(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筒状の筐体と、溶融部を介して前記筐体の一方の端部側に接合されるダイアフラムと、前記筐体内に配置され、前記ダイアフラムが受けた圧力が伝達されるセンサ部と、を備え、
前記溶融部は、前記ダイアフラムの外表面である第1の面から前記筐体の他方の端部側に向かって延びるように形成されており、
前記ダイアフラムは、
前記筐体内で露出する側の面である第2の面において、該露出する面の外周に沿って連続して設けられた凹部であるスリットと、
前記溶融部の表面上または前記溶融部よりも前記筐体の中心軸側であって前記中心軸からの距離が最も遠い前記スリット上の点に囲まれると共に、前記第1の面上の圧力に応じて変位する領域である変位領域と、を備え、
前記筐体と前記ダイアフラムとに囲まれた空間において、前記ダイアフラムの前記第2の面上における前記スリットの開口部の内周を通過して前記中心軸に垂直な面よりも前記一方の端部側には、スリット空間が形成されており、
前記中心軸を含む断面における前記中心軸を間に挟んだ各々の側では、前記筐体の前記一方の端部の端面と前記ダイアフラムとが接する界面に相当する第1の直線上において、前記溶融部が占める範囲における前記中心軸からの距離が最も近い点を第1の最内点Eとすると共に、前記第1の直線上において、前記スリット空間および前記スリット空間と連通する空間の外壁が占める範囲における前記中心軸からの距離が最も遠い点を第1の最外点Aとして、前記中心軸から前記第1の最内点Eまでの距離である距離EDと、前記中心軸から前記第1の最外点Aまでの距離である距離ADと、を比較すると、AD≦EDが成立する圧力センサにおいて、
前記中心軸を含む断面における前記中心軸を間に挟んだ各々の側では、
前記第1の直線上において、前記筐体の前記一方の端部の端面の内周に対応する点が存在する場合には、前記筐体の前記一方の端部の端面の内周に対応する点を第1の内周点Kとすると共に、前記第1の直線上において、前記スリットの前記開口部の前記内周に対応する点である境界点Fよりも前記中心軸から離間する点であって、前記スリットの表面との境界に対応する点が存在する場合には、前記スリットの表面との境界に対応する点を第2の内周点Lとして、
前記中心軸から前記第1の内周点Kまでの距離である距離KDと、前記中心軸から前記第2の内周点Lまでの距離である距離LDとを比較すると、
KD≦LDが成立し、
前記第1の直線上において、前記境界点Fよりも前記中心軸から離間する点であって、前記スリット空間および前記スリット空間と連通する空間の外壁が占める範囲における前記中心軸からの距離が最も近い点を第2の最内点Dとして、
前記中心軸から前記境界点Fまでの距離である距離FDと、前記中心軸から前記第2の最内点Dまでの距離である距離DDと、前記距離ADとを比較すると、
FD<DD≦ADが成立し、
前記中心軸から前記第1の最内点Eまでの距離である前記距離EDと、前記中心軸から前記境界点Fまでの距離である前記距離FDとを比較すると、FD≧0.6EDが成立することを特徴とする
圧力センサ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
A.第1の実施形態の圧力センサの全体構成:
図1は、本発明の第1の実施形態としての圧力センサ10を示す説明図である。本実施形態の圧力センサ10は、内燃機関に取り付けられて、内燃機関の燃焼室内の圧力を検出するために用いられる。
図1に示すように、圧力センサ10は、主な構成要素として、筒状の第1金具20および第2金具30と、受圧部40と、素子部50と、ケーブル60と、を備える。なお、本明細書では、圧力センサ10において中心軸Oに沿って第2金具30側を「先端側」と呼び、第1金具20側を「後端側」と呼ぶ。
図1、および、後述する
図2、6、7では、先端側に向かう方向を、矢印Xによって示している。
【0016】
図1では、圧力センサ10の後端側、および、先端側における中心軸Oから紙面右側に、外観構成を図示している。また、先端側における中心軸Oから紙面左側に、断面構成を図示している。本実施形態では、圧力センサ10の中心軸Oは、第1金具20、第2金具30、受圧部40、および素子部50の各部材における中心軸でもある。
【0017】
第1金具20および第2金具30は、中心軸Oに垂直な断面(以下、横断面とも呼ぶ)が円環状であって中心軸O方向に延びる筒形状を有している。本実施形態では、第1金具20および第2金具30はステンレス鋼により形成しているが、低炭素鋼など他種の鋼を用いてもよい。
【0018】
第1金具20には、中心軸Oを中心とする貫通孔である軸孔21が形成されている。また、第1金具20の後端側外周面には、ねじ部22および工具係合部24が設けられている。ねじ部22は、圧力センサ10を内燃機関のシリンダヘッドに固定するためのねじ溝を備えている。工具係合部24は、圧力センサ10の取り付けおよび取り外しに用いられる工具(図示しない)に係り合う外周形状(例えば、横断面が六角形)を有する部位である。
【0019】
図2は、圧力センサ10の先端部、具体的には
図1に領域Yとして示す部位を拡大して示す断面図である。第2金具30は、第1金具20の先端側に配置されており、第1金具20の先端との間で溶融部26を介して接合されている。第2金具30の先端部には、先端側から後端側に向かって拡径する拡径部34が形成されている。圧力センサを内燃機関に取り付ける際には、上記拡径部34において、圧力センサ10が内燃機関のシリンダヘッドに気密に接する。また、第2金具30には、中心軸Oを中心とする貫通孔である軸孔31が形成されている。軸孔31内には、先端側から後端側に向かって順に、受圧部40、素子部50、および押さえねじ32が配置されている。
【0020】
受圧部40は、ダイアフラム42およびロッド44を備える。ダイアフラム42は略円形の膜状の部材であり、第2金具30の先端において、溶融部45を介して、軸孔31を塞ぐように第2金具30に溶接されている。
【0021】
ダイアフラム42は、圧力センサ10の最先端で内燃機関の燃焼室内に露出して受圧面を構成し、燃焼室内の圧力に応じて変形する。ロッド44は、中心軸O方向に延びる円柱状部材であって、先端側の面がダイアフラム42に接続しており、ダイアフラム42の変形と共に変位して、ダイアフラム42が受けた圧力を荷重に変換して後端側の素子部50に伝達する。ダイアフラム42を薄くするほど、ダイアフラム42が変形し易くなるため、圧力センサ10の感度を高めることができる。また、ロッド44を太くするほど、ダイアフラム42が受けた圧力を後端側に伝達し易くなるため、圧力センサ10の感度を高めることができる。本実施形態では、ダイアフラム42およびロッド44をステンレス鋼により形成しているが、異なる金属により形成してもよい。ダイアフラム42およびロッド44は、削り出しあるいは鍛造により一体形成してもよく、また、両者を別々に形成した後に溶接等により一体化してもよい。
【0022】
また、本実施形態では、ダイアフラム42において、ダイアフラム42の厚みを局所的に薄くしたスリット43を形成することにより、ダイアフラム42における圧力に対する変形量を増大させ、センサ感度を高めている。本実施形態の圧力センサ10は、ダイアフラム42および第2金具30に対するスリット43および溶融部45の配置に係る態様に特徴があるが、これらについては後に詳しく説明する。
【0023】
素子部50は、圧電素子51、電極板53、および絶縁板55が各1個ずつと、第1パッキン52および第2パッキン54が各2個ずつとによって構成されている。
図2に示すように、素子部50では、先端側から後端側に向かって、第2パッキン54、第1パッキン52、圧電素子51、第1パッキン52、電極板53、第2パッキン54、および絶縁板55の順で各部材が積層されている。
【0024】
図3は、素子部50を構成する各部材の外観を表わす斜視図である。
