特許第6449481号(P6449481)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6449481
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】錠前装置および施錠装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 71/00 20060101AFI20181220BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20181220BHJP
   E05B 67/00 20060101ALI20181220BHJP
   B62H 5/14 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
   E05B71/00 G
   E05B49/00 J
   E05B67/00
   B62H5/14
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-548168(P2017-548168)
(86)(22)【出願日】2015年3月12日
(65)【公表番号】特表2018-514665(P2018-514665A)
(43)【公表日】2018年6月7日
(86)【国際出願番号】EP2015000551
(87)【国際公開番号】WO2016141948
(87)【国際公開日】20160915
【審査請求日】2017年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】597149146
【氏名又は名称】ドイッチェ テレコム アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120363
【弁理士】
【氏名又は名称】久保田 智樹
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ,セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィントイザー,ヨルグ
(72)【発明者】
【氏名】シュミットガブリエル,ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ショール,ヨハネス
【審査官】 秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】 実開平2−130969(JP,U)
【文献】 特開2006−63776(JP,A)
【文献】 特開2012−225017(JP,A)
【文献】 特開2006−316601(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0235705(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 71/00−73/02
B62H 5/14
E05B 49/00
E05B 67/00−67/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の錠前本体(2)と第2の錠前本体(3)とを含んでおり、前記第1および第2の錠前本体(2、3)が互いに係止可能である、錠前装置、特に南京錠または自転車用錠前であって、
前記第1および第2の錠前本体(2、3)から独立して形成された施錠装置(1)、特に電気機械的な施錠装置(1)を含んでおり、
前記施錠装置(1)は、第1の部分領域(1a)が前記第1の錠前本体(2)に、第2の部分領域(1b)が前記第2の錠前本体(3)に差し込み可能であり、
前記部分領域(1a、1b)は、各前記部分領域(1a、1b)を各前記錠前本体(2、3)に係止するための少なくとも1つの舌要素(5)をそれぞれ備えていることを特徴とする、錠前装置。
【請求項2】
錠前装置、特に請求項1に記載の錠前装置の施錠装置であって、
第1の部分領域(1a)と第2の部分領域(1b)とを備えており、
前記第1の部分領域(1a)は錠前装置の第1の錠前本体(2)に、前記第2の部分領域(1b)は特に同じ錠前装置の第2の錠前本体(3)に差し込み可能であり、
前記部分領域(1a、1b)は、各前記部分領域(1a、1b)を各前記錠前本体(2、3)に係止するための少なくとも1つの舌要素(5)をそれぞれ備えていることを特徴とする、施錠装置。
【請求項3】
前記施錠装置(1)は、前記第1および第2の錠前本体(2、3)によってその全体を包囲可能であり、特に、2つの錠前本体(2、3)によって共同で形成される内部空間に完全に収容可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記施錠装置(1)の両方の前記部分領域(1a、1b)は、少なくとも舌の配置に関して鏡面対称に形成されていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
