特許第6449741号(P6449741)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6449741
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】燃料噴射装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 51/06 20060101AFI20181220BHJP
   F02M 61/10 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
   F02M51/06 J
   F02M61/10 M
【請求項の数】14
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2015-172929(P2015-172929)
(22)【出願日】2015年9月2日
(65)【公開番号】特開2017-48731(P2017-48731A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2017年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】山本 辰介
(72)【発明者】
【氏名】及川 忍
(72)【発明者】
【氏名】松川 智二
(72)【発明者】
【氏名】後藤 守康
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 栄次
【審査官】 櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−227958(JP,A)
【文献】 特開2011−241701(JP,A)
【文献】 特開2012−097728(JP,A)
【文献】 特開2012−149648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 51/06
F02M 61/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料が噴射される噴孔(13)、および、前記噴孔の周囲に環状に形成される弁座(14)を有するノズル部(10)と、
一端が前記ノズル部に接続され、前記噴孔に連通する燃料通路(100)を内側に有する筒状のハウジング(20)と、
棒状のニードル本体(31)、前記弁座に当接可能なよう前記ニードル本体の一端に形成されるシール部(32)、および、前記ニードル本体の径方向外側に設けられる環状の鍔部(33)を有し、前記燃料通路内を往復移動可能に設けられ、前記シール部が前記弁座から離間または前記弁座に当接すると前記噴孔を開閉するニードル(30)と、
前記ニードル本体に対し相対移動し前記弁座とは反対側の面が前記鍔部の前記弁座側の面(34)に当接可能に設けられる可動コア(40)と、
前記ハウジングの内側の前記可動コアに対し前記弁座とは反対側において前記ハウジングと同軸に設けられる筒状の固定コア(50)と、
一方の端面が前記ニードルに当接可能なよう前記固定コアの内側において前記ニードルに対し前記弁座とは反対側に設けられる板部(61)、および、前記板部から前記弁座側へ筒状に延び前記板部とは反対側の端部が前記可動コアの前記固定コア側の面に当接可能に形成される延伸部(62)を有し、前記板部が前記ニードルに当接し前記延伸部が前記可動コアに当接しているとき、前記鍔部と前記可動コアとの間に軸方向の隙間である軸方向隙間(CL1)を形成可能な隙間形成部材(60)と、
前記隙間形成部材に対し前記弁座とは反対側に設けられ、前記隙間形成部材を介して前記ニードルおよび前記可動コアを前記弁座側に付勢可能な弁座側付勢部材(71)と、
通電されると前記可動コアを前記固定コア側に吸引し前記鍔部に当接させ、前記ニードルを前記弁座とは反対側に移動させることが可能なコイル(72)と、を備え、
前記鍔部は、径方向外側の外壁に鍔部外壁面(331)を有し、
前記固定コアは、径方向内側の内壁に固定コア内壁面(501)を有し、
前記隙間形成部材は、前記鍔部外壁面に対向する壁面である内側壁面(601)が前記鍔部外壁面と摺動可能、かつ、前記固定コア内壁面に対向する壁面である外側壁面(602)が前記固定コア内壁面と摺動可能に形成され、
前記外側壁面は、前記ハウジングの軸(Ax1)を含む仮想平面(PL1)による断面において、前記ハウジングの径外方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成されており、
前記固定コアは、前記弁座側の端面が、前記可動コアの前記弁座とは反対側の端面に衝突することにより、前記可動コアの開弁方向の移動を規制可能であり、
前記固定コアの前記弁座側の端面は、前記隙間形成部材の前記弁座とは反対側の端面に当接不能であることを特徴とする燃料噴射装置(1)。
【請求項2】
前記鍔部外壁面および前記外側壁面は、前記仮想平面による断面において、前記ハウジングの径外方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成され、
前記鍔部外壁面は、前記仮想平面上の第1仮想円(C1)の一部に沿うよう形成され、
前記外側壁面は、前記仮想平面上の第2仮想円(C2)の一部に沿うよう形成され、
前記板部が前記ニードルに当接しているとき、前記第1仮想円の中心(O1)、および、前記第2仮想円の中心(O2)は、前記ハウジングの軸(Ax1)に直交する仮想直線(Ln1)上に位置することを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射装置。
【請求項3】
前記鍔部外壁面は、前記仮想平面による断面において、前記ハウジングの径外方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成され、
前記鍔部外壁面は、前記仮想平面上の第1仮想円(C1)の一部に沿うよう形成され、
前記第1仮想円の中心(O1)は、前記ハウジングの軸(Ax1)上に位置することを特徴とする請求項1または2に記載の燃料噴射装置。
【請求項4】
前記外側壁面は、前記仮想平面による断面において、前記ハウジングの径外方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成され、
前記外側壁面は、前記仮想平面上の第2仮想円(C2)の一部に沿うよう形成され、
前記第2仮想円の中心(O2)は、前記ハウジングの軸(Ax1)上に位置することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料噴射装置。
【請求項5】
前記鍔部外壁面および前記外側壁面は、前記仮想平面による断面において、前記ハウジングの径外方向へ向かって突出する曲線状になるよう、かつ、前記板部が前記ニードルに当接しているとき、前記鍔部外壁面の外径が最も大きい箇所(Pc1)と前記外側壁面の外径が最も大きい箇所(Pc2)とが前記ハウジングの軸(Ax1)に直交する仮想直線(Ln1)上に位置するよう形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の燃料噴射装置。
【請求項6】
燃料が噴射される噴孔(13)、および、前記噴孔の周囲に環状に形成される弁座(14)を有するノズル部(10)と、
一端が前記ノズル部に接続され、前記噴孔に連通する燃料通路(100)を内側に有する筒状のハウジング(20)と、
棒状のニードル本体(31)、前記弁座に当接可能なよう前記ニードル本体の一端に形成されるシール部(32)、および、前記ニードル本体の径方向外側に設けられる環状の鍔部(33)を有し、前記燃料通路内を往復移動可能に設けられ、前記シール部が前記弁座から離間または前記弁座に当接すると前記噴孔を開閉するニードル(30)と、
前記ニードル本体に対し相対移動し前記弁座とは反対側の面が前記鍔部の前記弁座側の面(34)に当接可能に設けられる可動コア(40)と、
前記ハウジングの内側の前記可動コアに対し前記弁座とは反対側において前記ハウジングと同軸に設けられる筒状の固定コア(50)と、
一方の端面が前記ニードルに当接可能なよう前記固定コアの内側において前記ニードルに対し前記弁座とは反対側に設けられる板部(61)、および、前記板部から前記弁座側へ筒状に延び前記板部とは反対側の端部が前記可動コアの前記固定コア側の面に当接可能に形成される延伸部(62)を有し、前記板部が前記ニードルに当接し前記延伸部が前記可動コアに当接しているとき、前記鍔部と前記可動コアとの間に軸方向の隙間である軸方向隙間(CL1)を形成可能な隙間形成部材(60)と、
前記隙間形成部材に対し前記弁座とは反対側に設けられ、前記隙間形成部材を介して前記ニードルおよび前記可動コアを前記弁座側に付勢可能な弁座側付勢部材(71)と、
通電されると前記可動コアを前記固定コア側に吸引し前記鍔部に当接させ、前記ニードルを前記弁座とは反対側に移動させることが可能なコイル(72)と、を備え、
前記鍔部は、径方向外側の外壁に鍔部外壁面(331)を有し、
前記固定コアは、径方向内側の内壁に固定コア内壁面(501)を有し、
前記隙間形成部材は、前記鍔部外壁面に対向する壁面である内側壁面(601)が前記鍔部外壁面と摺動可能、かつ、前記固定コア内壁面に対向する壁面である外側壁面(602)が前記固定コア内壁面と摺動可能に形成され、
前記内側壁面または前記固定コア内壁面の少なくとも一方は、前記ハウジングの軸(Ax1)を含む仮想平面(PL1)による断面において、前記ハウジングの径内方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成されており、
前記固定コアは、前記弁座側の端面が、前記可動コアの前記弁座とは反対側の端面に衝突することにより、前記可動コアの開弁方向の移動を規制可能であり、
前記固定コアの前記弁座側の端面は、前記隙間形成部材の前記弁座とは反対側の端面に当接不能であることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項7】
前記内側壁面および前記固定コア内壁面は、前記仮想平面による断面において、前記ハウジングの径内方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成され、
前記内側壁面は、前記仮想平面上の第3仮想円(C3)の一部に沿うよう形成され、
前記固定コア内壁面は、前記仮想平面上の第4仮想円(C4)の一部に沿うよう形成され、
前記板部が前記ニードルに当接しているとき、前記第3仮想円の中心(O3)、および、前記第4仮想円の中心(O4)は、前記ハウジングの軸(Ax1)に直交する仮想直線(Ln1)上に位置することを特徴とする請求項6に記載の燃料噴射装置。
【請求項8】
燃料が噴射される噴孔(13)、および、前記噴孔の周囲に環状に形成される弁座(14)を有するノズル部(10)と、
一端が前記ノズル部に接続され、前記噴孔に連通する燃料通路(100)を内側に有する筒状のハウジング(20)と、
棒状のニードル本体(31)、前記弁座に当接可能なよう前記ニードル本体の一端に形成されるシール部(32)、および、前記ニードル本体の径方向外側に設けられる環状の鍔部(33)を有し、前記燃料通路内を往復移動可能に設けられ、前記シール部が前記弁座から離間または前記弁座に当接すると前記噴孔を開閉するニードル(30)と、
前記ニードル本体に対し相対移動し前記弁座とは反対側の面が前記鍔部の前記弁座側の面(34)に当接可能に設けられる可動コア(40)と、
前記ハウジングの内側の前記可動コアに対し前記弁座とは反対側において前記ハウジングと同軸に設けられる筒状の固定コア(50)と、