図3(A)に示すように、圧電素子51および第1パッキン52は、円盤状の板状部材である。また、
図3(B)に示すように、第2パッキン54および絶縁板55は、円環状の板状部材である。圧電素子51は、本実施形態では水晶等により形成されているが、他種の材料から成る素子を用いてもよい。圧電素子51は、受圧部40から伝達された荷重を電荷に変換して、ダイアフラム42の変形量に応じた信号(電圧信号)を出力する。第1パッキン52および第2パッキン54は、本実施形態ではステンレス鋼により形成しているが、他種の金属により形成してもよい。第1パッキン52は、圧電素子51で生じた電荷を伝達するための部材である。絶縁板55は、電極板53と押さえねじ32との間を絶縁するための部材である。本実施形態では絶縁板55はアルミナにより形成しているが、他種の絶縁性材料により形成してもよい。
【0025】
図3(C)に示すように、電極板53は略円盤状の板状部材である円盤部57と、円盤部57の略円形の面から垂直方向に延びる端子部56と、を備える。電極板53は、本実施形態ではステンレス鋼により形成しているが、他種の金属により形成してもよい。電極板53は、円盤部57と端子部56とを合わせた形状をステンレス鋼の平板から打ち抜いた後に、端子部56となる部分を折り曲げることにより作製することができる。
【0026】
図2に戻り、押さえねじ32は、素子部50に対して予荷重を印加するための部材である。押さえねじ32は、本実施形態ではステンレス鋼により形成しているが、他種の金属により形成してもよい。押さえねじ32の外表面には雄ねじ部37が形成されており、第2金具30の軸孔31の内壁面における後端近傍には、雄ねじ部37に対応する雌ねじ部38が形成されている。また、押さえねじ32には、中心軸Oを中心とする貫通孔である軸孔36が形成されている。
【0027】
第2金具30の軸孔31内において、電極板53は、円盤部57が第1パッキン52と面接触すると共に、端子部56が後端側に延びるように配置される。このとき、端子部56は、電極板53よりも後端側に配置された第2パッキン54と接触しないように、第2パッキン54および絶縁板55の中央部の穴を貫通する。また、端子部56は、押さえねじ32の軸孔36の内壁面から離間した状態で、軸孔36内を貫通する。さらに、第2金具30の軸孔31内において、素子部50を構成する各部材は、第2金具30の内壁面から離間するように配置される。これにより、圧電素子51の後端側の面の電荷は、短絡することなく電極板53の端子部56によって後端側へと伝えられる。素子部50においては、圧電素子51に掛かる荷重を均等にするために、圧電素子51の後端側だけでなく先端側にも第2パッキン54が配置されている。
【0028】
なお、本実施形態において、第2金具30が、課題を解決する手段における「筐体」に相当する。また、圧電素子51が、課題を解決する手段における「センサ部」に相当する。また、中心軸Oに沿って先端側が、課題を解決する手段における「一方の端部側」に相当し、後端側が、課題を解決する手段における「他方の端部側」に相当する。
【0029】
図2に示すように、第1金具20の軸孔21内には、ケーブル60が配置されており、ケーブル60は、後述するように、細径導線74および平板導線75を介して電極板53の端子部56に接続されている。このケーブル60は、圧電素子51の電荷に基づいて内燃機関の燃焼圧を検出するための図示しない集積回路に対して、圧電素子51の電荷を伝えるための部材である。なお、
図2では、ケーブル60については、断面ではなく外観の様子が示されている。
【0030】
図4は、ケーブル60の構成を示す説明図である。本実施形態では、ケーブル60として、多層構造を有するいわゆるシールド線を用いてノイズを低減している。
図4(A)では、ケーブル60の中心軸Axから紙面右側に外観構成を図示し、中心軸Axから紙面左側に断面構成を図示している。また、
図4(B)では、
図4(A)におけるB−B断面の様子を示している。ケーブル60は、中央部に複数の導線を備える内部導体65が配置されると共に、内部導体65の径方向外側を絶縁体64が囲み、絶縁体64の外周面に導電コーティング63が設けられ、さらに径方向外側には網シールドである外部導体62が設けられ、外表面はジャケット61によって被覆されている。
【0031】
図4(A)に示すように、ケーブル60の先端部では、ジャケット61に覆われた部分から先端側に向かって、ジャケット61に覆われない外部導体62が露出している。また、外部導体62が露出する部分から先端側に向かって、外部導体62に覆われない絶縁体64が露出している。さらに、絶縁体64が露出する部分から先端側に向かって、絶縁体64に覆われない内部導体65が露出している。
【0032】
図2に示すように、ケーブル60の先端部で露出する内部導体65は、細径導線74および平板導線75を介して端子部56に接続されている。具体的には、内部導体65の先端には、平板導線75が溶接されており、平板導線75の先端には、コイル状に巻回された細径導線74の後端が溶接されており、細径導線74の先端は、端子部56の後端部に溶接されている。ここで平板導線75は、内部導体65よりも狭く、細径導線74よりも広い幅を有している。そして、平板導線75は、内部導体65よりも小さく、細径導線74よりも大きい体積を有している。これにより、圧電素子51の電荷を、端子部56を介して内部導体65に伝達可能になっている。
【0033】
なお、端子部56の先端から、端子部56と細径導線74とを接続する溶接部よりも後端側の位置まで、端子部56の全体、および、細径導線74の先端部を含む範囲が、熱収縮チューブ72によって覆われている。これにより、端子部56と押さえねじ32との間の電気的な絶縁の信頼性が高められている。圧力センサ10を製造する際には、上記した端子部56を有する電極板53と細径導線74との溶接による一体化と、熱収縮チューブ72による被覆とを、全体の組み立てに先立って行なえばよい。
【0034】
また、ケーブル60では、
図2に示すように、外部導体62の先端からさらに先端側に延びるように、外部導体62から連続して形成された撚り線から成る接地導線76が設けられている。接地導線76の先端部は、押さえねじ32の後端部に溶接されている。これにより、外部導体62は、接地導線76、押さえねじ32、第2金具30、および内燃機関のシリンダヘッドを通じて接地される。
【0035】
図5は、組み付け前の第2金具30と、受圧部40と、押さえねじ32とを表わす説明図である。圧力センサ10を製造する際には、第2金具30の先端側から軸孔31内にロッド44を挿入し、ダイアフラム42と第2金具30とを溶接して、溶融部45を形成する(
図2参照)。その後、第2金具30の後端側から軸孔31内に、素子部50を配置する。その際、素子部50を構成する電極板53は、既述したように細径導線74および熱収縮チューブ72と一体化しておけばよい。その後、押さえねじ32の軸孔36の先端側から細径導線74を挿入し、後端側から細径導線74を引き出した状態で、押さえねじ32の雄ねじ部37を、第2金具30の軸孔31の内壁面に形成された雌ねじ部38にねじ止めして、素子部50に予荷重を印加する(
図2参照)。
【0036】
そして、押さえねじ32の後端側から引き出された細径導線74の後端、および、内部導体65の先端を、平板導線75と溶接する。また、接地導線76の先端部と押さえねじ32の後端部とを溶接する。さらに、ケーブル60を第1金具20の軸孔21内に通して(図示せず)、第1金具20の先端と第2金具30の後端とを溶接し、溶融部26を形成する(
図1および
図2参照)。その後、第1金具20の軸孔21内に溶融ゴムを注入して軸孔21内をゴム層で満たし(図示せず)、圧力センサ10を完成する。上記ゴム層を形成することにより、圧力センサ10内の防水性を向上させ、かつ、防振性も高めている。なお、軸孔21内に注入するために、溶融ゴムに代えて溶融樹脂を用いてもよい。