施錠装置(1)の各部分領域(1a、1b)を収容可能な前記錠前本体(2、3)の前記内部領域は同一形状であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
両方の部分領域(1a、1b)の前記舌要素(5)は、前記施錠装置(1)のハウジングに対して退出および進入可能な物体、特に移動を阻止され得る物体として形成されており、
前記物体は、施錠の際に前記錠前本体(2、3)の対応する逃げ溝/凹部に係合可能であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
各舌要素(5)の移動方向は、施錠装置(1)および各錠前本体(2、3)の差し込み方向に対して垂直であることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
両方の部分領域(1a、1b)の前記舌要素(5)は、共通の駆動装置、または前記舌要素の移動を阻止する共通の要素を備えていることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記部分領域(1a、1b)の少なくとも一方、特に前記部分領域(1a、1b)の少なくとも一方の、施錠装置(1)および各錠前本体(2、3)の差し込み方向に対して垂直に配置された端面(1c)には、施錠装置(1)と錠前本体(2、3)の少なくとも一方との間で電気信号を伝送するための少なくとも1つのインターフェース(6)が配置されており、
特に、前記インターフェース(6)を介して、錠前本体(2、3)の電気安全ループおよび/またはアンテナ、および/または前記錠前本体の少なくとも一方の入力部を、前記施錠装置(1)内の電子機器に接続可能であることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記錠前本体の少なくとも一方には、少なくとも1つの入力部、特にキーパッドまたはタッチセンサー式ディスプレイが配置されており、
前記入力部のデータ、特にPINコードのデータが、特に施錠および/または解錠の目的で、前記錠前本体の少なくとも一方と前記施錠装置との間のインターフェースを用いて前記施錠装置に送信されることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記施錠装置および/または前記錠前本体の少なくとも一方は、前記施錠装置を施錠および/または解錠するために用いる少なくとも1つのセキュリティコード、特にPINコードが保存された記憶装置を備えており、
特に、前記記憶装置の内容を遠距離通信によって変更可能であることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記錠前本体(2、3)の少なくとも一方は施錠機構を備えており、
前記施錠機構は、前記施錠装置(1)の前記部分領域(1a、1b)の少なくとも一方の少なくとも1つの舌要素(5)を用いて作動可能であることを特徴とする、請求項1または3乃至11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
両方の前記錠前本体(2、3)は独立した部品として形成されており、またはバンド/ベルト/チューブ/ケーブルを介して互いに接続されており、
特に、バンド/ベルト/チューブ/ケーブルは、前記錠前本体(2、3)間の少なくとも1つの電線を形成する、または含むことを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記施錠装置(1)は遠距離通信部を含んでおり、
前記遠距離通信部と使用者の特に携帯型の通信機器との間の遠距離通信によって、前記施錠装置(1)の少なくとも1つのアクチュエータを施錠および/または解錠の目的で制御可能であることを特徴とする、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
少なくとも1つの、請求項1または3乃至14のいずれか1項に記載の錠前装置と、少なくとももう1対の錠前本体(2、3)とを含むセットであって、
特に、前記もう1対の錠前本体が前記錠前装置の前記1対の錠前本体とは異なっている、セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の錠前本体と第2の錠前本体とを含んでおり、第1および第2の錠前本体が互いに係止可能である錠前装置、特に南京錠または自転車用錠前に関する。また、本発明は、錠前装置の施錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