一方の端面が前記ニードルに当接可能なよう前記固定コアの内側において前記ニードルに対し前記弁座とは反対側に設けられる板部(61)、および、前記板部から前記弁座側へ筒状に延び前記板部とは反対側の端部が前記可動コアの前記固定コア側の面に当接可能に形成される延伸部(62)を有し、前記板部が前記ニードルに当接し前記延伸部が前記可動コアに当接しているとき、前記鍔部と前記可動コアとの間に軸方向の隙間である軸方向隙間(CL1)を形成可能な隙間形成部材(60)と、
前記隙間形成部材に対し前記弁座とは反対側に設けられ、前記隙間形成部材を介して前記ニードルおよび前記可動コアを前記弁座側に付勢可能な弁座側付勢部材(71)と、
通電されると前記可動コアを前記固定コア側に吸引し前記鍔部に当接させ、前記ニードルを前記弁座とは反対側に移動させることが可能なコイル(72)と、を備え、
前記鍔部は、径方向外側の外壁に鍔部外壁面(331)を有し、
前記固定コアは、径方向内側の内壁に固定コア内壁面(501)を有し、
前記隙間形成部材は、前記鍔部外壁面に対向する壁面である内側壁面(601)が前記鍔部外壁面と摺動可能、かつ、前記固定コア内壁面に対向する壁面である外側壁面(602)が前記固定コア内壁面と摺動可能に形成され、
前記鍔部外壁面は、前記ハウジングの軸(Ax1)を含む仮想平面(PL1)による断面において、前記ハウジングの径外方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成され、
前記固定コア内壁面は、前記仮想平面による断面において、前記ハウジングの径内方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成されており、
前記固定コアは、前記弁座側の端面が、前記可動コアの前記弁座とは反対側の端面に衝突することにより、前記可動コアの開弁方向の移動を規制可能であり、
前記固定コアの前記弁座側の端面は、前記隙間形成部材の前記弁座とは反対側の端面に当接不能であることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項9】
前記鍔部外壁面は、前記仮想平面上の第1仮想円(C1)の一部に沿うよう形成され、
前記固定コア内壁面は、前記仮想平面上の第4仮想円(C4)の一部に沿うよう形成され、
前記板部が前記ニードルに当接しているとき、前記第1仮想円の中心(O1)、および、前記第4仮想円の中心(O4)は、前記ハウジングの軸(Ax1)に直交する仮想直線(Ln1)上に位置することを特徴とする請求項8に記載の燃料噴射装置。
【請求項10】
燃料が噴射される噴孔(13)、および、前記噴孔の周囲に環状に形成される弁座(14)を有するノズル部(10)と、
一端が前記ノズル部に接続され、前記噴孔に連通する燃料通路(100)を内側に有する筒状のハウジング(20)と、
棒状のニードル本体(31)、前記弁座に当接可能なよう前記ニードル本体の一端に形成されるシール部(32)、および、前記ニードル本体の径方向外側に設けられる環状の鍔部(33)を有し、前記燃料通路内を往復移動可能に設けられ、前記シール部が前記弁座から離間または前記弁座に当接すると前記噴孔を開閉するニードル(30)と、
前記ニードル本体に対し相対移動し前記弁座とは反対側の面が前記鍔部の前記弁座側の面(34)に当接可能に設けられる可動コア(40)と、
前記ハウジングの内側の前記可動コアに対し前記弁座とは反対側において前記ハウジングと同軸に設けられる筒状の固定コア(50)と、
一方の端面が前記ニードルに当接可能なよう前記固定コアの内側において前記ニードルに対し前記弁座とは反対側に設けられる板部(61)、および、前記板部から前記弁座側へ筒状に延び前記板部とは反対側の端部が前記可動コアの前記固定コア側の面に当接可能に形成される延伸部(62)を有し、前記板部が前記ニードルに当接し前記延伸部が前記可動コアに当接しているとき、前記鍔部と前記可動コアとの間に軸方向の隙間である軸方向隙間(CL1)を形成可能な隙間形成部材(60)と、
前記隙間形成部材に対し前記弁座とは反対側に設けられ、前記隙間形成部材を介して前記ニードルおよび前記可動コアを前記弁座側に付勢可能な弁座側付勢部材(71)と、
通電されると前記可動コアを前記固定コア側に吸引し前記鍔部に当接させ、前記ニードルを前記弁座とは反対側に移動させることが可能なコイル(72)と、を備え、
前記鍔部は、径方向外側の外壁に鍔部外壁面(331)を有し、
前記固定コアは、径方向内側の内壁に固定コア内壁面(501)を有し、
前記隙間形成部材は、前記鍔部外壁面に対向する壁面である内側壁面(601)が前記鍔部外壁面と摺動可能、かつ、前記固定コア内壁面に対向する壁面である外側壁面(602)が前記固定コア内壁面と摺動可能に形成され、
前記内側壁面は、前記ハウジングの軸(Ax1)を含む仮想平面(PL1)による断面において、前記ハウジングの径内方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成され、
前記外側壁面は、前記仮想平面による断面において、前記ハウジングの径外方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成されており、
前記固定コアは、前記弁座側の端面が、前記可動コアの前記弁座とは反対側の端面に衝突することにより、前記可動コアの開弁方向の移動を規制可能であり、
前記固定コアの前記弁座側の端面は、前記隙間形成部材の前記弁座とは反対側の端面に当接不能であることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項11】
前記内側壁面は、前記仮想平面上の第3仮想円(C3)の一部に沿うよう形成され、
前記外側壁面は、前記仮想平面上の第2仮想円(C2)の一部に沿うよう形成され、
前記第2仮想円の中心(O2)、および、前記第3仮想円の中心(O3)は、前記ハウジングの軸(Ax1)に直交する仮想直線(Ln1)上に位置することを特徴とする請求項10に記載の燃料噴射装置。
【請求項12】
前記固定コアは、筒状の固定コア本体(51)、および、前記固定コア本体の前記弁座側の端部の内側に設けられたブッシュ(52)を有し、
前記可動コアの前記弁座とは反対側の端面が前記ブッシュの前記弁座側の端面に衝突することにより、前記可動コアは、開弁方向への移動が規制される請求項1〜11のいずれか一項に記載の燃料噴射装置。
【請求項13】
前記隙間形成部材は、少なくとも一部が前記ブッシュの内側に設けられている請求項12に記載の燃料噴射装置。
【請求項14】
前記鍔部外壁面、前記内側壁面、前記外側壁面または前記固定コア内壁面の少なくとも1つは、前記仮想平面による断面において、前記仮想平面上の仮想円(C1、C2、C3、C4)の一部に沿うよう形成されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の燃料噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に燃料を噴射供給する燃料噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可動コアとニードルの鍔部との間に軸方向の隙間を形成し、当該隙間で可動コアを加速させて鍔部に衝突させ、ニードルを開弁させる燃料噴射装置が知られている。例えば特許文献1には、可動コアとニードルの鍔部との間に軸方向の隙間を形成可能な隙間形成部材を備えた燃料噴射装置が記載されている。この燃料噴射装置では、隙間で加速し運動エネルギーが上昇した状態の可動コアを鍔部に衝突させるため、ニードルを収容するハウジング内の燃料通路の燃圧が高くても、ニードルを開弁させることができる。そのため、高圧の燃料を噴射可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−227958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の燃料噴射装置では、隙間形成部材は、有底筒状に形成されており、筒部の内壁が鍔部の外壁と摺動し、外壁が固定コアの内壁と摺動する。これにより、ニードルは、軸方向の往復移動が案内されている。ここで、ニードルは、軸方向において弁座とは反対側の端部のみが隙間形成部材および固定コアにより支持されている。よって、ニードルは、往復移動時、軸が傾くよう姿勢が変化するおそれがある。
【0005】
特許文献1の燃料噴射装置では、隙間形成部材の筒部の内壁、固定コアの内壁、鍔部の外壁、および、隙間形成部材の外壁は円筒面状に形成され、鍔部の外壁および隙間形成部材の外壁は、隙間形成部材の筒部の内壁、または、固定コアの内壁と面接触し得る。そのため、ニードルの往復移動時、軸が傾くようニードルの姿勢が変化した場合、鍔部と隙間形成部材と固定コアとの摺動抵抗が増大したり、摺動面が偏摩耗したりするおそれがある。これにより、ニードルの応答性が悪化したり、ニードルの軸方向の往復移動が不安定になったりするおそれがある。よって、燃料噴射装置からの燃料の噴射量がばらつくおそれがある。また、摩耗粉が生じると、相対移動する部材間に摩耗粉が噛み込み、作動不良を招くおそれがある。
【0006】
また、特許文献1の燃料噴射装置では、鍔部の軸方向の両端部の外縁の角部は、隙間形成部材の筒部の内壁と摺動する。また、隙間形成部材の軸方向の一方の端部の外縁の角部は、固定コアの内壁と摺動する。そのため、ニードルおよび隙間形成部材が軸方向に往復移動するとき、特に軸が傾くようニードルの姿勢が変化した場合、鍔部の角部が隙間形成部材の筒部の内壁に引っかかったり、隙間形成部材の角部が固定コアの内壁に引っかかったりするおそれがある。これにより、ニードルの作動不良を招くおそれがある。
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高圧の燃料を噴射可能、かつ、燃料の噴射量のばらつき、および、ニードルの作動不良を抑制可能な燃料噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の燃料噴射装置は、ノズル部とハウジングとニードルと可動コアと固定コアと隙間形成部材と弁座側付勢部材とコイルとを備えている。
ノズル部は、燃料が噴射される噴孔、および、噴孔の周囲に環状に形成される弁座を有している。
ハウジングは、筒状に形成され、一端がノズル部に接続され、噴孔に連通する燃料通路を内側に有している。
【0009】
ニードルは、棒状のニードル本体、弁座に当接可能なようニードル本体の一端に形成されるシール部、および、ニードル本体の径方向外側に設けられる環状の鍔部を有している。ニードルは、燃料通路内を往復移動可能に設けられ、シール部が弁座から離間または弁座に当接すると噴孔を開閉する。
可動コアは、ニードル本体に対し相対移動し弁座とは反対側の面が鍔部の弁座側の面に当接可能に設けられる。
固定コアは、筒状に形成され、ハウジングの内側の可動コアに対し弁座とは反対側においてハウジングと同軸に設けられる。
【0010】
隙間形成部材は、一方の端面がニードルに当接可能なよう固定コアの内側においてニードルに対し弁座とは反対側に設けられる板部、および、板部から弁座側へ筒状に延び板部とは反対側の端部が可動コアの固定コア側の面に当接可能に形成される延伸部を有している。隙間形成部材は、板部がニードルに当接し延伸部が可動コアに当接しているとき、鍔部と可動コアとの間に軸方向の隙間である軸方向隙間を形成可能である。
弁座側付勢部材は、隙間形成部材に対し弁座とは反対側に設けられ、隙間形成部材を介してニードルおよび可動コアを弁座側に付勢可能である。
コイルは、通電されると可動コアを固定コア側に吸引し鍔部に当接させ、ニードルを弁座とは反対側に移動させることが可能である。
【0011】
本発明の第1の燃料噴射装置では、上述のように、隙間形成部材は、板部がニードルに当接し延伸部が可動コアに当接しているとき、鍔部と可動コアとの間に軸方向隙間を形成可能である。そのため、コイルで可動コアを固定コア側に吸引したとき、軸方向隙間で可動コアを加速させて鍔部に衝突させることができる。これにより、軸方向隙間で加速し運動エネルギーが上昇した状態の可動コアを鍔部に衝突させることができるため、燃料通路内の燃圧が高くても、ニードルを開弁させることができる。よって、高圧の燃料を噴射可能である。