【0037】
B.スリットおよび溶融部の位置関係:
図6は、圧力センサ10の先端部の様子を拡大して示す断面図であり、中心軸Oを含む断面の様子を表わしている。
図6では、
図1および
図2とは異なり、先端側に向かう方向が紙面上方側となるように表わしている。また、
図6では、中心軸Oを含み、紙面左側の様子のみを表わしているが、本実施形態の圧力センサ10の断面は、中心軸Oを対称軸として、左右対称の形状を有している。
【0038】
図6に示すように、ダイアフラム42は、溶融部45を介して第2金具30に接合されている。すなわち、ダイアフラム42は、溶接によって第2金具30に接合されており、その結果、ダイアフラム42と第2金具30とが溶け合った溶融部45が形成されている。本実施形態では、上記溶接は、レーザ溶接としている。レーザ溶接に用いるレーザとしては、例えば、YAGレーザあるいは炭酸ガスレーザを用いることができる。
【0039】
ダイアフラム42を第2金具30に溶接する動作は、圧力センサ10の先端側から後端側に向かって、ダイアフラム42の外周の全周に沿ってレーザを照射することにより行なっている。その結果、溶融部45は円環状に形成される。本実施形態では、照射軸が中心軸Oに平行になるようにレーザ照射を行なっているが、異なる角度で行なってもよい。レーザ溶接を行なう際の発振方式は、断続的にレーザ光を照射するパルスレーザと、連続的にレーザ光を照射するCWレーザとのいずれであってもよく、溶融部45が円環状に連続して形成されて、第2金具30内の気密性が確保されていればよい。
【0040】
図6に示すように、ダイアフラム42には、圧力センサ10内で露出する面92において、圧力センサ10内で露出する面92の外周に沿って連続して設けられた凹部であるスリット43が形成されている。すなわち、スリット43は、ダイアフラム42における圧力センサ10内で露出する面92において、円環状に開口する凹部として形成されている。そして、ダイアフラム42における圧力センサ10内で露出する面92において、スリット43の内周と外周は、中心軸Oを中心とする同心円形状となっている。
【0041】
このようなスリット43を設けた箇所では、ダイアフラム42の厚みが薄くなる。そのため、ダイアフラム42において、圧力センサ10内で露出する面92の外周に沿ってスリット43を設けることで、ダイアフラム42における圧力に応じた変形量を増大させ、センサ感度を高めることができる。
【0042】
なお、ダイアフラム42において、圧力センサ10の外部に露出する外表面91(受圧面)が、課題を解決する手段における「第1の面」に相当する。また、ダイアフラム42において、圧力センサ10内で露出する面92が、課題を解決する手段における「第2の面」に相当する。また、ダイアフラム42において、溶融部45よりも第2金具30の中心軸O側であって中心軸からの距離が最も遠いスリット43上の点に囲まれた領域であって、第1の面91上の圧力に応じて変位する領域を、変位領域46と呼ぶ。
図6の断面では、変位領域46の外周の基準となる点、すなわち、ダイアフラム42において、溶融部45よりも第2金具30の中心軸O側であって中心軸からの距離が最も遠いスリット43上の点を、第2の境界点Gと呼ぶ。また、
図6に示す断面において、ダイアフラム42の面92におけるスリット43の開口部の内周に対応する点nを、第1の境界点Fと呼ぶ。第1の境界点Fが、課題を解決する手段における「境界点F」に相当する。
【0043】
圧力センサ10の内部では、受圧部40と第2金具30に囲まれる空間が形成されている。この空間の一部であって、既述した第1の境界点Fを通過して中心軸Oに垂直な面よりも先端側の部分を、スリット空間47と呼ぶ。
図6に示す断面では、第1の境界点Fを通過して中心軸Oに垂直な面を、境界面80として示している。また、上記空間の他の部分であって、スリット空間47と連通する空間を、内部空間48と呼ぶ。本実施形態では、内部空間48は、ロッド44の表面と、第2金具30の内表面とによって囲まれる空間である。
【0044】
ダイアフラム42の第2の面92では、スリット43よりも外周側の領域と、第2金具30の先端側端部の端面とが接している。
図6に示す断面では、第2金具30の先端側端部の端面とダイアフラム42とが接する界面に相当する直線を、第1の直線82として示している。また、
図6に示す断面では、第1の直線82上において、溶融部45が占める範囲における中心軸Oからの距離が最も近い点を第1の最内点Eとしており、スリット空間47および内部空間48の外壁が占める範囲における中心軸Oからの距離が最も遠い点を第1の最外点Aとしている。本実施形態では、中心軸Oから第1の最内点Eまでの距離である距離E
Dと、中心軸Oから第1の最外点Aまでの距離である距離A
Dと、を比較すると、以下の(1)式が成立する。
A
D≦E
D … (1)
この規定は、ダイアフラム42の第2の面92側に設けた凹部であるスリット43の開口部が、第2金具30の先端側端部の端面、および、溶融部45によって、完全に塞がれてはいないことを規定している。
【0045】
また、本実施形態では、
図6に示すように、第1の直線82上において、第2金具30の先端側端面の内周に対応する点を第1の内周点Kとすると共に、第1の直線82上において、第1の境界点Fよりも中心軸Oから離間する点であって、スリット43の表面との境界に対応する点を第2の内周点Lとしている。そして、中心軸Oから第1の内周点Kまでの距離である距離K
Dと、中心軸Oから第2の内周点Lまでの距離である距離L
Dとを比較すると、以下の(2)式が成立する。
K
D≦L
D … (2)
【0046】
さらに、本実施形態では、
図6に示すように、第1の直線82上において、第1の境界点Fよりも中心軸Oから離間する点であって、スリット空間47および内部空間48の外壁が占める範囲における前記中心軸からの距離が最も近い点を第2の最内点Dとしている。そして、中心軸Oから第1の境界点Fまでの距離である距離F
Dと、中心軸Oから第2の最内点Dまでの距離である距離D
Dと、中心軸Oから第1の最外点Aまでの距離である距離A
Dと、を比較すると、以下の(3)式が成立する。
F
D<D
D≦A
D … (3)
【0047】
このように規定することにより圧力センサ10におけるセンサ感度を高めると共に、センサ感度のばらつきを抑えることができる。
【0048】
図26は、本実施形態における既述した規定を満たさない圧力センサの一例を、
図6と同様の断面において示した説明図である。上記した(2)式の関係(K
D≦L
D)が成立することにより、
図26に示すような構成、具体的には、スリット43が、ダイアフラム42の第2の面92において圧力センサ10内で露出する領域の外周から中心軸O側に離間して設けられる構成が除外される。
【0049】
上記した(2)式(K
D≦L
D)および(3)式(F
D<D
D≦A
D)が成立することにより、変位領域46をより大きく確保することができるため、圧力センサ10の感度を高めることができる。特に、
図6に示すように、ダイアフラム42の第2の面92におけるスリット43の開口の一部が、第2金具30の先端側端面によって覆われており、以下の(2)’式および(3)’式が成立することが望ましい。
K
D<L
D … (2)’
F
D<D
D<A
D … (3)’
これにより、圧力センサ10の感度をより高めることができる。
【0050】
また、上記した(2)式および(3)式が成立することにより、例えば溶融部45の位置が多少ばらついても、圧力センサ10の感度のばらつきを抑えることができる。(2)式および(3)式を成立させるためには、ダイアフラム42および第2金具30の加工の精度を確保すればよい。このような加工の精度を高めることに比べて、溶融部45を設ける位置の精度(レーザ照射の位置等の条件の精度)を高めることは、比較的困難である。特に、圧力センサ10を大量生産する場合には、溶融部45を設ける位置の精度を高めることが、困難になり易い。本実施形態によれば、溶融部の位置がある程度ばらついても、圧力センサ10の感度のばらつきを抑えることが可能になる。