錠前装置は従来技術において、例えば典型的な形態では、南京錠または自転車用錠前としても知られており、あるいは可動な物体を固定するための錠前装置として一般に知られている。
【0003】
一般的な構成では、この種の錠前装置は2つの錠前本体を備えており、これらの錠前本体は、その意図された場所で分離され得ないように互いに接続および係止することが可能である。
【0004】
南京錠の場合、例えばシリンダー錠またはダイヤル錠型の施錠装置を含む第1の本体と、ツルによって形成される第2の錠前本体とによって錠前本体が形成される。典型的に、このような第2の錠前本体を形成するツルは、その一方の端部で第1の錠前本体と移動可能かつ取り外し不可能に接続されており、両方の錠前本体を互いに係止するための施錠装置は、第1の錠前本体と分離不可能に一体化されている。
【0005】
また、従来技術において知られている、例えば自転車を固定するために使用される錠前装置では、第1の錠前本体から完全に取り外すことができる第2の錠前本体がツルによって形成されている。しかし、この形態でも同様に、施錠装置の閉鎖機構全体が第1の錠前本体と分離不可能に一体化されている。
【0006】
このように、従来技術による錠前装置は、常に自己完結型の機能ユニットを形成している。これはつまり、使用者は、錠前装置を異なる用途に使用するために、同時使用ではない場合にも、用途に対応する錠前装置を常に使用しなければならず、それぞれの錠前装置用の専用の鍵を保管しなければならない、または、少なくとも数字の組み合わせが自由に選択可能でない限り、専用の数字の組み合わせを覚えておかなければならない、ということである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の課題は、特に異なる用途であっても使用者が常に同じように錠前本体を開放あるいは互いに分離することができるように、より普遍的に使用可能な錠前装置、およびこの錠前装置とともに使用可能な施錠装置、あるいはこれらの装置を含むセットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、冒頭で言及した種類の錠前装置であって、第1および第2の錠前本体から独立して形成された施錠装置、特に電気機械的な施錠装置をさらに含む錠前装置によって解決される。この施錠装置は、第1の部分領域が第1の錠前本体に、第2の部分領域が第2の錠前本体に差し込み可能であり、部分領域は、各部分領域を各錠前本体に係止するための少なくとも1つの舌要素をそれぞれ備えている。
【0009】
さらに、上記課題は、第1の部分領域と第2の部分領域とを備えた施錠装置によって解決される。第1の部分領域は錠前装置の第1の錠前本体に、第2の部分領域は特に同じ錠前装置の第2の錠前本体に差し込み可能であり、部分領域は、各部分領域を各錠前本体に係止するための少なくとも1つの舌要素をそれぞれ備えている。
【0010】
本発明の本質的な中心思想は、これまでの従来技術に反して、錠前本体から構造的に独立したユニットで施錠装置を形成することである。したがって、このような施錠装置は、第1の対の錠前本体とも、少なくとももう1対の、場合によっては任意の多数の対の錠前本体とも使用することができ、異なる対の錠前本体を異なる使用例に適合させることができる。
【0011】
例えば、ある1対の錠前本体はこのような施錠装置とともに南京錠型の錠前装置を形成することができ、または、他の1対の錠前本体は自転車用錠前を形成することができる。その際、用途の種類および数は無制限であり、異なる用途のそれぞれにおいて常に同じ施錠装置を使用することができる。
【0012】
このことは特に有利である。というのは、そうすれば使用者は、このような施錠装置を使用するために施錠装置に対して1つの方法でアクセス/開放するだけでよく、したがって全ての対の錠前本体を同じように施錠/開放することができるからである。
【0013】
一般に施錠装置の施錠機構は、特に高い安全等級を満たさなければならない場合には、特に高価であるので、このことはコストの観点からも有利である。本発明による施錠装置は多重使用が可能であるので、そのような施錠機構を一度入手するだけでよい。
【0014】
本発明では、本発明による錠前装置の2つの錠前本体が互いに直接係止されるのではなく、構造的に独立した施錠装置を介して間接的に係止されるように構成されている。つまり、第1の錠前本体は施錠装置と係止可能であり、それによって開放の権限無しにこれらを互いから分離することができなくなり、同様に、第2の錠前本体は、開放の権限無しに互いから分離することができないように施錠装置に係止可能である。
【0015】
このように、錠前本体同士を係止する必要はなく、錠前本体はそれぞれ施錠装置と係止されるので、互いには間接的にのみ係止される。ただし、ある形態では、追加的に錠前本体同士を係止するように構成することもできる。
【0016】
