った。ステンレスメッシュ上の残存量B(g)を測定し、下記式を用いてゲル分率を算出した。
ゲル分率(質量%)=100×B/A
【0075】
<シートのベタツキ性>
得られた太陽電池封止材シートを23℃、50%湿度の恒温恒湿室でシートを2枚重ねた状態で2日間保管した。保管後のシートのベタツキ性を評価した。
評価「◎」:保管後のシート表面に滑りも液状のブリード物もなく、シートがベタつかずに剥がれる。実用上問題なし。
評価「〇」:保管後のシート表面に滑りがあり、シートが少しベタつくが剥がれる。実用上問題なし。
評価「×」:保管後のシート表面に液状のブリード物があり、シートがベタつき手に液状物が付着する。実用上問題あり。
【0076】
<120℃×500時間後のシート外観>
上記ヤングモジュラスの測定で作成した架橋シートサンプルを、120℃のオーブン中に500時間吊るし、シートの外観を評価した。
評価「◎」:試験後のシート表面に滑りも液状のブリード物もない。実用上問題なし。
評価「〇」:試験後のシート表面に滑りがあり、シートが少しベタつく。実用上問題なし。
評価「×」:試験後のシート表面に液状のブリード物があり、シートがベタつく。実用上問題あり。
【0077】
[実施例2〜6、比較例1〜4]
表3に示す配合にした以外は実施例1と同様にして太陽電池封止材シートを作製し、上記評価をおこなった。
得られた評価結果を表3に示す。
【0078】
【表3】
【0079】
表3から明らかなように、40℃における動粘度が20.0mm/s以上2,500mm/s以下である潤滑油を、エチレン・α−オレフィン共重合体と潤滑油との合計100質量部に対し、6質量部以上48質量部以下の範囲で用いた実施例1〜6の太陽電池封止材シートは柔軟性の指標であるヤングモジュラス、架橋特性の指標であるゲル分率、ブリードアウトの指標であるシートのベタツキ性や120℃×500時間後のシート外観の各種評価結果に優れていた。すなわち、実施例の太陽電池封止材シートはブリードアウトが少なく、柔軟性および架橋特性のバランスに優れていた。
一方、40℃における動粘度が20.0mm/s未満の潤滑油を用いた比較例1の太陽電池封止材シートは120℃×500時間後のシート外観に劣っていた。すなわち、比較例1の太陽電池封止材シートはブリードアウトが多かった。
また、40℃における動粘度が2,500mm/sを超える潤滑油を用いた比較例2の太陽電池封止材シートはシートのベタツキ性や120℃×500時間後のシート外観に劣っていた。すなわち、比較例2の太陽電池封止材シートはブリードアウトが多かった。
また、40℃における動粘度が20.0mm/s以上2,500mm/s以下である潤滑油を、エチレン・α−オレフィン共重合体と潤滑油との合計100質量部に対し、4質量部用いた比較例3の太陽電池封止材シートはヤングモジュラスが高く、柔軟性に劣っていた。
40℃における動粘度が20.0mm/s以上2,500mm/s以下である潤滑油を、エチレン・α−オレフィン共重合体と潤滑油との合計100質量部に対し、50質量部用いた比較例4の太陽電池封止材シートはシートのベタツキ性や120℃×500時間後のシート外観に劣っていた。すなわち、比較例4の太陽電池封止材シートはブリードアウトが多かった。
以上から、本発明によれば、ブリードアウトが少なく、柔軟性および架橋特性のバランスに優れた太陽電池封止材用樹脂組成物および該樹脂組成物を用いた太陽電池封止材を提供することができることが理解できる。
【0080】
この出願は、2015年10月30日に出願された日本出願特願2015−213871号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
図1