【0051】
図27は、本実施形態の圧力センサ10における溶融部45に代えて、中心軸Oに垂直な方向にレーザ照射して溶融部145を設けた構成を、
図6と同様の断面において示す説明図である。
図27に示すように、第2金具30の先端側端面とダイアフラム42とが接する界面に沿って溶融部145を設けることも可能である。しかしながら、このような構成にすると、溶融部145の界面の一部、例えばダイアフラム42と接する側の界面、あるいは、第2金具30と接する側の界面にクラックが生じると、ダイアフラム42を含む部材が先端側に脱落する可能性が生じる。特に、
図27の構成では、荷重のかかる方向に対して略水平な方向に溶融部145の界面が存在するため、上記界面に沿ってクラックが広がり易いと考えられる。これに対して本実施形態のように、先端側から後端側に延びる形状の溶融部45を設ける場合には、溶融部45の界面の一部にクラックが生じても、他の部分によってダイアフラム42を含む部材を支えることが可能であり、ダイアフラム42を含む部材の脱落を抑制することができる。これにより、圧力センサ10の耐久性を高めることができる。
【0052】
なお、
図6では、ダイアフラム42においてロッド44が接続される箇所は、スリット43から離間しているが、ロッド44は、第1の境界点Fを含む領域においてダイアフラム42に接続していてもよい。すなわち、ダイアフラム42は、変位領域46におけるスリット43よりも中心軸側の領域全体において、ロッド44と接続していてもよい。
【0053】
C.スリット深さについて:
図6に示す断面では、スリット空間47の外周に相当する外周線上の点のうち、前記中心軸に対して垂直に投影したときの位置が最も先端側となる点を、最高点Iとし、最高点Iを通過して中心軸Oに平行な第2の直線84と、ダイアフラム42の第1の面91との交点を、外表点Jとしている。本実施形態では、第1の境界点Fおよび最高点Iを中心軸Oに対して垂直に投影したときの、投影後の各々の点間の距離をスリット深さhとし、第1の最外点Aおよび外表点Jを中心軸Oに対して垂直に投影したときの、投影後の各々の点間の距離を膜厚Hとしたときに、hとHの関係は任意に設定することが可能であるが、以下の(4)式が成立することが望ましく、以下の(4)’式が成立することがより望ましい。
(1/3)H≦h …(4)
(1/2)H≦h …(4)’
このような構成とすることで、圧力センサ10の感度を高めると共に、センサ感度のばらつき、特に、溶融部45の位置がばらついたときのセンサ感度のばらつきを抑える効果を高めることができる。
【0054】
図7は、ダイアフラム42の膜厚Hに対するスリット深さhの比率、すなわち、h/Hの値と、センサ感度との関係を調べた結果を示す図である。ここでは、スリット深さhおよび膜厚H以外は同じ条件で製造した複数の圧力センサを用意し、センサ感度を測定した。具体的には、ダイアフラム42の膜厚Hは、0.2mm、0.4mm、0.6mm、0.8mmの4種類を用意した。さらに、膜厚Hが異なる4種類のダイアフラム42の各々について、スリット深さhを6段階に異ならせて、圧力センサを作製した。すなわち、各々の膜厚H毎に、スリット深さhの比率h/Hが、0、0.18、0.33、0.50、0.70、0.85となるように、スリット深さhを異ならせた。h/Hが0とは、スリット43を設けていないセンサを表わす。
【0055】
なお、センサ感度の測定は、測定対象の圧力センサを加圧チャンバに取り付けて、圧力を印加し、圧力とセンサ出力との関係からセンサ感度を算出した。より具体的には、基準センサとなる圧力センサの測定値をX軸にとり(単位はMPa)、測定対象センサの測定値をY軸にとって(単位はpC)、リサージュ波形を作成し、その傾きをセンサ感度(pC/MPa)とした。
図7に示した各々のセンサ感度の測定結果は、用いた各サンプルについて数回(3〜5回)ずつ測定を行なって得た値の平均値を示す。なお、圧力センサの感度は、スリット深さの他に、後述するように溶融部45の位置の影響も受けるが、
図7では、溶融部45をスリット43に近づけて作製したサンプル(後述する内側固定溶融部45bを設けたサンプル)を用いた。
図7に示すように、ダイアフラム42の膜厚Hにかかわらず、スリット深さの比率h/Hの値が大きいほど、センサ感度が高まることが確認された。
【0056】
図8は、スリット深さの比率(h/H)と、センサ感度のばらつきとの関係を調べた結果を示す図である。ここでは、
図7と同様に、ダイアフラム42の膜厚Hを異ならせると共に、膜厚Hが異なる4種類のダイアフラム42の各々について、スリット深さhを6段階に異ならせて圧力センサを作製した。さらに、
図8では、膜厚Hとスリット深さhの組合せの各々について、溶融部45の位置の異なる圧力センサを用意した。
【0057】
図9は、膜厚Hとスリット深さhの組合せの各々について、溶融部45の位置を異ならせた様子を表わす説明図である。外周を破線で表わした溶融部(以下、外側固定溶融部45aとも呼ぶ)は、ダイアフラム42の外周に沿って形成されている。また、外周を二点鎖線で表わした溶融部(以下、内側固定溶融部45bとも呼ぶ)は、外側固定溶融部45aよりも中心軸Oに近い位置であって、内側固定溶融部45bの内周が既述した第2の内周点Lに接する位置に設けられている。
【0058】
図8の縦軸に示したセンサ感度の差(pC/MPa)は、膜厚Hとスリット深さhの組合せの各々について、外側固定溶融部45aを設けた圧力センサの感度と、内側固定溶融部45bを設けた圧力センサの感度との差を表わす。すなわち、センサ感度の差とは、溶融部45が形成される位置が、第2金具30の先端側端面とダイアフラム42との界面に収まる範囲内で変動したときに、溶融部45の位置の差が最も大きくなるセンサ間で、センサ感度の違いを求めたものである。このようにして求めたセンサ感度の差が小さいほど、溶融部45の位置がばらついても、センサ感度のばらつきが小さくなると評価することができる。
【0059】
なお、実際に上記したセンサ感度の差を求める際には、膜厚Hとスリット深さhの組合せの各々について、外側固定溶融部45aが形成されるようにダイアフラム42の径方向外側寄りに溶融部45を設けたセンサを複数用意すると共に、内側固定溶融部45bが形成されるようにスリット43寄りに溶融部45を設けたセンサを複数用意した。そして、各々のセンサについてセンサ感度を測定した後に、測定後の各センサを、中心軸Oを含む断面が得られるように切断した。その後、得られた断面において溶融部45の位置を確認して、外側固定溶融部45aが形成された圧力センサと、内側固定溶融部45bが形成された圧力センサとを特定し、既述したセンサ感度の差を算出した。
【0060】
図8に示すように、ダイアフラム42の膜厚Hにかかわらず、スリット深さの比率h/Hの値を0.33以上とすることで、センサ感度の差を顕著に小さくできることが確認された。そのため、
図7および
図8に示す結果より、h/Hの値を0.33以上((1/3)H≦h)とすることで、圧力センサの感度を高める効果と、圧力センサの感度のばらつきを抑制する効果とを顕著に得ることができるといえる。また、h/Hの値を0.50以上((1/2)H≦h)とすることで、上記効果をさらに高めることができるといえる。
【0061】
D.スリット外周の形状について:
図10は、スリット43の形状に関する変形例を、
図6と同様の断面において示した説明図である。
図10では、第2金具30の先端側端面とダイアフラム42とが接する界面に相当する第1の直線82上において、スリット空間47および内部空間48の外壁が占める範囲における中心軸Oからの距離が最も遠い点である第1の最外点Aと、スリット空間47の外周上の最高点Iと、を結ぶ線分の長さをαとしている。また、
図10では、第1の直線82上において、第2の境界点Gと最高点Iとを結ぶ線分の長さをβとしている。