このように、他の物体を固定することが必ずしも意図されていない錠前装置も形成することができる。本発明において2つの錠前本体と称される2つの部分を有する物体であって、存在する権限、すなわち施錠装置を解錠する権限が与えられている場合のみこれらの部分を互いから分離することができる物体を、錠前装置自体が形成することができる。
【0017】
本発明の好ましい一形態では、錠前本体から構造的に独立した施錠装置は、第1および第2の錠前本体によってその全体を包囲可能であるように構成することができる。これは特に、施錠装置が2つの錠前本体によって共同で形成される内部空間に完全に収容可能であることと理解される。この場合、施錠装置が両方の錠前本体のそれぞれと係止した後には、この施錠装置に外部からアクセスすることができなくなる。
【0018】
この場合、施錠装置と好ましくは携帯型である通信機器(例えば、携帯電話)との間の無線通信によって、施錠装置の解錠、場合によっては施錠をも行うことが特に有利である。このために、施錠装置は一体型の電子機器、例えば通信部を含むことができる。
【0019】
しかし、電子/電気インターフェースを施錠装置と錠前本体の少なくとも一方との間に設け、このインターフェースを介して、解錠および/または施錠の目的で、錠前本体の一方または両方の信号を、例えば錠前本体の少なくとも一方の入力部(例えば、キーパッドまたはタッチセンサー式ディスプレイ)から施錠装置に伝送可能であるように構成することもできる。
【0020】
したがって、このような入力部に入力可能なデータ、例えば施錠および/または解錠のためのセキュリティコード、例えばPINコードを、このようなインターフェースを介して該当する錠前本体と施錠装置との間で内部的に伝送することができる。
【0021】
このような入力部を備えた錠前本体および/または施錠装置には、施錠装置を施錠および/または解錠するための少なくとも1つのセキュリティコード、特にPINコードを保存可能な記憶装置を設けることができる。
【0022】
本発明では、この記憶装置が、例えば遠距離通信によって、好ましくは移動体通信ネットワーク(例えば、GSM(登録商標))を介して外部から変更可能であるように構成することができる。このように、例えばセキュリティコードを変更することができる。
【0023】
その際、例えば使用者の複数の施錠装置を同じセキュリティコードによって施錠および/または解錠することができるとともに、これらの複数の施錠装置の全てにおいて、有効なセキュリティコードをそれぞれの記憶装置に入力可能、あるいは全ての記憶装置において変更可能であるように構成することもできる。これは例えば、遠距離通信ネットワーク、例えば移動体通信ネットワークからサーバーを介して集中方式で行うことができる。このように、例えば使用者はワンステップで、実質的に同時に、彼の全ての施錠装置をセキュリティコードに関してプログラム変更することができる。
【0024】
施錠装置を錠前本体に一体的に収容することが容易に行えるように、施錠装置の両方の部分領域が、少なくとも舌の配置に関して、好ましくは外形形状全体に関して、対称面に対して鏡面対称、あるいは互いに同一形状であるように構成することができる。好ましくは、部分領域は互いに直接隣接しており、あるいは数学的な対称面のみによって分離されている。
【0025】
これに応じて、施錠装置の各部分領域を収容可能な錠前本体の内部領域も同一形状とすることができる。
【0026】
これによって、施錠装置の第1の部分領域だけでなく第2の部分領域も第1の錠前本体の内部領域に差し込み可能であることも保証される。第2の錠前本体についても同様である。したがって、使用者は、施錠装置をどの方向で錠前本体に挿入すべきかに注意しなくてもよい。
【0027】
好ましい一形態では、施錠装置の両方の部分領域のそれぞれの幾何学的形状、およびこれらの部分領域を収容する錠前本体の内部領域のそれぞれの幾何学的形状は、互いに対応する雄形および雌形として形成される。
【0028】
部分領域を対称に形成することが好ましいが、その代わりに部分領域を異なる形状とすることもできる。なおその場合、部分領域にそれぞれ割り当てられた錠前本体の内部領域は、収容すべき部分領域に明確に適合している。
【0029】
好ましい一構成では、施錠装置は単純な幾何学的基本形状、例えば、好ましくは錠前本体への挿入を容易にするために角が丸められた直方体形状を有することができる。この形態では、あるいは一般的にも、施錠装置の延在方向に沿って2つの部分領域への分割を行うことができる。特に、この方向で施錠装置を両方の部分領域に半分に分割することができる。
【0030】
部分領域当たり少なくとも1つの舌要素のみが、好ましくは部分領域当たり2つの互いに対向する舌要素のみが、施錠装置のハウジング、好ましくは幾何学的基本形状として形成されるハウジングの外側輪郭から外側へ突出する。場合によっては、錠前本体の一方または両方と機械的および/または電気的に協働する機能要素(場合によっては部分領域毎に同一)もハウジングの外側輪郭から外側へ突出してもよい。