【0012】
また、本発明の第1の燃料噴射装置では、鍔部は、径方向外側の外壁に鍔部外壁面を有している。固定コアは、径方向内側の内壁に固定コア内壁面を有している。隙間形成部材は、鍔部外壁面に対向する壁面である内側壁面が鍔部外壁面と摺動可能、かつ、固定コア内壁面に対向する壁面である外側壁面が固定コア内壁面と摺動可能に形成されている。
【0013】
そして、外側壁面は、ハウジングの軸を含む仮想平面による断面において、ハウジングの径外方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成されている。つまり、鍔部外壁面または外側壁面の少なくとも一方は、軸方向に湾曲するよう形成されている。そのため、鍔部外壁面または外側壁面の少なくとも一方は、内側壁面または固定コア内壁面と線接触し得る。よって、ニードルの往復移動時、軸が傾くようニードルの姿勢が変化した場合でも、鍔部と隙間形成部材と固定コアとの摺動抵抗が増大したり、摺動面が偏摩耗したりするのを抑制することができる。これにより、ニードルの応答性が悪化したり、ニードルの軸方向の往復移動が不安定になったりするのを抑制することができる。したがって、燃料噴射装置からの燃料の噴射量のばらつきを抑制することができる。また、摩耗粉の発生を抑制し、相対移動する部材間に摩耗粉が噛み込むことによる作動不良を抑制することができる。
【0014】
また、本発明の第1の燃料噴射装置では、鍔部または隙間形成部材の少なくとも一方に関し、軸方向の端部の外縁の角部が、隙間形成部材の内側壁面、または、固定コアの固定コア内壁面と摺動しない構成とすることができる。そのため、ニードルおよび隙間形成部材が軸方向に往復移動するとき、特に軸が傾くようニードルの姿勢が変化した場合でも、鍔部の角部が隙間形成部材の内側壁面に引っかかったり、隙間形成部材の角部が固定コアの固定コア内壁面に引っかかったりするのを抑制することができる。これにより、ニードルの作動不良を抑制することができる。
【0015】
本発明の第2の燃料噴射装置では、内側壁面または固定コア内壁面の少なくとも一方は、ハウジングの軸を含む仮想平面による断面において、ハウジングの径内方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成されている。つまり、内側壁面または固定コア内壁面の少なくとも一方は、軸方向に湾曲するよう形成されている。そのため、内側壁面または固定コア内壁面の少なくとも一方は、鍔部外壁面または外側壁面と線接触し得る。よって、ニードルの往復移動時、軸が傾くようニードルの姿勢が変化した場合でも、鍔部と隙間形成部材と固定コアとの摺動抵抗が増大したり、摺動面が偏摩耗したりするのを抑制することができる。これにより、ニードルの応答性が悪化したり、ニードルの軸方向の往復移動が不安定になったりするのを抑制することができる。したがって、燃料噴射装置からの燃料の噴射量のばらつきを抑制することができる。また、摩耗粉の発生を抑制し、相対移動する部材間に摩耗粉が噛み込むことによる作動不良を抑制することができる。
【0016】
また、本発明の第2の燃料噴射装置では、第1の燃料噴射装置と同様、鍔部または隙間形成部材の少なくとも一方に関し、軸方向の端部の外縁の角部が、隙間形成部材の内側壁面、または、固定コアの固定コア内壁面と摺動しない構成とすることができる。これにより、ニードルの作動不良を抑制することができる。
【0017】
本発明の第3の燃料噴射装置では、鍔部外壁面は、ハウジングの軸を含む仮想平面による断面において、ハウジングの径外方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成されている。固定コア内壁面は、前記仮想平面による断面において、ハウジングの径内方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成されている。つまり、鍔部外壁面および固定コア内壁面は、それぞれ、軸方向に湾曲するよう形成されている。そのため、鍔部外壁面および固定コア内壁面は、それぞれ、内側壁面または外側壁面と線接触し得る。よって、ニードルの往復移動時、軸が傾くようニードルの姿勢が変化した場合でも、鍔部と隙間形成部材と固定コアとの摺動抵抗が増大したり、摺動面が偏摩耗したりするのを抑制することができる。これにより、ニードルの応答性が悪化したり、ニードルの軸方向の往復移動が不安定になったりするのを抑制することができる。したがって、燃料噴射装置からの燃料の噴射量のばらつきを抑制することができる。また、摩耗粉の発生を抑制し、相対移動する部材間に摩耗粉が噛み込むことによる作動不良を抑制することができる。
【0018】
また、本発明の第3の燃料噴射装置では、鍔部および隙間形成部材のそれぞれに関し、軸方向の端部の外縁の角部が、隙間形成部材の内側壁面、または、固定コアの固定コア内壁面と摺動しない構成とすることができる。そのため、ニードルおよび隙間形成部材が軸方向に往復移動するとき、特に軸が傾くようニードルの姿勢が変化した場合でも、鍔部の角部が隙間形成部材の内側壁面に引っかかったり、隙間形成部材の角部が固定コアの固定コア内壁面に引っかかったりするのを抑制することができる。これにより、ニードルの作動不良を抑制することができる。
【0019】
本発明の第4の燃料噴射装置では、隙間形成部材の内側壁面は、ハウジングの軸を含む仮想平面による断面において、ハウジングの径内方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成されている。隙間形成部材の外側壁面は、前記仮想平面による断面において、ハウジングの径外方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成されている。つまり、内側壁面および外側壁面は、それぞれ、軸方向に湾曲するよう形成されている。そのため、内側壁面および外側壁面は、それぞれ、鍔部外壁面または固定コア内壁面と線接触し得る。よって、ニードルの往復移動時、軸が傾くようニードルの姿勢が変化した場合でも、鍔部と隙間形成部材と固定コアとの摺動抵抗が増大したり、摺動面が偏摩耗したりするのを抑制することができる。これにより、ニードルの応答性が悪化したり、ニードルの軸方向の往復移動が不安定になったりするのを抑制することができる。したがって、燃料噴射装置からの燃料の噴射量のばらつきを抑制することができる。また、摩耗粉の発生を抑制し、相対移動する部材間に摩耗粉が噛み込むことによる作動不良を抑制することができる。
【0020】
また、本発明の第4の燃料噴射装置では、第3の燃料噴射装置と同様、鍔部および隙間形成部材のそれぞれに関し、軸方向の端部の外縁の角部が、隙間形成部材の内側壁面、または、固定コアの固定コア内壁面と摺動しない構成とすることができる。これにより、ニードルの作動不良を抑制することができる。
また、本発明では、固定コアは、弁座側の端面が、可動コアの弁座とは反対側の端面に衝突することにより、可動コアの開弁方向の移動を規制可能である。固定コアの弁座側の端面は、隙間形成部材の弁座とは反対側の端面に当接不能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態による燃料噴射装置を示す断面図。
図2】本発明の第1実施形態による燃料噴射装置の可動コアおよびその近傍を示す断面図であって、ニードルが弁座に当接しているときの図。
図3】本発明の第1実施形態による燃料噴射装置の可動コアおよびその近傍を示す断面図であって、開弁時、可動コアと鍔部とが当接したときの図。
図4】本発明の第1実施形態による燃料噴射装置の可動コアおよびその近傍を示す断面図であって、開弁時、可動コアと固定コアとが当接したときの図。
図5】本発明の第1実施形態による燃料噴射装置の可動コアおよびその近傍を示す断面図であって、閉弁時、可動コアと固定部とが当接したときの図。
図6】本発明の第2実施形態による燃料噴射装置の可動コアおよびその近傍を示す断面図。
図7】本発明の第3実施形態による燃料噴射装置の可動コアおよびその近傍を示す断面図。
図8】本発明の第4実施形態による燃料噴射装置の可動コアおよびその近傍を示す断面図。
図9】本発明の第5実施形態による燃料噴射装置の可動コアおよびその近傍を示す断面図。
図10】本発明の第6実施形態による燃料噴射装置の可動コアおよびその近傍を示す断面図。
図11】本発明の第7実施形態による燃料噴射装置の可動コアおよびその近傍を示す断面図。
図12】本発明の第8実施形態による燃料噴射装置の可動コアおよびその近傍を示す断面図。
図13】本発明の第9実施形態による燃料噴射装置の可動コアおよびその近傍を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の複数の実施形態を図に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において、実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による燃料噴射弁を図1に示す。燃料噴射装置1は、例えば図示しない内燃機関としての直噴式ガソリンエンジンに用いられ、燃料としてのガソリンをエンジンに噴射供給する。
【0023】
燃料噴射装置1は、ノズル部10、ハウジング20、ニードル30、可動コア40、固定コア50、隙間形成部材60、弁座側付勢部材としてのスプリング71、コイル72等を備えている。
ノズル部10は、例えばマルテンサイト系ステンレス等の硬度が比較的高い材料により形成されている。ノズル部10は、所定の硬度を有するよう焼入れ処理が施されている。ノズル部10は、ノズル筒部11、および、ノズル筒部11の一端を塞ぐノズル底部12を有している。ノズル底部12には、ノズル筒部11側の面とノズル筒部11とは反対側の面とを接続する噴孔13が複数形成されている。また、ノズル底部12のノズル筒部11側の面には、噴孔13の周囲に環状の弁座14が形成されている。
【0024】
ハウジング20は、第1筒部21、第2筒部22、第3筒部23、インレット部24、フィルタ25等を有している。
第1筒部21、第2筒部22および第3筒部23は、いずれも略円筒状に形成されている。第1筒部21、第2筒部22および第3筒部23は、第1筒部21、第2筒部22、第3筒部23の順に同軸(軸Ax1)となるよう配置され、互いに接続している。
【0025】
第1筒部21および第3筒部23は、例えばフェライト系ステンレス等の磁性材料により形成され、磁気安定化処理が施されている。第1筒部21および第3筒部23は、硬度が比較的低い。一方、第2筒部22は、例えばオーステナイト系ステンレス等の非磁性材料により形成されている。第2筒部22の硬度は、第1筒部21および第3筒部23の硬度よりも高い。
第1筒部21の第2筒部22とは反対側の端部の内側には、ノズル筒部11のノズル底部12とは反対側の端部が接合されている。第1筒部21とノズル部10とは、例えば溶接により接合されている。
【0026】
インレット部24は、例えばステンレス等の金属により筒状に形成されている。インレット部24は、一端が第3筒部23の第2筒部22とは反対側の端部の内側に接合するよう設けられている。インレット部24と第3筒部23とは、例えば溶接により接合されている。
【0027】
ハウジング20およびノズル筒部11の内側には、燃料通路100が形成されている。燃料通路100は、噴孔13に接続している。インレット部24の第3筒部23とは反対側には、図示しない配管が接続される。これにより、燃料通路100には、燃料供給源からの燃料が配管を経由して流入する。燃料通路100は、燃料を噴孔13に導く。
フィルタ25は、インレット部24の内側に設けられている。フィルタ25は、燃料通路100に流入する燃料中の異物を捕集する。
【0028】