図10(A)はα=βが成立する様子を表わし、
図10(B)はα>βが成立する様子を表わし、
図10(C)は、α<βが成立する様子を表わす。
【0062】
圧力センサ10のスリット43の形状において、αとβの関係は、任意に設定することが可能であるが、α<βが成立する形状(
図10(C)の形状)とすることで、センサ感度のばらつきを抑える効果を高めることができる。すなわち、圧力センサ10では、第1の直線82上において、第1の最内点Eと、第1の最外点Aと、第1の境界点Fと、の位置関係が同じであれば、スリット43の形状を、最高点Iがダイアフラム42の径方向外側寄りに傾く形状とすることで、センサ感度のばらつきを抑える効果を高めることができる。なお、圧力センサ10の感度を安定させるためには、中心軸Oを含む任意の断面においてα<βが成り立ち、かつ、中心軸Oを含むいずれの断面においてもαとβの値がそれぞれ一定であることが望ましい。
【0063】
図11は、中心軸Oを含む断面におけるスリット43の傾き(最高点Iの位置)を変更することによりα:βの値を異ならせた圧力センサを作製し、既述したセンサ感度の差を求めて、α:βの値とセンサ感度の差との関係を示す説明図である。用いた各サンプルは、α:βの値を異ならせると共に、同じα:βの値を示すセンサ同士では、センサ感度の差を求めるために溶融部45の位置を異ならせた(外側固定溶融部45aおよび内側固定溶融部45b)。それ以外の条件(各部の形状や大きさ)は、一定とした。
図11に示すように、α:βの比の値(α/β)を1よりも小さくすること、すなわち、α<βとすることで、溶融部45の位置がばらついてもセンサ感度のばらつきを抑えられることが確認できた。
【0064】
なお、α<βとする場合に、α:βの比の値(α/β)は、例えば加工の容易性等を考慮して、0.25を超えることが望ましい。また、例えばセンサ感度のばらつきが許容範囲であればα≧βであってもよいが、その場合であっても、α:βの比の値(α/β)は例えば4未満であることが望ましい。
【0065】
E.スリット幅および位置について:
センサ感度のばらつきは、さらに、スリット幅およびスリットの位置の影響も受ける。圧力センサ10において、既述したように(2)式および(3)式が成立するときには、スリット幅(中心軸Oを含む断面において、ダイアフラム42の第2の面92におけるスリット43の開口部の、中心軸Oに垂直な方向の幅)およびスリットの位置は任意に設定することができるが、スリット43の幅は、狭い方が望ましい。上記スリット43の幅を、より狭くすることにより、例えば溶融部45の位置がばらついた場合であっても、圧力センサ10の感度のばらつきを抑えることができる。以下に、中心軸Oから第1の境界点Fまでの距離である距離F
Dと、中心軸Oから第1の最内点E(第1の直線82上において、溶融部45が占める範囲における中心軸Oからの距離が最も近い点)までの距離である距離E
Dと、の関係について説明する。
【0066】
図12は、F
D=xE
Dと表わしたときの変数xと、圧力センサ10における既述したセンサ感度の差と、の関係を示す説明図である。ここで用いた各圧力センサは、第1の最外点A(第2の内周点L)および第2の最内点D(第1の内周点K)の位置、スリット深さh、および、ダイアフラム42の膜厚Hは共通としており、各圧力センサに設けたスリット43は、α=β(
図10参照)となるように形成した。ここでは、変数xの値が大きいほど、点Fが中心軸Oから遠く、スリット43の幅が狭いことを示す。
【0067】
なお、センサ感度の差を求める際には、まず、溶融部45として内側固定溶融部45bを有するときに変数xの値が
図12の横軸に示す各値となるように、スリット43の幅を設定して、内側固定溶融部45bを有する圧力センサを作製し、センサ感度を測定した。また、このような内側固定溶融部45bを有する圧力センサの各々に対応して、スリット43の形状は同じであって、溶融部45として外側固定溶融部45aを有する圧力センサを作製して、センサ感度を測定した。そして、各々の変数xに対応して、内側固定溶融部45bを有するセンサのセンサ感度と、外側固定溶融部45aを有するセンサのセンサ感度と、の差を求めた。
【0068】
図12に示すように、xの値を大きくするほど、センサ感度の差、すなわち、圧力センサの感度のばらつきが小さくなった。特に、xの値を0.6以上とすることで、圧力センサの感度のばらつきを低減する効果を顕著に得られることが確認された。
【0069】
F.センサ感度に係るその他の条件:
(F−1)ダイアフラム外周の形状:
圧力センサ10を用いて内燃機関の燃焼室内の圧力を検出する際には、圧力センサ10の表面において、燃焼室内に露出する部分に煤が堆積する可能性がある。特に、ダイアフラム42の表面に煤が堆積すると、圧力に応じたダイアフラム42の変位が妨げられてセンサ感度が低下する可能性がある。例えば、ダイアフラム42の第1の面91上に煤が堆積した場合には、燃焼室内の圧力によって煤が吹き飛ばされ得るため、煤に起因するセンサ感度の低下が比較的問題になりにくい。そのため、燃焼室内の圧力による煤の吹き飛ばし等が起こりにくい箇所への煤の堆積が抑制される形状を採用することが望ましい。
【0070】
図6に示すように、中心軸Oを含む断面の第1の直線82上において、ダイアフラム42の外周が占める範囲における中心軸Oからの距離が最も遠い点を第2の最外点Cとする。また、中心軸Oを含む断面の第1の直線82上において、第2金具30の先端側端面が占める範囲における中心軸Oからの距離が最も遠い点を第3の最外点Bとする。そして、中心軸Oから第2の最外点Cまでの距離である距離C
Dと、中心軸Oから第3の最外点Bまでの距離である距離B
Dとを比較すると、C
D≦B
Dが成立することが望ましい。
【0071】
C
D>B
Dとなる場合には、ダイアフラム42の外周が、第2金具30の先端側端部の外周から径方向外側にはみ出すことになる。そのため、このような場合には、ダイアフラム42の第2の面92(受圧面の裏側)の外周部分が、圧力センサ10の外部に露出することになる。このような受圧面の裏側部分に煤が堆積すると、燃焼室内の圧力による吹き飛ばしが起こり難く、センサ感度の低下が引き起こされやすくなる。これに対して、C
D≦B
Dを成立させることで、堆積した煤の除去を容易にして、センサ感度の低下を抑えることができる。なお、煤の堆積が許容範囲であれば、C
D>B
Dとしてもよい。
【0072】
(F−2)ダイアフラム外表面の形状:
ダイアフラム42において、外部に露出する第1の面91は、凹凸が少なく滑らかであることが望ましい。具体的には、ダイアフラム42の第1の面91における表面粗さである算術平均粗さRaは、Ra≦1.6μmを満たすことが望ましい。ここで、算術平均粗さRaとは、日本工業規格JIS B 0651:01に準拠して、触針式表面粗さ測定器を用いて求めた値である。このようにすることで、ダイアフラム42の第1の面91に煤が堆積することを抑制し、煤の堆積に起因するセンサ感度の低下を抑えることができる。なお、第1の面91に煤が堆積する影響が許容範囲であれば、ダイアフラム42の第1の面91に凹凸を設けるなど、より粗く形成してもよい。
【0073】
(F−3)断面におけるダイアフラムの重心位置:
既述したように、スリット43の外周形状は、最高点Iがダイアフラム42の径方向外側寄りに傾く形状とすることで、センサ感度のばらつきを抑える効果を高めることができる。このように、スリット43の外周形状がダイアフラム42の径方向外側寄りに傾くことによる効果は、例えば、スリット43の外周形状において最高点Iが1点に定まらない場合であっても得られる。スリット43の外周形状がダイアフラム42の径方向外側寄りに傾く状態は、中心軸Oを含む断面におけるスリット43の重心位置によっても規定することができる。
【0074】