【0031】
本発明では、両方の部分領域の舌要素が、施錠装置のハウジングに対して退出および進入可能な物体、特に移動を阻止され得る物体として形成されており、この物体が、施錠の際に錠前本体の対応する逃げ溝または凹部に係合可能であるように構成することができる。
【0032】
このような物体あるいは舌要素に対して、特に、磁性を有する、または磁化可能な舌要素のそれぞれに対して好ましくは反発的に作用する、好ましくは各永久磁石の各磁界によって外側に向かう方向に力を加える、またはばね荷重を加えることができる。これによって、舌要素/物体は、挿入の際に錠前本体内部の対応する凹部/逃げ溝に自動的に嵌まり込む。舌要素の移動が阻止されることによって、なおさらに施錠も実現される。
【0033】
施錠装置の全ての舌要素、または少なくとも各部分領域の全ての舌要素は、好ましくはアクチュエータによって動作させることができる共通の阻止要素、例えば施錠装置の長さ方向に摺動可能な阻止スライドによって、その移動が阻止され得るように構成することができる。このために、移動を阻止する阻止要素の領域を各舌要素の後方へ移動させることができ、そうすれば各舌要素は外側へ変位した位置をとる。
【0034】
しかし、舌要素、あるいは舌要素を形成する可動な物体を、好ましくはハウジングの外側輪郭から突出した位置、またはハウジング内に後退した位置のそれぞれに、アクチュエータによって積極的に移動させることもできる。
【0035】
このために、レバー、伝動装置、または少なくとも1つの電磁駆動装置も設けることができ、特に後者の場合、磁気的に作用する力によって、両方の位置の少なくとも一方または両方へ舌を移動させることができる。このために、舌は、好ましくは磁性を有するように、または少なくとも磁化可能に設計されており、舌を各位置へ操作できるための少なくとも1つの制御可能な電磁石と協働する。
【0036】
この場合も、ばね荷重または磁気的に生成された力によって、好ましくはハウジングの輪郭から突出した施錠位置へ、舌要素に予荷重を加えることができ、電磁的に生成された磁力によって舌要素を少なくとも一時的に後退させることができる。
【0037】
両方の部分領域の舌要素は、好ましくは共通の駆動装置を備えることができる。しかし、ある構成では、独立した駆動装置/アクチュエータを各部分領域の舌に対して設けることもでき、特にそれによって、両方の錠前本体の一方のみを選択的に施錠装置から解放するという可能性がもたらされる。
【0038】
全ての形態において、好ましくは各舌要素の移動方向が施錠装置および各錠前本体の差し込み方向に対して垂直である構造的配置とすることができる。
【0039】
さらに、本発明では、部分領域の少なくとも一方、特に施錠装置および各錠前本体の差し込み方向に対して垂直に配置された部分領域の少なくとも一方の端面に、施錠装置と各錠前本体との間で電気信号を送信するためのインターフェースを配置するように構成することができる。
【0040】
冒頭で既に言及したように、このようなインターフェースは、施錠装置と錠前本体の少なくとも一方との間で電気/電子信号(特にデータも)を伝送することができる。
【0041】
ここで、ある形態では、インターフェースを介して、錠前本体の電気安全ループおよび/またはアンテナを、施錠装置の電子機器と接続可能であるよう構成することもできる。このように、例えば、錠前本体の一方または両方に配置された導線の切断の有無を、安全ループ、特に錠前本体を接続する安全ループにおいて、例えば抵抗測定、または電流および/または電圧測定によって調べることができる。
【0042】
例えば錠前本体の少なくとも一方の外側で、このようなインターフェースを介してアンテナを施錠装置と接続することによって、錠前本体が金属製であり、したがって電子機器内に形成された通信部が施錠装置内部で遮蔽されるような場合にも、良好な無線受信がさらに確保される。
【0043】
これまでに挙げた全ての形態と組み合わせ可能な一発展形態では、錠前本体の少なくとも一方が施錠機構を備えており、この施錠機構が、施錠装置の部分領域の少なくとも一方の少なくとも1つの舌要素を用いて作動可能であるように構成することもできる。
【0044】
この場合、錠前本体同士を特に直接的にさらに係止させることができる錠前本体の施錠機構は、施錠装置の舌の駆動装置を利用する。したがって、この駆動装置が作動されることによって、錠前本体の一方または両方の施錠機構が同時に作動される。
【0045】
ある形態では、両方の錠前本体を独立した部品として形成することができる。しかし、これらの錠前本体を、例えば、バンド、ベルト、チューブ、またはケーブルを介して互いに接続することもできる。ここに挙げた要素は、特に破損の有無が確認された安全ループを形成するために、錠前本体間の少なくとも1つの電線を形成することができる。