ニードル30は、例えばマルテンサイト系ステンレス等の硬度が比較的高い材料により形成されている。ニードル30は、所定の硬度を有するよう焼入れ処理が施されている。ニードル30の硬度は、ノズル部10の硬度とほぼ同等に設定されている。
ニードル30は、燃料通路100内をハウジング20の軸Ax1方向へ往復移動可能なようハウジング20内に収容されている。ニードル30は、ニードル本体31、シール部32、鍔部33等を有している。
【0029】
ニードル本体31は、棒状、より具体的には長い円柱状に形成されている。シール部32は、ニードル本体31の一端、すなわち、弁座14側の端部に形成され、弁座14に当接可能である。鍔部33は、略円環状に形成され、ニードル本体31の他端、すなわち、弁座14とは反対側の端部の径方向外側に設けられている。本実施形態では、鍔部33は、ニードル本体31と一体に形成されている。
【0030】
ニードル本体31の一端の近傍には、大径部311が形成されている。ニードル本体31の一端側の外径は、他端側の外径より小さい。大径部311は、外径がニードル本体31の一端側の外径より大きい。大径部311は、外壁がノズル部10のノズル筒部11の内壁と摺動するよう形成されている。これにより、ニードル30は、弁座14側の端部の軸Ax1方向の往復移動が案内される。大径部311には、外壁の周方向の複数個所が面取りされるようにして面取り部312が形成されている。これにより、燃料は、面取り部312とノズル筒部11の内壁との間を流通可能である。
【0031】
図2に示すように、ニードル本体31の他端には、ニードル本体31の軸Ax2に沿って延びる軸方向穴部313が形成されている。すなわち、ニードル本体31の他端は、中空筒状に形成されている。また、ニードル本体31には、軸方向穴部313の弁座14側の端部とニードル本体31の外側の空間とを接続するようニードル本体31の径方向に延びる径方向穴部314が形成されている。これにより、燃料通路100内の燃料は、軸方向穴部313および径方向穴部314を流通可能である。このように、ニードル本体31は、弁座14とは反対側の端面から軸Ax2方向に延び径方向穴部314を経由してニードル本体31の外側の空間に連通する軸方向穴部313を有している。
【0032】
ニードル30は、シール部32が弁座14から離間(離座)または弁座14に当接(着座)することで噴孔13を開閉する。以下、適宜、ニードル30が弁座14から離間する方向を開弁方向といい、ニードル30が弁座14に当接する方向を閉弁方向という。
【0033】
可動コア40は、可動コア本体41、軸穴部42、通孔43、凹部44等を有している。可動コア本体41は、例えばフェライト系ステンレス等の磁性材料により略円柱状に形成されている。可動コア本体41は、磁気安定化処理が施されている。可動コア本体41の硬度は比較的低く、ハウジング20の第1筒部21および第3筒部23の硬度と概ね同等である。
【0034】
軸穴部42は、可動コア本体41の軸Ax3に沿って延びるよう形成されている。本実施形態では、軸穴部42の内壁に、例えばNi−Pめっき等の硬質加工処理および摺動抵抗低減処理が施されている。通孔43は、可動コア本体41の弁座14側の端面と弁座14とは反対側の端面とを接続するよう形成されている。通孔43は、円筒状の内壁を有している。本実施形態では、通孔43は、例えば可動コア本体41の周方向に等間隔で4つ形成されている。
凹部44は、可動コア本体41の弁座14側の端面から弁座14とは反対側へ円形に凹むよう可動コア本体41の中央に形成されている。ここで、軸穴部42は、凹部44の底部に開口している。
【0035】
可動コア40は、軸穴部42にニードル30のニードル本体31が挿通された状態でハウジング20内に収容されている。可動コア40の軸穴部42の内径は、ニードル30のニードル本体31の外径と同等、または、ニードル本体31の外径よりやや大きく設定されている。そのため、可動コア40は、軸穴部42の内壁がニードル30のニードル本体31の外壁に摺動しつつ、ニードル30に対し相対移動可能である。また、可動コア40は、ニードル30と同様、燃料通路100内をハウジング20の軸Ax1方向へ往復移動可能なようハウジング20内に収容されている。通孔43には、燃料通路100内の燃料が流通可能である。
本実施形態では、可動コア本体41の弁座14とは反対側の面に、例えば硬質クロムめっき等の硬質加工処理および耐摩耗処理が施されている。
【0036】
なお、可動コア本体41の外径は、ハウジング20の第1筒部21および第2筒部22の内径より小さく設定されている。そのため、可動コア40が燃料通路100内を往復移動するとき、可動コア40の外壁と第1筒部21および第2筒部22の内壁とは摺動しない。
【0037】
ニードル30の鍔部33は、弁座14側の面が可動コア本体41の弁座14とは反対側の面に当接可能である。つまり、ニードル30は、可動コア本体41の弁座14とは反対側の面に当接可能な当接面34を有している。可動コア40は、当接面34に当接または当接面34から離間可能なようニードル30に対し相対移動可能に設けられている。
【0038】
固定コア50は、ハウジング20の内側の可動コア40に対し弁座14とは反対側においてハウジング20と同軸に設けられている。固定コア50は、固定コア本体51およびブッシュ52を有している。固定コア本体51は、例えばフェライト系ステンレス等の磁性材料により略円筒状に形成されている。固定コア本体51は、磁気安定化処理が施されている。固定コア本体51の硬度は比較的低く、可動コア本体41の硬度と概ね同等である。固定コア本体51は、ハウジング20の内側に固定されるようにして設けられている。固定コア本体51とハウジング20の第3筒部23とは溶接されている。
【0039】
ブッシュ52は、例えばマルテンサイト系ステンレス等の硬度が比較的高い材料により略円筒状に形成されている。ブッシュ52は、固定コア本体51の弁座14側の端部の内壁から径方向外側へ凹むよう形成された凹部511に設けられている。ここで、ブッシュ52の内径と固定コア本体51の内径とは概ね同等である。ブッシュ52の弁座14側の端面は、固定コア本体51の弁座14側の端面よりも弁座14側に位置している。そのため、可動コア本体41の弁座14とは反対側の面は、ブッシュ52の弁座14側の端面に当接可能である。
【0040】
固定コア50は、シール部32が弁座14に当接した状態のニードル30の鍔部33が、ブッシュ52の内側に位置するよう設けられている。固定コア本体51の内側には、円筒状のアジャスティングパイプ51が圧入されている(図1参照)。
隙間形成部材60は、例えば非磁性材料により形成されている。隙間形成部材60の硬度は、ニードル30およびブッシュ52の硬度とほぼ同等に設定されている。
【0041】
隙間形成部材60は、ニードル30および可動コア40に対し弁座14とは反対側に設けられている。隙間形成部材60は、板部61および延伸部62を有している。板部61は、略円板状に形成されている。板部61は、一方の端面がニードル30、すなわち、ニードル本体31の弁座14とは反対側の端面、および、鍔部33の弁座14とは反対側の端面に当接可能なよう固定コア50の内側においてニードル30に対し弁座14とは反対側に設けられている。
【0042】
延伸部62は、板部61の一方の端面の外縁部から弁座14側へ略円筒状に延びるよう板部61と一体に形成されている。すなわち、隙間形成部材60は、本実施形態では、有底円筒状に形成されている。隙間形成部材60は、延伸部62の内側にニードル30の鍔部33が位置するよう設けられている。また、延伸部62は、板部61とは反対側の端部が可動コア本体41の固定コア50側の面に当接可能である。
【0043】
本実施形態では、延伸部62は、軸方向の長さが鍔部33の軸方向の長さより長くなるよう形成されている。そのため、隙間形成部材60は、板部61がニードル30に当接し、延伸部62が可動コア40に当接しているとき、鍔部33と可動コア40との間に軸Ax1方向の隙間である軸方向隙間CL1を形成可能である。
隙間形成部材60は、ニードル30および固定コア50(ブッシュ52)に対し軸方向に相対移動可能に設けられている。
【0044】
本実施形態では、鍔部33は、径方向外側の外壁に鍔部外壁面331を有している。固定コア50のブッシュ52は、径方向内側の内壁に固定コア内壁面501を有している。なお、本実施形態では、鍔部外壁面331は、鍔部33の径方向外側の外壁のうち軸方向の一部に形成されている。また、固定コア内壁面501は、固定コア50のブッシュ52の径方向内側の内壁のうち軸方向の一部に形成されている。
【0045】
隙間形成部材60は、鍔部外壁面331に対向する壁面である内側壁面601が鍔部外壁面331と摺動可能、かつ、固定コア内壁面501に対向する壁面である外側壁面602が固定コア内壁面501と摺動可能に形成されている。これにより、ニードル30は、固定コア50側の端部が隙間形成部材60および固定コア50により往復移動可能に支持される。なお、本実施形態では、内側壁面601は、鍔部外壁面331に対向するよう、隙間形成部材60の筒部83の径方向内側の内壁のうち軸方向の一部に形成されている。また、外側壁面602は、固定コア内壁面501に対向するよう、隙間形成部材60の径方向外側の外壁のうち軸方向の一部に形成されている。
【0046】
本実施形態では、ニードル30は、弁座14側の端部がノズル部10のノズル筒部11の内壁により往復移動可能に支持され、固定コア50側の端部が隙間形成部材60および固定コア50により往復移動可能に支持される。このように、ニードル30は、ハウジング20の軸Ax1方向の2箇所の部位により、軸方向の往復移動が案内される。
【0047】
そして、鍔部外壁面331および外側壁面602は、ハウジング20の軸Ax1を含む仮想平面PL1による断面において、ハウジング20の径外方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成されている(図2参照)。つまり、鍔部外壁面331は、内側壁面601に対し突出するよう、軸方向に湾曲する曲面状に形成されている。また、外側壁面602は、固定コア内壁面501に対し突出するよう、軸方向に湾曲する曲面状に形成されている。なお、内側壁面601および固定コア内壁面501は、円筒面状に形成されている。
【0048】
また、本実施形態では、鍔部外壁面331は、仮想平面PL1上の第1仮想円C1の一部に沿うよう形成されている。外側壁面602は、仮想平面PL1上の第2仮想円C2の一部に沿うよう形成されている。そして、板部61がニードル30に当接しているとき、第1仮想円C1の中心O1、および、第2仮想円C2の中心O2は、ハウジング20の軸Ax1に直交する仮想直線Ln1上に位置する(図2参照)。
【0049】
上記より、鍔部外壁面331および外側壁面602は、板部61がニードル30に当接しているとき、鍔部外壁面331の外径が最も大きい箇所Pc1と外側壁面602の外径が最も大きい箇所Pc2とが仮想直線Ln1上に位置するよう形成されている、ということもできる(図2参照)。
【0050】
なお、本実施形態では、第1仮想円C1の直径は、第2仮想円C2の直径より小さい。また、第1仮想円C1の中心O1、および、第2仮想円C2の中心O2は、ハウジング20の軸Ax1に対し径方向外側に位置している。より具体的には、中心O1および中心O2は、鍔部33に位置している(図2参照)。
また、本実施形態では、鍔部外壁面331および外側壁面602は、例えば切削等により形成されている。
【0051】
なお、本実施形態では、延伸部62が筒状に形成されているため、延伸部62と可動コア40とが当接しているとき、鍔部33の当接面34と可動コア40と延伸部62の内壁との間に環状の空間である環状空間S1が形成される。
【0052】