すなわち、中心軸Oを含む断面において、第1の最外点Aと第1の境界点Fとのうち、中心軸Oに対して垂直に投影したときの位置が先端側となる点を第2の基準点とする。また、この第2の基準点を通過して中心軸Oに垂直な直線である第4の直線86と、スリット空間47の外周とによって囲まれる範囲(第4の直線86とスリット空間47の外周とによって囲まれる図形)における重心Nの、中心軸Oからの距離を距離N
Dとする。そして、距離N
Dと、中心軸Oから第1の最内点Eまでの距離である距離E
Dとを比較すると、N
D≧0.7E
Dが成立することが望ましい(
図6参照)。これにより、最高点Iがダイアフラム42の径方向外側寄りに傾く場合と同様に、センサ感度のばらつきを抑える効果を高めることができる。
【0075】
G.第2の実施形態:
(G−1)第2の実施形態の構成:
図13は、第2の実施形態の圧力センサ110の構成の概略を表わす断面模式図である。第2の実施形態の圧力センサ110は、受圧部40に代えて、ダイアフラム142を備える受圧部140を備えること以外は、第1の実施形態の圧力センサ10と同様の構成を有するため、共通する部分についての詳しい説明は省略する。
図13は、
図6と同様に、圧力センサの先端部分であって、中心軸Oを含む断面における紙面左側の様子のみを拡大して示す。
【0076】
第1の実施形態のダイアフラム42では、第1の境界点Fと、第2金具30の先端側端部の端面とダイアフラム142とが接する界面に相当する第1の直線82とが、中心軸Oに対して垂直に投影したときの位置が一致していた。これに対して第2の実施形態のダイアフラム142では、第1の境界点Fが、第1の直線82よりも、後端側に位置する点が異なっている。すなわち、第2の実施形態のダイアフラム142では、ダイアフラム142において、スリット43よりも中心軸O側の部分における中心軸O方向の厚みが、スリット43よりも径方向外側寄りの部分における中心軸O方向の厚みよりも、厚く形成されている。
【0077】
このような第2の実施形態においても、既述した(1)式、(2)式、および(3)式が成立することにより、第1の実施形態と同様に、センサ感度を高めると共に、センサ感度のばらつきを抑える効果を得ることができる。
【0078】
(G−2)スリット深さについて:
第2の実施形態においても、中心軸Oを含む断面において、スリット深さhとダイアフラム142の膜厚Hとの間に、既述した(4)式が成立することにより、第1の実施形態と同様に、センサ感度のばらつきを抑える効果を高めることができる。なお、ここでいうスリット深さhとは、第1の最外点Aと第1の境界点Fとのうち、中心軸Oに対して垂直に投影したときの位置が後端側となる点を第1の基準点とし、第1の基準点および最高点Iを中心軸Oに対して垂直に投影したときの、投影後の各々の点間の距離をいう。また、ダイアフラム142の膜厚Hとは、第1の基準点および外表点Jを中心軸Oに対して垂直に投影したときの、投影後の各々の点間の距離をいう。
【0079】
第1の実施形態では、第1の最外点Aと第1の境界点Fとのいずれも第1の基準点とすることができるが、第2の実施形態では、第1の最外点Aと第1の境界点Fとでは、第1の境界点Fの方が後端側に位置するため、第1の境界点Fが第1の基準点となる。そのため、スリット深さhは、第1の境界点Fと最高点Iとの間の中心軸O方向の距離となる。また、膜厚Hは、第1の境界点Fと外表点Jとの間の中心軸O方向の距離となる(
図13参照)。なお、
図13では、第1の最外点Aと第1の境界点Fとのうち、第1の基準点とは異なる点(第1の最外点A)と、外表点Jとを、中心軸Oに対して垂直に投影したときの、投影後の各々の点間の距離を、距離Yとして表わしている。さらに、上記第1の基準点とは異なる点(第1の最外点A)と、第1の基準点(第1の境界点F)とを、中心軸Oに対して垂直に投影したときの、投影後の各々の点間の距離を、距離Zとして表わしている。
【0080】
図14は、ダイアフラム142の膜厚Hに対するスリット深さhの比率、すなわち、h/Hの値と、センサ感度との関係を調べた結果を示す図である。ここでは、スリット深さhおよび膜厚H以外は同じ条件で製造した複数の圧力センサを用意し、センサ感度を測定した。具体的には、
図13に示す距離Zは一定にしつつ、距離Yを、0.2mm、0.4mm、0.6mm、0.8mmの4段階に変更することにより、膜厚Hの異なる4種類のダイアフラム142を有する種類の圧力センサを用意した。さらに、膜厚Hが異なる4種類のダイアフラム142の各々について、スリット深さhを6段階に異ならせて、圧力センサを作製した。すなわち、各々の膜厚H毎に、スリット深さhの比率h/Hが、0、0.18、0.33、0.50、0.70、0.85となるように、スリット深さhを異ならせた。h/Hが0とは、スリット43を設けていないセンサを表わす。なお、
図14では、溶融部45をスリット43に近づけて作製したサンプル(内側固定溶融部45bを設けたサンプル)を用いた。センサ感度の測定は、第1の実施形態と同様にして行なった。
図14に示すように、ダイアフラム142の膜厚Hにかかわらず、スリット深さの比率h/Hの値が大きいほど、センサ感度が高まることが確認された。
【0081】
図15は、スリット深さの比率(h/H)と、センサ感度のばらつきとの関係を調べた結果を示す図である。ここでは、
図14と同様に、距離Yを異ならせることによってダイアフラム142の膜厚Hを異ならせると共に、膜厚Hが異なる4種類のダイアフラム142の各々について、スリット深さhを6段階に異ならせて圧力センサを作製した。さらに、
図15では、膜厚Hとスリット深さhの組合せの各々について、溶融部45の位置の異なる圧力センサ(外側固定溶融部45aを有するセンサと内側固定溶融部45bを有するセンサ)を用意して、第1の実施形態と同様にセンサ感度の差を求めた。
【0082】
図15に示すように、ダイアフラム142の膜厚Hにかかわらず、スリット深さの比率h/Hの値を0.33以上とすることで、センサ感度の差を顕著に小さくできることが確認された。そのため、
図14および
図15に示す結果より、h/Hの値を0.33以上((1/3)H≦h)とすることで、圧力センサの感度を高める効果と、圧力センサの感度のばらつきを抑制する効果とを顕著に得ることができるといえる。また、h/Hの値を0.50以上((1/2)H≦h)とすることで、上記効果をさらに高めることができるといえる。
【0083】
(G−3)スリット外周の形状について:
第2の実施形態においても、スリット43の形状を、最高点Iがダイアフラム142の径方向外側寄りに傾く形状とすることで、センサ感度のばらつきを抑える効果を高めることができる。すなわち、第1の実施形態と同様に、中心軸Oを含む断面において、α<βが成立することで、センサ感度のばらつきを抑える効果を高めることができる。
【0084】
ここで、αとは、第1の最外点Aと第1の境界点Fとのうち、中心軸Oに対して垂直に投影したときの位置が先端側となる点を第1の点とし、上記第1の点を通過して中心軸Oに垂直な第3の直線と、スリット空間47の外周との交点を第2の点Mとしたときに、第1の点および第2の点Mのうち、中心軸Oからの距離がより遠い点と最高点Iとを結ぶ線分の長さを表わす。また、βとは、第1の点および第2の点Mのうち、中心軸Oからの距離がより近い点と最高点Iとを結ぶ線分の長さを表わす。
【0085】
本実施形態では、第1の最外点Aと第1の境界点Fとのうち、中心軸Oに対して垂直に投影したときの位置が先端側となる第1の点は、第1の最外点Aとなる。
図13では、第3の直線88および第2の点Mを示している。本実施形態では、αは、第1の最外点Aと最高点Iとを結ぶ線分の長さであり、βは、第2の点Mと最高点Iとを結ぶ線分の長さである。なお、第1の実施形態では、第1の最外点Aと第1の境界点Fとは、中心軸Oに対して垂直に投影すると一致する位置にあり、いずれを第1の点あるいは第2の点Mと考えてもよいため、αは第1の最外点Aと最高点Iとを結ぶ線分の長さであり、βは第1の境界点Fと最高点Iとを結ぶ線分の長さである。