【0046】
施錠装置は、好ましくは遠距離通信部を、特に冒頭で既に言及した電子機器内に、または電子機器から独立して含むことができる。この遠距離通信部と使用者の特に携帯型の通信機器との間の遠距離通信によって、施錠装置の少なくとも1つのアクチュエータを施錠および/または解錠の目的で制御することができる。このようなアクチュエータは、前述の阻止要素であってもよく、または舌要素自体が直接駆動されてもよい。
【0047】
これは例えば、使用者の携帯通信機器上のアプリケーションを介して行うことができる。通信は近距離(好ましくは100メートル未満、10メートル未満、または1メートル未満)から、例えばBluetooth(登録商標)、WLAN、RFIDを介して行うことができる。移動体通信ネットワークを介して移動体無線通信を確立することもできる。この場合、施錠装置は好ましくはSIMカード機能を備えている。例えば、SMSまたはその他の短いメッセージを施錠装置の通信部に送信することによって、施錠装置を施錠および/または解錠することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明における錠前装置の図である。
図2図1における施錠装置の他の1対の錠前本体との使用状況を示す図である。
図3】施錠装置における舌要素の駆動装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
実施例について、以下の図面に基づいて説明する。
【0050】
図1には、本発明による施錠装置1と2つの錠前本体2、3とによって形成された、本発明による錠前装置の第1の実施形態が示されている。
【0051】
施錠装置1は、錠前本体から構造的に独立したユニットであり、図1に破線で示された対称面Eの両側に同一形状の2つの部分領域1a、1bを備えている。対称面Eはこれらの領域を施錠装置の長さ方向に分離する。
【0052】
部分領域は、それぞれ各錠前本体2、3の対応する内部領域に収容されるように構成されている。つまり、ここでは、図1に関して両方の錠前本体2、3をそれぞれ部分領域1a、1bへ変位させることができ、それによって、施錠装置が両方の錠前本体の内部に完全に収容され、外部からアクセス不可能/不可視となる。
【0053】
施錠装置を介して互いに間接的に係止固定可能な両方の錠前本体は、ここではツル4を有しているので、施錠装置への装着後に南京錠型の錠前装置を形成する。
【0054】
施錠装置は、各部分領域の角部分に舌要素5を備えており、この舌要素5は、施錠装置1と錠前本体2、3との間を差し込み方向に対して垂直に移動可能であり、この図示の退出位置において移動を阻止され得る。このために、施錠装置に配置される電気機械的な作動装置を設けることができる。
【0055】
錠前本体2、3の方を向く端面1cおよび/または1dには、錠前本体と協働する機能要素6を設けることができる。ここでは、機能要素6は端面1cに設けられている。このような協働は、機械的または電気的/電子的なものであってもよい。例えば、この協働によって、電気信号、例えば無線信号を伝送することができる。
【0056】
図2には、図1で説明したものと同じ施錠装置1の、他の1対の錠前本体2、3との使用状況が示されている。ここでは両方の錠前本体2、3がベルトあるいはバンド7によって互いに接続されている。例えば、同様に錠前本体2、3を接続する電線を、ベルト7を貫通するように通すことができる。
【0057】
図2から明らかなように、使用者は、同じ施錠装置1を異なる対の錠前本体2、3とともに使用することができ、これによってさまざまな用途を開発することが可能になる。図2では、例えばベルトが自転車の開口部/車輪を通して導かれる自転車用錠前の用途である。
【0058】
図3には、施錠装置1における舌要素5の駆動装置の可能な変形例が示されている。例えば、回転可能な円板に偏心して連結されたレバー8からなる機構を介して、舌要素5が施錠位置と解放位置との間を変位可能であるように構成することができる。
【0059】
他の変形例では、磁性を有する、または少なくとも磁化可能な舌要素5を、電磁石9を用いて解錠位置に引き寄せるように構成することができる。施錠位置へは、舌要素5に対して例えば永久磁界によって力を加える、またはばね荷重を加えることができる。ここで、互いに対向する2つの舌要素5、特に部分領域1a、1bの一方の舌要素5には、共通の電磁石によって力が作用してもよい。もう一方の部分領域の舌要素5は同一の配置である。
【0060】
図示していないが、施錠装置1には通信部が設けられている。また、例えばハウジングの外側に配置された充電ソケットを介して充電可能、または誘導充電可能な充電式蓄電池を用いて電力が供給される。この通信部を介して、使用者の好ましくは携帯型の通信機器からの施錠および/または解錠の指令を受信することができる。
図1
図2
図3