隙間形成部材60は、孔部611をさらに有している。孔部611は、板部61の一方の端面と他方の端面とを接続し、ニードル30の軸方向穴部313に連通可能である。これにより、燃料通路100内の隙間形成部材60の弁座14とは反対側の燃料は、孔部611、ニードル30の軸方向穴部313、径方向穴部314を経由して可動コア40の弁座14側に流通可能である。孔部611は、内径がブッシュ52の内径および軸方向穴部313の内径より小さく形成されている。そのため、ニードル30が隙間形成部材60とともに弁座14とは反対側に移動するとき、すなわち、ニードル30が開弁方向に移動するとき、隙間形成部材60の弁座14とは反対側の燃料は、孔部611で絞られて軸方向穴部313に流れる。これにより、ニードル30の開弁方向の移動速度が過度に高くなることを抑制できる。
【0053】
スプリング71は、例えばコイルスプリングであり、隙間形成部材60に対し弁座14とは反対側に設けられている。スプリング71の一端は、隙間形成部材60の板部61の延伸部62とは反対側の端面に当接している。スプリング71の他端は、アジャスティングパイプ51に当接している。スプリング71は、隙間形成部材60を弁座14側に付勢する。スプリング71は、隙間形成部材60の板部61がニードル30に当接しているとき、隙間形成部材60を介してニードル30を弁座14側、すなわち、閉弁方向に付勢可能である。また、スプリング71は、隙間形成部材60の延伸部62が可動コア40に当接しているとき、隙間形成部材60を介して可動コア40を弁座14側に付勢可能である。すなわち、スプリング71は、隙間形成部材60を介してニードル30および可動コア40を弁座14側に付勢可能である。スプリング71の付勢力は、固定コア50に対するアジャスティングパイプ51の位置により調整される。
【0054】
コイル72は、略円筒状に形成され、ハウジング20のうち特に第2筒部22および第3筒部23の径方向外側を囲むようにして設けられている。コイル72は、電力が供給(通電)されると磁力を生じる。コイル72に磁力が生じると、固定コア本体51、可動コア本体41、第1筒部21および第3筒部23に磁気回路が形成される。これにより、固定コア本体51と可動コア本体41との間に磁気吸引力が発生し、可動コア40は、固定コア50側に吸引される。このとき、可動コア40は、軸方向隙間CL1を加速しつつ開弁方向に移動し、ニードル30の鍔部33の当接面34に衝突する。これにより、ニードル30が開弁方向に移動し、シール部32が弁座14から離間し、開弁する。その結果、噴孔13が開放される。このように、コイル72は、通電されると、可動コア40を固定コア50側に吸引し鍔部33に当接させ、ニードル30を弁座14とは反対側に移動させることが可能である。
【0055】
上述のように、本実施形態では、閉弁状態において、隙間形成部材60が鍔部33と可動コア40との間に軸方向隙間CL1を形成するため、コイル72への通電時、可動コア40を軸方向隙間CL1で加速させて鍔部33に衝突させることができる。これにより、燃料通路100内の圧力が比較的高い場合でも、コイル72へ供給する電力を増大させることなく、開弁させることができる。
【0056】
なお、可動コア40は、磁気吸引力により固定コア50側(開弁方向)に吸引されると、可動コア本体41の固定コア50側の端面がブッシュ52の弁座14側の端面に衝突する。これにより、可動コア40は、開弁方向への移動が規制される。
【0057】
図1に示すように、インレット部24および第3筒部23の径方向外側は、樹脂によりモールドされている。当該モールド部分にコネクタ27が形成されている。コネクタ27には、コイル72へ電力を供給するための端子271がインサート成形されている。また、コイル72の径方向外側には、コイル72を覆うようにして筒状のホルダ26が設けられている。
【0058】
本実施形態では、燃料噴射装置1は、ばね座部81、固定部82、筒部83、固定コア側付勢部材としてのスプリング73をさらに備えている。
ばね座部81と固定部82とは、筒部83により互いに接続されている。ばね座部81、固定部82および筒部83は、例えばステンレス等の金属により一体に形成されている。以下、本実施形態の説明において、ばね座部81、固定部82および筒部83が一体になった部材を、適宜、特定部材80とよぶ。つまり、特定部材80は、ばね座部81、固定部82および筒部83からなる。特定部材80の硬度は、ニードル30の硬度より低く設定されている。
【0059】
ばね座部81は、円環の板状に形成され、可動コア40の弁座14側においてニードル本体31の径方向外側に位置している。
固定部82は、円環状に形成され、可動コア40とばね座部81および径方向穴部314との間においてニードル本体31の径方向外側に位置している。固定部82は、内壁がニードル本体31の外壁に嵌合し、ニードル本体31に固定されている。
【0060】
筒部83は、円筒状に形成され、一端がばね座部81に接続し、他端が固定部82に接続している。これにより、ばね座部81は、可動コア40の弁座14側においてニードル本体31の径方向外側に固定されている。つまり、特定部材80は、固定部82がニードル本体31に圧入されることにより、ニードル本体31に固定されている。
【0061】
スプリング73は、例えばコイルスプリングであり、一端がばね座部81に当接し、他端が可動コア40の凹部44の底部に当接するよう設けられている。スプリング73は、可動コア40を固定コア50側に付勢可能である。スプリング73の付勢力は、スプリング71の付勢力よりも小さい。スプリング73の付勢力は、ばね座部81のニードル本体31に対する相対位置、つまり、固定部82のニードル本体31に対する圧入位置により調整可能である。
【0062】
スプリング71が隙間形成部材60を弁座14側に付勢することで、隙間形成部材60の板部61とニードル30とが当接し、ニードル30は、シール部32が弁座14に押し付けられる。このとき、スプリング73が可動コア40を固定コア50側に付勢することで、隙間形成部材60の延伸部62と可動コア40とが当接する。この状態で、ニードル30の鍔部33の当接面34と可動コア40との間に軸方向隙間CL1が形成され、可動コア40の凹部44の底部と固定部82との間に隙間CL3が形成される(図2参照)。
【0063】
可動コア40は、ニードル30の鍔部33(当接面34)と固定部82との間で軸方向に往復移動可能に設けられている。可動コア40の凹部44の底部は、固定部82の可動コア40側の端部に当接可能である。固定部82は、可動コア40に当接することで、ニードル30に対する可動コア40の弁座14側への相対移動を規制可能である。
【0064】
また、本実施形態では、筒部83およびばね座部81とニードル本体31との間には、筒状の空間である筒状空間S2が形成されている。ここで、ニードル30の径方向穴部314は、筒状空間S2に連通している。よって、軸方向穴部313内の燃料は、径方向穴部314および筒状空間S2を経由してばね座部81に対し弁座14側に流れることができる。
【0065】
本実施形態では、可動コア40が固定コア50側に吸引されている状態でコイル72への通電を停止すると、ニードル30および可動コア40は、隙間形成部材60を介したスプリング71の付勢力により、弁座14側へ付勢される。これにより、ニードル30が閉弁方向に移動し、シール部32が弁座14に当接し、閉弁する。その結果、噴孔13が閉塞される。
【0066】
シール部32が弁座14に当接した後、可動コア40は、慣性によりニードル30に対し弁座14側に相対移動する。このとき、固定部82は、可動コア40に当接することで、可動コア40の弁座14側への過度の移動を規制可能である。これにより、次の開弁時の応答性の低下を抑制可能である。また、スプリング73の付勢力により、可動コア40が固定部82に当接するときの衝撃を小さくでき、ニードル30が弁座14でバウンスすることによる二次開弁を抑制することができる。さらに、固定部82が可動コア40の弁座14側への移動を規制することにより、スプリング73の過度の圧縮を抑制でき、過度に圧縮されたスプリング73の復原力により可動コア40が開弁方向に付勢され再び鍔部33に衝突することによる二次開弁を抑制することができる。
【0067】
本実施形態では、隙間形成部材60は、通路部621をさらに有している。通路部621は、延伸部62の可動コア40側の端部から板部61側に凹むよう溝状に形成され、延伸部62の内壁と外壁とを接続している。これにより、延伸部62と可動コア40とが当接しているとき、環状空間S1内の燃料は、通路部621を経由して延伸部62の外側へ流出可能である。また、延伸部62の外側の燃料は、通路部621を経由して延伸部62の内側、すなわち、環状空間S1に流入可能である。よって、延伸部62と可動コア40とが当接しているとき、環状空間S1に燃料が存在することにより生じるダンパ効果を抑制し、鍔部33の当接面34に可動コア40が衝突するときの可動コア40の運動エネルギーの低下を抑制できる。
【0068】
インレット部24から流入した燃料は、固定コア50、アジャスティングパイプ51、隙間形成部材60の孔部611、ニードル30の軸方向穴部313、径方向穴部314、筒状空間S2、第1筒部21とニードル30との間、ノズル部10とニードル30との間、すなわち、燃料通路100を流通し、噴孔13に導かれる。なお、燃料噴射装置1の作動時、可動コア40の周囲は燃料で満たされた状態となる。また、燃料噴射装置1の作動時、可動コア40の通孔43を燃料が流通する。そのため、可動コア40は、ハウジング20の内側で軸方向に円滑に往復移動可能である。
【0069】
次に、本実施形態の燃料噴射装置1の作動について、図2〜5に基づき説明する。
図2に示すように、コイル72に通電されていないときは、ニードル30のシール部(32)は弁座(14)に当接しており、隙間形成部材60の板部61はニードル30に当接し、延伸部62は可動コア40に当接している。このとき、鍔部33の当接面34と可動コア40との間には、所定の大きさの軸方向隙間CL1が形成されている。
【0070】
図2に示す状態のときにコイル72に通電すると、可動コア40は、固定コア50側に吸引され、隙間形成部材60を押し上げながら軸方向隙間CL1で加速しつつ固定コア50側に移動する。そして、軸方向隙間CL1で加速し運動エネルギーが上昇した状態の可動コア40は、鍔部33の当接面34に衝突する(図3参照)。これにより、ニードル30が開弁方向に移動することでシール部(32)が弁座(14)から離間し、開弁する。その結果、噴孔(13)からの燃料の噴射が開始される。なお、このとき、軸方向隙間CL1は0になる。また、隙間CL3は、図2の状態のときよりも大きくなる。
【0071】
可動コア40は、図3の状態から固定コア50側にさらに移動すると、ブッシュ52に当接する。これにより、可動コア40は開弁方向の移動が規制される。このとき、ニードル30は、慣性で開弁方向にさらに移動し、隙間形成部材60の板部61に当接する(図4参照)。
【0072】
図4に示す状態のとき、コイル72への通電が停止すると、可動コア40およびニードル30は、隙間形成部材60を介したスプリング71の付勢力により閉弁方向に移動する。ニードル30のシール部(32)が弁座(14)に当接し閉弁すると、可動コア40は、慣性で閉弁方向にさらに移動し、固定部82に当接する(図5参照)。これにより、可動コア40は、閉弁方向の移動が規制される。なお、このとき、可動コア40は、隙間形成部材60の延伸部62から離間している。また、隙間CL3は0になる。その後、可動コア40は、スプリング73の付勢力により開弁方向に移動し、隙間形成部材60の延伸部62に当接する(図2参照)。
【0073】
以上説明したように、(1)本実施形態では、ノズル部10は、燃料が噴射される噴孔13、および、噴孔13の周囲に環状に形成される弁座14を有している。
ハウジング20は、筒状に形成され、一端がノズル部10に接続され、噴孔13に連通する燃料通路100を内側に有している。