【0086】
図16は、第2の実施形態の圧力センサ110として、中心軸Oを含む断面におけるスリット43の傾き(最高点Iの位置)を変更することによりα:βの値を異ならせた圧力センサを作製し、既述したセンサ感度の差を求めて、α:βの値とセンサ感度の差との関係を示す説明図である。用いた各サンプルは、α:βの値を異ならせると共に、同じα:βの値を示すセンサ同士では、センサ感度の差を求めるために溶融部45の位置を異ならせた(外側固定溶融部45aおよび内側固定溶融部45b)。それ以外の条件(各部の形状や大きさ)は、一定とした。
図16に示すように、α:βの比の値を1よりも小さくすること、すなわち、α<βとすることで、溶融部45の位置がばらついてもセンサ感度のばらつきを抑えられることが確認できた。
【0087】
(G−4)スリット幅および位置について:
第2の実施形態においても、スリット43の幅(中心軸Oを含む断面において、ダイアフラム142の第2の面92におけるスリット43の開口部の、中心軸Oに垂直な方向の幅)を狭くすることで、センサ感度のばらつきを抑える効果を高めることができる。すなわち、第1の実施形態と同様に、中心軸Oを含む断面において、中心軸Oから第1の最内点Eまでの距離である距離E
Dと、中心軸Oから第1の境界点Fまでの距離である前記距離F
Dとを比較すると、F
D≧0.6E
Dが成立することで、センサ感度のばらつきを抑える効果を高めることができる。
【0088】
図17は、F
D=xE
Dと表わしたときの変数xと、圧力センサ110における既述したセンサ感度の差と、の関係を示す説明図である。ここで用いた各圧力センサは、第1の最外点A(第2の内周点L)および第2の最内点D(第1の内周点K)の位置、スリット深さh、および、ダイアフラム142の膜厚Hは共通としており、各圧力センサに設けたスリット43は、α=βとなるように形成した。ここでは、変数xの値が大きいほど、点Fが中心軸Oから遠く、スリット43の幅が狭いことを示す。センサ感度の差は、
図12に結果を示した第1の実施形態と同様にして求めた。
【0089】
図17に示すように、xの値を大きくするほど、センサ感度の差、すなわち、圧力センサの感度のばらつきが小さくなった。特に、xの値を0.6以上とすることで、圧力センサの感度のばらつきを低減する効果を顕著に得られることが確認された。
【0090】
(G−5)センサ感度に係るその他の条件:
(G−5−1)ダイアフラム外周の形状:
第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、中心軸Oを含む断面において、中心軸Oから第2の最外点C(第1の直線82上で、ダイアフラム142の外周が占める範囲における中心軸Oからの距離が最も遠い点)までの距離である距離C
Dと、中心軸Oから第3の最外点B(第2金具30の先端側端面が占める範囲における中心軸Oからの距離が最も遠い点)までの距離である距離B
Dとを比較すると、C
D≦B
Dが成立することが望ましい。ダイアフラム142の表面に堆積する煤に起因するセンサ感度の低下を抑制できるためである。
【0091】
(G−5−2)ダイアフラム外表面の形状:
第1の実施形態と同様に、ダイアフラム142の第1の面91の凹凸を削減すること、具体的には、ダイアフラム142の第1の面91における表面粗さである算術平均粗さRaが、Ra≦1.6μmを満たすことが望ましい。このようにすることで、ダイアフラム142の第1の面91に煤が堆積することを抑制し、センサ感度の低下を抑えることができる。
【0092】
(G−5−3)断面におけるダイアフラムの重心位置:
スリット43の外周形状をダイアフラム142の径方向外側寄りに傾かせることでセンサ感度のばらつきを抑える構成は、第1の実施形態と同様に、中心軸Oを含む断面におけるスリット43の重心位置によっても規定することができる。すなわち、中心軸Oを含む断面において、第1の最外点Aと第1の境界点Fとのうち、中心軸Oに対して垂直に投影したときの位置が先端側となる点を第2の基準点とする。第1の実施形態では、第1の最外点Aと第1の境界点Fとのいずれを第2の基準点としてもよいが、本実施形態では、第2の基準点は第1の最外点Aとなる。また、この第2の基準点を通過して中心軸Oに垂直な直線である第4の直線86と、スリット空間47の外周とによって囲まれる範囲(第4の直線86とスリット空間47の外周とによって囲まれる図形)における重心Nの、中心軸Oからの距離を距離N
Dとする。そして、距離N
Dと、中心軸Oから第1の最内点Eまでの距離である距離E
Dとを比較すると、N
D≧0.7E
Dが成立することが望ましい(
図13参照)。これにより、最高点Iがダイアフラム42の径方向外側寄りに傾く場合と同様に、センサ感度のばらつきを抑える効果を高めることができる。
【0093】
H.変形例:
・変形1(筐体とダイアフラムの接触面の変形):
第1および第2の実施形態では、中心軸Oを含む断面において、第2金具30の先端側端部の端面が中心軸Oに垂直であって、第2金具30とダイアフラムとが接する界面に相当する第1の直線82が、中心軸Oに垂直であったが、異なる構成としてもよい。なお、以下に示す各変形例では、圧力センサの先端部におけるスリット43の周辺の形状以外は、第1の実施形態の圧力センサ10と層用の構成を有するため、共通する部分には同じ参照番号を付して、詳しい説明を省略する。
【0094】
図18は、第1の変形例の圧力センサの先端部の構成を、
図6と同様に中心軸Oを含む断面によって示す説明図である。第1の変形例では、第2金具30の先端側端部の端面とダイアフラム42とが接する界面に相当する第1の直線82は、中心軸Oに垂直ではない。すなわち、第1の直線82は、中心軸Oに垂直な方向に対して傾いて形成されている。
【0095】
図19は、第2の変形例の圧力センサの先端部の構成を、
図6と同様に中心軸Oを含む断面によって示す説明図である。第2の変形例では、第2金具30の先端側端部において、第2金具30の内周に沿って段差部90が設けられており、ダイアフラム42は、この段差部90に嵌め込まれている。第2の変形例では、先端側から後端側へと延びるように形成された溶融部45は、段差部90の外周に沿って設けられている。
【0096】
上記のように構成された第1および第2の変形例においても、中心軸Oを含む断面において、既述した(1)式、(2)式、および(3)式が成立することにより、第1の実施形態と同様に、センサ感度を高めると共に、センサ感度のばらつきを抑える効果を得ることができる。さらに、第1および第2の変形例において、スリット深さhとダイアフラム142の膜厚Hとの間に既述した(4)式が成立することが望ましく、また、α<βが成立することが望ましく、また、N
D≧0.7E
Dが成立することが望ましく、また、F
D≧0.6E
Dが成立することが望ましい。上記のうちの少なくとも一つの条件を満たすことにより、第1および第2の実施形態と同様に、センサ感度のばらつきを抑える効果を高めることができる。上記した各条件に係る各部の定義は、第2の実施形態で説明した通りである。なお、第2の変形例において、第1の直線82を規定するための、第2金具30の先端側端部の端面とダイアフラム42とが接する界面とは、
図19に示すように、溶融部45が形成された部位ではなく、ダイアフラム42の第2の面92と第2金具30の先端部とが接する面を指す。
【0097】
・変形2(溶融部の形状および配置の変形):
図20は、第3の変形例の圧力センサの先端部の構成を、
図6と同様に中心軸Oを含む断面によって示す説明図である。また、
図21は、第4の変形例の圧力センサの先端部の構成を、
図6と同様に中心軸Oを含む断面によって示す説明図である。第3および第4の実施形態の圧力センサは、第1の実施形態の圧力センサと共通する部材により構成されているが、溶融部45が、より中心軸Oに近い位置に形成されている。
【0098】