ニードル30は、棒状のニードル本体31、弁座14に当接可能なようニードル本体31の一端に形成されるシール部32、および、ニードル本体31の他端の径方向外側に設けられる環状の鍔部33を有している。ニードル30は、燃料通路100内を往復移動可能に設けられ、シール部32が弁座14から離間または弁座14に当接すると噴孔13を開閉する。
可動コア40は、ニードル本体31に対し相対移動し弁座14とは反対側の面が鍔部33の弁座14側の面(当接面34)に当接可能に設けられる。
固定コア50は、筒状に形成され、ハウジング20の内側の可動コア40に対し弁座14とは反対側においてハウジング20と同軸に設けられる。
【0074】
隙間形成部材60は、一方の端面がニードル30に当接可能なよう固定コア50の内側においてニードル30に対し弁座14とは反対側に設けられる板部61、および、板部61から弁座14側へ筒状に延び板部61とは反対側の端部が可動コア40の固定コア50側の面に当接可能に形成される延伸部62を有している。隙間形成部材60は、板部61がニードル30に当接し延伸部62が可動コア40に当接しているとき、鍔部33と可動コア40との間に軸方向の隙間である軸方向隙間CL1を形成可能である。
スプリング71は、隙間形成部材60に対し弁座14とは反対側に設けられ、隙間形成部材60を介してニードル30および可動コア40を弁座14側に付勢可能である。
コイル72は、通電されると可動コア40を固定コア50側に吸引し鍔部33に当接させ、ニードル30を弁座14とは反対側に移動させることが可能である。
【0075】
本実施形態では、上述のように、隙間形成部材60は、板部61がニードル30に当接し延伸部62が可動コア40に当接しているとき、鍔部33と可動コア40との間に軸方向隙間CL1を形成可能である。そのため、コイル72で可動コア40を固定コア50側に吸引したとき、軸方向隙間CL1で可動コア40を加速させて鍔部33に衝突させることができる。これにより、軸方向隙間CL1で加速し運動エネルギーが上昇した状態の可動コア40を鍔部33に衝突させることができるため、燃料通路100内の燃圧が高くても、ニードル30を開弁させることができる。よって、高圧の燃料を噴射可能である。
【0076】
また、本実施形態では、鍔部33は、径方向外側の外壁に鍔部外壁面331を有している。固定コア50は、径方向内側の内壁に固定コア内壁面501を有している。隙間形成部材60は、鍔部外壁面331に対向する壁面である内側壁面601が鍔部外壁面331と摺動可能、かつ、固定コア内壁面501に対向する壁面である外側壁面602が固定コア内壁面501と摺動可能に形成されている。また、鍔部外壁面331および外側壁面602は、いずれも、ハウジング20の軸Ax1を含む仮想平面PL1による断面において、ハウジング20の径外方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成されている。つまり、鍔部外壁面331および外側壁面602は、いずれも、軸方向に湾曲するよう形成されている。そのため、鍔部外壁面331および外側壁面602は、それぞれ、円筒面状の内側壁面601または固定コア内壁面501と線接触し得る。よって、ニードル30の往復移動時、ハウジング20の軸Ax1に対し軸Ax2が傾くようニードル30の姿勢が変化した場合でも、鍔部33と隙間形成部材60と固定コア50との摺動抵抗が増大したり、摺動面が偏摩耗したりするのを抑制することができる。これにより、ニードル30の応答性が悪化したり、ニードル30の軸方向の往復移動が不安定になったりするのを抑制することができる。したがって、燃料噴射装置1からの燃料の噴射量のばらつきを抑制することができる。また、摩耗粉の発生を抑制し、相対移動する部材間に摩耗粉が噛み込むことによる作動不良を抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態では、鍔部33および隙間形成部材60のそれぞれに関し、軸方向の端部の外縁の角部が、隙間形成部材60の内側壁面601、または、固定コア50の固定コア内壁面501と摺動しない構成とすることができる。そのため、ニードル30および隙間形成部材60が軸方向に往復移動するとき、特に軸Ax2が傾くようニードル30の姿勢が変化した場合でも、鍔部33の角部が隙間形成部材60の内側壁面601に引っかかったり、隙間形成部材60の角部が固定コア50(ブッシュ52)の固定コア内壁面501に引っかかったりするのを抑制することができる。これにより、ニードル30の作動不良を抑制することができる。
【0078】
また、(2)本実施形態では、鍔部外壁面331および外側壁面602は、仮想平面PL1による断面において、ハウジング20の径外方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成されている。鍔部外壁面331は、仮想平面PL1上の第1仮想円C1の一部に沿うよう形成されている。外側壁面602は、仮想平面PL1上の第2仮想円C2の一部に沿うよう形成されている。そして、板部61がニードル30に当接しているとき、第1仮想円C1の中心O1、および、第2仮想円C2の中心O2は、ハウジング20の軸Ax1に直交する仮想直線Ln1上に位置する。
【0079】
また、(5)本実施形態では、鍔部外壁面331および外側壁面602は、仮想平面PL1による断面において、ハウジング20の径外方向へ向かって突出する曲線状になるよう、かつ、板部61がニードル30に当接しているとき、鍔部外壁面331の外径が最も大きい箇所Pc1と外側壁面602の外径が最も大きい箇所Pc2とがハウジング20の軸Ax1に直交する仮想直線Ln1上に位置するよう形成されている。
【0080】
したがって、鍔部33と隙間形成部材60との摺動箇所(Pc1)、および、隙間形成部材60と固定コア50(ブッシュ52)との摺動箇所(Pc2)を、軸Ax1方向において概ね同じ位置にすることができる。そのため、固定コア50(ブッシュ52)および隙間形成部材60により、ニードル30の軸方向の往復移動をより安定して案内することができる。
【0081】
また、(12)本実施形態では、鍔部外壁面331および外側壁面602は、それぞれ、仮想平面PL1による断面において、仮想平面PL1上の仮想円(第1仮想円C1、第2仮想円C2)の一部に沿うよう形成されている。そのため、鍔部外壁面331および外側壁面602を容易に設計および形成することができる。
【0082】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による燃料噴射装置の一部を図6に示す。第2実施形態は、鍔部33および隙間形成部材60の形状が第1実施形態と異なる。
【0083】
第2実施形態では、鍔部外壁面331は、鍔部33の径方向外側の外壁のうち軸方向の全部に形成されている。また、外側壁面602は、固定コア内壁面501に対向するよう、隙間形成部材60の径方向外側の外壁のうち軸方向の全部に形成されている。
【0084】
そして、板部61がニードル30に当接しているとき、第1仮想円C1の中心O1、および、第2仮想円C2の中心O2は、ハウジング20の軸Ax1に直交する仮想直線Ln1上に位置する。また、第1仮想円C1の中心O1、および、第2仮想円C2の中心O2は、ハウジング20の軸Ax1上に位置する(図6参照)。つまり、本実施形態では、鍔部外壁面331が沿う第1仮想円C1の中心O1と外側壁面602が沿う第2仮想円C2の中心O2とは、ハウジング20の軸Ax1と仮想直線Ln1との交点P1で一致する。よって、鍔部外壁面331は、O1を中心とする仮想球面の一部に沿うよう形成されている。また、外側壁面602は、O2を中心とする仮想球面の一部に沿うよう形成されている。
【0085】
本実施形態では、隙間形成部材60は、例えばO2を中心とする球体を研磨等で形成し、その後、切削等により板部61および延伸部62を有する有底筒状の形状となるよう形成することができる。この場合、外側壁面602を、O2を中心とする第2仮想円C2に沿うよう高精度に形成することができる。
第2実施形態は、上述した点以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0086】
以上説明したように、(2)本実施形態では、板部61がニードル30に当接しているとき、第1仮想円C1の中心O1、および、第2仮想円C2の中心O2は、ハウジング20の軸Ax1に直交する仮想直線Ln1上に位置する。また、(3)、(4)第1仮想円C1の中心O1、および、第2仮想円C2の中心O2は、ハウジング20の軸Ax1上に位置する。つまり、本実施形態では、鍔部外壁面331が沿う第1仮想円C1の中心O1と外側壁面602が沿う第2仮想円C2の中心O2とは、ハウジング20の軸Ax1と仮想直線Ln1との交点P1で一致する。よって、鍔部外壁面331は、O1を中心とする仮想球面の一部に沿うよう形成されている。また、外側壁面602は、O2を中心とする仮想球面の一部に沿うよう形成されている。そのため、中心O1から鍔部外壁面331までの距離(第1仮想円C1の半径)は一定である。また、中心O2から外側壁面602までの距離(第2仮想円C2の半径)は一定である。よって、ニードル30および隙間形成部材60が軸方向に往復移動するとき、例えば軸Ax2が傾くようニードル30の姿勢が変化したり、筒部83の軸が傾くよう隙間形成部材60の姿勢が変化したりした場合でも、鍔部外壁面331と内側壁面601との摺動抵抗の増大、および、外側壁面602と固定コア内壁面501との摺動抵抗の増大を抑制し、摺動面の偏摩耗を抑制することができる。
【0087】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態による燃料噴射装置の一部を図7に示す。第3実施形態は、隙間形成部材60の形状が第2実施形態と異なる。
【0088】
第3実施形態では、隙間形成部材60の外側壁面602は、円筒状に形成されている。また、外側壁面602の外径は、固定コア50の固定コア内壁面501の内径と同等、または、固定コア内壁面501の内径よりやや小さく設定されている。そのため、外側壁面602は、固定コア内壁面501と摺動可能である。
第3実施形態は、上述した点以外の構成は、第2実施形態と同様である。
【0089】
以上説明したように、(1)本実施形態では、鍔部外壁面331または外側壁面602の一方である鍔部外壁面331は、ハウジング20の軸Ax1を含む仮想平面PL1による断面において、ハウジング20の径外方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成されている。つまり、鍔部外壁面331は、軸方向に湾曲するよう形成されている。そのため、鍔部外壁面331は、円筒面状の内側壁面601と線接触し得る。よって、ニードル30の往復移動時、ハウジング20の軸Ax1に対し軸Ax2が傾くようニードル30の姿勢が変化した場合でも、鍔部33と隙間形成部材60との摺動抵抗が増大したり、摺動面が偏摩耗したりするのを抑制することができる。これにより、ニードル30の応答性が悪化したり、ニードル30の軸方向の往復移動が不安定になったりするのを抑制することができる。したがって、燃料噴射装置からの燃料の噴射量のばらつきを抑制することができる。
【0090】
また、(3)本実施形態では、第1仮想円C1の中心O1は、ハウジング20の軸Ax1上に位置する。よって、鍔部外壁面331は、O1を中心とする仮想球面の一部に沿うよう形成されている。そのため、中心O1から鍔部外壁面331までの距離(第1仮想円C1の半径)は一定である。よって、ニードル30および隙間形成部材60が軸方向に往復移動するとき、例えば軸Ax2が傾くようニードル30の姿勢が変化した場合でも、鍔部外壁面331と内側壁面601との摺動抵抗の増大を抑制し、摺動面の偏摩耗を抑制することができる。
【0091】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態による燃料噴射装置の一部を図8に示す。第4実施形態は、鍔部33の形状が第2実施形態と異なる。
【0092】
第4実施形態では、鍔部33の鍔部外壁面331は、円筒状に形成されている。また、鍔部外壁面331の外径は、隙間形成部材60の内側壁面601の内径と同等、または、内側壁面601の内径よりやや小さく設定されている。そのため、鍔部外壁面331は、内側壁面601と摺動可能である。
第4実施形態は、上述した点以外の構成は、第2実施形態と同様である。
【0093】
以上説明したように、(1)本実施形態では、鍔部外壁面331または外側壁面602の一方である外側壁面602は、ハウジング20の軸Ax1を含む仮想平面PL1による断面において、ハウジング20の径外方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成されている。つまり、外側壁面602は、軸方向に湾曲するよう形成されている。そのため、外側壁面602は、円筒面状の固定コア内壁面501と線接触し得る。よって、ニードル30の往復移動時、ハウジング20の軸Ax1に対し軸Ax2が傾くようニードル30の姿勢が変化した場合でも、隙間形成部材60と固定コア50との摺動抵抗が増大したり、摺動面が偏摩耗したりするのを抑制することができる。これにより、ニードル30の応答性が悪化したり、ニードル30の軸方向の往復移動が不安定になったりするのを抑制することができる。したがって、燃料噴射装置からの燃料の噴射量のばらつきを抑制することができる。
【0094】
また、(4)本実施形態では、第2仮想円C2の中心O2は、ハウジング20の軸Ax1上に位置する。よって、外側壁面602は、O2を中心とする仮想球面の一部に沿うよう形成されている。そのため、中心O2から外側壁面602までの距離(第2仮想円C2の半径)は一定である。よって、ニードル30および隙間形成部材60が軸方向に往復移動するとき、例えば軸Ax2が傾くようニードル30の姿勢が変化し筒部83の軸が傾くよう隙間形成部材60の姿勢が変化した場合でも、外側壁面602と固定コア内壁面501との摺動抵抗の増大を抑制し、摺動面の偏摩耗を抑制することができる。
【0095】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態による燃料噴射装置の一部を図9に示す。第5実施形態は、鍔部33、隙間形成部材60、固定コア50の形状が第1実施形態と異なる。
第5実施形態では、鍔部33の鍔部外壁面331および隙間形成部材60の外側壁面602は、円筒面状に形成されている。そして、隙間形成部材60の内側壁面601および固定コア50の固定コア内壁面501は、ハウジング20の軸Ax1を含む仮想平面PL1による断面において、ハウジング20の径内方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成されている(図9参照)。つまり、内側壁面601は、鍔部外壁面331に対し突出するよう、軸方向に湾曲する曲面状に形成されている。また、固定コア内壁面501は、外側壁面602に対し突出するよう、軸方向に湾曲する曲面状に形成されている。
【0096】
また、本実施形態では、内側壁面601は、仮想平面PL1上の第3仮想円C3の一部に沿うよう形成されている。固定コア内壁面501は、仮想平面PL1上の第4仮想円C4の一部に沿うよう形成されている。そして、板部61がニードル30に当接しているとき、第3仮想円C3の中心O3、および、第4仮想円C4の中心O4は、ハウジング20の軸Ax1に直交する仮想直線Ln1上に位置する(図9参照)。
【0097】
なお、本実施形態では、第3仮想円C3の直径は、第4仮想円C4の直径より小さい。また、第3仮想円C3の中心O3、および、第4仮想円C4の中心O4は、ハウジング20の軸Ax1に対し径方向外側に位置している。より具体的には、中心O3は筒部83に位置し、中心O4は固定コア本体51のブッシュ52近傍に位置している(図9参照)。
第5実施形態は、上述した点以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0098】
以上説明したように、(6)本実施形態では、内側壁面601および固定コア内壁面501は、いずれも、ハウジング20の軸Ax1を含む仮想平面PL1による断面において、ハウジング20の径内方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成されている。つまり、内側壁面601および固定コア内壁面501は、いずれも、軸方向に湾曲するよう形成されている。そのため、内側壁面601および固定コア内壁面501は、それぞれ、円筒面状の鍔部外壁面331または外側壁面602と線接触し得る。よって、ニードル30の往復移動時、ハウジング20の軸Ax1に対し軸Ax2が傾くようニードル30の姿勢が変化した場合でも、鍔部33と隙間形成部材60と固定コア50との摺動抵抗が増大したり、摺動面が偏摩耗したりするのを抑制することができる。これにより、ニードル30の応答性が悪化したり、ニードル30の軸方向の往復移動が不安定になったりするのを抑制することができる。したがって、燃料噴射装置からの燃料の噴射量のばらつきを抑制することができる。また、摩耗粉の発生を抑制し、相対移動する部材間に摩耗粉が噛み込むことによる作動不良を抑制することができる。
【0099】
また、本実施形態では、第1実施形態と同様、鍔部33および隙間形成部材60のそれぞれに関し、軸方向の端部の外縁の角部が、隙間形成部材60の内側壁面601、または、固定コア50の固定コア内壁面501と摺動しない構成とすることができる。これにより、ニードル30の作動不良を抑制することができる。
【0100】
また、(7)本実施形態では、内側壁面601および固定コア内壁面501は、仮想平面PL1による断面において、ハウジング20の径内方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成されている。内側壁面601は、仮想平面PL1上の第3仮想円C3の一部に沿うよう形成されている。固定コア内壁面501は、仮想平面PL1上の第4仮想円C4の一部に沿うよう形成されている。そして、板部61がニードル30に当接しているとき、第3仮想円C3の中心O3、および、第4仮想円C4の中心O4は、ハウジング20の軸Ax1に直交する仮想直線Ln1上に位置する。
【0101】
したがって、鍔部33と隙間形成部材60との摺動箇所(Pc3)、および、隙間形成部材60と固定コア50(ブッシュ52)との摺動箇所(Pc4)を、軸Ax1方向において概ね同じ位置にすることができる。そのため、固定コア50(ブッシュ52)および隙間形成部材60により、ニードル30の軸方向の往復移動をより安定して案内することができる。
【0102】
また、(12)本実施形態では、内側壁面601および固定コア内壁面501は、それぞれ、仮想平面PL1による断面において、仮想平面PL1上の仮想円(第3仮想円C3、第4仮想円C4)の一部に沿うよう形成されている。そのため、内側壁面601および固定コア内壁面501を容易に設計および形成することができる。
【0103】
(第6実施形態)
本発明の第6実施形態による燃料噴射装置の一部を図10に示す。第6実施形態は、固定コア50の形状等が第5実施形態と異なる。
【0104】
第6実施形態では、固定コア50の固定コア内壁面501は、円筒状に形成されている。また、外側壁面602の外径は、固定コア内壁面501の内径と同等、または、固定コア内壁面501の内径よりやや小さく設定されている。そのため、外側壁面602は、固定コア内壁面501と摺動可能である。
第6実施形態は、上述した点以外の構成は、第5実施形態と同様である。
【0105】
以上説明したように、(6)本実施形態では、内側壁面601または固定コア内壁面501の一方である内側壁面601は、ハウジング20の軸Ax1を含む仮想平面PL1による断面において、ハウジング20の径内方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成されている。つまり、内側壁面601は、軸方向に湾曲するよう形成されている。そのため、内側壁面601は、円筒面状の鍔部外壁面331と線接触し得る。よって、ニードル30の往復移動時、ハウジング20の軸Ax1に対し軸Ax2が傾くようニードル30の姿勢が変化した場合でも、鍔部33と隙間形成部材60との摺動抵抗が増大したり、摺動面が偏摩耗したりするのを抑制することができる。したがって、燃料噴射装置からの燃料の噴射量のばらつきを抑制することができる。
【0106】
(第7実施形態)
本発明の第7実施形態による燃料噴射装置の一部を図11に示す。第7実施形態は、隙間形成部材60の形状等が第5実施形態と異なる。
【0107】
第7実施形態では、隙間形成部材60の内側壁面601は、円筒状に形成されている。また、鍔部外壁面331の外径は、内側壁面601の内径と同等、または、内側壁面601の内径よりやや小さく設定されている。そのため、鍔部外壁面331は、内側壁面601と摺動可能である。
第7実施形態は、上述した点以外の構成は、第5実施形態と同様である。
【0108】
以上説明したように、(6)本実施形態では、内側壁面601または固定コア内壁面501の一方である固定コア内壁面501は、ハウジング20の軸Ax1を含む仮想平面PL1による断面において、ハウジング20の径内方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成されている。つまり、固定コア内壁面501は、軸方向に湾曲するよう形成されている。そのため、固定コア内壁面501は、円筒面状の外側壁面602と線接触し得る。よって、ニードル30の往復移動時、ハウジング20の軸Ax1に対し軸Ax2が傾くようニードル30の姿勢が変化した場合でも、隙間形成部材60と固定コア50との摺動抵抗が増大したり、摺動面が偏摩耗したりするのを抑制することができる。したがって、燃料噴射装置からの燃料の噴射量のばらつきを抑制することができる。
【0109】
(第8実施形態)
本発明の第8実施形態による燃料噴射装置の一部を図12に示す。第8実施形態は、隙間形成部材60および固定コア50の形状等が第1実施形態と異なる。
【0110】
第8実施形態では、隙間形成部材60の外側壁面602は、円筒状に形成されている。そして、固定コア50の固定コア内壁面501は、ハウジング20の軸Ax1を含む仮想平面PL1による断面において、ハウジング20の径内方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成されている(図12参照)。つまり、固定コア内壁面501は、外側壁面602に対し突出するよう、軸方向に湾曲する曲面状に形成されている。
【0111】
また、本実施形態では、固定コア内壁面501は、第5実施形態と同様、仮想平面PL1上の第4仮想円C4の一部に沿うよう形成されている。そして、板部61がニードル30に当接しているとき、第1仮想円C1の中心O1、および、第4仮想円C4の中心O4は、ハウジング20の軸Ax1に直交する仮想直線Ln1上に位置する(図12参照)。
第8実施形態は、上述した点以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0112】