すなわち、第3の変形例では、ダイアフラム42においてスリット43を形成するために設けられた凹部に重なるように溶融部45が形成されているため、第1の直線82上において、第1の最内点E(溶融部45が占める範囲における中心軸Oからの距離が最も近い点)と第1の最外点A(スリット空間47と内部空間48との外壁が占める範囲における中心軸Oからの距離が最も遠い点)とが一致している。また、第4の変形例では、第2金具30の内壁面に重なるように溶融部45が設けられているため、第1の直線82上において、第1の最内点Eと、第1の最外点Aと、第2の最内点D(第1の境界点Fよりも中心軸Oから離間する点であって、スリット空間47と内部空間48との外壁が占める範囲における中心軸Oからの距離が最も近い点)とが一致している。なお、第3および第4の変形例では、スリット43を形成するために設けられた凹部に重なるように溶融部45が形成されているため、第1の直線82上において、第2の内周点L(第1の直線82上において、第1の境界点Fよりも中心軸Oから離間する点であって、スリット43の表面との境界に対応する点)は、存在しない。
【0099】
図22は、第5の変形例の圧力センサの先端部の構成を、
図6と同様に中心軸Oを含む断面によって示す説明図である。第5の実施形態の圧力センサは、第1の変形例の圧力センサと共通する部材により構成されているが、溶融部45が、より中心軸Oに近い位置に形成されている。そのため、第1の直線82上において、第1の最内点Eと第1の最外点Aとが一致している。
【0100】
図23は、第6の変形例の圧力センサの先端部の構成を、
図6と同様に中心軸Oを含む断面によって示す説明図である。第6の実施形態の圧力センサは、第1の実施形態の圧力センサと共通する部材により構成されると共に、第3および第4の変形例と同様に、溶融部45が、より中心軸Oに近い位置に形成されている。そしてさらに、溶融部45が、ダイアフラム42の外表面から第2金具30の後端側に向かって中心軸Oから離間する方向に傾いて延びるように形成されている。そのため、第6変形例では、第1の直線82上において、第1の最内点Eと、第1の最外点Aと、第2の最内点Dとが一致している。なお、第6の変形例では、第1の直線82上において、第1の内周点K(第2金具30の先端側端面の内周に対応する点)は、存在しない。
【0101】
なお、
図20〜
図23に示す第3ないし第6の変形例では、既述したように、ダイアフラム42においてスリット43を形成するために設けられた凹部に重なるように、溶融部45が形成されている。そのため、上記各変形例では、変位領域46の外周に相当する第2の境界点Gは、溶融部45の表面上であって中心軸Oからの距離が最も遠いスリット43上の点となる。
【0102】
上記のように構成された第3ないし第6のいずれの変形例においても、中心軸Oを含む断面において、既述した(1)式、(2)式、および(3)式が成立することにより、第1の実施形態と同様に、センサ感度を高めると共に、センサ感度のばらつきを抑える効果を得ることができる。さらに、スリット深さhとダイアフラム142の膜厚Hとの間に既述した(4)式が成立することが望ましく、また、α<βが成立することが望ましく、また、N
D≧0.7E
Dが成立することが望ましく、また、F
D≧0.6E
Dが成立することが望ましい。上記のうちの少なくとも一つの条件を満たすことにより、第1および第2の実施形態と同様に、センサ感度のばらつきを抑える効果を高めることができる。上記した各条件に係る各部の定義は、第2の実施形態で説明した通りである。
【0103】
なお、第6変形例では、溶融部45を、先端側から後端側に向かって、中心軸Oから離間する方向に傾いて延びるように形成することで、溶融部45の外周にクラックが生じる場合であっても、ダイアフラム42を含む部材が先端側に脱落することを抑制する効果を高めることができる。溶融部45を上記のように傾けて形成すると、溶融部45の外周にクラックが生じても、第2金具30がダイアフラム42を含む部材を支えて、ダイアフラム42を含む部材の脱落を妨げることができるためである。
【0104】
・変形3(ダイアフラム形状の変形):
図24および
図25は、ダイアフラム42の変形例を、中心軸Oを含む断面によって示す説明図である。
図24(A)は、第1の実施形態と同様のダイアフラムを表わす。
図24(B)は、センサ外部に露出するダイアフラムの外表面が、先端側に向かって凸となるように形成される例を示す。
図24(C)は、センサ外部に露出するダイアフラムの外表面が、凹面として形成されている例を示す。また、
図24(D)は、センサ外部に露出するダイアフラムの外表面に、凹凸が形成されている例を示す。
図24(B)から
図24(D)に示すように、変位領域46において、スリット43よりも中心軸O側の部分におけるダイアフラムの厚みは不均一であってもよい。
【0105】
図25(A)は、
図10(C)と同様に、第1の直線82上において、スリット43の外周形状を、最高点Iがダイアフラム42の径方向外側寄りに傾く形状とした様子を表わす。
図25(B)は、第1の直線82上におけるスリット43の外周形状が、略M字状に形成される様子を表わす。
図25(C)は、ダイアフラム42において複数のスリット(
図25(C)では2つのスリット)が設けられる様子を表わす。複数のスリットは、例えば、ダイアフラム42の第2の面92を平面視したときに、各スリットの開口部の内周および外周が、中心軸Oを中心とする同心円となるように設ければよい。
図25(D)は、ダイアフラム42の外周が、径方向外側に張り出して、後端側に折れ曲がる様子を表わす。あるいは、
図25(D)の構成に代えて、ダイアフラム42の外周が、径方向外側に張り出して、先端側に折れ曲がる構成とすることも可能である。
【0106】
上記のように、スリットの外周形状や、スリットの数、あるいはダイアフラムの外周形状などについては、種々の変形が可能である。いずれの場合であっても、中心軸Oを含む断面において、既述した(1)式、(2)式、および(3)式が成立することにより、第1の実施形態と同様に、センサ感度を高めると共に、センサ感度のばらつきを抑える効果を得ることができる。なお、スリットが複数存在する場合には、いずれかのスリットに関して、既述した実施形態で規定した関係が成立していればよい。
【0107】
また、第1の実施形態のダイアフラム42では、第1の境界点Fと第1の直線82との各々を中心軸Oに対して垂直に投影したときの位置が一致しており、第2の実施形態のダイアフラム142では、第1の境界点Fが第1の直線82よりも後端側に位置しているが、第1の境界点Fが第1の直線82よりも先端側に位置することとしてもよい。すなわち、ダイアフラムにおいて、スリット43よりも中心軸O側の部分における中心軸O方向の厚みが、スリット43よりも径方向外側寄りの部分における中心軸O方向の厚みよりも、薄く形成されることとしてもよい。この場合であっても、中心軸Oを含む断面において、既述した(1)式、(2)式、および(3)式が成立することにより、第1の実施形態と同様に、センサ感度を高めると共に、センサ感度のばらつきを抑える効果を得ることができる。また、既述した(4)式、α<β、あるいはN
D≧0.7E
Dの各々が成立することにより、センサ感度のばらつきを抑える効果を高めることができる。
【0108】
圧力センサでは、中心軸Oを含む任意の断面において、既述した(1)式、(2)式、および(3)式という条件が成立することが望ましく、さらに、スリット深さやスリット外周形状等に関して、既述した各実施例および変形例で挙げた望ましい条件を満たすことが望ましい。ただし、既述した条件を満たすことによる圧力センサ全体としての効果を損なう程度が許容範囲となるように、例えば限られた一部の断面においてのみ、既述した関係が成立しない構成を含むことも可能である。
【0109】
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。