以上説明したように、(8)本実施形態では、鍔部外壁面331は、ハウジング20の軸Ax1を含む仮想平面PL1による断面において、ハウジング20の径外方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成されている。固定コア内壁面501は、仮想平面PL1による断面において、ハウジング20の径内方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成されている。つまり、鍔部外壁面331および固定コア内壁面501は、それぞれ、軸方向に湾曲するよう形成されている。そのため、鍔部外壁面331および固定コア内壁面501は、それぞれ、円筒面状の内側壁面601または外側壁面602と線接触し得る。よって、ニードル30の往復移動時、ハウジング20の軸Ax1に対し軸Ax2が傾くようニードル30の姿勢が変化した場合でも、鍔部33と隙間形成部材60と固定コア50との摺動抵抗が増大したり、摺動面が偏摩耗したりするのを抑制することができる。これにより、ニードル30の応答性が悪化したり、ニードル30の軸方向の往復移動が不安定になったりするのを抑制することができる。したがって、燃料噴射装置からの燃料の噴射量のばらつきを抑制することができる。また、摩耗粉の発生を抑制し、相対移動する部材間に摩耗粉が噛み込むことによる作動不良を抑制することができる。
【0113】
また、本実施形態では、鍔部33および隙間形成部材60のそれぞれに関し、軸方向の端部の外縁の角部が、隙間形成部材60の内側壁面601、または、固定コア50の固定コア内壁面501と摺動しない構成とすることができる。そのため、ニードル30および隙間形成部材60が軸方向に往復移動するとき、特に軸Ax2が傾くようニードル30の姿勢が変化した場合でも、鍔部33の角部が隙間形成部材60の内側壁面601に引っかかったり、隙間形成部材60の角部が固定コア50の固定コア内壁面501に引っかかったりするのを抑制することができる。これにより、ニードル30の作動不良を抑制することができる。
【0114】
また、(9)本実施形態では、鍔部外壁面331は、仮想平面PL1上の第1仮想円C1の一部に沿うよう形成されている。固定コア内壁面501は、仮想平面PL1上の第4仮想円C4の一部に沿うよう形成されている。そして、板部61がニードル30に当接しているとき、第1仮想円C1の中心O1、および、第4仮想円C4の中心O4は、ハウジング20の軸Ax1に直交する仮想直線Ln1上に位置する。
【0115】
したがって、鍔部33と隙間形成部材60との摺動箇所(Pc1)、および、隙間形成部材60と固定コア50(ブッシュ52)との摺動箇所(Pc4)を、軸Ax1方向において概ね同じ位置にすることができる。そのため、固定コア50(ブッシュ52)および隙間形成部材60により、ニードル30の軸方向の往復移動をより安定して案内することができる。
【0116】
(第9実施形態)
本発明の第9実施形態による燃料噴射装置の一部を図13に示す。第9実施形態は、鍔部33および隙間形成部材60の形状等が第1実施形態と異なる。
【0117】
第9実施形態では、鍔部33の鍔部外壁面331は、円筒状に形成されている。そして、隙間形成部材60の内側壁面601は、ハウジング20の軸Ax1を含む仮想平面PL1による断面において、ハウジング20の径内方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成されている(図13参照)。つまり、内側壁面601は、鍔部外壁面331に対し突出するよう、軸方向に湾曲する曲面状に形成されている。
【0118】
また、本実施形態では内側壁面601は、第5実施形態と同様、仮想平面PL1上の第3仮想円C3の一部に沿うよう形成されている。そして、板部61に対するニードル30の位置にかかわらず、第2仮想円C2の中心O2、および、第3仮想円C3の中心O3は、ハウジング20の軸Ax1に直交する仮想直線Ln1上に位置する(図13参照)。
第9実施形態は、上述した点以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0119】
以上説明したように、(10)本実施形態では、隙間形成部材60の内側壁面601は、ハウジング20の軸Ax1を含む仮想平面PL1による断面において、ハウジング20の径内方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成されている。隙間形成部材60の外側壁面602は、仮想平面PL1による断面において、ハウジング20の径外方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成されている。つまり、内側壁面601および外側壁面602は、それぞれ、軸方向に湾曲するよう形成されている。そのため、内側壁面601および外側壁面602は、それぞれ、円筒面状の鍔部外壁面331または固定コア内壁面501と線接触し得る。よって、ニードル30の往復移動時、ハウジング20の軸Ax1に対し軸Ax2が傾くようニードル30の姿勢が変化した場合でも、鍔部33と隙間形成部材60と固定コア50との摺動抵抗が増大したり、摺動面が偏摩耗したりするのを抑制することができる。これにより、ニードル30の応答性が悪化したり、ニードル30の軸方向の往復移動が不安定になったりするのを抑制することができる。したがって、燃料噴射装置からの燃料の噴射量のばらつきを抑制することができる。また、摩耗粉の発生を抑制し、相対移動する部材間に摩耗粉が噛み込むことによる作動不良を抑制することができる。
【0120】
また、本実施形態では、第8実施形態と同様、鍔部33および隙間形成部材60のそれぞれに関し、軸方向の端部の外縁の角部が、隙間形成部材60の内側壁面601、または、固定コア50の固定コア内壁面501と摺動しない構成とすることができる。これにより、ニードル30の作動不良を抑制することができる。
【0121】
また、(11)本実施形態では、内側壁面601は、仮想平面PL1上の第3仮想円C3の一部に沿うよう形成されている。外側壁面602は、仮想平面PL1上の第2仮想円C2の一部に沿うよう形成されている。そして、第2仮想円C2の中心O2、および、第3仮想円C3の中心O3は、ハウジング20の軸Ax1に直交する仮想直線Ln1上に位置する。
【0122】
したがって、鍔部33と隙間形成部材60との摺動箇所(Pc3)、および、隙間形成部材60と固定コア50(ブッシュ52)との摺動箇所(Pc2)を、軸Ax1方向において同じ位置にすることができる。そのため、固定コア50(ブッシュ52)および隙間形成部材60により、ニードル30の軸方向の往復移動をより安定して案内することができる。
【0123】
(他の実施形態)
上述の第1、2実施形態では、隙間形成部材60の板部61がニードル30に当接しているとき、第1仮想円C1の中心O1、および、第2仮想円C2の中心O2が、ハウジング20の軸Ax1に直交する仮想直線Ln1上に位置する例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、板部61がニードル30に当接しているとき、第1仮想円C1の中心O1、および、第2仮想円C2の中心O2は、それぞれ、仮想直線Ln1上に位置しないこととしてもよい。また、板部61がニードル30に当接しているとき、鍔部外壁面331の外径が最も大きい箇所Pc1、および、外側壁面602の外径が最も大きい箇所Pc2は、それぞれ、仮想直線Ln1上に位置しないこととしてもよい。
【0124】
また、上述の実施形態では、鍔部外壁面331、外側壁面602、内側壁面601または固定コア内壁面501の少なくとも1つが、ハウジング20の軸Ax1を含む仮想平面PL1による断面において、仮想平面PL1上の仮想円(第1仮想円C1、第2仮想円C2、第3仮想円C3、第4仮想円C4)の一部に沿うよう形成される例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、鍔部外壁面331、外側壁面602、内側壁面601または固定コア内壁面501は、少なくとも1つが、仮想平面PL1による断面において、ハウジング20の径外方向または径内方向へ向かって突出する曲線状になるよう形成されているのであれば、仮想平面PL1上の仮想円の一部に沿うよう形成されていなくてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、ばね座部81、固定部82および筒部83、すなわち、特定部材80、ならびに、固定コア側付勢部材としてのスプリング73を備えないこととしてもよい。
【0125】
また、本発明の他の実施形態では、ニードル30の大径部311は、外壁がノズル部10のノズル筒部11の内壁と摺動しない構成であってもよい。すなわち、ニードル30は、ニードル本体31のシール部32側の端部が、ノズル筒部11により往復移動が案内されていなくてもよい。
【0126】
また、上述の実施形態では、鍔部33がニードル本体31と一体に形成される例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、鍔部33は、ニードル本体31とは別体に形成することとしてもよい。例えば第2、3実施形態で示した鍔部33をニードル本体31と別体に形成することを考える。この場合、鍔部33は、例えばO1を中心とする球体を研磨等で形成し、その後、切削等により円環状の形状となるよう形成し、ニードル本体31のシール部32とは反対側の端部に圧入または溶接により固定すればよい。この場合、鍔部外壁面331を、O1を中心とする第1仮想円C1に沿うよう高精度に形成することができる。
【0127】
また、本発明の他の実施形態では、固定コア本体51は凹部511を有さず、固定コア50はブッシュ52を有さないこととしてもよい。この場合、固定コア内壁面501は、固定コア本体51の径方向内側の内壁に形成され、隙間形成部材60の外側壁面602と摺動する。また、この場合、可動コア40の弁座14とは反対側の端面は、固定コア本体51の弁座14側の端面に当接することとしてもよい。
【0128】
また、上述の実施形態では、ノズル部10とハウジング20(第1筒部21)とが別体に形成される例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、ノズル部10とハウジング20(第1筒部21)とは、一体に形成されることとしてもよい。また、第3筒部23と固定コア本体51とは、一体に形成されていてもよい。
【0129】
また、上述の実施形態では、鍔部33がニードル本体31の他端に形成される例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、鍔部33は、ニードル本体31の他端近傍の径方向外側に設けられることとしてもよい。この場合、隙間形成部材60の板部61は、鍔部33には当接せず、ニードル本体31のみに当接可能である。
【0130】
また、上述の実施形態では、可動コア40に通孔43が形成される例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、可動コア40に通孔43が形成されていなくてもよい。この場合、通電初期の可動コア40の移動速度は低減するものの、可動コア40の過剰な移動速度を抑制することができ、フルリフト時のニードルのオーバーシュート抑制やフルリフト時の可動コア40のバウンス抑制、ニードル閉弁時のバウンス抑制に有利な構成となる。
本発明は、直噴式のガソリンエンジンに限らず、例えばポート噴射式のガソリンエンジンやディーゼルエンジン等に適用してもよい。
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0131】
1 燃料噴射装置、10 ノズル部、13 噴孔、14 弁座、20 ハウジング、30 ニードル、31 ニードル本体、32 シール部、33 鍔部、40 可動コア、50 固定コア、60 隙間形成部材、61 板部、62 延伸部、71 スプリング(弁座側付勢部材)、72 コイル、100 燃料通路、331 鍔部外壁面、501 固定コア内壁面、601 内側壁面、602 外側壁面、CL1 軸方向隙間、Ax1 ハウジングの軸、PL1 仮想平面
図1
図2
図3
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図5
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図9
図10
図11
図12
図13